説明

長手方向の永久磁石を具備したイオントラップ、及びこのような磁石を使用した質量分析計

本発明は、半径方向内向きの方向に沿って磁化された1つの半径方向内向きの構造体と、半径方向外向きの方向に沿って磁化された1つの半径方向外向きの構造体という、中空円筒の形態における少なくとも2つの磁化された構造体(30、32)を含む、永久磁石を形成しているアセンブリを有する真空磁気イオントラップに関するものであり、半径方向内向き及び外向きの磁化された構造体(30、32)は、共通の長手方向の軸(XX’)に沿って配列されている。又、このトラップは、少なくとも2つの磁化された構造体(30、32)の間に固定され、且つ、電圧生成器(12)に接続可能な少なくとも2つのトラッピング電極(10)を含むイオン閉じ込めセル(8)を格納している、密封チャンバ(4)をも有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FTICR(Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance)質量分析計によるイオンの検出に使用するのに特に好適な真空磁気イオントラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気イオントラップ(又は、ペニングトラップ)は、イオンを長期間にわたって閉じ込めることにより、中性ガスと反応させるべく機能するものであり、この結果、それらのイオンをその質量によって選択し、質量の観点において非常に高い分解能で検出可能である。
【0003】
磁気イオントラップは、原子物理学からプロテオミクスにまで及ぶ様々な分野において使用されている。
【0004】
このような高分子の特徴を判定する装置の利点は、感度、分解能、及び検出可能な質量の範囲を増大させるべく、絶え間なく増大する強度を有する磁界の使用をもたらすことになる。現時点においては、超伝導磁石を使用することにより、12テスラのレベルの高強度磁界を得ることが可能である。このような装置は、嵩張り、且つ、その重量が数(メートル法の)トンにも及ぶ場合がある。又、これらは、複雑な電源及び冷却設備を必要としており、従って、固定された施設内においてのみ使用可能である。
【0005】
永久磁石を使用して磁界を生成することにより、携帯型の装置を提供するのに好適な小さなサイズのトラップも開発されている(非特許文献1、特許文献1)。
【0006】
しかしながら、磁界の値が約0.4テスラ及び/又は過剰に小さな値に制限されている場合には、性能も非常に制限されることになる。
【0007】
特に分解能に関する良好な性能を得るためには、基本的なパラメータは、磁界の良好な均一性であり、約1テスラの磁界強度が、多くの場合に、必要な大きさのレベルであると考えられている。
【0008】
特許文献2に記述されている永久磁石は、品質及び強度が良好な均一な磁界を得るべく機能するが、使用されている形状により、セル内又はその近傍に直接的に形成されるイオンに対するトラップの使用法が制限されている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,451,781号明細書
【特許文献2】仏国特許出願第2,835,964号明細書
【非特許文献1】L.C. Zeller、J.M. Kennady、J.E. Campana、H.I. Kenttamaa著、Anal.Chem.、1993年、65巻、2116〜2118頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、良好な性能を保持すると共に実際的な(且つ、特に、装置外のイオン源を使用可能な)形状を有しつつ、容積及び重量が小さな磁気イオントラップを定義することにより、この問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、中空円筒の形態における少なくとも2つの磁石構造体を有する永久磁石を形成しているアセンブリと、この少なくとも2つの磁石構造体の間に配置され、且つ、電圧生成器に接続可能な少なくとも2つのトラッピング電極を具備したイオン閉じ込めセルを格納している密封エンクロージャと、を有する真空磁気イオントラップを提供しており、このトラップは、永久磁石を形成しているアセンブリが、半径方向内向きの方向において磁化された少なくとも1つの半径方向内向きの磁石構造体と、半径方向外向きのセクションにおいて磁化された少なくとも1つの半径方向外向きの磁石構造体と、を有しており、この半径方向内向き及び外向きの磁石構造体は、長手方向の軸に対して実質的に平行な方向に方向付けされた均一な永久磁界をこれらの間に生成するべく、長手方向の共通の軸上に配設されていることを特徴としている。
【0012】
本発明のその他の特徴によれば、
・少なくとも2つの磁石構造体は、1つにアセンブルされることによってこの構造体を形成する磁気要素を組み合わせることによって形成されており、
・少なくとも2つの磁石構造体の間には、同一の軸を中心とした同軸状に、高透磁性を有する中空の円筒形中間部分が配設されており、
・この中間部分は、半径方向外向きの磁石構造体から半径方向内向きの磁石構造体に向かって長手方向の軸に沿って磁化された構造体であり、
・これらの構造体は、既定の非ゼロのギャップだけ、長手方向の軸に沿って互いに離隔しており、
・磁石構造体の位置を互いに対して調節するための手段を含んでおり、
・閉じ込めセルは、この閉じ込めセル内に格納されているイオンの運動に関係した情報を伝達するべく、計測手段に接続可能な2つの計測電極を更に含んでおり、
・閉じ込めセルは、この閉じ込めセル内に格納されているイオンを励起するべく、励起信号生成器に接続可能な2つの励起電極を更に含んでおり、
・処理エンクロージャは、このエンクロージャ内の雰囲気の密度及び/又は特性を制御するべく、ポンプ手段に接続するための手段を含んでおり、
・中央磁界ゾーン外の外部イオン源を含んでおり、この外部イオン源は、イオンをセルに向かって導く手段を具備したイオン移送ゾーンを介してエンクロージャに接続されており、
・外部イオン源は、常圧のイオン源であり、・外部イオン源は、MALDI(Matrix−Assisted Laser Desorption Ionization)タイプの外部イオン源であり、
・外部イオン源は、ドリフトチューブ又はフローチューブである。
【0013】
又、本発明は、磁気イオントラップ、ポンプ装置、トラッピング電圧生成器、及び計測手段を有し、イオントラップ内に格納されているイオンのFTICR(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴)分析を実行するのに好適な質量分析計を提供しており、この磁気イオントラップは、先程定義したトラップであることを特徴としている。
【0014】
本発明については、添付の図面を参照している以下の説明を参照することにより、十分に理解することができよう。但し、以下の説明は、純粋に例としてのみ提供されているものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に示されているFTICR(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴)質量分析計には、本発明の磁気イオントラップ2が装着されている。
【0016】
磁気イオントラップ2は、長手方向の軸XX’を中心とした略円筒形の形状の密封されたエンクロージャ4を有しており、これは、処理エンクロージャとも呼ばれている。エンクロージャ4は、ポンプ装置6に接続されている。
【0017】
この説明対象の実施例においては、ポンプ装置6は、ダイアフラムポンプと関連付けられたターボモレキュラーポンプから構成されている。当然のことながら、イオンポンプ、極低温ポンプ、又は任意のその他の等価なポンプなどのその他のタイプのポンプを使用することもできよう。装置6は、約10-8ミリバールの圧力の超高真空をエンクロージャ4内に確立するべく機能する。
【0018】
又、装置6は、エンクロージャ4内の雰囲気の特性を制御するべく、リーク弁及びパルス弁の組み合わせを介してエンクロージャ4に接続された(ガスを注入するための)パイプをも含んでいる。
【0019】
質量分析計は、長手方向の軸に沿って電子を放出するフィラメント7などの外部イオン源及び前述のガス注入パイプと共に使用されるべく設計されている。
【0020】
イオンを質量によって分析可能なイオン閉じ込めセル8は、エンクロージャ4内において軸XX’上に配置されている。このセルには、様々な形状が可能である。
【0021】
この例においては、セル8は、立方体の形態を有しており、互いに平行に、且つ、エンクロージャ4の長手方向の軸XX’に対して垂直に延長している平面の正方形の形状である2つのトラッピング電極10を含んでいる。
【0022】
閉じ込めセル8内にイオンを導入できるように、エンクロージャ4は、イオン源とエンクロージャ4の間において軸XX’上に配設されている気密接続手段11と、この例においては、生成器に接続された複数のレンズ(加速器レンズ12A、合焦レンズ12B、及び減速機レンズ12Cを有している)によって形成されたイオンガイド手段12と、を具備している。
【0023】
又、外部源7の近傍に配置されているトラッピング電極は、イオンをセル8内に注入できるように、孔13によって貫通されている。
【0024】
電極10は、トラッピングのための既定の電位に充電されるように、直流(CD)生成器12に電気的に接続されている。
【0025】
又、セル8は、互いに対しては平行であって、トラッピング電極10に対しては垂直に、且つ、エンクロージャ4の長手方向の軸XX’に対しては垂直に延長している平面の、正方形の形状である2つの励起電極14をも含んでいる。
【0026】
励起電極14は、励起信号生成器16に対して電気的に接続されている。
【0027】
最後に、セル8は、互いに対して平行に、且つ、トラッピング電極10並びに励起電極14に対しては垂直に延長している平面の、正方形の形状である2つの計測電極18をも含んでいる。計測電極18は、例えば、電子信号取得カード及び適切な分析ソフトウェアが装着されているマイクロコンピュータに接続された、広帯域前置増幅器から構成された計測装置20に接続されている。
【0028】
トラッピング、励起、及び計測電極10、14、及び18は、セル8が略立方体(又は、更に一般的には、矩形の平行六面体)の形態になるように、配設されている。
【0029】
例えば、立方体のセル8は、MACORから製造された絶縁支持部上に取り付けられ、且つ、銅又は銀から製造されたワイヤによって電気的に接続された、例えば、ARCAP・AP4などの非磁性材料から製造された20ミリメートル(mm)又は25mmの辺を具備する正方形の電極を使用して製造されている。
【0030】
又、イオントラップ2は、永久磁石を形成するアセンブリをも含んでおり、この永久磁石は、この説明対象の実施例においては、長手方向の軸を中心とした3つの中空の円筒形の構造体を有しており、このそれぞれには、30、32、及び34という参照符号が付与されている。この例においては、これらの構造体は、断面が略円形である中空円筒の形状を有するようにアセンブルされる、複数の磁化されたセグメントを組み合わせることによって製造されている。
【0031】
3つの磁石構造体30、32、及び34は、同一の長手方向の軸XX’上に(即ち、軸XX’を中心として同軸状に、且つ、これに沿って軸方向に)配設されており、構造体34が、外部構造体と呼ばれる構造体30及び32の間に介在している。
【0032】
従って、構造体30、32、及び34は、処理エンクロージャ4が配置される空洞6を形成しており、この結果、閉じ込めセル8は、長手方向の軸XX’上において外部磁石30及び32の間に配置されている。
【0033】
この説明対象の実施例においては、閉じ込めセル8の中心は、基本的に、磁石構造体30、32、及び34からなるアセンブリの中心に対応している。
【0034】
図2及び図3を参照して更に詳細に説明するが、外部磁石構造体30及び32は、実質的に半径方向内向きの磁界と実質的に半径方向外向きの磁界をそれぞれ誘発するように設計されている。
【0035】
図2の断面図に示されているように、半径方向内向きの磁石構造体30は、それぞれがリングの一部分の形態である16個の磁化されたセグメントから構成されている。このそれぞれのセグメントの磁化は、半径方向内向きに(即ち、軸XX’に向かう方向に)沿ったものになっている。
【0036】
同様に、構造体32の図3の断面図は、この半径方向外向きの構造体が、それぞれがリングの一部分の形態である16個の磁化されたセグメントをアセンブルすることによって形成されていることを示している。このそれぞれのセグメントは、半径方向外向きの方向において(即ち、軸XX’から離れる方向において)磁化されている。
【0037】
又、この説明対象の実施例においては、磁石構造体30及び32を形成しているそれぞれのセグメントの向きは、軸XX’に対して基本的に垂直であり、それぞれの構造体は、軸XX’を中心した円形の対称性を有している。
【0038】
外部構造体30及び32の間に配置されている閉じ込めセル8内には、磁石構造体30及び32が協働することにより、半径方向内向きの構造体30から半径方向外向きの構造体32に向かう方向において、長手方向の軸XX’に実質的に平行に延長している均一な永久磁界Bが生成される。
【0039】
従って、閉じ込めセル8のトラッピング電極10は、磁石30及び32によって生成された磁界Bに対して垂直に配置されている。このように方向付けられた均一な永久磁界Bは、この説明対象の実施例においては、磁石構造体30及び32の間に介在している磁石構造体34によって補強されている。構造体34は、軸XX’に対して平行に磁化され、且つ、構造体32から構造体30に向かって(即ち、半径方向外向きの構造体から半径方向内向きの構造体に向かって)方向付けされた磁石セグメントから形成されている。
【0040】
構造体30及び32の間に介在しているこの磁石構造体34の使用は、閉じ込めセル8内の磁界の均一性及び強度を補強するべく機能すると共に、これらの磁石構造体外の磁界が弱いものになることを保証するべく機能している。
【0041】
これらの構造体30及び32並びに34を構成している磁石の寸法は、磁界の強度とその均一性を決定するのに有用である。
【0042】
例えば、構造体30、32、及び34は、ネオジミウム−鉄−ボロン(Nd−Fe−B)から構成されており、これらは、磁石構造体30及び32については、24センチメートル(cm)、そして、磁石34については、20cmの外部直径を有している。これらの磁石構造体は、いずれも、6cmの内部直径と10cmの長さを有している。この結果、このアセンブリは、約10立方センチメートル(cm3)を上回る中央容積内において1/1000のレベルの均一性を有する1テスラのレベルの磁界を生成する。
【0043】
図1を参照して説明した実施例においては、3つの磁石構造体30、32、及び34が同軸状に配設されており、これらは、調節可能なギャップd1及びd2によって同軸状に離隔している。
【0044】
磁石30、32、及び34について選択される寸法において、ギャップd1及びd2は、通常、5mmを下回っており、有利には、0.3mm〜0.7mmの範囲内にあり、好ましくは、0.5mmに等しい。
【0045】
磁石30、32、及び34を取り付ける1つの方法が、図4に示されており、これは、本発明のイオントラップの構造体を示す長手方向の断面図である。
【0046】
ギャップd1及びd2の調節を容易にするべく、中央磁石34は、非磁性材料からなるプレート及びスペーサから製造されたフレーム38上に固定状態において取り付けられている。2つの外部磁石構造体30及び32は、平行移動できるように取り付けられており、これらは、例えば、フレーム38に固定されると共に、外部磁石30及び32の外部面内に提供されたねじ付きの止まり孔44内に係合している、個別のねじ40及び42により、軸XX’に沿って変位可能である。
【0047】
ギャップd1及びd2は、セル8内において最大限の均一性を有する磁界を得るべく、調節される。
【0048】
このように配設された場合に、構造体30、32、及び34は、軸XX’に対して実質的に平行であり、且つ、構造体30から構造体32に向かって方向付けされた高強度の均一な磁界Bを空洞36の中央部に生成する。
【0049】
逆に、空洞36外のゾーン内には、長手方向の軸に対して平行であり、且つ、セル内の磁界の距離とは反対の(即ち、構造体32から構造体30に向かう)方向に方向付けされた、均一な永久磁界が存在することがわかる。
【0050】
この質量分析計の動作は、仏国特許出願第2,835,964号に記述されているものに似ており、本明細書においては、この詳細な説明を省略する。
【0051】
図5を参照して、本発明の第2実施例の説明を続ける。
【0052】
この図は、軸XX’上の磁気イオントラップ2の透視図であり、部分的に断面になっている。
【0053】
先程と同様に、イオントラップ2は、円筒形の磁石構造体30、32、及び34の空洞内に収容されたエンクロージャ4を有している。
【0054】
この実施例においては、2つのトラッピング電極10のそれぞれは、2つの反対側の面において開放している円筒形の構造体から構成されている。
【0055】
電極10を構成している2つの開放円筒の開口部は、長手方向の軸XX’に沿って互いに対向している。
【0056】
2つの励起電極14及び2つの検出電極18は、いずれも、断面がリングの形態であり、これらは、トラッピング電極10を形成している中空円筒の間において、同一の軸上に配置された中空円筒を形成するように配列されている。励起電極14と検出電極18が交互に配置されるように、同一のタイプの電極が互いに対向している。
【0057】
従って、この電極の組は、略長手方向の軸XX’に沿って延長しているトンネルの形態の閉じ込めセル50を、エンクロージャ4内に定義している。
【0058】
このような構造体は、開放構造体として定義可能であり、特に、エンクロージャ4内に存在している分子をイオン化すると共に、光子又はその他の微粒子のビームとの相互作用によってイオンの特徴を判定するために、多数の実装上の利点を提供している。
【0059】
当然のことながら、特に、仏国特許出願第2,835,964号に記述されているものに類似したトンネルの形態の立方体セルなどの、その他の形態のセルも使用可能であろう。
【0060】
一変形においては、本発明のイオントラップは、外部イオン源(即ち、中央磁界のゾーン外に位置しているイオン源)と共に直接的に使用されている。イオンは、磁石構造体の対称軸に沿ってセル内に注入する必要がある。セル内へのイオンの導入地点よりも上流にイオンビーム偏向装置が配置されている場合には、任意選択により、イオン源を軸からずらして配置可能である。イオンを移送するために使用されるゾーンは、それ自体を高真空内に配置する必要があり、且つ、1つ又は複数の追加ポンプユニットを必要とする可能性がある。
【0061】
イオンは、従来の方式により(例えば、静電レンズ又は高周波ガイドから構成されたシステムの支援により)、軸XX’に沿って導かれる。
【0062】
動作の際には、化学的なイオン化によるイオン形成を利用している例においては、一次イオンを生成するためのサンプルガスをイオン源内に導入する。次いで、一次イオンが反応できるように、第2のサンプルガスをパルス化してイオン源内に導入する。生成されたイオンを閉じ込めセル内に導き、この閉じ込めセル内において、それらをトラップし、フーリエ変換分析によって質量スペクトルを取得できるように励起可能である。
【0063】
イオン源自体は、例えば、電子衝撃により、化学的なイオン化により、レーザーイオン化アブレーションにより、又はMALDI(Matrix−Assisted Laser Desorptin Ionization)によってイオンを形成することにより、真空において動作可能である。サンプルの変更は、外部源と装置の残りの部分とに別個のポンプユニットを使用することによって容易になり、弁の使用によって外部源を隔離可能である。
【0064】
又、外部源は、常圧で動作するイオン源(エレクトロスプレー源、常圧MALDI源、常圧において化学的なイオン化によって動作するイオン源)であってもよい(この場合には、イオン源と、セルを格納しているエンクロージャの間に複数の差動ポンプ段が必要となる)。
【0065】
又、ドリフトチューブ又はフローチューブ、或いは、エンクロージャの内外に配置されるその他のタイプのイオン源を使用することも可能である。
【0066】
その他の実施例においては、その他の形状及びアセンブリの永久磁石が使用されている。例えば、磁石は、処理エンクロージャ内に収容可能であり、或いは、例えば、多角形の断面形状など、断面が円形である形状以外の形状から構成することも可能である。
【0067】
一変形においては、外部磁石構造体は、軸XX’に対して垂直ではない半径方向内向き及び外向きのそれぞれの磁界を誘発するべく適合されている。この結果、長手方向の軸XX’に対して垂直を中心として約10°の範囲にわたって、それぞれの磁界を方向付け可能である。
【0068】
説明対象である実施例は、3つの磁石構造体を具備しているが、本発明を実現するには、2つの磁石構造体で十分である。一変形においては、これらの2つの磁石構造体の間に、同一の軸を中心とした同軸状に別の構造体を介在させることができる。この更なる構造体は、軟鉄片又はなんらかのその他の強磁性金属など、永久的に磁化されないが高透磁率を有する材料を使用して製造されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のイオントラップが装着された質量分析計の原理を示す図であり、これは、部分的に断面図として示されている。
【図2】本発明に使用されている永久磁石の断面である。
【図3】本発明に使用されている永久磁石の断面である。
【図4】本発明に使用されている永久磁石の長手方向の断面図である。
【図5】本発明のイオントラップの別の実施例の透視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒の形態の少なくとも2つの磁石構造体(30、32)を有する永久磁石を形成しているアセンブリと、前記少なくとも2つの磁石構造体(30、32)の間に配置され、且つ、電圧生成器(12)に接続可能な少なくとも2つのトラッピング電極(10)を具備しているイオン閉じ込めセル(8)を格納する密封されたエンクロージャ(4)と、を有する真空磁気トラップにおいて、
前記永久磁石を形成しているアセンブリは、半径方向内向きの方向において磁化された少なくとも1つの半径方向内向きの磁石構造体(30)と、半径方向外向きのセクションにおいて磁化された少なくとも1つの半径方向外向きの磁石構造体(32)と、を有しており、
前記半径方向内向き及び外向きの磁石構造体(30、32)は、前記長手方向の軸(XX’)に対して実質的に平行な方向に方向付けされた均一な永久磁界をこれらの間に生成するべく、共通の長手方向の軸(XX)上に配設されていることを特徴とする、真空磁気イオントラップ。
【請求項2】
前記少なくとも2つの磁石構造体(30、32)は、1つにアセンブルされて前記構造体を形成する磁気要素を組み合わせることによって形成されていることを特徴とする、請求項1記載の真空磁気イオントラップ。
【請求項3】
高透磁性の中空の円筒形中間部分(34)が、前記少なくとも2つの磁石構造体(30,32)の間において、前記同一の軸を中心として同軸状に配設されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の真空磁気イオントラップ。
【請求項4】
前記中間部分は、前記半径方向外向きの磁石構造体(32)から前記半径方向内向きの磁石構造体(30)に向かって、前記長手方向の軸(XX’)に沿って磁化された構造体であることを特徴とする、請求項3記載の磁気イオントラップ。
【請求項5】
前記磁石構造体(30、32、34)は、既定の非ゼロのギャップ(d1、d2)だけ、前記長手方向の軸(XX’)に沿って互いに離隔していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の磁気イオントラップ。
【請求項6】
前記磁石構造体(30、32、34)の位置を互いに対して調節する手段を含むことを特徴とする、請求項4又は5記載の磁気イオントラップ。
【請求項7】
前記閉じ込めセル(8)は、前記閉じ込めセル(8)内に格納されているイオンの運動に関係した情報を伝達するべく、計測手段(20)に接続可能な2つの計測電極(18)を更に含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項記載の磁気イオントラップ。
【請求項8】
前記閉じ込めセル(8)は、前記閉じ込めセル(8)内に格納されているイオンを励起するべく、励起信号生成器(16)に接続可能な2つの励起電極(14)を更に含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項記載の磁気イオントラップ。
【請求項9】
前記処理エンクロージャ(4)は、前記エンクロージャ(4)内の雰囲気の密度及び/又は特性を制御するべく、ポンプ手段(6)に接続するための手段を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項記載の磁気イオントラップ。
【請求項10】
前記中央磁界ゾーン外の外部イオン源(7)を含んでおり、前記外部イオン源は、イオンを前記セル(8)に向かって導く手段を具備したイオン移送ゾーンを介して前記エンクロージャ(4)に接続されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項記載の磁気イオントラップ。
【請求項11】
前記外部イオン源は、常圧のイオン源であることを特徴とする、請求項10記載の磁気イオントラップ。
【請求項12】
前記外部イオン源は、MALDIタイプの外部イオン源であることを特徴とする、請求項10記載の磁気イオントラップ。
【請求項13】
前記外部イオン源は、ドリフトチューブ又はフローチューブである請求項10記載の磁気イオントラップ。
【請求項14】
磁気イオントラップ(2)と、ポンプ装置(6)と、トラッピング電圧生成器(12)と、計測手段(20)と、を有し、前記イオントラップ(2)内に格納されているイオンのフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴分析を実行するのに好適な質量分析計において、
前記磁気イオントラップ(2)は、前項までのいずれかの請求項記載のトラップであることを特徴とする、質量分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−509513(P2008−509513A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524370(P2007−524370)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002013
【国際公開番号】WO2006/024775
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【出願人】(504317743)ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ シズエム) (18)
【出願人】(505011198)ユニベルシテ ドゥ パリ 11−パリ シュド (2)
【Fターム(参考)】