説明

長時間放出性の口腔生物接着性錠剤

【課題】活性成分が水分または周辺環境から保護される生物接着性錠剤を提供する。
【解決手段】活性成分は、代謝から、水分、酵素、pH作用による分解から保護され、制御速度で生物学的利用性を発揮する。活性成分は、製造時に水分から保護され、さらに重要なことに、患者が錠剤を緩やかな制御速度で利用する後まで水分から保護される。この漸進的水和機能によりフラクションである活性成分の部分のみが吸収に利用され、投与後長時間保護される生体接着性錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分の長時間制御放出用の生物接着性の生物侵食性錠剤に関する。より詳しくは、本発明は、代謝により、または水分、酵素、pH作用により惹起される活性成分の時期尚早な分解を伴わずに、活性成分を徐放させるための体腔壁接着性の漸進性水和錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物およびその他の医薬品は伝統的に経口摂取、鼻腔スプレーまたは注射による形態で投与されている。これらの送達方法は、血流中に送達される活性成分が長期間定常的に供給されることの必要な患者にとって、無効であることが証明されている。特に難しいのは、睡眠時間中に投与を必要とする患者である。これらの患者に対しては、静脈内静脈糸、遅延溶解ピル、坐剤や経皮パッチなどが処方されている。しかし、IV(静脈内)の不便さと不快感、胃腸での分解または最初に通過する肝臓代謝による多くの摂取活性成分の寿命が短いこと、および多くの製品が適当な投与法でまたは調整した濃度で経皮的に好適に送達し得ないことなどが、これらの方法の不満足なことを証明している。
【0003】
これまで専門家は活性成分を経粘膜投与するための製品を開発することによりこの技術上の必要性に充足させようとしてきた。例えば、ある種の活性成分は、体腔壁、例えば、口腔または膣腔などを経て、最初に通過する肝臓での分解の恐れなしに、血流中に迅速に投与することができる。一般に、粘膜表面を介しての活性成分の送達は、生物接着性製剤の使用により増加させ得る。しかし、当業者が試行しつつも、この技術の要請を充足し得なかった1つの特別な領域がある。それは、活性成分が実際に放出されるまで分解される恐れのない、徐放性投与に有用な生物接着性錠剤を開発することである。
【0004】
“徐放性”とは一回の投与後に長時間にわたり連続的にまたは散発的に活性成分を放出することをいい、それによって多くの場合、宿主患者に利用可能な活性レベルを長時間ある一定のレベルに維持する。本明細書で使用する場合、活性成分の放出が長時間にわたり制御される状況をも含めることを意図するものであるが、その場合、宿主が利用し得る活性成分のレベル(生物学的利用性)は、可変ではあるが、治療時の特定時点では所定のレベルにある。
【0005】
技術上既知の徐放性の生物接着性錠剤は一般に2つのカテゴリーに分類し得る:(1)水溶性カルボマーからなる錠剤;および(2)不溶性ポリマーからなる錠剤。両タイプの錠剤は多くの適用に不満であることが証明されている。例えば、多くの専門家は、カルボマー934Pまたはカルボポール(CARBOPOL(商標))974樹脂(ビー・エフ・グッドリッチ(クリーブランド、オハイオ)から商品として入手し得る)などの水溶性カルボマーから適切な徐放性の生物接着性錠剤を製剤化しようとしてきた。しかし、かかる錠剤は多くの場合、短時間、例えば、6時間以下の時間、体腔壁に接着し得るにすぎない。また、これらの錠剤は体腔壁から除去され易く、その結果、かかる口腔錠を使用する患者が仮死状態になるおそれがある。さらに、これらの先行技術錠剤は本来的に比較的急速に水和され、その結果、時期尚早に活性成分の貯臓部分を水分による分解、または腐敗性の口腔もしくは膣腔の細菌などの宿主環境の酵素による分解に曝すこととなる。
【0006】
同様に、ポリカルボフィルなどの不溶性ポリマーからなる錠剤は多くの適用に不適切であることが証明されている。例えば、ポリカルボフィル錠剤は体腔壁に長時間付着し得るが、かかる錠剤は直ぐに付着するものではなく、睡眠時間中に患者にかかる活性成分の口腔内送達を、ある種の治療においては実行不能なものとしている。さらに、かかる錠剤は、多くの場合、安心感があり違和感がなくなる程には、あるいは潜在的に錠剤を吸込んでしまうことがあっても安全である程には、充分に軟化しない。
【0007】
さらに、例えば、どのタイプの錠剤でも多くの症状の治療に特に適したものはない。これまでに言及したように、多くの医学的症状にとって活性成分の持続的および/または制御下にある放出が望ましい場合があり、例えば、その多くの理由は、活性成分の最初に通過する肝臓での代謝の強い影響を軽減すること、または水分、pH作用、酵素による活性成分の時期尚早な分解の恐れを軽減すること、あるいは適切な生物接着性錠剤により提供される安心感と便益性を得ることなどにある。かかる症状とは、以下に限定されるものではないが、例えば、活性成分での治療を要する症状であり、その活性成分とは糖タンパク質、タンパク質、性ホルモン、抗ホルモン、硝酸エステル、ベータ−アゴニスト、ベータ−アンタゴニスト、オピオイド、オピオイド−アンタゴニスト、抗うつ剤、HMG−CoA(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A)レダクターゼ阻害剤、抗ヒスタミン剤、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤、および/またはプロスタグランジンなどである(しかし、これらに限定されるものではない)。これまで、当該技術では、かかる患者が侵襲的で不適切な上記の技術と方法を受けねばならなかった。
【0008】
この技術を説明するために、例えば、性機能不全の男性を考えよう。男性の性機能不全は内因性テストステロン産生の欠乏または欠損を特徴とする。異常に低下したテストステロン・レベルは男性を“男性機能休止”の危険に導き、その場合、男性は心血管系疾患、アルツハイマー病および骨粗しょう症の危険が大きくなる。
【0009】
テストステロンは伝統的に性機能低下症の男性の治療に使用されている。しかし、最も有効であるためには、その治療で完全な生理的テストステロンの置換が可能でなければならない。さらに、その治療は夜間のテストステロン持続レベルを与えること、好ましくは真夜中にピークを持続することが可能でなければならない。経皮テストステロン・パッチは一般に準生理的レベルを与えるだけで、その結果、軽減は不完全なものとなる。同様に、これまでに記載された先行技術の口腔錠は、かかる持続性テストステロン送達には無効であるか、または実用的でない。
【0010】
ホルモン・テストステロンは、他の多くの医薬と同様に、他の多くのタンパク質および糖タンパク質を含み、最初の高度な経路代謝を受ける。従って、当業者が認めるように、乾燥状態で長期間錠剤の内部貯蔵を維持し得ない材料から構成される口腔錠または膣腔錠は、本質的に溶解と嚥下を防止できず、または、溶解と活性成分の粘膜経由の急速な吸収を防止し得ない。さらに、当業者が認めるように、標的領域に迅速に付着し得ないか、または除去されてしまう錠剤は、テストステロン治療などの夜間送達を利用する治療にとっては実用的でない。
【0011】
さらに、当業者が認めるように、本発明による徐放性の生物接着性錠剤は、男性の性機能低下症の治療に限られるものではない。例えば、患者は多くの場合、様々な症状のために徐放性ホルモン治療を必要とする。さらに、喘息などの症状を治療するためのステロイド剤など、他の薬物治療は、睡眠時の夜間に所望のピークレベルとする治療である。従って、当業者は上記の技術上の必要性を克服する生物接着性の徐放性錠剤を開発することの必要性、長い間そう思われながら未だに解決されていない必要性のあることを認めるであろう;そのような技術とは、以下に限定されるものではないが、活性成分の治療有効量の送達であって、その活性成分が代謝されるか、あるいは水分、酵素、pH作用により分解されるもの、例えば、糖タンパク質、タンパク質、性ホルモン、抗ホルモン、硝酸エステル、ベータ−アゴニスト、ベータ−アンタゴニスト、オピオイド、オピオイド−アンタゴニスト、抗うつ剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、抗ヒスタミン剤、ACE阻害剤、および/またはプロスタグランジンなどである。
【発明の概要】
【0012】
本発明は上記の技術上の必要性に合致する。従って、本発明の目的は生物接着性錠剤であって、体腔の標的組織領域に直ちにまたは殆ど直ちに接着し、一般に治療の全期間実質的に付着したままである錠剤を提供することである。本発明のこの態様によると、事実上8時間以上にわたり口腔に留まって活性成分を送達し得る生物接着性錠剤が提供される。本発明の関連する態様によると、事実上72時間以上にわたり膣内に留まって活性成分を送達し得る生物接着性錠剤が提供される。
【0013】
本発明の他の目的は漸進的に水和化する生物接着性錠剤を提供することにあり、それによって錠剤の内芯部が水分および周辺環境から保護されることとなる。本発明のこの態様によると、粘膜および他の体腔における徐放性用途に適した生物接着性錠剤が提供される。その場合の活性成分は、タンパク質または糖タンパク質、あるいは代謝に、または酵素、pH、水分の誘導分解に、特に感受性の他の治療剤を含む。
【0014】
関連する本発明の目的は、制御下にある徐放性の生物接着性錠剤を提供することにあり、その場合、活性成分は、活性成分の錠剤乾燥貯蔵部分の漸進的水和により、長時間にわたり漸進的に生物利用可能となる。
【0015】
本発明の他の目的は、本発明による生物接着性錠剤を提供することにある。当該錠剤は、ゲル化および/または膨潤して、患者が、特に睡眠中の患者が治療を受ける場合に、該錠剤を口腔内で使用することで仮死状態なるのを防止する働きがある。
【0016】
さらに本発明の他の目的は、本発明の上記目的に従って生物接着性錠剤を製造する方法を提供することにある。本発明の一態様によると、生物接着性錠剤を製造する方法が提供され、その場合、時期尚早な代謝および/または分解に抵抗する活性成分が第一工程および/または第二工程(顆粒の製造)で添加される。本発明の関連する態様によると、生物接着性錠剤の製造法が提供され、その場合、時期尚早な代謝および/または分解傾向のある活性成分は、顆粒を乾燥し、篩い分けした後に第二工程(錠剤化混合物の製造)で添加する。勿論、他の関連性または因子はどの工程が特定の活性成分を添加するのに適しているかの選択に影響する。
【0017】
さらに本発明の他の目的は、本明細書に記載の生物接着性錠剤の使用方法を提供することにある。本発明の一態様により、徐放性テストステロンを男性患者に投与するための生物接着性錠剤の使用方法が提供される。本発明の関連する態様により、テストステロンなどの徐放性ホルモンを男性患者に投与するための生物接着性錠剤の使用方法が提供される。
【0018】
本発明者らはまったく予想外に、本発明のこれらの目的およびその他の目的が活性成分、水溶性ポリマー(例えば、カルボポール(CARBOPOL(商標))、および不溶性ポリカルボフィル(例えば、ノベオン(NOVEON(登録商標);ビー・エフ・グッドリッチ・スペシャルティ・ポリマー・オブ・クリーブランド、OHから入手可能)を含んでなり、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ラクトース、トウモロコシ・デンプンなどの標準的錠剤成分、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクなどを含む錠剤を製造し、使用することにより達成し得ることを発見した。
【0019】
本発明による生物接着性の漸進性水和錠剤は、適切な活性成分とともに使用可能であり、治療量の活性成分を一定の持続時間、制御された速度で患者への送達に使用し得る。本発明による錠剤は、該錠剤の意図した用途と矛盾しない適切ないかなる形状にも、また適切ないかなるサイズにも構築することができる。
【0020】
本発明による錠剤は適切な量の活性成分を含んでなり得る。本発明による適切な量の活性成分は、活性成分の重量で微少量から約50%以上の成分である。当業者も認めるように、“微少量”とは錠剤に比較して相対的に少ない活性成分の量も含むように企図したものであり、例えば、僅か2〜3mgの活性成分を100ミリグラムを越える重量の錠剤を介して送達する場合などである。従って、当業者は活性成分量がいかなる比率であっても本発明の範囲内であることを認めるだろう。
【0021】
本発明による錠剤のバランスは、水溶性ポリマーおよび水不溶性架橋ポリカルボン酸ポリマーを含み得る。また、本発明によると、代表的な錠剤は約1ないし約75重量%の水溶性ポリマーと約0.5ないし約10重量%の水不溶性架橋ポリカルボン酸ポリマーを有する。本発明によると、かかる代表的な錠剤は、好ましくは、約5ないし約50%のセルロースをも含む。また、本発明によると、現在好適な錠剤は約0.5ないし約25重量%のデンプンを有してもよい。これら好適な錠剤はまた約1ないし約50重量%のラクトースを有していてもよい。
【0022】
さらに、本発明によると、好適な錠剤は約0.01ないし約2%までのシリカ;および/または約0.5重量%までのタルク;および/または約2.5重量%までのステアリン酸マグネシウムを含み得る。
【0023】
従って、当業者は、錠剤の成分が特定の目的に適するように変更することができることを認めるだろう。例えば、本発明者らは、漸進性水和錠剤が水和するのに要する時間を延ばす(短縮する)1つの方法がラクトースおよび/またはデンプンの量を増加(減少)させ、かつ、水溶性ポリマーの量を減少(増加)させることであるのを発見した。あるいは、水和時間に影響するように錠剤密度を変えてもよい。
【0024】
本発明の使用に適した活性成分は、徐放性または制御放出を要する単一または複数の活性成分、水分、pH作用、酵素による活性成分の時期尚早な分解を長時間防止するのに要する単一または複数の活性成分、または最初の経路である肝臓代謝から患者を防御して投与する必要のある単一または複数の活性成分などである。本発明での使用に適した代表的な活性成分は以下のとおりであるが、決してこれらに限定されるものではない:(1)糖タンパク質、例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(HCG)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)など;(2)タンパク質、例えば、GnRH(アゴニストおよびアンタゴニスト)、オキシトシン類似体、ソマトスタチン類似体、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン類似体(CRH類似体)など;(3)性ホルモン、例えば、エストラジオール、テストステロン、プロゲステロンなど;(4)抗ホルモン、例えば、タモキシフェン、ミフェプリストンなど;(5)硝酸エステル、例えば、ニトログリセリン、イソソルビド、四硝酸エリスリチル、四硝酸ペンタエリスリトールなど;(6)ベータ−アゴニスト、例えば、テルブタリン、アルブテロール、ピルブテロール、ビトルテロール、リトドリンなど;(7)ベータ−アンタゴニスト、例えば、プロプラノロール、メトプロロール、ナドロール、アテノロール、チモロール、エスモロール、ピンドロール、アセブトロール、ラベタロールなど;(8)オピオイド、例えば、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシモルホン、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、レベロファノール、レバロルファン、ブプレノルフィン、フェンタニル、ナルブフィン、ブトルファノール、ペンタゾシンなど;(9)オピオイド−アンタゴニスト、例えば、ナロキソン、ナルメフェンなど;(10)抗うつ剤、例えば、アミトリプチリン、アモキサピン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン、マプロチレン、ノルトリプチリン、プロトリピリン、トリミプラミン、フルオキセチン、トラゾドンなど;(11)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えば、ロバスタチン、メバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチンなど;(12)抗ヒスタミン剤、例えば、ロラタジン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸ブロムフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、カルビノキサミン、プロメタジン、トリペレナミンなど;(13)ACE阻害剤、例えば、カプトプリル、エナラプリル、リジノプリルなど;および(14)プロスタグランジン、例えば、ミソプロストールなど。従って、当業者は本発明による錠剤が多様な症状の治療に多様な活性成分とともに用い得ることを認めるであろう。
【0025】
前記した態様および本発明の別の態様は、好ましい実施態様の図および説明を参照することによって、さらに明かになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1A−1Fは、本発明の生物接着性錠剤の漸進性水和を示す一連の写真である。
【図2】図2は、本発明の生物接着性錠剤をつくる現状で好ましい方法を示すフォローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の現状で好ましい実施態様を図1に示す。図1の第1枠に表示するように、錠剤を投与する前に、すべての活性物質を乾燥状態にして、水分、pH作用、酵素などの化学物質による望ましくない作用を防ぐ。錠剤はまた吸収(生物学的同等性)に供されない。図1の第2−6枠に表示するように、徐々に活性物質の残余部分は、乾燥状態に残留し、水分および直接の環境から保護され、活性物質の持続性制御放出の貯蔵庫として働き得る。このような送達システムは、代謝から、および長時間において酵素、pH,水分による変性から保護されねばならないタンパク質、糖タンパク質および他の薬剤の送達に非常に適している。
【0028】
好ましい実施態様において、口腔に使用されたときに、生物接着性錠剤の漸進性水和が患者を保護し、錠剤は、ゲル化し、重くなり、空気通路に浮かび吸引の危険なしに、分解されなければならない。このことは、テストステロンなどのホルモンまたは喘息治療のステロイドのような、夜間に最高濃度に達しなければならない薬剤にとって、特に適切である。本発明により、錠剤の水和が、口腔錠として製剤したときは何時間(12−24時間)も、膣用に製剤したときは何日もかけて生じ得る。当業者に知られているように、先行技術では、腐敗性の口腔および膣において水分やpHから、細菌が作る酵素から、生物接着性錠剤は活性成分を保護しない。
【0029】
さらに、本発明の教示にしたがって当業者はよく理解するように、行おうとする特定の処置に適合するように、錠剤は、大きさを成型し、用量化する。例えば、図1に示す口腔生物接着性錠剤は、患者に好適なようにわずか直径9mmにつくり、かつ1日にテストステロン7mg(完全な生理的レベル)の送達が可能とできる。これに対し、先行技術では、膜透過性パッチで1日につき5mg(半生理的レベル)しか送達できない。
【0030】
生物接着性錠剤を製造する現状で好ましい方法を図2に示す。現状で好ましい方法は、次に記載するように3工程を含む。
【0031】
1.第1工程:顆粒の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロース15000(=HPMC15000)をトウモロコシデンプンおよびラクトースと混合し、次いで水分に非感受性の活性成分の場合、活性物質を加える。混合物をヒドロキシプロピルメチルセルロース5(=HPMC5)の水溶液で湿らせ、次いで練る/顆粒とする。
【0032】
顆粒を温かい空気(50℃)でオーブン中乾燥して、水分含量を2.5%以下にする。乾燥した顆粒をステンレスふるい振動顆粒器メッシュサイズ1000μmで砕く。
【0033】
2.第2工程:錠剤用混合物の製造
タルク、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、および水分感受性の活性物質の場合、活性成分を加える。このすべてを、口径サイズ500μmのふるい器でふるい、次いでフリーフォール混合器に移す。
【0034】
工程1の顆粒に、ポリカルボフィル、カルボマー、ラクトースを加える。全体を均質になるまで混合する。
【0035】
3.第3工程:錠剤化
錠剤用混合物を回転式打錠器で錠剤とする。この打錠器は上側に9mm平面、下側に曲面(r=9mm)、両斜面縁のパンチを有しているものである。錠剤を取り出し、包装する。
【0036】
図2に示すように、水分に非感受性の活性成分は顆粒製造時に好ましくは加える。しかし、あるいは、顆粒を乾燥しふるいにかけてから、活性成分を第2工程中に加えることができる。当業者は理解するごとく、この2番目の方法は、活性成分が水分に感受性のときに特に好ましい。
【0037】
現状で好ましい製造方法において、活性成分は好ましく水分から保護される。湿顆粒化は、ラクトース、トウモロコシデンプン、HPMCで行う。テストステロン、ポリガルボニル、カルボマー934P、ステアリン酸マグネシウムを乾燥で最終打錠のために加える。
【0038】
さらに、本発明の教示にしたがって当業者はよく理解するように、構成材料を所望の錠剤特性に最適となるように変えることができる。例えば、本発明者が発見したところによると、ラクトースおよびトウモロコシデンプンの量を漸進的に増加し、カルボマー974Pの量を漸進的に減少すると、錠剤が水和するのに要する時間が漸進的に増加する。従って、当業者は理解するごとく、具体的な処置(すなわち、具体的な活性、具体的な用量、具体的な送達)に適した錠剤をつくることができる。
【0039】
本発明について、これらの態様および他の態様を実施例でさらに明確に示す。
【0040】
実施例:テストステロン錠
下記は、ヒトにおける完全な生理的置換のための製剤(製剤8、バッチ#00029906)の例である。
テストステロン 30.000mg 24.0%
HPMC 26.250mg 21.0%
トウモロコシデンプン 22.500mg 18.0%
ラクトース一水和物 30.125mg 24.1%
シリカ 1.250mg 1.0%
ポリカルボフィル(Noveon) 3.125mg 2.5%
カルボマー974P 9.375mg 7.5%
タルク 1.500mg 1.2%
ステアリン酸マグネシウム 0.875mg 0.7%
【0041】
上記のような製剤は、インビトロ溶解試験で持続性放出を作る。このような製剤を女性患者に使用すると、12時間以上の持続性制御放出がつくられる。
【0042】
表1は、本発明の生物接着性錠剤について9種類の製剤を示す。活性成分であるテストステロンを30.0mg(24重量%)の一定にして、非活性成分の割合を変えることによる作用の変化を調べた。
【0043】
選択した製剤のテストステロン溶解速度を調べた。表2は、製剤1、バッチ#0069904から選択した6錠のテストステロン溶解速度を示す。表3は、製剤3、バッチ#0049904から選択した6錠のテストステロン溶解速度を示す。表4は、製剤5、バッチ#0029904から選択した6錠のテストステロン溶解速度を示す。表5は、製剤6、バッチ#0019904から選択した6錠のテストステロン溶解速度を示す。
【0044】
溶解速度のデータをグラフにして、1時間当りの放出テストステロンの%を図示した。図表1は、製剤1についてのテストステロン放出を示す(参照、表2)。図表2は、製剤3についてのテストステロン放出を示す(参照、表3)。図表3は、製剤5についてのテストステロン放出を示す(参照、表4)。図表4は、製剤6についてのテストステロン放出を示す(参照、表5)。
【0045】
図表および表に示すように、ラクトースおよびトウモロコシデンプンの量を減少し、カルボマー974Pの量を増加すると、錠剤が水和するのに要する時間が漸進的に減少する。製剤1(0069904)など、高レベルのカルボマー974Pおよび低レベルのラクトースおよびトウモロコシデンプンを有するものは、口腔投与におそらく最も適しており、12時間の送達に通常十分である。実施例1において製剤8(0029906)は、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが高レベルで、カルボマー974Pが低レベルであり、膣内投与におそらくより適した製剤であって、放出に日数がかかる。
【0046】
当業者は理解するごとく、実施例および好ましい実施態様は制限を意図するものでない。本発明は、いかなる活性成分および錠剤材料のいかなる組合せを含む錠剤に適用される。さらに、当業者は理解するごとく、本発明は、上記の錠剤の製造方法および医療的使用を包含するものである。
【0047】
表1:
【表1】

【0048】
表2:テストステロン溶解速度
バッチ:0069904
溶解器:ROTATING PADDLE 60 RPM/PLATINUM WIRE SPIRAL
【表2】

【0049】
表3:テストステロン溶解速度
バッチ:0049904
溶解器:ROTATING PADDLE 60 RPM/PLATINUM WIRE SPIRAL
【表3】

【0050】
表4:テストステロン溶解速度
バッチ:0029904
溶解器:ROTATING PADDLE 60 RPM/PLATINUM WIRE SPIRAL
【表4】

【0051】
表5:テストステロン溶解速度
バッチ:0019904
溶解器:ROTATING PADDLE 60 RPM/PLATINUM WIRE SPIRAL
【表5】





































【0052】
【表6】











【0053】
【表7】












【0054】
【表8】














【0055】
【表9】

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
徐放性の漸進性水和生物接着錠剤であって、下記:
有効量の活性成分、
約5ないし約50重量%のセルロース、
約0.5ないし約25重量%のデンプン、
約1ないし約50重量%のラクトース、
約0.5ないし約10重量%の水不溶性架橋ポリカルボン酸ポリマー、
約1ないし約75重量%の水溶性ポリマー、
を含む錠剤。
【請求項2】
該錠剤が少量で約50重量%の活性成分を含む、請求項1の錠剤。
【請求項3】
約1重量%のシリカをさらに含む、請求項2の錠剤。
【請求項4】
約0.5ないし約2重量%のタルクをさらに含む、請求項3の錠剤。
【請求項5】
約0.5ないし約1重量%のステアリン酸マグネシウムをさらに含む、請求項3の錠剤。
【請求項6】
該活性成分が、糖タンパク質、タンパク質、性ホルモン、抗ホルモン、硝酸エステル、ベータ−アゴニスト、ベータ−アンタゴニスト、オピオイド、オピオイド−アンタゴニスト、抗うつ剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、抗ヒスタミン剤、ACE阻害剤、プロスタグランジン、および水分、酵素、pHにより代謝または分解される他の活性成分よりなる群から選ばれる、請求項1または5の錠剤。
【請求項7】
該デンプンが約2ないし約10重量%で、該ラクトースが約8ないし約16重量%で、水不溶性ポリマーが約25ないし約35重量%で存在し、該活性成分を患者の膣腔を経て血流に送達されるのに該錠剤が適している、請求項5の錠剤。
【請求項8】
該デンプンが約14ないし約24重量%で、該ラクトースが約17ないし約27重量%で、水不溶性ポリマーが約5ないし約20重量%で存在し、該活性成分を患者の口腔を経て血流に送達されるのに該錠剤が適している、請求項5の錠剤。
【請求項9】
徐放性の漸進性水和生物接着錠剤であって、下記:
有効量の活性成分、
約2ないし約30重量%の結合剤、
約5ないし約40重量%のラクトース、
約1ないし約3重量%の水不溶性架橋ポリカルボン酸ポリマー、
約5ないし約50重量%の水溶性ポリマー、
を含む錠剤。
【請求項10】
約0.2ないし2重量%のシリカをさらに含む、請求項9の錠剤。
【請求項11】
約0.5ないし約2重量%のタルクをさらに含む、請求項10の口腔錠剤。
【請求項12】
約0.5ないし約2重量%のステアリン酸マグネシウムをさらに含む、請求項11の錠剤。
【請求項13】
該活性成分が、テストステロンであり、該テストステロンが約1ないし約30重量%の量で存在している、請求項11の口腔錠剤。
【請求項14】
該デンプンが約2ないし約10重量%で、該ラクトースが約8ないし約16重量%で、該水不溶性ポリマーが約25ないし約35重量%で存在し、該活性成分を患者の膣腔を経て血流に送達されるのに該錠剤が適している、請求項13の錠剤。
【請求項15】
該デンプンが約15ないし約24重量%で、該ラクトースが約17ないし約27重量%で、水不溶性ポリマーが約5ないし約20重量%で存在し、該活性成分を患者の口腔を経て血流に送達されるのに該錠剤が適している、請求項13の錠剤。
【請求項16】
活性成分をヒトに送達する方法であって、漸進性水和生物接着錠剤よる活性成分の徐放性投与を含む方法。
【請求項17】
生物接着錠剤が水不溶性・水膨潤性架橋ポリカルボン酸ポリマー、水溶性ポリマー、テストステロンを含む、請求項16の方法。
【請求項18】
虚血またはアルツハイマー病を治療または予防する方法であって、患者に医療的に有効量のテストステロンを徐放性の漸進性水和錠剤によって投与することを含む方法。
【請求項19】
生物接着錠剤が、水不溶性架橋ポリカルボン酸ポリマー、水溶性ポリマー、テストステロンを含む口腔錠である、請求項18の方法。
【請求項20】
生物接着錠剤が、水不溶性架橋ポリカルボン酸ポリマー、水溶性ポリマー、テストステロンを含む膣用錠である、請求項18の方法。
【請求項21】
活性成分を患者の血流に送達して健康状態を処置するための徐放性の漸進性生物接着錠剤であって、医療的に有効量の活性成分、水不溶性架橋ポリカルボン酸ポリマー、水溶性ポリマーを含む錠剤。
【請求項22】
活性成分を患者の血流に送達して健康状態を処置するための徐放性の漸進性生物接着錠剤の製造のために、活性成分を水不溶性架橋ポリカルボン酸ポリマーおよび水溶性ポリマーとともに使用すること。

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−248231(P2010−248231A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151682(P2010−151682)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願2000−565858(P2000−565858)の分割
【原出願日】平成11年8月24日(1999.8.24)
【出願人】(399055579)コロンビア・ラボラトリーズ・(バミューダ)・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】