説明

閉じ込め層を製造するための方法および材料、ならびにそれを使用して製造したデバイス

第1の層の上に、閉じ込められた第2の層を形成する方法を提供する。この方法は、第1の表面エネルギーを有する第1の層を形成し、続いて、第1の層を、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化エステルまたはフッ素化イミドである光硬化性界面活性組成物で処理するステップと;光硬化性界面活性組成物を放射線にパターン状に露光して、露光領域および未露光領域を得るステップと;光硬化性界面活性組成物を現像することで、未露光領域を除去して、未露光領域中の未処理部分および露光領域中の処理部分を有する第1の層を得るステップであって、処理部分が、第1の表面エネルギーよりも低い第2の表面エネルギーを有するステップと;第1の層の未処理部分上に第2の層を形成するステップとを含む。この方法によって製造された有機電子デバイスもまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、どちらも本明細書にその記載内容全体が参照として援用される2007年10月26日に出願された米国仮特許出願第60/982,927号明細書、および2008年5月16日に出願された米国仮特許出願第61/053,687号明細書の優先権を米国特許法第119(e)条に基づき主張する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に電子デバイスの製造方法に関する。特に、本開示は、さらに、本開示の方法によって製造されたデバイスに関する。
【0003】
多くの種類の電子装置中には、有機活性材料を利用する電子デバイスが存在する。このようなデバイスにおいては、2つの電極の間に有機活性層が挟まれている。
【0004】
電子デバイスの種類の1つに有機発光ダイオード(OLED)がある。OLEDは高電力変換効率および低加工費であるためにディスプレイ用途として有望である。このようなディスプレイは、携帯電話、携帯情報端末、携帯型パーソナルコンピュータ、およびDVDプレイヤなどの電池式携帯型電子デバイス用に特に有望である。これらの用途では、低電力消費以外に高情報量、フルカラー、および速いビデオ速度応答時間がディスプレイに要求される。
【0005】
フルカラーOLEDの製造における現在の研究は、費用対効果が大きく高生産性であるカラーピクセル製造方法の開発に向けられている。液処理によるモノクロディスプレイの製造の場合、スピンコーティング法が広く採用されている(たとえば、David Braun and Alan J.Heeger,Appl.Phys.Letters 58,1982(1991)を参照されたい)。しかし、フルカラーディスプレイの製造では、モノクロディスプレイの製造に使用される方法に対してある変更を行う必要がある。たとえば、フルカラー画像を表示するために、各表示ピクセルを3つのサブピクセルに分解され、そのそれぞれがディスプレイの三原色の赤、緑、および青の1つを発する。このようなフルカラーピクセルの3つのサブピクセルへの分割の結果、液体着色材料(すなわちインク)の拡散および色の混合を防止するために現行方法を修正する必要が生じた。
【0006】
インクを閉じ込めるためのいくつかの方法が文献に記載されている。これらは閉じ込め構造、表面張力の不連続性、およびこれら両方の組み合わせに基づいている。閉じ込め構造は、ピクセルのウェル、バンクなどの拡散の幾何学的な障害物である。効果的にするためには、これらの構造が、堆積される材料の湿潤厚さと同等の大きさとなる必要がある。これらの構造内に発光インクが印刷される場合、そのインクが構造表面をぬらし、そのためその構造付近で厚さの均一性が低下する。したがって、発光「ピクセル」領域の外側に移動させる必要があり、それによって動作中に不均一性が見えなくなる。ディスプレイ(特に高解像度ディスプレイ)上の空間は限られているため、これによってピクセルの利用可能な発光領域が減少する。実際の閉じ込め構造は、一般に、電荷注入層および電荷輸送層の連続層を堆積する場合の品質に悪影響を与える。この結果、すべての層を印刷する必要がある。
【0007】
さらに、低表面張力材料の印刷または気相堆積のいずれかが行われた領域が存在する場合には、表面張力の不連続性が生じる。これらの低表面張力材料は、一般に、ピクセル領域内に第1の有機活性層を印刷またはコーティングする前に塗布する必要がある。一般に、これらの処理を使用すると、連続的な非発光層をコーティングする場合に品質に影響が生じるので、すべての層を印刷する必要がある。
【0008】
2つのインク閉じ込め技術の併用の一例が、フォトレジストのバンク構造(ピクセルのウェル、チャネル)のCF4−プラズマ処理である。一般に、ピクセル領域内のすべての活性層を印刷する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらすべての閉じ込め方法は、連続コーティングの妨害となる欠点を有する。より多い生産量およびより低い設備費用を得ることができるので、1つまたは複数の層の連続コーティングが望まれる。したがって、電子デバイスの改善された形成方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の層上に、閉じ込められた第2の層を形成する方法であって:
第1の表面エネルギーを有する第1の層を形成するステップと;
第1の層を、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化エステル、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化イミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む光硬化性界面活性組成物で処理するステップと;
光硬化性界面活性組成物を放射線にパターン状に露光して、露光領域および未露光領域を得るステップと;
光硬化性界面活性組成物を現像することで、未露光領域の光硬化性界面活性組成物を除去して、未露光領域中の未処理部分および露光領域中の処理部分を有する第1の層を得るステップであって、処理部分が、第1の表面エネルギーよりも低い第2の表面エネルギーを有するステップと;
第1の層の未処理部分上に第2の層を形成するステップと
を含む方法を提供する。
【0011】
電極上に配置された第1の有機活性層および第2の有機活性層を含む有機電子デバイスの製造方法であって:
第1の表面エネルギーを有する第1の有機層を電極上に形成するステップと、
第1の有機層を、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化エステル、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化イミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む光硬化性界面活性組成物で処理するステップと;
光硬化性界面活性組成物を放射線にパターン状に露光して、露光領域および未露光領域を得るステップと;
光硬化性界面活性組成物を現像することで、未露光領域の光硬化性界面活性組成物を除去して、未露光領域中の未処理部分および露光領域中の処理部分を有する第1の有機活性層を得るステップであって、処理部分が、第1の表面エネルギーよりも低い第2の表面エネルギーを有するステップと;
第1の有機活性層の未処理部分上に第2の有機層を形成するステップと
を含む方法を提供する。
【0012】
電極上に配置された第1の有機活性層および第2の有機活性層を含み、パターン化された光硬化した界面活性組成物をさらに含む有機電子デバイスであって、前記第2の有機活性層が、光硬化した界面活性組成物が存在しない領域中にのみ存在し、前記光硬化した界面活性組成物が、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化エステル、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化イミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から製造される有機電子デバイスもまた提供する。
【0013】
以上の概要および以下の詳細な説明は、単に例示的および説明的なものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものではない。
【0014】
本明細書において提示される概念の理解をすすめるために、添付の図面において実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】接触角を説明する図である。
【図2】有機電子デバイスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
当業者であれば理解しているように、図面中の物体は、平易かつ明快にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。たとえば、実施形態を理解しやすいようにするために、図面中の一部の物体の寸法が他の物体よりも誇張されている場合がある。
【0017】
第1の層上に、閉じ込められた第2の層を形成する方法であって:
第1の表面エネルギーを有する第1の層を形成するステップと;
第1の層を、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化エステル、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化イミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む光硬化性界面活性組成物で処理するステップと;
光硬化性界面活性組成物を放射線にパターン状に露光して、露光領域および未露光領域を得るステップと;
光硬化性界面活性組成物を現像することで、未露光領域の光硬化性界面活性組成物を除去して、未露光領域中の未処理部分および露光領域中の処理部分を有する第1の層を得るステップであって、処理部分が、第1の表面エネルギーよりも低い第2の表面エネルギーを有するステップと;
第1の層の未処理部分上に第2の層を形成するステップと
を含む方法を提供する。
【0018】
多数の態様および実施形態を以上に説明してきたが、これらは単に例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が実現可能であることが、当業者には分かるであろう。
【0019】
いずれか1つまたは複数の本発明の実施形態のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明では、最初に、用語の定義および説明を扱い、続いて、光硬化性界面活性組成物、方法、有機電子デバイス、ならびに最後に実施例を扱う。
【0020】
1.用語の定義および説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0021】
層または材料について言及される場合の用語「活性」は、電子的または電気放射的(electro−radiative)性質を示す層または材料を意味することを意図している。電子デバイス中、活性材料は、デバイスの動作を電子的に促進する。活性材料の例としては、電子または正孔のいずれであってもよい電荷を伝導、注入、輸送、または遮断する材料、ならびに、放射線を受けた場合に、放射線を放出したり電子−正孔対の濃度変化を示したりする材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。不活性材料の例としては、平坦化材料、絶縁材料、および環境障壁材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
層について言及される場合の用語「閉じ込められた」は、層が印刷されるとき、閉じ込められない場合には広がろうとする自然な傾向を有するにもかかわらず、堆積される領域を大きく越えて広がらないことを意味することを意図している。この層は、表面エネルギーの作用、または表面エネルギーの作用と物理的障壁構造との組み合わせによって閉じ込めることができる。
【0023】
用語「電極」は、電子部品内のキャリアを移送するように構成された部材または構造を意味することを意図している。たとえば、電極は、アノード、カソード、コンデンサ電極、ゲート電極などであってよい。電極は、トランジスタ、コンデンサ、抵抗器、インダクタ、ダイオード、電子部品、電源、またはそれらのあらゆる組み合わせの一部を含むことができる。
【0024】
有機化合物に言及する場合の用語「フッ素化」は、その化合物中の1つまたは複数の水素原子がフッ素で置き換えられていることを意味することを意図している。この用語は、部分フッ素化材料および完全フッ素化材料を含んでいる。
【0025】
用語「層」は、用語「フィルム」と交換可能に使用され、所望の領域を覆うコーティングを意味する。この用語は大きさによって限定されない。この領域は、デバイス全体の大きさであってもよいし、実際の視覚的表示などの特殊な機能の領域の小ささ、または1つのサブピクセルの小ささであってもよい。層およびフィルムは、気相堆積、液相堆積(連続的技術および不連続技術)、および熱転写などの従来のあらゆる堆積技術によって形成することができる。層は、高度にパターン化されていてもよいし、全体的にパターン化されていてもよいし、パターン化されていなくてもよい。
【0026】
用語「液体組成物」は、材料が溶解して溶液を形成する液体媒体、材料が分散して分散液を形成する液体媒体、あるいは材料が懸濁して懸濁液またはエマルジョンを形成する液体媒体を意味することを意図している。
【0027】
用語「液体閉じ込め構造」は、工作物の内部または上の構造であって、そのような1つまたは複数の構造が、それ自体または集合的に、工作物上を液体が流れる時に、ある領域内または範囲内に液体を束縛または案内する主機能を果たす構造を意味することを意図している。液体閉じ込め構造としては、カソードセパレーターまたはウェル構造を挙げることができる。
【0028】
用語「液体媒体」は、純液体、複数の液体の組み合わせ、溶液、分散液、懸濁液、およびエマルジョンなどの液体材料を意味することを意図している。液体媒体は、1種類の溶媒が存在するか、複数の溶媒が存在するかとは無関係に使用される。
【0029】
用語「有機電子デバイス」は、1つまたは複数の有機半導体の層あるいは材料を含むデバイスを意味することを意図している。有機電子デバイスとしては:(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザー、または照明パネル)、(2)電子的過程を介して信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、光電管、赤外線(「IR」)検出器、またはバイオセンサー)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電力デバイスまたは太陽電池)、ならびに(4)1つまたは複数の有機半導体層を含む1つまたは複数の電子部品(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含むデバイス、ならびに項目(1)〜(4)のあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
用語「光硬化性」は、放射線に露光すると、表面への付着がより良くなる、または表面からの除去がより困難となる放射線感受性の組成物または層を意味することを意図している。
【0031】
用語「光硬化性界面活性組成物」は、少なくとも1つの光硬化性材料を含む組成物であって、層に塗布すると、その層の表面エネルギーが低下する組成物を意味することを意図している。この用語は「PCSA」と略記され、放射線に露光する前および露光した後の両方の組成物を意味する。
【0032】
用語「光硬化した界面活性組成物」は、層に成形され放射線に露光した後の光硬化性界面活性組成物を意味する。
【0033】
用語「ポリ酸」は、2つ以上の酸基を有する有機化合物を意味することを意図している。
【0034】
用語「放射する/放射」は、このような放射が放射線、波、または粒子のいずれの形態であるかとは無関係に、あらゆる形態の熱、電磁スペクトル全体、または亜原子粒子などのあらゆる形態のエネルギーを与えることを意味する。
【0035】
材料に言及する場合の用語「放射線感受性」は、放射線に露光すると、材料の少なくとも1つの化学的性質、物理的性質、または電気的性質が変化することを意味することを意図している。
【0036】
用語「表面エネルギー」は、材料から単位面積の表面を形成するために必要なエネルギーである。表面エネルギーの特徴の1つは、ある表面エネルギーを有する液体材料が、それより十分に低い表面エネルギーを有する表面をぬらさないということである。
【0037】
有機化合物に言及する場合の用語「不飽和」は、その化合物が少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有することを意味することを意図している。用語「α,β−不飽和」は、二重結合または三重結合が酸官能基と結合していることを意味することを意図している。
【0038】
本明細書において使用される場合、用語「〜の上」は、ある層、部材、または構造が、別の層、部材、または構造のすぐ隣にあったり接触していたりすることを必ずしも意味しない。介在する層、部材、または構造がさらに存在する場合がある。
【0039】
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素にのみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的なまたはを意味するのであって、排他的なまたはを意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)Bが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0040】
また、本発明の要素および成分を説明するために「a」または「an」も使用されている。これは単に便宜的なものであり、本発明の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形も含んでいる。
【0041】
元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition(2000−2001)に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0042】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料については以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特に明記しない限り、それらの記載内容全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。
【0043】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、光源、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0044】
2.光硬化性界面活性組成物
光硬化性界面活性組成物(「PCSA」)は放射線感受性組成物の1つである。放射線に露光すると、PCSAが反応して、放射線に露光していない材料よりも表面により良く付着するか、または表面からの除去がより困難となる材料を形成する。PCSAで処理することで、処理される材料の表面エネルギーが低下する。
【0045】
放射線は、PCSAに所望の物理的変化を生じさせるあらゆる種類の放射線であってよい。一実施形態においては、放射線は、赤外線、可視光線、紫外線、およびそれらの組み合わせから選択される。一実施形態においては、放射線は可視光線および紫外線から選択される。一実施形態においては、放射線は300〜450nmの範囲内の波長を有する。一実施形態においては、放射線は200〜300nmの範囲内の波長を有する深UV線である。別の一実施形態においては、紫外線は、300〜400nmの範囲内の幾分長い波長の紫外線である。別の一実施形態においては、放射線は400〜450nmの範囲内の波長を有する。
【0046】
ある実施形態においては、PCSAは溶媒から、または気相堆積によって塗布することができる。ある実施形態においては、PCSAは、塗布して処理された第1の層を形成した後での望ましくない蒸発を防止するのに十分低い蒸気圧を有する。ある実施形態においては、PCSAは、放射線がなければ、反応して現像できない化学種を形成することはない。
【0047】
PCSAは、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化エステルまたはフッ素化イミドを含む。それらの酸基は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。ある実施形態においては、ポリ酸はポリカルボン酸である。
【0048】
ある実施形態においては、ポリ酸は線状である。ある実施形態においては、ポリ酸は分岐している。ある実施形態においては、ポリ酸は2つ以上の不飽和単位を含有することができる。ある実施形態においては、ポリ酸は置換されている。ある実施形態においては、この置換によって、1つまたは複数の酸素原子が不飽和ポリ酸の炭化水素主鎖中に組み込まれる。ある実施形態においては、この置換は、不飽和ポリ酸の炭化水素主鎖のペンダント基である。ある実施形態においては、この置換はフッ素原子を含有する。ある実施形態においては、すべての酸基が1つまたは複数の不飽和基と結合している。ある実施形態においては、1つのみの酸基が不飽和基と結合している。
【0049】
ある実施形態においては、PCSAは少なくとも50%フッ素化されており、これは、炭素に結合した利用可能な水素原子の50%がフッ素で置き換えられていることを意味する。ある実施形態においては、PCSAは少なくとも60%フッ素化されており;ある実施形態においては、少なくとも70%フッ素化されている。ある実施形態においては、PCSAは、芳香族ではないα,β−不飽和ポリ酸のエステルまたはイミドである。非芳香族α,β−不飽和ポリ酸の例としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、2,2−ジメチル−4−メチレンペンタン二酸、ムコン酸、2−メチレングルタル酸、アコチン(acotinic)酸、アセチレンジカルボン酸、およびヘキサ−2−エン−4−イン二酸、およびメタクリル酸のオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。PCSAは、不飽和ポリ酸の1つまたは複数のフッ素化エステルまたはフッ素化イミド、あるいは不飽和ポリ酸のフッ素化エステルまたはフッ素化イミドとフッ素化不飽和一酸との組み合わせを含むことができる。
【0050】
ある実施形態においては、エステルはフッ素化アルコールRfOHを使用して形成される。Rf基は、4〜15個の炭素原子と、炭素原子鎖中に含まれる0〜5個のオキソ酸素原子と、少なくとも4個のフッ素原子とを有し、但し、OHを有する炭素原子上にはフッ素原子は存在しない。フッ素化アルコールは、線状または分岐であってよく、飽和または不飽和であってよい。ある実施形態においては、このアルコールは以下の式:
HO−(CR12)−(CH2s−{(CRa2-abt−(CR=CRObw}−CHc3-c
または
HO−(CR12)−CH[(CH2s−{(CRa2-abt−(CR=CRObw}−CHc3-c2
(式中、a、b、c、p、s、t、およびwは、出現するごとに同じまたは異なるものであり、整数であり、
a=0〜2であり
b=0〜1であり、
c=0〜3であり、
R=Hまたは(CHa2-apFであり、
1、R2=HまたはCp2p+1であり、
p=1〜3であり、
s=0〜5であり、
t=2〜15であり、
w=0〜2である)
の中の1つを有する。括弧{}内の基は任意の順序で配列することができる。ある実施形態においては、1≦s≦4である。ある実施形態においては、s=2または3である。ある実施形態においては、4≦t+w≦12である。ある実施形態においては、c=0である。ある実施形態においては、w=0または1である。ある実施形態においては、a=0。ある実施形態においては、R=HまたはCF3である。ある実施形態においては、R1=R2=H。ある実施形態においては、R1=R2=CH3である。
【0051】
フッ素化アルコールの一部の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:
【0052】
【化1】

【0053】
【化2】

【0054】
ある実施形態においては、アミドはフッ素化アミンRfNH2を使用して形成される。Rf基は、4〜15個の炭素原子と、炭素原子鎖中に含まれる0〜5個のオキソ酸素原子と、少なくとも4個のフッ素原子とを有し、但し、NH2を有する炭素原子上にはフッ素原子は存在しない。フッ素化アミンは、線状または分岐であってよく、飽和または不飽和であってよい。ある実施形態においては、このアミンは以下の式:
2N−(CR12)−(CH2s−{(CRa2-abt−(CR=CRObw}−CHc3-c
または
2N−(CR1)[−(CH2s−{(CRa2-abt−(CR=CRObw}−CHc3-c2
(上式中、a、b、c、s、t、およびwは、出現するごとに同じまたは異なるものであり、整数であり、
a=0〜2、
b=0〜1、
c=0〜3、
R=Hまたは(CHa2-apF、
1、R2=HまたはCp2p+1
p=1〜3、
s=0〜5、
t=2〜15、
w=0〜2)
の中の1つを有する。括弧{}内の基は任意の順序で配列することができる。ある実施形態においては、1≦s<4である。ある実施形態においては、s=2または3である。ある実施形態においては、4≦t+w≦12である。ある実施形態においては、c=0である。ある実施形態においては、w=0または1である。ある実施形態においては、a=0である。ある実施形態においては、R=HまたはCF3である。ある実施形態においては、R1=R2=Hである。ある実施形態においては、R1=R2=CH3である。
【0055】
アミンの一部の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:
【0056】
【化3】

【0057】
フッ素化アルコールおよびフッ素化アミンのさらなる例は、たとえば、J.Fluorine Chemistry 77(1996)193−194;J.Fluorine Chemistry 80(1996)135−144;ならびに米国特許第6,479,612号明細書および同第7,138,551号明細書に見ることができる。
【0058】
PCSAがエステルである場合、α,β−不飽和ポリ酸のすべての酸基がエステル化され、少なくとも1つの酸基がフルオロアルキル基でエステル化される。ある実施形態においては、α,β−不飽和ポリ酸のすべての酸基がフルオロアルキル基でエステル化される。
【0059】
PCSAがイミドである場合、α,β−不飽和ポリ酸のすべての酸基がイミド化され、少なくとも2つの酸基がフルオロアルキル基でイミド化される。ある実施形態においては、α,β−不飽和ポリ酸のすべての酸基がフルオロアルキル基でイミド化される。
【0060】
PCSAは、α,β−不飽和ポリ酸フッ素化エステルまたはフッ素化イミドと、α,β−不飽和一酸のフッ素化エステルあるいはフッ素化イミドまたはアミドとの組み合わせをさらに含むことができる。これらのエステル、アミド、およびイミドは、前述のアルコールおよびアミンから製造することができる。α,β−不飽和一酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−ヒドロキシメタクリル酸、およびα−クロロメタクリル酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
PCSA組成物は、安定剤、流動性向上剤、可塑剤、光開始剤、光ラジカル発生剤、および本明細書に記載の方法を向上させるために計画された他の成分などの補助剤をさらに含むことができる。
【0062】
ある実施形態においては、PCSAは、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)フマレート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)マレエート;ビス(3,3,4,4,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロ−5−オキサ−オクチル)マレエート;ビス(3,3,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクチル)マレエート;N−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシルマレイミド;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イタコネート;cis,cis−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)ムコネート;
【0063】
【化4】

【0064】
;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−ヘキサ−t−(E)−エン−4−イン−1,6−ジオエート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)アセチレンジカルボキシレート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−2−フェニルマレエート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−2−ベンジリデンマロネート;ビス(CH2CH2OCH2CH2OCF2C(H)FOC37)マレエート;ビス(CH2CH2OCF2C(H)FOC37)マレエート;ビス(CH2CH2CH2OCF2C(H)FOC37)マレエート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)1−トシルオキシエチレン−1,2−ジカルボキシレート;テトラ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)エチレンテトラカルボキシレート;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0065】
ある実施形態においては、PCSAを含有する層と接触する別の層中にフォトイニエーター(photoiniator)が存在する。光開始剤層は、PCSAの反応速度を増加させたり、および/または必要な放射線量を減少させたりすることができる。ある実施形態においては、光開始剤層が最初に形成され、光開始剤層と接触してPCSA層がその上に塗布される。ある実施形態においては、PCSA層と接触して光開始剤が上に塗布される。
【0066】
光開始剤は周知であり、PCSAと相互作用して硬化が起こる限り、およびデバイス性能に悪影響を与えない限りは、あらゆるそのような材料を使用することができる。フォトイニテーター(photoinitator)の種類の例としては、α−ヒドロキシケトン類、フェニルグリオキレート類、ケタール類、α−アミノケトン類、アシルホスフィン類、ホスフィンオキシド(phosphines oxide)類、メタロセン類、およびオニウム塩類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。複数の光開始剤の組み合わせおよび混合物を使用することもできる。Irgacure 184およびDarocur 1173(Ciba Corporationより市販される)が本発明に好適な2つの市販の光開始剤である。
【0067】
【化5】

【0068】
光開始剤層は、コーティング助剤およびバインダーなどの他の材料を含むことができる。ある実施形態においては、光開始剤層は、光開始剤から実質的になる。フォトイニテーター(photoinitator)層は、溶液堆積、気相堆積、および熱転写などのあらゆる周知の技術によって形成することができる。
【0069】
一般に、PCSA材料は、有機化学において周知のあらゆる技術を使用して製造することができる。
【0070】
放射線に露光したPCSAの領域と、放射線に露光していない領域との間の物理的差別化は、本明細書では以下「現像」と呼ばれるものであり、これはあらゆる周知の技術によって行うことができる。このような技術は、フォトレジスト分野において広範に使用されている。現像技術の例としては、熱および/または真空(蒸発)の使用、液体媒体での処理(洗浄)、吸収性材料での処理(吸い取り)、粘着性材料での処理などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
一実施形態においては、PCSAは、放射線に露光したときに下にある領域と反応する。この反応の厳密な機構は使用される材料に依存する。別の一実施形態においては、放射線照射によって、PCSAは、化学的に結合することはなく下にある層に付着する不揮発性または不溶性の材料を形成する。この場合も、この反応の厳密な機構は、使用される材料に依存する。放射線に露光した後、好適な現像手段によって未露光領域のPCSAが除去される。ある実施形態においては、RSAは未露光領域でのみ除去される。ある実施形態においては、PCSAは、露光領域においても部分的に除去され、それらの領域内ではより薄い層が残留する。ある実施形態においては、露光領域において残留するPCSAは50Å未満の厚さとなる。ある実施形態においては、露光領域中に残留するPCSAは、厚さが実質的に単層である。
【0072】
3.方法
本明細書に記載される方法においては、第1の層を形成し、第1の層を光硬化性界面活性組成物(「PCSA」)で処理し、PCSAを放射線に露光し、PCSAを現像してPCSAを未露光領域から除去することで、未露光領域中の未処理部分および露光領域中の処理部分を有する第1の層が得られる。処理部分は、第1の表面エネルギーよりも低い第2の表面エネルギーを有する。第2の層は、第1の層の未処理部分の上に接触して形成される。
【0073】
一実施形態においては、第1の層は基体である。基体は無機または有機であってよい。基体の例としては、ガラス、セラミック、ポリエステルフィルムおよびポリイミドフィルムなどのポリマーフィルム、金属、ならびに金属酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
一実施形態においては、第1の層は電極である。電極はパターン化されない場合もあるし、パターン化される場合もある。一実施形態においては、電極は、平行線でパターン化される。あるいは、電極は、正方形、長方形、円、三角形、楕円形などの平面図形状を有する構造のパターン化された配列であってよい。電極は基体上に存在することができる。
【0075】
一実施形態においては、第1の層は基体上に堆積される。第1の層はパターン化される場合もあるし、パターン化されない場合もある。一実施形態においては、第1の層は電子デバイス中の有機活性層である。一実施形態においては、有機活性層は正孔注入層または正孔輸送層である。
【0076】
一実施形態においては、第1の層は光開始剤層である。一実施形態においては、第1の層は、電子デバイス中の有機活性層の上にある光開始剤層である。
【0077】
第1の層は、気相堆積技術、液相堆積技術、および熱転写技術などのあらゆる堆積技術によって形成することができる。一実施形態においては、第1の層は液相堆積技術によって堆積され、続いて乾燥される。この場合、第1の材料が、液体媒体中に溶解または分散される。液相堆積方法は、連続的であっても不連続であってもよい。連続液相堆積技術としては、スピンコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不連続液相堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、第1の層は連続液相堆積技術によって堆積される。第1の材料および下にあるあらゆる材料が損傷しないのであれば、乾燥ステップを室温または高温で行うことができる。
【0078】
次に第1の層をPCSAで処理する。この処理は、第1の層の形成と同時またはその後に行うことができる。
【0079】
一実施形態においては、PCSA処理は、第1の有機活性層の形成と同時に行われる。第1の層を処理するステップは、PCSAを第1の層に堆積することを含む。一実施形態においては、PCSAは、第1の層の形成に使用される液体組成物に加えられる。堆積した組成物を乾燥させてフィルムを形成すると、第1の層の空気界面、すなわち上面において、系の表面エネルギーを低下させるのに十分なPCSAが存在する。一実施形態においては、PCSAは、第1の有機活性層の上面に向かって自然に移行する。
【0080】
一実施形態においては、PCSA処理は第1の層の形成の後に行われる。一実施形態においては、PCSAは、第1の層に直接接触して覆う別の層として塗布される。
【0081】
一実施形態においては、PCSAは、PCSAに溶媒を加えることなく塗布される。一実施形態においては、PCSAは気相堆積によって塗布される。
【0082】
一実施形態においては、PCSAは、凝縮法によって塗布される。PCSAが気相からの凝縮によって塗布され、表面層温度が蒸気凝縮中に高すぎる場合、PCSAは有機基体表面の孔隙および自由体積の中に移行しうる。ある実施形態においては、有機基体は、基体材料のガラス転移温度または溶融温度よりも低い温度に維持される。流動する液体または気体で冷却される表面上に第1の層を配置するなどのあらゆる周知の技術によって温度を維持することができる。
【0083】
一実施形態においては、PCSAを、凝縮ステップの前に仮支持体に塗布することで、PCSAの均一なコーティングが形成される。これは、液相堆積、気相堆積、および熱転写などのあらゆる堆積技術によって行うことができる。一実施形態においては、PCSAは、連続液相堆積技術によって仮支持体上に堆積される。PCSAを堆積するための液体媒体の選択は、PCSA自体の厳密な性質に依存する。液体媒体の例としては、パーフルオロオクタン、イソプロパノール、トリフルオロトルエン、1,1,1−トリクロロトリフルオロエタン、およびヘキサフルオロキシレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、材料はスピンコーティングによって堆積される。コーティングされた仮支持体は次に、加熱して凝縮ステップのための蒸気を形成するための供給源として使用される。
【0084】
PCSAの塗布は、連続方法またはバッチ方法のいずれかを使用して行うことができる。たとえば、バッチ方法では、1つまたは複数のデバイスにPCSAを同時にコーティングして、次に放射線源に同時に露光する。連続方法では、ベルトまたはその他の運搬装置上を移動するデバイスがステーションを通過し、そのときにデバイスがPCSAが順次コーティングされ、次にステーションを通過し続け、そこで放射線源に順次露光される。プロセスの一部が連続的であり、そのプロセスの他の部分がバッチ式であってよい。
【0085】
一実施形態においては、PCSAは室温において液体であり、液相堆積によって第1の層の上に塗布される。液体PCSAは、フィルム形成性であってよいし、あるいは第1の層の表面上に吸収または吸着されてもよい。一実施形態においては、液体PCSAは、第1の層の上に第2の層を形成するために、液体PCSAの融点よりも低温まで冷却される。一実施形態においては、PCSAは室温において液体ではなく、その融点よりも高い温度に加熱され、第1の層上に堆積され、室温まで冷却することで、第1の層の上に第2の層が形成される。液相堆積の場合、前述のあらゆる方法を使用することができる。
【0086】
一実施形態においては、PCSAは第2の液体組成物から堆積される。この液相堆積方法は、前述のように連続の場合も不連続の場合もある。一実施形態においては、PCSA液体組成物は連続液相堆積方法を使用して堆積される。PCSAを堆積するための液体媒体の選択は、PCSA材料自体の厳密な性質に依存する。
【0087】
PCSA処理後、PCSAを放射線に露光する。使用される放射線の種類は、前述したようにそのPCSAの感受性に依存する。露光はパターン状である。本明細書において使用される場合、用語「パターン状」は、材料または層の選択された部分のみが露光されることを意味する。パターン状露光は、あらゆる周知の画像形成技術を使用して行うことができる。一実施形態においては、パターンは、マスクを介して露光することで形成される。一実施形態においては、パターンは、ラスターレーザーで選択した部分のみを露光することによって形成される。露光時間は、使用されるPCSAの個別の化学的性質に依存して数秒から数分の間の範囲とすることができる。レーザーが使用される場合、レーザーの出力に依存して、個別の各領域ではるかに短い露光時間が使用される。露光ステップは、材料の感受性に依存して、空気中または不活性雰囲気中で行うことができる。
【0088】
一実施形態においては、連続処理および逐次処理を含めて、放射線は、紫外線(10〜390nm)、可視光線(390〜770nm)、赤外線(770−106nm)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態においては、放射線は深UV(200〜300nm)である。別の一実施形態においては、紫外線は300〜400nmの間の波長を有する。別の一実施形態においては、放射線は400〜450nmの間の波長を有する。一実施形態においては、放射線は熱放射である。一実施形態においては、放射線への露光が加熱によって行われる。この加熱ステップの温度および時間は、PCSAの少なくとも1つの物理的性質が変化し、発光領域の下にある層を全く損傷しないような温度および時間である。一実施形態においては、加熱温度は250℃未満である。一実施形態においては、加熱温度は150℃未満である。
【0089】
一実施形態においては、放射線は紫外線または可視光線である。一実施形態においては、放射線がパターン状に照射されて、その結果PCSAの露光区域およびPCSAの未露光区域が生じる。一実施形態においては、放射線は200〜300nmの波長を有する深UV線である。別の一実施形態においては、紫外線は300〜400nmの間の波長を有する。別の一実施形態においては、放射線は400〜450nmの間の波長を有する。
【0090】
放射線にパターン状に露光した後、PCSAを処理することで、層の未露光区域のPCSAが除去される。放射線へのパターン状露光および処理によるPCSAの未露光区域空の除去は、フォトレジスト技術分野において周知である。
【0091】
一実施形態においては、PCSAを放射線に露光することによって、PCSAの溶媒に対する溶解性または分散性が低下する。露光ステップの後には湿式現像処理を行うことができる。通常、この処理は、PCSAの未露光領域を溶解、分散、または剥離する溶媒で洗浄するステップを含む。
【0092】
一実施形態においては、PCSAを放射線に露光することによって、露光領域中のPCSAの揮発性が低下する反応が生じる。露光をパターン状に行った後、熱現像処理を行うことで、未露光領域から蒸発させることができる。この処理は、未露光材料の揮発温度または昇華温度より高く、材料が熱硬化性となる温度より低い温度に加熱するステップを含む。たとえば、重合性モノマーの場合、その材料は昇華温度より高く、熱重合温度よりも低い温度に加熱される。揮発温度に近いまたはこれより低い熱反応性温度を有するPCSA材料は、この方法では現像できない場合があることは理解されよう。
【0093】
一実施形態においては、PCSAを放射線に露光することによって、その材料が溶解、軟化、または流動する温度が変化する。露光に続いて乾式現像処理を行うことができる。乾式現像処理の1つは、要素の最外面を吸収剤と接触させて、より柔らかい部分を吸収または吸い取るステップを含むことができる。元の未露光領域の性質にさらなる影響を与えないのであれば、この乾式現像は高温で行うことができる。
【0094】
一実施形態においては、PCSAを放射線に露光することによって、PCSA材料の揮発性が低下する。
【0095】
PCSAで処理し、放射線に露光し、現像した後、PCSAが除去されている未露光領域中の第1の層は、光硬化したPCSAが残留する領域よりも高い表面エネルギーを有する。
【0096】
相対表面エネルギーの測定方法の1つは、PCSAによる処理の前後で、第1の有機活性層上の所与の液体の接触角を比較することである。本明細書において使用される場合、用語「接触角」は、図1に示される角度Φを意味することを意図している。液体媒体の液滴の場合、角度Φは、表面の面と、液滴の外側端部から表面までの線との交差部分によって定義される。さらに、角度Φは、液滴が塗布された後に表面上で平衡位置に達した後で測定される、すなわち「静的接触角」である。さまざまな製造者が、接触角を測定可能な装置を製造している。
【0097】
一実施形態においては、本明細書に記載されるような光硬化したPCSAは、アニソールとの接触角が60°を超え;ある実施形態においては70°を超える。ある実施形態においては、より小さい接触角が許容され、アニソールとの接触角が30°〜60°の間である。
【0098】
次に、第2の層が、第1の層の未処理領域の上に接触して塗布される。第2の層は、あらゆる堆積技術によって塗布することができる。一実施形態においては、第2の層は液相堆積技術によって塗布される。この場合、液体組成物は、液体媒体中に溶解または分散させた第2の材料を含み、第1の層の未処理領域の上に塗布され、乾燥させることで、第2の層が形成される。この液体組成物は、第1の層の処理領域(光硬化したPCSA)の表面エネルギーよりは高いが未処理の第1の層の表面エネルギーとほぼ同じかそれ未満の表面エネルギーを有するように選択される。したがって、液体組成物は、現像によってPCSAが除去された未露光領域中の第1の層をぬらすが、露光領域中の処理された第1の層からははじかれる。液体は、処理された第1の層の領域上で広がることができるが、ぬらすことはない。
【0099】
一実施形態においては、PCSAがパターン化され、第2の層は連続液相堆積技術を使用して塗布される。一実施形態においては、第2の層は不連続液相堆積技術を使用して塗布される。
【0100】
一実施形態においては、第1の層は、液体閉じ込め構造の上に塗布される。完全な閉じ込めには不十分であるが、印刷した層の厚さの均一性は依然として調整可能となる構造を使用することが望ましい場合がある。この場合、厚さ調節構造の上のぬれを制御でき、閉じ込めおよび均一性の両方が得られることが望ましい場合がある。その後、発光インクの接触角を調節できることが望ましい。閉じ込めに使用される大部分の表面処理(たとえば、CF4プラズマ)では、このレベルの制御が行えない。
【0101】
一実施形態においては、第1の層が、いわゆるバンク構造の上に塗布される。バンク構造は、典型的にはフォトレジスト、有機材料(たとえば、ポリイミド)、または無機材料(酸化物、窒化物など)から形成される。バンク構造は、液体の形態の第1の層を閉じ込めて色の混合を防止するため、および/または液体の形態から乾燥するときの第1の層の厚さの均一性を改善するため、および/または下にある特徴を液体との接触から保護するために使用することができる。このような下にある特徴としては、導電性トレース、導電性トレース間の間隙、薄膜トランジスタ、電極などを挙げることができる。2つ以上の目的(たとえば、色の混合の防止、さらに厚さの均一性の改善)を実現するために複数の異なる表面エネルギーを有するバンク構造上に領域を形成することが望ましいことが多い。その方法の1つは、各層が異なる表面エネルギーを有する複数の層を有するバンク構造を形成することである。この表面エネルギーの調節を行うための費用対効果のより大きい方法は、PCSAを硬化させるために使用される放射線を調節することによって表面エネルギーを制御することである。この硬化放射線の調節は、エネルギー投与量(出力×露光時間)の形態であってもよいし、あるいは異なる表面エネルギーをシミュレートするフォトマスクパターンを介したPCSAの露光(たとえば、ハーフトーン密度マスクを介した露光)によるものであってもよい。
【0102】
本明細書において提供される方法の一実施形態においては、第1および第2の層は有機活性層である。第1の有機活性層が第1の電極の上に形成され、第1の有機活性層が光硬化性界面活性組成物によって処理されて層の表面エネルギーを低下させ、第2の有機活性層が、処理された第1の有機活性層の上に形成される。
【0103】
一実施形態においては、第1の有機活性層は、第1の有機活性材料と液体媒体とを含む液体組成物の液相堆積によって形成される。この液体組成物が第1の電極上に堆積され、続いて乾燥させることで層が形成される。一実施形態においては、第1の有機活性層は、連続液相堆積方法によって形成される。このような方法では、歩留まりが高くなり設備費が低くなる場合がある。
【0104】
一実施形態においては、PCSAは第2の液体組成物から堆積される。この液相堆積方法は、前述のように連続の場合もあるし不連続の場合もある。一実施形態においては、PCSA液体組成物は連続液相堆積方法を使用して堆積される。
【0105】
PCSAが独立した層として堆積される場合、光硬化したPCSAの厚さは、その材料の最終的な用途に依存しうる。ある実施形態においては、光硬化したPCSA層の厚さは100Å未満である。ある実施形態においては、厚さは10Å未満である。ある実施形態においては、光硬化したPCSA層の厚さは少なくとも100Åである。ある実施形態においては、厚さは100〜3000Åの範囲内であり、ある実施形態では1000〜2000Åの範囲内である。
【0106】
4.有機電子デバイス
本発明の方法を、電子デバイスにおける使用に関してさらに説明するが、本発明の方法がそのような使用に限定されるものではない。
【0107】
図2は、代表的な電子デバイスの有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであり、2つの電気接触層の間に配置された少なくとも2つの有機活性層を含む。電子デバイス100は、アノード層110から光活性層140への正孔の注入を促進するための1つまたは複数の層120および130を含む。一般に、2つの層が存在する場合、アノードに隣接する層120は正孔注入層または緩衝層と呼ばれる。光活性層に隣接する層130は正孔輸送層と呼ばれる。場合により電子輸送層150が光活性層140とカソード層160との間に配置される。有機層120から150は、個別におよび集合的にデバイスの有機活性層と呼ばれる。デバイス100の用途に依存するが、光活性層140は、印加電圧によって励起する発光層(発光ダイオード中または発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を使用してまたは使用せずに信号を発生する材料層(光検出器中など)であってよい。本発明のデバイスは、システム、駆動方法、および利用形態に関しては限定されない。
【0108】
マルチカラーデバイスの場合、光活性層140は、少なくとも3つの異なる色の異なる領域で構成される。異なる色の領域は、別々の着色領域を印刷することによって形成することができる。あるいは、層全体を形成し、異なる色の発光材料を層の異なる領域にドープすることによって形成することができる。このような方法は、たとえば米国特許出願公開第2004−0094768号明細書に記載されている。
【0109】
一実施形態においては、本明細書に記載される新規方法は、有機層(第2の層)を電極層(第1の層)に塗布するために使用することができる。一実施形態においては、第1の層がアノード110であり、第2の層が緩衝層120である。
【0110】
ある実施形態においては、本明細書に記載される新規方法は、デバイス中のあらゆる連続する有機層の組に使用されることができ、第2の層が特定の領域内に閉じ込められる。電極上に配置された第1の有機活性層および第2の有機活性層を含む有機電子デバイスの製造方法は:
第1の表面エネルギーを有する第1の有機層を電極上に形成するステップと、
第1の有機層を、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化エステル、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化イミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む光硬化性界面活性組成物で処理するステップと;
光硬化性界面活性組成物を放射線にパターン状に露光して、露光領域および未露光領域を得るステップと;
光硬化性界面活性組成物を現像することで、未露光領域の光硬化性界面活性組成物を除去して、未露光領域中の未処理部分および露光領域中の処理部分を有する第1の有機活性層を得るステップであって、処理部分が、第1の表面エネルギーよりも低い第2の表面エネルギーを有するステップと;
第1の有機活性層の未処理部分上に第2の有機層を形成するステップとを含む。
【0111】
新規方法のある実施形態においては、第1および第2の有機層はデバイス中の有機活性層である。本発明の新規方法の一実施形態においては、第2の有機層が光活性層140であり、第1の有機活性層は、層140の直前に塗布されるデバイス層である。多くの場合、デバイスはアノード層から始まって製造される。正孔輸送層130が存在する場合、光活性層140が塗布される前に、PCSA処理が層130に施されるであろう。層130が存在しなかった場合、PCSA処理は層120に施されるであろう。カソードから始まってデバイスが製造された場合、光活性層140が塗布される前に、PCSA処理が電子輸送層150に施されるであろう。
【0112】
新規方法の一実施形態では、第1の有機層は光開始剤を含み、第2の有機層は光活性層である。
【0113】
新規方法の一実施形態では、第2の有機層は正孔輸送層130であり、第1の有機層は、層130の直前に塗布されるデバイス層である。デバイスがアノード層から始めて構成される実施形態においては、PCSA処理は、正孔輸送層130を塗布する前に緩衝層120に対して行われる。
【0114】
一実施形態においては、アノード110は平行なストライプのパターンで形成される。あるいは、電極は、正方形、長方形、円、三角形、楕円形などの平面図形状を有する構造のパターン化された配列であってよい。緩衝層120、および場合により正孔輸送層130は、アノード110の上に連続層として形成される。PCSA処理は層130(存在する場合)または層120(層130が存在しない場合)に対して行われる。PCSAは、アノード材料とアノード材料の外側端部との間の領域が露光するようなパターンで露光される。
【0115】
デバイス中の他の層は、そのような層が果たすべき機能を考慮することによってそのような層に有用であることが知られているあらゆる材料でできていてよい。本発明のデバイスは、アノード層110またはカソード層150に隣接することができる支持体または基体(図示せず)を含むことができる。ほとんどの場合、支持体はアノード層110に隣接している。支持体は、可撓性の場合も剛性の場合もあるし、有機の場合も無機の場合もある。一般に、ガラスまたは可撓性有機フィルムが支持体として使用される。アノード層110は、カソード層160よりも正孔の注入が効率的な電極である。アノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合酸化物を含有する材料を含むことができる。好適な材料としては、2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)の混合酸化物、11族元素、4族、5族、および6族の元素、ならびに8〜10族の遷移元素が挙げられる。アノード層110を光透過性にするためには、インジウム・スズ酸化物などの12族、13族、および14族の元素の混合酸化物を使用することができる。本明細書において使用される場合、語句「混合酸化物」は、2族元素、あるいは12族、13族、または14族の元素から選択される2つ以上の異なる陽イオンを有する酸化物を意味する。アノード層110の材料の一部の非限定的な具体例としては、インジウム・スズ酸化物(「ITO」)、インジウム・亜鉛酸化物、アルミニウム・スズ酸化物、アルミニウム・亜鉛酸化物、金、銀、銅、およびニッケルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アノードは、ポリアニリン、ポリチオフェン、またはポリピロールなどの有機材料を含むこともできる。
【0116】
アノード層110は、化学蒸着法または物理蒸着法、あるいはスピンキャスト法によって形成することができる。化学蒸着は、プラズマ化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として行うことができる。物理蒸着としては、イオンビームスパッタリングなどのスパッタリング、ならびにeビーム蒸発、および抵抗蒸発のあらゆる形態を挙げることができる。物理蒸着の具体的な形態としては、高周波マグネトロンスパッタリング、および誘導結合プラズマ物理蒸着(「IMP−PVD」)が挙げられる。これらの堆積技術は、半導体製造分野においては周知である。
【0117】
通常、アノード層110は、リソグラフィ作業中にパターン化される。このパターンは、希望に応じて変更することができる。これらの層は、第1の電気接触層材料を塗布する前に、第1の可撓性複合バリア構造上にパターンニングされたマスクまたはレジストを配置することなどによってパターンを形成することができる。あるいは、これらの層は、全体の層として塗布することができ(ブランケット堆積とも呼ばれる)、続いて、たとえば、パターン化されたレジスト層と湿式化学エッチングまたはドライエッチング技術とを使用してパターン化することができる。当該技術分野において周知の他のパターニング方法を使用することもできる。電子デバイスがアレイ内に配置される場合、典型的にはアノード層110は、実質的に同方向に延在する長さを有する実質的に平行なストリップに成形される。
【0118】
緩衝層120は、光活性層中への正孔の注入を促進し、デバイス中の短絡を防止するためにアノード表面を滑らかにする機能を果たす。典型的には緩衝層は、プロトン酸がドープされることが多いポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリマー材料で形成される。プロトン酸は、たとえば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。緩衝層120は、銅フタロシアニンやテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷輸送化合物などを含むことができる。一実施形態においては、緩衝層120は、導電性ポリマーとコロイド形成性ポリマー酸との分散体から作製される。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書および米国特許出願公開第2004−0127637号明細書に記載されている。
【0119】
緩衝層120はあらゆる堆積技術によって塗布することができる。一実施形態においては、この緩衝層は、前述のような溶液堆積法によって塗布される。一実施形態においては、この緩衝層は連続溶液堆積法によって塗布される。
【0120】
任意選択の層130の正孔輸送材料の例は、たとえば、Y.WangによりKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.18,p.837−860,1996にまとめられている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子としては:4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。一般に使用される正孔輸送ポリマーとしては、限定するものではないが、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)、ポリアニリン、およびポリピロールが挙げられる。ポリスチレンやポリカーボネートなどのポリマー中に上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって正孔輸送ポリマーを得ることもできる。ある実施形態においては、正孔輸送材料は、架橋性のオリゴマー材料またはポリマー材料を含む。正孔輸送層を形成した後、材料を放射線で処理することで架橋させる。ある実施形態においては、放射線が熱放射である。
【0121】
正孔輸送層130は、あらゆる堆積技術によって塗布することができる。一実施形態においては、正孔輸送層は、前述のような溶液堆積法によって塗布される。一実施形態においては、正孔輸送層は連続溶液堆積法によって塗布される。
【0122】
限定するものではないが、小分子有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、およびそれらの混合物などのあらゆる有機エレクトロルミネッセンス(「EL」)材料を、光活性層140中に使用することができる。蛍光化合物の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;ペトロフ(Petrov)らの米国特許第6,670,645号明細書、ならびに国際公開第03/063555号パンフレットおよび国際公開第2004/016710号パンフレットに開示されるような、フェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子、またはフェニルピリミジン配位子を有するイリジウムの錯体などのシクロメタレート化イリジウムおよび白金エレクトロルミネッセンス化合物、ならびに、たとえば、国際公開第03/008424号パンフレット、国際公開第03/091688号パンフレット、および国際公開第03/040257号パンフレットに記載されているような有機金属錯体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電荷輸送ホスト材料と金属錯体とを含むエレクトロルミネッセンス発光層が、Thompsonらによる米国特許第6,303,238号明細書、ならびにBurrowsおよびThompsonによる国際公開第00/70655号パンフレットおよび国際公開第01/41512号パンフレットに記載されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
光活性層140は、あらゆる堆積技術によって塗布することができる。一実施形態においては、光活性層は、前述のような溶液堆積法によって。一実施形態においては、光活性層は連続溶液堆積法によって塗布される。
【0124】
任意選択の層150は、電子の注入/輸送の両方を促進する機能を果たす場合もあるし、層界面における消光反応を防止する閉じ込め層として機能する場合もある。より具体的には、層150は、電子の移動を促進し、この層がなければ層140および160が直接接触する場合の消光反応の可能性を減少させることができる。任意選択の層150の材料の例としては、金属キレート化オキシノイド化合物(たとえば、Alq3など);フェナントロリン系化合物(たとえば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DDPA」)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DPA」)など);アゾール化合物(たとえば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(「PBD」など)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(「TAZ」など);他の類似の化合物;ならびにそれらの1つまたは複数のあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、任意選択の層150は無機であってよく、BaO、LiF、Li2Oなどを含むことができる。
【0125】
カソード層160は、電子または負電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。カソード層160は、第1の電気接触層(この場合、アノード層110)よりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。一実施形態においては、用語「低い仕事関数」は、約4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味することを意図している。一実施形態においては、「高い仕事関数」は、少なくとも約4.4eVの仕事関数を有する材料を意味することを意図している。
【0126】
カソード層の材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Rb、Cs,)、2族金属(たとえば、Mg、Ca、Baなど)、12族金属、ランタニド(たとえば、Ce、Sm、Euなど)、およびアクチニド(たとえば、Th、Uなど)から選択することができる。アルミニウム、インジウム、イットリウム、およびそれらの組み合わせなどの材料を使用することもできる。カソード層160の材料の非限定的な具体例としては、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユウロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、ならびにそれらの合金および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
通常、カソード層160は、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。
【0128】
別の実施形態においては、追加層が有機電子デバイス内に存在することができる。
【0129】
デバイスがアノード側から始まって製造される場合、本明細書に記載の新規方法のPCSA処理ステップは、アノード110の形成後、緩衝層120の形成後、正孔輸送層130の後、またはそれらのあらゆる組み合わせで行うことができる。デバイスがカソード側から始まって製造される場合、本明細書に記載の新規方法のPCSA処理ステップは、カソード160の形成後、電子輸送層150の形成後、またはそれらのあらゆる組み合わせで行うことができる。
【0130】
種々の層はあらゆる好適な厚さを有することができる。無機アノード層110は通常約500nm以下、たとえば約10〜200nmであり;緩衝層120および正孔輸送層130はそれぞれ通常約250nm以下、たとえば約50〜200nmであり;光活性層140は通常約1000nm以下、たとえば約50〜80nmであり;任意選択の層150は通常約100nm以下、たとえば約20〜80nmであり;カソード層160は通常約100nm以下、たとえば約1〜50nmである。アノード層110またはカソード層160が少なくとも一部の光を透過する必要がある場合、そのような層の厚さは約100nmを超えないほうがよい。
【実施例】
【0131】
本明細書に記載される概念を以下の実施例でさらに説明するが、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0132】
実施例1
実施例1では、正孔輸送ポリマーの第1の層上に本明細書に記載のPCSAから形成された中間フィルムの高い表面エネルギーを示す。
【0133】
このPCSAは、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)フマレート(「PCSA−1」)であった。この材料の合成は実施例12に示す。
【0134】
正孔輸送ポリマーは、トリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」であった。
【0135】
30mmのガラスクーポンに、トルエン中のHT−1の0.35wt/vol%溶液をスピンコーティングし;得られたフィルムを次に275℃で30分間硬化させた。パーフルオロオクタン中のPCSA−1の5wt/vol%溶液を次に正孔輸送層表面上にスピンコーティングした(600rpm、60秒)。得られたクーポンを次に248nmの波長の紫外光に2.7J/cm2の露光線量で露光し;これをホットプレート上に置き、175℃で120秒間焼き付けした後、室温まで冷却した。ウエハ表面を数ミリリットルのパーフルオロオクタンで洗浄し、室温で乾燥させた。この表面上のアニソールとの接触角を測定すると、65〜69°の前進角および48〜51°の後退角の結果が得られた。HT−1単独のフィルムをパーフルオロオクタンで洗浄し乾燥させて、アニソールとの接触角を測定すると約15°であり、PCSA−1処理層よりもはるかに小さかった。
【0136】
実施例2
この実施例では、本明細書に記載のPCSAの蒸発挙動と、比較例の放射線感受性材料でありSigma−Aldrich Co.(St.Louis,MO)より入手可能な3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12−ヘンエイコサフルオロアクリル酸ドデシル(H2C=CHCO2CH2CH2(CF29CF3)、(「PDEA」)の蒸発挙動との比較を示す。
【0137】
サンプルのPCSA−1およびPDEA(比較例)をアルミニウムパン中に入れ、Q600 TGA(TA Instruments(Delaware,USA))中25℃で蒸発させた。パージガスの流量は100ml/分であった。蒸発速度は以下に示す通りである:
PCSA−1:0.009マイクログラム/分
PDEA(比較例):0.8マイクログラム/分
これは、PCSA−1は周囲温度においてはるかに遅く蒸発し、加工のためにより長い時間が得られることを示している。
【0138】
実施例3
この実施例では、第1の層の形成と同時に行われるPCSAによる処理を示す。
溶液A:100%HT−1
溶液B:40%PCSA−1/60%HT−1
すべての溶液は、トルエン中0.33%(固形分重量/溶媒体積)で調製した。これらの溶液をホウケイ酸ガラスクーポン上にスピンコーティングして、厚さ約20nmの乾燥コーティングを得た。これら2つの溶液をコーティングしたクーポンに248nmの波長の紫外線を2.7J/cm2の線量で露光した。PCSAの現像ステップは、窒素雰囲気下のオーブン中275℃で30分間クーポンを焼き付けることによって行った。これによって未露光領域中のPCSA−1が除去され、HT−1が熱架橋する。得られたフィルムの接触角を、アニソールを試験流体として使用し、±2度の不確かさで測定した:
露光=0J/cm2
溶液Aから得たフィルムの接触角:7度
溶液Bから得たフィルムの接触角:9度
露光 約2.7J/cm2
溶液Aから得たフィルムの接触角:8度
溶液Bから得たフィルムの接触角:32度
未露光サンプルと、2.7J/cm2に露光した溶液Aから得たフィルムとの間に有意差はない。PCSA−1を含有するフィルムは、露光後にはるかに大きい接触角を有した。これは、PCSA−1をHT−1に加えることで、放射線に露光した場合に表面エネルギーの永久的な変化が生じるフィルムが得られることを示している。PCSAは、放射線に露光していない領域中で除去することができる。
【0139】
実施例4
この実施例では、オキソ置換フルオロアルキルアルコールのマレイン酸エステルであるビス(3,3,4,4,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロ−5−オキソ−オクチル)マレエート(「PCSA−2」)の合成を示す。
【0140】
【化6】

【0141】
撹拌棒、熱電対、Dean−Starkトラップ、および冷却器を取り付けた250mLの4口丸底フラスコにPPVE−OH(17.8g、0.054mol)、トルエン(100mL)、MAn(2.6g、0.027mol)、およびp−トルエンスルホン酸(0.50g、0.0027mol)を加えると、無色混合物が得られた。この混合物を加熱還流すると混合物が均一になり、加熱を終夜続けた。水をDean Starkトラップから除去した。2日間の還流後、反応のワークアップを、酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(35mL)で洗浄することによって行った。これに続き、飽和NaCl水溶液(35mL)で1回洗浄した。1つにまとめた水性洗液を酢酸エチル(50mL)で抽出し、1つにまとめたそれらの有機画分をMgSO4上で終夜乾燥させた。乾燥させた有機層を濾過し、溶媒を減圧下35℃において除去すると、オフホワイトの油が得られた。1H、13C、および19F NMRにより生成物の大部分が所望の生成物であることが示され、TGAにより生成物全体が揮発性であることが示された。
【0142】
実施例5
この実施例では、正孔輸送層上の、ビス(3,3,4,4,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロ−5−オキソ−オクチル)マレエートから形成した中間フィルムの接触角測定を示す。
【0143】
正孔輸送層は、実施例1に記載のように調製したトリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」であった。パーフルオロオクタン中の実施例4で得たPCSA−2の5wt/vol%溶液を次に、正孔輸送層の表面上にスピンコーティングした(1200rpm、60秒)。得られたクーポンを次に、248nmの波長の紫外光に15分間露光すると、1.35J/cm2の露光線量となった。これを次にホットプレート上に置き、175℃で300秒間焼き付けした後、室温まで冷却した。Rome−Hart接触角ゴニオメーターを使用して、この表面上でのアニソールとの前進接触角を測定すると62〜72°の結果が得られた。HT−1単独のフィルムをパーフルオロオクタンで洗浄し乾燥させた場合、アニソールとの接触角を測定すると約15°となり、処理した層よりもはるかに小さかった。
【0144】
実施例6
この実施例では、中断(interrupted)フルオロアルキルアルコールのマレイン酸エステルであるビス(3,3,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクチル)マレエート(「PCSA−3」)の合成を示す。
【0145】
【化7】

【0146】
撹拌棒、熱電対、Dean−Starkトラップ、および冷却器を取り付けた250mLの4口丸底フラスコに、C4IVDF−OH(17.8g、0.054mol)、トルエン(100mL)、MAn(2.6g、0.027mol)、およびp−トルエンスルホン酸(0.50g、0.0027mol)を加えると、無色混合物が得られた。この混合物を加熱還流すると混合物が均一になり、加熱を終夜続けた。水をDean Starkトラップから除去した。2日間の還流後、反応のワークアップを、酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(3×35mL)で洗浄することによって行った。これに続き、飽和NaCl水溶液(35mL)で1回洗浄した。1つにまとめた水性洗液を酢酸エチル(50mL)で抽出し、1つにまとめたそれらの有機画分をMgSO4上で終夜乾燥させた。乾燥させた有機層を濾過し、乾燥させた有機層を濾過し、溶媒を減圧下35℃において除去すると、淡黄色油が得られた。1H、13C、および19F NMRにより生成物の大部分が所望の生成物であることが示され、TGAにより生成物全体が揮発性であることが示された。
【0147】
実施例7
この実施例では、正孔輸送層上の、ビス(3,3,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクチル)マレエートから形成したフィルムに対する接触角測定を示す。
【0148】
正孔輸送層は、実施例1に記載のように調製したトリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」であった。パーフルオロオクタン中の実施例6で得たPCSA−3の5wt/vol%溶液を次に、正孔輸送層の表面上にスピンコーティングした(1200rpm、60秒)。得られたクーポンを次に、248nmの波長の紫外光に15分間露光すると、1.35J/cm2の露光線量となった。これを次にホットプレート上に置き、175℃で300秒間焼き付けした後、室温まで冷却した。Rome−Hart接触角ゴニオメーターを使用して、この表面上でのアニソールとの前進接触角を測定すると31〜35°の結果が得られた。HT−1単独のフィルムをパーフルオロオクタンで洗浄し乾燥させた場合、アニソールとの接触角を測定すると約15°となり、処理した層よりもはるかに小さかった。
【0149】
実施例8
この実施例は、正孔輸送層上の、N−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシルマレイミド(「PCSA−4」)から形成したフィルムに対する接触角測定を示す。PCSA−4は、Aldrich Chemical(St.Louis,MO)を経由してFluka Chemicalから購入した[852527−40−3]。
【0150】
【化8】

【0151】
正孔輸送層は、実施例1に記載のように調製したトリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」であった。イソプロパノール中のPCSA−4の飽和溶液を次に、正孔輸送層の表面上にスピンコーティングした(600rpm、60秒)。得られたクーポンを次に、248nmの波長の紫外光に30分間露光すると、2.7J/cm2の露光線量となった。これを次にホットプレート上に置き、175℃で300秒間焼き付けした後、室温まで冷却した。Rome−Hart接触角ゴニオメーターを使用して、この表面上でのアニソールとの前進接触角を測定すると77−80°の結果が得られた。HT−1単独のフィルムをパーフルオロオクタンで洗浄し乾燥させた場合、アニソールとの接触角を測定すると約15°となり、処理した層よりもはるかに小さかった。
【0152】
実施例9
この実施例では、置換フルオロアルキルアルコールのイタコン酸エステルであるビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イタコネート(「PCSA−5」)の合成を示す。
【0153】
【化9】

【0154】
1Lの3口丸底フラスコに、塩化イタコニル(19.139g、0.114mol)(Aldrich)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタノール(83.462g、0.229mol)、およびTHF(130mL)を加えた。混合物を氷浴で冷却した。冷却した溶液に、添加漏斗からDiPEA(29.59g、0.229mol)を滴下すると、すぐに暗褐色になった。混合物を室温で終夜撹拌した。アンモニウム塩を濾過により除去し、濾液を減圧下で濃縮して溶媒を除去した。得られた暗褐色生成物を昇華ユニット中に入れ、次に発泡が停止するまで注意深く真空に引いた。次にこれを液体窒素で冷却したコールドフィンガー上に60°で昇華させ、白色固体を得た。コールドフィンガー上に集められた白色固体をアセトンでバイアル中に洗い落とし、次に真空下で乾燥させた。回収した全生成物は18.46gまたは20%であった。1H NMRより、非常に少量の不純物を有する所望の生成物であることが分かった。
【0155】
実施例10
この実施例では、正孔輸送層上の、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イタコネートから形成したフィルムに対する接触角測定を示す。
【0156】
【化10】

【0157】
正孔輸送層は、実施例1に記載のように調製したトリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」であった。粗PCSA−5(パーフルオロオクタン中)および実施例9で得た昇華させたPCSA−5(イソプロパノール中)の両方の溶液(3%(wt/vol))を調製した。溶液を次に、2つの別々の正孔輸送層の表面上にスピンコーティングした(1200rpm、60秒)。粗材料を有するクーポンは次に、248nmの紫外光に2.7 J/cm2の線量で露光し(30分)、その後65℃で2分間、さらに130℃で2分間焼き付けした。昇華させた材料を有するクーポンは次に、365nmUVランプを使用して紫外光に60秒間露光し(約2.6J/cm2)、その後65℃で2分間、さらに130℃で2分間焼き付けした。Rome−Hart接触角ゴニオメーターを使用してこれらの表面上のアニソールとの前進接触角の測定を行うと、短波長の放射線に露光した粗生成物では45〜57°の結果が得られ、長波長放射線に露光した昇華生成物では28〜31°の結果が得られた。両方の組の接触角は、未処理の表面よりも実質的に大きい。
【0158】
実施例11
この実施例では、ビス−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)マレエート(「PCSA−6」)の合成を示す。
【0159】
1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(Aldrich)(36.2グラム、99.4mmol)を、窒素下で250mlのフラスコ中に入れ、無水マレイン酸(4.06グラム、41.4mmol)で処理し、続いてp−トルエンスルホン酸一水和物(0.78グラム、4.1mmol)で処理した。混合物を窒素下で撹拌し113〜115℃まで加熱すると、無色透明液体が得られた。混合物を113〜115℃で65分間維持した後、室温まで冷却した。シリカゲルカラム(直径5cmおよび長さ19cm)上でヘキサン中15%の酢酸エチルを使用して反応混合物のクロマトグラフィーを行って、27.07グラム(81%)の無色油を得た。この油は室温で静置すると固化した。これを最小量(数ミリリットル)の酢酸エチル中に溶解させた。得られた溶液を約40mlのヘキサンでほぼ曇点まで希釈した。溶液を氷浴中で冷却した後、あらかじめ合成した固体生成物のサンプルをシードとして加えた。得られた結晶化固体を濾過し、ヘキサンで3回洗浄し、風乾し、次に高真空下で乾燥させて、18.52グラム(55%の最終収率)の白色固体を得た。1H NMR(CDCl3):δ(ppm):6.29(s,2H)、4.50(t,4H)、2.53(m,4H)。19F NMR(CDCl3):δ(ppm):−81.3(m,6F)、−114.1(m,4F)、−122.3(m,4F)、−123.3(m,4F)、−124.0(m,4F)、−126.6(m,4F)
【0160】
実施例12
この実施例では、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)フマレート(「PCSA−1」)の合成を示す。
【0161】
1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(Aldrich)(38.32グラム、99.4mmol)を窒素下で1リットルの3口フラスコ中に入れ、186mlの塩化メチレン中に溶解させた。この溶液をトリエチルアミン(10.66グラム、105.3mmol)で処理した後、氷浴中で2℃まで冷却した。この溶液を撹拌し、塩化フマリル(Aldrich)(8.05グラム、52.6mmol)の塩化メチレン42ml中の溶液で10分間かけて処理した。添加中に混合物は10℃まで温まった(発熱した)。混合物を氷浴中でさらに10分間撹拌し、次に18時間かけて室温まで温めた。この混合物を撹拌しながら水(300ml)で処理した。塩化メチレン層を分離し、水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、38.29グラムの褐色固体を得た。この固体を最小量の酢酸エチル中に溶解させ、シリカゲルカラム(直径5cmおよび長さ15cm)上でヘキサン中20%の酢酸エチルを使用してクロマトグラフィーを行って29.81グラム(70%)の黄色固体を得た。この固体を温めたトルエン(25ml)中に溶解させ、中間フリットの焼結ガラス漏斗で濾過した。濾液を室温で静置すると、結晶が形成した。この固体を濾過し、トルエンで洗浄し、ヘキサンで洗浄し、風乾して、23.15グラムの淡黄色固体を得た。これを再びトルエン(25ml)から再結晶させた。得られた固体を濾過し、トルエンで洗浄し、ヘキサンで洗浄し、風乾して、21.24グラムの淡黄色固体を得た。一部(11.36グラム)を酢酸エチル中に溶解させ、シリカゲルカラム(直径5cmおよび長さ16cm)上でヘキサン中20%の酢酸エチルを使用してクロマトグラフィーを行って、11.3グラムの淡黄色固体を得た。これをトルエン(20ml)から再結晶させて、7.67グラムの非常に薄い黄色の固体を得た。この固体を温めたトルエン(15ml)中に溶解させ、活性炭で処理し、中間フリットの漏斗で濾過した。濾液を室温で静置した。得られた結晶を濾過し、トルエンで洗浄し、ヘキサンで洗浄し、風乾し、真空乾燥して、5.86グラムの極薄い黄色の固体を得た。1H NMR(CDCl3):δ(ppm):6.87(s,2H)、4.52(t,4H)、2.54(m,4H)。19F NMR(CDCl3):δ(ppm):−81.3(m,6F)、−113.9(m,4F)、−122.3(m,4F)、−123.3(m,4F)、−124.0(m,4F)、−126.6(m,4F)
【0162】
実施例13
この実施例では、PCSA−1の別の合成を示す。
【0163】
1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(Aldrich)(39.82グラム、109.4mmol)を窒素下で1リットルの3口フラスコ中に入れ、190mlの無水THF中に溶解させた。この溶液を次に氷浴中で2℃まで冷却し、塩化フマリル(Aldrich)(8.05グラム、52.6mmol)の無水THF45ml中の溶液で5分間かけて処理した。得られた無色透明溶液を氷浴中で10分間撹拌した。その溶液をジイソプロピルエチルアミン(14.7グラム、114mmol)で2分間かけて処理すると、すぐに懸濁した固体を有する暗褐色混合物が得られた。添加中に混合物は15℃まで温まった(発熱した)。混合物を次に6℃まで冷却し、氷浴を取り外して、混合物を23℃まで温めた。混合物を23℃で30分間撹拌した後、それを中間フリットの漏斗で濾過した。濾液を黄褐色固体になるまで濃縮した。これを塩化メチレン中に溶解させ、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、41.1グラムの黄褐色固体を得た。
【0164】
実施例14
この実施例では、cis,cis−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)ムコネート(「PCSA−7」)の合成を示す。
【0165】
【化11】

【0166】
化合物cis,cis−ムコン酸(Fluka)(0.784グラム、5.52mmol)を150mlの塩化メチレン中に、窒素下、500mlの3口フラスコ中で懸濁させた。この混合物を窒素下で撹拌し、氷浴中で2℃まで冷却した。混合物を塩化オキサリル(2.80グラム、22mmol)で処理した後、0.3mlのDMFで処理した。この混合物を20℃まで温めても、白色懸濁液のままであった。この混合物を氷浴中で冷却し、追加の塩化オキサリル(2.80グラム、22mmol)で処理した。この混合物を23℃まで温めると、4時間後にはより薄い懸濁液になった。これを23℃で18時間撹拌すると、透明な薄いオレンジ色の溶液が得られた。これを濃縮し、高真空下に置くと、オレンジ色の固体が得られた。この固体を窒素下で150mlの塩化メチレン中に溶解させ、氷浴中で冷却し、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(Aldrich)(4.02グラム、11.0mmol)で処理した後、トリエチルアミン(4.45グラム、44mmol)で処理すると、暗色の溶液が得られた。この混合物を20分間撹拌し、氷浴を取り外し、混合物を23℃まで温めた。TLCによると、23℃で1時間後に主要なUV活性生成物が示された。混合物を23℃で68時間撹拌した後、黄褐色固体となるまで濃縮した。これを飽和重炭酸ナトリウム水溶液中に懸濁させ、酢酸エチルで2回抽出し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、3.78グラムの黄褐色固体を得た。この固体を酢酸エチル中に溶解させ、シリカゲルカラム(直径5cm×長さ16cm)上でヘキサン中15%の酢酸エチルを使用してクロマトグラフィーを行った。主要画分を濃縮して、1.93グラムのオレンジ色固体を得た。これを数mlのトルエンから再結晶させて、1.07グラムの淡褐色固体を得た。1H NMR(CDCl3):δ(ppm):7.33(m,2H)、6.21(m,2H)、4.49(t,4H)、2.52(m,4H)。
【0167】
実施例15
この実施例では、正孔輸送層上の、PCSA−6から形成したフィルムの接触角測定を示す。
【0168】
正孔輸送層は、実施例1に記載のように調製したトリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」であった。HT−1層を、パーフルオロオクタン中の精製PCSA−6の2%(w/v)溶液で処理し、600rpmで60秒間スピンコーティングした。白色光下で薄いフィルムを見ることができた。ウエハに248nmの光を1.5mW/cm2で1800秒照射した(2.7J/cm2の線量)。薄いフィルムは依然として見ることができた。ウエハを175℃で300秒間焼き付けした。フィルムは見えなくなった。アニソールを使用した接触角測定で、57〜61度の前進角が得られた。ウエハをパーフルオロオクタンで10回洗浄し、風乾した。アニソールを使用した接触角測定で、63〜67°の前進角が得られた。
【0169】
実施例16
この実施例では、正孔輸送層上の、PCSA−1から形成したフィルムの接触角測定を示す。
【0170】
正孔輸送層は、実施例1に記載のように調製したトリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」であった。HT−1フィルムのウエハを、パーフルオロオクタン中の精製PCSA−1の5%(w/v)溶液で処理し、600rpmで60秒間スピンコーティングした。白色光下で薄いフィルムを見ることができた。ウエハに248nmの光を1.5mW/cm2で1800秒間照射した(2.7J/cm2の線量)。薄いフィルムは依然として見ることができた。ウエハを175℃で300秒間焼き付けした。フィルムは見えなくなった。アニソールを使用した接触角測定で、57〜61度の前進角が得られた。ウエハをパーフルオロオクタンで10回洗浄し、風乾した。アニソールを使用した接触角測定で、63〜67°の前進角が得られた。
【0171】
実施例17
この実施例では、ガラス上の、PCSA−6から形成したフィルムの接触角測定を示す。
【0172】
ブランクガラスのウエハを、パーフルオロオクタン中の精製PCSA−6の2%(w/v)溶液で処理し、600rpmで60秒間スピンコーティングした。白色光下で薄いフィルムを見ることができた。ウエハに248nmの光を1.5mW/cm2で1800秒照射した(2.7J/cm2の線量)。薄いフィルムは依然として見ることができた。ウエハを175℃で300秒間焼き付けした。フィルムは見えなくなった。アニソールを使用した接触角測定で、48〜53°の前進角および27〜35°の後退角が得られた。
【0173】
実施例18(対照)
この対照では、ガラスの接触角測定を示す。
【0174】
アニソールを使用した接触角測定で、19〜22°の前進角および11〜14°の後退角が得られた。
【0175】
実施例19
この実施例では、金上の、PCSA−6から形成したフィルムの接触角測定を示す。
【0176】
金ウエハを、パーフルオロオクタン中の精製PCSA−6の2%(w/v)溶液で処理し、600rpmで60秒間スピンコーティングした。白色光下でわずかにフィルムを見ることができた。ウエハに248nmの光を1.5mW/cm2で1800秒照射した(2.7J/cm2の線量)。依然としてわずかにフィルムを見ることができた。ウエハを175℃で300秒間焼き付けした。フィルムは見えなくなった。アニソールを使用した接触角測定で、69〜71度の前進角および37〜41°の後退角(初期粘着)が得られた。ウエハをパーフルオロオクタンで10回洗浄し、風乾した。アニソールを使用した接触角測定で、64〜65°の前進角および約35°の後退角(初期粘着)が得られた。ウエハを1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンで10回洗浄し、風乾した。アニソールを使用した接触角測定で、57〜59°の前進角および27〜34°の後退角(初期粘着)が得られた。
【0177】
実施例20(対照)
この対照では、UV照射をしない場合の金上のPCSA−6の接触角測定を示す。
【0178】
金ウエハを、パーフルオロオクタン中の精製PCSA−6の2%(w/v)溶液で処理し、600rpmで60秒間スピンコーティングした。白色光下でわずかにフィルムを見ることができた。ウエハを175℃で300秒間焼き付けした。フィルムは見えなくなった。アニソールを使用した接触角測定で、17〜21°の前進角および約20°の後退角が得られた。
【0179】
実施例21(対照)
この対照では、未処理の金の接触角測定を示す。
【0180】
アニソールを使用した接触角測定で、5〜10°の前進角が得られた。
【0181】
実施例22
この実施例では、正孔輸送層上の、PCSA−6から形成したフィルムの接触角測定を示す。
【0182】
正孔輸送ポリマーは、非架橋性トリアリールアミンポリマー(「HT−2」)であった。
【0183】
30mmのガラスクーポンに、トルエン中のHT−2の0.35wt/vol%溶液をスピンコーティングした。得られたフィルムを200℃で30分間乾燥させた。そのHT−2フィルムを、パーフルオロオクタン中の精製PCSA−6の2%(w/v)溶液で処理し、600rpmで60秒間スピンコーティングした。白色光下で薄いフィルムを見ることができた。ウエハに248nmの光を1.5mW/cm2で1800秒照射した(2.7J/cm2の線量)。薄いフィルムは依然として見ることができた。ウエハを175℃で300秒間焼き付けした。フィルムは見えなくなった。ガラス上のHT−2のアニソールを使用した接触角測定で、62〜70°の前進角が得られ、強い粘着性およびすべりが存在した。
【0184】
実施例23(対照)
この実施例では、HT−2から形成したフィルムの接触角測定を示す。
【0185】
ガラス上のHT−2から形成下フィルムのアニソールを使用した接触角測定で、10〜13°の前進角が得られた。
【0186】
実施例24
この実施例では、正孔輸送層上の、cis,cis−ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)ムコネートであるPCSA−7から形成したフィルムの接触角測定を示す。
【0187】
正孔輸送層は、実施例1に記載のように調製したトリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」であった。HT−1フィルムを、パーフルオロオクタン中の精製PCSA−7の0.5%(w/v)溶液で処理し、1200rpmで60秒間スピンコーティングした。ウエハ上に薄いフィルムを見ることができた。このウエハに365nmの光を45mW/cm2で62秒間照射した(2.7J/cm2の線量)。薄いフィルムは依然として見ることができた。ウエハを175℃で300秒間焼き付けした。フィルムは見えなくなった。アニソールを使用した接触角測定で、35〜41°の前進角を得た。ウエハをパーフルオロオクタンで10回洗浄し、風乾した。アニソールを使用した接触角測定で、35〜42°の前進角を得た。
【0188】
実施例25
この実施例では、正孔輸送ポリマー上の、不飽和ポリ酸フルオロアルキルエステルで構成されるフッ素化オリゴマー混合物から形成されたフィルムに対する接触角測定を示す。この実施例では、熱蒸発ではなく洗浄によってグラフトしていない材料が除去されることをさらに示す。
【0189】
コバルト触媒による連鎖移動を使用して、化合物3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロメタクリル酸オクチルをオリゴマー化して(Gridnev and Ittel,“Catalytic Chain Transfer in Free−Radical Polymerizations,”Chem.Rev.,101(12),3611−3659(2001))、構造
【0190】
【化12】

【0191】
を有するオリゴマー混合物を得た。生成物の分子量分布は、ほぼ三量体(n=2)に集中したが、上限が十量体までの範囲となった。
【0192】
正孔輸送ポリマーは、実施例1に記載のように調製したトリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」であった。パーフルオロオクタン中の上記オリゴマー混合物の1wt/vol%溶液を次に、3つの異なる試験クーポンの正孔輸送層の表面上にスピンコーティングした(600rpm、60秒)。第1のクーポン発議に、空気中で248nmの波長の紫外光に15分間露光した結果、露光線量が2.7J/cm2となった。第2のクーポンは、窒素下で248nmの波長の紫外線に15分間照射した結果、露光線量が2.7J/cm2となった。第3のクーポンは紫外光に露光しなかった。3つすべてのクーポンを次に、0.5mlずつのパーフルオロオクタンで3回洗浄して、可溶性材料を除去した。次にサンプルを50℃で2分間穏やかに加温してパーフルオロオクタンを除去した後、室温まで冷却した。Rome−Hart接触角ゴニオメーターを使用して3つのクーポンの表面上のアニソールとの前進接触角を測定すると、それぞれ43〜44°、38〜40°、および8〜14°の結果が得られた。最後の値は未処理のクーポンと同じであることから、洗い落としは十分であった。照射した2つのサンプルの値は、材料が表面に光化学的にグラフトしたことを明確に示している。
【0193】
実施例26(予言的)
この実施例では、置換フルオロアルキルアルコールの2,2−ジメチル−4−メチレンペンタン二酸エステルであるビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)2,2−ジメチル−4−メチレンペンタンジオエートの可能な合成を示す。
【0194】
【化13】

【0195】
2,2−ジメチル−4−メチレンペンタン二酸ジメチルは、メタクリル酸メチルの触媒連鎖移動オリゴマー化によって調製される。このメタノールエステルを上記フルオロアルコールとともに強酸エステル交換触媒の存在下で加熱する。2当量のメタノールが遊離して、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)2,2−ジメチル−4−メチレンペンタンジオエートが得られる。
【0196】
実施例27(予言的)
この実施例では、正孔輸送層上の、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)2,2−ジメチル−4−メチレンペンタンジオエートから形成したフィルムが低表面エネルギーであることを示す。
【0197】
【化14】

【0198】
正孔輸送層は、実施例1に記載のように調製したトリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」である。実施例11で得た生成物の(パーフルオロオクタン中の3%(wt/vol)溶液)を調製する。この溶液を次に正孔輸送層の表面上にスピンコーティングする(1200rpm、60秒)。得られたクーポンを次に、248nmの紫外光に放射線量2.7J/cm2で露光し(30分)、次に65℃で2分間および130℃で2分間の焼き付けを行う。Rome−Hart接触角ゴニオメーターを使用してこれらの表面上のアニソールとの前進接触角を測定すると、35°を超える結果が得られる。
【0199】
実施例28
この実施例では、光開始剤層上の、PCSA−6から形成したフィルムの接触角測定を示す。正孔輸送層は、トリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1)」であった。HT−1フィルムがコーティングされたガラスウエハを、Irgacure 184(Ciba)がジエチルケトン(DEK)中に溶解した溶液で処理し、600rpmで60秒間スピンコーティングした。得られたフィルムを次に、パーフルオロオクタン中に溶解させたPCSA−6の2w/v%溶液で処理し、600rpmで60秒間スピンコーティングした。得られたウエハに248nmの光を1.5mW/cm2で照射し、次にそのウエハを175℃で300秒間焼き付けした。アニソールを使用して接触角を測定した。以下の表は、種々の露光線量およびIrgacure 184濃度を使用した実験における測定接触角を示している(Irgacureを塗布しなかった一部の実験も比較の目的で含めている)。光開始剤層を含めることで、すべての露光線量で接触角が実質的に改善され、光開始剤層が存在しない場合に、より高い露光線量で得られた接触角と同じ(またはそれを超える)接触角が得られることが分かる。
【0200】
【表1】

【0201】
実施例29
この実施例では、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−ヘキサ−2−(E)−エン−4−イン−1,6−ジオエート(「PCSA−9」)の合成を示す。使用した手順は、参考文献:P.V.Ramachandran et al.Tetrahedron Letters 46(2005)2547−2549を修正した。
【0202】
【化15】

【0203】
1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(10.1g、27.7mmol)およびプロピオル酸(1.70mL、27.7mmol)を塩化メチレン(15mL)中に溶解させ、得られた溶液を窒素下で0℃まで冷却した。これに、ジシクロヘキシルカルボジイミド(5.72g、27.7mmol)とp−ジメチルアミノピリジン(0.034g、0.28mmol)との塩化メチレン(15mL)中の溶液を、撹拌しながら1時間かけて加えた。この混合物を次に室温まで温めると、黄褐色固体(ジシクロヘキシル尿素)が沈殿した。この反応混合物を終夜撹拌した後、濾過によりジシクロヘキシル尿素を除去し、濾液を真空下で濃縮して、粗生成物を赤色油として得た。この粗生成物を、15cm×5ccmのシリカゲルカラム上でヘキサン中15%の酢酸エチルを使用してクロマトグラフィーを行って、8.31gの(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)プロピオレートを黄色油として得た(収率72%)。
【0204】
(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)プロピオレート(2.06g、4.95mmol)を窒素下で塩化メチレン(5mL)中に溶解させ、0℃まで冷却した。これに、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(0.0056g、0.0495mmol)を加えた。得られた暗褐色溶液を0℃で20分間撹拌した後、濃縮すると黄褐色固体が得られた。得られた粗生成物を、15cm×5ccmのシリカゲルカラム上でヘキサン中10%の酢酸エチルを使用してクロマトグラフィーを行って、1.91gのビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−ヘキサ−2−(E)−エン−4−イン−1,6−ジオエート(「PCSA−9」)を白色固体として得た(収率93%)。1H NMR(CDCl3)δ6.80(d,1H,CH=CH’)、6.45(d,1H,CH=CH’)、4.52(mult,4H,OCH2)、2.52(mult,4H,OCH2CH2)。
【0205】
実施例30
この実施例では、248または365nmの光に露光し焼き付けした後の正孔輸送層上の、PCSA−9から形成したフィルムの接触角測定を示す。正孔輸送層は、実施例1に記載のように調製したトリフェニルアミンとジオクチルフルオレンとジスチリルフルオレンとの架橋性コポリマー(「HT−1」)であった。パーフルオロオクタン中のPCSA−9の0.25%(w/v)溶液を調製した。この溶液の0.0814mLをペトリ皿中に入れ、溶媒を蒸発させた。HT−1をコーティングした30mmのガラスクーポン(実施例1に記載のように作製)をペトリ皿カバーの内側に取り付けた。ガラスクーポンが下向きになるようにして、ペトリ皿カバーをペトリ皿の上部に取り付けた。冷却のために氷/ブライン浴をペトリ皿カバーの上に置いた。ペトリ皿を190℃のホットプレート上に90秒間置くと、その間にPCSA−9が蒸発し、ペトリ皿カバーの内側とHT−1がコーティングされたガラスクーポンとの上にPCSA−9が蒸着した。HT−1がコーティングされたガラスクーポン上に堆積したPCSA−9の総量は約0.02mgであった。このクーポンを248nmまたは365nmの光に露光させ、次に190℃で5分間焼き付けした。アニソールを使用して測定した前進接触角を以下の表にまとめている。
【0206】
【表2】

【0207】
【表3】

【0208】
実施例31
この実施例では、アセチレン誘導ジカルボン酸エステルであるビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)アセチレンジカルボキシレート(「PCSA−10」)の合成を示す。
【0209】
【化16】

【0210】
撹拌棒、ならびに窒素気流下のガス入口 空気冷却器、および出口を取り付けた250mLの3口丸底フラスコに、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(25.5g、70mmol、DuPont)、アセチレンジカルボン酸(Aldrich、142−45−0)(3.992g、35mmol)、およびp−TSA(0.57g、3mmol)を加えてスラリーを得た。この混合物を115℃までゆっくり温めると、100〜110℃の間で固体が溶液になり、淡黄色溶液が得られた。115℃で24時間加熱を続けた。溶液を窒素気流下で冷却した後、エチルエーテル(約50mL)中に加えると黄色溶液が得られた。この溶液を飽和NaHCO3水溶液(50mL)で洗浄すると、直ちに暗褐色溶液に変化した。さらに2回洗浄を繰り返した。生成物を有するエチルエーテル画分をMgSO4上に入れ、15分間激しく撹拌して乾燥させた後、デカンテーションを行った。その溶液を中性グレードのアルミナカラム(約3cm)に通すと、アルミナ上部の暗色層と黄色溶液とが得られた。溶液を乾燥するまでストリッピングすると、淡黄色粘着性固体が得られた。生成物を昇華させると白色固体が得られた。
【0211】
実施例32
この実施例では、正孔輸送層上の、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)アセチレンジカルボキシレートであるPCSA−10から形成した中間フィルムの接触角測定を示す。
【0212】
パーフルオロオクタン中のアセチレンジカルボキシレートの1%(wt/vol)溶液を調製した。この溶液を、実施例5に記載のHTLがコーティングされたウエハ上に600RPMで60秒間スピンコーティングした。得られたウエハに直ちに、以下の表に示す線量で248nmで放射線照射した。これらを次に175℃で5分間焼き付けした。厚着に接触角実施例5に記載のように測定し、その結果を以下の表に示す。
【0213】
【表4】

【0214】
接触角は線量に依存し、短い露光で急激に増加し、より長い露光で最大値に近づく。
【0215】
実施例33
この実施例では、三置換オレフィン系ジカルボン酸エステルのビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)2−フェニルマレエート(「PCSA−11」)の合成を示す。
【0216】
【化17】

【0217】
撹拌棒、ならびに窒素気流下のガス入口 乾式冷却器、および出口を取り付けた250mLの3口丸底フラスコに、1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(25.5g、70mmol)、無水フェニルマレイン酸(Aldrich、36122−35−7)(5.22g、30mmol)、およびp−TSA(0.57g、3mmol)を加えて、オレンジがかった褐色のスラリーを得た。この混合物をゆっくりと温めた。約80℃ですべてが溶液になり、赤褐色の透明溶液が得られた。サンプルを約110℃までさらに加熱し、1時間わずかに還流させた。加熱を150℃まで上昇させ、48時間続けた。反応溶液からGC/MS分析用にサンプルを採取すると、MAnは完全に反応しているが少量のアルコールが残存していることが分かった。この溶液を窒素気流下で冷却した後、酢酸エチル(約50mL)中に加えると、褐色溶液が得られた。この溶液を飽和NaHCO3水溶液(3×50mL)で洗浄した。生成物を有する酢酸エチル画分をMgSO4上に入れ、15分間激しく撹拌して乾燥させた。この懸濁液を濾過し、減圧下で濾液から溶媒を除去すると、黄褐色油が残った。この油を最小量のエーテル中に加えた後、ドライアイス中で終夜冷却した。得られた固体を最小限のエーテル中に加え、中性グレードのアルミナカラム(約3cm)に通すと、アルミナの上部に暗色層が得られた。溶液を乾燥させるとクリーム色の結晶性固体が得られ、これはビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)2−フェニルマレエートであった。
【0218】
実施例34
この実施例では、三置換オレフィンジカルボキシレートを使用した基体の気相コーティングを示す。
【0219】
ステンレス鋼ボウル中で氷/塩水浴を作製して0℃未満の温度を実現した。ホットプレートを190℃の表面温度まで予備加熱した。Vertrel(登録商標)中のビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)2−フェニルマレエートであるPCSA−11の溶液(0.25%、w/v)のサンプル(300μL)をペトリ皿の底部に供給し、Vertrel(登録商標)を蒸発させた(1〜2分)。この溶液を、ペトリ皿の広い領域上に広がりやすくなるように分配した。実施例5に記載の1回堆積した基体を、Kapton(登録商標)テープ(アクリレート接着剤)でペトリ皿の蓋に貼り付けた。この蓋を、フェニルマレエートが入った皿底部の上に置いた。氷/塩浴を、ペトリ皿組立体の上に3分間置いて蓋および基体を冷却した。この浴およびペトリ皿をホットプレートの中央に90秒間置いた。室温まで冷却した後、コーティング材料がペトリ皿底部から蓋および基体に移るのが観察できた。サンプルを次に248nmの放射線に以下の表に示す線量で露光した。サンプルを次に175℃で5分間焼き付けした。次に接触角測定を行い、以下の表に報告している。
【0220】
【表5】

【0221】
接触角(「CA」)は線量に依存し、短い露光で急激に増加し、より長い露光でよりゆっくりと増加する。
【0222】
実施例35
この実施例の目的は、1,1−位で置換されたオレフィンジカルボキシレートとしてのビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)2−ベンジリデンマロネート(「PCSA−12」)の合成を示すことである。
【0223】
250mLの3口丸底フラスコに、撹拌棒、ならびに窒素流下のガス入口および出口を取り付けた。これに、C1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(36.4g、100mmol)、マロン酸(5.203g、50mmol)、およびp−TSA(0.57g、3mmol)を加えた。混合物を温めると、約100℃において透明でほぼ無色の溶液が得られた。このサンプルを115℃に24時間加熱した。この溶液を窒素気流下で冷却した後、エチルエーテル(約50mL)中に加え、飽和NaHCO3水溶液(3×50mL)で洗浄した。層分離に要する時間は各回で非常に長かった。生成物を有するエーテル溶液を、中性グレードのアルミナ層(約3cm)に通して濾過した。このステップで溶液の色がかなり薄くなり、アルミナ上に色の帯が残った。得られたエーテル溶液を次にロータリーエバポレーター上でストリッピングすると、ほぼ無色の液体が残留した。この液体を高真空ライン上に置き、残存するエーテルおよび他の揮発性材料を室温で系から除去した。これによって、約29g(73%)の所望のビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)マロネートジエステルを得た。
【0224】
【化18】

【0225】
100mLの3口フラスコ中で、0.7146gのピペリジン(8.358mmol)触媒、1.4369gのベンズアルデヒド(13.543mmol)、および10.2061gのビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)マロネート(12.818mmol)を室温で撹拌した。反応全体で、固体と液体との両方が観察された。2時間後、液体の一部を取り出してアセトンと混合してGCサンプルを得ると、ベンズアルデヒドが不足していることが示された。約1mLの追加のベンズアルデヒドを加えた。24時間後、反応を停止させ、ロータリーエバポレーター上で溶媒を除去した。その残留物を石油エーテル中に溶解させ、ドライアイス中で終夜冷却した。次にサンプルを真空濾過して、所望の白色固体のビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)2−ベンジリデンマロネートを得た。
【0226】
【化19】

【0227】
実施例36
この実施例の目的は、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)2−ベンジリデンマロネートであるPCSA−12のスピンコーティングしUV露光し熱処理したフィルム上のアニソールの接触角を示すことである。
【0228】
実施例5の方法によって、Vertrel XF中のビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)2−ベンジリデンマロネートの1%(wt/vol)溶液を、基体上に600RPMで60秒間スピンコーティングした。ウエハに直ちに248nmの放射線を照射し、175℃で5分間焼き付けした。次に接触角を測定した。
【0229】
【表6】

【0230】
接触角は、低線量で急速に増加するが、高線量において最終的な接触角は穏やかになる。
【0231】
実施例37
この実施例では、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)1−トシルオキシエチレン−1,2−ジカルボキシレート(PCSA−13)の合成を示す。
【0232】
【化20】

【0233】
窒素気流下で撹拌棒、ガス入口、乾式冷却器、および出口が取り付けられた100mLの3口丸底フラスコに、C6アルコール(12.7548g、35.03mmol)、ADCA(2.0009g、17.54mmol)、およびp−TSA(3.3289g、17.50mmol)を加えて、最初に淡黄色スラリー混合物を形成した。この混合物を100℃に加熱すると、油状の外観の黄色溶液が形成された。この溶液を115℃で24時間加熱した。8時間には、溶液は中間の褐色であった。反応のワークアップの前に、溶液は暗褐色であった。溶液のワークアップを50mLのエチルエーテル中で行った。次に、飽和NaHCO3 溶液(3×−50mL)で洗浄した。NaHCO3溶液を混合物に加えるときに、エチルエーテル層の色が暗くなった。このエチルエーテル層を次にMgSO4上に入れ、激しく撹拌して乾燥させたのち、デカンテーションを行った。この溶液を次に中性グレードのアルミナ(約3cm)に通すと、アルミナの上部の暗褐色層と薄い〜中間の褐色の溶液とが得られた。エーテルを次にストリッピングすると、オレンジ色固体が得られた。この固体のクロロホルム中のNMRスペクトルを求めた。次に、この固体をエチルエーテルとイソプロパノールとの混合物中で再結晶させた。サンプルをドライアイス上で冷却した後、サンプルを真空濾過すると、淡黄色固体が得られた。このサンプルを高真空ライン下の釜に入れた。濾過して残留した液体をrotavap上に入れて、白色固体を得た。両方の固体からNMRスペクトルを得た。
【0234】
実施例38
この実施例では、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)1−トシルオキシエチレン−1,2−ジカルボキシレート(PCSA−13)の光グラフト化を説明する。
【0235】
Vertrel XF中のビスC6 2−(トシルオキシ)マレエートの1%(wt/vol)溶液を、HTL上に600RPMで60秒間スピンコーティングした。以下の表に従って、得られたウエハに直ちに放射線照射し焼き付けした(248において、30分=2.7J/cm2;365nmにおいて、62秒=2.7J/cm2)。接触角は、アニソールを使用して測定し、1μLの増分でウエハ表面に加えて、Rame−Hartゴニオメーターを使用して前進接触角を測定した。これらの測定は各ウエハ上で1箇所で行い、最も安定した接触角を記録した。
【0236】
【表7】

【0237】
実施例39
この実施例ではテトラ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)エチレンテトラカルボキシレート(PCSA−14)の合成を示す。
【0238】
【化21】

【0239】
撹拌棒、窒素バブラー、および冷却器を取り付けた3口丸底フラスコ中で、36g(99mmol)の1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタノール、5g(15.8mmol)エチレンテトラカルボン酸テトラエチル、および1gのp−トルエンスルホン酸を混合した。最初に、反応物の表面上に泡が現れた。しかし、反応を100℃まで加熱すると、泡は減少し、これは液体中を浮遊する固体であることが明らかとなった。温度を上昇させると、サンプルは透明になった。約24時間後、NMRを使用して反応の進行を監視すると、過剰の反応物が依然として存在することが分かった。サンプルの温度を2週間にわたって維持しながら、遊離したエタノールとともに窒素フラッシュによって反応で運び去られた1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタノールを定期的に補充した。冷却後、サンプルを50mLのエーテル中に溶解させた。次にこれを重炭酸ナトリウム(3×約50mL)で洗浄すると、黄色液体が得られた。この黄色液体をアルミナ(約3cm)に通して濾過すると、透明液体になった。rotavap上でエーテルを除去した。白色ゲル(タフィー状)をバイアル中に入れ、高真空下でポンプを2日間使用した。材料の最終的なNMRから、大部分が所望のテトラフルオロアルキルエステル(4.51ppm)であり、トリス(フルオロアルキル)モノエチルエステル(フルオロアルキルが4.39およびエチルエステルが4.23)が混入していることが示された。これら3つの共鳴が40:12:4の比であることから、2つの生成物の比が10:4である、または28%がモノエチルテトラエステルであることが分かった。
【0240】
実施例40
この実施例では、テトラ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)エチレンテトラカルボキシレート(PCSA−14)の光グラフト化を示す。
【0241】
テトラC6エチレンテトラカルボキシレート(実施例39に記載の材料の)Vertrel XF中の溶液(固体0.0832g/合計8.3105g)を濾過し、HTL上に600RPMで60秒間スピンコーティングした。以下の表に従って、直ちにウエハに放射線照射し、焼き付けした。接触角は、アニソールを使用して測定し、1μLの増分でウエハ表面に加えて、Rame−Hartゴニオメーターを使用して前進接触角を測定した。これらの測定は各ウエハ上で1箇所で行い、最も安定した接触角を記録した。
【0242】
【表8】

【0243】
概要または実施例で前述したすべての行為が必要なわけではなく、特定の行為の一部が不要となる場合もあり、1つまたは複数のさらなる行為を前述の行為に加えて行うことができることに留意されたい。さらに、行為が列挙されている順序は、必ずしもそれらが実施される順序ではない。
【0244】
以上の明細書において、具体的な実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者であれば、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに種々の修正および変更を行えることが理解できよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであると見なすべきであり、すべてのこのような修正は本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0245】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【0246】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。さらに、ある範囲内で示される値に対する言及は、記載の範囲のわずかな上下のばらつきを含み、それらを使用して、それらの範囲内にある値と実質的に同じ結果を実現することができる。また、これらの範囲の開示は、ある値のある成分が異なる値の成分と混合される場合に生じうる分数値を含めた、最小平均値と最大平均値との間のすべての値を含む連続範囲であることを意図している。さらに、より広い範囲およびより狭い範囲が開示される場合、一方の範囲の最小値を他方の範囲の最大値と一致させる、およびその逆を行うことが、本発明の意図の範囲内となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層上に、閉じ込められた第2の層を形成する方法であって:
第1の表面エネルギーを有する前記第1の層を形成するステップと;
前記第1の層を、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化エステル、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化イミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む光硬化性界面活性組成物で処理するステップと;
前記光硬化性界面活性組成物を放射線にパターン状に露光して、露光領域および未露光領域を得るステップと;
前記光硬化性界面活性組成物を現像することで、前記未露光領域の前記光硬化性界面活性組成物を除去して、前記未露光領域中の未処理部分および前記露光領域中の処理部分を有する第1の層を得るステップであって、前記処理部分が、前記第1の表面エネルギーよりも低い第2の表面エネルギーを有するステップと;
前記第1の層の前記未処理部分上に前記第2の層を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリ酸が、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、2,2−ジメチル−4−メチレンペンタン二酸、ムコン酸、2−メチレングルタル酸、アコチン酸、アセチレンジカルボン酸、ヘキサ−e−エン−4−イン二酸、メタクリル酸のオリゴマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エステルが、式RfOH(式中、前記Rf基の炭素原子鎖が、4〜15個の炭素原子と、前記炭素原子鎖中に含まれる0〜5個のオキソ酸素原子と、炭素原子鎖の前記炭素原子に結合した少なくとも4個のフッ素原子とを有し、但し、OHを有する炭素原子上にはフッ素原子は存在しない)を有するアルコールを使用して形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記イミドが、式RfNH2(式中、前記Rf基の炭素原子鎖が、4〜15個の炭素原子と、前記炭素原子鎖中に含まれる0〜5個のオキソ酸素原子と、前記炭素原子鎖の炭素原子に結合した少なくとも4個のフッ素原子とを有し、但し、NH2を有する炭素原子上にはフッ素原子は存在しない)を有するアミンを使用して形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の層が正孔輸送層である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光硬化した界面活性組成物が、ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)フマレート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)マレエート;ビス(3,3,4,4,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロ−5−オキサ−オクチル)マレエート;ビス(3,3,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ウンデカフルオロオクチル)マレエート;N−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシルマレイミド;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)イタコネート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル_cis,cis−ムコネート;
【化1】

;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−ヘキサ−t−(E)−エン−4−イン−1,6−ジオエート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)アセチレンジカルボキシレート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−2−フェニルマレエート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−2−ベンジリデンマロネート;ビス(CH2CH2OCH2CH2OCF2C(H)FOC37)マレエート;ビス(CH2CH2OCF2C(H)FOC37)マレエート;ビス(CH2CH2CH2OCF2C(H)FOC37)マレエート;ビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)1−トシルオキシエチレン−1,2−ジカルボキシレート;テトラ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)エチレンテトラカルボキシレート;およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の層が光開始剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記光硬化性界面活性組成物が光開始剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
電極上に配置された第1の有機層および第2の有機層を含む有機電子デバイスの製造方法であって、
第1の表面エネルギーを有する前記第1の有機層を前記電極上に形成するステップと、
前記第1の有機層を、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化エステル、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化イミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含む光硬化性界面活性組成物で処理するステップと;
前記光硬化性界面活性組成物を放射線にパターン状に露光して、露光領域および未露光領域を得るステップと;
前記光硬化性界面活性組成物を現像することで、前記未露光領域の前記光硬化性界面活性組成物を除去して、前記未露光領域中の未処理部分および前記露光領域中の処理部分を有する前記第1の有機活性層を得るステップであって、前記処理部分が、前記第1の表面エネルギーよりも低い第2の表面エネルギーを有するステップと;
前記第1の有機活性層の前記未処理部分上に前記第2の有機層を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記第1の有機層が正孔輸送層であり、前記第2の有機層が光活性層である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の有機層が光開始剤を含み、前記第2の有機層が光活性層である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記放射線が、可視光線、紫外線、および赤外線、ならびに同時処理および連続処理を含めたそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
処理が、溶液コーティングまたは気相コーティングのいずれかを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記未露光領域が、液体による処理によって、または蒸発によって除去される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
電極上に配置された第1の有機活性層および第2の有機活性層を含み、パターン化された光硬化した界面活性組成物をさらに含む有機電子デバイスであって、前記第2の有機活性層が、前記光硬化した界面活性組成物が存在しない領域にのみ存在し、前記光硬化した界面活性組成物が、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化エステル、α,β−不飽和ポリ酸のフッ素化イミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料からできている、有機電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−501389(P2011−501389A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531261(P2010−531261)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/081041
【国際公開番号】WO2009/055628
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】