説明

閉水路変位計

【課題】
不動点間に気中にて基準線を張架して、これを基準として変位を計測することが一般的に行われているが、基準線の揺動、温度変化による伸縮変化が著しく、計測精度が損なわれるという問題があった。
【解決手段】
本発明によれば、不動点間に液体を満に貯留してその中間部に変位計測部位を有する液路を設け、この液路内に線状部材を張架して、変位計測部位に取付けた非接触変位センサにより線状部材との間隙を測定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設中の構造物(トンネル、道路、軌道、橋梁、地上構造物等)がその構造物の一部あるいは相当の区域に生ずる変位を検知し、その変位量を計測するための閉水路タイプの変位計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の変位計として、構造物の2点を不動点として、その間に基準線を張架する一方、両不動点間に位置する構造物の計測ポイントにある変位計測部位に鉛直方向変位センサと水平方向変位センサとを配設し、それぞれの変位センサによって変位計測部位から基準線の位置を計測することにより変位計測部位における構造物の変位を計測するというものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、不動点として基準線を気中に張架するため、基準線は自重による弛みと風圧による揺動の他、温度変化による伸縮変化が起こり、本来不動点であるべき基準線の位置変化が発生して計測精度が著しく低下するという問題があった。
【0004】
基準線の張力をすこぶる高めることで上記問題は多少解決できるものの、この場合両不動点の設置が大掛かりになることと、基準線の高い耐久性が求められるという不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために、本発明の閉水路変位計は不動点間に設置され変位計測部位を中間に構成する液路部と、この液路部に満に貯留された液体と、この液体に浸って且つ前記液路部に沿って非接触収納され両端部を前記不動点間に張設された線状部材と、前記変位計測部位に設けられ前記線状部材との間の変位を測定する非接触変位センサとから構成した。
【0006】
また、前記線状部材に前記非接触変位センサに対応位置してターゲットと、このターゲットの自重に見合う浮力を有する浮きを設けるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、変位計測部位を中間に構成する液路部を不動点間に設置して、この液路部に満に貯留された液体中に線状部材を張設するようにしたので線状部材に浮力が作用し、自重による弛みが軽減される。よって線状部材の張力を抑えることができるため、線状部材の両端を支える不動点の構成がコンパクトになり低コスト化にもつながる。風や温度変化による影響も小となり、計測基準となる線状部材が著しく安定するため、高い精度の計測が実現する。
【0008】
また、線状部材に非接触変位センサに対応位置するターゲットとターゲットの自重に見合う浮力を有した浮きを設けることにより、非接触変位センサとしてレーザ型、超音波型等反射型非接触センサが簡便に採用できるとともに、線状部材がターゲットの自重により弛むこともなく、安定した姿勢を保ち、現実的な高い計測精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1における閉水路変位計の設置図
【図2】本発明の実施例1、2における浮き、ターゲット、うず電流センサの関係を示す説明図
【図3】本発明の実施例2における閉水路変位計の設置図
【図4】本発明のその他実施形態における浮き、ターゲット、うず電流センサの関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を実施例として説明する。
【実施例1】
【0011】
図1および図2に従って本発明の第1の実施例を説明する。図中1は軌道であり、レール2と後述する変位計測部位であるマクラギ3を地盤4に敷設してなる。マクラギ3は軌道1に近接した場所における新たな地中、地上構造物工事に起因して、その敷設位置が所定の位置から変位することを想定されるレール2aに対応するもので、ここを変位計測部位aとして本実施例の計測目的ポイントとする。本来レールの変位計測では近接構造物工事の規模にもよるが、影響範囲に従って多点の変位計測部位が設定される。本実施例では前記計測部位aに対応して2台の変位計測部を代表的に示す。5および6は軌道1内の前記工事の影響を受けないと想定された位置の地盤4に設けられた不動点を構成するマクラギである。これらマクラギ5,6にはそれぞれ基準部7および基準部8が載設固定されている。また、7と8の中間部にはマクラギ3のたとえば一端部に載設固定された計測部9が設けられている。10は基準部7−計測部9−基準部8と各部を連続的に継ぐ液路部であり、この液路部10によって両基準部7と8は変位計測部9を介して液密に連通されている。液路部10と変位計測部9と基準部7,8内には液体たとえば水11が満に貯留されている。12は液路部10に収納され、水11に浸った線状部材たとえば化学繊維ワイヤであり、一端は基準部7に固定されているとともに、変位計測部9を通過して他端は基準部8内の巻取部13に巻取られて固定されている。線状部材12は巻取部13によりテンションを受け他の部品に非接触で張架されている。線状部材12の変位計測部9内に位置する架所には浮き14とそれに一体に構成されたターゲット15が取付けられている。浮き14はたとえば円筒形をなし、その長手方向に沿ってターゲット固定部16を設け、このターゲット固定部16にたとえば2枚の角板形状をなすターゲット15が構成されている。線状部材12はターゲット固定部に着脱自在に固定されることにより浮き14は線状部材12の上位置に、ターゲット15は線状部材の下位置に吊下げ状態で静止するようになっている。また変位計測部9内にはターゲット15に水平方向に対向位置して変位計測部9のたとえば壁部に非接触変位センサたとえばうず電流センサ17が設置固定されている。18は基準部7内に設けられ線状部材12の一端を固定する止め部であり、19は変位計測部9両側の液路10に設けられた可撓性能を有する自在部である。
【0012】
次に本発明の一実施例の作用を説明する。本発明の閉水路変位計の初期設置段階では線状部材12が液路部10中に水に浸された状態でかつ非接触状態にて張設されており、またこの線状部材12にターゲット15が取付けられているが、ターゲットの重量に見合う浮力を有する浮き14が装着されていることで、ターゲット15の重量によるたるみは発生しない状態で維持されている。たとえば近接した場所における新たな地中、地上構造物工事に起因して軌道1のレール2aが変位計測部位であるマクラギ3とともに水平方向に変位したとする。マクラギ3の変位にともなってマクラギ3に固定した変位計測部9が同様に変位する。このときマクラギ5,6は変位しないため、マクラギ5,6に載設した基準部7,8も変位せず、さらには基準部7−8間に張設された線状部材12も変位しない。したがって線状部材12に設けられたターゲット15も変位しない。これにより変位計測部9に設けられたうず電流センサ17が、線状部材と直交方向に上記変位計測部位aの変位量分位置変化する。すなわちうず電流センサ17がターゲット15との距離に感応してその変位量を出力し、このデータは図示しない所定場所のデータ収録システムに取り込まれる。なお、変位が発生する変位計測部9と不動点である基準部7,8とは液路部10によって連結されているが、それぞれの可撓性の自在部19を介しているため、相互の動きが伝達し合う不具合はない。
【実施例2】
【0013】
次に本発明の第2の実施例を図3にしたがって説明する。前記第1の実施例と同一部位には同一番号を付して説明を省略する。4Aは軌道1Aを構成する地盤であり、前記実施例1の地盤4に比して、レール長手方向に勾配を有している。もちろんマクラギ3も地盤4Aに沿って設けられており、本発明による閉水路変位計もこれらを構成する各部が地盤4Aに沿って勾配をもって配設されている。このような設置状況においても、計測の核をなす線状部材12、これに取付けられたターゲット15、変位計測部9に設けられたうず電流センサ17の位置関係に変化はなく、前記実施例1と同様にレール2aが変位計測部位であるマクラギ3とともに水平変位すると、マクラギ3に固定した変位計測部9が同様に変化するため、うず電流センサ17がターゲット15との距離に感応して、その変位量を出力する。このデータは図示しない所定場所のデータ収録システムに取込まれる。
【0014】
前記実施例1、実施例2では浮き14とターゲット15とを一体に構成したが、本発明では浮き14はターゲット15の重量をキャンセルするための浮力を作用させるものであり、たとえばターゲット15の両側位置で線状部材12に取付けてもよく、別体であること何ら差支えない。
【0015】
また、前記実施例1、実施例2ではターゲット15を線状部材12から吊下げるように設け、変位計測部9から線状部材12に直交するように設けたうず電流センサ17と対応位置するようにして、変位計測部9の水平移動に伴うターゲット15−うず電流センサ17間の変位量を出力して、水平変位計測を行うようにしたが、本発明では図4に示すように線状部材12に面が上を向く位置でターゲット15を取付け、このターゲット15の上方位置に対応するようにうず電流センサ17を変位計測部9に設けるようにしてもよい。すなわちこの位置関係をとることより、変位計測部9の上下(鉛直)方向の変位にともなってうず電流センサ17が変位し、うず電流センサ17の出力を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明にかかる閉水路変位計は前記実施例1、実施例2のように軌道の変位計測にのみ限定されるものでなく、既存または建設中のトンネル、道路、都市構造物等あらゆる構造物の特に広域にわたる勾配を有する複数点の計測に適し、近接土木、建築工事の影響を抽出する的確な計測装置として利用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 軌道
1A 軌道
2 レール
2a レール
3 マクラギ
4 地盤
4A 地盤
5,6 マクラギ(不動点)
7,8 基準部
9 変位計測部
10 液路部
11 水(液体)
12 線状部材
13 巻取部
14 浮き
15 ターゲット
16 ターゲット固定部
17 うず電流センサ(非接触変位センサ)
18 止め部
19 自在部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動点間に設置され変位計測部を中間に構成する液路部と、この液路部に満に貯留された液体と、この液体に浸って且つ前記液路部に沿って非接触収納され両端部を前記不動点間に張設された線状部材と、前記変位計測部に設けられ前記線状部材との間の変位を測定する非接触変位センサとからなる閉水路変位計。
【請求項2】
前記線状部材に前記非接触変位センサに対応位置したターゲットおよびこのターゲットの自重に見合う浮力を有する浮きを設けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の閉水路変位計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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