説明

閉経期の治療のための組成物

新規のハーブ植物抽出物、MF101は、閉経期症状の治療に効果的である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
相互参照
〔0001〕 本出願は、35 U.S.C.の第119条(e)項に基づき、2005年4月1日付出願の米国仮出願番号60/667,887の利益を主張し、その全ての内容は本明細書中に参考文献として援用されている。
【0002】
発明の背景
〔0002〕 閉経期は、正常な排卵サイクルが停止し、正常な月経が休止した後の期間のことである。エストラジオール(E2)産生の減少は、卵巣がE2製造を停止するため更年期に付随する。このE2産生の減少は、体内のホルモンバランスの変化を生じ、しばしば閉経期に関連する様々な症状を引き起こす。
【0003】
〔0003〕 閉経前、または更年期としても知られる閉経周辺期は、正常な排卵サイクルから次第に月経停止へと向かう過程での閉経期前の期間である。排卵サイクルが長くなり、またより不規則になるため、E2のレベルは初期には増加しても、最終的には閉経期の開始とともに低下する。閉経期症状はしばしばE2レベルの低下に付随する。
【0004】
〔0004〕 閉経周辺期、閉経期および閉経後に見られる症状には、血管運動不安定性によって二次的に派生する一過性熱感や発汗などの物理的な症状が含まれる。その上、疲労、短気、不眠、集中力の低下、抑うつ、記憶喪失、頭痛、不安および神経過敏などの心理的および感情的な症状が、更年期の開始に付随する場合がある。さらなる症状としては、吐き気、便秘、下痢、関節痛、筋肉痛、手足の冷えおよび体重増加、および間欠性めまい、錯感覚、動悸、頻拍症が含まれる。さらに加えて、生殖器系への変化、尿失禁、膣乾燥、骨盤筋緊張の損失、循環器疾患のリスク増加および骨粗鬆症が、閉経期の開始とともに増加する。
【0005】
〔0005〕 一過性熱感は、多くの閉経周辺期、閉経期および閉経後の女性に広く見られ、また厄介である。何十年間にもわたり、エストロゲンによるホルモン補充療法が一過性熱感の標準治療であったが、多くの女性は潜在的な悪影響、特に乳癌への不安から、ホルモン療法(HT)を放棄してきた。いくつかの最近の研究、特にウィミンズ・ヘルス・イニシアティブ(WHI)は、HTが乳癌のリスクを増加することを見いだした。選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)であるラロキシフェンおよびタモキシフェンがエストロゲン受容体(ER)陽性の乳癌を防ぐという知見は、エストロゲンが乳癌を促進するという追加的な証拠を提供する。
【0006】
〔0006〕 その結果、閉経期の治療、特に一過性熱感などの閉経期症状の治療のための、乳癌のリスクを増加させない治療用組成物や治療方法についてのニーズがある。本発明はこのニーズに応え、なおその上、関連する利点を提供する。
【0007】
本発明の概要
〔0007〕 本発明は、閉経期の治療のための組成物を提供する。組成物は、ハーブ植物の混合物、ハーブ植物の混合物の抽出物またはハーブ植物抽出物の混合物である。ハーブ植物の混合物は、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix AsparagiおよびRadix Puerariaを含む。この組成物は、in vitroのアッセイではエストロゲン受容体α(ERα)ではなく、エストロゲン受容体β(ERβ)を介してエストロゲン応答エレメント(ERE)を活性化する。
【0008】
〔0008〕 本発明はまた、閉経期を治療する方法を提供する。本方法は、閉経期の治療に十分な量の前述の組成物を被験者へ投与することを含む。いくつかの態様では、閉経期の治療には、閉経期症状の重症度の緩和、頻度の緩和または症状と頻度の双方の緩和が含まれる。
【0009】
参考文献による援用
〔0009〕 本明細書で言及された全ての刊行物と特許出願は、あたかもそれぞれの刊行物または特許出願が参考文献として援用されるために具体的におよび個別に示されたと匹敵する程度に参考文献として本明細中に援用される。
【0010】
発明の詳細な説明
〔0031〕 HTのリスクが利点を上回ることを示したウィミンズ・ヘルス・イニシアティブ試験の結果(Ettinger, B., Grady, D., Tosteson, A.N., Pressman, A. & Macer, J. L., "Effect of the Women's Health Initiative on women's decisions to discontinue postmenopausal hormone therapy," Obstet. Gynecol. 102, 1225-32 (2003))を受けて、多くの女性が安全で効果的な、閉経期症状のためにHTで用いられるエストロゲンの代替物を熱望している。その間に、最近の調査では、閉経周辺期および閉経後の79%の女性が、植物性栄養補助食品(BDS)を使用していると報告した(Mahady, G.B., Parrot, J., Lee, C, Yun, G.S. & Dan, A. Botanical dietary supplement use in peri- and postmenopausal women. Menopause 10, 65-72 (2003))。BDSの使用の普及にも関わらず、植物由来薬(botanical)の作用機序、有効性および安全性は厳密には検討されていない。本発明は、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix AsparagiおよびRadix Puerariaを含むハーブ植物製剤を提供する。いくつかの態様では、抽出物は、顕著な量のそれぞれのハーブ植物;Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix AsparagiおよびRadix Puerariaの抽出物である。本発明の典型的な態様はMF101であり、これについてはさらに詳細に後述される。MF101に含まれる多くのハーブ植物が更年期症状の治療のための伝統的な中国漢方薬調合に使われているが、閉経期治療のための混合物の有効性についてはこれまでに確認されていない。本発明の組成物はERβ選択的エストロゲン受容体活性を有し、そのために閉経期の臨床治療、特に一過性熱感などの閉経期症状治療に適している。
【0011】
〔0032〕 本発明は、閉経期、特に一過性熱感などの閉経期症状の治療のための組成物および方法を提供する。本発明の組成物は、ハーブ植物混合物、ハーブ植物混合物の抽出物、およびハーブ植物抽出物の混合物である。本発明の組成物はさらに、U2OS骨肉腫細胞アッセイにおいて、エストロゲン受容体β(ERβ)によりエストロゲン応答エレメント(ERE)を活性化するが、エストロゲン受容体α(ERα)によってはEREを活性化しない。組成物がERαではなくERβとの相互作用を通じてEREを活性化し、ERαのみがエストロゲンHTの悪影響に関連することから、本発明の組成物および方法は、エストロゲンホルモン療法の代替手段を示し、乳癌のリスク増加などのエストロゲン補充に関連していることなどのWHIによって同定された条件を生じにくい。
【0012】
〔0033〕 本発明の文脈では、「閉経期」には、閉経周辺期、閉経期および閉経後が含まれ、特に、閉経周辺期、閉経期および閉経後に伴うエストラジオール(E2)レベルの減少によって引き起こされるか、または悪化する症状が含まれる。したがって、本発明の文脈では、「閉経期の治療」は、閉経期症状の治療を意味する。典型的な閉経期症状には、一過性熱感や、血管運動不安定性によって派生する発汗の他、疲労、短気、不眠、集中力の低下、抑うつ、記憶喪失、頭痛、不安、神経過敏、間欠性めまい、錯感覚、動悸、頻拍症、吐き気、便秘、下痢、関節痛、筋肉痛、手足の冷えおよび体重増加、尿失禁、膣乾燥、骨盤筋緊張の損失、循環器疾患および骨粗鬆症のリスク増加などの心理的症状および感情的症状が含まれる。
【0013】
〔0034〕 したがって、「閉経期の治療」は、閉経周辺期、閉経期または閉経後に付随する一つかそれ以上の症状の軽減、緩和または予防を意味し、少なくとも閉経期症状の一つについて、重症度または頻度の減少を含む。本明細書中に用いられている「または」の使用は、別の方法で特定されない限り、接続語として意図される。したがって、治療には、少なくとも一つの閉経期症状の、重症度および頻度の双方の減少が含まれる。症状の頻度および重症度の減少が完全であってもよいという意味では、治療には、症状の予防が含まれても良い。この点において、閉経期の治療には、閉経期に付随する少なくとも一つの症状の頻度および重症度が検出不能なレベルまで減少することが含まれるが、成人女性の月経の自然な停止の予防は含まれないことを注記する。
【0014】
〔0035〕 本発明の文脈上、「閉経期の被験者」およびその言語上の異形は、初潮後で、閉経周辺期、閉経期または閉経後を体験中のメスの成体、特に成人ヒト女性を表す。婦人科学の分野の当業者は、閉経期の開始の診断特性を同定することができ、また当該分野で認識された臨床的方法により被験者が「閉経期の被験者」であることを同定することが可能である。
【0015】
〔0036〕 本発明にしたがった組成物には、以下の各ハーブ植物、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix AsparagiおよびRadix Puerariaを含むハーブ植物の混合物が含まれる。いくつかの態様では、ハーブ植物混合物は、顕著な量の上述した各ハーブ植物を含む。文脈上、顕著な量というのは、重量で約0.1%より多い量を意味し、例えば約0.5%より多く、より具体的にはハーブ植物混合物中、すべてのハーブ植物材料の重量の約1%より多いことを意味する。本発明にしたがった組成物にはまた、前述したハーブ植物の混合物の抽出物が含まれる。このような抽出物の生成方法は、以下に詳述する。
【0016】
〔0037〕 本発明のいくつかの態様では、ハーブ植物混合物は表1に示したおよその比率、または正確な比率で、ハーブ植物の混合物を含むか、ハーブ植物の混合物から本質的になるか、またはハーブ植物の混合物からなる。
【0017】
【表1】

【0018】
〔0039〕 いくつかの態様では、本発明のハーブ植物混合物は表2に示したおよその比率、または正確な比率でハーブ植物有効成分を含むか、ハーブ植物有効成分から本質的になるか、またはハーブ植物有効成分からなる。
【0019】
【表2】

【0020】
〔0041〕 具体的な態様では、本発明は表3に示したおよその比率で、または正確な比率でハーブ植物有効成分を含むか、ハーブ植物有効成分から本質的になるか、またはハーブ植物有効成分からなるハーブ植物混合物を提供する。
【0021】
【表3−1】

【0022】
【表3−2】

【0023】
〔0043〕 〜を含む、〜から本質的になる、および〜からなるという用語は、当該技術分野においては一般的に受け入れられた意味を持つ。およそ、とその言語的な異形は、それぞれの表にある特定の値の寛容性が、与えられた値の±10%の範囲内であることを意味する。つまり、例えば約10%の値は、(10±1)%である:すなわち、9から11%の範囲内である。正確な、とその言語的な異形は、それぞれの表にある特定の値の寛容性が、与えられた値の±1%の範囲内であることを意味する。つまり、例えば正確に10%の値は、(10±0.1)%である:すなわち、9.9から10.1%の範囲内である。いくつかの態様では、表1から3に示された比率は、およそであるが、他の態様では比率は正確である。
【0024】
〔0044〕 いくつかの態様では、本発明は上述したハーブ植物混合物の抽出物である組成物を提供する。いくつかの態様では、本発明の抽出物は以下のハーブ植物、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix AsparagiおよびRadix Puerariaを含むハーブ植物混合物の抽出物である。いくつかの態様では、抽出物は顕著な量の以下のそれぞれのハーブ植物、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix AsparagiおよびRadix Puerariaの抽出物である。他の態様では、抽出物は表1に示したハーブ植物混合物の抽出物である。さらなる態様では、抽出物は表2に示したハーブ植物混合物の抽出物である。その上さらなる態様では、抽出物は表3に示したハーブ植物混合物の抽出物である。
【0025】
〔0045〕 本発明のいくつかの態様では、組成物は、ハーブ植物混合物の抽出物を濃縮または脱水した抽出物である。いくつかの態様では、組成物は、以下のハーブ植物、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix AsparagiおよびRadix Puerariaを含むハーブ植物混合物の脱水抽出物または濃縮抽出物である。いくつかの態様では、組成物は、顕著な量の以下のそれぞれのハーブ植物、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix AsparagiおよびRadix Puerariaの、濃縮抽出物または脱水抽出物である。他の態様では、組成物は表1または表2または表3に記載されたハーブ植物混合物の、濃縮抽出物または脱水抽出物である。
【0026】
〔0046〕 いくつかの態様では、本発明は、一種類または複数の適した希釈剤、香味料、賦形剤、または他の添加物と、一種類または複数の前述した抽出物または濃縮抽出物または脱水抽出物との組み合わせである組成物を提供する。適した希釈剤には、例えば脱イオン水、注射用水(WFI)、ろ過水などの水が含まれる。他の適した希釈剤には、果汁、茶、牛乳、マグネシアミルクなどが含まれる。適した香味料には、果実香味料、ウィンターグリーン、ペパーミント、スペアミント、シナモンなどが含まれる。他の適した添加物には、食品着色料およびエタノールが含まれる。いくつかの態様では、組成物は、脱水抽出物に一種類または複数の希釈剤、香味料、または他の添加物を組み合わせたものを含む。他の態様では、組成物は、濃縮抽出物に一種類または複数の希釈剤、香味料または他の添加物を組み合わせたものを含む。いくつかの具体的な態様では、脱水抽出物は、表1、表2または表3に記載された混合物の一つの抽出物の脱水抽出物である。他の具体的な態様では、濃縮抽出物は、表1、表2または表3に記載されたハーブ植物混合物の一つの抽出物の濃縮抽出物である。
【0027】
〔0047〕 本発明にしたがった組成物は以下のハーブ植物、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix AsparagiおよびRadix Puerariaの混合物を含み、特にこれらハーブ植物のそれぞれの相当量、およびより具体的には表1、表2、表3の1つに記載された、およそまたは正確なそれぞれのハーブ植物の混合物を含む。このようなハーブ植物混合物は通常の方法によって作製されてもよい:すなわち、それぞれのハーブ植物の適切な量の秤量を行うことにより、ハーブ植物混合物を形成するために多様なハーブ植物を組み合わせることである。この過程は、混合物の粉砕または撹拌などの追加段階が含まれてもよい。この混合物はそのままで消費されてもよく、または被験者への経口投与に適した一種類または複数のカプセルとしてもよい。具体的な態様では、ハーブ植物混合物は混合物の抽出物の調製などによる、さらなる過程を経てもよい。
【0028】
〔0048〕 本発明に従うハーブ植物混合物の抽出物は、抽出物を調製するのに適した条件下で少しの間、一種類または複数の溶媒を用いたハーブ植物混合物と組み合わせることによるなどの通常の方法によって調製されてもよい。ハーブ植物混合物と溶媒とが抽出物を形成するのに適した時間接触した後、溶媒とハーブ植物はろ過または遠心分離などの適した方法によって分離される。溶媒を含む液体を抽出物とする。この抽出物は、抽出物の濃縮または脱水、抽出物にさらなる成分を組み合わせること、またはこれら両方などのさらなる過程を経てもよい。
【0029】
〔0049〕 抽出過程のための適した溶媒(抽出溶媒)には、純水およびエタノール水溶液などの水性の溶媒が含まれる。適した条件には、抽出溶媒とハーブ植物の混合物を加熱することが含まれる。ある態様では、溶媒およびハーブ植物混合物は、しばらくの間沸騰するまで加熱される。具体的な態様では、ハーブ植物混合物は、水と組み合わされ、またその組み合わせたものは約1分を超える時間、特に5分を超える時間で煮出される。
【0030】
〔0050〕 本発明の具体的な態様中では、表4に上述されたハーブ植物混合物は、水と組み合わされ、抽出物の調製に適した時間で、沸点まで加熱される。煮出したハーブ植物から水分を分離した後、水分は脱水によって除去され、残留物は本発明にしたがって組成物(脱水抽出物)として回収される。この脱水抽出物はそのあと温水(hot water)で希釈され、お茶のように飲まれてもよく、または他の香味料と組み合わされてもよく、または一種類または複数のゼラチンカプセル中にて調製されてもよい。
【0031】
〔0051〕 本発明の方法は、閉経期の症状を治療するのに十分な本発明組成物の量を消費することを含む。「閉経期の症状」は、閉経周辺期、閉経期または閉経後のどれか一つまたは複数に付随する症状である。閉経期症状には、血管運動不安定性によって派生する一過性熱感や発汗、疲労、短気、不眠、集中力の低下、抑うつ、記憶喪失、頭痛、不安、神経過敏、間欠性めまい、錯感覚、動悸、頻拍症、吐き気、便秘、下痢、関節痛、筋肉痛、手足の冷え、体重増加、尿失禁、膣乾燥、骨盤筋緊張の損失が含まれる。具体的な態様では、方法には一過性熱感の治療が含まれる。
【0032】
〔0052〕 治療という用語とその文法的な異形の用語には、特定の症状の頻度または重症度を減少させることが含まれる。症状の頻度は、一種類または複数の自動化されたバイオメトリック方法(血圧測定、脈拍数測定、呼吸数測定、呼吸量測定、心電図測定、皮膚抵抗率測定、脳波測定など)により、または被験者へのアンケートによる症状の頻度記録依頼のような、当該技術分野で認識されている方法によって決定される。症状の重症度は、一種類または複数の上述バイオメトリック法またはアンケートによって決定されてもよい。したがって、症状の頻度および重症度は主観的、客観的、または両方であってもよい。
【0033】
〔0053〕 閉経期の症状を治療するために十分な量の本発明の組成物は、したがって、ハーブ植物混合物、閉経期症状の頻度を減少させるか、重症度を寛解させるか、またはそれら両方のために十分な量のハーブ植物混合物の抽出物またはハーブ植物抽出物の混合物である。一般的に、症状の治療に必要な量は、被験者の年齢、体重、健康状態、遺伝的構成、感情的条件また他の因子に依存する。効果的な量は、エストロゲンホルモン補充療法よりも多かれ少なかれ効果的になるように選択されてもよい。したがって、一日量に適した本発明の組成物の量は、被験者の体重1キログラムに対して本発明のハーブ植物混合物が約0.01から100グラム、より具体的には、被験者の体重1キログラムに対して、約0.05から約50グラムに相当する。本発明にしたがった抽出物では、一日量は体重1キログラムに対して乾燥抽出物が約1から10,000ミリグラム、より具体的には、約2から約5,000ミリグラムの範囲内とする。本発明の組成物が安全で、またより具体的には乳癌のリスク増加のようなエストロゲン補充に関連のある問題を引き起こすリスクの減少を示すと考えられるが、それにもかかわらず、閉経期症状を減少させることができる最低用量が使用されるべきであることを、当業者は認識するであろう。当業者は同様に、想定される範囲内での期待される症状の回復を達成するのに必要な用量を滴定することが可能であり、同様にこれらの用量範囲からの偏差の上下がを本発明の範囲内で許容されてもよいことを認識するであろう。
【0034】
〔0054〕 エストロゲンが乳癌の原因であるという説得力のある証拠にもかかわらず、アジア各国の女性は、多量の植物エストロゲン(フィトエストロゲン)を摂取していても、乳癌の発生率が低いという逆説的な観察調査が示されている。同様に、アジア系の女性は、閉経期の間の症状が最小量であることを報告しており、卵巣機能の休止時点で一過性熱感を経験する傾向が少ない。これらの知見はアメリカ合衆国の多くの閉経期女性が、乳癌の発生リスクを増加させずに一過性熱感を軽減することを期待して、大豆中に存在するフィトエストロゲン、またはエストロゲンの代替としてのハーブ植物治療を摂取することを奨励してきた。異なるエストロゲン様の化合物は乳房細胞に逆の効果を発揮する可能性がある。エストラジオール(E2)などのエストロゲンは乳癌を促進するが、一方でフィトエストロゲンはアジア諸国で観察されるように乳癌の発生率低下に寄与しているようである。この理論をサポートする実質的な研究機関でのデータおよび観察データが存在するにも関わらず(Kurtzer M. Phytoestrogen supplement use by women. J. Nutr. 2003; 133: 1983S-1986S)、フィトエストロゲンが乳癌リスクを減少させるという、ランダム化された対照実験はこれまでに文書化されていない。
【実施例】
【0035】
〔0055〕 実施例
〔0056〕 本発明のさまざまな側面および利点を実証するため、以下に例示的な実施例が呈示される。実施例は、本発明の具体的な態様を例示するが、当業者は本発明の完全な範囲がこれらの実施例によって制限されるものでないことを認識するであろう。
【0036】
予備的実施例1 - MF101(IND 58,267)
〔0057〕 本発明の具体的な態様では、抽出物は以下の表4に示したようにMF101と称される。
【0037】
【表4】

【0038】
1. 一日用量は煮出す前のハーブ植物の開始用量のことである。
2. 乾燥重量は同様の方法で扱われた単一ハーブ植物の一日用量として測定されるので、全てのハーブ植物は同時に調製されるため、結果として生じる製法では乾燥重量はおよそであり、一緒に煮出された全体の乾燥重量はその結果およそ9,000ミリグラムである。
【0039】
〔0059〕 乾燥抽出物はその後、抽出物水溶液1リットルに対して固体抽出物53マイクログラムの濃度に希釈される。この水溶液は以下の実施例1から10にかけて用いられる。
【0040】
〔0060〕 実施例1 - ERβ特異的な、MF101のin vitroでのERE活性化
〔0061〕 U2O2骨肉腫細胞は最小チミジンキナーゼ(tk)プロモーター上流の古典的ERE(ERE-tk-Luc)およびヒトERαまたはERβの発現ベクターをコトランスフェクションされた。MF101は、ERβによるERE-tk-Lucの用量依存的活性化を生じたが、ERαによっては活性化が見られないことが観察された(図1A)。ERβは、0.1μl/mlのMF101を用いると2.5倍のERE-tk-Lucの活性化を生じ、2.5μl/mlのMF101を用いたときに最大の20倍の活性化を生じた。MF101(2.5μl/ml)による最大の活性化は、10 nMのエストラジオール(E2)によって観察された活性化と同等であった。MF101によるERE-tk-Lucの活性化は、ICI、ラロキシフェンおよびタモキシフェンによってブロックされ(図1B)、このことは、MF101の作用が直接的にERβを通して媒介されることを示している。ERサブタイプ選択性もまた、EREを含む内在性ケラチン19遺伝子で調査された(Choi, L, Gudas, LJ. & Katzenellenbogen, B. S., "Regulation of keratin 19 gene expression by estrogen in human breast cancer cells and identification of the estrogen responsive gene region," Mol. Cell Endocrinol. 164, 225-37. (2000))。テトラサイクリン誘導性ERαまたはERβ細胞が安定的にトランスフェクトされたU2OS細胞内で、E2が用量依存的にケラチン19のmRNA発現を刺激することは以前に示されている(Kian Tee, M. et al, "Estradiol and Selective Estrogen Receptor Modulators Differentially Regulate Target Genes with Estrogen Receptors {alpha} and {beta}," Mol. Biol. Cell 15, 1262-1272 (2004))。対照的に、MF101はU2OS-ERβ細胞中でケラチン19のmRNAを増加したが(図1C)、U2OS-ERα細胞中では増加しなかった(図1D)。これらの結果は、MF101が異種性プロモーターに連結されたEREまたは内在性遺伝子中に存在するEREで、ERβ媒介性の転写経路の選択的に誘導することを示す。
【0041】
〔0062〕 実施例2 - in vitroでのエストロゲン受容体結合
〔0063〕 これまでに、ゲニステインなどのダイズ中のフィトエストロゲンは、ERαに比べてERβとは7〜30倍高い親和性で結合することが見いだされている(Barkhem, T. et al. Differential response of estrogen receptor alpha and estrogen receptor beta to partial estrogen agonists/antagonists. Mol Pharmacol. 54, 105-12 (1998);Kuiper, G.G. et al. Interaction of estrogenic chemicals and phytoestrogens with estrogen receptor beta. Endocrinology 139, 4252-63 (1998))。図1A-1Dのデータは、MF101が、ERβとよりよく結合することにより、ERβ選択的様式で作用する可能性を示唆する。精製ERαおよび精製ERβと結合するE2と競合するMF101の能力は、in vitroでの結合アッセイにより調査された。競合的結合曲線は、MF101がERα、ERβともに同等に結合することを示す(図2A)。これらの実験は、MF101のERβ選択性が、ERβとの優先的な結合によるものではないことを示唆する。他の可能性としては、MF101のERβ選択性が、標的遺伝子中のEREへのMF101-ERβ複合体の選択的結合により生じるということである。この可能性を調査するため、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイが、U2OS-ERβ細胞およびU2OS-ERα細胞中のケラチン19遺伝子により行われた。以前に、E2処理がU2OS-ERα細胞およびU2OS-ERβ細胞中のERαおよびERβのそれぞれの動員につながると報告された(Kian Tee, M. et al., "Estradiol and Selective Estrogen Receptor Modulators Differentially Regulate Target Genes with Estrogen Receptors {alpha} and {beta}," Mol. Biol. Cell 15, 1262-1272 (2004))。対照的に、ChIPは、MF101がケラチン19 EREにERβを動員するが、ERαを動員しないことを示す(図2B)。したがって、MF101のERαとの結合は、EREとの結合を可能とする高次構造を生じない。
【0042】
〔0064〕 実施例3 - MF101によるエラスターゼ抑制
〔0065〕 ERαおよびERβの高次構造に対するMF101の効果をさらに調査するため、MF101がE2と比較して異なるタンパク質分解酵素消化パターンを引き起こすかどうかを確かめるために、エラスターゼを用いた限定的加水分解が行われた。エラスターゼによる消化後、ERαは、E2と結合させた場合、およびMF101と結合させた場合とでは、異なる保護パターンを示した(図2C)。ERαの最も強い保護は、ERαがE2と結合しているときに観察される。2つの矢印は、最も高濃度のエラスターゼであっても、いくつかの保護された断片が存在することを示し、リガンド非存在下(エタノール対照)では、ERαの保護には明らかな損失がある。MF101と結合したとき、対照と比較すると、ERαはエラスターゼに対する保護にわずかな増加が見られるが、E2と結合したERαと比較すると、保護は低いことが示された(図2D)。一方、ERβとのプロテアーゼに対する保護の結果は、ERαと比べて保護された断片が完全に異なるパターンを生じる結果となる。MF101はエタノールおよびE2と比較すると異なるパターンを産生した。(E2およびエタノール対照中の保護された断片を示す5つの矢印、およびMF101サンプル中の保護された断片をを示す4つの矢印を比較されたい。)このことは、MF101と結合するにあたり、ERβは、E2と結合した場合またはホルモンなしの場合とは、全体的に異なる高次構造を採用することを示唆する。ERβはMF101と結合した場合に異なる高次構造となるため、ERβの異なる表面が暴露され、共制御タンパク質のために潜在的に利用できる。MF101がERαおよびERβへの共制御タンパク質の異なる動員を引き起こすかどうかが検討されたが、この理由はERの立体構造変化が、p160活性化補助因子を含む、異なるクラスのタンパク質の動員を導くことが知られているためである。(Shang, Y., Hu, X., DiRenzo, J., Lazar, M.A. & Brown, M. Cofactor dynamics and sufficiency in estrogen receptor-regulated transcription. Cell 103, 843-52. (2000);Metivier, R. et al. Estrogen receptor-alpha directs ordered, cyclical, and combinatorial recruitment of cofactors on a natural target promoter. Cell 115, 751-63 (2003);Smith, CL. & O'Malley, B.W., "Coregulator function: a key to understanding tissue specificity of selective receptor modulators," Endocr. Rev. 25, 45- 71 (2004))。
【0043】
〔0066〕 MF101が内在性遺伝子へ共制御因子を選択的に動員するかどうかを確認するため、U2OS-ERα細胞およびU2OS-ERβ細胞中のケラチン19遺伝子についてChIPアッセイが行われた。MF101は、U2OS-ERβ細胞中のケラチン19遺伝子へGRIP1およびCBPの動員を誘導したが、U2OS-ERα細胞では誘導しなかった(図2B)。MF101はまた、ERβにRNAポリメラーゼIIを選択的に動員し、これはMF101がU2OS-ERβ細胞中のケラチン19遺伝子のみを活性化したという知見と一致する。これらの結果は、MF101のERβ選択性が、EREへの異なる結合によること、および標的遺伝子への共制御タンパク質の動員により生じることを示す。
【0044】
〔0067〕 実施例4 - MF101はin vitroにおいてMCF-7乳癌細胞増殖を刺激しない
〔0068〕 一過性熱感のための代替エストロゲンの重要な特徴は、乳癌を促進しないことである。MF101の増殖促進の性質が、ERαのみを発現するMCF-7乳癌細胞中で調査された(図3A)。MCF-7細胞はMF101で7日間処理され、細胞増殖は3H-チミジン取り込みによって測定された。E2とは異なり、MF101はMCF-7細胞の細胞増殖を刺激しなかった。MF101はまた、細胞増殖および乳癌を促進するためにE2によって活性化される主要な遺伝子である、c-myc遺伝子およびサイクリンD1遺伝子を活性化しなかった(図3B)。これらのデータは、MF101がERβ選択性であるというさらなる証拠を提供するとともに、ERαがMCF-7細胞中のE2の増殖効果を媒介することを示した前述の調査と一致している。(Paruthiyil, S. et al., "Estrogen receptor beta inhibits human breast cancer cell proliferation and tumor formation by causing a G2 cell cycle arrest," Cancer Res. 64, 423-8 (2004);An, J., Tzagarakis-Foster, C, Scharschmidt, T.C., Lomri, N. & Leitman, D. C, "Estrogen receptor beta- selective transcriptional activity and recruitment of coregulators by phytoestrogens," J. Biol. Chem. 276, 17808-14. (2001))。
【0045】
〔0069〕 同様の実験において、乳癌細胞に対するMF101の効果は、ジエチルスチルベストロール(DES)の効果と比較された。図3D-3Fは乳癌に対するDESの増殖刺激効果を示し、それぞれ対照処理癌細胞(図3D)、MF101処理癌細胞(図3F)と比較した図である。図3Gおよび3Hは、対照、DESおよびMF101の、乳癌移植片質量に対する効果(図3G)および子宮角質量に対する効果(図3H)を示している。これらの結果は、合成エストロゲンであるDESとは異なり、MF101は癌細胞または正常な子宮細胞のいずれの増殖も刺激しないことを示した。
【0046】
〔0070〕 実施例5 -遺伝子発現マイクロアレイ
〔0071〕 以下で概説された調査に基づき、本発明者は、エストロゲンがERαとの相互作用によって乳癌を促進するが、一方MF101中に見られたフィトエストロゲンは、増殖促進遺伝子を抑制して、そして乳房細胞のERα媒介性増殖の抑制を行うERβとの選択的相互作用により、乳癌を防ぐとともに一過性熱感などの閉経期症状を防ぐ可能性があると仮定する。ERβ受容体は、脳および骨などの非生殖組織中でより一般的であり、この領域はフィトエストロゲンが、血管運動症状を引き起こしそして骨量の維持を助ける中枢神経作用をどのように減少させたかについて役割を果たしている可能性がある。
【0047】
〔0072〕 エストロゲン様物質は、ステロイド受容体スーパーファミリーのメンバーである、2つの異なるエストロゲン受容体と相互作用することにより臨床効果を誘発する。(Evans RM. The steroid and thyroid hormone receptor superfamily, Science 1988;240: 889-895; Mangelsdorf DJ, Thummel C, Beato M, et al., The nuclear receptor superfamily: the second decade. Cell; 83: 835-839)。ERαは595アミノ酸残基のタンパク質であり、ERβと称された二番目のERα(530アミノ酸残基)は10年後に同定された。(Mosselman S, Polman J, Dijkema R. ER beta: identification and characterization of a novel human estrogen receptor. FEBS Lett. 1996;392:49-53)。これらの2つの受容体間での機能的な違いは、最近になって調査されたにすぎない。わずか25%の相同性を示しそしてトランス活性化領域のうち1つを含むA/Bドメインを除き、ERαおよびERβの全体的な構造は非常に類似している。DNA結合ドメインは実質的に同一(98%相同)であるが、それに対して2番目のトランス活性化ドメインを含むリガンド結合ドメイン内では55%のアミノ酸しか保存されていない。(Enmark E, Pelto-Huikko M, Grandien K, et al. Human estrogen receptor beta-gene structure, chromosomal localization, and expression pattern. J Clin. Endocrinol. Metab. 1997;82:4258- 4265)。他の調査は、組織分布、生理学的効果および転写活性が全く異なることを明確に示す。ERβはより遍在性であり、骨、脳、尿路、脈管系および前立腺などの多くの非生殖組織、さらに卵巣および精巣などの生殖組織でも発現する。ERαは主に子宮、肝臓、乳房および腎臓で発現する。ERαおよびERβの異なる生理学的役割は、ERαノックアウトマウスまたはERβノックアウトマウスで明確に示された。ERαノックアウトマウスは、原始乳腺および子宮などの主要な欠損を発生し、生殖能力がない。(Hewitt SC, Korach KS., "Oestrogen receptor knockout mice: roles for oestrogen receptors alpha and beta in reproductive tissues," Reproduction 2003;125:143-149)。一方、ERβノックアウトマウスで観察された効果は、産仔数の減少、メスの皮質骨の肥厚および前立腺の過形成とともに、低妊孕能であることを含み、わずかである。
【0048】
〔0073〕 フィトエストロゲンはステロイドホルモン受容体の結合を通じてエストロゲン様作用を発揮することが以前から知られており(Tamaya T, Sato S, Okada HH, "Possible mechanism of steroid action of the plant herb extracts glycyrrhizin, glycyrrhetinic acid, and paeoniflorin: inhibition by plant herb extracts of steroid protein binding in the rabbit," Am. J. Obstet. Gynecol., 1986, 155:1134-1139)、より最近では、ERαと比較して、有意に高いERβとの親和性があることが明らかになった(Barkhem T, Carlsson B, Nilsson Y, et al., "Differential response of estrogen receptor alpha and estrogen receptor beta to partial estrogen agonists/antagonists," Mol. Pharmacol., 1998, 54: 105-112.)。初期の実験では、イソフラボンゲニステインがERβへの強力な転写アゴニストであるが、ERαへは弱い作用しかないことが示された(An J, Tzagarakis- Foster C, Scharschmidt TC, et al., "Estrogen receptor beta-selective transcriptional activity and recruitment of coregulators by phytoestrogens," J. Biol. Chem. 2001, 276: 17808-17814.)。閉経期症状のためのERサブタイプ選択的天然化合物を同定するため、ERαまたはERβが異なる生物学的効果を発揮することを示すことが必要であった。ERαおよびERβは異なる標的遺伝子を制御していることは、ERαまたはERβを発現するテトラサイクリン誘導性ベクターが安定的に形質移入されたヒトU2OS骨肉腫細胞を用いて示される通りである。ウェスタンブロット法、免疫組織化学および免疫沈降での調査は、U2OS-ERα細胞がERαのみを合成し、U2OS-ERβ細胞ではもっぱらERβを発現していることを確認した (Kian Tee M, Rogatsky I, Tzagarakis-Foster C, et al., "Estradiol and selective estrogen receptor modulators differentially regulate target genes with estrogen receptors alpha and beta." Mol. Biol. Cell 2004, 15:1262-12672.)。ERαまたはERβの発現を誘導するためにドキシサイクリンを18時間処理した後、U2OS-ERα細胞株およびU2OS-ERβ細胞株は、3H-E2結合調査によりそれぞれ1細胞につき69,000および54,000の受容体を含んでいた。ERαおよび/またはERβによって制御される遺伝子を同定するため、U2OS-ERα細胞株およびU2OS-ERβ細胞株は、ドキシサイクリンとともに、10 nM E2の存在下または非存在下で、18時間処理された。全RNAを使用して、12,600の既知の遺伝子を含むヒトU95Av2 AffymetrixマイクロアレイとのハイブリダイゼーションのためのcRNAを調製した。無処理群に対してそれぞれの処理群の発現データを比較するための6セットを使用して、ERα細胞またはERβ細胞中で制御される遺伝子を決定した。U2OS-ERα細胞およびU2OS-ERβ細胞の両方において、全228遺伝子がE2によって有意に(p<0.05)活性化または抑制された(表4)。E2はU2OS-ERα細胞中のみでは65遺伝子を制御し、U2OS-ERβ細胞中のみでは125遺伝子を制御した。E2はU2OS-ERα細胞中では32遺伝子を抑制し、U2OS-ERβ細胞中のみでは38遺伝子を抑制した。両方の細胞株中で、E2によって34遺伝子のみが活性化され、4遺伝子が抑制された。これらの知見は228遺伝子中の38遺伝子(17%)がE2と、ERαおよびERβの両方によって制御されることを示す。E2と同様、U2OS-ERα細胞中でラロキシフェンまたはタモキシフェンによって制御される遺伝子はU2OS-ERβ細胞中で制御されている遺伝子とは異なっていた。驚くべきことに、タモキシフェンおよびラロキシフェンはどちらも選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)とに分類されているにも関わらず、タモキシフェンによって制御される遺伝子中のたった27%しかラロキシフェンによっても同様に制御されなかった。これらの結果は以下の表5に要約される。
【0049】
【表5】

【0050】
〔0075〕 U2OS-ERα細胞株およびU2OS-ERβ細胞株でのE2およびSERMによる差異的な遺伝子制御
〔0076〕 ドキシサイクリン誘導性U2OS-ERα細胞およびU2OS-ERβ細胞は、10 nM E2、1μMラロキシフェンまたは1μMタモキシフェンで18時間処理された。無処理サンプル対リガンド処理サンプルによる、Affymetrix社のヒトU95Av2遺伝子チップから得られたマイクロアレイデータは、Affymetrix社のMicroarray Suite Version 5.0によって分析された。少なくとも3回の実験において、対照に対して統計学的に有意な(p<0.05)増加または減少したシグナル変化を示す候補遺伝子は、さらに±0.8シグナル対数比平均のカットオフにより選抜された。ERα細胞株、ERβ細胞株およびこれら両方のERα+ERβ細胞株中での活性化遺伝子、抑制遺伝子の数およびこれらの相対的割合(かっこ内)が示される。アスタリスク(*)は、ERβ細胞と比較して、逆の発現パターンを示すERα細胞内でSERMによって制御される共通の遺伝子の数を示す。10 nM E2、1μMラロキシフェンまたは1μMタモキシフェンのいずれかとともに18時間処理したU2OS-ERαサンプルおよびU2OS-ERβサンプルで、α-アンチトリプシン、ケラチン19(K19)、WISP-2、Mda-7、NKG2CおよびNKG2EのリアルタイムRT-PCRが行われた。U2OS-ERαサンプルおよびU2OS-ERβサンプルの変化倍率(かっこ内)は、無処理サンプルに対する相対値として計算された。
【0051】
〔0077〕 ERαおよびERβが異なる遺伝子を制御するという知見は、ERαおよびERβが乳癌の発症において、異なる役割を果たしている可能性を示唆する。乳癌におけるERαの役割を調査するため、ERαのみを発現するMCF-7細胞の細胞増殖に対するE2の効果が調べられた。E2はERα-MCF-7細胞の細胞数の用量依存的な増加を生じた(An J, Tzagarakis-Foster C, Scharschmidt TC, et al., "Estrogen receptor beta-selective transcriptional activity and recruitment of coregulators by phytoestrogens," J. Biol. Chem. 2001, 276:17808-17814)。この調査は、これらの細胞はERβを発現していないため、増殖効果はERαによって媒介されることを示した。乳癌細胞の増殖に対するERβの役割を調査するため、アデノウイルス(Ad)を使用して、ERβを高率に細胞へ輸送した。MCF-7細胞は、Ad-ERβまたはウイルスの潜在的な非特異的効果を調節するためのAd-LacZを用い、24時間感染させた。感染細胞はE2の存在下または非存在下で10日間培養され、その後DNA合成をin vitroでの〔3H〕チミジン取り込みによって測定した。50 MOIのAd-LacZを感染させた細胞と比較して、ERβの発現は、E2非存在下でのMCF-7細胞の細胞増殖を50%減少させた(図5)。E2はAd-ERβ感染細胞では細胞増殖の抑制を70%まで増大した。同様の結果は感染効率(MOI)が100のAd-ERβを用いても観察された。ERβによる細胞増殖の抑制が主にリガンド非依存性であるという知見は、処理血清中またはERβによって感染させた細胞中で保持される残留E2、またはERβのリガンド非結合性によって引き起こされていると考えられる。
【0052】
〔0078〕 マウス異種移植モデルにおける腫瘍形成に対するERβ発現の効果もまた調査された(図6)。LacZ、ERαまたはERβを発現するアデノウイルスを感染させたMCF-7細胞は、最初に凝集され、次に重合コラーゲンゲル中で再懸濁され、皮下にエストラジオールペレットを埋め込んだメスのヌードマウスの腎被膜下に移植された。細胞が移植された一ヶ月後、同等のサイズの腫瘍が非感染のMCF-7細胞およびAd-LacZまたはAd-ERβによって感染させた細胞から発生した。Ad-ERβで感染させたMCF-7細胞からは、有意な腫瘍は発生しなかった(下段右)。Ki67増殖指数から、非感染のMCF-7細胞およびAd-LacZまたはAd-ERαによって感染させた細胞の約70%がKi67染色したのに対し、Ad-ERβによって感染させた細胞では5%であったことを見いだされた(データ非掲載)。
【0053】
〔0079〕 これらの調査は、Ad-ERαではなくAd-ERβをMCF-7細胞に導入することが、マウス異種移植では腫瘍形成を防ぐことを示す。ERαおよびERβの同等レベルの発現は、イムノブロットにより感染細胞で検出され(データ非掲載)、このことから、これらの結果がERβによる補助因子または転写制御因子の過剰発現および非特異的なスケルチング(squelching)によるものであるとは考えにくかった。さらに、もしスケルチングがERβは腫瘍形成を防ぐメカニズムであれば、同様の結果がAd-ERαで感染させた細胞においても観察できるはずである。
【0054】
〔0080〕 実施例6 - MF101はエストロゲン受容体α(ERα)と機能的な相互作用をしない
〔0081〕 MF101が、乳房細胞および子宮細胞に対して不要な増殖効果を生じ、それによって潜在的に乳癌および子宮癌のリスクが増加するERαのアゴニストであるかどうかを確かめるため、ERαをER陰性U2OS骨肉腫細胞へ一過的にトランスフェクトされた。エストロゲン応答エレメント-チミジンキナーゼ(tk)-ルシフェラーゼ(ERE-tk-Luc)コンストラクトを、細胞へ一過的にコトランスフェクションした。MF101またはエストラジオールがその後生理的濃度で添加され、細胞は18時間インキュベートされたのちにルシフェラーゼ活性が測定された。図7で見られるように、MF101はERαを活性化しない;しかしながら、エストラジオールはERαを活性化し、またこのトランス活性化をする活性は純粋なエストロゲンアンタゴニストであるICI 182,780(ICI)によって阻害されうる。
【0055】
〔0082〕 実施例7 - MF101はエストロゲン受容体β(ERβ)選択的転写活性を引き起こす
〔0083〕 MF101のERβ媒介性効果を調査するため、ERβをU2OS骨肉腫細胞へ一過的にトランスフェクトした。ERE-tk-Lucコンストラクトを、一過的にコトランスフェクションした。MF101またはエストラジオールが、その後生理的濃度で18時間添加され、ルシフェラーゼ活性が測定された。図8に見られるように、MF101はERβを活性化する。MF101およびエストラジオールの両方はERβを活性化し、またこの活性はICI 182,780によってブロックされる。この結果は、エストラジオールが普遍的にERαおよびERβの両方と相互作用するが、MF101は選択的にERβのみと相互作用することを示唆する。
【0056】
〔0084〕 実施例8 - MF101は乳癌細胞で抗増殖性活性を示す
〔0085〕 研究室の次なる目的は、in vitroでの乳癌細胞に対するMF101の増殖効果を除外することであった。図9は、Cy-Quant Molecular Deviseシステムを使用し、MF101がER陽性乳癌細胞に対する抗増殖性活性を示すことを表す。MCF7細胞は内在性ERαを発現するが、SKBR3細胞はER陰性である。MF101はER陽性細胞でより高い抑制を示す。このことはER非依存的な抗増殖性効果を示し、そして増殖促進にどのような証拠もないことを示す。
【0057】
〔0086〕 実施例9 - MF101はTNFβの活性から骨細胞を保護し、骨粗鬆症を予防する可能性がある
〔0087〕 骨中では、エストロゲンは腫瘍壊死因子β(TNFβ)様の、特定のエストロゲン抑制可能な遺伝子を抑制し、それによって骨ミネラル化保護効果を媒介していると考えられる。骨細胞に対するMF101の潜在的効果を観察するため、ERβ(骨中の、より豊富なER)をU2OS骨肉腫細胞中に一過的にトランスフェクトした。TNFβ-tk-応答エレメント-ルシフェラーゼコンストラクト(TNF-RE-tk-Luc)を細胞へ一過的にコトランスフェクションし、MF101またはエストラジオールが加えられ、ルシフェラーゼ活性が18時間後に測定された。MF101およびエストラジオールの両方は腫瘍TNFβを阻害し、この阻害はICI 182,780(ICI)によってブロックされた。図10に示されたデータは、エストラジオールおよびMF101の両方が閉経後女性での骨量維持に効率的であろうということを示唆する。
【0058】
〔0088〕 実施例10 - MF101の個々のハーブ植物構成成分のER選択性
〔0089〕 いくつかの個々のハーブ植物のERαおよびERβの転写活性もまた評価されてた。本発明の一つの目的が、伝統的な中国の医学的アプローチに合わせて、全MF101処方を試験することであるため、実験室での試験は全処方に焦点を合わせられた。しかしながら、67のハーブ植物を一過的なトランスフェクションアッセイにより選抜したが、このうち33植物がERE-tk-LucレポーターまたはTNF-RE-tk-Lucレポーターによる活性化を示し、また8植物がERα選択性を示し、一方ERβの選択性を示したものは4植物であった。
【0059】
〔0090〕 実施例11 - MF101の完了した第一相臨床試験による実現可能性および毒性データ
〔0091〕 第一相臨床試験をサンフランシスコ大学(カリフォルニア)で行って、一過性熱感および閉経期に付随する他の症状を軽減するためのMF101の安全性および実現可能性を評価した。この調査は、7日間で少なくとも56回の一過性熱感を報告した50から65歳の31人の健康な閉経後女性間での非対照非盲検の試験であった。被験者は、5グラムの粉末として顆粒化したMF101を温水と混合し、一日に二回、30日間経口投与された。一次結果測定は安全性であり、二次的結果には、血清エストラジオール、膣成熟度および骨吸収マーカーに対する効果、並びに、一過性熱感の頻度の変化が含まれた。この調査には、30日間の導入期(run-in period)の後に30日間の治験薬の投与期間が含まれる。表6は除外された解析を含む被験者の数および除外された理由についてまとめている。
【0060】
【表6】

【0061】
〔0093〕 平均して、試験を完了した調査被験者は、30日間の投与期間にわたり、所定用量の87.8%のMF101を投与された。入手可能な毒性データを伴う25人の調査被験者において、NCI-一般毒性分類(National Cancer Institute - Common Toxicity Criteria)により測定されたグレードIIIまたはIVの有害事象は報告されなかった。調査被験者によって調査を行う研究者に報告され、そしてことによるとMF101に関係するもの、またはおそらくMF101に関係するものとして分類される、合計9つの有害事象があった。NCI-一般毒性分類にしたがって、5つの有害事象がグレードIに分類され、4つの有害事象がグレードIIとして記録された。報告された最も一般的な毒性は、軽微な悪心または腹部膨満であった(25人の女性被験者中4人)。他の5つの有害事象は以下の理由、頭痛、嗜眠、抑うつ、気分変動および血圧の上昇、であった。調査被験者の誰一人として報告されている副作用のための治療は必要としないばかりか、入院も皆無であった。
【0062】
〔0094〕 調査の開始から終了まで血液検査および尿検査を受けた22人全ての被験者は毒性解析群に含まれた。全血球数、化学的性質、肝パネル、血清中または尿中のエストロゲンまたは性腺刺激ホルモンレベルは、どの研究機関でも統計学的に有意な変化は見られなかった。
【0063】
〔0095〕 本調査は、主要評価項目として有効性を測定するようには設計されていなかったが、30日間の処置後、一過性熱感の頻度および重症度について統計学的に有意な減少がみられた。一過性熱感の平均頻度は、ベースラインで7日間あたり57.3回、処置後で44.9回であった(p=0.003)。一過性熱感スコア(頻度に重症度を乗じた数値)はベースラインで98.0だったのに対し、処置後では81.7に減少した(p=0.03)。調査を完了した22人の女性被験者のうち、30日間の薬物療法調査後、18人(82%)は一過性熱感がより少なくなったのに対して、4人(18%)のみはより多くなった。薬物療法調査後の最後の7日間と比較すると、ベースラインで測定された7日間にわたる一過性熱感の頻度において22%の減少がみられた(p=0.0035)。30日間の処置後の一過性熱感スコア(頻度に重症度を乗じた数値)では、17%の減少がみられた。
【0064】
〔0096〕 以上をまとめると、予備的な臨床治験データは、MF101が一過性熱感の処置のために安全であり、また良好なコンプライアンスで適切に投与されることが出来ることを示す。MF101は一過性熱感の頻度および重症度を減少した;しかしながら、その効果は小さい。本調査の結果は図4に示され、ここでは22人の被験者中7人で、閉経期症状の40%以上の減少が示されたことが示される。
【0065】
〔0097〕 実施例12 - 用量増加調査
〔0098〕 実施例11での記載よりも長期間で、MF101のより高い用量との比較を含む、第二相調査のための、二重盲検プラセボ対照の無作為化臨床試験が行われる。MF101の用量は、乾燥重量で5グラムのMF101を一日あたり二回、および乾燥重量で10グラムのMF101を一日あたり二回である。薬物療法調査は、ハーブ植物のお茶の苦みから起こりうる胃腸の不調の数を減少させるとともに、液体エキスの好ましくない味によって調査を中断することを最小限にするために、カプセル形状に詰められた。
【0066】
〔0099〕 結論
〔00100〕 ERαが乳癌細胞増殖を促進し、それに対してERβは増殖および腫瘍形成を阻害するという知見に基づき、ERβ選択的エストロゲンは乳癌の促進をせず、また一過性熱感を防ぐ可能性がある。本明細書中での結果は、選択的に共制御タンパク質を動員することにより、ERβを通じて、MF101が遺伝子転写を制御することを示す。ホルモン療法でのエストロゲンとは異なり、MF101はMCF-7細胞の増殖を刺激せず、c-mycおよびサイクリンD1などの増殖性遺伝子を活性化しないことから、MF101が乳癌を促進しないことが示唆される。上述した実施例11で概説された調査では、MF101はどのような有害事象も誘発せず、また試験を終えた22人の女性被験者中7人で一過性熱感の40%以上の減少を生じた。これらの結果は、MF101がERβ選択的エストロゲンを含むことを示すものであり、このことは、MF101が一過性熱感を防ぐホルモン療法に用いられる非選択的エストロゲンへの安全な代替品であることと一致している。
【0067】
〔00101〕 ウィミンズ・ヘルス・イニシアティブ試験がHTのリスクが利点を上回ることを示した結果の後、多くの女性が安全で効果的な、閉経期症状のためにHTで用いられたエストロゲンの代替物を熱望している。その間に、最近の調査では、閉経周辺期および閉経後の女性の79%が、植物性栄養補助食品(BDS)を使用していると報告した。BDSの使用の普及にも関わらず、植物由来薬(botanical)の作用機序、有効性および安全性は厳密に検討されていない。MF101は、一過性熱感および他の更年期症状を軽減するため、伝統的な中国医学(TCM)で歴史的に用いられている22種類のハーブ植物を含む製剤である。本明細書中の結果はMF101には一過性熱感を防ぐために臨床的に利用出来る選択的エストロゲン受容体活性があることを示す。
【0068】
〔00102〕 MF101がERβ選択的であるという知見は、女性の一過性熱感の治療におけるERβの役割を調査するためには類のない機会を提供する。上記で考察したように、有望な単群の第一相臨床試験は、一日に7回より多い中等症から重症の一過性熱感を報告するか、または一週間に50回より多い中等症から重症の一過性熱感を報告する、40代から60代で外科的に誘発された健康な閉経後女性、または自然に閉経した健康な閉経後女性で、MF101を用いて行われた。試験の始めの30日間(導入期間)に、日々の一過性熱感の頻度および重症度を記録した日誌、並びに研究機関での血液学値、血液化学的性質、肝臓機能、腎機能およびホルモン状態の測定値を含む、ベースラインの結果測定値が得られた。導入期間に続き、女性被験者は30日間、一日に二回、水で再構成された5グラムのMF101抽出物を経口投与された。治療相の最後に、同じ結果測定が繰り返された。22人の女性被験者が試験を完了した。一過性熱感の頻度および重症度の両方において、統計学的に有意な減少が見られた。一過性熱感の平均頻度は、ベースラインでは一過性熱感が週に57.3回だったのに対し、処置後では44.9回に減少した(p=0.003、対応-t検定)(データ非掲載)。一過性熱感スコア(頻度に重症度を乗じたもの)もまた、ベースラインでの98.0から処置後には81.7へと減少した(p=0.031、対応t-検定)。7人の女性被験者は、一過性熱感の40%以上の減少を報告した(図4)。これらのデータは、中等症から重症の症状である数人の女性被験者では、MF101が一過性熱感の頻度および重症度を減少したことを示唆する。
【0069】
〔00103〕 以上の実施例は、MF101がERβ媒介性転写経路のみを誘導することを示す。驚くべきことに、MF101は精製ERαおよびERβとは等しく結合する。この知見は、精製されたERとのリガンド結合活性のためだけの化合物をスクリーニングすることは、ERサブタイプ特異的化合物の創薬のための効率的な戦略ではないことを示す。MF101のERβ選択性は、ERβがEREと結合し、またGRIP1およびCBPなどの共制御因子を動員することを可能にする、高次構造を作る能力に由来することが決定された。MF101によるERβへの活性化補助因子の選択的動員は臨床的に重要である。というのも、ERαがMCF-7乳癌細胞の細胞増殖および腫瘍形成を媒介するのに対し、ERβがER陽性乳癌細胞中で腫瘍抑制因子として作用するためである。(Paruthiyil, S. et al., "Estrogen receptor beta inhibits human breast cancer cell proliferation and tumor formation by causing a G2 cell cycle arrest," Cancer Res. 64, 423-8 (2004);Strom, A. et al., "Estrogen receptor beta inhibits 17beta-estradiol-stimulated proliferation of the breast cancer cell line T47D," Proc. Natl. Acad. ScL USA 101, 1566-71 (2004))。ERαへの活性化補助因子の動員の欠乏が、MF101がc-mycおよびサイクリンD1の転写を活性化しなかったこと、またはMCF-7細胞の増殖を刺激しなかったことという知見を説明出来る。
【0070】
〔00104〕 本発明の好ましい態様が本明細書中で示されまた説明されるが、このような態様が例としてのみ提供されるものであることは、当業者には明白であろう。今や、当業者は、本発明から逸脱することなく、多数のバリエーション、変更、および置換を思いつくであろう。ここに記載した本発明の態様の多様な代替が、本発明を実施する際に利用されうることを理解されるべきである。後述する請求項は本発明の範囲を定義し、またこれらの請求項およびそれらの均等物の範囲中にある方法および構造が、それによって保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0071】
〔0010〕 本発明の新規な特徴は、本書に添付した請求の範囲に詳述される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用されている例証される態様を説明する後述される詳細な説明、および以下の添付図面を参照することによって得られる。
【図1】〔0011〕 図1Aは、ERαおよびERβ発現細胞でのMF101の活性について比較した線グラフである。MF101は、ERβによりERE-tk-Lucの用量依存的な活性化を生じるが、ERαによっては活性化は見られなかった。 〔0012〕 図1Bは、E2、MF101およびMF101+ICIの組合せ、MF101+ラロキシフェン(Ral)の組合せおよびMF101+タモキシフェン(Tam)の組み合わせでの効果について比較した棒グラフである。MF101によるERE-tk-Lucの活性化は、ICI、RalおよびTamによりブロックされた。 〔0013〕 図1Cは、MF101の存在下でのU2OS-ERβ細胞中でのケラチン19のmRNA発現量の増加について示した棒グラフである。 〔0014〕 図1Dは、MF101がU2OS-ERα細胞中でのケラチン19のmRNA発現にはほぼ効果がないことを示した棒グラフである。
【図2】〔0015〕 図2Aは、MF101がERβおよびERαに結合することを示した線グラフである。 〔0016〕 図2Bは、MF101がケラチン19 EREにはERβを動員するが、ERαは動員しないことを表したゲルである。 〔0017〕 図2Cは、ERαのエラスターゼ消化に対する、エタノール(対照)、E2(ポジティブ対照)およびMF101の効果を示したゲルである。MF101と結合した場合、対照に比べて、ERαはわずかにエラスターゼに対する保護の増加が見られる。 〔0018〕 図2Dは、ERβのエラスターゼ消化に対する、エタノール(対照)、E2(ポジティブ対照)およびMF101の効果を示したゲルである。
【図3−1】〔0019〕 図3Aは、対照、E2およびMF101のそれぞれによって処理した細胞の、3H-チミジンの取り込みの差を示した棒グラフである。一般的に、MF101は対照に比べて、3H-チミジンの取り込みを大幅には増加しなかった。 〔0020〕 図3Bおよび3Cは、MF101が細胞中のc-myc遺伝子(図3B)およびサイクリンD1遺伝子(図3C)を活性化しなかったことを示した棒グラフである。
【図3−2】〔0021〕 図3D-3Fは、対照、ジエチルスチルベストロール(DES)およびMF101の細胞増殖に対する効果を示した写真である。
【図3−3】〔0022〕 図3Gは、対照、DESおよびMF101の異種移植片細胞増殖に対する効果を示した棒グラフである。MF101は移植片増殖を促進しなかったが、DESは異種移植片質量の実質的増加を引き起こした。 〔0023〕 図3Hは、対照、DESおよびMF101の子宮角の質量増加に対する効果を示した棒グラフである。MF101は子宮角の増殖を刺激しなかったが、一方DESは子宮角の増殖の実質的増加を刺激した。
【図4】〔0024〕 図4は、閉経期女性でのMF101の効果を示した表である。
【図5】〔0025〕 図5は、エストラジオールの存在下および非存在下での、MCF細胞の増殖に対するERβの効果を表した棒グラフである。
【図6】〔0026〕 図6は、in vivoでの細胞増殖に対する、ERαおよびERβの効果を表す。
【図7】〔0027〕 図7は、エストラジオールがin vivoにおいてERαを活性化するが、MF-101はERαを活性化しないことを示した三次元棒グラフである。
【図8】〔0028〕 図8は、MF-101が選択的にERβを相互作用することを示した三次元棒グラフである。
【図9】〔0029〕 図9は、MF-101の抗増殖性効果を示した線グラフである。
【図10】〔0030〕 図10は、MF-101がTNFβ活性から骨細胞を保護することを示した三次元棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉経期を治療するために十分な量のハーブ植物組成物を閉経期被験者に投与することを含み、前記ハーブ植物組成物が以下のハーブ植物、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix Aspargi、Radix Pueraria、Radix Atractylodis MacrocephalaおよびHerba Epimediaの混合物または前記混合物の抽出物を含む、閉経期を治療する方法。
【請求項2】
前記治療が、閉経期症状の少なくとも一つの重症度または頻度を減少させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記閉経期症状が一過性熱感である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
閉経期症状が、疲労、短気、不眠、集中力の低下、抑うつ、記憶喪失、頭痛、不安、神経過敏、間欠性めまい、錯感覚、動悸、頻拍症、吐き気、便秘、下痢、関節痛、筋肉痛、手足の冷え、体重増加、尿失禁、膣乾燥および骨盤筋緊張の損失からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
被験者に対して投与されるハーブ植物組成物の量が、被験者の体重1キログラムに対して、約0.1から10 mgのハーブ植物組成物である、請求項1に記載された閉経期症状を治療する方法。
【請求項6】
ハーブ植物組成物がハーブ植物混合物の抽出物である、請求項1に記載された閉経期を治療する方法。
【請求項7】
Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix Aspargi、Radix Pueraria、Radix Atractylodis MacrocephalaおよびHerba Epimediaを組み合わせて混合物を形成すること;
混合物を煮出すこと;および
水分と混合物を分離してハーブ植物組成物を形成すること;
を含む、ハーブ植物組成物を調製する方法。
【請求項8】
(d) ハーブ植物組成物から水分を除去して、脱水ハーブ植物組成物を提供すること、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
脱水ハーブ植物組成物を希釈剤と組み合わせて、再構成ハーブ植物組成物に調製するためのこと、をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記希釈剤が水を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ハーブ植物有効成分として、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix Aspargi、Radix Pueraria、Radix Atractylodis MacrocephalaおよびHerba Epimediaを含む、組成物。
【請求項12】
以下の表
【表1】

に記載された比率でハーブ植物有効成分を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
以下の表
【表2】

に記載された比率でハーブ植物有効成分を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
以下の表
【表3】

に記載された比率でハーブ植物有効成分を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
表に記載されたハーブ植物有効成分から本質的に構成される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ハーブ植物有効成分、Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix Aspargi、Radix Pueraria、Radix Atractylodis MacrocephalaおよびHerba Epimediaの混合物の抽出物を含む、組成物。
【請求項17】
ハーブ植物有効成分の混合物が以下の表
【表4】

に記載された比率でハーブ植物有効成分を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
ハーブ植物有効成分の混合物が以下の表
【表5−1】

【表5−2】

に記載された比率でハーブ植物有効成分を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
ハーブ植物有効成分の混合物が以下の表
【表6−1】

【表6−2】

に記載された比率でハーブ植物有効成分を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
混合物が以下の表に記載されたおよその比率でのハーブ植物有効成分から本質的に構成される、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
Herba Scutellaria Barbata、Radix Sophora Subprostratae、Radix Anamarrhena、Semen Glycine Sojae、Radix Glycyrrhiza、Rhizoma Rhei、Fructus Tritici Levis、Radix Astragali、Radix Rehmania、Fructus Ligustri Lucidi、Semen Zyziphi Spinozae、Plumula Nelumbinis、Poria Cocos、Rhizoma Alismatis、Cortex Moutan Radicis、Fructus Corni、Radix Achyranthis、Concha Ostrea、Radix Aspargi、Radix Pueraria、Radix Atractylodis MacrocephalaおよびHerba Epimediaの抽出物の混合物を含む、組成物。
【請求項22】
抽出物が、以下の表
【表7−1】

【表7−2】

に記載された比率で組み合わされる、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
抽出物が、以下の表
【表8−1】

【表8−2】

に記載されたおよその比率で組み合わされる、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
抽出物が、以下の表
【表9−1】

【表9−2】

に記載されたおよその比率で組み合わされる、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
候補薬がERα結合EREおよびERβ結合EREを活性化する能力を決定すること;および
候補薬がERα結合EREおよびERβ結合EREを活性化する能力を比較し、それによりERβ結合EREをERα結合EREよりも強い程度にまで活性化する候補薬が閉経期治療薬として決定されること、を含む、閉経期治療薬として用いるための候補薬を評価する方法。
【請求項26】
候補薬が乳癌細胞の増殖を刺激する能力を評価すること;および
乳癌細胞増殖の刺激を実質的に何も示さない候補薬を閉経期治療薬として選抜すること;
をさらに含む、請求項25に記載された方法。
【請求項27】
閉経期治療薬が約10%以下の乳癌細胞増殖刺激を示す、請求項26に記載された方法。
【請求項28】
閉経期治療薬が約5%以下の乳癌細胞増殖刺激を示す、請求項27に記載された方法。
【請求項29】
閉経期治療薬が、対照と比較して、乳癌細胞増殖を実質的に刺激しないことを示す、請求項28に記載された方法。
【請求項30】
対照であるエストラジオール(E2)および候補薬の存在下で、ERβのタンパク質分解のイメージを得ること;
(a)で得られたイメージを比較すること;および、
対照およびE2両方について異なるタンパク質分解パターンであるERβについてのタンパク質分解パターンを示す候補薬を、閉経期治療薬として選抜すること;
を含む、閉経期治療薬として用いられる候補薬を評価する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−538118(P2008−538118A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504416(P2008−504416)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/011862
【国際公開番号】WO2006/107745
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507200569)バイオノボ・インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】