閉鎖環境中の物質からサイン揮発性化合物の存在を検出する方法および装置
閉鎖環境内の標的物質に関連する揮発物が、一定時間にわたって捕捉されて濃縮されるようにする捕捉システム。捕捉システムは、閉鎖環境内に配置されて、標的物質に関連する特定の揮発物を捕捉するように構築された「表面」を有するパッケージを含む。捕捉された揮発物は表面から脱着されて解析され、結果は標的物質からの既知のサイン揮発性プロファイルと比較される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖環境中の物質からサイン揮発性化合物の存在を検出する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中で、全貨物の約90%がコンテナに入れて輸送され、年間20億個を超えるコンテナが輸送されている。このグローバル輸送システムは、世界経済にとって重要なインフラであるが、非常に脆弱なものでもある。全コンテナ内容物のうち、積荷目録と照合してチェックされているのは、全部で2%未満であると推定される。コンテナのセキュリティに関して最も重要と思われる問題は、コンテナの不正な変更、不法物質の輸入、およびテロリスト活動の脅威である。しかしながら、まだ認識が浅いながらも非常に重要な問題として、望ましくないペストや疾病の輸入を防止するバイオセキュリティ(検疫としても知られる)がある。このことは、多くの国々、とりわけ独特で影響を受けやすい生態系および生物多様性を有するニュージーランドやオーストラリアなどの孤立した地域に対して当てはまる。各国が非常に有効なバイオセキュリティシステムを備えていることが、生物工業にとって決定的に重要になってくる。ニュージーランドにおいては、年間に50もの新しい生物が招かれざる客として侵入していると推定される。
【0003】
現在のところ、ニュージーランドには、一年間に50万個を超える船積コンテナが上陸し、これらのコンテナがバイオセキュリティに関する重大な懸念を引き起こしている。最近のニュージーランドにおける分析では、受け入れた積載済みコンテナの24%および空コンテナの19%が、生物物質によって汚染されており、それらの殆どが内部で起こっていることが示されている。検査した積載済みコンテナのうちの30%以上が、積荷目録にない木製の梱包材を有しており、全コンテナのうちの16%が迅速なバイオセキュリティ処置を要する木製の梱包材を有していることがわかった。国際的にも、未処理の木はペストや疾病の隠れ場所を提供できることから、バイオセキュリティに対する大きな脅威となっているが、アリ、カリバチ、シロアリ、ゾウムシ、蚊、ヘビ、クモ、サソリ、およびカタツムリを含む他の多くのバイオセキュリティを脅かすものもまた存在する。このような種は、生産的かつその土地固有の生態系および公衆衛生に対して深刻かつ継続的な損害を与えうることが経験的に分かっている。
【0004】
国境警備は、多くの国々にとって非常に重要な問題であり、望ましくない危険または有害な物質が確実に輸入されないようにするために、人材と、装置や適切な方法を必要とする。典型的には、兵器、爆発物、麻薬および不法入国者を阻止することに焦点をあてて、努力が続けられてきた。さらに最近の国境警備の局面としてバイオセキュリティがある。バイオセキュリティは、ある国の農業、動植物および最終的には経済に損害的影響を与えうる生物の不慮の輸入を阻止することを狙ったものである。
【0005】
国がその独自の生態系(生産的およびその土地固有の)と生物多様性を維持するためにもバイオセキュリティは非常に重要である。生態系に対する脅威は周知であり、ニュージーランドにおいては、たとえば、バロアダニ、ペインテッド・アップル・モス(painted apple moth)、クローバ・ルート・ウィーヴィル(clover root weevil)、アルゼンチンアリ、ガム・リーフ・スケルトナイザ(gum leaf skeletoniser)、ヒアリ(red imported fire
ant)および多くの他のものが挙げられる。したがって、バイオセキュリティの脅威に対処するために適切な方法および手順を有する必要がある。
【0006】
ニュージーランドにおいては、農林省(Ministry of Agriculture and Forestry(MAF))がバイオセキュリティの責務を負っている。農林省の検疫所(MAF Quarantine Service(MQS))は、国境におけるバイオセキュリティ要件の順守を確保する役割を担っている。目視検査、リスクプロファイリング、貨物の積荷目録または明細書の検査だけでなく、MAFは最近ではX線や探知犬を用いてその能力を高めている。こうした能力によって、年間400万人程度の旅客の到着(およびその荷物)によってもたらされるバイオセキュリティの脅威が一見よく管理されてように見えるかもしれない。同様に、他国から差し出された手紙も、X線と探知犬とを併用してよく検査されているようにみえる。
【0007】
しかしながら、このような進歩は、航空輸送には必ずしもあてはまらず、船輸送でも大きな物流上の問題が残されている。上記のような航空経路でのバイオセキュリティ危害の偶発的持ち込みの潜在性は、まだなお大きい。バイオセキュリティ脅威はコンテナでめったに起こらないにせよ、ニュージーランドにおける交通量は大きく、一年間に約15%の成長をみせ、その影響は非常に深刻なものになるおそれがある。バイオセキュリティの脅威は、貿易と旅行産業の成長に伴ってしか増大しない。MAFは、船の積荷目録からその内容が危険品であると識別された場合に、任意のコンテナ輸送における一定割合のコンテナを選び出して精密検査を行う手順をとっている。これに加えて、荷下ろし場所において、他のコンテナもMAFの認定検査官による検査される。
【0008】
この方式では、多くのコンテナが精密検査を免れることになる。現行では、比較的徹底した調査を行うかどうかの決定は、必ずしも信頼できるとは限らない積荷目録に基づいて行われている。たとえば、コンテナは、積荷文書には表れてこない梱包材の形態にある木材を含んでいることが多い。
【0009】
この木材には、ペスト(幼虫として)や疾病を隠し持っている可能性が高い未処理の辺材/樹皮が含まれているおそれがある。
包括的な検査は、物流管理上非常に難しく、時間と費用もかかる。年から年中、昼夜を問わず、ニュージーランドのオークランド港だけでも、2分間おきに12メートル相当のコンテナが荷下ろしされる。
【0010】
上記の詳細は、ニュージーランドだけにあてはまることである。航空および海上貨物輸送のバイオセキュリティの問題は、コンテナの数、したがってそれらを監視するのに必要な物流管理がさらに大きい他の国々においても当てはまることである。
【0011】
したがって、現行の国境におけるバイオセキュリティ手順を改良し、易化するためには、さらに別の迅速で強化された検出および妨害能力を提供するための揮発物検出技術を使用することが考えられる。特に航空および海上貨物輸送コンテナの検査のための、この付加的能力を提供するために多くの技術が提案されている。
【0012】
(先行技術)
X線撮影は周知であり、バイオセキュリティ脅威を検査するためにすでに空港で使用されている。X線検査は、コンテナ内の物体の画像を提供するとともに、化学的識別能も提供できる非侵襲的な技術である。人間や、薬品や爆発物などが存在しないかどうかを調べるために、大型のコンテナ用のX線装置も開発されている。こうした装置は大型であり、埠頭や空港に専用の場所を必要とし、非常に高価なものである。さらに、このような装置では、昆虫の卵の塊などの小型または不明瞭な生物脅威を検出することは非常に困難である。コンテナが大型になると、非常に高いX線エネルギーが必要とされ、操作者に潜在的な危害を及ぼす可能性もある。
【0013】
コンテナ内の隠れた物体を探査するための他の非撮影技術としては、特定の化学物質または化学組成物を検出する原子核に基づいたプローブビームを使用することが挙げられる。大型コンテナ内部に薬物および爆発性の物質が入っていないかどうかを調べるためのシステムが開発されている。この技術では、様々な原子核(すなわち、熱中性子、パルス中性子、高速中性子)またはγ線発生器を用いて、コンテナを調べて、その内容物を構成する化学物質を検出する。上記のプローブビームは、内部の物体と相互作用して、化合物が存在することを示す二次γ線を発生し、この二次ガンマ線を適切なセンサを用いて検出することができる。ただし、物質に特徴的な二次γ線を検出するために、センサを相対的に近づける必要がある。
【0014】
隠れた物質の化学組成を提供することのできる別の技術として、核四重極共鳴(NQR)がある。NQR技術は、物体にRF線を照射し、物質の分子が弛緩する際に再度放射される放射線を介して検出することによるものである。この方法は特定の化学物質に対しては非常に高感度であり、爆発物の検出には効果的に用いられてきた。
【0015】
上記検出技術は、電磁または粒子ビームを用いて物体を検査し、コンテナ内の物質の当該ビームに対する反応から検出を行うという点で、能動的な方式である。植物麻薬を検出するために開発された受動的な技術もある。この技術は、カリウム40が発する天然の放射線を検出することによるものである。K−40は、すべての植物物質内に存在する。この方式は、物質がコンテナ内に隠されている場合に当該物質を検出するために開発されたものである。この技術は非侵襲的であり、特に、マリファナ、たばこ、および大麻の検出に優れている。この技術では、大型で技術的に複雑かつ高額な設備が必要になる。この技術は、視線方向に依存せず、本質的には、コンテナの通行については比較的遅いこともある「ドライブスルー」方式である。また、検出可能な試料の最小寸法の問題もある。
【0016】
上記で検討したすべての技術について、検出装置は高額であり、熟練した操作者とともに専用の設備が必要である。上記技術の多くは、検問を行えるようにトラックまたはコンテナを装置に通過させる必要がある。大型かつ高額のシステムを使用せずにバイオセキュリティおよび他の脅威の検出を行い、脅威が収容されている環境に対して本質的に非侵襲的な手法を開発することが望ましい。
【0017】
(麻薬や爆発物に対して)開発されてきた代替の手法としては、蒸発または揮発性化学物質の検出がある。空港において、人の上または荷物の中の微量の爆発物または薬物を検出するためのセンサおよび付随する装置を開発するために相当の努力がなされてきた。麻薬または爆発物に付随する蒸気または粒子を検出するためにその空気を採取する、大型の航空コンテナまたは船積コンテナに特化した多くの開発もなされてきた。次に先行技術のいつくかについて記載する。
【0018】
特許文献1は、コカインの検出のみに焦点をあてた性能について記載している。ここでは、船積コンテナから空気を抽出し、「フィルタ」上を通過させてコカイン臭気を捕捉する方法について検討している。上記フィルタは、綿、シラン化ガラスウール、金属またはテフロン(登録商標)からなる組織布または網とすることができる。目的の上記の結合を高めるためにコーティングを施してもよい。次に上記臭気をイオン移動度分光法(IMS)、IMS質量分析(MS)、ガスクロマトグラフィー(GC)、GC−MSまたはGC−MS−MS装置に提供し、コカインの有無を判定する。さらに別の化学物質であるエクゴニジンもつい最近までコカインが存在したことを示すものであり、コカインだけでなくこの化学物質の存在も(誤認警報を低減することにより)検出率を高めることが確認されている。通常はコンテナからフィルタ上へ空気を抜き出し、後で測定を行う。コンテナに穴が全く存在しない場合には、空気を抽出できるようにコンテナは穿孔され得る。サンプ
リング用の空気を迅速かつ容易に抽出するためには、試料の容積は大きい方が好ましい。
【0019】
特許文献2は、微量の麻薬または爆発物を検出する際にIMS方式を使用する適用例を含んでいる。また、類似の用途に対して質量分析計を使用することを教示した、2つの他の特許明細書、すなわち、特許文献3および特許文献4についても言及している。これらの明細書は、コンテナ内の粒子状物質をさらに長期間放置することで、蒸気濃度を高めることが可能であると教示している。特許文献2は、既存のノウハウに比べて検出性能を高めるIMS方式の詳細な仕組みおよび改善を提供している。
【0020】
特許文献3は、海港におけるコンテナの応用領域について検討している。特許文献3では、コンテナ内の天然の粒状物質は、蒸気を吸収するのにさらに時間がかかり、この蒸気が密輸品に関連する可能性があることを述べている。粒状物質をコンテナ全体に移動させる重要な工程であり、該粒状物質は、コンテナから測定システムに吸い出される。
【0021】
特許文献5は、薬物および爆発物の総合的な検出を目的としており、特に、後続の分析のために蒸気の照合を行う採取/脱着ユニットを目的としている。特にIMS検出器装置に対して高値側および低値側の揮発性化合物(および不溶な粒状物質)を除去して、関心蒸気をより良好に区別するためのフィルタリングの向上を目的としている。特許文献5は、この方式を船積コンテナに適用することについても言及している。
【0022】
特許文献6は、閉鎖されたコンテナ内の麻薬を検出するための方法を教示している。通気口からコンテナ内に空気を送り込み、別の出口から排出させる。ドリルで穴を開けるか、ゴム製シールの間にチューブを挿入するようにしてもよい。流入空気は、粒状物質を撹乱する性質のものであり、この空気を出口から引き出すようにしてもよい。特許文献6には、空気は熟練した探知犬に提示することもできるし、麻薬の存在可能性を判定するための化学分析に用いることもできることが記載されている。空気をフィルタ上に吹き付けて、このフィルタを後で探知犬に提示するようにしてもよい。フィルタ(その上に揮発物が存在する)を探知犬に提示するための何ら特別な方法は特許文献6によって提供されていない。
【0023】
さらに、特許文献7は、外部のガスをコンテナに導入にして、内部の空気を抜く手段を教示している。これを違法物質検出のためにガス分析計に提示してもよい。また、必要と判断される場合には、容器を燻煙消毒するために用いてもよい。特許文献7は、望ましくない昆虫や寄生虫を検出するための手段についても言及している。具体的な検出手段についての言及はなく、コンテナに空気を入出させることだけに関するものである。
【0024】
上記すべての例において、バイオセキュリティ脅威の存在の検出については言及されていない。閉鎖空間内の二酸化炭素(CO2)濃度をモニタすることによって、ペストまたは昆虫を検出する先行技術にはいくつかの例がある。
【0025】
特許文献8は、昆虫によって吐き出されたCO2を検出する方式を記載している。ここでは、昆虫がCO2を蓄積できるような一定体積の空間をパージする方式が用いられている。これにより、天然のバックグラウンドレベルに対して、昆虫由来のCO2を検出することが援助される。原則的には、昆虫を含んだ物質をこの装置のチャンバ内に入れる。
【0026】
特許文献9は、昆虫、特にシロアリが建造物内にいることを示すために、CO2の存在を用いる同様の方法について記載している。この技術では、赤外線CO2検出器を用いている。壁空間に針を通して、空気を引き出して分析器に入れる。これを、周辺からのものと比較する。数ppmの増加が、侵襲を示す場合もある。
【0027】
先行技術は、適当な空気抽出装置を介してコンテナから空気を抽出することによる技術であり、前記空気をGC,MSなどの従来の分析装置によって測定する前に、捕捉、場合によって濃縮する技術を開示している。空気を抽出するためには、海上輸送用のコンテナには適当な穴が開いている必要があるが、もし無い場合にはコンテナを穿孔する必要がある。いくつかの技術では、その内部またはその上に吸収された特定の蒸気を有する物質を捕捉するために、粒状物質/蒸気を抽出する前にコンテナを振盪する必要がある。
【0028】
以下の説明および請求項において、「標的物質」という表現は、閉鎖環境内で同定しようとするあらゆる物質を意味する。本発明はとりわけバイオセキュリティや他の脅威などの望ましくない物質の検出に関するものであるが、本願に開示する技術は、閉鎖環境内にありうる広範な物質を検出するために利用可能であることを理解されたい。
【特許文献1】国際公開第98/17999号(Neudorfl)
【特許文献2】欧州特許第0447158A2号(Danylewych)
【特許文献3】米国特許第4,580,440号(Reid)
【特許文献4】米国特許第4,718,268号
【特許文献5】カナダ国特許第2,129,594号(Nacson)
【特許文献6】国際公開第99/38015号(Andersonら)
【特許文献7】米国特許第5,795,544号(Matz)
【特許文献8】米国特許第3,963,927号(Bruce)
【特許文献9】米国特許第6,255,652号(Moyer)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、従来の既知の方式および方法の不都合を有さない、閉鎖空間内の標的物質のサイン揮発性成分を検出するための手段および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
したがって、本発明は、一態様において、閉鎖環境内の標的物質のサイン揮発性化合物を検出する方法からなると言える。この方法は、本明細書で定義する「表面」を含むパッケージを提供する工程であって、前記パッケージは、空気流が前記表面上を通過できるように、標的物質からの揮発性化合物が空気中で運ばれて、前記表面によって捕捉されるようにする手段を備える、工程と、
パッケージを長い時間閉鎖環境内に配置する工程と、
捕捉された揮発物を表面から脱着させる工程と、
脱着された揮発物を、標的物質のサイン揮発性化合物の既知のプロファイルのデータベースと比較する工程とを含む。
【0031】
好ましくは、前記表面は、適切に処理された場合に、捕捉した揮発性化合物を放出する吸着性材料または吸収性材料からなる。
好ましくは、前記パッケージは、サイン揮発性化合物が前記表面上で濃縮されるのに十分な時間にわたって、閉鎖領域内に配置され、濃縮時間の満了時にパッケージを閉鎖環境から取り出して、分析のために揮発性化合物を表面から遊離させる。
【0032】
好ましくは、前記パッケージは標的物質のサイン揮発性化合物が前記表面上に吸着されるように閉鎖環境内に配置され、前記パッケージは、閉鎖環境の外部の装置によって前記表面を調べることができるようにする送信機を含む。
【0033】
好ましくは、前記装置は、適切な時間のあいだ、前記表面の上方に空気を引き込めるようにする手段を含む。
好ましくは、空気は前記表面の上方に一定時間のあいだ引き込まれる。
【0034】
好ましくは、前記パッケージは、結果を遠隔測定法による連絡できるようにする補助検出装置を含む。
好ましくは、前記パッケージは、空気を前記表面上方に移動させるようにした電気ポンプまたはファンを含む。
【0035】
好ましくは、前記パッケージは、前記電気ポンプまたはファンに電力を供給する電気蓄電池を含む。
好ましくは、前記表面は、適切に処理された場合に捕捉した揮発性化合物を放出する吸着性材料または吸収性材料からなる。
【0036】
好ましくは、前記表面から揮発性化合物を遊離させるための処理は、表面を制御加熱することからなる。
別の態様において、閉鎖環境内の標的物質のサイン揮発性化合物を検出する方法は、
本明細書中で定義する「表面」を含むパッケージを提供する工程と、
前記パッケージを前記閉鎖環境中に長時間にわたって配置する工程と、
標的物質によって発生され、閉鎖環境内の空気によって運ばれる揮発性化合物が、前記表面によって捕捉されるようにする時間のあいだ、空気流を前記表面の上方に通過させる工程と、
捕捉された揮発物を前記表面から脱着する工程と、
脱着された揮発物を分析する工程と、
脱着された揮発物を、標的物質のサイン揮発性化合物の既知プロファイルのデータベースと比較する工程とを含む。
【0037】
別の態様において、本発明は、標的物質のサイン揮発性化合物を検出する方法からなると言える。前記手段は、
閉鎖環境内に配置するように構成されたパッケージと、
閉鎖環境内の空気流がパッケージを通過できるようにする、パッケージに付随する手段と、
前記パッケージ内に配置される本明細書中で定義する表面であって、空気流がその上方を通過して空気流内の揮発性化合物が該表面によって吸着されるように配置される、表面と、
前記表面によって捕捉された揮発性化合物が脱着されるようにする手段と、
脱着された揮発性化合物を分析し、該化合物のプロファイルを標的物質のサイン揮発性化合物の既知プロファイルのデータベースと比較する手段とを備える。
【0038】
好ましくは、前記装置は、適切な時間のあいだ、パッケージ内および前記表面の上方に空気を引き込めるようにする手段を含む。
好ましくは、前記表面は、適切に処理された場合に、捕捉した揮発性化合物を遊離させる吸着性材料または吸収性材料からなる。
【0039】
好ましくは、空気流が前記表面の上方を通過できるようにする手段は、パッケージと一体化された空気ポンプまたはファンからなる。
好ましくは、閉鎖環境は、船積または航空コンテナからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の一形態の一例を添付の図面を参照して説明する。
本発明は、閉鎖環境中にある標的物質に関連する揮発物を検出し同定するために、広く敷衍し得る独特な手法に関する。
【0041】
吸着性材料または吸収性材料(本明細書中では「表面」)を、船積コンテナなどの環境内に置いて、様々な時間にわたって、該閉鎖された空間のサンプリングを行うことにより、標的物質から発せられた可能性がある揮発性化合物を濃縮する。目標に到着したところで、この「表面」をコンテナから取り出し、適当な方法で処理した後に、遊離された揮発物を、たとえば化学的または電子的分析を用いる適当な検出器装置に提示する。
【0042】
標的物質によって特異的に発せられるサイン揮発性化合物は、装置によってコンテナ内で予め濃縮されていることになる。次にこれらの揮発性化合物を、遊離させて、標的物質の有無を適切な当局に報知する外部に配置された検出器装置を用いて解析する。これにより、当該コンテナが標的物質を含む可能性があり、より詳細な検査または他の検査が必要か否かが示される。
【0043】
あるいは、捕捉された揮発物をコンテナ内部の補助的な検出装置によって検出し、その結果を遠隔測定法によって通信してもよい。次にこの情報を用いて、前記表面をさらに包括的な分析性能を有した外部装置によって検査すべきかを判定して、これにより当該コンテナ内に存在する標的物質の存在可能性についてのさらなる情報を与えるようにしてもよい。
【0044】
「表面」は、コンテナの積み込みを行った最初の港からその最終目的地までの旅程全体、または該旅程の実質部分にわたって、空気が該表面上に引き込まれることを可能にするパッケージ中に収容されている。この「表面」は、様々な形態をとることができ、組織、綿、ガラスウール、発泡体、膜、または他の吸着性材料または吸収性材料であってよい。1つの形態において、パッケージは、例えば、典型的な出荷時間と同等の時間にわたって、空気を連続的または継続的に前記表面上に引き込むことができる空気ポンプまたはファンを含む小型コンテナまたは航海の終了時における個別の試料としての形態をとってもよい。パッケージは、一時的または恒久的な取付物であってもよいコンテナのドアまたは側壁に該パッケージを固定する適切な手段を備えていることが好ましい。「表面」は、目的の揮発物に対してより特異的に吸収性/吸着性である材料で構成してもよいが、吸着/吸湿過程を支配する空気/湿気に対して耐性を有していてもよい。表面全体に空気が流れるのを助けるために、バッテリによって電力を供給することが好ましい。また、環境によっては、出発港から目的地までの航海期間にわたって、蒸気の拡散が十分であるために、空気ポンプ/ファンが不要な場合も予想される。
【0045】
パッケージは、大きな粒状の塵埃の吸着を低減するために、空気流システム中において、必ずしも必要ではないが、フィルタを備えていることが好ましい。ただし、前記フィルタは目的の揮発物が前記フィルタ上に捕捉され得るような表面となってはならない。このようなパッケージは、旅程の間に装置が空気を汲み上げ損ねていないか、またはパッケージが改竄されていないかを示すための、セルフチェックモニタと組み合わせて用いることができる。
【0046】
変更例においては、船積コンテナへの適応に際して、メインドアを開放することなく装置、したがって「表面」にアクセスできるように、コンテナ内に適当なハッチを設けることも提案する。
【0047】
コンテナが目的地へ到着すると、「表面」をコンテナから取り出し、捕捉されたあらゆる揮発物が脱着されるように、表面に対する適当な処理を行う装置内に配置する。このような装置は周知であり、一形態としては、熱によって揮発物を脱着させる。好ましくは、検出器装置のタイプに応じて、種々の物質に付随する様々な揮発物が異なる時間に遊離されるように、加熱ユニットの温度を制御する。これらの脱着された揮発物を次に検出器に提示する。これにより、そのサイン揮発物のプロファイルがまだ知られていない物質を検
出できる汎用性が得られる。これに代わって、またはこれに加えて、装置は船積コンテナ内に残しておき、捕捉された揮発物をコンテナ内の補助的な検出装置によって検出し、結果を遠隔測定法により通信するように、表面に対する処理を装置に組み込むこともできる。
【0048】
サイン揮発物の濃縮をもたらす本方法は、国境において一般的に用いられている既存の国境防護の機能、たとえば、探知犬や、イオン移動度分光計などの分析装置との連係だけでなく、コンテナの迅速なスクリーニングの問題に対する効果的な解決策を提供する。また、輸送路程時間により、コンテナ内に存在し得るあらゆる微量の臭気を捕捉する機会が大きくなるため、存在し得る任意の揮発物に対する濃縮機能を達成する方法も提供する。また、さらなる利点として、パッケージを用いることで、適当な穴が普通には存在しない場合、空間のサンプリングを行うために穴を開ける必要が無くなる。
【0049】
「表面」は、各旅程について一回使用することができるが、次の旅程のために脱着後にコンテナに再配置してもよい。
「表面」に対する代替の方法は、これを到着港で到着時に選択されたコンテナ内に配置することである。本パッケージは、空気流システムを有していてもよく、またコンテナ内の空気を採取するために例えば数時間などの短時間のあいだ放置しておいてもよい。この時間の後に「表面」を蒸気と同様にして調べるようにしてもよい。
【0050】
あるいは、「表面」内または上の揮発性化合物を、質量分析計、ガスクロマトグラフィー装置、または関連化学検知技術などの市販の揮発性化学物質分析具に提示して、揮発物の含量を測定することもできる。
【0051】
さらなる変更例において、「表面」内または上の揮発性化合物を、コンテナ内に存在する「表面」装置に取り付けられた表面弾性波(SAW)センサなどの揮発性化学物質分析ツールまたは関連化学検知技術などに提示してもよい。これにより、コンテナのドアを開ける必要が無くなり、標的物質の迅速な検出が可能になる。情報は、遠隔測定法によってコンテナの外部に連絡してよい。
【0052】
さらなる利点は、殆どの船積コンテナ内に存在する「表面」を有することから生じ得る。第1の例では、すべてのコンテナを検問することは想像もできない。しかしながら、すべての表面を旅程後に取り外し、検査および分析のために実験室に持ち込むことは可能である。これにより、既存のリスクプロファイリング情報を改善し得る詳細なデータベースを開発することができるであろう。そして、このデータベースを、次の検問に対する船積および航空コンテナに対する選択基準を改善するために用いることができる。
【0053】
本明細書に記載したこのような技術および方法は、爆発物、麻薬および兵器の検出にも使用でき、航空コンテナ以外の位置を監視するために用いることもできる。
固相微量抽出は、揮発性および半揮発性化合物を分析するために設計されたものであり、テルペン類を含む広範な有機化合物の分析にうまく応用されてきている。コジール(Koziel)ら(「多孔性固相微細抽出繊維を用いた空気サンプリング(Air sampling with porous solid−phase microextraction fibers)」、Anal Chem.72,(21)5178−5186,2000)の迅速サンプリング技術を、船積コンテナの内部から空気試料を取り出すために使用した。携帯用動的空気サンプリング装置は、オーガスト(Augusto)ら(「迅速な現場サンプリングのための携帯型SPME装置の設計と検証、およびと拡散による較正(Design and validation of portable SPME devices for rapid field sampling and
diffusion−based calibration)」、Anal.Chem
.73(3),481−486,2001)に報告されている装置に基づいて設計した。
【0054】
本発明の様々な形態および、本発明のプロセスを用いて行った試験の様々な形態について、添付の図面を用いて以下に説明する。
図1Aおよび図1Bは、VOCを検出するために用いることができるサンプリング装置の概略図である。これらの図面に示すように、オーガストらの設計(上記参照)に基づく装置は、ステンレス鋼カップ1と、テフロン(登録商標)リストリクタ2とを備える。リストリクタ2は、T型接合部3と連通し、該T型接合部3の一端は、チューブ5の位置決めを行うナット4を受容するように形成され、リストリクタ2の穴は、T型接合部3の穴と連通することになる。図1Bは、繊維が露出したSPMEホルダ6を含むこと以外は、図1Aの装置を示したものである。活性SPME表面7は、チューブ5の穴の中に配置する。T型接合部は、適切なポンプ(図示せず)との接続のためのポート8を含む。前記サンプリング装置は概略図の形態で示されているにすぎず、サンプリングを行うための様々な構成を利用することができることを理解されたい。
【0055】
図1Bから分かるように、SPMEホルダは、当該装置の上部に組み込まれ、T型接合部3の真上のテフロン(登録商標)リストリクタ2内に針を通して、システムを気密に保っている。空気ポンプ(図示せず)を用いて、露出したSPME繊維上に、制御された速度で、矢印9の方向に空気試料を引き込む。繊維は露出されている場合には、当該装置の内部の図1B内に示す位置にある。
【0056】
ここで挙げる例において、サンプリングにはCarboxen(商標)/ポリジメチルシロキサン繊維を用いたが、これは当該繊維が目的の化合物に対する特異性を有し、現場でのサンプリングに最も適しているためである。使用前に、繊維をGC入口において300℃において少なくとも1時間調整して、繊維を確実に清浄な状態にした。
【0057】
GC−FID(ガスクロマトグラフ−水素炎イオン化検出器)またはGC−MS(ガスクロマトグラフ−質量分析計)のいずれかを用いて、捕捉された揮発物を分析することができるが、有益な方法は以下のとおりである。
【0058】
GC FID:
機器:ヒューレットパッカード5890シリーズII
カラム:DB5−MSキャピラリーカラム(30m×0.25mm内径、1.0μmフィルム厚)
ヘッド圧力:13psi(分割50:1)
温度プログラム:400℃4分間、12℃/分で300℃、最終保持4分間
検出器温度:280℃
捕捉された揮発物は、300℃の非分割インジェクタ内へ3分間脱着し、SPME脱着のためには内径0.75mmのインジェクタライナーを用いた。
【0059】
データを収集し、保持時間によってクロマトグラフィーのピークを同定した。さらに、ライムオイルのヘキサン溶液(1%)を液体注入した場合の関連ピーク領域を用いて、テルペンの濃度を概算した。注入を内径2.3mmの分割/非分割ライナーで分割して行い、インジェクタ温度を280℃とした以外は、上記と同様のクロマトグラフィー条件を用いて1μLの体積を注入した。
【0060】
GC/MS
機器:Agiient5973質量分析計を備えたAgilent6890
カラム:ZB5キャピラリーカラム(30m×0.25mm内径、0.25μmフィルム厚)
ヘッド圧力:16psi(一定流モード)
温度プログラム:400℃4分間、6℃/分で190℃、20℃/分で300℃、最終保持2分間
検出器条件:70eVでの電子衝撃イオン化、移送ライン280℃、ソース220℃
揮発物は280℃で3分間、パルス非分割(25psi)脱着した。GCには、セプタム流出に付随する問題を軽減するためにミクロシールセプタムと、SPME脱着用に設計した内径0.75mmのインジェクタライナーを装備した。m/z40〜550の質量範囲内のデータを収集し、全イオンクトマトグラムを記録した。ライブラリ質量スペクトルとの比較とGC保持時間データによって化合物を同定した。
【0061】
最適化
サンプリング速度とサンプリング時間を最適化するために、サンプリング通路となるセプタム付の入口を有するホイルラミネートバッグ(約280mm×80mm)を用いてテルペン化合物の混合物を含んだ標準環境を作製した。バッグに約5Lの窒素を充填し、封止した。次に少量のエッセンシャルオイルをサンプリング入口からバッグ内へ注入した。木材によって発生される化合物を代表する適当な範囲のモノおよびセスキテルペン化合物を得るために、モノテルペンを多く含むライムオイル(1.2μL)とセスキテルペン源であるマヌカオイル(3.5μL)の混合物を用いた。バッグを少なくとも18時間放置して、揮発物が上部空間内で平衡に達するようにした。
【0062】
先端部に同一寸法の針が嵌合されたテフロン(登録商標)チューブを吸着装置の端部に取り付けた。SPMEホルダをユニット内に配置し、テフロン(登録商標)チューブ上の針を用いて入口のセプタムを穿刺して、バッグ内の上部空間のサンプリングを行った。ポンプを約15秒間作動させて(繊維を露出させることなく)、システム内を洗い流した後、繊維を選択されたサンプリング時間および速度で露出させた。サンプリング後、SPMEホルダをユニットから取り除き、繊維をGC内へ直接脱着させた。
【0063】
サンプリング装置を3つのサンプリング速度(50,100および150mL/分)で30秒間にわたって調べたところ、各流速において吸着される化合物の量は有意に違わないことが判明した。これは、10cm/秒を超える線流速において、細孔性SPME繊維の吸着速度が流速に依存しなくなるためである。本装置において、上記線流速は、約40mL/分の体積流量と同等である。したがって、すべてのさらなる実験に対して、安定した吸着速度を確保するために100mL/分の流速を用いた。
【0064】
100mL/分の選択流における最適サンプリング時間を調べるために、図2に示すようないくつかの異なるテルペン類に対して、10秒から7分の範囲の時間に吸着される化合物の量を測定した。
【0065】
プロットは保持時間の順番でナンバリングしており、使用した濃度において、経過時間(GC保持時間に対して)とともにp−シメンから吸着されるテルペンの量は、7分間のサンプリング時間までは良好な直線性上昇を示すことを実証している。これに対して、α−ピネン、β−ピネンおよび1,4−シネオールなどの早期溶離テルペンは、線形性から減少を示し、β−ピネンおよび1,4−シネオールの曲線は、2分後に下落しはじめ、α−ピネンの曲線は2分の直前で下落する。これより、本実験に使用した濃度において、サンプリングの1,2分後には、繊維表面が飽和し始め、早期溶離テルペンはCarboxen(商標)−PDMS繊維上へ競争的結合性による影響を受けていることが示唆される。この点において、沸点や極性などの他の要因が、後期溶離化合物がすでに繊維に結合した初期溶離化合物と交換し始めるように、吸着プロセスにおける役割を果たし初める。船積コンテナ揮発物の濃度は、ここで用いるものよりも低くなければならないので、競争的結合現象が問題にはならないが、上記のプロセスもまた、濃度依存性である可能性が高い
(すなわち、濃度が高いほど早く始まる可能性がある)。今後のすべての実験に対して、すべての目的の化合物に対する試料標本が確実に線形範囲に留まるようにするために、30秒間のサンプリング時間を選択した。100mL/分で30秒間の上記選択条件下における再現性は、分析したすべての化合物(n=12)に対して15%未満のCVが得られたことから、許容できるものであった。
【0066】
空コンテナ中での揮発物の検出
20ft(33,000L)コンテナを本実験に用いた。捕捉装置をコンテナ内の台に載置し、コンテナの空気を100mL/分で30秒間、採取した。装置が大きなデッドボリュームを有するので、装置内にSPME繊維を配置する前に、システムを100mL/分で30分間、洗い流した。これは、捕捉装置内に残留した空気ではなく、コンテナの空気が確実に採取されるようにするために行った。その後、捕捉された揮発物をGC−FIDによって分析した。
【0067】
コンテナの内部の異なる場所において数回サンプルを採取して、バックグラウンド揮発物における変動の指標を得た。クロマトグラフィー上の関心領域内のバックグラウンドは、時間およびコンテナ内の位置全体にわたって適度に一貫性があったため(結果は示さず)、これ以降の実験中にバックグラウンドは何ら問題をもたらさないとみなした。
【0068】
次に代表的な木材の揮発物の捕捉について評価した。この評価は、コンテナの背面にあるのぞき窓上に配置された2枚のガラスファイバーフィルター上にオイルをピペッティングすることにより、既知の体積(500〜3000μL)のライムオイルを、コンテナ内に放出することによって行う。その後、コンテナのドアを少なくとも24時間にわたって閉鎖しておき、内部の空気を平衡化させてからサンプリングを行う。各評価の後で、コンテナを少なくとも2日間は開放したままにして、オイルからの揮発物を拡散させてから、次の試料を採取し、分析する。次のサンプリングを続ける前に試料揮発物が完全に拡散されたかどうかを確かめるためにバックグラウンドの測定を行った。
【0069】
図3および図4は、空のコンテナ内にライムオイルを放出した後に得られた2つの代表的なクロマトグラムを示す。図3は、約80ppbの全濃度を与える3mLのオイルから得られたクロマトグラムを示し、最適化用のバッグにおいて用いたものとほぼ同じである。この濃度において、主ピークはバックグランドより十分に高く(挿入部を参照)、容易に検出される。概算濃度35ppbのリモネンが最も優勢なピークであり、約1〜2ppbであるα−ピネンやβ−ピネンなどの他の化合物もまた容易に検出できる。
【0070】
図4は、500μL(12ppb)のライムオイルに対するクロマトグラムを示す。クロマトグラムは、ピーク強度における予想される降下(尺度を比較せよ)以外は、本質的に、より高濃度のオイル(図3)に対して得られるものと同じである。このオイル中のテルペン化合物のピーク強度が減少すると、バックグラウンドピーク(挿入部を参照)が相対的に高くなるものの、テルペンピークは容易に検出できる。1mLの量についても調べたが、類似の反応が得られたため(ピーク強度が図示した2つの濃度の間にある)、当該クロマトグラムは示していない。
【0071】
クロマトグラムから、テルペンに対する検出限界(LOD)は、検出にGC−FIDを用いた場合には、50〜100ppt程度であることが推定された。木材が発する揮発物は木材の種類や、その木材がどの程度緑であるかに大きく依存するため、上記LODを木材の量と同等とみなすことはできない。以前の研究では、空のコンテナ内で、マッチ箱サイズ(10cm四方)の伐採したての木材から揮発物が検出できることが示されている。
【0072】
満載のコンテナ内での揮発物の検出
積み込み港において満載コンテナについて分析した。1日あたり約6個のコンテナ(全部で21個のコンテナを分析)からのサンプリングを、コンテナのドアを閉鎖した直後に行うが、このとき、コンテナ内の揮発物は最大に達しているものと考えられる。揮発物の拡散を最小限に抑えるため、コンテナのドアは、吸着装置の端部に取り付けられたテフロン(登録商標)サンプリングチューブを滑り込ませるのに十分な分だけしか開けなかった。SPME繊維を露出させる前に、ポンプを約30秒間作動させた後、コンテナの空気を100mL/分で30秒間にわたって採取した。採取後、SPME針をホルダから外し、テフロン(登録商標)栓で蓋をし、ネジ蓋付試験管に入れた。試験管は実験室に持ち帰るまで氷上に保持し、実験室にて後日GC/MSによる分析を行うまで4℃の冷蔵庫中で保存した。各SPME繊維は、300℃で5分間予め脱着を行っておき、現場に輸送する前までネジ蓋付チューブ内に入れておいた。
【0073】
港の空気にSPME繊維の1つを30秒間にわたって露出させることにより、コンテナの外の周囲空気のバックグラウンド試料も毎日採取した。これらのバックグラウンド試料を調べると、複数の化合物が認められた(結果示さず)。そのうちの大半は繊維自体(たとえば、シロキサン)に由来するものであったが、わずかに溶出するピークを環境からピックアップした。このなかには、クロロホルムおよび少数の低沸点アルカンが含まれていた。テルペンは見られなかったことから、コンテナ試料中で検出された化合物の大半が、サンプリングしたコンテナ由来のものであり、周囲環境に由来するものでないことが示された。
【0074】
3個のコンテナから採取した空気に対して得られたクロマトグラムを図5,図6および図7に示す。図5は、木材で包装された巻き鋼板を収容したコンテナからの試料を示す。図6は、木製のパレット上に積層されたエポキシ樹脂製ドラムを収容したコンテナからのクロマトグラムを示す。図7に示すような3つめのコンテナは、木製パレット上に段ボール箱を詰めたものである。
【0075】
複数の異なるテルペンがこれらのコンテナのそれぞれにおいて検出された。より揮発性の高いモノテルペン(たとえば、α−ピネン、β−ピネン、3−カレン、およびリモネン)が最も豊富であったが、より揮発物の低いセスキテルペンも上記コンテナのうちの2つで検出された。セスキテルペン類の完全なキャラクタリゼーションは、それらが非常に類似した質量スペクトルを持つことから不可能であるが、少なくとも4つの異なるセスキテルペンが、分子質量204のイオンの存在とそれらの保持時間に基づいて各コンテナ内で確認された。各クロマトグラムは、異なるテルペン化合物のプロファイルを有することから、各コンテナ内には異なる種類の木が存在することが示唆される。
【0076】
上記結果は、テルペンの検出に基づいて、調べた21個のコンテナのうちの18個(85%)において木材の有無が正確に確認されたことを示す。21個のコンテナうちの2個(10%)において、ドアからは全く木材が見えない状況で木材の揮発物が検出された。2つのコンテナのうちの一方は、段ボール箱に入った洗濯機を収容し、視認できない箱の内部またはコンテナの背面のいずれかに木材が存在する可能性がある。しかしながら、本研究の性質から、このコンテナから荷を完全に降ろして、コンテナの中身を確かめることはできなかった。2つめのコンテナは、古い製材機械を収容しており、木材は視認できなかったものの、おがくずが残っている可能性はあり、これが検出された微量テルペンの供給源となった可能性がある。内部に少量の木材が存在するものの、木材の揮発物が検出されなかったコンテナもあった。この木材は、非常に乾燥したように見える車止めの形態であったため、検出可能なレベルでテルペンを発生するには乾燥しすぎていたのかもしれない。
【0077】
結論
上記の結果から、動的SPMEを用いてCarboxen(商標)−PDMS繊維上に揮発物を捕捉することが、船積コンテナ内部の木製包装材を検出するのに有効な方法であることが実証された。木材の揮発物の検出に基づいて木材の有無を正確に確認する優れた成功率が達成された。
【0078】
1兆分の数部(数ppt)の濃度の揮発性化合物が、本技術を用いて検出可能であったことは、動的SPMEが、船積コンテナ内のさらに広範な内容物からの揮発物を捕捉する潜在能力を有することを示すものである。これは、バイオセキュリティ脅威の有無だけでなく、国境警備に対して頻繁に見られる脅威、たとえば、薬物、爆発物または不法入国者などの存在を確かめるために用いることができるであろう。本技術は、多様な標的物質を探し出すため、または確認するために容易に適応させうることは明らかである。
【0079】
上記物質の存在を確認することができた本捕捉技術に基づき、コンテナの中に収容される小型の装置は、船積コンテナ輸送の安全を高める大きな可能性を有していると考えられる。
【0080】
また上述のような捕捉、濃縮、および確認のシステムは、航空機の荷室などの他の閉鎖領域内において、バイオセキュリティ、麻薬または爆発物を示す任意の特定の揮発物を検出するために使用できると考えられる。このことは、手荷物用ロッカーなど貨物または荷物が長期間にわたって閉鎖領域に放置される場合に特に関係する。
【0081】
本発明は、以下の3つの態様を含んでいる。
1.標的物質に関連する揮発物を捕捉する捕捉システムであって、該捕捉は、揮発物の量を濃縮できるような適切な時間のあいだ行われる。この捕捉システムは、船積または航空コンテナ内に配置されて、標的物質の指標となる特定の揮発物を吸着/吸収するように構成された「表面」を含むパッケージを備える。これにより、十分な濃度の微量揮発物が、ガラスウール、濾紙、スポンジまたは複数の特許捕捉システムで構成され得る種々の異なる「表面」材料を用いて捕捉できるようになる。
【0082】
2.脱着システム。捕捉された揮発物を「表面」から脱着させることができる様々な方法を用いることができる。たとえば、特定の加熱サイクルおよび温度範囲/時間によって、異なるタイプの揮発物を「表面」から差次的に遊離させるようにする。揮発物の遊離はGCまたは他の分析的装置を用いて測定することができる。
【0083】
変更例において、上記を脱着させるために遠隔地で使用され得る手持ち式装置を提供することができる。
3.検出システム。脱着システムによって遊離された揮発物は、すでに構築されているバイオセキュリティおよび他の脅威のプロファイリング情報のデータベースに照合して分析および比較することができる。検出は、好ましくは質量分析計、ガスクロマトグラフィー装置、イオン移動度分光計、質量分析、選択イオン流感質量分析装置などの市販の検出ツールに基づく、既知の技術を用いて、その場で、または実験室中など、遠隔的に行われる。
【0084】
本発明の理由によって、コンテナから単純に空気を吸い出して、これを検出器に提示されるフィルタ上に配置する場合よりも、遠隔地の場合において、より高い検出感度を与えることができる。
【0085】
本発明の様々な好ましい形態について開示してきたが、当業者には、開示した特定の手段および方法に対して、本発明の一般的概念内にある様々な変更および修正を行えることが明らかであろう。そのような変更および修正のすべては、本発明の範囲内に含まれるも
のとする。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1A】船積コンテナ内部の空気を採取するために利用される装置の概略図。
【図1B】船積コンテナ内部の空気を採取するために利用される装置の概略図。
【図2A】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2B】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2C】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2D】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2E】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2F】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2G】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2H】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2I】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図3】空の船積コンテナからの空気試料のGC−FIDクロマトグラム。
【図4】空の船積コンテナからの空気試料のGC−FIDクロマトグラム。
【図5】異なる船積コンテナから採取した空気の全イオンクロマトグラム。
【図6】異なる船積コンテナから採取した空気の全イオンクロマトグラム。
【図7】異なる船積コンテナから採取した空気の全イオンクロマトグラム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖環境中の物質からサイン揮発性化合物の存在を検出する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中で、全貨物の約90%がコンテナに入れて輸送され、年間20億個を超えるコンテナが輸送されている。このグローバル輸送システムは、世界経済にとって重要なインフラであるが、非常に脆弱なものでもある。全コンテナ内容物のうち、積荷目録と照合してチェックされているのは、全部で2%未満であると推定される。コンテナのセキュリティに関して最も重要と思われる問題は、コンテナの不正な変更、不法物質の輸入、およびテロリスト活動の脅威である。しかしながら、まだ認識が浅いながらも非常に重要な問題として、望ましくないペストや疾病の輸入を防止するバイオセキュリティ(検疫としても知られる)がある。このことは、多くの国々、とりわけ独特で影響を受けやすい生態系および生物多様性を有するニュージーランドやオーストラリアなどの孤立した地域に対して当てはまる。各国が非常に有効なバイオセキュリティシステムを備えていることが、生物工業にとって決定的に重要になってくる。ニュージーランドにおいては、年間に50もの新しい生物が招かれざる客として侵入していると推定される。
【0003】
現在のところ、ニュージーランドには、一年間に50万個を超える船積コンテナが上陸し、これらのコンテナがバイオセキュリティに関する重大な懸念を引き起こしている。最近のニュージーランドにおける分析では、受け入れた積載済みコンテナの24%および空コンテナの19%が、生物物質によって汚染されており、それらの殆どが内部で起こっていることが示されている。検査した積載済みコンテナのうちの30%以上が、積荷目録にない木製の梱包材を有しており、全コンテナのうちの16%が迅速なバイオセキュリティ処置を要する木製の梱包材を有していることがわかった。国際的にも、未処理の木はペストや疾病の隠れ場所を提供できることから、バイオセキュリティに対する大きな脅威となっているが、アリ、カリバチ、シロアリ、ゾウムシ、蚊、ヘビ、クモ、サソリ、およびカタツムリを含む他の多くのバイオセキュリティを脅かすものもまた存在する。このような種は、生産的かつその土地固有の生態系および公衆衛生に対して深刻かつ継続的な損害を与えうることが経験的に分かっている。
【0004】
国境警備は、多くの国々にとって非常に重要な問題であり、望ましくない危険または有害な物質が確実に輸入されないようにするために、人材と、装置や適切な方法を必要とする。典型的には、兵器、爆発物、麻薬および不法入国者を阻止することに焦点をあてて、努力が続けられてきた。さらに最近の国境警備の局面としてバイオセキュリティがある。バイオセキュリティは、ある国の農業、動植物および最終的には経済に損害的影響を与えうる生物の不慮の輸入を阻止することを狙ったものである。
【0005】
国がその独自の生態系(生産的およびその土地固有の)と生物多様性を維持するためにもバイオセキュリティは非常に重要である。生態系に対する脅威は周知であり、ニュージーランドにおいては、たとえば、バロアダニ、ペインテッド・アップル・モス(painted apple moth)、クローバ・ルート・ウィーヴィル(clover root weevil)、アルゼンチンアリ、ガム・リーフ・スケルトナイザ(gum leaf skeletoniser)、ヒアリ(red imported fire
ant)および多くの他のものが挙げられる。したがって、バイオセキュリティの脅威に対処するために適切な方法および手順を有する必要がある。
【0006】
ニュージーランドにおいては、農林省(Ministry of Agriculture and Forestry(MAF))がバイオセキュリティの責務を負っている。農林省の検疫所(MAF Quarantine Service(MQS))は、国境におけるバイオセキュリティ要件の順守を確保する役割を担っている。目視検査、リスクプロファイリング、貨物の積荷目録または明細書の検査だけでなく、MAFは最近ではX線や探知犬を用いてその能力を高めている。こうした能力によって、年間400万人程度の旅客の到着(およびその荷物)によってもたらされるバイオセキュリティの脅威が一見よく管理されてように見えるかもしれない。同様に、他国から差し出された手紙も、X線と探知犬とを併用してよく検査されているようにみえる。
【0007】
しかしながら、このような進歩は、航空輸送には必ずしもあてはまらず、船輸送でも大きな物流上の問題が残されている。上記のような航空経路でのバイオセキュリティ危害の偶発的持ち込みの潜在性は、まだなお大きい。バイオセキュリティ脅威はコンテナでめったに起こらないにせよ、ニュージーランドにおける交通量は大きく、一年間に約15%の成長をみせ、その影響は非常に深刻なものになるおそれがある。バイオセキュリティの脅威は、貿易と旅行産業の成長に伴ってしか増大しない。MAFは、船の積荷目録からその内容が危険品であると識別された場合に、任意のコンテナ輸送における一定割合のコンテナを選び出して精密検査を行う手順をとっている。これに加えて、荷下ろし場所において、他のコンテナもMAFの認定検査官による検査される。
【0008】
この方式では、多くのコンテナが精密検査を免れることになる。現行では、比較的徹底した調査を行うかどうかの決定は、必ずしも信頼できるとは限らない積荷目録に基づいて行われている。たとえば、コンテナは、積荷文書には表れてこない梱包材の形態にある木材を含んでいることが多い。
【0009】
この木材には、ペスト(幼虫として)や疾病を隠し持っている可能性が高い未処理の辺材/樹皮が含まれているおそれがある。
包括的な検査は、物流管理上非常に難しく、時間と費用もかかる。年から年中、昼夜を問わず、ニュージーランドのオークランド港だけでも、2分間おきに12メートル相当のコンテナが荷下ろしされる。
【0010】
上記の詳細は、ニュージーランドだけにあてはまることである。航空および海上貨物輸送のバイオセキュリティの問題は、コンテナの数、したがってそれらを監視するのに必要な物流管理がさらに大きい他の国々においても当てはまることである。
【0011】
したがって、現行の国境におけるバイオセキュリティ手順を改良し、易化するためには、さらに別の迅速で強化された検出および妨害能力を提供するための揮発物検出技術を使用することが考えられる。特に航空および海上貨物輸送コンテナの検査のための、この付加的能力を提供するために多くの技術が提案されている。
【0012】
(先行技術)
X線撮影は周知であり、バイオセキュリティ脅威を検査するためにすでに空港で使用されている。X線検査は、コンテナ内の物体の画像を提供するとともに、化学的識別能も提供できる非侵襲的な技術である。人間や、薬品や爆発物などが存在しないかどうかを調べるために、大型のコンテナ用のX線装置も開発されている。こうした装置は大型であり、埠頭や空港に専用の場所を必要とし、非常に高価なものである。さらに、このような装置では、昆虫の卵の塊などの小型または不明瞭な生物脅威を検出することは非常に困難である。コンテナが大型になると、非常に高いX線エネルギーが必要とされ、操作者に潜在的な危害を及ぼす可能性もある。
【0013】
コンテナ内の隠れた物体を探査するための他の非撮影技術としては、特定の化学物質または化学組成物を検出する原子核に基づいたプローブビームを使用することが挙げられる。大型コンテナ内部に薬物および爆発性の物質が入っていないかどうかを調べるためのシステムが開発されている。この技術では、様々な原子核(すなわち、熱中性子、パルス中性子、高速中性子)またはγ線発生器を用いて、コンテナを調べて、その内容物を構成する化学物質を検出する。上記のプローブビームは、内部の物体と相互作用して、化合物が存在することを示す二次γ線を発生し、この二次ガンマ線を適切なセンサを用いて検出することができる。ただし、物質に特徴的な二次γ線を検出するために、センサを相対的に近づける必要がある。
【0014】
隠れた物質の化学組成を提供することのできる別の技術として、核四重極共鳴(NQR)がある。NQR技術は、物体にRF線を照射し、物質の分子が弛緩する際に再度放射される放射線を介して検出することによるものである。この方法は特定の化学物質に対しては非常に高感度であり、爆発物の検出には効果的に用いられてきた。
【0015】
上記検出技術は、電磁または粒子ビームを用いて物体を検査し、コンテナ内の物質の当該ビームに対する反応から検出を行うという点で、能動的な方式である。植物麻薬を検出するために開発された受動的な技術もある。この技術は、カリウム40が発する天然の放射線を検出することによるものである。K−40は、すべての植物物質内に存在する。この方式は、物質がコンテナ内に隠されている場合に当該物質を検出するために開発されたものである。この技術は非侵襲的であり、特に、マリファナ、たばこ、および大麻の検出に優れている。この技術では、大型で技術的に複雑かつ高額な設備が必要になる。この技術は、視線方向に依存せず、本質的には、コンテナの通行については比較的遅いこともある「ドライブスルー」方式である。また、検出可能な試料の最小寸法の問題もある。
【0016】
上記で検討したすべての技術について、検出装置は高額であり、熟練した操作者とともに専用の設備が必要である。上記技術の多くは、検問を行えるようにトラックまたはコンテナを装置に通過させる必要がある。大型かつ高額のシステムを使用せずにバイオセキュリティおよび他の脅威の検出を行い、脅威が収容されている環境に対して本質的に非侵襲的な手法を開発することが望ましい。
【0017】
(麻薬や爆発物に対して)開発されてきた代替の手法としては、蒸発または揮発性化学物質の検出がある。空港において、人の上または荷物の中の微量の爆発物または薬物を検出するためのセンサおよび付随する装置を開発するために相当の努力がなされてきた。麻薬または爆発物に付随する蒸気または粒子を検出するためにその空気を採取する、大型の航空コンテナまたは船積コンテナに特化した多くの開発もなされてきた。次に先行技術のいつくかについて記載する。
【0018】
特許文献1は、コカインの検出のみに焦点をあてた性能について記載している。ここでは、船積コンテナから空気を抽出し、「フィルタ」上を通過させてコカイン臭気を捕捉する方法について検討している。上記フィルタは、綿、シラン化ガラスウール、金属またはテフロン(登録商標)からなる組織布または網とすることができる。目的の上記の結合を高めるためにコーティングを施してもよい。次に上記臭気をイオン移動度分光法(IMS)、IMS質量分析(MS)、ガスクロマトグラフィー(GC)、GC−MSまたはGC−MS−MS装置に提供し、コカインの有無を判定する。さらに別の化学物質であるエクゴニジンもつい最近までコカインが存在したことを示すものであり、コカインだけでなくこの化学物質の存在も(誤認警報を低減することにより)検出率を高めることが確認されている。通常はコンテナからフィルタ上へ空気を抜き出し、後で測定を行う。コンテナに穴が全く存在しない場合には、空気を抽出できるようにコンテナは穿孔され得る。サンプ
リング用の空気を迅速かつ容易に抽出するためには、試料の容積は大きい方が好ましい。
【0019】
特許文献2は、微量の麻薬または爆発物を検出する際にIMS方式を使用する適用例を含んでいる。また、類似の用途に対して質量分析計を使用することを教示した、2つの他の特許明細書、すなわち、特許文献3および特許文献4についても言及している。これらの明細書は、コンテナ内の粒子状物質をさらに長期間放置することで、蒸気濃度を高めることが可能であると教示している。特許文献2は、既存のノウハウに比べて検出性能を高めるIMS方式の詳細な仕組みおよび改善を提供している。
【0020】
特許文献3は、海港におけるコンテナの応用領域について検討している。特許文献3では、コンテナ内の天然の粒状物質は、蒸気を吸収するのにさらに時間がかかり、この蒸気が密輸品に関連する可能性があることを述べている。粒状物質をコンテナ全体に移動させる重要な工程であり、該粒状物質は、コンテナから測定システムに吸い出される。
【0021】
特許文献5は、薬物および爆発物の総合的な検出を目的としており、特に、後続の分析のために蒸気の照合を行う採取/脱着ユニットを目的としている。特にIMS検出器装置に対して高値側および低値側の揮発性化合物(および不溶な粒状物質)を除去して、関心蒸気をより良好に区別するためのフィルタリングの向上を目的としている。特許文献5は、この方式を船積コンテナに適用することについても言及している。
【0022】
特許文献6は、閉鎖されたコンテナ内の麻薬を検出するための方法を教示している。通気口からコンテナ内に空気を送り込み、別の出口から排出させる。ドリルで穴を開けるか、ゴム製シールの間にチューブを挿入するようにしてもよい。流入空気は、粒状物質を撹乱する性質のものであり、この空気を出口から引き出すようにしてもよい。特許文献6には、空気は熟練した探知犬に提示することもできるし、麻薬の存在可能性を判定するための化学分析に用いることもできることが記載されている。空気をフィルタ上に吹き付けて、このフィルタを後で探知犬に提示するようにしてもよい。フィルタ(その上に揮発物が存在する)を探知犬に提示するための何ら特別な方法は特許文献6によって提供されていない。
【0023】
さらに、特許文献7は、外部のガスをコンテナに導入にして、内部の空気を抜く手段を教示している。これを違法物質検出のためにガス分析計に提示してもよい。また、必要と判断される場合には、容器を燻煙消毒するために用いてもよい。特許文献7は、望ましくない昆虫や寄生虫を検出するための手段についても言及している。具体的な検出手段についての言及はなく、コンテナに空気を入出させることだけに関するものである。
【0024】
上記すべての例において、バイオセキュリティ脅威の存在の検出については言及されていない。閉鎖空間内の二酸化炭素(CO2)濃度をモニタすることによって、ペストまたは昆虫を検出する先行技術にはいくつかの例がある。
【0025】
特許文献8は、昆虫によって吐き出されたCO2を検出する方式を記載している。ここでは、昆虫がCO2を蓄積できるような一定体積の空間をパージする方式が用いられている。これにより、天然のバックグラウンドレベルに対して、昆虫由来のCO2を検出することが援助される。原則的には、昆虫を含んだ物質をこの装置のチャンバ内に入れる。
【0026】
特許文献9は、昆虫、特にシロアリが建造物内にいることを示すために、CO2の存在を用いる同様の方法について記載している。この技術では、赤外線CO2検出器を用いている。壁空間に針を通して、空気を引き出して分析器に入れる。これを、周辺からのものと比較する。数ppmの増加が、侵襲を示す場合もある。
【0027】
先行技術は、適当な空気抽出装置を介してコンテナから空気を抽出することによる技術であり、前記空気をGC,MSなどの従来の分析装置によって測定する前に、捕捉、場合によって濃縮する技術を開示している。空気を抽出するためには、海上輸送用のコンテナには適当な穴が開いている必要があるが、もし無い場合にはコンテナを穿孔する必要がある。いくつかの技術では、その内部またはその上に吸収された特定の蒸気を有する物質を捕捉するために、粒状物質/蒸気を抽出する前にコンテナを振盪する必要がある。
【0028】
以下の説明および請求項において、「標的物質」という表現は、閉鎖環境内で同定しようとするあらゆる物質を意味する。本発明はとりわけバイオセキュリティや他の脅威などの望ましくない物質の検出に関するものであるが、本願に開示する技術は、閉鎖環境内にありうる広範な物質を検出するために利用可能であることを理解されたい。
【特許文献1】国際公開第98/17999号(Neudorfl)
【特許文献2】欧州特許第0447158A2号(Danylewych)
【特許文献3】米国特許第4,580,440号(Reid)
【特許文献4】米国特許第4,718,268号
【特許文献5】カナダ国特許第2,129,594号(Nacson)
【特許文献6】国際公開第99/38015号(Andersonら)
【特許文献7】米国特許第5,795,544号(Matz)
【特許文献8】米国特許第3,963,927号(Bruce)
【特許文献9】米国特許第6,255,652号(Moyer)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、従来の既知の方式および方法の不都合を有さない、閉鎖空間内の標的物質のサイン揮発性成分を検出するための手段および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
したがって、本発明は、一態様において、閉鎖環境内の標的物質のサイン揮発性化合物を検出する方法からなると言える。この方法は、本明細書で定義する「表面」を含むパッケージを提供する工程であって、前記パッケージは、空気流が前記表面上を通過できるように、標的物質からの揮発性化合物が空気中で運ばれて、前記表面によって捕捉されるようにする手段を備える、工程と、
パッケージを長い時間閉鎖環境内に配置する工程と、
捕捉された揮発物を表面から脱着させる工程と、
脱着された揮発物を、標的物質のサイン揮発性化合物の既知のプロファイルのデータベースと比較する工程とを含む。
【0031】
好ましくは、前記表面は、適切に処理された場合に、捕捉した揮発性化合物を放出する吸着性材料または吸収性材料からなる。
好ましくは、前記パッケージは、サイン揮発性化合物が前記表面上で濃縮されるのに十分な時間にわたって、閉鎖領域内に配置され、濃縮時間の満了時にパッケージを閉鎖環境から取り出して、分析のために揮発性化合物を表面から遊離させる。
【0032】
好ましくは、前記パッケージは標的物質のサイン揮発性化合物が前記表面上に吸着されるように閉鎖環境内に配置され、前記パッケージは、閉鎖環境の外部の装置によって前記表面を調べることができるようにする送信機を含む。
【0033】
好ましくは、前記装置は、適切な時間のあいだ、前記表面の上方に空気を引き込めるようにする手段を含む。
好ましくは、空気は前記表面の上方に一定時間のあいだ引き込まれる。
【0034】
好ましくは、前記パッケージは、結果を遠隔測定法による連絡できるようにする補助検出装置を含む。
好ましくは、前記パッケージは、空気を前記表面上方に移動させるようにした電気ポンプまたはファンを含む。
【0035】
好ましくは、前記パッケージは、前記電気ポンプまたはファンに電力を供給する電気蓄電池を含む。
好ましくは、前記表面は、適切に処理された場合に捕捉した揮発性化合物を放出する吸着性材料または吸収性材料からなる。
【0036】
好ましくは、前記表面から揮発性化合物を遊離させるための処理は、表面を制御加熱することからなる。
別の態様において、閉鎖環境内の標的物質のサイン揮発性化合物を検出する方法は、
本明細書中で定義する「表面」を含むパッケージを提供する工程と、
前記パッケージを前記閉鎖環境中に長時間にわたって配置する工程と、
標的物質によって発生され、閉鎖環境内の空気によって運ばれる揮発性化合物が、前記表面によって捕捉されるようにする時間のあいだ、空気流を前記表面の上方に通過させる工程と、
捕捉された揮発物を前記表面から脱着する工程と、
脱着された揮発物を分析する工程と、
脱着された揮発物を、標的物質のサイン揮発性化合物の既知プロファイルのデータベースと比較する工程とを含む。
【0037】
別の態様において、本発明は、標的物質のサイン揮発性化合物を検出する方法からなると言える。前記手段は、
閉鎖環境内に配置するように構成されたパッケージと、
閉鎖環境内の空気流がパッケージを通過できるようにする、パッケージに付随する手段と、
前記パッケージ内に配置される本明細書中で定義する表面であって、空気流がその上方を通過して空気流内の揮発性化合物が該表面によって吸着されるように配置される、表面と、
前記表面によって捕捉された揮発性化合物が脱着されるようにする手段と、
脱着された揮発性化合物を分析し、該化合物のプロファイルを標的物質のサイン揮発性化合物の既知プロファイルのデータベースと比較する手段とを備える。
【0038】
好ましくは、前記装置は、適切な時間のあいだ、パッケージ内および前記表面の上方に空気を引き込めるようにする手段を含む。
好ましくは、前記表面は、適切に処理された場合に、捕捉した揮発性化合物を遊離させる吸着性材料または吸収性材料からなる。
【0039】
好ましくは、空気流が前記表面の上方を通過できるようにする手段は、パッケージと一体化された空気ポンプまたはファンからなる。
好ましくは、閉鎖環境は、船積または航空コンテナからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の一形態の一例を添付の図面を参照して説明する。
本発明は、閉鎖環境中にある標的物質に関連する揮発物を検出し同定するために、広く敷衍し得る独特な手法に関する。
【0041】
吸着性材料または吸収性材料(本明細書中では「表面」)を、船積コンテナなどの環境内に置いて、様々な時間にわたって、該閉鎖された空間のサンプリングを行うことにより、標的物質から発せられた可能性がある揮発性化合物を濃縮する。目標に到着したところで、この「表面」をコンテナから取り出し、適当な方法で処理した後に、遊離された揮発物を、たとえば化学的または電子的分析を用いる適当な検出器装置に提示する。
【0042】
標的物質によって特異的に発せられるサイン揮発性化合物は、装置によってコンテナ内で予め濃縮されていることになる。次にこれらの揮発性化合物を、遊離させて、標的物質の有無を適切な当局に報知する外部に配置された検出器装置を用いて解析する。これにより、当該コンテナが標的物質を含む可能性があり、より詳細な検査または他の検査が必要か否かが示される。
【0043】
あるいは、捕捉された揮発物をコンテナ内部の補助的な検出装置によって検出し、その結果を遠隔測定法によって通信してもよい。次にこの情報を用いて、前記表面をさらに包括的な分析性能を有した外部装置によって検査すべきかを判定して、これにより当該コンテナ内に存在する標的物質の存在可能性についてのさらなる情報を与えるようにしてもよい。
【0044】
「表面」は、コンテナの積み込みを行った最初の港からその最終目的地までの旅程全体、または該旅程の実質部分にわたって、空気が該表面上に引き込まれることを可能にするパッケージ中に収容されている。この「表面」は、様々な形態をとることができ、組織、綿、ガラスウール、発泡体、膜、または他の吸着性材料または吸収性材料であってよい。1つの形態において、パッケージは、例えば、典型的な出荷時間と同等の時間にわたって、空気を連続的または継続的に前記表面上に引き込むことができる空気ポンプまたはファンを含む小型コンテナまたは航海の終了時における個別の試料としての形態をとってもよい。パッケージは、一時的または恒久的な取付物であってもよいコンテナのドアまたは側壁に該パッケージを固定する適切な手段を備えていることが好ましい。「表面」は、目的の揮発物に対してより特異的に吸収性/吸着性である材料で構成してもよいが、吸着/吸湿過程を支配する空気/湿気に対して耐性を有していてもよい。表面全体に空気が流れるのを助けるために、バッテリによって電力を供給することが好ましい。また、環境によっては、出発港から目的地までの航海期間にわたって、蒸気の拡散が十分であるために、空気ポンプ/ファンが不要な場合も予想される。
【0045】
パッケージは、大きな粒状の塵埃の吸着を低減するために、空気流システム中において、必ずしも必要ではないが、フィルタを備えていることが好ましい。ただし、前記フィルタは目的の揮発物が前記フィルタ上に捕捉され得るような表面となってはならない。このようなパッケージは、旅程の間に装置が空気を汲み上げ損ねていないか、またはパッケージが改竄されていないかを示すための、セルフチェックモニタと組み合わせて用いることができる。
【0046】
変更例においては、船積コンテナへの適応に際して、メインドアを開放することなく装置、したがって「表面」にアクセスできるように、コンテナ内に適当なハッチを設けることも提案する。
【0047】
コンテナが目的地へ到着すると、「表面」をコンテナから取り出し、捕捉されたあらゆる揮発物が脱着されるように、表面に対する適当な処理を行う装置内に配置する。このような装置は周知であり、一形態としては、熱によって揮発物を脱着させる。好ましくは、検出器装置のタイプに応じて、種々の物質に付随する様々な揮発物が異なる時間に遊離されるように、加熱ユニットの温度を制御する。これらの脱着された揮発物を次に検出器に提示する。これにより、そのサイン揮発物のプロファイルがまだ知られていない物質を検
出できる汎用性が得られる。これに代わって、またはこれに加えて、装置は船積コンテナ内に残しておき、捕捉された揮発物をコンテナ内の補助的な検出装置によって検出し、結果を遠隔測定法により通信するように、表面に対する処理を装置に組み込むこともできる。
【0048】
サイン揮発物の濃縮をもたらす本方法は、国境において一般的に用いられている既存の国境防護の機能、たとえば、探知犬や、イオン移動度分光計などの分析装置との連係だけでなく、コンテナの迅速なスクリーニングの問題に対する効果的な解決策を提供する。また、輸送路程時間により、コンテナ内に存在し得るあらゆる微量の臭気を捕捉する機会が大きくなるため、存在し得る任意の揮発物に対する濃縮機能を達成する方法も提供する。また、さらなる利点として、パッケージを用いることで、適当な穴が普通には存在しない場合、空間のサンプリングを行うために穴を開ける必要が無くなる。
【0049】
「表面」は、各旅程について一回使用することができるが、次の旅程のために脱着後にコンテナに再配置してもよい。
「表面」に対する代替の方法は、これを到着港で到着時に選択されたコンテナ内に配置することである。本パッケージは、空気流システムを有していてもよく、またコンテナ内の空気を採取するために例えば数時間などの短時間のあいだ放置しておいてもよい。この時間の後に「表面」を蒸気と同様にして調べるようにしてもよい。
【0050】
あるいは、「表面」内または上の揮発性化合物を、質量分析計、ガスクロマトグラフィー装置、または関連化学検知技術などの市販の揮発性化学物質分析具に提示して、揮発物の含量を測定することもできる。
【0051】
さらなる変更例において、「表面」内または上の揮発性化合物を、コンテナ内に存在する「表面」装置に取り付けられた表面弾性波(SAW)センサなどの揮発性化学物質分析ツールまたは関連化学検知技術などに提示してもよい。これにより、コンテナのドアを開ける必要が無くなり、標的物質の迅速な検出が可能になる。情報は、遠隔測定法によってコンテナの外部に連絡してよい。
【0052】
さらなる利点は、殆どの船積コンテナ内に存在する「表面」を有することから生じ得る。第1の例では、すべてのコンテナを検問することは想像もできない。しかしながら、すべての表面を旅程後に取り外し、検査および分析のために実験室に持ち込むことは可能である。これにより、既存のリスクプロファイリング情報を改善し得る詳細なデータベースを開発することができるであろう。そして、このデータベースを、次の検問に対する船積および航空コンテナに対する選択基準を改善するために用いることができる。
【0053】
本明細書に記載したこのような技術および方法は、爆発物、麻薬および兵器の検出にも使用でき、航空コンテナ以外の位置を監視するために用いることもできる。
固相微量抽出は、揮発性および半揮発性化合物を分析するために設計されたものであり、テルペン類を含む広範な有機化合物の分析にうまく応用されてきている。コジール(Koziel)ら(「多孔性固相微細抽出繊維を用いた空気サンプリング(Air sampling with porous solid−phase microextraction fibers)」、Anal Chem.72,(21)5178−5186,2000)の迅速サンプリング技術を、船積コンテナの内部から空気試料を取り出すために使用した。携帯用動的空気サンプリング装置は、オーガスト(Augusto)ら(「迅速な現場サンプリングのための携帯型SPME装置の設計と検証、およびと拡散による較正(Design and validation of portable SPME devices for rapid field sampling and
diffusion−based calibration)」、Anal.Chem
.73(3),481−486,2001)に報告されている装置に基づいて設計した。
【0054】
本発明の様々な形態および、本発明のプロセスを用いて行った試験の様々な形態について、添付の図面を用いて以下に説明する。
図1Aおよび図1Bは、VOCを検出するために用いることができるサンプリング装置の概略図である。これらの図面に示すように、オーガストらの設計(上記参照)に基づく装置は、ステンレス鋼カップ1と、テフロン(登録商標)リストリクタ2とを備える。リストリクタ2は、T型接合部3と連通し、該T型接合部3の一端は、チューブ5の位置決めを行うナット4を受容するように形成され、リストリクタ2の穴は、T型接合部3の穴と連通することになる。図1Bは、繊維が露出したSPMEホルダ6を含むこと以外は、図1Aの装置を示したものである。活性SPME表面7は、チューブ5の穴の中に配置する。T型接合部は、適切なポンプ(図示せず)との接続のためのポート8を含む。前記サンプリング装置は概略図の形態で示されているにすぎず、サンプリングを行うための様々な構成を利用することができることを理解されたい。
【0055】
図1Bから分かるように、SPMEホルダは、当該装置の上部に組み込まれ、T型接合部3の真上のテフロン(登録商標)リストリクタ2内に針を通して、システムを気密に保っている。空気ポンプ(図示せず)を用いて、露出したSPME繊維上に、制御された速度で、矢印9の方向に空気試料を引き込む。繊維は露出されている場合には、当該装置の内部の図1B内に示す位置にある。
【0056】
ここで挙げる例において、サンプリングにはCarboxen(商標)/ポリジメチルシロキサン繊維を用いたが、これは当該繊維が目的の化合物に対する特異性を有し、現場でのサンプリングに最も適しているためである。使用前に、繊維をGC入口において300℃において少なくとも1時間調整して、繊維を確実に清浄な状態にした。
【0057】
GC−FID(ガスクロマトグラフ−水素炎イオン化検出器)またはGC−MS(ガスクロマトグラフ−質量分析計)のいずれかを用いて、捕捉された揮発物を分析することができるが、有益な方法は以下のとおりである。
【0058】
GC FID:
機器:ヒューレットパッカード5890シリーズII
カラム:DB5−MSキャピラリーカラム(30m×0.25mm内径、1.0μmフィルム厚)
ヘッド圧力:13psi(分割50:1)
温度プログラム:400℃4分間、12℃/分で300℃、最終保持4分間
検出器温度:280℃
捕捉された揮発物は、300℃の非分割インジェクタ内へ3分間脱着し、SPME脱着のためには内径0.75mmのインジェクタライナーを用いた。
【0059】
データを収集し、保持時間によってクロマトグラフィーのピークを同定した。さらに、ライムオイルのヘキサン溶液(1%)を液体注入した場合の関連ピーク領域を用いて、テルペンの濃度を概算した。注入を内径2.3mmの分割/非分割ライナーで分割して行い、インジェクタ温度を280℃とした以外は、上記と同様のクロマトグラフィー条件を用いて1μLの体積を注入した。
【0060】
GC/MS
機器:Agiient5973質量分析計を備えたAgilent6890
カラム:ZB5キャピラリーカラム(30m×0.25mm内径、0.25μmフィルム厚)
ヘッド圧力:16psi(一定流モード)
温度プログラム:400℃4分間、6℃/分で190℃、20℃/分で300℃、最終保持2分間
検出器条件:70eVでの電子衝撃イオン化、移送ライン280℃、ソース220℃
揮発物は280℃で3分間、パルス非分割(25psi)脱着した。GCには、セプタム流出に付随する問題を軽減するためにミクロシールセプタムと、SPME脱着用に設計した内径0.75mmのインジェクタライナーを装備した。m/z40〜550の質量範囲内のデータを収集し、全イオンクトマトグラムを記録した。ライブラリ質量スペクトルとの比較とGC保持時間データによって化合物を同定した。
【0061】
最適化
サンプリング速度とサンプリング時間を最適化するために、サンプリング通路となるセプタム付の入口を有するホイルラミネートバッグ(約280mm×80mm)を用いてテルペン化合物の混合物を含んだ標準環境を作製した。バッグに約5Lの窒素を充填し、封止した。次に少量のエッセンシャルオイルをサンプリング入口からバッグ内へ注入した。木材によって発生される化合物を代表する適当な範囲のモノおよびセスキテルペン化合物を得るために、モノテルペンを多く含むライムオイル(1.2μL)とセスキテルペン源であるマヌカオイル(3.5μL)の混合物を用いた。バッグを少なくとも18時間放置して、揮発物が上部空間内で平衡に達するようにした。
【0062】
先端部に同一寸法の針が嵌合されたテフロン(登録商標)チューブを吸着装置の端部に取り付けた。SPMEホルダをユニット内に配置し、テフロン(登録商標)チューブ上の針を用いて入口のセプタムを穿刺して、バッグ内の上部空間のサンプリングを行った。ポンプを約15秒間作動させて(繊維を露出させることなく)、システム内を洗い流した後、繊維を選択されたサンプリング時間および速度で露出させた。サンプリング後、SPMEホルダをユニットから取り除き、繊維をGC内へ直接脱着させた。
【0063】
サンプリング装置を3つのサンプリング速度(50,100および150mL/分)で30秒間にわたって調べたところ、各流速において吸着される化合物の量は有意に違わないことが判明した。これは、10cm/秒を超える線流速において、細孔性SPME繊維の吸着速度が流速に依存しなくなるためである。本装置において、上記線流速は、約40mL/分の体積流量と同等である。したがって、すべてのさらなる実験に対して、安定した吸着速度を確保するために100mL/分の流速を用いた。
【0064】
100mL/分の選択流における最適サンプリング時間を調べるために、図2に示すようないくつかの異なるテルペン類に対して、10秒から7分の範囲の時間に吸着される化合物の量を測定した。
【0065】
プロットは保持時間の順番でナンバリングしており、使用した濃度において、経過時間(GC保持時間に対して)とともにp−シメンから吸着されるテルペンの量は、7分間のサンプリング時間までは良好な直線性上昇を示すことを実証している。これに対して、α−ピネン、β−ピネンおよび1,4−シネオールなどの早期溶離テルペンは、線形性から減少を示し、β−ピネンおよび1,4−シネオールの曲線は、2分後に下落しはじめ、α−ピネンの曲線は2分の直前で下落する。これより、本実験に使用した濃度において、サンプリングの1,2分後には、繊維表面が飽和し始め、早期溶離テルペンはCarboxen(商標)−PDMS繊維上へ競争的結合性による影響を受けていることが示唆される。この点において、沸点や極性などの他の要因が、後期溶離化合物がすでに繊維に結合した初期溶離化合物と交換し始めるように、吸着プロセスにおける役割を果たし初める。船積コンテナ揮発物の濃度は、ここで用いるものよりも低くなければならないので、競争的結合現象が問題にはならないが、上記のプロセスもまた、濃度依存性である可能性が高い
(すなわち、濃度が高いほど早く始まる可能性がある)。今後のすべての実験に対して、すべての目的の化合物に対する試料標本が確実に線形範囲に留まるようにするために、30秒間のサンプリング時間を選択した。100mL/分で30秒間の上記選択条件下における再現性は、分析したすべての化合物(n=12)に対して15%未満のCVが得られたことから、許容できるものであった。
【0066】
空コンテナ中での揮発物の検出
20ft(33,000L)コンテナを本実験に用いた。捕捉装置をコンテナ内の台に載置し、コンテナの空気を100mL/分で30秒間、採取した。装置が大きなデッドボリュームを有するので、装置内にSPME繊維を配置する前に、システムを100mL/分で30分間、洗い流した。これは、捕捉装置内に残留した空気ではなく、コンテナの空気が確実に採取されるようにするために行った。その後、捕捉された揮発物をGC−FIDによって分析した。
【0067】
コンテナの内部の異なる場所において数回サンプルを採取して、バックグラウンド揮発物における変動の指標を得た。クロマトグラフィー上の関心領域内のバックグラウンドは、時間およびコンテナ内の位置全体にわたって適度に一貫性があったため(結果は示さず)、これ以降の実験中にバックグラウンドは何ら問題をもたらさないとみなした。
【0068】
次に代表的な木材の揮発物の捕捉について評価した。この評価は、コンテナの背面にあるのぞき窓上に配置された2枚のガラスファイバーフィルター上にオイルをピペッティングすることにより、既知の体積(500〜3000μL)のライムオイルを、コンテナ内に放出することによって行う。その後、コンテナのドアを少なくとも24時間にわたって閉鎖しておき、内部の空気を平衡化させてからサンプリングを行う。各評価の後で、コンテナを少なくとも2日間は開放したままにして、オイルからの揮発物を拡散させてから、次の試料を採取し、分析する。次のサンプリングを続ける前に試料揮発物が完全に拡散されたかどうかを確かめるためにバックグラウンドの測定を行った。
【0069】
図3および図4は、空のコンテナ内にライムオイルを放出した後に得られた2つの代表的なクロマトグラムを示す。図3は、約80ppbの全濃度を与える3mLのオイルから得られたクロマトグラムを示し、最適化用のバッグにおいて用いたものとほぼ同じである。この濃度において、主ピークはバックグランドより十分に高く(挿入部を参照)、容易に検出される。概算濃度35ppbのリモネンが最も優勢なピークであり、約1〜2ppbであるα−ピネンやβ−ピネンなどの他の化合物もまた容易に検出できる。
【0070】
図4は、500μL(12ppb)のライムオイルに対するクロマトグラムを示す。クロマトグラムは、ピーク強度における予想される降下(尺度を比較せよ)以外は、本質的に、より高濃度のオイル(図3)に対して得られるものと同じである。このオイル中のテルペン化合物のピーク強度が減少すると、バックグラウンドピーク(挿入部を参照)が相対的に高くなるものの、テルペンピークは容易に検出できる。1mLの量についても調べたが、類似の反応が得られたため(ピーク強度が図示した2つの濃度の間にある)、当該クロマトグラムは示していない。
【0071】
クロマトグラムから、テルペンに対する検出限界(LOD)は、検出にGC−FIDを用いた場合には、50〜100ppt程度であることが推定された。木材が発する揮発物は木材の種類や、その木材がどの程度緑であるかに大きく依存するため、上記LODを木材の量と同等とみなすことはできない。以前の研究では、空のコンテナ内で、マッチ箱サイズ(10cm四方)の伐採したての木材から揮発物が検出できることが示されている。
【0072】
満載のコンテナ内での揮発物の検出
積み込み港において満載コンテナについて分析した。1日あたり約6個のコンテナ(全部で21個のコンテナを分析)からのサンプリングを、コンテナのドアを閉鎖した直後に行うが、このとき、コンテナ内の揮発物は最大に達しているものと考えられる。揮発物の拡散を最小限に抑えるため、コンテナのドアは、吸着装置の端部に取り付けられたテフロン(登録商標)サンプリングチューブを滑り込ませるのに十分な分だけしか開けなかった。SPME繊維を露出させる前に、ポンプを約30秒間作動させた後、コンテナの空気を100mL/分で30秒間にわたって採取した。採取後、SPME針をホルダから外し、テフロン(登録商標)栓で蓋をし、ネジ蓋付試験管に入れた。試験管は実験室に持ち帰るまで氷上に保持し、実験室にて後日GC/MSによる分析を行うまで4℃の冷蔵庫中で保存した。各SPME繊維は、300℃で5分間予め脱着を行っておき、現場に輸送する前までネジ蓋付チューブ内に入れておいた。
【0073】
港の空気にSPME繊維の1つを30秒間にわたって露出させることにより、コンテナの外の周囲空気のバックグラウンド試料も毎日採取した。これらのバックグラウンド試料を調べると、複数の化合物が認められた(結果示さず)。そのうちの大半は繊維自体(たとえば、シロキサン)に由来するものであったが、わずかに溶出するピークを環境からピックアップした。このなかには、クロロホルムおよび少数の低沸点アルカンが含まれていた。テルペンは見られなかったことから、コンテナ試料中で検出された化合物の大半が、サンプリングしたコンテナ由来のものであり、周囲環境に由来するものでないことが示された。
【0074】
3個のコンテナから採取した空気に対して得られたクロマトグラムを図5,図6および図7に示す。図5は、木材で包装された巻き鋼板を収容したコンテナからの試料を示す。図6は、木製のパレット上に積層されたエポキシ樹脂製ドラムを収容したコンテナからのクロマトグラムを示す。図7に示すような3つめのコンテナは、木製パレット上に段ボール箱を詰めたものである。
【0075】
複数の異なるテルペンがこれらのコンテナのそれぞれにおいて検出された。より揮発性の高いモノテルペン(たとえば、α−ピネン、β−ピネン、3−カレン、およびリモネン)が最も豊富であったが、より揮発物の低いセスキテルペンも上記コンテナのうちの2つで検出された。セスキテルペン類の完全なキャラクタリゼーションは、それらが非常に類似した質量スペクトルを持つことから不可能であるが、少なくとも4つの異なるセスキテルペンが、分子質量204のイオンの存在とそれらの保持時間に基づいて各コンテナ内で確認された。各クロマトグラムは、異なるテルペン化合物のプロファイルを有することから、各コンテナ内には異なる種類の木が存在することが示唆される。
【0076】
上記結果は、テルペンの検出に基づいて、調べた21個のコンテナのうちの18個(85%)において木材の有無が正確に確認されたことを示す。21個のコンテナうちの2個(10%)において、ドアからは全く木材が見えない状況で木材の揮発物が検出された。2つのコンテナのうちの一方は、段ボール箱に入った洗濯機を収容し、視認できない箱の内部またはコンテナの背面のいずれかに木材が存在する可能性がある。しかしながら、本研究の性質から、このコンテナから荷を完全に降ろして、コンテナの中身を確かめることはできなかった。2つめのコンテナは、古い製材機械を収容しており、木材は視認できなかったものの、おがくずが残っている可能性はあり、これが検出された微量テルペンの供給源となった可能性がある。内部に少量の木材が存在するものの、木材の揮発物が検出されなかったコンテナもあった。この木材は、非常に乾燥したように見える車止めの形態であったため、検出可能なレベルでテルペンを発生するには乾燥しすぎていたのかもしれない。
【0077】
結論
上記の結果から、動的SPMEを用いてCarboxen(商標)−PDMS繊維上に揮発物を捕捉することが、船積コンテナ内部の木製包装材を検出するのに有効な方法であることが実証された。木材の揮発物の検出に基づいて木材の有無を正確に確認する優れた成功率が達成された。
【0078】
1兆分の数部(数ppt)の濃度の揮発性化合物が、本技術を用いて検出可能であったことは、動的SPMEが、船積コンテナ内のさらに広範な内容物からの揮発物を捕捉する潜在能力を有することを示すものである。これは、バイオセキュリティ脅威の有無だけでなく、国境警備に対して頻繁に見られる脅威、たとえば、薬物、爆発物または不法入国者などの存在を確かめるために用いることができるであろう。本技術は、多様な標的物質を探し出すため、または確認するために容易に適応させうることは明らかである。
【0079】
上記物質の存在を確認することができた本捕捉技術に基づき、コンテナの中に収容される小型の装置は、船積コンテナ輸送の安全を高める大きな可能性を有していると考えられる。
【0080】
また上述のような捕捉、濃縮、および確認のシステムは、航空機の荷室などの他の閉鎖領域内において、バイオセキュリティ、麻薬または爆発物を示す任意の特定の揮発物を検出するために使用できると考えられる。このことは、手荷物用ロッカーなど貨物または荷物が長期間にわたって閉鎖領域に放置される場合に特に関係する。
【0081】
本発明は、以下の3つの態様を含んでいる。
1.標的物質に関連する揮発物を捕捉する捕捉システムであって、該捕捉は、揮発物の量を濃縮できるような適切な時間のあいだ行われる。この捕捉システムは、船積または航空コンテナ内に配置されて、標的物質の指標となる特定の揮発物を吸着/吸収するように構成された「表面」を含むパッケージを備える。これにより、十分な濃度の微量揮発物が、ガラスウール、濾紙、スポンジまたは複数の特許捕捉システムで構成され得る種々の異なる「表面」材料を用いて捕捉できるようになる。
【0082】
2.脱着システム。捕捉された揮発物を「表面」から脱着させることができる様々な方法を用いることができる。たとえば、特定の加熱サイクルおよび温度範囲/時間によって、異なるタイプの揮発物を「表面」から差次的に遊離させるようにする。揮発物の遊離はGCまたは他の分析的装置を用いて測定することができる。
【0083】
変更例において、上記を脱着させるために遠隔地で使用され得る手持ち式装置を提供することができる。
3.検出システム。脱着システムによって遊離された揮発物は、すでに構築されているバイオセキュリティおよび他の脅威のプロファイリング情報のデータベースに照合して分析および比較することができる。検出は、好ましくは質量分析計、ガスクロマトグラフィー装置、イオン移動度分光計、質量分析、選択イオン流感質量分析装置などの市販の検出ツールに基づく、既知の技術を用いて、その場で、または実験室中など、遠隔的に行われる。
【0084】
本発明の理由によって、コンテナから単純に空気を吸い出して、これを検出器に提示されるフィルタ上に配置する場合よりも、遠隔地の場合において、より高い検出感度を与えることができる。
【0085】
本発明の様々な好ましい形態について開示してきたが、当業者には、開示した特定の手段および方法に対して、本発明の一般的概念内にある様々な変更および修正を行えることが明らかであろう。そのような変更および修正のすべては、本発明の範囲内に含まれるも
のとする。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1A】船積コンテナ内部の空気を採取するために利用される装置の概略図。
【図1B】船積コンテナ内部の空気を採取するために利用される装置の概略図。
【図2A】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2B】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2C】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2D】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2E】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2F】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2G】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2H】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図2I】実験条件下において試料から吸着された所定のテルペン化合物に対するサンプリング時間の影響を示す図。
【図3】空の船積コンテナからの空気試料のGC−FIDクロマトグラム。
【図4】空の船積コンテナからの空気試料のGC−FIDクロマトグラム。
【図5】異なる船積コンテナから採取した空気の全イオンクロマトグラム。
【図6】異なる船積コンテナから採取した空気の全イオンクロマトグラム。
【図7】異なる船積コンテナから採取した空気の全イオンクロマトグラム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖環境内における標的物質からのサイン揮発性化合物を検出する方法において、
本明細書で定義する「表面」を含むパッケージを提供する工程であって、前記パッケージは、空気流が前記表面上を通過できるようにし、標的物質からの揮発性化合物が空気中で運ばれて、前記表面によって捕捉されることを可能にする手段を含む、工程と、
パッケージを長い時間にわたって閉鎖環境内に配置する工程と、
捕捉された揮発物を前記表面から脱着させる工程と、
脱着された揮発物を、標的物質のサイン揮発性化合物の既知のプロファイルのデータベースと比較する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記表面は、適切に処理された場合に捕捉された揮発性化合物を放出する吸着性材料または吸収性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パッケージは、サイン揮発性化合物が前記表面上で濃縮されるのに十分な時間にわたって、閉鎖領域内に配置され、濃縮の時間の満了時にパッケージを閉鎖環境から取り出して、分析のために揮発性化合物を表面から遊離させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パッケージは、標的物質のサイン揮発性化合物が前記表面上に吸着されるように閉鎖環境内に配置され、前記パッケージは、閉鎖環境の外部の装置によって前記表面が調べられるようにする送信機を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記装置は、適切な時間にわたって、前記表面の上に空気が引き込まれるのを可能にする手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
空気は前記表面の上に一定時間にわたって引き込まれることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パッケージは、結果を遠隔測定法により通信できるようにする補助検出装置を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パッケージは、空気を前記表面上に移動させるのに適合された電気ポンプおよびファンのいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記パッケージは、前記電気ポンプおよびファンに電力を供給する電気蓄電池を備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記表面は、適切に処理されると、捕捉した揮発性化合物を放出する吸着性材料または吸収性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記表面から揮発性化合物を遊離させるための処理は、表面を制御下で加熱することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
閉鎖環境内の標的物質からのサイン揮発性化合物を検出する方法であって、
本明細書中で定義する「表面」を含むパッケージを提供する工程と、
前記パッケージを前記閉鎖環境中に長時間にわたって配置する工程と、
標的物質によって発生され、閉鎖環境内の空気によって運ばれる揮発性化合物が、前記表面によって捕捉されるのを可能にする時間にわたって、空気流を前記表面の上に通過させる工程と、
捕捉された揮発物を前記表面から脱着する工程と、
脱着された揮発物を分析する工程と、
脱着された揮発物を、標的物質のサイン揮発性化合物の既知プロファイルのデータベースと比較する工程とを含む方法。
【請求項13】
閉鎖環境内に配置するように適合されたパッケージと、
閉鎖環境内の空気流がパッケージを通過できるようにする、パッケージに付随する手段と、
前記パッケージ内に配置される本明細書中で定義する表面であって、空気流がその上を通過して空気流内の揮発性化合物が該表面によって吸着されるように配置される表面と、
前記表面によって捕捉された揮発性化合物が脱着できるようにする手段と、
脱着された揮発性化合物を分析し、該化合物のプロファイルを標的物質のサイン揮発性化合物の既知プロファイルのデータベースと比較する手段とを含む、標的物質からのサイン揮発性化合物を検出する手段。
【請求項14】
前記装置は、適切な時間のあいだ、パッケージ中および前記表面の上に空気が引き込まれるのを可能にする手段を含むことを特徴とする請求項13に記載の手段。
【請求項15】
前記表面は、適切に処理されると、捕捉した揮発性化合物を放出する吸着性材料または吸収性材料からなることを特徴とする請求項13に記載の手段。
【請求項16】
空気流が前記表面の上を通過できるようにする手段は、パッケージと一体化された空気ポンプおよびファンのいずれかからなることを特徴とする請求項13に記載手段。
【請求項17】
閉鎖環境は、船積コンテナおよび航空コンテナのいずれかからなることを特徴とする請求項13に記載の手段。
【請求項1】
閉鎖環境内における標的物質からのサイン揮発性化合物を検出する方法において、
本明細書で定義する「表面」を含むパッケージを提供する工程であって、前記パッケージは、空気流が前記表面上を通過できるようにし、標的物質からの揮発性化合物が空気中で運ばれて、前記表面によって捕捉されることを可能にする手段を含む、工程と、
パッケージを長い時間にわたって閉鎖環境内に配置する工程と、
捕捉された揮発物を前記表面から脱着させる工程と、
脱着された揮発物を、標的物質のサイン揮発性化合物の既知のプロファイルのデータベースと比較する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記表面は、適切に処理された場合に捕捉された揮発性化合物を放出する吸着性材料または吸収性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パッケージは、サイン揮発性化合物が前記表面上で濃縮されるのに十分な時間にわたって、閉鎖領域内に配置され、濃縮の時間の満了時にパッケージを閉鎖環境から取り出して、分析のために揮発性化合物を表面から遊離させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パッケージは、標的物質のサイン揮発性化合物が前記表面上に吸着されるように閉鎖環境内に配置され、前記パッケージは、閉鎖環境の外部の装置によって前記表面が調べられるようにする送信機を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記装置は、適切な時間にわたって、前記表面の上に空気が引き込まれるのを可能にする手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
空気は前記表面の上に一定時間にわたって引き込まれることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パッケージは、結果を遠隔測定法により通信できるようにする補助検出装置を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パッケージは、空気を前記表面上に移動させるのに適合された電気ポンプおよびファンのいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記パッケージは、前記電気ポンプおよびファンに電力を供給する電気蓄電池を備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記表面は、適切に処理されると、捕捉した揮発性化合物を放出する吸着性材料または吸収性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記表面から揮発性化合物を遊離させるための処理は、表面を制御下で加熱することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
閉鎖環境内の標的物質からのサイン揮発性化合物を検出する方法であって、
本明細書中で定義する「表面」を含むパッケージを提供する工程と、
前記パッケージを前記閉鎖環境中に長時間にわたって配置する工程と、
標的物質によって発生され、閉鎖環境内の空気によって運ばれる揮発性化合物が、前記表面によって捕捉されるのを可能にする時間にわたって、空気流を前記表面の上に通過させる工程と、
捕捉された揮発物を前記表面から脱着する工程と、
脱着された揮発物を分析する工程と、
脱着された揮発物を、標的物質のサイン揮発性化合物の既知プロファイルのデータベースと比較する工程とを含む方法。
【請求項13】
閉鎖環境内に配置するように適合されたパッケージと、
閉鎖環境内の空気流がパッケージを通過できるようにする、パッケージに付随する手段と、
前記パッケージ内に配置される本明細書中で定義する表面であって、空気流がその上を通過して空気流内の揮発性化合物が該表面によって吸着されるように配置される表面と、
前記表面によって捕捉された揮発性化合物が脱着できるようにする手段と、
脱着された揮発性化合物を分析し、該化合物のプロファイルを標的物質のサイン揮発性化合物の既知プロファイルのデータベースと比較する手段とを含む、標的物質からのサイン揮発性化合物を検出する手段。
【請求項14】
前記装置は、適切な時間のあいだ、パッケージ中および前記表面の上に空気が引き込まれるのを可能にする手段を含むことを特徴とする請求項13に記載の手段。
【請求項15】
前記表面は、適切に処理されると、捕捉した揮発性化合物を放出する吸着性材料または吸収性材料からなることを特徴とする請求項13に記載の手段。
【請求項16】
空気流が前記表面の上を通過できるようにする手段は、パッケージと一体化された空気ポンプおよびファンのいずれかからなることを特徴とする請求項13に記載手段。
【請求項17】
閉鎖環境は、船積コンテナおよび航空コンテナのいずれかからなることを特徴とする請求項13に記載の手段。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2007−528988(P2007−528988A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518576(P2006−518576)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/NZ2004/000137
【国際公開番号】WO2005/003734
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506293018)コンテナスキャン リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ContainerScan Limited
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/NZ2004/000137
【国際公開番号】WO2005/003734
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506293018)コンテナスキャン リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ContainerScan Limited
【Fターム(参考)】
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