説明

開口部のないチャンネルを備えたサンプル処理装置

第1および第2の主面および基材の回転軸を画定するハブを有する基材と、複数の連結する区画を有する開口部のないチャンネルとを含む装置。本発明の装置を使用する方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析物サンプルの分離および/または分画に有用な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質サンプルのための二次元分離システムは、一次元システムよりも増大するピーク容量のために興味深い。例えば複合タンパク質混合物の分離は、現在、二次元ポリ(アクリルアミド)ゲル電気泳動を使用して実施されており、そこではタンパク質が最初にそれらの等電点によって、次にサイズによって分離される。本技術はタンパク質混合物の優れた分離を与えるが、時間と手間が非常にかかる。さらにタンパク質がゲルマトリックス内に包埋されるので、例えば質量分析法によるさらなる分析のために、脱染、ゲル内消化、および抽出を伴う大規模なプロトコルが必要である。これらのようにかなりの人による介入およびいくつかの流体移動を必要とする手順は、誤り、汚染、および潜在的生物災害への曝露をもたらしうる。したがって二次元分離および引き続く分析のための限定的な使用者介入を提供できる装置に対する必要性が残されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、第1および第2の主面および基材の回転軸を画定するするハブを有する基材、およびサンプルを分画するように適合される開口部のないチャンネルを含む装置を提供する。一実施態様では、開口部のないチャンネルは複数の連結する区画を含む。別の実施態様では、装置はまた、装置の基材に脱着式に取り付けられる、またはその中に一体化させることができる、少なくとも1つの一体型電極も含む。
【0004】
本発明はまた、連結構造、および連結構造を通じて少なくとも開口部のないチャンネルに連結するその他の徴群をさらに含む装置も提供する。
【0005】
本発明はまた、本発明による装置を使用する方法も提供する。例えば本発明の装置は、分析物サンプルの処理、分離および/または分画を実施するために有用である。したがって装置は、いくつかの実施態様では、等電点電気泳動および/または毛管電気泳動を実施するように適合されても良い。
【0006】
本発明のその他の利点および徴群は以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、基材および開口部のないチャンネルを含む装置を提供する。本発明の一実施態様では、装置はサンプル処理のために使用できる。例えば装置を利用して、サンプルに対する等電点電気泳動をはじめとする電気泳動分離が実施できる。
【0008】
本発明の装置
本発明による装置100の1面を図1aに描写する。ここで図示される装置100は、基材102を含む。本発明の一実施態様では、基材102は概して平らな円形を有する。基材102はまた、例えば楕円形または正方形などの円形以外の形状を有しても良い。
【0009】
基材102は第1の主面104および図2aに描写される第2の主面106を含む。本願明細書を読んだ当業者は、基材102中に形成される徴群は、第1の主面104、第2の主面106、またはそれらのあらゆる組み合わせ上に形成されても良いことを理解するはずである。
【0010】
本発明による装置100の説明において、相対語「トップ」および「底」を使用しても良い。これらの用語はそれらの相対的意味においてのみ使用されるものと理解される。例えば基材102の第1の主面104および第2の主面106に関連して、「トップ」および「底」という語句は、基材102の対向する表面を表すために使用しても良い。使用において装置の方向は無関係であることに留意すべきであり、装置の「トップ」または「底」という記述は、決して本発明またはその使用の制限を意図するものではない。
【0011】
基材102の厚さは、基材102内に含まれる徴群の深さをはじめとするが、これに限定されるものではない、いくつかの要因次第で変化して良い。本発明の一実施態様では、基材102は約0.1mm〜約100mmの厚さである。別の実施態様では、基材102は約1mm〜約4mmの厚さである。
【0012】
基材102のサイズもまた、そこに形成される徴群の数、タイプ、およびサイズ、装置を制御するのに使用されるシステム、および分析するサンプルのサイズをはじめとするが、これに限定されるものではない、いくつかの要因次第で変化して良い。一般に基材102の形状が円形である実施態様では、基材102の直径は約50mm〜約500mmである。別の実施態様では、基材102は約80mm〜約120mmの直径を有する。
【0013】
基材102は、本願明細書を読んだ当業者が、このような装置に適すると認識するあらゆる材料から作製されても良い。このような材料の例としては、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(デュポン(Dupont)から入手できるテフロン(登録商標)(Teflon)(登録商標))、ポリシロキサンまたはそれらの組み合わせをはじめとする熱可塑性樹脂などのポリマーが挙げられるがこれに限定されるものではない。本発明の一実施態様では、基材102はポリプロピレンから作製される。
【0014】
その中に形成された様々な徴群を含有する基材102は、本願明細書を読んだ当業者に知られているあらゆる方法によって製作できる。基材102内に形成される徴群を製作するこのような方法の例としては、射出成形、機械加工、微細機械加工、押出し複製、打抜き、レーザーアブレーション、反応性イオンエッチングまたはそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0015】
本発明の装置100は、基材102の回転中心軸108を画定するハブもまた含む。本発明の装置100は、回転中心軸108周囲の装置100の回転が、装置100の異なる徴群内のおよびそれらの間の材料の移動または動きを容易にするようにアレンジされる。図1a、b、c、d、およびe内の矢印DRは、回転中心軸108周囲の装置100の回転を描写する。本願明細書を読んだ当業者は、装置が、図1a、b、c、d、およびeで指定されるのとは反対方向にも回転できることを理解するであろう。
【0016】
本発明による装置100は、開口部のないチャンネル110もまた含む。開口部のないチャンネル110の様々な立体配置の例は、図1a、b、c、d、およびeに示される。図1a、b、c、d、およびeに示される例示的な装置の第2の主面106の対向する面は、図2a、b、c、d、およびeにそれぞれ描写される。開口部のないチャンネル110は、概して第1の主面104、第2の主面106、またはそれらの組み合わせ内に形成される。図1a、b、c、d、およびe、そして図2a、b、c、d、eで描写される実施態様では、開口部のないチャンネル110は、図1a、b、c、d、およびeの実線、そして図2a、b、c、d、およびeの破線で描写されるように、第1の主面104内に形成され、開口部のないチャンネル110が、図2a、b、c、d、およびeで示される基材102の隠れたまたは対向する面の上に、またはその中に形成されることを表す。
【0017】
ここでの用法では、「開口部のないチャンネル」110という語句中の「開口部のない」という言葉は、液体で充填すると、チャンネルからの流体の一部の排除によってチャンネル内に真空を作り出せることを意味する。特定の実施態様では、チャンネル内に作り出せる真空は、装置外からのガスではなく、装置内からのガスによって充填される。例えば流体が(例えば装置を回転させることで)チャンネルから排除されて連結構造に入ると、連結構造内のガスが入ってくる流体によってチャンネル内に押し込まれ、流体の排除によって作り出されたチャンネル内の真空内に入る。この意味では開口部がないとは、チャンネルからの流体の排除によって装置外からのガスがチャンネル内に引き込まれる通気型システムとは異なる。通気型システムはまた、概して通気口も含み、流体の排除によってチャンネル内に真空が形成するのを防止する。「開口部のない」という言葉の使用は、チャンネルが通気口を含むことができないことを意味せず、それはチャンネルが上述の開口部のないまたは密封したシステムの特徴を示すことを意味する。
【0018】
本発明の一実施態様では、開口部のないチャンネル110は、概して基材102の円弧に従う。基材102が概して円形を有する例示的な一実施態様では、開口部のないチャンネル110は、基材102の円弧に概して従う円弧を有することができ、すなわち基材中心周囲の円形または同軸である。開口部のないチャンネル110の長さは、開口部のないチャンネル110の目的および基材102のサイズをはじめとするが、これに限定されるものではない、いくつかの要因に基づいて選択されても良い。開口部のないチャンネル110が等電点電気泳動(IEF)のために使用される実施態様では、開口部のないチャンネル110の長さは、分離で所望されるpH感度すなわち所望のpH画分の数、および分離する特定タイプのサンプルに、ある程度左右されても良い。
【0019】
開口部のないチャンネル110の長さは、使用中に装置100がその周囲を回転する回転軸108に対して測定した際に、開口部のないチャンネル110によって形成される円弧の角寸法の観点で特徴づけられても良い。例えば開口部のないチャンネル110は、使用中に装置100がその周囲を回転する回転軸108に対して測定した際に、約10度以上、代案としては約180度以上の円弧を形成しても良い。代案としては、開口部のないチャンネル110は、装置100周囲により長い円弧を形成できる。例えば開口部のないチャンネル110は、使用中に装置100がその周囲を回転する回転軸108に対して測定した際に、約320度以上の円弧を形成しても良い。場合によっては開口部のないチャンネル110が、装置100周囲で360度を超えて伸びるかもしれないことを理解すべきである。角円弧の観点から特徴づける場合、装置100のサイズもまた、開口部のないチャンネル110の路程を決定する上での一要因になる。
【0020】
装置はまた、開口部のないチャンネル110の回転軸108までの距離によって特徴付けられても良い。この文脈での距離とは、開口部のないチャンネル110の回転軸108の中心までの距離を指す。この距離は、図1aで半径として描写される。本発明の一実施態様では、開口部のないチャンネル110は少なくとも約10mmの半径を有する。別の実施態様では、開口部のないチャンネル110は約10mm〜約120mmの半径を有する。別の実施態様では、開口部のないチャンネル110は約20mm〜約50mmの半径を有する。
【0021】
本発明の一実施態様では、半径は開口部のないチャンネル110の長さ全体にわたって一定でない。一実施態様では、半径は開口部のないチャンネル110の長さにわたり増大できる。増大する半径(r2>r1)を有する本発明の装置の一例を図1bに示す。このような装置は、相対比較次第で減少する半径、すなわちr2<r1を有するとして特徴づけることができる。一定でない半径を有する装置はまた、らせん型の開口部のないチャンネル110を形成できる。このような装置の例を図1cに示す。この実施例ではr1<r2<r3である。
【0022】
図1dに描写される別の実施態様では、開口部のないチャンネルは、例えば基材の主面に沿った回転軸とほぼ平行に走る直線経路に従っても良い。代案としては、チャンネルは、図1eに示すように基材中心周囲に同心円状にアレンジされた、または上述のように中心からの距離が異なる一連の直線セクションの形態であっても良い。
【0023】
開口部のないチャンネル110の深さおよび幅は、基材102のサイズ、開口部のないチャンネル110の長さ、サンプルのサイズまたはそれらのいくつかの組み合わせに少なくともある程度左右されても良い。一般に開口部のないチャンネル110の深さは、約10μm〜約2000μmである。一実施態様では、開口部のないチャンネル110の深さは、約100μm〜約500μmである。より深い開口部のないチャンネル110を有する実施態様は、それほど深くない開口部のないチャンネル110と比べて、増大したサンプル装填を利用できる。しかし増大したチャンネルの深さは、設定された電界強度に対する増大する電流のために、増大するジュール加熱をもたらすことができる。概して増大するジュール加熱は望ましくない。したがって本発明の一実施態様では、少なくともある程度許容されるジュール加熱量に関する所望のサンプルサイズの最適化が、開口部のないチャンネル110の寸法を決定付ける。一般に、開口部のないチャンネル110の幅は約10μm〜約2000μmである。一実施態様では、開口部のないチャンネル110の幅は約100μm〜約1000μmである。
【0024】
開口部のないチャンネル110の面または表面は、例えば滑らかな表面、粗い表面、波状表面、垂直面、または傾斜面をはじめとするいくつかの異なる特徴を有することができる。本願明細書を読んだ当業者はまた、装置の異なる使用に基づいて、これらの特徴またはそれらの組み合わせが、様々な利点または不都合を提供するかもしれないことを理解するであろう。
【0025】
本発明による装置100の一実施態様では、開口部のないチャンネル110は、第1の112および第2の114サンプルウェルを含む。第1のサンプルウェル112および第2のサンプルウェル114は、概して開口部のないチャンネル110の両端上の区画として述べられても良い。第1のサンプルウェル112および第2のサンプルウェル114は、例えば次のような多数の機能を有することができる。サンプルを装置100に導入する、1つ以上の電極を装置100に導入する、試薬または液を装置100に導入する、またはそれらのあらゆる組み合わせ。本発明の一実施態様では、第1のサンプルウェル112または第2のサンプルウェル114を利用して、サンプルが装置100に導入される。別の実施態様では、第1のサンプルウェル112および/または第2のサンプルウェル114の1つ以上を使用して、2つの異なる液を導入でき、2つの電極を装置100に導入できる。
【0026】
一実施態様では、第1のサンプルウェル112および第2のサンプルウェル114は、使用者がピペットまたはシリンジを使用して、サンプル、試薬または液を装置100に導入できるように構成される。装置の別の実施態様では、第1のサンプルウェル112および第2の114サンプルウェルはまた、以下で詳細に述べる一体型電極と共に機能するように構成される。
【0027】
本発明の一実施態様では、基材102に含まれる徴群は、密封されまたは覆われる。図3は、装置100の一部の横断面および装置100を密封する例示的な方法を描写する。装置100は、その中で少なくとも開口部のないチャンネル110が形成される、第1の主面104および第2の主面106を有する基材102を含む。本発明のこの実施様態では、カバーフィルム120が基材102の第1の主面104に被着される。本願明細書を読んだ当業者は、カバーフィルム120が徴群を含有する第1の主面104の領域または第1の主面104の全体にのみに被着できることを理解するであろう。本願明細書を読んだ当業者は、双方の表面または1つの表面内のみに徴群が形成されているかどうか次第で、第1の主面104、第2の主面106のどちらか、または双方をカバーフィルム120で覆うことができることを理解するであろう。
【0028】
本発明の一実施態様では、カバーフィルム120は約50μm〜約1000μmの厚さを有する。別の実施態様では、カバーフィルム120は約100μm〜約250μmの厚さを有する。カバーフィルム120は、本願明細書を読んだ当業者が適切と考えるあらゆる材料からできていることができる。このような材料の例としては、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(デュポン(Dupont)から入手できるテフロン(登録商標)(Teflon)(登録商標))、ポリシロキサン、およびそれらの組み合わせが挙げられるこれに限定されるものではない。一実施態様では、基材102は、透明なポリオレフィン感圧シリコーン接着剤で密封される。
【0029】
密封膜として作用するカバーフィルム120は、裏材料(選択される波長の電磁エネルギーに対して透過性の裏材料など)の上に配置された感圧接着剤などの接着剤を含むことができるが、必ずしも含む必要はない。一実施態様では、接着剤は、従来の分析容器がそれからできている材料(ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、またはそれらの組み合わせなどの)に良好に接着し、高温および低温(例えば約−80℃〜約150℃)での保管中に、サンプルの蒸発に対する効果的密封をなおも提供しながら接着性を保持し、実質的に生物学的サンプル混合物、またはいくつかのそれらの組み合わせ構成要素の中に溶解しない、またはその他の様式でそれらと反応しないように選択される。本願明細書を読んだ当業者は、用途によってこれらの考察のいくつかが重要かもしれず、いくつかは重要でないかもしれないことを理解するであろう。一実施態様では、接着剤は装置100内で実施されるいかなるプロセスも妨げない(例えばタンパク質に結合する、溶液に溶解するなど)。例示的な接着剤としては、その中で生物学的反応が実施される分析装置のカバーフィルム上で典型的に使用されるものが挙げられる。このような接着剤としては、例えばコー(Ko)らの国際公開第00/45180号パンフレットおよびコー(Ko)らの国際公開第00/68336号パンフレットで述べられるように、ポリ−αオレフィンおよびシリコーンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
本発明の装置100の一実施態様では、開口部のないチャンネル110は複数の連結する区画122を含む。図4は複数の連結する区画122を含む開口部のないチャンネル110の一実施態様の一部を描写する。開口部のないチャンネル110の内側半径123は、鋸歯などの特徴を含んでも含まなくても良い。開口部のないチャンネル110の外側半径125は、鋸歯などの特徴を含んでも含まなくても良い。開口部のないチャンネル110は、急な角度によって特徴づけられても良く、または代案としては曲がっていても良い。この実施態様では、開口部のないチャンネル110の構造は、ここでは概して「区画化された」と称される。
【0031】
本発明の一実施態様では、複数の連結する区画のそれぞれが少なくとも約1ピコリットル(pL)の容積を有する。別の実施態様では、複数の連結する区画のそれぞれが約100μl未満の容積を有する。本発明の一実施態様では、複数の連結する区画122の少なくとも1つが、その他の複数の連結する区画122とは異なる容積を有する。このような実施態様は、収集されたサンプルにおけるバリエーションを可能にする。これは使用者にとって、感心のあるサンプルだけに集中することで時間の節約になるかもしれない。これは単一装置100上に1つを超える開口部のないチャンネル110を配置させる一助にもなるかもしれない。
【0032】
図4で示されるように、複数の連結する区画122のそれぞれは前縁128および後縁130を有する。後縁130は、回転の方向DRを向いた区画122を連結する面である。前縁128は、それぞれの連結する区画122のもう一つの面、または回転の方向DRから見て外方に向く面である。開口部のないチャンネル110の内側半径123の前縁128の重心に対する角度は、概して約10度〜約90度の範囲内である(図4でaにより画定される)。一実施態様では、開口部のないチャンネル110の外側半径125の前縁128の重心に対する角度は、約45°である(図4でbにより画定される)。一実施態様では、角度bはa以上である。別の実施態様では、角度bはaに等しい。一実施態様では、内側半径123および外側半径125に対する後縁130の角度はaおよびbによって定まり、一実施態様ではaおよびbと同一である。一実施態様では、前縁128と後縁130の角度によって作り出される鋸歯状の溝が、開口部のないチャンネル110において装置回転中に流体慣性を低下させる役割をしても良い。
【0033】
図5aは、開口部のないチャンネル110のための別の例示的なデザインを描写する。この実施態様では、開口部のないチャンネル110の複数の連結する区画122間の移行は滑らかである。このような実施態様は、開口部のないチャンネル110内のジュール加熱の効果を制限するかもしれない。
【0034】
図5bは、開口部のないチャンネル110のための別の例示的なデザインを描写する。この実施態様は、挟み込み点505を描写する。挟み込み点505は、概して2つの連結する区画122間の開口部のないチャンネル110の最も狭い領域を指す。本願明細書を読んだ当業者は、挟み込み点505の寸法が、少なくともある程度、回転中心軸108に対する内側半径123の前縁128(すなわち基材回転中心により近いチャンネルの面)の角度、および外側半径125(基材回転中心からより遠いチャンネルの面)の角度によって定まることができることを理解するであろう。本発明の一実施態様では、より小さい挟み込み点505は、タンパク質分離に本発明の装置を使用する場合に、より効果的な分離を提供できる。しかし挟み込み点505の寸法がより小さくなるに連れて、ジュール加熱の効果が増大する。一実施態様では、挟み込み点505は、約200μm以下の直径を有する。別の実施態様では、挟み込み点505は約10μmの直径を有する。
【0035】
本発明の一実施態様では、複数の連結する区画122はサンプルの部分を収集するように機能して、それは次に収集領域124(図5aおよびb参照)を通過する。次に典型的に、サンプルは例えば連結構造またはチャンネルを通じて、収集領域124から装置の少なくとも1つのその他の徴群に移行する。
【0036】
図5cおよびdに示すように、収集領域は、サンプルが連結構造またはチャンネルの中に移行するように、あるいは別の様式において、多様な角度のいずれかで区画(群)を出るように構成されても良い。例えば図5cおよびdで角度XおよびYとして同定される、収集領域124と外側半径125との間に位置する角度は、ほぼ等しくても良く(例えば図5b参照)、または角度は図5cおよびdにそれぞれ示すように、X<YまたはX>Yであるように異なっても良い。一実施態様では、XまたはYのどちらかが約180°である。
【0037】
本発明の別の実施態様では、開口部のないチャンネル110は複数の連結する区画を含まないが、回転中心軸108から変化する半径を有する構造を含む。このような実施態様は、ヘビ状であると述べることができる。このような実施態様では、回転中心軸108に対する開口部のないチャンネルの中央の距離110は、最小と最大の間で揺れ動く。このタイプのヘビ状開口部のないチャンネル110は、回転中心軸108から内側半径123に対して一定距離を有しても有さなくても良く、回転中心軸108から開口部のないチャンネル110の外側半径125に対してより大きい一定距離を有しても有さなくても良い。
【0038】
本発明の一実施例では、中心により近いチャンネル壁(すなわち内側半径)は、基材の中心からの距離が異なる。中心への距離は、例えば定められた最小と最大の間で変化し、または振動して、図5fおよびgで示すような波状またはジグザグタイプのパターンを作り出しても良い。中心からより遠いチャンネル壁(すなわち外側半径)も同様に、所望の最小および最大値の間で変化または振動しても良い。内側および外側半径は、図5fおよびgに示すように同一量で増減しても良く、この場合、チャンネルの幅または横断面積は相対的に一定のままである。代案としては、内側および外側半径は、異なる量で増減しても良く、交互の挟み込み点(チャンネルが狭くなる領域)および区画がもたらされる。このような実施態様の例を図4および図5aおよびbに示し、そこでは内側半径は外側半径よりも少ない量で変動する。図5gおよびhに描写されるさらに別の実施態様では、内側半径は相対的に一定のままである一方で外側半径が変動し、あるいはその逆である。
【0039】
本発明の一実施態様では、開口部のないチャンネル110を使用して等電点電気泳動(IEF)を実施でき、その中で連結する区画122は、サンプルからのタンパク質分離のために異なるpH容器を作り出すように機能する。このような実施態様では、分離されるサンプル以外の少なくとも1つの液を開口部のないチャンネル110に添加できる。使用においては、この少なくとも1つの液は、最終使用者が装置100を得る前に添加でき、または使用者が添加することができる。開口部のないチャンネル110がIEFのために使用される実施態様では、分離されるタンパク質画分をさらなる分析のために装置100から除去でき、または装置100それ自体の上でさらなる分析が実施できるように装置100を構成できる。
【0040】
開口部のないチャンネル110がタンパク質のIEFのために使用される本発明の実施態様では、開口部のないチャンネルが表面改質されていても良いが、必ずしもされていなくても良い。
【0041】
一実施態様では、事実上装置内のあらゆる徴群のあらゆる表面を改質して、それらのいくつかの特性を改変できる。改変できる特性の例としては、表面エネルギー、疎水性、親水性、または特定部分に対する反応性が挙げられるがこれに限定されるものではない。一実施態様では、少なくとも1つの徴群の少なくとも1表面の表面エネルギーが増大される。表面を改質して表面エネルギーを増大させるのに使用できる材料の例としては、ダイヤモンド様ガラスが挙げられる。ダイヤモンド様ガラスの詳細は国際公開第01/67087号パンフレットにある。
【0042】
一実施態様では、開口部のないチャンネルに液が添加される場合に、開口部のないチャンネル110の表面を改質して、pH勾配を作り出すことができる。開口部のないチャンネルを表面改質して装置内にpH勾配を形成させる場合、表面改質はここでは「固定化pH勾配」と称される。固定化pH勾配は、本願明細書を読んだ当業者に知られているあらゆる方法を使用して作り出せる。図6aおよび6bは、固定化pH勾配を作り出すのに利用できる表面改質の2つの実施例を描写する。図6aで描写される実施例は、トリメチルシランプラズマ処理でポリマー表面をシラン化することで、開口部のないチャンネルを表面改質するステップを含む。アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(図6aの601で表される)は最初に表面Si−OH基(603で表される)に結合する。次にカリフォルニア州サニーベールのアマーシャム・バイオサイエンス(Amersham Bioscience(Sunnyvale,CA))からのイモビリン(Immobiline)(登録商標)モノマーが、アクリレート官能基601と反応して、必要な分子をグラフトしてpH勾配を作り出す。アミド基と反応する官能基を有する、その他のシランの化学的性質を使用しても良い。図6bは、異なる官能基(したがって異なるpKa値)を有するシランをプラズマ処理表面と反応させるステップをはじめとする、固定化pH勾配を作り出す別の例示的な方法を描写する。この方法は、イモビリン(Immobiline)(登録商標)を溝表面に固定化する追加的ステップを必要としない。
【0043】
その他の徴群
一実施態様では、本発明の装置は上述した以外の徴群を含んでも良い。このようなその他の徴群の例としては、チャンバ、連結構造、バルブ、および分析構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。本願明細書を読んだ当業者は、このようなその他の徴群が、開口部のないチャンネルと同様の様式で形成できることを理解するであろう。
【0044】
いくつかのこのような徴群を含む装置の実施例は、図7a、b、c、d、e、f、g、h、およびiにある。図7a、b、c、d、e、f、g、h、およびiの装置は、装置(すなわち基材)それ自体でなく、このような例示的な装置内に形成される徴群のみを描写する。
【0045】
図7aの例示的な装置は、開口部のないチャンネル710、第1のサンプルウェル712、第2のサンプルウェル714、少なくとも1つの区画連結構造716、および少なくとも1つのチャンバ720を含む。
【0046】
本発明による開口部のないチャンネル710、第1のサンプルウェル712、および第2のサンプルウェル714は、既に論じた徴群のいくつかまたはいずれかの組み合わせを含んでも良い。複数の区画連結構造716は、開口部のないチャンネル710の複数の連結する区画(図7aでは具体的には示されない)を複数のチャンバ720に接続するように機能する。開口部のないチャンネル110が、例示的なヘビ状の開口部のないチャンネルなどの複数の連結する区画からできていない実施態様では、複数の連結する区画は概して開口部のないチャンネル110の外側半径125に接触し、そこでは外側半径125は回転中心軸108から最も遠い。長さ、深さ、幅などの区画連結構造716の物理的特徴は、概してそれらが接続する開口部のないチャンネル710およびチャンバ720の寸法と同一規模になるように選択される。区画連結構造716の横断面形状は、例えば台形、円形、長方形、またはこれらの形状のあらゆるバリエーションであっても良い。区画連結構造716上の表面もまた改質させて、液の毛管吸上げを防止または促進するように、または化学溶液を改質させるように表面の特徴を変化させても良い。
【0047】
複数のチャンバ720は、概して区画連結構造716を通じて開口部のないチャンネル710の連結する区画(ここでは図示せず)から移動したサンプルを収容するように機能しても良い。チャンバ720はまた、反応ウェル、冷却または加熱領域、保持領域、またはあらゆるそれらの組み合わせの役目を果たすこともできるが、必ずしもそうである必要はない。長さ、深さ、幅などの区画連結構造716の物理的特徴は、概してそれらが接続する開口部のないチャンネル710およびチャンバ720の寸法と同一規模になるように選択される。チャンバ720は、サンプルの化学反応または改質を実施するように官能化できるが、必ずしもそうである必要はない。一実施態様では、1つの連結する区画(図7aでは図示せず)がシリーズ中の1つを超えるチャンバ720に連結しても良い。これによってサンプルが1つを超える条件の組の下で処理できるようになる。
【0048】
本発明の一実施態様では、複数のチャンバ720は反応ウェルとして機能できる。このような実施態様では、チャンバ720は概して所望の反応または反応のための試薬で予備充填される。チャンバ720内で実施できる反応の一例としては、タンパク質変性が挙げられる。この例では、タンパク質を変性するのに必要な試薬は、最終使用者が装置100を得る前にチャンバ720に予備装填されるか、または使用者によって装填されてもよい。
【0049】
本発明の別の実施態様では、複数のチャンバ720はタンパク質消化ウェルとして機能でき、そこでは例えばトリプシンなどのプロテアーゼでタンパク質サンプルが消化され、ペプチドが得られる。
【0050】
複数のチャンバ720が加熱領域として機能する実施態様では、本願明細書を読んだ当業者に知られているあらゆる方法を使用して、チャンバを加熱できる。その例は国際公開第02/00347号パンフレットにある。さらに別の実施態様では、複数のチャンバ720が反応ウェルおよび加熱領域の両者として機能できる。
【0051】
本発明の別の例示的な実施態様を図7bに描写する。図7b中の装置は、図7aの徴群の全て(同一番号)、ならびにチャンバ720内に、またはそれに接続する少なくとも1つの区画バルブ718を含む。図7aに関して上述の徴群は、上述の徴群および/または機能のいくつかまたはいずれかの組み合わせを有しても良い。区画バルブ718は、開口部のないチャンネル710の複数の連結する区画からチャンバ720への流体の流れを制御するように機能する。区画バルブ718の例示的な立体配置および機能については下で詳しく考察する。
【0052】
図7cは、本発明による装置の別の例示的な実施態様を描写する。図7cで描写される装置は、図7bの徴群の全て(同一番号)、ならびに少なくとも1つのチャンババルブ724、少なくとも1つのチャンバ連結構造722、および少なくとも1つの収集容器725を含む。図7aおよびbに関して上述した徴群は、同一徴群および/または機能のいくつかまたはいずれかの組み合わせを有しても良い。この実施態様では、少なくとも1つのチャンババルブ724が、チャンバ720から収集領域725への流体の流れを制御するために機能する。
【0053】
図7dで描写される例示的な装置は、図7cで描写される装置徴群の徴群の全て(同一番号)、ならびに少なくとも1つの測定電極726、少なくとも1つのチャンネル728、およびその付随電極730aおよび730bを含む。図7a、b、およびcに関して上述した徴群は、同一徴群および/または機能のいくつかまたはいずれかの組み合わせを有することができる。一実施態様では、サンプルチャンバ720は、サンプルチャンバ720内の装置内の液のpHをモニターするように構成できる測定電極を含む。一実施態様では、測定電極は、イオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET)であることができる、一体型素子である。測定電極がモニターできるその他の例示的な徴群としては、温度、溶解酸素、および溶解イオン濃度(例えば脱塩を測定するために)が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0054】
この実施態様は、チャンネル728を含む。チャンネル728は、毛管電気泳動を実施するように構成されても良いが、必ずしもそうでなくても良い。チャンネル728と連結しているのはその電極730aおよび730bである。毛管電気泳動のためにチャンネル728を形成し、使用し、およびデザインする例示的な方法および詳細は、米国特許第6,532,997号明細書にある。
【0055】
図7a、b、c、およびdに示されるように、本発明の装置はまた、装置の1つの徴群を別の徴群に接続する役割をする連結構造を含んでも良い。連結構造の例としては区画連結構造716およびチャンバ連結構造722が挙げられるが、これに限定されるものではない。概して連結構造を通じた1徴群から別の徴群への流体の輸送は、中心軸の周囲に装置を回転させることによって達成される。装置の1徴群からその他の徴群への流体の完全な移動を得るのに必要な装置の回転速度は、徴群のサイズ、徴群の配置、流体粘度、溶液と基材間の表面特性の違い、連結構造中のバルブタイプ(下で考察する)、回転の速度、加速度、および時間、またはそれらのいずれかの組み合わせをはじめとするが、これに限定されるものではない多様な要因次第で変化して良い。
【0056】
本発明の一実施態様では、流体を1つの徴群から別の徴群へ輸送するために、約2000rpm以上、場合によっては約3000rpm以上、そして場合によっては約4000rpm以上の回転速度が有用かもしれない。流体の移動に必要な時間もまた、上述の同一要因のいくつかおよび回転速度に左右される。本発明の一実施態様では装置は1RPMで少なくとも約0.1秒間、別の実施態様では10,000RPMで少なくとも約600秒間回転させることができる。別の実施態様では、装置は20,000RPMで約3,600秒間回転させることができる。
【0057】
本発明の装置の徴群の別の例示的な実施態様は、図7eに描写される。図7eの装置は図7dと同一の徴群を有するが、単一チャンネル728を有する。一実施態様では、図7dの装置は装置上の各チャンバ720毎に1つのチャンネル728を有する。代案としては、図7eで描写される装置は1つのチャンネル728を有し、それに対してチャンバ720のチャンバ連結構造722の全てが、チャンネル連結構造729を通じて連結する。
【0058】
図7fは、本発明の装置のさらに別の例示的な実施態様を描写する。図7fの装置は図7bの装置と同一徴群を有するが、またチャンババルブ724、チャンバ連結構造722、第1のバルブ734を含む第2のチャンバ732、および第2のバルブ736、収集容器連結構造738、および収集容器740を含む。一実施態様では、第2のチャンバ732は反応ウェルを提供するように機能できる。別の実施態様では、第2のチャンバ732は、上のチャンバ720に関して考察したのと同様に機能できる。
【0059】
本発明の別の実施態様では、複数のチャンバ720がタンパク質消化ウェルとして機能でき、そこではタンパク質サンプルがトリプシンで消化されて、ペプチドを与える。第1のチャンバ(図示せず)に連結する第2のチャンバ732では、引き続く分析ステップへの導入準備のためにサンプルを脱塩できる。
【0060】
図7gは、本発明による装置の別の例示的な実施態様を描写する。図7gの徴群は、開口部のないチャンネル710、第1のサンプル区画715、第2のサンプル区画717、サンプル連結構造713、およびより大きな半径の第1のサンプルウェル712および第2のサンプルウェル714を含む。本発明の一実施態様では、サンプル連結構造713は約2mm未満である。サンプルウェル712がサンプル連結構造713によってサンプル区画715に連結することの利点は、装置を回転させた際に、サンプルウェル712中の液が開口部のないチャンネルの連結する区画内にあふれ出ないことである。しかしサンプル区画715(および/または717)からサンプルウェルを除去することで、サンプル連結構造713内でサンプルが分離し始めるかもしれない。したがってサンプル連結構造713を有する本発明の実施態様では、サンプル連結構造713の長さは、これらの2つの要因の妥協とみなすことができる。
【0061】
本願明細書を読んだ当業者は、事実上、基材102内で徴群のあらゆる組み合わせが形成できることを理解するであろう。本願明細書を読んだ当業者はまた、図7a〜gをはじめとするが、これに限定されるものではないあらゆる図における徴群のあらゆる組み合わせが、あらゆる組み合わせで組み合わせられることも理解するであろう。所望ならば、第1の主面、第2の主面、またはそれらのいくつかの組み合わせのいずれかでこれらの徴群を形成できることを理解すべきである。第1および第2の主面の双方で徴群を形成する場合、これらの徴群間の連結は、2つの徴群を連結するのに十分深い連結構造を基材中に形成することで達成できる。
【0062】
図7a〜iおよび図1a〜eで描写される開口部のないチャンネルは、曲線、直線または角状経路に従う単純な線として示されるが、これらの線はチャンネルの全体的構造または経路を図示することを意図し、チャンネルの壁または面(すなわち外側および/または外側半径)は、なおも上述のような鋸歯状(ギザギザのある)またはヘビ状の形状を有しても良く、および/またはチャンネルは区画および挟み込み点(すなわちチャンネルの幅または横断面積が増減する領域)を有しても有さなくても良いことを理解すべきである。したがってチャンネル全体としては比較的滑らかな経路に従うにもかかわらず、図7c〜iの開口部のないチャンネル710、および図1a〜eの開口部のないチャンネル110の面は、例えば図4および図5a〜hで示す形状の内側および外面半径を有することができる。
【0063】
バルブシステム
本発明の連結する区画、チャンバまたは連結構造は、1つ以上の一体型バルブ構造を含むことができるが、必ずしもそうでなくても良い。このようなバルブ構造は、上の図7a、b、c、d、e、f、g、h、およびiで参照される。一体型バルブ構造の一例は、図8および9aにある。本発明のこの実施態様におけるバルブ構造は、壁141(図9aにある)で画定され、参照数字139によって表される、連結する区画、チャンバまたは連結構造(ここで「徴群」と総称される)の外周内に突出するリップ140の形態であり、それは概して徴群139の全外周の周囲に伸びる円形の形状である(徴群139の外周は、図8において実線および破線(隠れた線)の組み合わせで描写される)。その他のプロセスチャンバは、例えば三角形、正方形などのセグメントに分かれる側壁を有しても良いものと理解される。
【0064】
(図9bに示されるように)徴群139の境界は徴群139の底面143によってさらに画定でき、それは次に基材102またはカバーフィルム120によって画定できる。リップ140aは、例えば図9aに示されるように、徴群139の容積中への下を切り取った伸展の形態である。その結果、徴群139の容積の一部は、リップ140aおよびbと、カバーフィルム120との間に位置する。図8および9aで描写される特定の実施態様は、徴群139の両面にバルブ構造を有する。したがって徴群の容積の一部は、リップ140bと、カバーフィルム120との間にもまた位置する。
【0065】
連結構造137bの一部はリップ140b内に伸び、連結構造137bの反対端は次の徴群139c内に位置する。連結構造137bがリップ140b内に伸びる箇所では、リップ140bの残りの部分に比べて厚さが低下している薄い領域142bが形成される。同様の薄い領域142aはまた徴群139の反対端にも形成され、そこでは連結構造137aの一部がリップ140a上に伸びる。
【0066】
リップ140内に、または連結構造137bによって占められる薄い領域142内に開口部が提供される場合、徴群139a内のサンプル材料は、徴群139bへの送達のために連結構造137bに移動できる。リップ140aおよびbに開口部が不在であると、カバーフィルム120に対して密閉され、この場合徴群139aからのサンプル材料の流出を防止するリップ140aおよびbによって、徴群139aへのまたは139bへの材料の動きが阻止される。
【0067】
リップ140の開口部は、あらゆる適切な技術または技術群によって形成できる。例えばリップ140は、機械的に穿孔されてもレーザーエネルギーで切断されても良い。別の実施態様では、バルブ構造を開けると材料が徴群139aから連結構造137b内に移動できるように、バルブ構造がリップ140内に一体化されても良い。いくつかのバルブ構造の例としては、例えば米国特許出願公開第20020047003号明細書で述べられるように、フォーム、形状メモリ材料などが挙げられる。
【0068】
連結構造137bによって占められる領域142におけるリップ140の低下した厚さは、いくつかの利点を提供するかもしれない。例えばそれは、その中でリップ140が容易に穿孔され、または別の様式で変形されて所望の開口部が提供される位置または位置群を限定しても良い。すなわち領域142を取り囲むリップ140のより厚い部分が、そこに開口部を開けるのに使用できるいずれかの技術による変形に対して、より抵抗性であっても良い。低下した厚さの領域142の別の潜在的利点は、それが例えばその他の徴群および連結構造と共に基材102中に成形できることである。
【0069】
使用されるバルブ構造の正確な性質に関係なく、図8および9で描写される一体型バルブ構造がある徴群または連結構造の1つの利点は、徴群139aとバルブとの間にデッドスペースができないことである。換言すれば徴群139a内に位置する全てのサンプル材料が、処理中に実質的に同一条件に曝される。これはバルブが連結構造137bに沿って徴群139aから下流に位置する場合には、潜在的に当てはまらない。このような状況では、徴群139aとバルブ間の連結構造の容積内に位置するあらゆるサンプル材料が、処理中に異なる条件に曝されることができ、プロセス徴群139a中などの試薬またはその他の材料への同一の曝露を受けない。
【0070】
バルブはまた、少なくともカバーフィルム120のために、レーザーによって穿孔できる材料を使用して、得ることができる。装置の所望の領域または領域群にレーザーを方向付けることで、このようなバルブが開く。一実施態様では、特定波長のレーザーエネルギーを吸収する材料をデスクに装填することで、このタイプのバルブが形成できる。次に少なくともその波長を放射するレーザーが、所望する「開ける」領域のみに向けて方向付けられる。一実施態様では、基材をエネルギー吸収材料で装荷でき、第1の主面および第2の主面双方の上のカバーフィルムは装荷されない。レーザーが装置の所望の領域に方向付けられると、基材が破れ、装置から逃さずに流体が別の徴群に移行できるようになる。
【0071】
本願明細書を読んだ当業者に適切であるとして知られているエネルギー吸収材料を利用できる。例としては、カーボン、または染料分子などのその他の吸収材料による装填が挙げられる。一実施態様ではカーボンが利用される。
【0072】
毛管電気泳動のためにサンプルを1つの徴群からチャンネルに輸送するように機能する連結構造では、その他のタイプのバルブシステムを利用することが望ましいかもしれない。これらのバルブシステムの例は、米国特許第6,532,997号明細書にある。
【0073】
ここでは特定のタイプのバルブが示されるが、本願明細書を読んだ当業者は、例示的なバルブまたは狭窄経路に置き換えることができる多くのその他の装置または構造体を認識するであろう。これらの代案としては、多孔性プラグ、多孔性膜、蛇行性経路、表面疎水性の違い、空気圧または圧電、または機械的に操作されるバルブが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0074】
毛管電気泳動境界面
本発明の装置はまた、毛管電気泳動による分離のために、単一毛管または毛管配列との仲立ちをして、サンプルまたはサンプル群を装置から移動させるように構成された注入ポートを含んでも良い。
【0075】
図10a、b、およびcは、装置内に一体化できる注入ポート600の例示的な立体配置を描写する。注入ポートは、分析および/またはさらに処理のために、装置から液のアリコートが除去できるように、毛管および電極がポートを覆うフィルムを穿孔して、処理済サンプル液と接触できるようにデザインされる。注入ポートは、例えば装置の区画または壁にアクセスできるように位置しても良く、それは次に区画連結構造616と接触しても良い。
【0076】
図10a、b、およびcで描写される毛管注入ポート600は、針間隙610、角度付き流入溝612、およびフィルム614を含む。針間隙610は、サンプル収集針(図11でその実施例が描写される)が、装置内に含有される処理済サンプルにアクセスできるように機能する。針間隙610はまた、あらゆる一般的に使用されるサンプル収集針が、本発明の装置で使用できるようにデザインできる。
【0077】
フィルム614は、針間隙610がアクセスされるまで、毛管注入ポート600を密封するように機能する。一実施態様では、フィルム614は前述のカバーフィルム120と同一タイプのフィルムからできている。一実施態様では、フィルム614およびカバーフィルム120は同一フィルムであり、すなわち一片の材料が装置全体を覆う。別の実施態様では、フィルム614は(代案としてはカバーフィルム120も)、サンプル針が除去されるとそれ自体が再密封できるフィルムからできている。ポート600は、角度付き流入溝612およびブリードノッチ618と共にデザインされ、毛管および電極がフィルム614を穿孔する際に、液を撹乱することなく空気がポート600から出られるようにする。
【0078】
図11は、例示的なサンプル収集針700を描写する。サンプル収集針700は、毛管702および電極704を含む。一実施態様では、毛管702は接着剤706の使用を通じて電極704内に保持される。一実施態様では接着剤706はエポキシである。毛管702は、電極704の末端を越えて伸びて、サンプル抽出および分離中に毛管内への気泡の導入を避けても良い。
【0079】
毛管702は装置のポート600内に導入する前に、分離緩衝液で予備装荷することができる。毛管および電極が処理済サンプル溶液と接触すると、動電学的注入によって、毛管内に少量の液アリコートを導入しても良い。処理済サンプル液の毛管内への注入後、サンプル収集針を装置から除去してフィルムを再密封する。フィルムの再密封特性によって、装置および残りのサンプル液がアーカイブできるようになる。このタイプの例示的な境界面立体配置および構造体についてより詳しくは、米国特許出願第10/324,283号明細書、または米国特許出願第10/339,447号明細書にある。
【0080】
一体型電極
本発明の装置はまた、一体型電極を含むことができる。一体型電極は、少なくともそれらの一部が基材に脱着式に取り付けられるものである。一実施態様では、本発明の装置は、開口部のないチャンネルと連結する一体型電極を含む。このような実施態様では、開口部のないチャンネルは、IEFのために利用することができるが、必ずしもそうである必要はない。開口部のないチャンネルをIEFのために利用する場合、一体型電極の1つの利点は、連結する区画からサンプルを移動する前に、電極および/または装置に対する使用者介入を最小にできることである。最小の使用者介入は、サンプルのIEF分離と画分の移動の間の時間遅延を最小化でき、それは次に開口部のないチャンネルのpH容器間の分析物拡散を最小化できる。取り付けられる電極の別の利点は、回転中に装置から陽極液または陰極液が排出されるのを防止することである。
【0081】
本発明の装置はまた、装置のその他の徴群と連結する一体型電極も含むことができる。このようなその他の徴群の例としては、一体型電極が、連結構造および毛管電気泳動のために使用できる溝の中の、またはそれらを通過する液のpHまたはその他の特徴を測定する役割を果たす連結構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0082】
本発明の一実施態様では、一体型電極は、スレッドによって装置の基材802に脱着式に取り付けられる。このような実施態様の横断面の例は図12aにある。一体型電極800のこの実施態様は、第1の部品804および第2の部品806を含む。第1の部品804は概して両端が開いた円筒であり、基材802と接触して配置されるように構成される。第1の部品804は、第1の部品804の外面にスレッド803を含む。
【0083】
第1の部品804は、概して約1mm〜約10mmの外径804aを有する。一実施態様では、第1の部品804の外径804aは約3〜5mmである。さらに別の実施態様では、第1の部品の外径804aは約4mmである。第1の部品804の外径804aはまた、基材802内のインセット801の直径を定める。基材802中のインセット801の下では、第1の部品804が、基材802中に支えとなる押縁を有するように空間が狭くなって良いが、必ずしもそうでなくも良い。図12a中の基材802は、導電性部分808が装置の徴群内のサンプルと連絡するように、波線の描写の下に続くこともまた理解すべきである。
【0084】
円筒形の第1の部品804の内部の内径を804bで表す。概して内径804bは約0.5mm〜約9mmである。一実施態様では、内径804bは約1mm〜約3mmである。さらに別の実施態様では、内径804bは約2mmである。第1の部品804の高さ804cは、第2の部品806の高さ806cによって少なくともある程度定まる。
【0085】
第2の部品806はキャップ809および導電性部材808を含み、概して第1の部品804の上にフィットすると述べることができる。第2の部品806は、キャップ809の内表面807にスレッドを有し、それは第2の部品806を第1の部品804の所定位置に締め付ける。第2の部品806の内径806aは、第1の部品804の外径804aによって定まる。第2の部品806の外径806bは、キャップ809の内径806aおよび厚さ809aによって少なくともある程度定まる。一実施態様では、キャップ809は、キャップ809の主要部分から外側に伸びて、一体型電極800がアセンブリされると、基材802の第1の主面799に載る伸展810を含む。このような実施態様では、外径806bは概して約3mm〜約15mmである。一実施態様では、外径は約7〜約9mmである。さらに別の実施態様では外径は約8mmである。第2の部品の高さ806cは、第1の部品804の高さによって少なくともある程度定まる。一般に第2の部品806の高さ806cは、約1mm〜約10mmである。一実施態様では、第2の部品806の高さは約5〜約7mmである。さらに別の実施態様では、第2の部品806の高さは約6mmである。
【0086】
第2の部品806はまた、導電性部材808も含む。導電性部材808は概してキャップ809の中心にあり、キャップ809のトップからキャップ809の基部方向に下に向かって伸びる。導電性部材808の材料は、それによってキャップ809の表面においてそれと電気接触ができるように、キャップ809全体に伸びる。一実施態様では、導電性部材808は、導電性部材808の残りの部分よりも幅広い直径を有するトップ811を有する。より幅広いトップ811の機能は、導電性部材808と電源(図示せず)との間の電気接触を容易にすることである。導電性部材の長さは、溶液との良好な接触を確実にするより長い導電性部材と、より頑丈であるより短い導電性部材との間の妥協であっても良い。一実施態様では、導電性部材808はキャップ809の基部に伸びる。
【0087】
一実施態様では、第2の部品809はまた、Oリング812も含む。Oリング812は、804と806の間に密封を作り出すように機能する。概してOリング812のサイズは、第1の部品804および第2の部品806の全体的サイズによって少なくともある程度定まる。一実施態様では、Oリング812は内径2mmを有し、1mm幅である。別の実施態様では、ゴム、シリコーンガスケット、または高粘度油を利用して804と806の間に密封を作り出せる。
【0088】
一実施態様では、第2の部品806はまた通気口813も含む。この通気口813は、第2の部品806を第1の部品804の定位置に締め付ける際の圧力の蓄積によってもたらされることができる、一体型電極800内のサンプルの撹乱を防止するように機能する。通気口813はまた、導電性部材808に形成するかもしれないガスを放出させるように機能する。一実施態様では、通気口の直径は1mm未満でOリングの邪魔にならないようにデザインされる。
【0089】
本発明の別の実施態様では、一体型電極は、ピンおよびスロット機序を通じて装置の基材802に脱着式に取り付けられる。このような実施態様の実施例は図12b(分離された構成要素の横断面図)、および図12c(アセンブルされた電極の横断面図)にある。一体型電極800のこの実施態様は、第1の部品804および第2の部品806を含む。第1の部品804は、概して両端が開いた円筒であり、基材102に接触して配置されるように構成される。第1の部品804は、第1の部品804の外面にスロット814と接合するピン803を含む。
【0090】
一実施態様では、第1の部品804および第2の部品806のキャップ809は、同一材料からできており、別の実施態様では第1の部品804および第2の部品806のキャップ809は異なる材料からできている。本願明細書を読んだ当業者に、第1の部品804および第2の部品806のキャップ809を製造するのに適することが知られているあらゆる材料が利用できる。このような材料の例としては、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(デュポン(Dupont)から入手できるテフロン(登録商標)(Teflon)(登録商標))、ポリシロキサン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施態様では、第1の部品804および第2の部品806のキャップ809は、ポリプロピレンからできている。第1の部品804および第2の部品のキャップ809は、当業者に知られているあらゆる適切な方法で製作できる。その例としては、例えば射出成形および微細機械加工が挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施態様では、第1の部品804およびキャップ809は、射出成形によって製作される。
【0091】
導電性材料808は、電極を製造するために適することが、当業者に知られているあらゆる材料からできていることができる。このような材料の例としては、白金、金、銅、または合金が挙げられる。一実施態様では、導電性材料808は白金からできている。導電性材料808は、当業者に知られているあらゆる適切な方法によって製作できる。このような方法の例としては、伸線、鋳造または離散したパーツの熔接が挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施態様では、導電性材料808はワイヤを電極板に熔接して製作される。導電性材料808は、キャップ809内に製作できる。またはそれはキャップ809の外側に製作して、製作後キャップ内に配置できる。どちらの場合でも導電性材料808はキャップ809内に単に配置でき、またはそれはキャップ809内に締め付けることができる。導電性材料808をキャップ809内に締め付ける場合、それをそこに接着しても良い。導電性材料808をキャップ809に接着するために使用できる接着剤の例としては、エポキシが挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施態様では、導電性材料808はエポキシでキャップ809に接着される。
【0092】
本発明の一実施態様では、一体型電極は装置の基材902に取り付けられる。このような実施態様の例は図13aにある。この一体型電極904の実施態様は、装置内に一体化された電極を含む。電極904との接触は、装置のトップ面から、または装置の側面から装置の縁にある、接触点915で達成できる。電極904の一端は、電極ウェル912内の液と接触するように構成される。
【0093】
電極ウェル912は、ウェル912が液で充填された後に、多孔性材料916で覆うことができる。多孔性材料916は、接着剤921によって装置に取り付けられる。多孔性材料916は、水の電解によってウェル912内に形成される電解ガスを逃す役割をする。多孔性材料916はまた、回転中に装置から液が放出されるのを防止する。概して多孔性材料916は疎水性である。このような材料の例としては、膜、不織布、およびセラミックが挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施態様では、多孔性材料916は熱誘導相分離(TIPS)プロセスによって製造されたポリプロピレンからできている。
【0094】
本発明の一実施態様では、一体型電極904は、装置のカバーフィルム920上に取り付けられる。このような実施態様の例は図13bにある。電極904との接触は、装置トップ面にある接触点915で達成できる。電極904の一端は、電極ウェル912内の溶液と接触するように構成される。
【0095】
一体型電極の別の実施態様は図13cにある。この実施態様は、接触が装置の底を通じてできるようにし、電極904は、カバーフィルム920内の貫通孔を電極材料で封入して形成される。次にこれは、装置プラットフォームから装置への電気的連続性の手段を提供する。
【0096】
電極904は概して、例えば、白金、金、銅または合金などの導電材料の薄いフィルムからできている。一実施態様では、電極904は金である。導電性トレースは、蒸着、真空蒸着、金属スパッタリング、導電材料(インク)印捺、または本願明細書を読んだ当業者に知られているあらゆるその他の方法によって形成できる。一実施態様では、電極は蒸着によって製造される。
【0097】
本発明の一実施態様では、電極は、その上で装置が使用できる回転プラットフォーム内に一体化される。このような実施態様の例は図14にある。電極934との接触は、その上で装置が回転できるプラットフォーム930を通じて達成できる。一実施態様では、プラットフォーム930は、回転するシステムへの電流を維持する水銀分岐点を有する。接触はまた、プラットフォーム下面を通じても得られる。装置の底を通じて接触が得られる電極立体配置では、電極934の上端935が電極ウェル912内の液と接触するように構成される。
【0098】
電極934は、白金、金、銅または合金などの細いワイヤであることができる。一実施態様では、電極934は白金である。電極934はまた、装置に接着するカバーフィルム920を穿孔してもよいピンであることができる。装置がプラットフォーム930から除去されると、カバーフィルム120は再密封され、液がディスクから出るのを防止する。
【0099】
本発明の装置のための制御システム
本発明の装置は、装置およびその中に装置が存在する条件を制御するシステムに関連して使用できる。このようなシステムとしては、装置の回転を制御するためのパーソナルコンピューター(pc)制御の基部、装置全体またはそれらの選択される一部を冷却する冷却システム、装置全体またはそれらの選択される一部を加熱する加熱システム、バルブを開口するためのレーザーシステム、および電極接触/連結システムが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0100】
装置を制御するのに使用できるシステムの一例は、装置の回転を制御するためのpc制御の基部である。一実施態様では、pcが使用されて、外部ドライバーおよびモーター上の光学エンコーダーを通じて、ブラシレス電気モーターの回転を制御する。ディスクのインターフェイスとなるプラットフォームは、モーターの駆動軸に連結する。モーターの位置、速度、加速度、および作動時間、そしてひいてはディスクがpcによって制御される。
【0101】
装置全体またはそれらの選択される一部を冷却する冷却システムの一例としては、pc制御基部に関連して、高熱伝導材料からできている環が挙げられる。このような材料の例としては、アルミニウム、銅、および金が挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施態様では、例えばアルミニウム環が装置全体を下張りするために構成でき、別の実施態様では、アルミニウム環が装置の一部のみを下張りするために構成できる。開口部のないチャンネルがIEFのために利用される本発明の実施態様では、アルミニウム環が、概して少なくとも開口部のないチャンネルを下張りするように構成される。このような立体配置は、ジュール加熱の効果を低下させる役割をする。アルミニウム環は、それ自体が冷却されて次に装置からの熱を吸収することで、それが接触する装置の一部を冷却する。アルミニウム環を冷却する一方法としては、環上に冷却空気を吹き付けることが挙げられる。冷却はまた、空気以外のガスおよびペルチェ冷却システムを使用して実施されても良い。
【0102】
装置全体またはそれらの選択される一部を加熱する加熱システムの一例としては、国際公開第02/00347号パンフレットにあるものが挙げられる。
【0103】
本発明の一実施態様では、電極接触/連結システムを制御するために、機械的システムもまた使用できる。電極連結システムは、装置のトップ表面または底表面のどちらかで、装置に電位を提供する。トップ表面とのインターフェースを形成する電源電極は、装置のトップ表面に一体型電極と接触するように機械的に下げることができる。実験完了時には、電極を機械的に上げることができる。電源電極は、回転プラットフォームを通じて装置とインターフェースを形成できる。電源は、プラットフォームとモーター間の水銀分岐点を通じて、プラットフォームに供給される。プラットフォーム、装置と直接接触する電極を特徴とする。一体型電極立体配置の実施例については、既に述べた。
【0104】
本発明の装置の使用方法
本発明の装置を使用した特定の方法は、装置がそのために構成される特定用途によって、少なくともある程度定まる。
【0105】
装置がタンパク質サンプルのIEFのために構成される実施態様では、本発明の装置を使用した1つの例示的な方法は、次の通りである。タンパク質サンプルが、開口部のないチャンネルの第1のサンプルウェル内に装填される。次にサンプルをそれがその他のウェルに到達するまで、IEFチャンネル内に流し込みまたは押し込む。次に陽極液をウェルの1つに添加し、その他のウェルに陰極液を添加する。サンプルおよび液を装荷した後、電極をサンプルウェル内の液に接触させる(陽極を陽極液に、陰極を陰極液に)。代案としては、装置をプラットフォーム載せて、既述のようにサンプルを装荷できる。陽極液は陽極ウェル内に装填され、陰極液は陰極ウェル内に装填される。次にウェルを多孔性膜で覆い、接着剤で定位置に保つ。次に電源を電極に接続し、電圧を印加する。電圧は、電流が低下して定常値に達するまで印加される。次に装置を回転させて、タンパク質画分を複数の区画連結構造を通じて、開口部のないチャンネルの連結区画から複数のチャンバに移動させる。次にチャンバ内のタンパク質画分は、タンパク質画分に応用できることが当業者に知られているあらゆる技術によって、さらに分析できる。
【0106】
一体型電極を含む装置の実施態様では、電極を液と接触するステップは、一体型電極の第2の部品を一体型電極の第1の部品に締結して、導電性材料がサンプルウェル内で液と接触するのを確実にするステップを含む。
【0107】
タンパク質サンプルのIEFおよび引き続く処理のために装置が構成される実施態様では、例示的な方法はIEF法のための上のステップと、下で述べるものとを含む。タンパク質画分がチャンバ内に入ると、引き続く処理を実施できる。引き続く処理がタンパク質の変性である場合、試薬で予備充填できる複数のチャンバが加熱される。次に変性タンパク質を装置から取り出して、さらに分析を実施できる。
【0108】
別の実施態様では、タンパク質を変性させるのと同時に標識して、引き続く検出を容易にできる。このような実施態様では、チャンバに含有される試薬が標識試薬ならびに変性試薬を含むこと以外は、ステップは上述したのと同一である。
【0109】
さらに別の実施態様では、タンパク質変性および標識に引き続く、毛管電気泳動などの分析もまた、本発明の装置上で実施できる。タンパク質が変性され標識された後、複数のチャンバ連結構造中のバルブを開ける。次に装置を回転させて、変性され標識されたタンパク質を毛管電気泳動チャンネルに移動させる。次に電極を毛管電気泳動チャンネルおよび電源に接続する。次にレーザー誘導蛍光を使用して、分離されたタンパク質を検出できる。
【0110】
さらに実施態様では、毛管電気泳動で分離されたタンパク質を質量分光法によってさらに分析できる。
【0111】
別の実施態様では、開口部のないチャンネル内でIEFによって分離されたサンプルをチャンバまたは容器内でトリプシン処理できる。代案としては、消化されたサンプルを脱塩することもできる。本願明細書を読んだ当業者は、これらのステップを実施するのに必要なステップ、反応条件、および試薬が分かるだろう。
【0112】
別の実施態様では、サンプルをあらゆる時点で装置から除去し、移動させて、例えば毛管電気泳動(装置外)、液体クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、および質量分光法などのその他の分析が実施できる。本発明の装置は、サンプルの自動化された移動のために構成されても良いが、必ずしもそうでなくても良い。
【0113】
本発明の一実施態様は、本発明の装置の第1のサンプルウェル内にタンパク質を含有するサンプルを装填するステップと、サンプルが第2のサンプルウェルに達するまで開口部のないチャンネルに流し込みまたは押し込むステップと、陽極液を第1のサンプルウェルに添加するステップと、陰極液を第2のサンプルウェルに添加するステップと、装置の一体型電極をサンプルウェル内の液と接触させるステップと、電極に電圧を印加するステップとを含む、タンパク質サンプルの等電点電気泳動を実施する方法を含む。代案としては、電極に電圧を印加する前または後に、第1および第2のサンプルウェルを多孔性膜で覆うことができる。
【0114】
本発明の別の実施態様は、本発明の装置の第1のサンプルウェル内にタンパク質を含有するサンプルを装填するステップと、サンプルが第2のサンプルウェルに達するまで開口部のないチャンネルに流し込みまたは押し込むステップと、陽極液を第1のサンプルウェルに添加するステップと、陰極液を第2のサンプルウェルに添加するステップと、装置の一体型電極をサンプルウェル内の液と接触させるステップと、電極に電圧を印加するステップと、(電極に電圧を印加する前または後に)第1および第2のサンプルウェルを多孔性膜で覆うステップと、装置を回転させてタンパク質画分を開口部のないチャンネルの連結する区画からチャンバに移動させるステップを含む、タンパク質サンプルの等電点電気泳動を実施する方法を含む。装置は上述の速度および時間で回転できる。
【0115】
本発明の別の実施態様は、本発明の装置の第1のサンプルウェル内にタンパク質を含有するサンプルを装填するステップと、サンプルが第2のサンプルウェルに達するまで開口部のないチャンネルに流し込みまたは押し込むステップと、陽極液を第1のサンプルウェルに添加するステップと、陰極液を第2のサンプルウェルに添加するステップと、装置の一体型電極をサンプルウェル内の液と接触させるステップと、電極に電圧を印加するステップと、(電極に電圧を印加する前または後に)第1および第2のサンプルウェルを多孔性膜で覆うステップと、装置を回転させてタンパク質画分を開口部のないチャンネルの連結する区画からチャンバに移動させるステップと、タンパク質を変性できる試薬で予備充填されたチャンバを加熱してタンパク質を変性させるステップを含む、サンプルに等電点電気泳動を実施して、引き続いて画分されたサンプルを処理する方法を含む。さらなる実施態様は、その中でそれらが変性されるのと同一または異なるチャンバ内で、タンパク質を標識することを含む。代案としては、第1のチャンバまたは引き続くチャンバ内で、タンパク質にトリプシン処理を施せる。トリプシン処理を施されたタンパク質サンプルは、引き続いて脱塩することもできる。
【0116】
別の実施態様は、本発明の装置の第1のサンプルウェル内にタンパク質を含有するサンプルを装填するステップと、サンプルが第2のサンプルウェルに達するまで開口部のないチャンネルに流し込みまたは押し込むステップと、陽極液を第1のサンプルウェルに添加するステップと、陰極液を第2のサンプルウェルに添加するステップと、装置の一体型電極をサンプルウェル内の液と接触させるステップと、電極に電圧を印加するステップと、(電極に電圧を印加する前または後に)第1および第2のサンプルウェルを多孔性膜で覆うステップと、装置を回転させてタンパク質画分を開口部のないチャンネルの連結する区画からチャンバに移動させるステップと、チャンバ内のタンパク質画分を反応させてそれらを変性させ標識するステップと、装置内のチャンバ連結構造中のバルブを開けるステップと、装置を回転させて変性され標識されたタンパク質を毛管電気泳動チャンネルに移動させるステップと、電極を毛管電気泳動チャンネル電極および電源に接続するステップを含む、タンパク質を含有するサンプルを等電点電気泳動、処理、および毛管電気泳動を実施する方法を含む。毛管電気泳動によって分離された変性され標識されたタンパク質画分は、レーザー誘導蛍光または質量分光法をはじめとするいくつかの技術を使用して検出できる。
【0117】
上のあらゆる方法、または本発明の装置を使用して想定されるその他の方法は、本願明細書を読んだ当業者の知識によって修正でき、例えばサンプルを処理中のあらゆる時点で除去して、例えば毛管電気泳動(装置外)、液体クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、および質量分光法などのその他の装置外分析を実施できる。本願明細書を読んだ当業者は、装置に関して上で考察した装置の徴群の事実上あらゆる組み合わせが、本発明の方法で利用できることもまた理解するであろう。本願明細書を読んだ当業者は、いくつかの試薬または溶液が、最終使用者が装置を得る前に本発明の装置内に装填できることもまた理解し、当業者はこれにより方法のステップがそれに応じて修正されることを理解するであろう。
【実施例】
【0118】
全ての化学薬品はウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ(Aldrich(Milwaukee,WI))から得られ、特に断りのない限りさらに精製せずに使用した。
【0119】
実施例1:一体型電極を含む本発明の装置および市販のシステムによるIEF分離の比較
IEFを実施するように構成される本発明に従った装置を製作し、標準システムと比較した。
【0120】
基材をポリプロピレンから製作し、感圧接着剤によってオレフィンからできているカバーフィルムで第1の主面に密封した。装置の立体配置は、図15に示される。図15では、311は中心軸の周囲を回転するハブを表し、310はIEFのために構成される開口部のないチャンネルを表し、312は第1のサンプルウェルを表し、314は第2のサンプルウェルを表し、340は複数の区画連結構造の1つを表し、344は複数のチャンバの1つを表す。
【0121】
IEFのための開口部のないチャンネルは、円弧の長さがおよそ100mmであり、20の連結する区画を有する。連結する区画内の前縁および後縁の角度は約10°である。連結する区画の容積はおよそ5μlであった。連結する区画の前縁および後縁の角度は、開口部のないチャンネル中の流体慣性を最小化すると考えられる。
【0122】
装置を回転させるように構成される基部上に置いて、PCによって制御した。冷却性能を基部に追加して、ジュール加熱に伴う温度効果を低下させた。空気ラインを通じて温度制御された空気を導入し、装置の下面、アルミニウム環に方向付けた。アルミニウム環が開口部のないチャンネルの直下に配置されるように、装置および基部を構成した。
【0123】
装置はまた、一体型電極も含んだ。第1の部品はサンプルウェルの1つにはめ込まれて圧力フィットされ、流体貯蔵所の役目を果たした。第1の部品は、部品外にスレッドを有し、そこに第2の部品が所定位置に締結された。第2の部品は、部品の中心に導電性材料としてPtを含み、サンプル貯蔵所を覆った。Ptはキャップを通って導電タッチパッドに伸びた。タッチパッドおよびPtを通じて、電源から液に電気的に接触した。キャップはまた通気口も有して、キャップを定位置に締結した時に圧力の蓄積によってもたらされるウェル内の流体の撹乱を防止した。
【0124】
カリフォルニア州ハーキュリーズのバイオラッド(Bio−Rad(Hercules,CA)からの2.5%バイオラッド(BioRad)3−10アムフォライト(Ampholyte)(pH3〜10)(カタログ番号163−1113)、スイス国ローゼンのアレクシス・コーポレーション(Alexis Corporation(Lausen,Switzerland))からの20mMオクチルグルコピラノシド(OGP)、6.0M尿素溶液、および脱イオンH2Oに、4つのタンパク質サンプルチトクロームC、ミオグロビン、ヒト血清アルブミン(HSA)、およびミズーリ州セントルイスのシグマ(Sigma(St.Louis,MO))からのフィコシアニンを可溶化して、各タンパク質について最終濃度4mg/mlの溶液を得た。陽極液は0.3M H3PO4であり、陰極液は0.3M NaOHであった。
【0125】
両性電解質分子は、異なるpKa値の側鎖があるアクリルアミドオリゴマーであり、溶液中で陽極液と陰極液間にpH勾配を形成した。開口部のないチャンネルをタンパク質−両性電解質サンプル溶液で注意深く充填し、気泡が確実に形成しないようにした。第1の(陽極)サンプルウェルを低pH陽極液で充填し第2の(陰極)サンプルウェルを高pH陰極液で充填した。
【0126】
次に一体型電極をサンプルウェル内に締結し、Ptと液との間の接触を確実にした。次に高電圧電源からの電極をPt電極タッチパッドに接触させて配置した。電圧を印加して、ジュール加熱から生じる電流および温度をモニターした。使用した電界強度は200V/cmであった。タンパク質サンプルの集束中に、液中の荷電した部分の減少のために電流は低下した。タンパク質のIEF完了時に、電流が定常状態値に達するのを観測した。IEF装置が概して定常状態に達するのにかかる時間は、各タンパク質の電気泳動可動性に左右され、それは次に温度、液粘度、および電界強度に左右される。この例では、電界を液におよそ45分間印加した。
【0127】
タンパク質のIEF後、プラットフォーム上の装置を約100rad.s-2の加速度で約10秒間5000rpmで回転させた。遠心力は、チャンネル内の液に対する均一の圧力を確実にし、したがって同一半径のIEF容器からの均一の流体移動を確実にした。開口部のないチャンネルの区画によって画定される隣接するpH容器間の拡散は、開口部のないチャンネルの鋸歯状デザインによって最小化された。
【0128】
カリフォルニア州パロアルトのアジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies(PaloAlto,CA))からのアジレント2100バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)を使用して、pH容器からのタンパク質サンプルで分子重量分離を実施した。装置の遠心分離後に、20のタンパク質画分を収集して、標準プロトコルに従ったアジレント・バイオアナライザー(Agilent Bioanalyzer)による分析のために調製した。20の画分をカリフォルニア州パロアルトのアジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies(PaloAlto,CA))からの2つのバイオアナライザー・ラブチップ(Bioanalyzer Labchips)上の対応するサンプルウェルに入れ、次にそれを個々に装荷して分析ユニットにかけた。各タンパク質画分について電気泳動図を採取した。図16aおよびbは、アジレント・バイオアナライザー(Agilent Bioanalyzer)ソフトウェアを使用して、電気泳動図の転換によって生じた画像を示す。第1のレーンは装置を較正するのに使用した標準タンパク質ラダーを表し、続くレーンはpHが増大する20のタンパク質画分を表す。下の表1に示す理論的なタンパク質pIおよびMWを使用して、4つのタンパク質標準のバーチャル二次元ゲル画像中にタンパク質を割り当てた。
【0129】
【表1】

【0130】
比較目的で、20の容器のタンパク質組成物をカリフォルニア州ハーキュリーズのバイオラッド(Bio−Rad(Hercules,CA)からのバイオラッド(BioRad)ロトフォー(Rotofor)(登録商標)システムからの出力と直接比較した。バイオラッド(BioRad)ロトフォー(Rotofor)(登録商標)は、複合タンパク質混合物の大規模IEFを実施するのに使用される市販の装置である。これらの実験で、タンパク質サンプル、陽極液、および陰極液は、前述のように調製された。
【0131】
380μLのバイオラッド(BioRad)両性電解質3−10(2.0%)、およびドイツ国ハイデルベルグのセルバ(Serva(Heidelberg,Germany))からの95μLのセルバ(Serva)両性電解質9−11(0.5%)と共に、それぞれ0.4mg(100μL)のフィコシアニン、HAS、ミオグロビン、およびチトクロームCを装荷した。0.1%OGPを含有する8.0M尿素で、液を19mLにした。電解質は0.3MのNaOHおよびH3PO4であった。ロトフォー(Rotofor)を4時間稼働させ、約3時間後、電圧が3000Vで平坦域レベルに達した。画分を採取し、pHおよび容積を直ちに測定した。SDS−PAGE分析のために、各画分から等量の液を採取した。
【0132】
図17aおよびbのゲル画像は、ロトフォー(Rotofor)泳動からの20の画分を表し、20の画分のそれぞれから一定量のサンプルを採取して、SDS−PAGEゲル上で泳動し、次にカリフォルニア州ハーキュリーズのバイオラッド(Bio−Rad(Hercules,CA)からのクマシー・ブルーで染色した。ここで示すように、フィコシアニンはゲル上で分離すると3つのバンドに分かれ、一方ミオグロビンは2つのバンドに分かれることが知られている。HSAの複雑な性質のために、「太い」バンドが形成する以外に、通常、その直下に別のバンドがある。ゲル画像はこれらの4つのタンパク質が、それらの等電点に従って分離されることを示唆した。20の画分の詳細は、下の表2にある。
【0133】
【表2】

【0134】
タンパク質分離システムとバイオラッド(BioRad)ロトフォー(Rotofor)(登録商標)タンパク質組成物との比較を下の表3に示す。ここで示されるように、分離は比較できる。全体的に双方のシステムは、ゲル画像およびタンパク質位置の比較で、4つのタンパク質サンプルの類似の分離を生じる。
【0135】
【表3】

【0136】
実施例2:タンパク質変性および装置外毛管電気泳動のための本発明の装置の使用
本発明に従って、等電点電気泳動、引き続くタンパク質変性を実施し、毛管電気泳動とのインターフェースになるように構成される装置を製作して、装置中でタンパク質を変性する実現可能性を調べた。
【0137】
基材をポリプロピレンから製作し、感圧接着剤によって、ポリオレフィンからできているカバーフィルムで第1の主面に密封した。装置の立体配置は図18にある。図18では、411は中心軸の周囲の回転のハブを表し、410は等電点電気泳動のために構成される開口部のないチャンネルを表し、412は第1のサンプルウェルを表し、414は第2のサンプルウェルを表し、440は複数の区画連結構造の1つを表し、444は複数の変性チャンバの1つを表し、446は複数の変性チャンバ連結構造の1つを表し、448は複数の収集チャンバの1つを表す。
【0138】
変性チャンバは、区画連結構造から変性チャンバへの、そして変性チャンバから変性チャンバ連結構造への流体の流れを制御するためのバルブを含んだ。これらのバルブは、装置にレーザーエネルギーを衝突させて操作される。レーザーエネルギーは、カーボン装荷されたカバーフィルムおよび装置の基材によって吸収され、流体が、それを収容する容積から次の連結する容積に通過できるようにする。
【0139】
装置は、米国特許第6,532,997号明細書で開示された方法によって、加熱のために構成された。
【0140】
20mMのオクチルグリコピラノシド溶液に、3つのタンパク質サンプル(チトクロームc、β−ラクトグロブリン、アミログルコシダーゼ)を可溶化させ、各タンパク質について2mg/mLの最終濃度を得た。オクチルグリコピラノシドは、タンパク質の天然の荷電を保ちながら、タンパク質溶解を助ける非変性界面活性剤である。
【0141】
アジレント2100バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)からのサンプル調製緩衝液を変性液として使用した。緩衝液は、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、およびジチオトレイトールを含有した。液はまた、サンプル電気泳動図の整列および分析のために使用される下限および上限マーカーも含有した。
【0142】
3つのタンパク質サンプルを変性化学反応と組み合わせ、3つの異なる条件に曝した。第1のサンプルを遠心分離管中で室温に5分間保ち、第2のサンプルを遠心分離管内で95℃に5分間加熱し(標準プロトコル)、第3のサンプルを上述の装置の変性チャンバ内で95℃に加熱した。
【0143】
サンプルを収集し、アジレント2100バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)を使用して分析し、変性タンパク質の量を測定した。タンパク質変性の程度は、タンパク質ピークからの蛍光強度によって判定した。完全に変性したタンパク質サンプルが鋭く強いピークを与えるのに対し、変性不良サンプルは比較的小さな幅広いピークをもたらす。サンプル分析からの結果を図19a、b、およびcに示す。
【0144】
図19中の各ゲルは、標準タンパク質ラダー(レーン1、4、7、10)、変性液(レーン2、5、8、11)、および3つのタンパク質液(レーン3、6、9)を含む。図19aは室温に5分間保ったサンプルのゲルであり、図19bは95℃に5分間保ったサンプルのゲルであり、図19cは上述の装置上で95℃に5分間保ったサンプルのゲルである。
【0145】
図19a、b、およびcの画像で示されるように、本発明の装置および加熱技術を使用してタンパク質サンプルを変性させることが可能である。標準プロトコル、そして本発明の装置使用でのアミログルコシダーゼピークの相対強度は同等であり、室温条件からのピークよりも顕著に大きい。
【0146】
図20は、装置からのそして標準プロトコルからの変性アミログルコシダーゼの相対濃度を示す。装置から回収されたタンパク質の量は、標準プロトコルと同等である。この実験は、毛管電気泳動によって、サイズ分離のためにタンパク質サンプルを調製する装置の実行可能性を実証する。
【0147】
上と同一条件を使用して、完全なタンパク質変性に必要とされる時間を判定した。4つの別々のタンパク質サンプルを装置の変性チャンバ内に装填し、95℃で1、3、5、および10分間加熱した。4つのサンプルの電気泳動図(蛍光-対−移行)は図21にある。ここで示されるように、タンパク質は5分間後に完全に変性され、サンプルをさらに長時間加熱しても、変性タンパク質の量は増大しなかった。
【0148】
実施例3:IEF分離および装置外毛管電気泳動およびMS分析のための本発明の装置の使用
本発明に従って、IEFを実施し、毛管電気泳動とのインターフェースになるように構成される装置を製作した。
【0149】
基材をポリプロピレンから製作し、感圧接着剤によって、ポリオレフィンからできているカバーフィルムで第1の主面に密封した。
【0150】
装置を上の実施例1で述べられるように回転速度のpc制御のため、そして冷却の制御のために構成される基部に載せた。
【0151】
3%のバイオラッド(Bio−Rad)アムフォライト(Ampholyte)(カタログ番号163−1113)および20mMのオクチルグルコ−ピラノシド溶液中に、5−タンパク質サンプル(チトクロームC、ミオグロビン、ユビキチン、ヒト血清アルブミン、およびフィコシアニン)を可溶化した(各タンパク質について最終濃度4mg/mlの溶液を得た)。50μLの12%バイオライト(Biolyte)3−10両性電解質、および2ポリエチレンオキシド(PEO、2重量%)を150μLのタンパク質原液に添加して、最終タンパク質試験液を得た。PEOは微小溝表面との結びつきによってタンパク質の非特異的結合を最小化し、電気浸透の流れを制御するためにも使用した。後者の結果、電極における電解によって生じる気泡のIEFチャンネル内への取り込みが最小化された。陽極液および陰極液は、それぞれ0.02M H3PO4および0.04M NaOHであった。
【0152】
タンパク質サンプルのIEFを装置の最も内側の円形鋸歯溝内で予備形成した。両性電解質分子は、異なるpKa値の側鎖があるアクリルアミドオリゴマーであり、それは液中において陽極液と陰極液の間でpH勾配を形成する。チャンネルをタンパク質−両性電解質サンプル溶液で注意深く充填して、確実に気泡が形成しないようにした。陽極サンプルウェル(第1のサンプルウェル)を高pH陰極液で充填した。次にサンプルウェル内にPt電極を入れ、液と確実に接触させた。
【0153】
次に電圧を印加して、ジュール加熱から生じる電流および温度をモニターした。温度および電流トレースは図19にある。使用した電界強度は約100V/cmであった。タンパク質サンプルの等電点電気泳動中に、電荷がある液中の荷電した化学種の減少のために電流は低下した。タンパク質のIEF完了時に、電流が定常状態値に達するのを観測した。IEF実験が定常状態に達するのにかかる時間は、各タンパク質の電気泳動可動性に左右され、それは次に溶液粘度および電界強度に左右される。この実施例では電界は溶液に30分間印加される。
【0154】
タンパク質が等電的に集束した後、個々の容器内のタンパク質サンプルは、遠心輸送によって収集チャンバに輸送された。分離装置をディスクの位置と回転速度を制御する基部に載せた。装置を100rad.s-2の加速度で10秒間5000rpmで回転させて、サンプルをIEFチャンネル容器から収集チャンバに輸送した。遠心力は均一の圧力ヘッドを確実にし、したがって同一半径のIEF容器からの均一の流体移動を確実にした。隣接するpH容器間の拡散は、開口部のないチャンネルの鋸歯状デザインによって最小化された。
【0155】
アジレント2100バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)を使用して、タンパク質サンプルの分子重量分離を実施した。遠心分離後、ディスク、10のタンパク質画分を収集し、アジレント(Agilent)が提供する標準プロトコルに従って分析のために調製した。10の画分をバイオアナライザー・ラブチップ(Bioanalyzer Labchips)上の対応するサンプルウェルに入れ、次にそれを分析ユニットに装填した。
【0156】
各タンパク質画分について電気泳動図を採取し、図22に二次元バーチャルゲルとして示す。第1のレーンは引き続く電気泳動図を較正するのに使用した標準タンパク質ラダーを表し、続くレーンはpHが増大するタンパク質画分を表す。タンパク質を割り当てるのに使用した理論的なタンパク質pIおよびMWを下の表4に示す。
【0157】
【表4】

【0158】
分離されたタンパク質画分をマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)質量分析法にかけた。スペクトルは図23a〜dにある。図23aは、F1(画分1)中のフィコシアニンおよびHSAのピークを示し、23bはF4中のユビキチンを示し、23cはF6中のミオグロビンを示し、23dはF10中のチトクロームCを示す。これらのタンパク質のアイデンティティをさらに特定するために、トリプシンによるタンパク質分解を実施した。図24は図23中のIEF画分のMALDIペプチドフィンガープリント(m/z700−4,000)を示す。タンパク質データベース(Protein Prospector,UCSFMassSpec Facility,http://prospector.ucsf.edu)の検索結果から、F1がHAS、F6ミオグロビン、およびF10チトクロームを含有したことを確認した。しかし検索結果は、F1消化物中のフィコシアニンペプチドを検出せず、一方F4からの結果はユビキチンに対する確実なマッチを提供しなかった。
【0159】
実施例4:本発明に従った装置およびそのIEF、変性、標識および装置外毛管電気泳動のための使用
基材はポリプロピレンから製作され、感圧接着剤によってポリオレフィンからできているカバーフィルムで、第1の主面および第2の主面の双方に密封されるであろう。アルミニウム環は変性容器の下で装置上に載せられるであろう。ポリプロピレンはカーボン装荷されて、バルブシステムとして機能するであろう。装置は微細機械加工によって製作されるであろう。
【0160】
IEFのための開口部のないチャンネルは、円弧の長さがおよそ100mmであり、95の連結する区画を有するであろう。区画を連結する前縁および後縁の角度は、約60°であろう。連結する区画の容積はおよそ0.75μlであろう。追加的区画が使用され、ディスク上の毛管電気泳動によって分離されることができるタンパク質ラダーを保管する。タンパク質ラダー液は変性化学反応を含有できる。
【0161】
およそ3%のバイオラッド(Bio−Rad)アムフォライト(Ampholyte)(カタログ番号163−1113)添加10〜50%グリセロール/H2O溶液中に、タンパク質サンプルが可溶化されるであろう。最終タンパク質濃度は約5mg/mlのはずである。陽極液はpH2のH3PO4溶液、陰極液pH11のNaOHであった。
【0162】
開口部のないチャンネルは、100μlのタンパク質−両性電解液によって充填されるであろう。チャンネルは気泡形成を最小化する様式で充填される。第1のサンプルウェルは低pH陽極液で充填され、第2のサンプルウェルは高pH陰極液で充填されるであろう。
【0163】
次に白金電極が第1および第2のサンプルウェルに入れられ、液との接触を確実にするであろう。約100V/cmの電圧が印加されるであろう。ジュール加熱から生じる電流および温度が初めから終わりまでモニターされるであろう。タンパク質サンプルの集束中に電流は低下し、定常状態値に達するのが観測され、それによって集束が完了したことが示唆されるであろう。
【0164】
装置は、装置の回転の位置と速度を制御する回転するプラットフォームに載せられるであろう。装置は約100rad.s-2の加速度で約10秒間5000rpmで回転させられるであろう。次にレーザーによって、区画連結構造内のバルブが開放されるであろう。次に連結する区画内の集束したタンパク質サンプルは、遠心力でチャンバ内に入れられるであろう。
【0165】
この装置内のチャンバは、タンパク質の変性のための試薬で予備装荷されるであろう。チャンバは、タンパク質内硫黄結合を分解するためのβ−メルカプトエタノールまたはジチオトレイトール、タンパク質を変性させ可溶化するための水性SDS溶液、およびタンパク質を誘導体化するまたはSDSミセルと会合するオレゴン州ユージーンのモレキュラ・プローブズ(Molecular Probes(Eugene,OR))から得られる蛍光染料(ナノオレンジ(NanoOrange);Abs/Em:470/570nm)を含む。チャンバにはまた、得られた電気泳動図を調整して、直接的サンプル比較ができるようにするために使用できる、下限および上限マーカータンパク質も含まれるであろう。
【0166】
区画連結構造内のバルブが開くと、液は国際公開第02/100347号パンフレットで述べられる光環技術を使用して95℃におよそ5分間加熱され、タンパク質サンプルの完全な変性が確実にされるであろう。チャンバ内のサンプル容積は、加熱中に容積が減少してタンパク質濃度を増大させ、それによって低濃度タンパク質の検出が向上するであろう。チャンバ244はまた、液pHを測定するための電極も含む。
【0167】
次にチャンバ連結構造内のバルブをIRレーザーで開ける。装置は約100rad.s-2の加速度で約10秒間5000rpmで回転されて、チャンバと毛管電気泳動チャンネルの間の流体の相互連絡が確実にされるであろう。
【0168】
電気泳動毛管は、ポリ(エチレンオキシド)−プルロニック(Pluronic)F−127緩衝液で予備充填されるであろう。ポリ(エチレンオキシド)は分離マトリックスおよび表面コーティングとして作用し、タンパク質の毛管壁への非特定結合および電気浸透流を低下させる。プルロニック(Pluronic)界面活性剤は、表面親水性を向上させ、ポリ(エチレンオキシド)をその上に動的に被覆するのに魅力的な表面を提供する。ランニング緩衝液は、pH8.6のトリスHCl−SDSである。
【0169】
次に毛管電気泳動毛管配列は、装置とのインターフェースを形成するであろう。
【0170】
サンプルは動電学的注入によって毛管内に装填され、非常に薄いサンプルプラグを送達するであろう。装置を回転させて、LIF励起−検出システムで々の毛管溝を整列させることで、レーザー誘導蛍光(LIF)が検出機序として使用されるであろう。
【0171】
実施例5:本発明に従った装置およびそのIEF変性、標識、および装置上での毛管電気泳動のための使用
IEF、サンプル調製、および毛管電気泳動を実施するように構成される本発明に従った装置が製作されるであろう。
【0172】
基材はポリプロピレンから製作され、感圧接着剤によってポリオレフィンからできているカバーフィルムで、第1の主面および第2の主面の双方に密封されであろう。アルミニウム環が変性容器の下で装置に載せられるであろう。ポリプロピレンはカーボン装荷され、バルブシステムとして機能するであろう。装置は細機械加工によって製作されるであろう。装置の立体配置は図25にある。図25では、211は中心軸周囲の回転のハブを表し、210は等電点電気泳動のために構成される開口部のない溝を表し、212は第1のサンプルウェルを表し、214は第2のサンプルウェルを表し、240は242が特定の区画連結構造内のバルブシステムを表す複数の区画連結構造の1つを表し、244は電極を含む複数のチャンバの1つを表し、246は248が特定のチャンバ連結構造内のバルブシステムを表す複数のチャンバ連結構造の1つを表し、250は電極を表し、254は電気泳動溝を表し、252および256は特定の電気泳動溝と結びついた電極を表す。
【0173】
IEFのための開口部のない溝は、円弧長さがおよそ100mmであり、95の連結する区画を有するであろう。連結する区画の前縁および後縁の角度は、約60°であろう。連結する区画の容積は、およそ0.75μlであろう。追加的区画が使用され、ディスク上での毛管電気泳動によって分離できるタンパク質ラダーが保管されるであろう。タンパク質ラダー溶液は変性化学反応を含むことができる。
【0174】
およそ3%のバイオラッド(Bio−Rad)アムフォライト(Ampholyte)(カタログ番号163−1113)添加10〜50%グリセロール/H2O溶液中に、タンパク質サンプルが可溶化されるであろう。最終タンパク質濃度は約5mg/mlのはずである。陽極液はpH2のH3PO4溶液、陰極液はpH11のNaOHであった。
【0175】
開口部のないチャンネルは、100μlのタンパク質−両性電解液によって充填されるであろう。チャンネルは気泡形成を最小化する様式で充填される。第1のサンプルウェルは低pH陽極液で充填され、第2のサンプルウェルは高pH陰極液で充填されるであろう。
【0176】
次に白金電極が第1および第2のサンプルウェルに入れられ、液との接触を確実にするであろう。約100V/cmの電圧が印加されるであろう。ジュール加熱から生じる電流および温度が初めから終わりまでモニターされるであろう。タンパク質サンプルの集束中に電流は低下し、定常状態値に達するのが観測され、それによって集束が完了したことが示唆されるであろう。
【0177】
装置は、装置の回転の位置と速度を制御する回転するプラットフォームに載せられるであろう。装置は100rad.s-2の加速度で10秒間5000rpmで回転されるであろう。次にレーザーによって、区画連結構造内のバルブが開放されるであろう。次に連結する区画内の集束したタンパク質サンプルは、遠心力でチャンバ内に入れられるであろう。
【0178】
この装置内のチャンバは、タンパク質の変性のための試薬で予備装荷されるであろう。チャンバは、タンパク質内硫黄結合を分解するためのβ−メルカプトエタノールまたはジチオトレイトール、タンパク質を変性させ可溶化するための水性SDS溶液、およびタンパク質を誘導体化するまたはSDSミセルと会合する蛍光染料(ナノオレンジ(NanoOrange)、オレゴン州ユージーンのモレキュラープローブ(Molecular Probes,Eugene,OR);Abs/Em:470/570nm)を含む。チャンバにはまた、得られた電気泳動図を調整して、直接的サンプル比較ができるようにするために使用できる、下限および上限マーカータンパク質も含まれるであろう。
【0179】
区画連結構造内のバルブが開くと、液は国際公開第02/100347号パンフレットで述べられる光環技術を使用して95℃におよそ5分間加熱され、タンパク質サンプルの完全な変性が確実にされるであろう。チャンバ内のサンプル容積は、加熱中に容積が減少してタンパク質濃度を増大させ、それによって低濃度タンパク質の検出が向上するであろう。チャンバ244はまた、液pHを測定するための電極も含む。
【0180】
次にチャンバ連結構造内のバルブをIRレーザーで開ける。装置は約100rad.s-2の加速度で10秒間5000rpmで回転されて、チャンバと毛管電気泳動チャンネルの間の流体の相互連絡が確実にされるであろう。
【0181】
電気泳動チャンネルは、例えばポリ(エチレンオキシド)−プルロニック(Pluronic)F−127緩衝液である電気泳動分離緩衝液で予備充填されるであろう。ポリ(エチレンオキシド)は分離マトリックスおよび表面コーティングとして作用し、タンパク質の毛管壁への非特定結合および電気浸透流を低下させる。プルロニック(Pluronic)界面活性剤は、表面親水性を向上させ、ポリ(エチレンオキシド)をその上に動的に被覆するのに魅力的な表面を提供する。ランニング緩衝液は、pH8.6のトリスHCl−SDSである。
【0182】
毛管電気泳動チャンネルは、幅および深さがおよそ50μmで長さが70mmであろう。
【0183】
サンプルは、ふるいマトリックスである1重量%のポリエチレンオキシド(分子量100,000)溶液によって、毛管電気泳動チャンネルに入ることが防止されるであろう。次にサンプルが動電学的横断注入によって毛管溝内に装填され、高度に濃縮されているが非常に薄いサンプルプラグが提供されるであろう。これによって、より短い分離長さにおける高解像度が確実になる。装置を回転させて、LIF励起−検出装置で個々の毛管チャンネルを整列させることで、レーザー誘導蛍光(LIF)が検出機序として使用されるであろう。
【0184】
上の明細、実施例、およびデータは本発明の組成物の製造および使用の完全な説明を提供する。本発明の範囲と精神を逸脱することなく本発明の多くの実施態様が製造できるので、本発明は添付の特許請求の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1a】本発明による装置の平面図である:単一半径。
【図1b】本発明による装置の平面図である:可変性半径。
【図1c】本発明による装置の平面図である:らせん。
【図1d】本発明による装置の平面図である:直線。
【図1e】本発明による装置の平面図である:角付き。
【図2a】図1aで描写された装置の対向する面の平面図である。
【図2b】図1bで描写された装置の対向する面の平面図である。
【図2c】図1cで描写された装置の対向する面の平面図である。
【図2d】図1dで描写された装置の対向する面の平面図である。
【図2e】図1eで描写された装置の対向する面の平面図である。
【図3】本発明による装置の一部の断面図である。
【図4】本発明による開口部のないチャンネルの一部の平面図である。
【図5a−h】開口部のないチャンネルのための例示的なデザインを描写する。
【図6a−b】pH勾配を作り出すための固定化スキームの実施例を描写する。
【図7a】サンプルチャンバを示す。
【図7b】バルブ付きサンプルチャンバを示す。
【図7c】2個のバルブおよび収集容器付きサンプルチャンバ。
【図7d】2個のバルブ付きで、ディスク上の毛管電気泳動に連結するサンプルチャンバ。
【図7e】7dと同様で単一毛管付き。
【図7f】複数サンプルチャンバ。
【図7g】サンプルウェルから除去されたサンプル注入ポート。
【図7h】連結構造付きサンプル直線チャンネル。
【図7i】連結構造付き角チャンネル。
【図8】装置の徴群の一部の平面図である。
【図9a】2個のバルブを有する本発明による装置の一部の断面図である。
【図9b】2個のバルブを有する本発明による装置の一部の断面図である。
【図10a】例示的な毛管電気泳動注入ポート立体配置の断面図である。
【図10b】例示的な毛管電気泳動注入ポート立体配置の上面図である。
【図10c】例示的な毛管電気泳動注入ポート立体配置の下面図である。
【図11】本発明による毛管電極立体配置の実施例の断面図を描写する。
【図12a−c】本発明による一体型電極の拡大図である。
【図13a−c】本発明による一体型電極の断面図である。
【図14】その上で装置が回転する基部内に一体化された電極の断面図である。
【図15】本発明による等電点電気泳動装置の平面図である。
【図16a】等電点電気泳動装置から得られたタンパク質画分から得られた二次元バーチャルゲルを描写する。
【図16b】等電点電気泳動装置から得られたタンパク質画分から得られた二次元バーチャルゲルを描写する。
【図17a】ロトフォー(Rotofor)(登録商標)装置を使用したタンパク質サンプルのクーマシー染色SDS−PAGE画像である。
【図17b】ロトフォー(Rotofor)(登録商標)装置を使用したタンパク質サンプルのクーマシー染色SDS−PAGE画像である。
【図18】本発明による、タンパク質IEF、変性、および毛管電気泳動のための注入装置の平面図である。
【図19a】試験管内で加熱せずに、変性させた変性タンパク質サンプルの一次元ゲルである。
【図19b】試験管内で95℃で5分間加熱して、変性させた変性タンパク質サンプルの一次元ゲルである。
【図19c】本発明の装置内で95℃で5分間加熱して、変性させた変性タンパク質サンプルの一次元ゲルである。
【図20】異なる時間加熱された、本発明の装置を使用した、変性アミログルコシダーゼの相対濃度間の比較を示すグラフである。
【図21】異なる時間加熱された、本発明の装置を使用して変性させたタンパク質の電気泳動図(蛍光−対−移行時間)を示す。
【図22】アジレント2100バイオアナライザー(Agilent 2100 Bioanalyzer)で分析した、本発明の装置の等電点電気泳動容器から得られたタンパク質画分からの二次元バーチャルゲルである。
【図23a】等電点電気泳動分離されたタンパク質画分のマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量スペクトルである。
【図23b】等電点電気泳動分離されたタンパク質画分のマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量スペクトルである。
【図23c】等電点電気泳動分離されたタンパク質画分のマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量スペクトルである。
【図23d】等電点電気泳動分離されたタンパク質画分のマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量スペクトルである。
【図24a】図23a、b、c、およびdのいくつかからの等電点電気泳動された画分のMALDIペプチドフィンガープリント(m/z 700〜4,000)の例である。
【図24b】図23a、b、c、およびdのいくつかからの等電点電気泳動された画分のMALDIペプチドフィンガープリント(m/z 700〜4,000)の例である。
【図24c】図23a、b、c、およびdのいくつかからの等電点電気泳動された画分のMALDIペプチドフィンガープリント(m/z 700〜4,000)の例である。
【図25】等電点電気泳動、変性、および毛管電気泳動のために構成される本発明による装置の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の主面および基材の回転中心軸を画定するハブを含んでなる基材、
内側半径および外側半径を有する開口部のないチャンネルであって、サンプル材料を分画するように適合されているチャンネル、および
前記開口部のないチャンネルの前記外側半径と接触する少なくとも1つの区画連結構造、
を含んでなる、サンプル材料を処理する装置。
【請求項2】
前記基材がポリマーを含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基材が、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、高密度ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、テフロン(登録商標)(Teflon)(登録商標)、ポリシロキサン、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記基材が約0.1mm〜約100mmの厚さである、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記基材が円形の形状であり、約50mm〜約500mmの直径である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記開口部のないチャンネルが複数の連結する区画を含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の連結する区画のそれぞれが約100μLの容積を有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記開口部のないチャンネルがアーク形状である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記開口部のないチャンネルが約180度以上のアーク長を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの一体型電極をさらに含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの一体型電極が前記開口部のないチャンネルと連結する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記一体型電極が、前記基材と連結する第1の部品、および前記第1の部品に脱着式に取り付けられる第2の部品を含んでなる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記一体型電極が金属フィルムを含んでなる、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記金属フィルムが白金を含んでなる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも1つのカバーフィルムをさらに含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記開口部のないチャンネルの前記外側半径に接触する複数の区画連結構造をさらに含んでなる、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
複数のチャンバをさらに含んでなり、それぞれのチャンバがサンプル材料を収容する容積を画定する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記複数のチャンバが試薬を収容する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記複数のチャンバが前記複数の区画連結構造に連結する、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも1つのチャンババルブをさらに含んでなる、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記チャンババルブが前記チャンババルブの少なくとも一部のレーザーアブレーションを通じて機能する、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
基材の回転軸に対して略放射状に外側に延在する複数の電気泳動チャンネルをさらに含んでなる、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
少なくとも1つのチャンバと少なくとも1つの電気泳動チャンネルとの間に位置する複数のチャンバ連結構造、および少なくとも1つのチャンババルブをさらに含んでなる、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記基材が、レーザーエネルギーを吸収する材料を含んでなる、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
エネルギーを吸収する前記材料がカーボン添加ポリマーを含んでなる、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記チャンババルブが前記チャンババルブの少なくとも一部のレーザーアブレーションを通じて機能する、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
複数のサンプル調製チャンバをさらに含んでなり、各サンプル調製チャンバがサンプル材料を収容する容積を画定する、請求項23に記載の装置。
【請求項28】
少なくとも1つの電気泳動チャンネルと少なくとも1つのサンプル調製チャンバとの間に位置する調製連結構造、およびバルブ構造をさらに含んでなる、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
複数のサンプル調製チャンバがタンパク質消化のための試薬を収容する、請求項27に記載の装置。
【請求項30】
複数のサンプル調製チャンバが加熱されるように構成される、請求項27に記載の装置。
【請求項31】
前記開口部のないチャンネルの表面の濡れ性が、開口部のないチャンネルの濡れ性を改善する化合物で被覆された基材材料のバルクの濡れ性とは異なる、請求項1に記載の装置。
【請求項32】
改質された前記開口部のないチャンネルの表面が、固定化pH勾配を作り出すように表面改質されたものである、請求項1に記載の装置。
【請求項33】
前記中心軸と前記外側半径の間の距離が変動する、請求項1に記載の装置。
【請求項34】
前記中心軸と前記内側半径の間の距離が変動する、請求項1に記載の装置。
【請求項35】
第1および第2の主面、および基材の回転中心軸を画定するハブを含んでなる基材、
内側半径および外側半径を有する開口部のないチャンネル、
を含んでなり、
前記チャンネルが前記サンプル材料を分画するように適合される、サンプル材料を処理する装置。
【請求項36】
第1および第2の主面および基材の回転中心軸を画定するハブを含んでなる基材、
内側半径および外側半径を有するチャンネルであって、複数の連結する区画を含んでなるチャンネルおよび
前記チャンネルの前記半径と接触する複数の区画連結構造、
を含んでなる装置。
【請求項37】
(a)第1および第2の主面および基材の回転中心軸を画定するハブを有する基材、
内側半径および外側半径、および第1および第2のサンプルウェルを有する開口部のないチャンネル、および
複数の区画連結構造
を含んでなり、
前記区画連結構造が前記開口部のないチャンネルの前記外側半径に接触し、
サンプルが第1または第2のサンプルウェル内に装填される、装置にサンプルを装填するステップと、
(b)サンプルが装置の開口部のないチャンネルに入るようにするステップと、
(c)陽極液を装置の第1のサンプルウェルに添加するステップと、
(d)陰極液を装置の第2のサンプルウェルに添加するステップと、
(e)電極をサンプルウェル内の前記液と接触させるステップと、
(f)電極に電圧を印加するステップと、
(g)装置を回転させて前記液を開口部のないチャンネルから複数の区画連結構造に移動させるステップと、
を含んでなり、
分析物を含有するサンプルの等電点電気泳動を実施する方法。
【請求項38】
複数の区画連結構造中のバルブが装置が回転される前に開放される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記液が複数の区画連結構造を通って複数のチャンバに移動する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記チャンバが化学試薬を収容する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
液および試薬を収容する前記チャンバが加熱される、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
サンプルを請求項24に記載の装置内に装填するステップと、
前記装置を回転させて前記サンプルを分画するステップと、
を含んでなる、分析物サンプルを分画する方法。
【請求項43】
(a)(i)第1および第2の主面および基材の回転中心軸を画定するハブを有する基材、および(ii)前記基材内の開口部のないチャンネルを含んでなる装置に液を装填するステップと、
(b)前記液を開口部のないチャンネルに入れるステップと、
(c)前記液の分析物を分離するステップと、
(d)遠心力を前記液にかけることにより前記液を分画するステップと、
を含んでなる、分析物を含有する液を処理する方法。
【請求項44】
前記分析物が等電点電気泳動によって分離される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
第1および第2の主面、および少なくとも1つのチャンネルを含んでなる基材、
前記チャンネルと連結する、流体を保持するサンプルウェル、
装置中に存在する場合、前記流体と接触するように構成される一体型電極、および
前記電極への電流の送達を可能にする前記ウェル外の接触点
を含んでなるサンプル材料を処理する装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図5f】
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【図5g】
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【図5h】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f】
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【図7g】
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【図7h】
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【図7i】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18】
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【図19a】
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【図19b】
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【図19c】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23a】
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【図23b】
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【図23c】
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【図23d】
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【図24a】
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【図24b】
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【図24c】
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【図25】
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【公表番号】特表2007−527517(P2007−527517A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518619(P2006−518619)
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/015820
【国際公開番号】WO2005/005045
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】