説明

開閉機構及び画像形成装置

【課題】組立て性が良く、かつ、制動力を調整しやすい開閉機構を得る。
【解決手段】開閉カバー52の幅方向の一方の端部には、ダンパー装置54が延在されている。ダンパー装置54は、画像形成装置本体12の下部に回転可能に連結された保持部材70と、保持部材70に対してスライドするスライド部材72とを備えている。スライド部材72には、押し付け部材74が取り付けられており、押し付け部材74の凹部74Dに接着されたパッド86が保持部材70のスライド面88を摺動する。スライド面88は異なる高さの面からなり、パッド86が圧縮された状態でスライド面88の高面部88Aと傾斜面88Bを摺動することで、摩擦力による制動力を発生させる。さらに、パッド86が低面部88Cに移動したときにパッド86の圧縮が開放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉機構及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば画像形成装置には、画像形成領域へ搬送された記録用紙が紙詰まりを起こしたときなど、その記録用紙を取り除けるように、開閉カバーが設けられている。このような開閉カバーは、装置本体に連結された開閉ユニット支持アームと、この開閉ユニット支持アームの先端と開閉カバーとの間に連結された螺旋バネと、を備えたダンパー装置によって、開閉カバーの開き始めと最大開度に達する直前とに緩衝作用が働くように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−279565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、組立て性が良く、かつ、制動力を調整しやすい開閉機構及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係る開閉機構は、本体に対して回転中心周りに回転することで前記本体の一面を開閉する開閉部材と、前記本体に設けられ、前記回転中心に対し上下方向にずれると共に前記一面を閉じる前記開閉部材に覆われる位置に回転可能に連結された保持部材と、前記保持部材の長手方向に沿って前記保持部材と摺動可能に設けられ、端部が前記開閉部材に連結されると共に、前記開閉部材の回転動作に伴って前記保持部材と摺動する摺動部材と、弾性を有し、かつ、前記摺動部材及び前記保持部材の一方との摩擦係数が前記摺動部材及び前記保持部材の他方と前記摺動部材及び前記保持部材の一方との摩擦係数よりも大きくなる材料で形成され、前記摺動部材の前記保持部材との摺動に伴って前記摺動部材及び前記保持部材の一方と摺動して摩擦力による制動力を発生させる制動部材と、前記摺動部材及び前記保持部材の他方に設けられ、前記制動部材が取り付けられると共に、前記制動部材を前記摺動部材及び前記保持部材の一方に押し付ける押し付け部材と、を有するものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の開閉機構において、前記開閉部材が前記一面の開放側に回転される動作に伴い、前記制動部材の圧縮量を大きくするように、前記摺動部材及び前記保持部材の一方における前記制動部材が押し付けられる摺動面の高さが連続的に又は段階的に変化されているものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の開閉機構において、前記制動部材の押し付け量を調整可能に前記摺動部材及び前記保持部材の他方に前記押し付け部材を固定する固定手段を備えるものである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の開閉機構において、前記摺動部材及び前記保持部材の一方に、前記開閉部材が前記一面を閉止する前に前記制動部材の圧縮変形を開放して自由状態とする圧縮変形開放手段が設けられているものである。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の開閉機構において、前記摺動部材及び前記保持部材の他方における前記制動部材が取り付けられる位置に、前記制動部材に食い込み、又は突き刺さる突起が設けられているものである。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の開閉機構において、前記押し付け部材が前記摺動部材に設けられ、前記制動部材が前記保持部材に押し付けられる構成とされたものである。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の開閉機構において、前記開閉部材の幅方向の一端側に前記保持部材と前記摺動部材と前記制動部材と前記押し付け部材とが設けられているものである。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の開閉機構において、前記本体の下部に前記開閉部材を開閉させる前記回転中心が設けられ、前記本体の前記回転中心の上方側に前記保持部材が回転可能に連結されているものである。
【0013】
請求項9に記載の発明に係る画像形成装置は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の開閉機構を備え、前記開閉部材には、画像を形成する記録媒体を搬送するための搬送手段が設けられているものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、組立て性が良好であり、制動力を容易に調整することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、開閉部材を本体に対して緩やかに開放することができる。また、狙いの開閉位置で制動力を強めることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、制動部材の押し付け量を容易に調整することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、開閉部材が閉止されたときに、開閉部材の捩れや変形を抑制することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、制動部材が摺動部材及び保持部材の一方に押し付けられて摺動するときに、制動部材が位置ずれするのを抑制することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、押し付け部材及び制動部材を小型化することができ、低コスト化が可能である。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、両端側に制動部材等を設けた場合に比べて、制動力を容易に調整することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、開閉部材の開閉に重力が作用する場合であっても、開閉部材を本体に対して緩やかに開閉することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、開閉部材の重量が重くなった場合でも、制動力を適切に確保して、開閉部材を本体に対して緩やかに開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る開閉機構が適用された画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】画像形成装置の開閉カバーを開放した状態を示す概略構成図である。
【図3】開閉カバーを開放したときの開閉機構のダンパー装置を示す概略斜視図である。
【図4】ダンパー装置を示す斜視図である。
【図5】ダンパー装置の各部品を示す分解斜視図である。
【図6】押し付け部材及びパッドを下方から見た斜視図である。
【図7】保持部材及び押し付け部材を示す断面図である。
【図8】ダンパー装置を示す断面図である。
【図9】開閉カバーの閉止途中でのダンパー装置の長手方向と直交する方向におけるダンパー装置を示す断面図である。
【図10】開閉カバーの閉止時のダンパー装置の長手方向と直交する方向におけるダンパー装置を示す断面図である。
【図11】開閉カバーの閉止時の保持部材及び押し付け部材を示す断面図である。
【図12】開閉カバーの開閉途中でのダンパー装置の各部品の状態を説明する概略図である。
【図13】開閉カバーの開放動作に伴い、パッドが保持部材に押し付けられる状態を示す概略構成図である。
【図14】開閉カバーの閉止動作に伴い、パッドが保持部材に押し付けられる状態を示す概略構成図である。
【図15】第2実施形態に係る開閉機構に用いられるダンパー装置の長手方向と直交する方向におけるダンパー装置を示す断面図である。
【図16】スライド部材及び保持部材を示す斜視図である。
【図17】スライド部材、パッド及び保持部材を示す斜視図である。
【図18】スライド部材、押し付け部材及びパッドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る開閉機構を備えた画像形成装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(画像形成装置の全体構成)
【0026】
まず、第1実施形態に係る開閉機構を備えた画像形成装置の全体構成について、図1に基づき説明する。
【0027】
図1に示されるように、画像形成装置10は、画像形成装置本体12を有し、画像形成装置本体12内には、画像形成部の一例としての感光体ユニット14、光書込装置16、定着装置18、搬送ユニット20などが配置されている。また、画像形成装置本体12の上部には、排紙部22が形成され、画像形成装置本体12の下部には、給紙部24が配置されている。
【0028】
給紙部24は、多数の記録用紙(記録媒体)Pが積層収容される用紙カセット25を有し、用紙カセット25は画像形成装置本体12に対して着脱可能に設けられている。そして、用紙カセット25の一端側(図1で右側)の上部には、フィードロール26が配置され、このフィードロール26に対向してリタードロール27が設けられている。
【0029】
したがって、用紙カセット25の最上位にある記録用紙Pは、フィードロール26によって取り出され、フィードロール26とリタードロール27との協動により捌かれて送出される。そして、送出された記録用紙Pは、感光体ユニット14よりも用紙搬送方向上流側に配設されたレジストロール28により一旦停止し、順次感光体ユニット14側へ搬送されるようになっている。
【0030】
また、感光体ユニット14は、用紙搬送方向上流側から順にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色毎に設けられており、各感光体ユニット14には、感光体30が回転自在に支持されている。感光体30の周囲には、感光体30を一様に帯電させる帯電ロール32と、感光体30に書き込まれた潜像をトナー(現像剤)で現像する現像装置34と、転写後の感光体30を除電する除電装置36と、転写された後に感光体30の表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置38と、が設けられている。
【0031】
そして、これらの感光体ユニット14は、感光体30、帯電ロール32、現像装置34、除電装置36、クリーニング装置38が一体化され、画像形成装置本体12に対して着脱可能となっている。また、感光体ユニット14の背面側(図1で左側)には、現像装置34へ供給する各色のトナーが収容されたトナーボックス40がそれぞれ接続されている。
【0032】
各トナーボックス40は、トナー供給部42とトナー回収部44とが一体となって構成されており、トナー供給部42が現像装置34に接続されて、各色のトナーを各現像装置34に供給するようになっている。そして、トナー回収部44は、クリーニング装置38に接続されて、各色のトナーを回収するようになっている。
【0033】
更に、トナーボックス40の背面側(図1で左側)には、各感光体30に対応した位置に、それぞれレーザー露光装置からなる光書込装置16が配設されており、各感光体30の表面に対し、レーザー光を照射することで、各感光体30の表面に潜像を形成するようになっている。
【0034】
また、感光体ユニット14よりも用紙搬送方向下流側には、定着装置18が設けられており、記録用紙P上の未定着のトナー像を加熱・加圧して定着させるようになっている。そして、この定着装置18の用紙搬送方向下流側には、排出ロール46が配設されており、トナー像が定着された記録用紙Pを排紙部22上へ排出させるようになっている。
【0035】
次に、上記のように構成された画像形成装置10における画像形成動作について説明する。
【0036】
まず、用紙カセット25の最上位にある記録用紙Pが、フィードロール26によって取り出され、フィードロール26とリタードロール27との協動により捌かれて送出される。そして、送出された記録用紙Pは、レジストロール28により、順次感光体ユニット14側へ搬送される。
【0037】
一方、感光体ユニット14では、まず、帯電ロール32によって感光体30の表面(周面)が一様に帯電される。そして、光書込装置16からレーザー光が照射されて、感光体30の表面が走査され、画像データに基づいた潜像がその表面に形成される。その後、現像装置34によって潜像がトナーで現像され、感光体30の表面にトナー像(可視像)が形成される。
【0038】
このトナー像は、搬送ユニット20によって搬送される記録用紙Pに、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に転写され、フルカラーのトナー像(未定着像)が転写された記録用紙Pは、定着装置18へ搬送される。そして、定着装置18へ供給された記録用紙Pは、転写された未定着のトナー像が加熱・加圧されて定着され、トナー像が定着された記録用紙Pは、排出ロール46によって排紙部22上へ排出される。なお、記録用紙Pへトナー像を転写した後、感光体30の表面は、クリーニング装置38によってクリーニング処理され、次の作像処理に備える。
【0039】
(開閉装置)
【0040】
次に、第1実施形態の画像形成装置10に備えられた開閉機構の一例としての開閉装置50について、図1〜図14に基づき説明する。
【0041】
図1〜図3に示されるように、開閉装置50は、本体の一例としての画像形成装置本体12の一面である右側面12Aを開閉可能に設けられた開閉部材の一例としての開閉カバー52と、この開閉カバー52の内面に沿って延在されて開閉カバー52を緩やかに開閉動作させる制動装置としてのダンパー装置54と、を備えている。開閉カバー52の下端部両側に設けられた取付部56は、画像形成装置本体12の下部に設けられた回転支点部58に回転可能に連結されている。
【0042】
ダンパー装置54は、開閉カバー52の幅方向の一方の側部(図3の手前側)に沿って設けられている。ダンパー装置54は、画像形成装置本体12の回転支点部58の上方側に設けられた回転支点部68に回転可能に連結された保持部材70と、保持部材70に対して摺動可能(スライド可能)に設けられた摺動部材の一例としてのスライド部材72と、スライド部材72の上方に固定されてスライド部材72と一体に保持部材70に対して摺動する押し付け部材74と、を備えている。
【0043】
回転支点部68は、側面視で、開閉カバー52の取付部56の画像形成装置本体12に対する回転中心である回転支点部58の上方側で、かつ開閉カバー52を開放させて画像形成装置本体12から引き出される感光体ユニット14の最下端48よりも下方側に設けられている。ダンパー装置54は、図2〜図3に示されるように、開閉カバー52を開放させたときに、側面視で、開閉カバー52の側壁52Aから上方へ突出しない構成になっている。
【0044】
図4及び図5に示されるように、保持部材70は、長手方向に直交する断面視で略「コ」字状に形成されており、側壁部70Aの上方側に開口する開口部70Bを備えている。保持部材70は、側壁部70Aの一端部に設けられた取付部70Cが回転支点部68(図2参照)に回転可能に連結されており、側壁部70Aの他端部である先端部70D側に開口する開口部70Eを備えている。側壁部70Aの幅方向内側にスライド部材72が挿入されており、スライド部材72が保持部材70の開口部70Eを通じて長手方向に沿ってスライドするようになっている。
【0045】
保持部材70の幅方向両側の側壁部70Aには、長手方向に沿ってガイド孔76が設けられている。ガイド孔76の取付部70C側の端部は、図4の上方側にオフセットするように形成されたオフセット部76Aとなっている。このガイド孔76にスライド部材72の側面部72Aに設けられたピン72Bが挿入されることで、ピン72Bがガイド孔76にガイドされた状態でスライド部材72が保持部材70に対してスライドするようになっている。
【0046】
側壁部70Aの先端部70Dの幅方向内側は、断面が略L字状に折り曲げられた支持部材78が挿入されている。図7及び図8に示されるように、支持部材78の一端部に設けられた取付部78Aは、側壁部70Aよりも下方側に屈曲しており、取付部78Aが保持部材70の下面部71に設けられた開口71Aを通して下面部71の下方側に配置されている。支持部材78の取付部78Aは、保持部材70の下面部71から下方側に突出する係止片71Bに係止されることで、支持部材78が保持部材70に固定されている。支持部材78には、保持部材70の開口部70Eを塞ぐ方向に平板状の係止部78Bが設けられている。
【0047】
スライド部材72は、断面が略「コ」字状で下方側に開口しており、スライド部材72の一端部である壁部72Cの内壁面72Dと支持部材78の係止部78Bとの間に圧縮コイルバネ80が配置されている(図8参照)。
【0048】
また、スライド部材72の他端部には、開閉カバー52に設けられた取付部52B(図3参照)に連結するための連結部94が設けられている。この連結部94の側部には、スライド部材72の長手方向に沿って長孔94Aが形成されている。図2に示されるように、開閉カバー52の取付部52Bに設けられたピン52Cが長孔94Aに挿入されることで、スライド部材72の連結部94が長孔94Aに挿入されたピン52Cを介して開閉カバー52の取付部52Bに連結されている。ピン52Cは開閉カバー52の開閉動作に応じて長孔94A内を移動するようになっている。
【0049】
図5に示されるように、スライド部材72の上面部72Eの壁部72C側の部分には、押し付け部材74を取り付けるための円筒状の取付部82、84A、84Bが突設されている。
【0050】
図5及び図6に示されるように、矩形状の押し付け部材74には、スライド部材72の取付部82、84A、84Bが挿入される円形孔74A、74B、74Cが設けられている。押し付け部材74の下部は凹状に窪んでおり、その窪んだ部分に制動部材の一例としてのパッド86を取り付けるための平面部74Cが形成されている。平面部74Cの幅方向両側には、スライド部材72のスライド方向に沿って凹部74Dが形成されている。凹部74Dは、板状のパッド86の外形形状に合わせて形成されており、パッド86は凹部74Dに挿入されて接着剤や両面テープ等により凹部74Dの底面に貼着されている。パッド86は、弾性のある抵抗の大きい部材で形成されており、本実施形態では合成ゴム(例えば、ウレタンフォームなど)が用いられている。パッド86を凹部74Dに挿入して接着剤や両面テープ等により貼着することで、パッド86が保持部材70の摺動面の一例としてのスライド面88を摺動するときに、パッド86の位置ずれが抑制される構成となっている。
【0051】
押し付け部材74の円形孔74B、74Cがスライド部材72の取付部84A、84Bに位置決めされた状態で、押し付け部材74がボルト90(図9参照)により取付部82に締結固定されることで、スライド部材72に取り付けられている。図7及び図8に示されるように、押し付け部材74は、スライド部材72と一体として保持部材70に対してスライドするようになっており、スライド部材72がスライドするときに、押し付け部材74の凹部74Dに貼着されたパッド86が、保持部材70の側壁部70Aの上部に設けられたスライド面88を摺動するようになっている。
【0052】
図7に示されるように、スライド面88は、保持部材70の先端部70D側に形成された高さが高い高面部88Aと、保持部材70の中間部に高面部88Aよりも徐々に高さが低くなるように形成された傾斜面88Bと、保持部材70の取付部70C側に傾斜面88Bと連続して高面部88Aよりも高さが低く形成された圧縮変形開放手段の一例としての低面部88Cと、を備えている。
【0053】
開閉カバー52を閉止位置に移動する際には、スライド部材72が保持部材70の内部に納まる方向にスライドし、これに伴いパッド86がスライド面88を高面部88A、傾斜面88B、低面部88Cの順に摺動していくようになっている。このスライド面88によって、パッド86が高面部88Aを摺動するときはパッド86の圧縮量が大きく(図9参照)、パッド86が傾斜面88Bを摺動するときはパッド86の圧縮量が徐々に小さくなり、パッド86が低面部88Cに到達したときにパッド86が圧縮しない(パッド86の圧縮が開放される)ような構成となっている(図10参照)。
【0054】
本実施形態では、開閉カバー52を閉止位置に移動する際に、開閉カバー52が閉止位置に対して30°の開き角度まで回転したとき、パッド86が低面部88Cに到達してパッド86が圧縮しないような構成となっている。
【0055】
さらに、図11に示されるように、開閉カバー52が閉止位置に移動した状態では、ガイド孔76の取付部70C側のオフセット部76Aが、下方側にスライドした押し付け部材74側(図1に示す画像形成装置本体12側)に延設されている。すなわち、スライド部材72のピン72Bがガイド孔76のオフセット部76Aに移動したときに、押し付け部材74を保持部材70の低面部88Cから離れる方向に積極的に移動させるようにすることで、パッド86が低面部88Cから確実に離れるようになっている。これによって、開閉カバー52が閉止されたときに、パッド86が圧縮状態で維持されることがない。
【0056】
また、押し付け部材74は、ボルト90の取付部82への締結ストロークを変更することで、パッド86がスライド面88に接触したときの圧縮量を調整出来るようになっている。これによって、パッド86がスライド面88を摺動するときの摩擦力が変更可能である。特に、開閉カバー52の質量が変更されたときに、例えば、オプションによって開閉カバー52に両面印刷用の記録用紙搬送装置が取り付けられた場合などに、ボルト90の取付部82への締結ストロークを変更することで、開閉カバー52の質量に合わせてパッド86がスライド面88を摺動するときの摩擦力が変更可能である。
【0057】
また、図4に示されるように、保持部材70に設けられた長孔64の先端部70D側の端面64Bは、開閉カバー52が開放されたときにスライド部材72のピン72Bが当たるストッパとなっている。また、保持部材70の側壁部70Aの先端部70D側には、上方に突出する壁部70Fが設けられており、開閉カバー52が開放されたときに押し付け部材74のスライドを規制するようになっている。
【0058】
図3に示されるように、開閉カバー52の幅方向におけるダンパー装置54の反対側には、開閉カバー52が開閉されるときに開閉カバー52を支えるストラップ100が設けられている。ストラップ100は、開閉カバー52が開放位置に移動したときは引っ張りで荷重を支持し、開閉カバー52が閉止位置に移動したときは折り畳まれて抵抗が小さくなる構成である。また、本実施形態では、開閉カバー52として、樹脂が用いられている。なお、開閉カバー52として、金属などを用いてもよい。
【0059】
次に、この画像形成装置10に設けられた開閉カバー52の開閉機構の作用について説明する。
【0060】
感光体ユニット14などをメンテナンスする際には、開閉カバー52を開放方向に回転させて画像形成装置本体12の右側面12Aを開放する(図2参照)。このとき、開閉カバー52には、ダンパー装置54が設けられているので、その開閉カバー52は緩やかに開放方向(図3の矢印で示す時計回り方向)へ回転する。
【0061】
すなわち、開閉カバー52の回転支点部58周りの開放方向への回転に伴い、保持部材70の取付部70Cも回転支点部68周りに開放方向へ回転する。このとき、保持部材70にスライド可能に設けられているスライド部材72の連結部94が長孔94Aに挿入されたピン52Cを介して開閉カバー52の取付部52Bに連結されているので、図12及び図13に示されるように、開閉カバー52の回転開始とともにピン52Cが長孔94Aの下側の一端部95Aから長孔94Aの上側の他端部95Bの方向へ移動していく。本実施形態では、開閉カバー52の開き角度が約29°になったとき、ピン52Cが長孔94Aの他端部95Bまで移動する。
【0062】
開閉カバー52の開き角度が約29°より大きくなると、スライド部材72が開放方向へ引っ張られ、保持部材70に対してスライド部材72が長手方向に沿ってスライドし始める。このとき、押し付け部材74のパッド86が保持部材70の低面部88Cと近接対向しているため、パッド86が圧縮していない(図10参照)。
【0063】
開閉カバー52の開き角度が約39°(ダンパー装置54が約30°)より大きくなると、保持部材70に対してスライド部材72がさらにスライドして、押し付け部材74のパッド86が保持部材70のスライド面88の傾斜面88Bから高面部88Aを摺動する。その際、押し付け部材74のパッド86が圧縮変形して傾斜面88Bから高面部88Aを摺動することにより摩擦力が発生する(摺動時の制動力が大きくなる)。言い換えると、押し付け部材74のパッド86が圧縮変形した状態でスライド部材72の傾斜面88Bから高面部88Aを摺動することで、保持部材70に対するスライド部材72の制動力(摺動抵抗)が生じている。さらに、押し付け部材74のパッド86が高面部88Aを摺動する途中で(開閉カバー52の開き角度が約44°より大きくなったときに)、スライド部材72の壁部72Cが係止部78B側に近接移動することによって(図8参照)、圧縮コイルバネ80が圧縮される。
【0064】
開閉カバー52の開き角度が約65°より大きくなったときに、押し付け部材74のパッド86の全面が高面部88Aと接触し、パッド86が圧縮された状態で高面部88Aを摺動する。
【0065】
このようなダンパー装置54では、圧縮コイルバネ80の弾性力と、パッド86の摺動抵抗(摩擦力)により、スライド部材72は保持部材70に対して緩やかにスライドする。これによって、開閉カバー52が開放方向に回転するにしたがって、開閉カバー52の回転速度が徐々にゆっくりとなってストッパにより停止する(図3参照)。このため、開閉カバー52が勢いよく開放されることがない。
【0066】
一方、感光体ユニット14のメンテナンス作業等が終了したら、開閉カバー52を閉塞方向(図3の矢印の反対方向である反時計回り方向)へ回転させるが、このときも、開閉カバー52は緩やかに回転する。すなわち、開閉カバー52を閉止方向へ回転させると、保持部材70の取付部70Cも閉止方向へ回転する。図14に示されるように、開閉カバー52が回転し始めると、ピン52Cが長孔94Aの他端部95Bから一端部95Aの方向へ移動していく。本実施形態では、開閉カバー52の開き角度が約60°になったとき、ピン52Cが長孔94Aの一端部95Aまで移動する。このとき、圧縮コイルバネ80は圧縮された状態で維持される。
【0067】
開閉カバー52の開き角度が約60°より小さくなると、開閉カバー52の取付部52Bに押されて、スライド部材72が保持部材70に収納される方向にスライドを始める。その際、押し付け部材74のパッド86が圧縮変形された状態でスライド面88の高面部88Aを摺動し、摩擦力が発生する(摺動時の制動力が大きい)。このとき、圧縮コイルバネ80が伸びて開閉カバー52の閉止方向への移動がアシストされる。
【0068】
開閉カバー52の開き角度が約35°より小さくなると、押し付け部材74のパッド86の一部がスライド面88の傾斜面88Bを摺動し始める。さらに、開閉カバー52の開き角度が約10°より小さくなると、押し付け部材74のパッド86が低面部88Cに到達し、パッド86のスライド面88による圧縮が開放される。
【0069】
開閉カバー52には、幅方向の一方の端部にダンパー装置54が設けられているので、開閉カバー52の閉止時に押し付け部材74のパッド86が高面部88Aを摺動して抵抗が大きくなり、開閉カバー52のダンパー装置54が設けられていない側(回転に伴う抵抗が小さい側)の端部を押して開閉カバー52を閉止するときに、開閉カバー52に捩れが発生する場合がある。その際、ダンパー装置54では、押し付け部材74のパッド86の一部がスライド面88の傾斜面88Bを摺動して低面部88Cに移動した後、開閉カバー52に捩れが戻ることにより、開閉カバー52の閉じ姿勢での開閉カバー52の変形が抑制される。
【0070】
以上により、開閉カバー52が開閉されるが、開閉カバー52の内面側には、両面印刷用の搬送ユニットがオプションで設けられる場合がある。両面印刷用の搬送ユニットが設けられている場合、開閉カバー52の重量が増大するので、開閉カバー52は勢いよく開放されるおそれがある。しかしながら、このダンパー装置54では、押し付け部材74をスライド部材72に固定するボルト90の締結ストロークを変更することで、パッド86の圧縮量が調整されるので、保持部材70に対するスライド部材72のスライドがより一層緩やかになり、開閉カバー52の開放動作は緩やかに行われる。
【0071】
次に、本発明の開閉装置の第2実施形態について説明する。
【0072】
なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。また、画像形成装置の全体構成は、第1実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0073】
図15〜図18に示されるように、ダンパー装置110に設けられたスライド部材112の上面部72Eの幅方向両側には、パッド116と対向する位置に、幅方向に沿って複数のリブ112Aが設けられており、リブ112Aの上部には突起112Bが形成されている。突起112Bは、上面が略U字状に突出する形状となっている。本実施形態では、スライド部材112の幅方向両側にそれぞれ3つのリブ112Aが設けられており、各々のリブ112Aに突起112Bが形成されている。
【0074】
押し付け部材114の下部には、パッド116が取り付けられる平面部114Aが設けられており、パッド116が平面部114Aに接着剤等により接着されている。なお、本実施形態の押し付け部材114には、第1実施形態の押し付け部材74(図9参照)のような凹部74Dは設けられていない。
【0075】
本実施形態では、第1実施形態のパッド86(図9参照)に比べて、パッド116の幅方向(スライド部材112の長手方向と直交する方向)の幅が大きくなっており、押し付け部材114がスライド部材112にボルト90により締結固定された状態でスライド部材112の突起112Bがパッド116に食い込んでいる。なお、突起112Bの先端をより尖形とし、突起112Bがパッド116に突き刺さるようにしてもよい。
【0076】
このようなダンパー装置110では、押し付け部材114がスライド部材112にボルト90により締結固定された状態でスライド部材112の突起112Bがパッド116に食い込んでいるので、パッド116が圧縮変形された状態で保持部材70のスライド面88を摺動するときに、パッド116がずれることが抑制される。また、突起112Bがパッド116に食い込むことで、パッド116の圧縮方向に逆らうことがなく、パッド116の圧縮変形に影響を及ぼしにくい。
【0077】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第1及び第2実施形態では、スライド部材72に押し付け部材74、114を固定し、押し付け部材74、114に設けられたパッド86、116を保持部材70のスライド面88に摺動させたが、この構成に限定されず、保持部材に押し付け部材を固定し、押し付け部材に設けられたパッドをスライド部材のスライド面に摺動させてもよい。
【0078】
また、押し付け部材を取り付ける位置は、図7に示すスライド部材72の上方に限定されるものではなく、スライド部材又は保持部材の側方や下方に取り付けてもよい。
【0079】
なお、上記第1及び第2実施形態では、保持部材70のスライド面88に高面部88A、傾斜面88B、低面部88Cを設けたが、この構成に限定されず、例えば、高さの異なる3つ以上の面、又は長手方向に長い傾斜面を設けてもよい。
【0080】
なお、上記第1及び第2実施形態では、開閉カバー52の幅方向の一方の端部にダンパー装置を設けたが、これに限定されず、開閉カバー52の幅方向両側にダンパー装置を設けてもよい。
【0081】
なお、上記第1及び第2実施形態では、画像形成装置本体12の下部に設けられた回転支点部58周りに回転する開閉カバー52にダンパー装置を設けたが、この構成に限定されず、例えば、画像形成装置本体12の上部に設けられた回転支点部周りに開閉カバーが装置本体の側面を開閉する構成の開閉カバーにダンパー装置を用いてもよい。また、画像形成装置本体12の中間部に設けられた回転支点部周りに回転する開閉カバーにダンパー装置を設けてもよい。また、画像形成装置10に限定されず、他の装置の本体に設けられた開閉カバーにダンパー装置を設けてもよい。
【0082】
また、長孔94Aの内側にピン52Cの移動方向に沿ってパッド86を設けて、開閉カバー52の開時の初速を抑制するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 画像形成装置
12 画像形成装置本体(装置本体)
20 搬送ユニット
50 開閉装置(開閉機構)
52 開閉カバー(開閉部材)
54 ダンパー装置
58 回転支点部
68 回転支点部
70 保持部材
72 スライド部材(摺動部材)
74 押し付け部材
76 ガイド孔
76A オフセット部(圧縮変形開放手段)
86 パッド(制動部材)
88 スライド面
88B 傾斜面
88A 高面部
88C 低面部(圧縮変形開放手段)
90 ボルト(固定手段)
110 ダンパー装置
112 スライド部材(摺動部材)
112B 突起
114 押し付け部材
116 パッド(制動部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対して回転中心周りに回転することで前記本体の一面を開閉する開閉部材と、
前記本体に設けられ、前記回転中心に対し上下方向にずれると共に前記一面を閉じる前記開閉部材に覆われる位置に回転可能に連結された保持部材と、
前記保持部材の長手方向に沿って前記保持部材と摺動可能に設けられ、端部が前記開閉部材に連結されると共に、前記開閉部材の回転動作に伴って前記保持部材と摺動する摺動部材と、
弾性を有し、かつ、前記摺動部材及び前記保持部材の一方との摩擦係数が前記摺動部材及び前記保持部材の他方と前記摺動部材及び前記保持部材の一方との摩擦係数よりも大きくなる材料で形成され、前記摺動部材の前記保持部材との摺動に伴って前記摺動部材及び前記保持部材の一方と摺動して摩擦力による制動力を発生させる制動部材と、
前記摺動部材及び前記保持部材の他方に設けられ、前記制動部材が取り付けられると共に、前記制動部材を前記摺動部材及び前記保持部材の一方に押し付ける押し付け部材と、
を有する開閉機構。
【請求項2】
前記開閉部材が前記一面の開放側に回転される動作に伴い、前記制動部材の圧縮量を大きくするように、前記摺動部材及び前記保持部材の一方における前記制動部材が押し付けられる摺動面の高さが連続的に又は段階的に変化されている請求項1に記載の開閉機構。
【請求項3】
前記制動部材の押し付け量を調整可能に前記摺動部材及び前記保持部材の他方に前記押し付け部材を固定する固定手段を備える請求項1又は請求項2に記載の開閉機構。
【請求項4】
前記摺動部材及び前記保持部材の一方に、前記開閉部材が前記一面を閉止する前に前記制動部材の圧縮変形を開放して自由状態とする圧縮変形開放手段が設けられている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の開閉機構。
【請求項5】
前記摺動部材及び前記保持部材の他方における前記制動部材が取り付けられる位置に、前記制動部材に食い込み、又は突き刺さる突起が設けられている請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の開閉機構。
【請求項6】
前記押し付け部材が前記摺動部材に設けられ、前記制動部材が前記保持部材に押し付けられる構成とされた請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の開閉機構。
【請求項7】
前記開閉部材の幅方向の一端側に前記保持部材と前記摺動部材と前記制動部材と前記押し付け部材とが設けられている請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の開閉機構。
【請求項8】
前記本体の下部に前記開閉部材を開閉させる前記回転中心が設けられ、
前記本体の前記回転中心の上方側に前記保持部材が回転可能に連結されている請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の開閉機構。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の開閉機構と、
前記本体に設けられ、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記本体に設けられ、前記記録媒体を前記画像形成部に搬送する搬送手段と、
を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−138038(P2011−138038A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298589(P2009−298589)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】