説明

開閉装置の指詰め防止構造

【課題】戸袋の見切り部材への指詰め防止部材の取り付けを、ビス等の特別の取付手段を用いることなく簡単に行える開閉装置の指詰め防止構造を提供すること。
【解決手段】開閉空間を開閉する開閉体となっている引戸装置の扉体1がこの開閉空間を開放したときに収納される戸袋は、開閉空間側の見切り部材となっている竪額縁部材13を有し、竪額縁部材13に、戸袋の内側へ突出する指詰め防止部材65を取り付けることによって構成される開閉装置の指詰め防止構造であって、指詰め防止部材65に割り溝65Dが形成され、この割り溝65Dに竪額縁部材13における戸袋の内側へ延出した延出部24Bを挿入することにより、指詰め防止部材65を竪額縁部材13に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体が収納される戸袋の見切り部材に指詰め防止部材を取り付けるための開閉装置の指詰め防止構造に係り、例えば、開閉体がガイド部材から吊り下げられた扉体となっている上吊り式の引戸装置や雨戸装置を含む各種の開閉装置であって、戸袋を備えている開閉装置に利用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、開閉空間を開閉する開閉体がこの開閉空間を開放したときに収納される戸袋を備えている開閉装置が示されている。この開閉装置は、開閉体が上方に配置されたガイド部材から吊り下げられた扉体となっている上吊り式の引戸装置であり、この引戸装置の戸袋は、開閉空間側の見切り部材を含んで形成されている。
【0003】
このように戸袋が開閉空間側の見切り部材を含んで形成される場合には、扉体と戸袋の間の隙間に指等が挟まってしまうことを防止するために、見切り部材に、戸袋の内側へ突出する指詰め防止部材を取り付けることが行われ、この取り付けは、従来、ビスや両面粘着テープによって行われていた。
【特許文献1】特開2002−295134(図1、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような指詰め防止部材の取り付けによると、ビスや両面粘着テープという特別の取付手段が必要となり、また、指詰め防止部材を見切り部材に取り付けるためには、ビスの締付作業や両面粘着テープの貼付作業といった特別の作業が必要となる。
【0005】
本発明の目的は、戸袋の見切り部材への指詰め防止部材の取り付けを、ビス等の特別の取付手段を用いることなく簡単に行えるようになる開閉装置の指詰め防止構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る開閉装置の指詰め防止構造は、開閉空間を開閉する開閉体がこの開閉空間を開放したときに収納される戸袋は、前記開閉空間側の見切り部材を含んで形成され、この見切り部材に、前記戸袋の内側へ突出する指詰め防止部材を取り付けることによって構成される開閉装置の指詰め防止構造であって、前記指詰め防止部材に割り溝が形成され、この割り溝に、前記見切り部材における前記戸袋の内側へ延出した延出部を挿入することによって前記指詰め防止部材が前記見切り部材に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0007】
この開閉装置の指詰め防止構造によると、指詰め防止部材に形成された割り溝に、見切り部材における戸袋の内側へ延出した延出部を挿入することにより、指詰め防止部材は見切り部材に取り付けられることになるため、見切り部材への指詰め防止部材の取付作業を上記挿入作業だけとすることができ、このため、ビス等の特別の取付手段は不要になり、また、ビスの締付作業等も不要になり、指詰め防止部材の取付作業の簡単化を図ることができる。
【0008】
また、例えば、見切り部材のメインテナンス作業等のために指詰め防止部材を見切り部材から取り外す場合には、指詰め防止部材を戸袋の内側へ引っ張ることにより、上記延出部から指詰め防止部材を抜き取ることができるため、指詰め防止部材の取外作業も容易に行える。
【0009】
本発明において、見切り部材の上記延出部の形状及び構造は任意であり、その一例は、この延出部を、戸袋の内側の厚肉部と、戸袋の外側の薄肉部と、これらの厚肉部と薄肉部の間の段差部とを有するものとすることである。延出部をこのようにした場合には、上記割り溝を、これらの厚肉部と薄肉部と段差部に対応した形状とすることができる。
【0010】
これによると、段差部の係止作用により、指詰め防止部材が延出部から戸袋の内側へ抜け出すことを防止できる。そして、指詰め防止部材をゴムや軟質合成樹脂等の弾性材料や軟質材料で形成することにより、見切り部材のメインテナンス作業等を行う場合には、指詰め防止部材の弾性変形により、指詰め防止部材を延出部から戸袋の内側へ抜き取ることができる。
【0011】
上述のように、見切り部材の延出部を、戸袋の内側の厚肉部と、戸袋の外側の薄肉部と、これらの厚肉部と薄肉部の間の段差部とを有するものとする場合には、これらの厚肉部と薄肉部と段差部は、この延出部の材料や成形方法に応じて、プレス成形や鋳造等の任意な手段で形成することができる。そして、延出部を板材で形成する場合には、厚肉部と薄肉部と段差部を、延出部の材料となっている板材を折り返して複数枚重ねとすることにより形成することができる。
【0012】
この複数枚重ね構造を採用した場合には、見切り部材の延出部に、厚肉部と薄肉部と段差部を簡単な作業で容易に設けることができる。
【0013】
また、本発明において、指詰め防止部材と開閉体との離間距離は、見切り部材の延出部への指詰め防止部材の挿入深さよりも小さくすることが好ましい。
【0014】
これによると、たとえ指詰め防止部材延出部から抜け出そうとしても、指詰め防止部材が延出部から完全抜け出す前に、指詰め防止部材の先端は開閉体に当接することになり、このため、指詰め防止部材が延出部から抜け落ちることを防止できる。
【0015】
また、本発明において、前記見切り部材に取り付ける指詰め防止部材は、扉体の両面側に設けてもよく、どちらか一方の片面側だけに設けてもよい。
【0016】
以上説明した本発明は、開閉体を収納するための戸袋を備えている任意な開閉装置に適用することができ、その一例は、開閉体が扉体となっている引戸装置や雨戸装置である。
【0017】
本発明を引戸装置に適用する場合には、この引戸装置の扉体の個数は1個でもよく、複数個でもよい。扉体の個数が複数個である場合には、これらの扉体の配置位置は、これらの扉体の厚さ方向にずれていてもよく、これらの扉体の厚さ方向にずれていなくてもよい。さらに、これらの扉体の開閉移動方向は、同じ方向でもよく、反対方向でもよい。そして、複数個の扉体の開閉移動方向を同じ方向とする場合には、これらの扉体を、外側扉体と、この外側扉体の内部に入れ子式に収納される内側扉体としてもよく、このような外側扉体と内側扉体としなくてもよい。
【0018】
また、引戸装置の戸袋は、外部から視認できる外部露出式の戸袋でもよく、壁の内部に収納された壁収納式の戸袋でもよい。そして、これらの戸袋は、戸袋の内部に収納された扉体の厚さ方向両側を覆う部分を有している両面式の戸袋でもよく、扉体の厚さ方向片側のみを覆う部分を有している片面式戸袋でもよい。
【0019】
さらに、本発明が適用される引戸装置は任意な形式の引戸装置でよく、例えば、上枠部材の内部に配置されたガイド部材から扉体が吊り下げられ、この扉体がガイド部材に案内されて移動する上吊り式の引戸装置でもよく、扉体の下方に配置されたガイドレール等のガイド部材に案内されて扉体が移動する引戸装置でもよく、扉体の下方と上方の両方に配置されたガイドレール等のガイド部材に案内されて扉体が移動する引戸装置等でもよい。引戸装置が前記上吊り式の引戸装置である場合、前記ガイド部材はガイドレールでもよく、スライドベアリングが用いられているスライドレール等でもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、戸袋の見切り部材への指詰め防止部材の取り付けを、ビス等の特別の取付手段を用いることなく簡単に行えるという効果を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る開閉装置は、開閉体がスライド移動する1個の扉体となっている引戸装置であって、この扉体が、ガイド部材であるガイドレールから吊り下げられかつこのガイドレールに案内されて移動を行う上吊り式の引戸装置であり、また、この引戸装置は、扉体を収納する戸袋を有するものであって、この戸袋は、壁の内部に収納された壁収納式の戸袋である。
【0022】
図1は、例えば、建物内における廊下と部屋との間に配置され、扉体1で開閉される開閉空間が出入口2となっているこの上吊り式の引戸装置の全体を示す正面図である。この引戸装置の外枠組みは、上枠部材10と、扉体1が全閉位置に達して出入口2を閉じたときにこの扉体1の先端が当接する戸先側の竪枠部材11と、この戸先側の竪枠部材11とは扉体1の移動方向反対側に配置されている戸尻側の竪枠部材12と、これらの竪枠部材11と12の間に配置されているとともに、出入口2を開けたときの扉体1が収納される戸袋3における出入口2の側の端部に配置された竪額縁部材13と、床4における戸袋3の下端に配置された幅木14と、を含んで形成され、板材の折り曲げ品となっているこれらの上枠部材10と戸先側の竪枠部材11と戸尻側の竪枠部材12と竪額縁部材13と幅木14は、引戸装置の外枠組みを形成する枠部材であり、また、開閉移動する扉体1に対して不動となった不動部材となっている。
【0023】
出入口2は、これらの枠部材10〜14で形成された外枠組みの内側の一部の空間となっており、この出入口2は扉体1で開閉され、この出入口2を開けたときの扉体1が収納される戸袋3は、壁5の内部に収納された壁収納式の戸袋である。上枠部材10は、戸先側の竪枠部材11から戸尻側の竪枠部材12まで延びる長さを有し、上記枠部材10〜14のうちの1つとなっている竪額縁部材13は、戸袋3における出入口2側の見切り部材となっている。また、戸袋3は、図1のS2−S2線断面図である図2で示されているように、ハット形状の断面が、上枠部材10と幅木14の長手方向(図1では左右方向)に連続している補強部材20によって補強された構造となっており、この補強部材20は、扉体1の厚さ方向でもある戸袋3の厚さ方向の両側に設けられているとともに、竪枠部材11,12と竪額縁部材13の長手方向でもある上下方向に複数個配設されている。そして、これらの補強部材20の上下において、内側壁材21が接着テープ等による結合具で補強部材20に結合され、これらの内側壁材21の外側に外側壁材22が配置され、補強部材20にビスやステープル等の結合具で結合されているこの外側壁材22の表面に、クロス等の壁仕上げ材が取り付けられている。
【0024】
このため、これらの内側壁材21と外側壁材22と壁仕上げ材により、戸袋3の部分の壁5が形成され、戸袋3は、補強部材20が構造材となって壁5の内部に形成されている。この壁5は、図1から分かるように、上枠部材10の上側や、戸先側の竪枠部材11に対して出入口2とは反対側の部分、戸尻側の竪枠部材12に対して戸袋3とは反対側にも設けられている。壁5のこれらの部分の表面は、戸袋3における壁5の部分の表面と面一状態となっている。
【0025】
また、図1で示されている上下複数個の前記補強部材20のうち、上下寸法が大きい補強部材20Aが配置されている壁5の箇所には、手摺り6を設けることができ、この手摺り6は、補強部材20Aに達するビス等の取付具でこの補強部材20Aに取り付けることができる。
【0026】
図3は図1のS3−S3線断面図であり、この図3で示されているように、竪額縁部材13は扉体1の厚さ方向両側に2個配設され、それぞれの竪額縁部材13は、戸袋3の内外方向に配置された内部材23と外部材24との組み合わせ品である。これらの内部材23と外部材24における戸尻側の竪枠部材12の側へ延びている後方延出部23Aと24Aの間の隙間に、補強部材20における戸先側の竪枠部材11の側の端部が挿入され、この端部は、ビス等の止着具25で外部材24の後方延出部24Aに止着され、補強部材20における戸尻側の竪枠部材12の側の端部は、ビス等の止着具26で戸尻側の竪枠部材12に止着されている。
【0027】
図2において、壁5を形成している複数個の内側壁材21のうち、2個の内側壁材21Aの上下寸法Hは、市販されている汎用の壁材の上下寸法の正確な半分である。このため、これら2個の内側壁材21Aの上下寸法の合計は、市販されている汎用の壁材の上下寸法と同じであり、したがって、2個の内側壁材21Aを、市販されている汎用の壁材を切断して容易に得ることができるとともに、この市販されている汎用の壁材を、使用されない無駄な部分が生ずることを極力防止して有効に活用できる。
【0028】
図4は図1のS4−S4線断面図であり、この図4で示されているように、上枠部材10は、上枠部材10の上側の壁5の下地材27にアンカー部材28を介して結合された上面部10Aと、この上面部10Aにおける上枠部材10の幅方向(図4では左右方向)の一方の端部から垂下した垂下部10Bと、この垂下部10Bの下端から上記幅方向の外側へ延出した壁材見切り部10Cと、この壁材見切り部10Cの先端から起立した起立部10Dと、この起立部10Dから垂下部10B側へ屈曲した屈曲部10Eとを有する。これらの上面部10Aと垂下部10Bと壁材見切り部10Cと起立部10Dと屈曲部10Eのうち、上面部10Aと垂下部10Bは、上枠部材10の全長に渡って連続して設けられ、壁材見切り部10Cと起立部10Dと屈曲部10Eは、出入口2と対応する部分だけに設けられている。そして、壁材見切り部10Cの上側に、壁5における垂下部10Bの幅方向外側の部分を形成する内側壁材29と外側壁材30が配置され、これらの内側壁材29と外側壁材30は、壁材見切り部10Cとは上枠部材10の幅方向反対側において、上枠部材10の上側にも配置されている。そして、壁材見切り部10Cの上側に配置された内側壁材29と外側壁材30は、図2における戸袋3の左側では、図2で示されている内側壁材21と外側壁材22となっている。
【0029】
また、上面部10Aにおける垂下部10Bとは反対側の幅方向の端部には、僅かに下方へ延びた下方延出部10Fが形成され、この下方延出部10Fの下端には、斜め上方であって、上記壁材見切り部10Cとは反対側の幅方向外側へ延出した傾斜延出部10Gが設けられている。これらの延出部10F,10Gは、図1で示されている出入口2と竪額縁部材13に対応するだけに設けられ、延出部10F、10G及び後述する点検カバー31と対応する高さ位置における戸袋3の上部箇所には、図1で示されている上下複数個の前記補強部材20のうち、最上部の補強部材20Bが配置されている。
【0030】
図4で示されている下方延出部10Fの下方への延出量は小さいため、この下方延出部10Fの下側は、上枠部材10の開口部10Hとなっており、垂下部10Bとは上枠部材10の前記幅方向とは反対側に形成されているこの開口部10Hから、上枠部材10の内部空間に収納配置されている扉体移動機構についての点検及び整備を含む各種の作業を行えるようになっている。
【0031】
通常時の開口部10Hは点検カバー31で塞がれており、この点検カバー31は、上端に斜め下向きに形成され、上枠部材10の傾斜延出部10Gに係止される係止部31Aと、この係止部31Aから鉛直又は略鉛直下向きに延びている正面部31Bと、この正面部31Bの下端から上枠部材10の内側へ水平又は略水平に屈曲している下面部31Cと、この下面部31Cの先端から立ち上がった立上部31Dとを有する。これらの係止部31Aと正面部31Bと下面部31Cと立上部31Dは、戸先側の竪枠部材11の側から見た上枠部材10の側面図である図5にも示され、係止部31Aと下面部31Cと立上部31Dにより、板金の折り曲げで形成されている点検カバー31の全体の剛性が確保されている。また、点検カバー31の形状を示す図5のS7矢視図である図7に示されているように、立上部31Dは、図1及び図7の左右方向であって上枠部材10の長手方向でもある点検カバー31の長手方向の全長に渡って設けられておらず、点検カバー31には、この長手方向の両端部において、立上部31Dが存在していない立上部欠損部31Eが設けられている。
【0032】
前述の開口部10Hを塞いでいるときの点検カバー31は、図4及び図5で示されているとおり、係止部31Aが上枠部材10の傾斜延出部10Gに係止され、これにより点検カバー31の重量が上枠部材10で支持され、また、図7で示されているとおり、下面部31Cが、戸先側の竪枠部材11と竪額縁部材13に取り付けられているブラケットになっていて、点検カバー31の長手方向の両端部と対応する位置に設けられているブラケット32,33にねじ部材34,35で止められている。ブラケット32,33は、下面部31Cと上側で対面するねじ止め部32A,33Aを有し、下面部31Cの孔36,37に下から上に貫通させたねじ部材34,35の雄ねじ軸部を、ねじ止め部32A,33Aに形成されている雌ねじ孔38,39に螺合することにより、下面部31Cがブラケット32,33にねじ部材34,35で止められる。
【0033】
また、前述した扉体移動機構についての点検等の作業を行うために、点検カバー31を取り外して上枠部材10の上記開口部10Hを開けるときには、ねじ部材34,35を取り外し、これにより、点検カバー31は、上端の係止部31Aを中心に上枠部材10の内外方向である図6のA方向に揺動可能となるため、上枠部材10の外側方向へ揺動させることにより、係止部31Aを上枠部材10の傾斜延出部10Gから抜き取る。このようにして点検カバー31を取り外す際において、点検カバー31には、立上部31Dが存在していない図7の立上部欠損部31Eが点検カバー31の長手方向の両端部に設けられているため、言い換えると、ねじ部材34,35が配置される位置と対応する下面部31Cの先端の箇所は、立上部31Dが存在しない立上部欠損部31Eとなっているため、この点検カバー31の取り外し作業を、ブラケット32,33のねじ止め部32A,33Aと立上部31Dとが干渉することなく行える。
【0034】
また、ねじ部材34,35は、点検カバー31の下面部31Cとブラケット32,33のねじ止め部32A,33Aとに下から上に挿入されるものであるため、点検カバー31の取り付け作業、取り外し作業のために作業者がねじ部材34,35について行う作業は、前記出入口2に立ったこの作業者が手を上に伸ばすことによって行え、この作業を容易に行える。
【0035】
さらに、たとえ、何かの原因でねじ部材34,35が脱落することがあっても、点検カバー31の上端の係止部31Aは上枠部材10の傾斜延出部10Gに係止され、点検カバー31の下面部31Cの上側には、ねじ部材34,35の雄ねじ軸部を螺合させるブラケット32,33のねじ止め部32A,33Aが存在するため、点検カバー31が上下の振動等によって上枠部材10から外れてしまうことを有効に防止することができる。
【0036】
また、本実施形態では、図4及び図5で示されているように、上枠部材10の傾斜延出部10Gには、点検カバー31の係止部31Aがこの傾斜延出部10Gに直接接触することを防止するゴムや合成樹脂等による冠部材40が被せられ、これにより、上枠部材10と点検カバー31の材料である金属同士が直接接触して点検カバー31の取付作業時や取外作業時等において異音が発生することや、上枠部材10及び/又は点検カバー31に傷が生ずること等を防止している。
【0037】
また、図4で示されているように、点検カバー31の正面部31Bの裏面(正面部31Bにおける上枠部材10の内側の面)に、例えば、ハット形状の断面が点検カバー31の長手方向に連続している補強部材41を接着剤や接着テープ等の結合具で結合し、これにより、正面部31Bの強度を補強し、正面部31Bの上下寸法や左右寸法が大きくても、正面部31Bに撓み変形等が発生しないようにしてもよい。
【0038】
次に、上枠部材10の内部空間に収納配置されている前述の扉体移動機構について説明する。図8は、点検カバー31を取り外して示すこの扉体移動機構の正面図である。
【0039】
上枠部材10の内部には、この上枠部材10の略全長に渡る長さとなったガイドレール45が配置され、扉体1の直線の開閉移動を案内するガイド部材となっているこのガイドレール45は、図4に示されているように、上下に延びる基端部45Aを有する略L字形状であり、基端部45Aが上枠部材10の前記垂下部10Bにビス等の結合具46で結合されている。扉体1には、この扉体1の上方において、ガイドレール45に転動自在に係合しているローラ47がブラケット48を介して取り付けられ、このローラ47は、図8で示されているとおり、上枠部材10の長手方向である扉体1の開閉移動方向に2個設けられている。このため、本実施形態に係る引き戸装置は、扉体1が2個のローラ47によってガイドレール45から吊り下げられた上吊り式の引戸装置になっている。
【0040】
また、上枠部材10の内部空間には、扉体1を自動的に閉じ移動させるための渦巻きばね式の閉鎖装置50が配置され、この閉鎖装置50は、上枠部材10における戸先側の竪枠部材11に近い端部の近傍において、上枠部材10の垂下部10Bやガイドレール45の基端部45Aにビス等の結合具で結合されている。閉鎖装置50からは、この閉鎖装置50の内部に設けられている渦巻きばね機構に一端が連結された合成樹脂製等の紐状部材51が導出され、この紐状部材51の他端は、上記2個のローラ47のうち、戸先側のローラ47を回転自在に保持しているブラケット48に連結されている。扉体1の戸先側の端部となっている扉体1の先端が戸先側の竪枠部材11に当接していて扉体1が前記出入口2を全閉としているときに、図1で示す把持部52を握った手によって扉体1を開き移動させると、閉鎖装置50から繰り出される紐状部材51により、上記渦巻きばね機構の渦巻きばねにばね力が蓄圧され、把持部52から手を離すと、この蓄圧されたばね力によって扉体1が自動的に全閉位置まで閉じ移動する。このため、本実施形態に係る引戸装置は、自動閉鎖式の引戸装置である。
【0041】
また、上枠部材10の内部空間には、図8で示すシリンダ式の制動装置53が、ピストンロッド53Aを戸尻側の竪枠部材12の側に向けて配置され、この制動装置53は、ガイドレール45の基端部45Aにブラケット54で取り付けられている。扉体1の上記2個のローラ47のうち、戸尻側のローラ47を回転自在に保持しているブラケット48には、ピストンロッド53Aの先端部と扉体1の開閉移動方向に対向する当接部材55が取り付けられ、これらのピストンロッド53Aの先端部と当接部材55とのうち、一方には、他方と吸着力等で接離自在となったマグネット等による接離部材56が設けられている。
【0042】
全閉位置に達している扉体1を上述のように開き移動させたときには、先端部が当接部材55に接離部材56の吸着力で接続状態となっているピストンロッド53Aは伸び作動し、ピストンロッド53Aの伸び作動の限度を越えて扉体1が開き移動すると、接離部材56において当接部材55はピストンロッド53Aから分離する。また、扉体1が閉じ移動すると、その途中で当接部材55は接離部材56を介してピストンロッド53Aの先端部に当接し、扉体1が閉じ移動を継続することにより、ピストンロッド53Aは縮み作動を始め、制動装置53には、このときにシリンダ式の制動装置53の内部の空気を絞りながら排出するバルブが設けられているため、扉体1は、このバルブの絞り作用による制動力を受けながら、上記閉鎖装置50で低速で全閉位置まで自動移動する。
【0043】
なお、上記バルブは、ピストンロッド53Aが伸び作動するときには、空気を絞らずにシリンダ式の制動装置53の内部に流入させるタイプのものであるため、全閉位置からの扉体1の開き移動を、閉鎖装置50の上記渦巻きばね機構の渦巻きばねにばね力を蓄圧させるだけの小さな力によって行える。
【0044】
なお、以上のように、全閉位置へ向かって閉じ移動しているときの扉体1に制動力を作用させるための装置は、上記シリンダ式の制動装置53に限定されず、例えば、扉体1と上枠部材10とのうちの一方に取り付けられたラック部材と、他方に取り付けられ、このラック部材に噛合するピニオン部材を有するロータリー式のダンパー装置とを含んで構成され、扉体の全閉位置へ向かう閉じ移動によってピニオン部材がラック部材で回転することにより、ロータリー式のダンパー装置の内部に充填されている粘状物質等によって制動力が生ずるものでもよい。
【0045】
図1に示されているとおり、戸尻側の竪枠部材12の下部には、扉体1の開閉移動方向において扉体1と対向しているストップ部材57が取り付けられている。ゴム等の弾性材料からなるこのストップ部材57は、扉体1の開き移動限位置である後退限位置を規定するものであり、扉体1の戸尻側の端部がストップ部材57に当接したときに、扉体1は後退限位置に達する。図9で示すように、扉体1には、板ばねで形成されていて、扉体1の戸先側の端部の側へ延びるにしたがって上枠部材10の前記垂下部10Bの側へ近づく係止部材58が取り付けられ、また、垂下部10Bには、被係止部材59が取り付けられている。この被係止部材59には、扉体1の開閉移動方向に離れていて、扉体1に近づくにしたがって互いの間隔が小さくなる2個の傾斜面59A、59Bが形成されており、係止部材58の先端の屈曲部58Aが傾斜面59Aを係止部材58の弾性撓み変形によって乗り越えて、図9で示されているように傾斜面59Bに係止したときに、扉体1は上記ストップ部材57で規定される後退限位置に達し、傾斜面59Bへの屈曲部58Aの係止作用により、扉体1はこの後退限位置に停止する。
【0046】
このため、係止部材58と被係止部材59により、扉体1を後退限位置に停止させるための停止装置60が構成されている。
【0047】
そして、図1で示した把持部52を握った手で扉体1に閉じ移動力を付与すると、係止部材58の弾性撓み変形によって屈曲部58Aは傾斜面59Bを乗り越え、扉体1は、前述したように、閉鎖装置50の渦巻きばね機構の渦巻きばねに蓄圧されたばね力等により、前述したように閉じ移動する。
【0048】
本実施形態では、ストップ部材57は、図1に示されているように、戸尻側の竪枠部材12の長手方向である上下方向において、ガイドレール45と同じ高さの箇所又はガイドレール45に近い上部の箇所ではなく、前記床4に近い下部の箇所、例えば、この竪枠部材12の上下中央部よりも下側の箇所に配置されている。このため、扉体1が上枠部材10の内部に配設されたガイドレール45から吊り下げられた上吊りの扉体となっていても、この扉体1が後退限位置まで高速で開き移動し、これによって扉体1が大きな力でストップ部材57に衝突しても、ガイドレール45に係合しているローラ47が配置された扉体1の上方を中心として扉体1が扉体開閉移動方向に大きく振れ運動することをなくすことができる。
【0049】
なお、図1で示すように、前記戸袋3が内部に設けられている前記壁5の部分に、戸袋3の内部を掃除するための掃除用開口部61を設ける場合には、蓋で開閉されるこの掃除用開口部61の範囲内又はこの範囲に近い位置(例えば、掃除用開口部61から手が届く位置)にストップ部材57を配置することが好ましい。これによると、掃除用開口部61から挿入した手等によってストップ部材57についてのメインテナンス作業等も行えることになる。
【0050】
また、図1で示されているように、扉体1が開閉移動する移動経路における前記竪額縁部材13の配置位置と対応する位置、言い換えると、前述した幅木14における戸先側の竪枠部材11の側の端部には、ガイドローラ62が配置されている。このガイドローラ62は、図4で示されているとおり、下方に向かって開口している扉体1の下端部に挿入され、扉体1の前記ガイドレール45で案内される開閉移動は、扉体1の下端部がガイドローラ62で案内されながら行われる。
【0051】
図3で示されているように、戸袋3における出入口2の側の端部に配置されているために、戸袋3における出入口2側の見切り部材となっているそれぞれの竪額縁部材13には、竪額縁部材13と扉体1との間隔を小さくし、これらの竪額縁部材13と扉体1との隙間に指等が挟まってしまうことを防止するための指詰め防止部材65が取り付けられている。図10は、この指詰め防止部材65の部分の拡大平面図である。
【0052】
ゴムや軟質合成樹脂等の弾性材料又は軟質材料で形成されているこの指詰め防止部材65は、扉体1の側、すなわち戸袋3の内外側のうちの内側の柔軟部65Aと、この柔軟部65Aの後側、すなわち戸袋3の内外側のうちの外側のベース部65Bとを有し、柔軟部65Aの内部には空洞部65Cが設けられ、ベース部65Bには割り溝65Dが形成され、これらの柔軟部65A、ベース部65B、空洞部65C、割り溝65Dは、上下方向であって、竪額縁部材13の長手方向ともなっている指詰め防止部材65の長手方向に連続している。竪額縁部材13を構成する図3で説明した内部材23と外部材24のうち、外部材24には戸袋3の内側へ延出した内側延出部24Bが設けられており、この内側延出部24Bを割り溝65Dに挿入することにより、指詰め防止部材65は竪額縁部材13に取り付けられる。
【0053】
内側延出部24Bは、戸袋3の内側の厚肉部66と、戸袋の外側の薄肉部68と、これらの厚肉部66と薄肉部68の間の段差部67とを有し、これらの厚肉部66と薄肉部68と段差部67は、外部材24の材料である板材を折り返して2枚重ね状態とすることにより形成されている。また、指詰め防止部材65の割り溝65Dは、このような厚肉部66と薄肉部68と段差部67に対応した形状に形成されている。このため、指詰め防止部材65が外部材24の内側延出部24Bから扉体1の側へ抜け出すことは、段差部67の割り溝65Dへの係止作用によって防止される。また、指詰め防止部材65と扉体1との離間距離L1は、指詰め防止部材65の内側延出部24Bへの挿入深さL2よりも小さいため、たとえ指詰め防止部材65が内側延出部24Bから抜け出そうとしても、指詰め防止部材65が内側延出部24Bから完全抜け出す前に、指詰め防止部材65の先端が扉体1に当接することになり、このため、指詰め防止部材65が内側延出部24Bから抜け落ちることはない。
【0054】
また、指詰め防止部材65を内側延出部24Bに取り付ける作業は、内側延出部24Bを割り溝65Dに挿入する作業だけによって簡単に行え、ビス等の特別の取付手段を必要とせず、ビスの締付作業も不要である。また、竪額縁部材13についてのメインテナンス作業等を行うために、扉体1をガイドレール45から取り外した後に、指詰め防止部材65を内側延出部24Bから抜き取る場合には、指詰め防止部材65はゴムや軟質合成樹脂等の弾性材料又は軟質材料で形成されているため、指詰め防止部材65の弾性変形により、この抜取作業を容易に行える。
【0055】
図8で示されているように、前記上枠部材10の内部には、戸先側の竪枠部材11の側の端部において、端部材70が配置され、この端部材70によって上枠部材10と戸先側の竪枠部材11とが結合されている。
【0056】
図11は、端部材70の全体斜視図である。板材の折り曲げによって形成されているこの端部材70は、戸先側の竪枠部材11の側の前面部70Aと、この前面部70Aの上下両端から戸尻側の竪枠部材12の側へ延出している上面部70B及び下面部70Cと、前面部70Aに、上枠部材10の幅方向外側への屈曲部70Dを介して接続されている側面部70Eとを有する。図5から分かるように、上面部70Bは、ビス等の結合具71によって上枠部材10の上面部10Aに結合されているとともに、側面部70Eは、ビス等の結合具72によって上枠部材10の垂下部10Bに結合されている。また、図8に示されているとおり、前面部70Aは、ビス等の結合具73によって戸先側の竪枠部材11に結合されている。これにより、上枠部材10と戸先側の竪枠部材11は、これらの上枠部材10と竪枠部材11との間の中間部材となっている端部材70を介して大きな強度により結合されている。
【0057】
図1で示されているとおり、扉体1には、前述した把持部52の上部において、扉体1を全閉位置に施錠するための施錠装置75が配置されている。図12はこの施錠装置75の部分の拡大正面図である。施錠装置75は、扉体1の一方の面、すなわち、図1及び図12では手前側の面からのキー操作と、扉体1の他方の面からのサムターン操作とによって昇降動する昇降部材76を有し、施錠装置75の雌ねじ部材になっているこの昇降部材76の雌ねじ部76Aに、バー状のロック部材となっているロックバー77の下端部に形成されている雄ねじ部77Aが螺入されることにより、ロックバー77は、昇降部材76にねじ込みで連結されている。ロックバー77は、扉体1の戸先側の端部において、昇降部材76からゴム等の弾性材料で形成された振れ止め部材78の内部を貫通して上方へ延び、その先端部77Bは、扉体1の上面から少し突出している。
【0058】
扉体1が全閉位置に達しているときに、施錠装置75についての上記キー操作又はサムターン操作を行うと、昇降部材76の上昇によってロックバー77も上昇する。このときのロックバー77は、図11で説明した端部材70の下面部70Cに形成されている係合孔79の真下の位置にあるため、ロックバー77の上昇によってこのロックバー77の先端部77Bは、本実施形態の係合部となっている係合孔79に挿入係合する。
【0059】
これにより、扉体1は全閉位置にロックされることになり、このため、上枠部材10と戸先側の竪枠部材11とを結合するための結合部材となっている端部材70は、ロックバー77と協働して扉体1を全閉位置にロックして施錠するための部材を兼ねている。また、この端部材70は、上枠部材10及び竪枠部材11と共に、内側の一部に前記出入口2を形成する前記外枠組みのための部材となっており、しかも、開閉移動する扉体1に対して不動となった不動部材となっている。そして、係合孔79は、ロックバー77の先端部77Bが係合する端部材70における係合部になっている。施錠装置75についての上記とは逆のキー操作又はサムターン操作を行って昇降部材76を下降させると、ロックバー77の先端部77Bは係合孔79から抜けるため、扉体1を全閉位置から開き移動させることができる。
【0060】
なお、図11で示されているとおり、係合孔79は、端部材70の上面部70Bにも設けられている。これにより、図1で示されている上枠部材10とは左右勝手違いの上枠部材(図1で説明すると、点検カバーの配置位置が図1の点検カバー31の配置位置と同じであって、戸袋が出入口2の左側に配置され、この戸袋の配置位置が、図1の戸袋3とは出入口2に対して反対側に配置されている上枠部材)についても、端部材70を上下逆とすることにより、同じ端部材70を共通して用いることができるようになっている。
【0061】
また、図8において、係合孔79が形成されている端部材70の下面部70Cの下面の高さ位置を、前述した閉鎖装置50の下面及びガイドレール45の下面の高さ位置と同じにしてもよく、言い換えると、扉体1の開閉移動方向に並設されている端部材70の下面部70Cの下面と閉鎖装置50の下面とガイドレール45の下面のそれぞれの高さ位置を同じにしてもよい。これによると、扉体1が全閉位置に達する前に、施錠装置75の上述の操作でロックバー77を上昇させることがあっても、このロックバー77の先端部77Bが閉鎖装置50の下面やガイドレール45の下面に当接し、そのまま扉体1を全閉位置まで閉じ移動させることができる。
【0062】
なお、これと同様の作用効果は、閉鎖装置50の下面の高さ位置とガイドレール45の下面の高さ位置とを同じとし、これらの高さ位置よりも端部材70の下面部70Cの下面の高さ位置を高くすることによっても達成できる。
【0063】
図13は、図12のS13矢視図である。この図13で示されているように、扉体1の上面には、長孔80Aに挿入されたビス等の結合具81を緩めることにより、スライドさせることができる板状のスライド部材80が配置されており、このスライド方向は、扉体1の開閉移動方向、言い換えると、ロックバー77の長手方向と直交又は略直交する方向である。スライド部材80には、上記スライド方向に長孔状となった開口部82が形成され、この開口部82にロックバー77の先端部77Bが下から挿入され、この先端部77Bは開口部82から扉体1の上方へ突出している。この先端部77Bには、丸棒で形成されているロックバー77の外面の一部を、この実施形態では互いに円周方向反対側の2箇所を面取り加工することにより、平坦部83が形成されており、したがって、先端部77Bは、2個の平坦部83によって扁平化されている。これらの平坦部83は少なくとも先端部77Bに形成されていればよく、例えば、先端部7Bだけに形成してもよく、ロックバー77の全長又は略全長に形成してもよい。スライド部材80の開口部82の一部には、扁平化されている先端部77Bの形状及び寸法と適合する幅狭孔部82Aと、平坦部83が形成されていない丸棒のままのロックバー77の部分を挿入することができる丸孔部82Bとがスライド部材80のスライド方向に、言い換えると扉体1の開閉移動方向に並設されている。先端部77Bが幅狭孔部82Aに挿入されているときには、ロックバー77を回転させることはできないが、先端部77Bが、幅狭孔部82Aと連続している丸孔部82Bに挿入されたときには、ロックバー77を回転させることができる。
【0064】
すわなち、スライド部材80は、ロック部材77の先端部77Bが幅狭孔部82Aに挿入されているときに、このロック部材77が図12の施錠装置75のねじ部材となっている昇降部材76の雌ねじ部76Aに対してねじ込みの正逆回転方向へ回転してしまうことを阻止するための回転阻止部材となっており、幅狭孔部82Aは、この回転阻止部材の回転阻止部となっている。また、ロック部材77の先端部77Bが幅狭孔部82Aから丸孔部82Bに移行したときには、このロック部材77が昇降部材76の雌ねじ部76Aに対してねじ込みの正逆回転方向へ回転することは許容され、このため、丸孔部82Bは、上記回転阻止部材における回転許容部となっている。
【0065】
通常時のロックバー77の先端部77Bは、図13の(A)で示されているように、幅狭孔部82Aに挿入されている。このため、図12で説明したように、下端部の雄ねじ部77Aが昇降部材76の雌ねじ部76Aにねじ込みで連結されているロックバー77が、扉体1の開閉移動が繰り返されて行われるなどしてもねじ込みの正逆回転方向へ回転することはなく、これにより、扉体1の上面からの先端部77Bの突出量が変化してしまうことはなく、この突出量を適正量に維持することができる。
【0066】
一方、前述した外枠組みが施工される引戸装置の施工現場に扉体1を搬入したとき等のように、扉体1の上面からの先端部77Bの突出量を調整する場合には、結合具81を緩めることにより、図13の(B)に示されているように、先端部77Bと丸孔部82Bとが一致する位置までスライド部材80を移動させる。これにより、先端部77Bを挟持した工具等でロックバー77を回転させることができ、この回転により、雄ねじ部77Aが昇降部材76の雌ねじ部76Aに螺入しているロックバー77の先端部77Bは、扉体1の上面からの突出量が調整される。この調整作業後、スライド部材80を図13の(A)で示す位置まで戻して結合具81を締め付けることにより、ロックバー77は回転ができない状態となる。
【0067】
なお、スライド部材80を移動させず、先端部77Bを挟持した上記工具等によってロックバー77を、前述のゴム等の弾性材料で形成された図12の振れ止め部材78を弾性変形させながら扉体1の開き移動側へ撓み変形させ、これにより、先端部77Bを丸孔部82Bの位置まで移動させ、この後、上記工具等でロックバー77を回転させても、扉体1の上面からの先端部77Bの突出量を調整することができる。この場合には、結合具81及びスライド部材80についての作業を行う必要がないため、扉体1の前記ローラ47をガイドレール45から取り外すことなく、すなわち、扉体1をガイドレール45から吊り下げた状態のままにして、扉体1の上面からの先端部77Bの突出量を調整することができる。
【0068】
また、図13で示されているスライド部材80の開口部82には、幅狭孔部82Aと丸孔部82B以外の部分も形成されているが、この開口部を幅狭孔部と丸孔部だけからなるものとしてもよい。
【0069】
図14及び図15は、ロックバー77の先端部77Bが挿入係合する端部材70’の係合孔の位置を扉体1の開閉移動方向に変更できる実施形態を示す図であって、端部材70’を下から見た図である。この実施形態では、図14で示されているとおり、端部材70’の下面部70Cに形成されている係合孔79に欠損部79Aを形成し、この欠損部79Aにより、下面部70Cに、係合孔79を端部材70’の外部に連通させた連通部79Bを設ける。下面部70Cに取り付けられる板状の補助部材85には、ロックバー77の先端部77Bが挿入係合されるこの実施形態の係合部となっている係合孔86が形成されており、図15に示されているように、この係合孔86を連通部79Bの位置と一致させて補助部材85をビス等の結合具87で下面部70Cに取り付ける。これにより、係合孔86は、ロックバー77の先端部77Bが挿入係合される孔となり、結合具87を挿入する下面部70Cの孔を、この下面部70Cに扉体1の開閉移動方向に離れて形成された図14の孔84Aと孔84Bのどちらかとすることにより、扉体1を全閉位置にロックするための係合孔の位置を、実質的に扉体1の開閉移動方向に変更することができる。
【0070】
このようにロックバー77の先端部77Bが挿入係合する端部材70’の係合孔の位置を扉体1の開閉移動方向に実質的に変更することは、例えば、図1で示されている施錠装置75の扉体1における配置位置が扉体1の開閉移動方向へ変更される場合に行われる。
【0071】
なお、図15で示すビス等の結合具87が挿入される図14の補助部材85の孔85Aを、扉体1の開閉移動方向に長い長孔としておくことにより、ロックバー77の先端部77Bを挿入係合させる端部材70’の係合孔の位置を、扉体1の開閉移動方向へ微調整することができる。
【0072】
以上説明している引戸装置は、図4で前述した壁材29,30からなる壁5の厚さ寸法Tが異なる各種の施工現場に設置される。このように壁5の厚さ寸法Tが異なる施工現場においてそれぞれの引戸装置が設置されても、壁5の厚さ内における扉体1の配置位置は一定の基準位置Nに設定され、この基準位置Nは、例えば、壁5の厚さ方向の中央位置であり、前記施錠装置75のロックバー77が配置されている扉体1の厚さ方向の中央位置や、この扉体1がローラ47を介して吊り下げられているガイドレール45におけるローラ47が転動自在に係合しているローラ係合部の位置を、基準位置Nと一致させなければならない。
【0073】
厚さ寸法Tが異なるそれぞれの壁5に対処するために、この厚さ寸法Tの方向である幅方向の寸法、すなわち幅寸法が異なる複数個の上枠部材10を用意するが、これらの上枠部材10においては、基準位置Nから前述した垂下部10Bまでの上枠部材10の幅方向における距離Wを同じにする。すなわち、厚さ寸法Tが異なる壁5に配置されるそれぞれの上枠部材10では、基準位置Nから垂下部10Bまでの距離Wは同じになるが、上面部10Aの幅寸法と、前記壁材見切り部10Cの幅寸法とが異なることになる。
【0074】
このように厚さ寸法Tが異なる壁5に配置されるそれぞれの上枠部材10について、基準位置Nから垂下部10Bまでの距離Wを同じにしておき、そして、扉体1に配置されている施錠装置75のロックバー77の先端部77Bが挿入係合する係合孔79を備えている端部材70の前記側面部70Eを結合具72により、図5で示されているように、垂下部10Bに直接取り付けると、端部材70の幅方向の寸法の設定により、幅寸法が異なるそれぞれの上枠部材10について、係合孔79の位置と、扉体1のロックバー77の位置と、基準位置Nとを自ずと一致させることができる。
【0075】
すなわち、厚さ寸法Tが異なる壁5に配置されるそれぞれの上枠部材10について、端部材70を共通化でき、このため、厚さ寸法Tが異なる壁5ごとにこれらの壁5の厚さ寸法Tに応じたスペース部材等を用意し、これらのスペース部材等を介して端部材70をそれぞれの上枠部材10の垂下部10Bに取り付ける必要がなくなる。
【0076】
また、図4で示されているように、ガイドレール45の基端部45Aをビス等の結合具46で垂下部10Bに直接取り付けることにより、ガイドレール45の幅方向の寸法の設定により、幅寸法が異なるそれぞれの上枠部材10について、ガイドレール45における扉体1のローラ47が転動自在に係合しているローラ係合部の位置、言い換えると、壁5の内部での扉体1の配置位置と、基準位置Nとを自ずと一致させることができる。
【0077】
すなわち、この場合にも、厚さ寸法Tが異なる壁5に配置されるそれぞれの上枠部材10について、ガイドレール45を共通化できるのであり、このため、この場合にも、厚さ寸法Tが異なる壁5ごとにこれらの壁5の厚さ寸法Tに応じたスペース部材等を用意し、これらのスペース部材等を介してガイドレール45をそれぞれの上枠部材10の垂下部10Bに取り付ける必要がなくなる。
【0078】
本実施形態では、図4で示されているように、上枠部材10の垂下部10Bの外面には、前記壁材見切り部10Cの突出方向へ張り出した壁材受け部材88が設けられている。この壁材受け部材は板材の折り曲げ品であって、上枠部材10の長手方向の寸法は短いものであり、このような壁材受け部材88を上枠部材10の長手方向に複数個設ける。上枠部材10の壁材見切り部10Cの上側に配置された前述の内側壁材29と外側壁材30のうち、外側壁材30は、壁材受け部材88に当てられてビス等の結合具89でこの壁材受け部材88に結合され、壁材受け部材88が配置されている箇所には、内側壁材29は配置されない。このため、壁材受け部材88が配置されている上枠部材10の長手方向の箇所は、内側壁材29が配置されていない部分となっており、本実施形態によると、このような部分を、上記結合具89の先端部や、図4で示されているガイドレール45の基端部45Aを垂下部10Bに結合するための前記結合具46の先端部、さらには、図5で示されている端部材70の側面部70Eを垂下部10Bに結合するための結合具72の先端部を突出させることができる空間部とすることができる。
【0079】
これにより、これらの結合具89,46,72を所定長さ分まで充分に壁材受け部材88や垂下部10Bの厚さ方向に侵入させた状態とすることができ、結合具89,46,72で壁材受け部材88や垂下部10Bに結合される部材の結合強度を大きくすることができる。
【0080】
次に、上枠部材10と、戸先側の竪枠部材11と、竪額縁部材13とを位置合わせてしてこれらの上枠部材10、戸先側の竪枠部材11、竪額縁部材13を組み立てるための構造について説明する。図16は、端部材70が取り付けられているときの上枠部材10だけの正面図であり、図17は図16のS17矢視図であって、上枠部材10を下から見た図である。
【0081】
図16及び図17で示されているとおり、上枠部材10の図4で説明した下方延出部10F及び傾斜延出部10Gには、戸先側の竪枠部材11の側の端部の近くにおいて、上枠部材10の幅方向外側から内側へ切り込まれたスリット90が形成されている。また、上枠部材10の図4で説明した壁材見切り部10C及び起立部10Dにおける竪枠部材11の配置部分に相当する箇所は、図17に示されているように、図4で説明した屈曲部10Eを残して切除され、これにより、竪枠部材11には、戸先側の竪枠部材11の側に開口した凹部91が形成され、この凹部91から、上枠部材10の前記垂下部10Bには、上枠部材10の幅方向外側から内側へ切り込まれたスリット92が形成されている。上枠部材10の長手方向と幅方向とに直交又は略直交する方向になっている上下方向は、上枠部材10の厚み方向となっており、上枠部材10の幅方向の深さを有するスリット90,92は、この厚み方向の長さを有する下方延出部10F及び傾斜延出部10Gと垂下部10Bとに形成されているため、これらのスリット90,92は、上枠部材10の厚み方向への長さを有している。
【0082】
スリット90,92によって上枠部材10と位置合わせされる戸先側の竪枠部材11は、図1で示されているように、上枠部材10の厚み方向を長手方向とする部材となっており、また、図3で示されているように、板材の折り曲げ品であるこの竪枠部材11は、扉体1の厚さ方向に2個配置されている竪額縁部材13と扉体1の開閉移動方向に対向している2個の前面部93,94を有し、これらの前面部93,94の間は、扉体1とは反対側へ窪んだ凹部95となっている。そして、幅方向が上枠部材10の幅方向と同じ方向になっているこの竪枠部材11の上端の形状は、図4及び図5で示されている壁材見切り部10C及び屈曲部10Eを含む上枠部材10の側面形状と略対応する形状となっている。
【0083】
図18には、上枠部材10と竪枠部材11とを位置合わせして組み立てた状態が、図17と同じく上枠部材10の下から見た図として示されている。上枠部材10に対して竪枠部材11を上枠部材10の下側から行うこの位置合わせ組み立て作業は、竪枠部材11の凹部95の内側に、上枠部材10に前記結合具71,72で結合されている端部材70を挿入しながら、竪枠部材11の前面部93をスリット90に、前面部94をスリット92にそれぞれ挿入して行われる。この後、竪枠部材11と端部材70とを前記結合具73で結合する。
【0084】
この位置合わせ組み立て作業を、図8のS19矢視の方向から見た図として竪枠部材11が示され、かつ上枠部材10が2点鎖線で示されている図19によって具体的に説明すると、竪枠部材11の前面部93の上端には、スリット90に挿入される突出部93Aが形成され、前面部94には、スリット92に挿入される突出部94Aが形成され、これらの突出部93A,94Aは下からスリット90,92に挿入される。突出部93Aと94Aの間は、上記凹部95の上端面が含まれる窪み面95Aとなっており、この窪み面95Aは、上枠部材10の上面部10Aの下面に接触又は僅かな隙間をあけて対面する。また、前面部94には、突出部94Aよりも上枠部材10の幅方向外側において、大きく陥没した陥没部94Bが形成され、この陥没部94Bの上面94Cは、上枠部材10に前記凹部91を形成する際に残されている屈曲部10Eの下面に接触又は僅かな隙間をあけて対面する。
【0085】
以上のように突出部93A,94Aを下からスリット90,92に挿入するとともに、窪み面95Aを上枠部材10の上面部10Aの下面に接触又は僅かな隙間をあけて対面させ、陥没部94Bの上面94Cを屈曲部10Eの下面に接触又は僅かな隙間をあけて対面させた後、竪枠部材11と端部材70とを前記結合具73で結合する。
【0086】
この上枠部材10と竪枠部材11との位置合わせ組み立て構造によると、上枠部材10と竪枠部材11の位置合わせは、上枠部材10のスリット90,92に竪枠部材11の前面部93,94の突出部93A,94Aを挿入することによって自ずと終了し、しかも、スリット90,92への突出部93A,94Aの挿入方向は、上枠部材10の厚み方向であって竪枠部材11の長手方向でもある下側から上側への方向となっているため、この位置合わせ作業を短時間で容易に行えることになる。また、スリット90,92は上枠部材10の厚み方向の長さを有するため、竪枠部材11の上枠部材10への組み付けを、竪枠部材11の振れが止められた状態で行うことができる。
【0087】
そして、スリット90,92によって上枠部材10と竪枠部材11とを位置合わせして組み立てた後は、これらの上枠部材10と竪枠部材11は、中間部材となっている端部材70を介して結合されるため、上枠部材10と竪枠部材11との大きな結合強度を確保することができる。
【0088】
なお、先に端部材70を竪枠部材11に結合具73で結合しておき、上枠部材10のスリット90,92に竪枠部材11の前面部93,94の突出部93A,94Aを挿入した後、端部材70を結合具71,72で上枠部材10に結合してもよい。
【0089】
図16及び図17で示されているとおり、上枠部材10の下方延出部10F及び傾斜延出部10Gには、図1で示されている竪額縁部材13の配置位置と対応する位置において、上枠部材10の幅方向外側から内側へ切り込まれたスリット100が形成され、また、図17に示されているように、上枠部材10の図4で説明した壁材見切り部10Cと起立部10Dと屈曲部10Eには、上枠部材10の幅方向外側から内側へ切り込まれたスリット101が形成されている。上枠部材10の幅方向の深さを有するこれらのスリット100,101は、上枠部材10の上述した厚み方向への長さを有している。
【0090】
また、図16で示されているとおり、上枠部材10には、スリット100,101の後側において、すなわちスリット100,101よりも扉体1の開き移動側において、ブラケット103,104が取り付けられている。
【0091】
図3で示されているように、扉体1の厚さ方向に2個配置されている竪額縁部材13のそれぞれは、互いに結合具や接着等で結合されていて、戸先側の竪枠部材11と同じく上下方向を長手方向とする内部材23と外部材24で構成されているが、これらの竪額縁部材13の内部材23の長さは、上枠部材10の全体の下面である壁材見切り部10Cまである。上下方向が長さ方向となっている上記2個の竪額縁部材13のうち、上枠部材10の下方延出部10F及び傾斜延出部10Gの側に配置される竪額縁部材13の外部材24は、図18で示されているように、前述した指詰め防止部材65が取り付けられる前記内側延出部24Bがスリット100に挿入されることにより、上枠部材10と位置合わせされてこの上枠部材10に組み付けられる。また、上枠部材10の壁材見切り部10C及び起立部10Dの側に配置される竪額縁部材13の外部材24も、図18で示されているように、指詰め防止部材65が取り付けられる内側延出部24Bがスリット101に挿入されることにより、上枠部材10と位置合わせされてこの上枠部材10に組み付けられる。
【0092】
この後、それぞれの外部材24の前述した後方延出部24Aは、ブラケット103,104にビス等の結合具105で結合される。
【0093】
スリット100,101は、上述のスリット90,92の場合と同じく、これらの外部材24の長手方向となっている長さを有しているため、外部材24の内側延出部24Bをスリット100,101に挿入する作業を容易に行える。また、上枠部材10とそれぞれの外部材24とをスリット100,101で位置合わせさせて組み合わせた後は、ブラケット103,104が中間部材となってこれらの上枠部材10と外部材24とが結合されるため、上枠部材10と竪額縁部材13とを大きな強度で結合することができる。
【0094】
図20は、図1で説明した幅木14と、扉体1の下端を案内するための図1及び図4で説明したガイドローラ62とを戸先側の竪枠部材11の側から見た側面図であり、図21は図20のS21矢視図であって、これらの幅木14とガイドローラ62を上から見た図である。また、図22は、幅木を構成する部材を上から見た図である。
【0095】
図22に示されているように、幅木14は、下側幅木部材110と上側幅木部材111で構成されている。下側幅木部材110は、図1で示した戸袋3の全長に渡る長さ、すなわち扉体1の開閉移動方向である戸袋3の幅全体に渡る長さを有し、この下側幅木部材110には、扉体1の厚さ方向である幅方向の寸法が大きい幅広部110Aと、幅方向の寸法が小さい幅狭部110Bとがあり、幅狭部110Bは、幅広部110Aにおける戸先側の竪枠部材11の側の端部に、言い換えると、図1で示した前記出入口2の側の端部に幅広部110Aと連続して設けられている。そして、幅広部110Aの幅方向両端には、幅狭部110Bから離れた位置から立上部110Cが形成されている。
【0096】
上側幅木部材111は、下側幅木部材110よりも扉体1の開閉移動方向の長さが短く、下側幅木部材110における出入口2の側の端部の上に重ねられて配置されるものである。また、上側幅木部材111には、下側幅木部材110の幅広部110Aよりも幅寸法が大きい幅広部111Aと、幅寸法が下側幅木部材110の幅狭部110Bと同じになっている幅狭部111Bとがある。幅広部111Aの幅方向両端には、立上部111Cが形成されているとともに、幅広部111Aには、下側幅木部材110の幅広部110Aと同じ幅寸法の間隔をあけて2個のスリット112が、幅広部111Aにおける出入口2の側の端部から扉体1の開き移動方向へ形成されている。
【0097】
下側幅木部材110と、この下側幅木部材111の端部の上に配置された上側幅木部材111は、図21で示すアンカー部材113によって図20で示す床4に固定され、また、上下に重なっているこれらの幅木部材110,111の幅狭部110B、111Bの上には、ガイドローラ62を回転自在に支持している支柱114のベース部材115が載せられ、このベース部材115は、床4まで達するアンカー部材116で幅木14に固定される。
【0098】
このように本実施形態では、扉体1の下端を案内するためのガイドローラ62は、床4に直接取り付けられておらず、戸袋3の下端において床4にアンカー部材113で結合されている幅木14に取り付けられているため、ガイドローラ62を床4に直接取り付けた場合と比較すると、ガイドローラ62の取付強度を大きくでき、また、床4の損傷を少なくでき、さらに、幅木14は、後述するように、スリット112で竪額縁部材13と位置合わせされるため、ガイドローラ62の取付位置精度を向上させることができる。
【0099】
また、幅木14へのガイドローラ62の取り付けは、幅木14を構成する2個の幅木部材110,111が上下に重ね合わせられている箇所で行われているため、幅木14におけるガイドローラ62の取付強度をより大きくすることができる。
【0100】
図20で示されているように、これらの幅木部材110,111の立上部110Cと111Cの間には、図2で説明した内側壁材21が配置され、立上部111Cの外側には、図2で説明した外側壁材22が配置され、内側壁材21は立上部110Cに、外側壁材22は立上部111Cにそれぞれビスやステープル等の結合具で結合される。
【0101】
また、図23で示されているとおり、上側幅木部材111に形成されているスリット112には、前述した竪額縁部材13を構成している前記内部材23のうち、図3で説明した後方延出部23Aが挿入される。これにより、竪額縁部材13は、スリット112を利用することによって幅木14に位置合わせされて組み合わせられる。スリット112は、下側幅木部材110と上側幅木部材111の厚さで形成されているため、幅木14の厚み方向である上下方向の長さを有し、スリット112のこの長さは、下側幅木部材110と上側幅木部材111とにより、実質的に2枚の板材の厚さに相当するものとなっているため、スリット112による幅木14と内部材23との位置合わせ組み立て作業を容易に行える。また、スリット112の長さ方向は、内部材23の長手方向である上下方向になっているため、スリット112への内部材23の挿入作業を容易に行える。
【0102】
竪額縁部材13の外部材24の後方延出部24Aは、図23で示されているように、上側幅木部材111の立上部111Cにビス等の結合具117で結合される。
【0103】
なお、前述した図18のスリット90,92による上枠部材10と竪枠部材11の位置合わせ組み立て作業と、端部材70による上枠部材10と竪枠部材11との結合作業は、例えば、図4で示した壁5の下地材27にアンカー部材28を介して上枠部材10を取り付けた後であって、竪枠部材11を、図3のまだ施工されていない壁5の下地材96にアンカー部材97を介して取り付ける前に行われる。
【0104】
また、これに限らず、例えば、図4で示した壁5の下地材27にアンカー部材28を介して取り付けられる前の上枠部材10のスリット90,92に竪枠部材11の前面部93,94の突出部93A,94Aを挿入してこれらの上枠部材10と竪枠部材11とを端部材70を介して結合し、上枠部材10に戸尻側の竪枠部材12を溶接又は結合具等で結合するとともに、上枠部材10のスリット100,101にそれぞれの竪額縁部材13の外部材24の内側延出部24Bを挿入してこれらの外部材24の後方延出部24Aをブラケット103,104にビス等の結合具105で結合し、それぞれの竪額縁部材13の内部材23の後方延出部23Aを幅木14のスリット112に挿入した後に、言い換えると、引戸装置の外枠組みを構成する部材同士の位置合わせ組み立て作業や結合作業が終了した後に、図4の壁5の下地材27にアンカー部材28を介して上枠部材10を取り付ける作業や、図3の戸先側の竪枠部材11を壁5の下地材96にアンカー部材97を介して取り付ける作業を行うようにしてもよい。
【0105】
本実施形態に係る扉体1の戸尻側の端部における下端には、図24で示されているように、ガイドローラ62を出入りさせることのできる開口部120が設けられている。このため、図1で示す扉体1の左右寸法である幅寸法が、戸先側の竪枠部材11から竪額縁部材13までの距離、すなわち扉体1で開閉される出入口2の開口幅の寸法よりも大きくても、竪額縁部材13を上述のように上枠部材10と幅木14との間に立設施工した後に、開口部120からガイドローラ62を扉体1の下端に挿入することにより、扉体1を前述したガイドレール45に吊り下げる作業を行える。
【0106】
図25は、扉体1の枠組みを形成する部材を示す正面図である。この枠組みは、上部材131と、前部材132と、後部材133と、下部材134とで構成されており、それぞれの部材131〜134は、ウェブ部131A〜134Aと、これらのウェブ部131A〜134Aにおける扉体1の厚さ方向両端のフランジ部131B〜134Bとからなるチャンネル材によって形成されている。上部材131と前部材132及び後部材133とは、上部材131の両端に形成された係合凹部131Cに、前部材132及び後部材133の上端に形成された係合凸部132C、133Cが係合することによって位置合わせされ、また、下部材134と前部材132及び後部材133とは、下部材134の両端に形成された係合凹部134Cに、前部材132及び後部材133の下端が係合することによって位置合わせされている。
【0107】
このため、これらの上部材131と前部材132と後部材133と下部材134は、ビス等の結合具を用いることなく、所定の位置関係で位置合わせされており、この位置合わせ作業後、図4で示されている扉体1の表面材140,141を、上部材131と前部材132と後部材133と下部材133とに接着するだけで扉体1を製造することができる。
【0108】
また、係合凹部131Cと係合凸部132C、133Cとの係合により、前部材132と後部材133の重量を上部材131によって支持することができるため、図25の扉体の枠組みは、前述したガイドレール45から吊り下げられる上吊り式の扉体1の枠組みとして有効である。また、上記表面材140,141の接着が剥がれることがあっても、係合凹部131Cと係合凸部132C、133Cとの係合により、上部材131と前部材132、後部材133とを結合状態とさせておくことができる。
【0109】
図26及び図26のS27矢視図である図27は、扉体の枠組みを形成する部材同士を、図25とは別の位置合わせ手段によって位置合わせする実施形態を示す。この枠組みも、上部材141と、前部材142と、後部材143と、下部材144とで構成されており、それぞれの部材141〜144は、ウェブ部141A〜144Aと、これらのウェブ部141A〜144Aにおける扉体1の厚さ方向両端のフランジ部141B〜144Bとからなるチャンネル材によって形成されている。
【0110】
上部材141と下部材144のウェブ部141A,144Aには、前部材142と後部材143の側へ突出した突出部141C、144Cが設けられ、これらの突出部141C、144Cを、図27で示されているように、前部材142と後部材143のウェブ部142A,143Aに形成された欠部142C、143Cに挿入することにより、上部材141と前部材142と後部材143と下部材144を、ビス等の結合具を用いることなく所定の位置関係で位置合わせすることができる。
【0111】
この実施形態の枠組みも引戸装置の扉体のための枠組みとして利用することができるが、この扉体が、上吊り式の扉体ではなく、下端に設けられたローラ等による車輪によって開閉移動する扉体である場合に、この実施形態の枠組みを有効に利用することができる。そして、この実施形態でも、扉体の表面材は、上部材141と前部材142と後部材143と下部材144とに接着されるが、この接着が剥がれることがあっても、上部材141と前部材142と後部材143と下部材144を、突出部141C、144Cと欠部142C、143Cとにより、互いに係合した関係にさせておくことができ、これらの部材141〜144に位置ずれが生ずることを防止できる。
【0112】
図28及び図28のS29−S29線断面図である図29で示す扉体201は、前パネル部201Aと後パネル部201Bで構成されており、これらのパネル部201Aと201Bを連結するために、パネル部201Aと201Bの連結部に、例えば、木材等による連結部材202を配置し、この連結部材202に、扉体201の厚さ方向外側に向かって開口した2個の溝203を形成している。図29で示されているように、連結部材202に接着で固定される前パネル部201Aと後パネル部201Bの表面材204〜207には、溝203に挿入される折り曲げ部204A〜207Aが形成され、連結部材202への表面材204〜207の接着と、溝203への折り曲げ部204A〜207Aの挿入とにより、パネル部201Aと201Bは連結されている。
【0113】
図30は、開閉体となっている2個の扉体301A、301Bを備えていて、これらの扉体310A,301Bがヒンジ301Cで回動自在に、言い換えると折れ曲がり自在に連結されている折れ戸装置の全体を示す正面図である。この折れ戸装置の外枠組みは、上枠部材310と、この上枠部材310の戸先側の端部に配置された竪枠部材311と、上枠部材310の戸尻側の端部に配置された竪枠部材312とで形成されているとともに、外枠組みの内側が扉体301A,301Bで開閉される開閉空間である出入口302となっている。
【0114】
上枠部材310の正面部は、上枠部材310に取り付け、取り外し可能となっている点検カバー331で通常時は塞がれている開口部となっており、図31は、上枠部材310の内部に収納配置されている扉体移動機構を示す正面図であって、点検カバー331を取り外して示した図である。この扉体移動機構は、上枠部材310の長手方向である左右方向に延びるガイドレール345を有し、扉体301Aの開閉移動を案内するガイド部材となっていて上枠部材310の内部に取り付け配置されているこのガイドレール345には、扉体301Aの上方に配置されたブラケット348に回転自在に2個取り付けられたローラ347が転動自在に係合して載せられている。ブラケット348は上下方向を軸方向とする連結軸349を介して扉体301Aに連結されているため、扉体301Aは、2個のローラ347によってガイドレール345から吊り下げられた上吊り式の扉体となっている。また、扉体301Aは、連結軸349を中心にブラケット348及びローラ347に対して回動自在となっている。
【0115】
扉体301Bの上面部分の戸尻側の端部には、上枠部材310に固定された軸受け部材350Aと、この軸受け部材350Aに回転自在に挿入されて扉体301Aに固定された上向きピン350Bとを有する上側支点機構350が設けられているとともに、扉体301Bの下面部分の戸尻側の端部には、図30に示されているように、上側支点機構350と同様の構造であって、前記開閉空間302の床304と扉体301Bとに跨って配置されている下側支点機構351が設けられている。
【0116】
このため、扉体301Bと共に出入口302を全閉としている扉体301Aを、図30で示されている把持部352により、扉体301Aの厚さ方向に押し操作又は引き操作すると、扉体301Aは、ローラ347がガイドレール345に案内されて戸尻側へ移動しながら連結軸349を中心に回動し、また、扉体301Aと扉体301Bとの間でヒンジ301Cによる回動が、言い換えると折れ曲がりが生じながら、扉体301Bは上下の支点機構350,351を中心に回動する。この状態が図32の2点鎖線で示されている。
【0117】
以上のガイドレール345に沿った扉体301A全体の戸尻側への移動と、扉体301Aの連結軸349を中心とする回動と、扉体301Aと扉体301Bとの間で生ずる回動と、扉体301Bの支点機構350,351を中心とする回動とにより、出入口302は開かれ、また、このように扉体301A、301Bを開き操作した後、把持部352によって扉体301Aを上記とは逆操作することにより、出入口302は閉じ移動した扉体301A、301Bで閉じられる。
【0118】
図31で示されているように、上枠部材310の内部には、2個のストップ部材360,361がガイドレール345の両端部近くにおいて取り付け配置されており、扉体301Aのブラケット348がストップ部材361に当接することにより、扉体301A、301Bは全開位置に達し、ブラケット348がストップ部材360に当接することにより、扉体301A、301Bは全閉位置に達する。
【0119】
図33は、把持部352の上部において扉体301Aに配置されている施錠装置375の部分の拡大正面図であり、施錠装置375は、扉体301Aの一方の面、すなわち、図30及び図33では手前側の面からのキー操作と、扉体301Aの他方の面からのサムターン操作とによって昇降動する昇降部材376を有し、施錠装置375の雌ねじ部材になっているこの昇降部材376の雌ねじ部376Aに、バー状のロック部材であるロックバー377の下端部に形成されている雄ねじ部377Aが螺入されることにより、ロックバー377は、昇降部材376にねじ込みで連結されている。ロックバー377は、扉体301Aの戸先側の端部において、昇降部材376からゴム等の弾性材料で形成された振れ止め部材378の内部を貫通して上方へ延び、その先端部377Bは、扉体1の上面から少し突出している。
【0120】
以上の状態は、扉体301Aの戸先側の端面の側面図である図34でも示されている。また、この実施形態のロックバー377は、下側の小径バー部362と上側の大径バー部363とによって形成されている。
【0121】
扉体1が全閉位置に達しているときに、施錠装置375についての上記キー操作又はサムターン操作を行うと、昇降部材376の上昇によってロックバー377も上昇する。このときのロックバー377の先端部377Bは、図34の2点鎖線で示されているように、上枠部材310の内部に配置された係合部材364に形成されている係合孔379に挿入係合し、これにより、扉体301Aと扉体301Bは全閉位置にロックされて施錠されることになる。そして、施錠装置375についての上記とは逆のキー操作又はサムターン操作を行って昇降部材376を下降させると、ロックバー377の先端部377Bは、この実施形態における係合部となっている係合孔379から抜けるため、扉体301Aと扉体301Bを全閉位置から開き移動させることができる。
【0122】
なお、この実施形態では、係合部材364は、図34で示されているように、上枠部材310の内面に結合された補強部材365に取り付けられている。
【0123】
また、係合部材364には、係合孔379の周囲において、具体的には、扉体301Aの戸先側の端部が全閉位置に向かって移動してくる方向と一致又は略一致している扉体301Aの厚さ方向の両側において、係合孔379に向かってロックバー377の先端部377Bを案内する傾斜部364Aが形成されている。このため、扉体301Aが正確に全閉位置に達していないときに施錠装置375の操作でロックバー377を上昇させても、先端部377Bを傾斜部364で案内させて係合孔379へ導くことができる。
【0124】
図35は、ロックバーの配置位置の部分を上から見た扉体301Aの平面図である。扉体301Aの上面近くには、ビス等の結合具381で板状の回転阻止部材380が取り付けられている。図36で示されているこの回転阻止部材380には孔382が形成され、この孔382に、図37で示されている合成樹脂製のブッシュ部材383の本体部383Aが挿入されるようになっている。本体部383Aには、ロックバー377が内部に挿入されるロックバー挿入孔384が形成され、また、ブッシュ部材383におけるロックバー377の長手方向の一方の端部である上端には、フランジ部383Bが形成されている。
【0125】
回転阻止部材380の孔382の直径は、ブッシュ部材383の本体部383Aの直径と同じ又は略同じであり、孔382には2個の凹部382Aが形成されているとともに、ブッシュ部材383の本体部383Aの外面には、これらの凹部382Aと対応する位置において2個の凸部385が形成されている。これらの凸部385は、図37のS38−S38線断面図である図38に示されている。また、ブッシュ部材383の本体部383Aの外面には、回転阻止部材380の孔382の内外方向の厚さが、言い換えると、ブッシュ部材383のロックバー挿入孔384の内外方向の厚さがフランジ部383Bに向かって次第に大きくなっている2個のテーパ部386が形成され、これらのテーパ部386は、図37のS39−S39線断面図である図39に示されている。図39で示されているように、これらのテーパ部386の厚肉側の端面386Aは、板状の回転阻止部材380の厚さに相当する間隔を開けてフランジ部383Aと対向している。
【0126】
凹部382Aと凸部385とを一致させてブッシュ部材383の本体部383Aを回転阻止部材380の孔382に上から大きな押圧力で押し込むと、ブッシュ部材383は合成樹脂製であるため、テーパ部386が弾性圧縮されながら本体部383Aは孔382に圧入され、テーパ部386の厚肉側の端面386Aが孔382を通過すると、弾性力で元の形状に復元した厚肉側の端面386Aとフランジ部383Bとで回転阻止部材380は挟着され、これらの端面386Aとフランジ部383Bとが抜け出し防止部となってブッシュ部材383は、回転阻止部材380に抜け出しが防止されて取り付けられる。また、凹部382Aへの凸部385の嵌合により、ブッシュ部材383の回転も阻止される。
【0127】
そして、この実施形態によると、ブッシュ部材383の本体部383Aの外面に形成されているテーパ部386は、回転阻止部材380の孔382の内外方向の厚さがフランジ部383Bに向かって次第に大きくなるものとなっているため、ブッシュ部材383の本体部383Aを、テーパ部386の弾性圧縮変形によって回転阻止部材380の孔382に容易に挿入することができる。
【0128】
図35で示されているとおり、ロックバー377のうち、少なくとも前記先端部377Bの外面には、丸棒で形成されているロックバー377の外面の一部を、この実施形態でも互いに円周方向反対側の2箇所を面取り加工することにより、平坦部393が形成されており、したがって、先端部377Bは、2個の平坦部393によって扁平化されている。また、ブッシュ部材383の本体部383Aに形成されているロックバー挿入孔384は、この扁平化された先端部377Bと適合する形状及び寸法となっている。
【0129】
このため、先端部377Bがロックバー挿入孔384に挿入されることにより、ロックバー377は、ブッシュ部材383を介して回転阻止部材380で回転が阻止されることになる。このため、ロックバー377の下端部の雄ねじ部377Aが施錠装置375の昇降部材376の雌ねじ部376Aにねじ込みで連結されていても、扉体1の開閉移動が繰り返されて行われた場合などに、ロックバー377がねじ込みの正逆回転方向へ回転することはなく、これにより、扉体301Aの上面からの先端部377Bの突出量が変化してしまうことを防止でき、この突出量を適正量に維持することができる。
【0130】
また、この実施形態のロックバー377と回転阻止部材380は、鉄等の金属で形成されており、これらの金属製のロックバー377と回転阻止部材380が、扉体301A,301Bが開閉移動しようとした時の振動等で互いに接触した場合には、この接触による異音が発生するが、ロックバー377と回転阻止部材380が本来接触する回転阻止部材380の孔382には、ブッシュ部材383が取り付けられ、このブッシュ部材383は上記金属よりも軟質の合成樹脂で形成されているため、この実施形態の緩衝部材となっているブッシュ部材383の緩衝作用により、上記異音の発生を防止することができる。
【0131】
図40は、扉体301Aの上面近くに、図13の実施形態と同様に、回転阻止部材となっているスライド部材480を配置した実施形態を示している。このスライド部材480は、長孔480Aに挿入されたビス等の結合具481を緩めることにより、ロックバー377の長手方向と直交又は略直交する方向にスライドさせることができる。そして、スライド部材480には、スライド方向に長孔状となった開口部482が形成され、この開口部482に、ロック部材377の扁平化されている先端部377Bの形状及び寸法と適合する幅狭孔部482Aと、平坦部393が形成されていない丸棒のままのロックバー377の部分を挿入することができる丸孔部482Bとが、連続した状態でスライド方向に並設されている。
【0132】
図40の(A)で示されているように、先端部377Bが回転阻止部となっている幅狭孔部482Aに挿入されているときには、ロックバー377の回転は阻止され、スライド部材480のスライドにより、図40の(B)で示されているように、先端部377Bが、回転許容部となっている丸孔部482Bに移行したときには、ロックバー377を回転させることができ、これにより、先端部377Bの扉体301Aからの突出量を調整することができる。
【0133】
また、この実施形態では、ロックバー377のうち、少なくとも先端部377Aの外面に、ロックバー377とスライド部材480の材料である金属よりも軟質となっている合成樹脂製の緩衝部材400を嵌合又は塗布等によって取り付けている。
【0134】
これにより、この実施形態では、緩衝部材400により、先端部377Bとスライド部材480とが直接接触することはなく、この接触で生ずる異音の発生をなくすことができる。
【0135】
図41で示されているスライド部材580も、長孔580Aに挿入されたビス等の結合具581を緩めることにより、ロックバー377の長手方向と直交又は略直交する方向にスライドさせることができる。そして、スライド部材580には、スライド方向に長孔状となった開口部582が形成され、この開口部482に、ロック部材377の扁平化されている先端部377Bの形状及び寸法と適合する幅狭孔部582Aと、平坦部393が形成されていない丸棒のままのロックバー377の部分を挿入することができる丸孔部582Bとが、連続した状態でスライド方向に並設されている。
【0136】
また、この実施形態では、幅狭孔部582Aは、開口部582の一部に、ロックバー377とスライド部材580の材料である金属よりも軟質となっている合成樹脂製の緩衝部材500を嵌合又は塗布等で取り付けることにより、形成されている。
【0137】
図41の(A)で示されているように、ロックバー377の先端部377Bが回転阻止部となっている幅狭孔部582Aに挿入されているときには、ロックバー377の回転は阻止され、スライド部材580のスライドにより、図41の(B)で示されているように、先端部377Bが、回転許容部となっている丸孔部582Bに移行したときには、ロックバー377を回転させることができ、これにより、先端部377Bの扉体301Aからの突出量を調整することができる。
【0138】
そして、この実施形態では、先端部377Aが幅狭孔部582Aに挿入されているときには、この幅狭孔部582Aには緩衝部材500が取り付けられているため、先端部377Bとスライド部材580とが直接接触することが防止され、この接触による異音の発生をなくすことができる。
【0139】
なお、図30や図31等で示した折れ戸装置のガイド部材となっているガイドレール345の上枠部材310への取り付けや、点検カバー331の上枠部材310への取り付けのための構造等は、図4〜図7等で示した引戸装置のガイド部材となっているガイドレール45の上枠部材10への取り付けや、点検カバー31の上枠部材10への取り付けのための構造等と同じ又は略同じにすることができる。
【0140】
なお、以上説明した引戸装置や折れ戸装置の扉体1,201,301A,301Bの内部には耐火材料等からなる芯材を詰め込んでもよく、詰め込まなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、例えば、上吊り式の引戸装置のように、開閉体が収納される戸袋を備えている開閉装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の一実施形態に係る上吊り式の引戸装置の全体を示す正面図である。
【図2】図1のS2−S2線断面図である。
【図3】図1のS3−S3線断面図である。
【図4】図1のS4−S4線断面図である。
【図5】戸先側の竪枠部材の側から見た上枠部材の側面図である。
【図6】戸先側の竪枠部材の側から見た点検カバーの側面図である。
【図7】点検カバーの形状を示す図5のS7矢視図である。
【図8】図1の上枠部材の内部空間に収納配置されている扉体移動機構を図1の点検カバーを取り外して示した正面図である。
【図9】扉体を後退限位置に停止させるための停止装置を示す扉体の戸先側の端部の部分とその周辺の平面図である。
【図10】竪額縁部材に取り付けられている指詰め防止部材とその周辺の拡大平断面図である。
【図11】端部材の全体を示す斜視図である。
【図12】扉体に配設されている施錠装置の部分の拡大正面図である。
【図13】図12のS13矢視図であり、(A)は、スライド部材が施錠装置のロックバーの回転を阻止する位置にあるときの図で、(B)は、スライド部材がロックバーの回転を許容する位置にあるときの図である。
【図14】ロックバーの先端部が挿入係合する端部材の係合孔の位置を扉体の開閉移動方向に変更できる実施形態を示す図であって、端部材を下から見た図である。
【図15】図14の実施形態において、ロックバーの先端部が挿入係合する端部材の係合孔の位置を補助部材によって扉体の開閉移動方向に変更した場合を示す図であって、端部材を下から見た図である。
【図16】上枠部材と戸先側の竪枠部材と竪額縁部材とを位置合わせてしてこれらを組み立てるための構造について説明する図であって、端部材が取り付けられている上枠部材だけを示す正面図である。
【図17】図16のS17矢視図であって、図16の上枠部材を下から見た図である。
【図18】上枠部材と戸先側の竪枠部材と竪額縁部材とを位置合わせてしてこれらを組み立てたときであって、戸先側の竪枠部材と竪額縁部材を2点鎖線で示している上枠部材を下から見た図である。
【図19】戸先側の竪枠部材と上枠部材との組み合わせ状態を図8のS19矢視の方向から見た図であって、上枠部材を2点鎖線で示した図である。
【図20】幅木と、扉体の下端を案内するガイドローラとを戸先側の竪枠部材の側から見た側面図である。
【図21】図20のS21矢視図であって、幅木とガイドローラを上から見た図である。
【図22】幅木を構成するそれぞれの部材を上から見た図である。
【図23】幅木に形成されているスリットにより、2点鎖線で示す竪額縁部材を幅木に位置合わせしたときを示す図である。
【図24】扉体の戸尻側の端部における下端にガイドローラを出入りさせることできる開口部が設けられていることを示す斜視図である。
【図25】扉体の枠組みを形成する部材を示す正面図である。
【図26】扉体の枠組みを形成する部材同士を、図25とは異なる位置合わせ手段で位置合わせする実施形態を示す図25と同様の図である。
【図27】図26のS27矢視図である。
【図28】別実施形態に係る扉体を示す正面図である。
【図29】図28のS29−S29線断面図である。
【図30】折れ戸装置の全体を示す正面図である。
【図31】図30の上枠部材の内部空間に収納配置されている扉体移動機構を図30の点検カバーを取り外して示した正面図である。
【図32】図30で示されている2個の扉体の開閉移動を2点鎖線で示した平面図である。
【図33】図30で示されている2個の扉体のうち、戸先側の扉体に配設されている施錠装置の部分の拡大正面図である。
【図34】図33で示されている扉体の戸先側の端面を示す側面図である。
【図35】図33及び図34で示されているロックバーの配置位置の部分を上から見た扉体の平面図である。
【図36】図35で示されている回転阻止部材だけの平面図である。
【図37】図35で示されている緩衝部材であるブッシュ部材の斜視図である。
【図38】図37のS38−S38線断面図である。
【図39】図37のS39−S39線断面図である。
【図40】ロックバーの先端部に緩衝部材を取り付けた実施形態を示す図13と同様の図で、(A)は図13の(A)に、(B)は図13の(B)に、それぞれ相当する図である。
【図41】回転阻止部材となっているスライド部材に緩衝部材を取り付けた実施形態を示す図13と同様の図で、(A)は図13の(A)に、(B)は図13の(B)に、それぞれ相当する図である。
【符号の説明】
【0143】
・ 201,301A,301B 開閉装置の開閉体である扉体
2 開閉空間である出入口
3 戸袋
13 戸袋の見切り部材である竪額縁部材
24B 延出部
65 指詰め防止部材
65D 割り溝
66 厚肉部
67 段差部
68 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉空間を開閉する開閉体がこの開閉空間を開放したときに収納される戸袋は、前記開閉空間側の見切り部材を含んで形成され、この見切り部材に、前記戸袋の内側へ突出する指詰め防止部材を取り付けることによって構成される開閉装置の指詰め防止構造であって、前記指詰め防止部材に割り溝が形成され、この割り溝に、前記見切り部材における前記戸袋の内側へ延出した延出部を挿入することによって前記指詰め防止部材が前記見切り部材に取り付けられていることを特徴とする開閉装置の指詰め防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉装置の指詰め防止構造において、前記延出部は、前記戸袋の内側の厚肉部と、前記戸袋の外側の薄肉部と、これらの厚肉部と薄肉部の間の段差部とを有し、前記割り溝は、これらの厚肉部と薄肉部と段差部に対応した形状になっていることを特徴とする開閉装置の指詰め防止構造。
【請求項3】
請求項2に記載の開閉装置の指詰め防止構造において、前記厚肉部と前記薄肉部と前記段差部は、前記延出部の材料となっている板材を折り返して複数枚重ねとすることにより形成されていることを特徴とする開閉装置の指詰め防止構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の開閉装置の指詰め防止構造において、前記指詰め防止部材と前記開閉体との離間距離は、前記延出部への前記指詰め防止部材の挿入深さよりも小さくなっていることを特徴とする開閉装置の指詰め防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2007−186980(P2007−186980A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237213(P2006−237213)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】