説明

開閉装置

【課題】固定部材に対し可動部材が開閉動作する際に、可動部材が最大移動位置でバタつき難い構造を提供すると共に不動位置に発生する衝撃を抑制することであり、且つその構造を簡単な構成および少ない部品点数で達成する
【解決手段】固定部材2と、該固定部材2に対して開閉可能に設けられた可動部材3と、前記固定部材2と前記可動部材3の少なくとも一方の、前記可動部材3の前記固定部材2に対する閉止位置近傍と最大開放位置近傍の少なくとも一方に設けられ、前記固定部材2と前記可動部材3の少なくとも一方と接触して前記可動部材3の開放速度を抑制する摺動部材8と、を備えている開閉装置1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材に対し可動部材を開閉自在に支持する開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、開閉装置として、特願2003−115673号公報および特願2006−232262号公報で開示された構造が知られている。
【0003】
特願2003−115673号公報においては、回転軸にトーションバネを保持させることで、ケース蓋に開こうとするトルクを常に生じさせる構成が開示されている。
特願2006−232262号公報においては、第1プレートにシャフトを備え、シャフトに折曲げ部を形成し、第2プレートにはカラーを固設し、このカラーの内壁面に干渉部を備えるようにし、コンソールリッドが開き限界近傍に到達したときに、前記折曲げ部が前記干渉部に接触することで開閉装置としてのコンソールリッドの回動を制動する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−115673号公報
【特許文献2】特開2006−232262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特開2003−232262号公報の構成は、ケース蓋の開き操作が行なわれた場合、トーションバネの勢いでケース蓋が開くことになるが、開ききった後にケース蓋がバウンドするように戻り、それが複数回繰り返される、所謂バタつきが発生してしまう。このバタつきを無くすために前記のトーションバネのコイルスプリング力を調整することも考えられるが、そのような調整には時間と手間が相当に掛かってしまう。また、ケース蓋を勢いよく閉めることによってボックス本体に発生する衝撃による振動や異音が発生することがある。
【0006】
上記特開2006-115673号公報の構成は、前記特開2003−232262号公報の問題を解決することを目的としているが、シャフトに折曲げ部を形成したり、カラーの内壁面に干渉部を形成するのは、加工に手間がかかり、部品点数がふえてしまう。
【0007】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、固定部材に対し可動部材が開閉動作する際に、可動部材が最大開放位置でバタつき難い構造を提供すると共に閉止位置に発生する衝撃を抑制することであり、且つその構造を簡単な構成および少ない部品点数で達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
固定部材と、該固定部材に対して開閉可能に設けられた可動部材と、前記固定部材と前記可動部材の少なくとも一方の、前記可動部材の前記固定部材に対する閉止位置近傍と最大開放位置近傍の少なくとも一方に設けられ、前記固定部材と前記可動部材の少なくとも一方と接触して可動部材の開放速度を抑制する摺動部材と、を備えている開閉装置とした。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明は、固定部材と可動部材の少なくとも一方に摺動部材を備えており、可動部材が閉止位置から最大開放位置まで移動する際に、閉止位置近傍と最大開放位置近傍の少なくとも一方で摺動部材に接触して、その開放速度を抑制することができる。
そのため、簡単な構成且つ少ない部品点数で、固定部材に対し可動部材が開閉作動する際に、可動部材が最大開放位置近傍でバタつくことを抑制できると共に、閉止位置に発生する衝撃を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の開閉装置の分解斜視図。
【図2】本発明の開閉装置が閉止位置にある状態を示す斜視図。
【図3】本発明の開閉装置が最大開放位置に向かって開放途中状態にある状態を示す斜視図。
【図4】摺動部材とアーム部材が接触する状態を示す平面図。
【図5】本発明の開閉装置の最大開放位置にある状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。図1は本発明の開閉機構としてのヒンジ機構1の分解斜視図である。図1において、2は、固定部材としてのベース部材である。ベース部材2は、コンソールボックス等の収納体であれば収納部を有するボックス本体、電車の座席の背もたれの背面に配設されるテーブル装置であれば座席の背もたれの背面に取り付けられるが、取り付けられる対象物は、これらに限定されるものではない。ベース部材2は、対象物に固設するための図示しないビス等が挿通する孔2bが穿設された取り付け部2aが一対に備えられている。ベース部材2にはシャフト4が挿通される孔2cが穿設されている。ベース部材2の梁部2dの中央部には、コイルスプリング6の連結部6bが係合する係合部2eが設けられ、両端側には、アーム部材3のそれ以上の回動を阻止する、即ちアーム部材3の最大開放位置を規定するストッパ2fが形成されている。ベース部材2は、金属をプレス成形することによって形成されるが、要求される剛性が確保できれば、樹脂製であってもよい。
【0012】
図1において、3は、図示しない可動部材としてのアーム部材である。アーム部材3は、コンソールボックス等の収納体であれば収納部を有するボックス本体を開閉するドア本体、電車の座席の背もたれの背面に配設されるテーブル装置であればテーブル本体に取り付けられるが、取り付けられる対象物は、これらに限定されるものではない。アーム部材3は、対象物に固設するための図示しないビス等が挿通する孔3bが穿設された取り付け部3aが一対に備えられている。アーム部材3には、シャフト4が挿通される孔3cと、コイルスプリング6の端部6cに係合する係合部3dが設けられている。アーム部材3は、金属をプレス成形することによって形成されるが、剛性が確保できれば、樹脂製であってもよい。
【0013】
図1において、4は、ベース部材2に対しアーム部材3を回動可能に枢支する枢支部材としてのシャフトである。シャフト4には、一端側にベース部材2の孔2cより大径に設定されている抜止め部4aが形成されていると共に、他端側に抜け止め防止用のEリング7が係合する凹部4bが全周に亘って形成されている。シャフト4は金属製であるが、剛性を確保できれば樹脂製であってもよい。また、枢支部材はシャフトではく、例えばベース部材2とアーム部材3の一方に軸部を形成し、他方に該軸部が挿通する孔を設けるようにしてもよい。
【0014】
図1において、5は、ベース部材2とアーム部材3との間に配設され、ベース部材2に対するアーム部材3の位置決めに用いられると共に、ベース部材2に対しアーム部材3が回動する際に適度な摺動抵抗を伴って回動できるよう作用するワッシャーである。ワッシャー5は、適度な摺動抵抗を確保するためには樹脂製であることが望ましい。また、ベース部材2とアーム部材3が製造工程において容易に位置決めでき、グリス等を用いることにより、アーム部材2がベース部材3に対して適度な摺動抵抗が確保でき、ベース部材2とアーム部材3に回転軌跡の隙を確保できるのであれば、ワッシャーを用いなくてもよい。
【0015】
図1において、6は、シャフト4が挿通する内径を有する2つの巻回部6aと、2つ巻回部6a間を連結すると共にベース部材2に形成された係合部2eに係合する連結部6bと、アーム部材3の係合部3dに係合する端部6cを有する付勢部材としてのコイルスプリングである。コイルスプリング6は、アーム部材3に対して付勢力を及ぼしている。コイルスプリング6は金属製である。なお、コイルスプリング6は巻回部6aが2つある構成のものではなく、巻回部が1つだけのものであってもよいし、2つ以上あるものであってもよい。また、付勢部材としては、コイルスプリングではなくトーションスプリングや板ばね等であってもよい。更に、アーム部材3に対して付勢力を及ぼして回動させる必要がなく、手動によって回動させることが望ましい場合には、付勢部材としてのスプリング類は必要ではない。
【0016】
図1において、7は、シャフト4の凹部4bと係合し、シャフト4がベース部材2の孔4cから抜けないようにするEリングである。Eリング7は、ベース部材2の孔2cより大径に設定されている。Eリング7は金属製であるが、剛性が確保できれば樹脂製であってもよい。なお、ベース部材2とアーム部材3の一方に軸部を形成し、他方に該軸部が挿通する孔を設け、前記軸部にスナップフィットタイプの爪部が形成され、抜け出ることが防止されていれば、Eリング7は必要ではない。
【0017】
図1において、8は、ベース部材2の梁部2dの両端側で、アーム部材3の最大開放位置近傍に一体且つ一対に形成され、アーム部材3と係合することにより摩擦抵抗を発生し、アーム2の開放速度を抑制する摺動部材である。摺動部材8は、自由端先端側が滑らかな円弧状をした略勾玉形状をしている。
【0018】
図4に示すように、アーム部材3と摺動部材8の位置関係は、少量重なり合う位置関係にある。アーム部材3が摺動部材8と係合すると、重なりしろ分、アーム部材3が図4のA方向に撓む。その際、アーム部材3には元の状態に復帰しようとする力が働き、摺動部材8の先端にアーム部材3が押し付けられることとなる。その状態でアーム部材3が更に回動すると、アーム部材3と摺動部材8との間に摩擦抵抗が発生し、コイルスプリング6により付勢されたアーム部材3の回動速度が抑制されることとなる。
【0019】
前記したように、摺動部材8の自由端側線端は、滑らかな円弧状に形成されていることから、アーム部材3とベース部材4との間に重なりしろがあっても、アーム部材3が比較的スムーズに摺動部材8の自由端先端に乗り上げることができるため、アーム部材3の回動が摺動部材8により阻止されることはない。
【0020】
本実施形態においては、摺動部材8をベース部材2に一体に形成したものを例示したが、アーム部材3に形成してもよく、ベース部材2とアーム部材3の両方に設けてもよい。また、摺動部材を設ける数も2つ以上でもよく、1つだけでもよい。形状もアーム部材および/またはアーム部材3をスムーズに撓ませることができる形状であれば、勾玉形状に限定されず、例えば半円形状であっても支障はない。
【0021】
更に、摺動部材8は、アーム部材3(場合によってはベース部材2)に一体に形成すれば、効率よくプレス成形または射出成形でき生産性がよいが、異なる素材、例え樹脂製の摺動部材をベース部材2および/またはアーム部材3に取り付けてもよい。
【0022】
前記のように構成されたヒンジ機構1の組み付けについて説明する。ワッシャー5をベース部材2とアーム部材3との間に配設し、ベース部材2に対するアーム部材3の位置決めを行なう。次いでアーム部材3の空間にコイルスプリング6を配置し、シャフト4をベース部2材の一方の孔2cに挿入し、次いで一方のワッシャー5の筒孔、一方のアーム部材3の孔3c、コイルスプリング6の巻回部6aの内径、他方のアーム部材3の孔3c、他方のワッシャー5の筒孔、他方のベース部材2の孔2cに夫々貫通させて、Eリング7をシャフト4の凹部4bに係合する。シャフト4は、一方にベース部材2の孔2cより大径の抜止め部4aが形成されており、他方は凹部4bにベース部材2の孔2cより大径のEリング7が係合するため、ベース部材2等から抜け出ることは防止される。その後、コイルスプリング6の連結部6bをベース部材2の係合部2eに、端部6cをアーム部材3の係合部3dに夫々係合させ、アーム部材3を開放方向に付勢させる。
【0023】
上記のように構成されたヒンジ機構1の作用について説明する。図2は、ヒンジ機構1が閉止位置にある状態を示す斜視図である。閉止位置とは、例えば、このヒンジ機構1をコンソールボックスに適用した場合は、ボックス本体部に対してコンソールドアが閉じられた状態をいう。即ち、可動部材としてのアーム部材3が固定部材としてのベース部材2に対して作動していない状態にある位置のことを称している。本実施形態において、アーム部材3はコイルスプリング6の付勢力に抗して、ベース部材2に対して、約90度傾いた姿勢が維持されており、ここがアーム3にとっての閉止位置となる。約90度傾いた姿勢を維持させる維持手段としては、例えば、本発明のヒンジ機構1をコンソールボックスに適用した場合は、ボックス本体に対してドア本体を閉止するためにドア本体に用いられた公知のロック装置がそれにあたる。
【0024】
図3は、アーム部材3がコイルスプリング6の付勢力により最大開放位置に回動する途中の状態を示す斜視図である。図示しない維持手段を解除すると、アーム部材3は、ヒンジ機構1のコイルスプリング6の付勢力によりシャフト4を中心に閉止位置より最大開放位置方向に付勢され、回動を開始する。
【0025】
アーム部材3が図4に示す状態より、更に回動して最大開放位置近傍に近づくと、アーム部材3は、摺動部材8と接触を開始し、図4に示すように、アーム部材3がA方向に撓んで摺動部材8の自由端先端に乗り上げ、同時にアーム部材3に元の状態に復帰しようとする逆A方向の力が発生し、アーム部材3を摺動部材8に一定に押し付ける力が働く。アーム部材3が更に回動すると、スプリング6の開きトルクは低下し、アーム部材3を摺動部材8との間に発生している摩擦力がアーム部材3の回動に抗し、アーム部材3は最大開放位置近傍で減速されて回動の勢いが抑制される。
【0026】
図5は、アーム部材3がベース部材2のストッパ2fに当接し、それ以上の回動が阻止された状態、即ち最大開放位置にある状態を示しめしている。図5に示しように、アーム部材3はベース部材2のストッパ部2fに当接し、それ以上の回動が阻止されている。
【0027】
アーム部材3が最大開放位置まで移動してストッパ2fに衝突してバウンドし、付勢力が働く方向と逆の方向へ回動しようとしても、アーム部材3と摺動部材8との間の摩擦力が、その移動に抗する。従って、バウンドを小さく又はゼロとすることができるため、アーム部材3が取り付けられているコンソールドア3の最大開放位置方向への回動時に発生するバタつきを防止できる。
【0028】
アーム部材3を閉止する場合は、前記と逆の操作により、コイルスプリング6の付勢力に抗して、図5に示す状態から、図3に示す状態までアーム部材3を回動し、図示しない維持装置、例えば、コンソールボックスであれば、ドア本体に設けられたロック機構に係合させれば、図3に示す状態が維持される。
【0029】
なお、例えば、コンソールボックスにおいて、ドアが勢いよく閉まることによってボックス本体に発生する衝撃による振動や異音を抑制したい場合がある。この場合は、ベース部材とアーム部材の少なくとも一方の閉止位置近傍、即ちボックス本体に対してドアが閉止される位置の近傍に摺動部材を形成すれば、前記の課題は解決される。
【0030】
また、本発明に関する開閉装置は、前記した固定部材としてのベース部材に可動部材としてのアーム部材が回動自在に備えられたヒンジ機構に限定はされない。例えば、固定部材としてのベース部材に可動部材としてのアーム部材がスライドして開閉操作可能に設けられた開閉装置において、ベース部材とアーム部材の少なくとも一方に、ベース部材に対してアーム部材が移動する最大開放位置近傍および/または閉止位置近傍に、摺動部材を形成すれば、最大開放位置への移動時に発生するバタつきを抑制できる、および/または最大開放位置から閉止位置に移動する際に発生する衝撃による振動や異音を抑制することができる。
【0031】
更に、本実施形態においては、ベース部材2を固定部材、アーム部材3を可動部材とし、それらをコンソールボックスのボックス本体やドア本体等に取り付けるものを好適なものとして例示したが、それに限定されるものではなく、例えばコンソールボックスのボックス本体それ自体を固定部材とし、ドア本体それ自体を可動部材とし、それらの閉止位置近傍および/または最大開放位置近傍に摺動部材を形成するようにしても何ら問題はない。
【符号の説明】
【0032】
1 ヒンジ機構(開閉装置)
2 ベース部材(固定部材)
3 アーム部材(可動部材)
4 シャフト
5 樹脂ワッシャー
6 コイルスプリング
7 Eリング
8 摺動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
該固定部材に対して開閉可能に設けられた可動部材と、
前記固定部材と前記可動部材の少なくとも一方の、前記可動部材の前記固定部材に対する閉止位置近傍と最大開放位置近傍の少なくとも一方に設けられ、前記固定部材と前記可動部材の少なくとも一方と接触して前記可動部材の開放速度を抑制する摺動部材と、を備えていることを特徴とする開閉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−31671(P2011−31671A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177868(P2009−177868)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】