説明

開閉装置

【課題】開口部を閉じたときの防音性を高めること。
【解決手段】枠部材100は、エアシリンダ510によって開口部1200及び開口部1200の輪郭をなす輪郭部材1110に対向する位置まで移動する。この位置で、枠部材100に取り付けられているエアシリンダ300は、ロッド310と接合している遮音パネル200を開口部1200に向けて移動させる。遮音パネル200は、輪郭部材1110に対して、パッキン210、1120を介して押し付けられる。遮音パネル200を輪郭部材1110に対してZ軸方向に真っすぐ移動させて押し付けるため、これに角度がついている場合に比べ、遮音パネル200と輪郭部材1110とのX軸方向の領域を狭くして音が伝達しにくいようにすることができる。また、この領域が屈曲しているため、音を繰り返し反射させて減衰させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音室の開口部を遮音パネルにより開閉する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等において外部からの音を遮断した防音室の中で、製品又は部品等を対象としてその対象から発せられる異音の有無を検査することが行われている。特許文献1には、検査対象製品を乗せた製品搬送パレットをコンベアで検査位置まで搬送し、コンベア側の可動自動結線ユニットと製品搬送パレット側の固定側自動結線ユニットとを自動的に連結して検査対象製品を検査する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175776公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の検査においては、検査する対象は、防音室に設けられている開口部を通って防音室内に搬送される。この開口部は、対象が防音室内に搬送された後に、例えば遮音パネルで塞がれることによって閉じられる。この際、開口部と遮音パネルとの間にできる領域は、他の箇所に比べて外部からの音が入り込みやすい(防音性が低い)ところとなる。この領域から入り込む外部の音の音量が大きいほど、防音室内で上記の異音が聞き取りづらくなり、検査の精度が低下する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、開口部を閉じたときの防音性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、壁に開口部を設けた防音室において、前記防音室の前記開口部を開閉し、当該開口部の縁よりも外側の部分に密着可能な遮音パネルと、前記遮音パネルを移動可能に支持する支持部材と、前記遮音パネルが前記開口部に対向する第1位置に到達するまで前記支持部材を移動させる第1移動手段と、前記第1移動手段によって前記支持部材が移動させられて前記遮音パネルが前記第1位置に到達したときに、当該遮音パネルを、前記外側の部分に密着する第2位置まで移動させる第2移動手段とを備え、前記遮音パネルは、前記第2位置において、前記外側の部分と密着することにより前記開口部を塞ぐことを特徴とする開閉装置を提供する。
【0006】
好ましい態様において、前記第2位置において、前記外側の部分の表面と前記遮音パネルの表面とが密着する領域は、前記防音室の外側にある空間から当該防音室に至るまで、屈曲面若しくは曲面で構成されている。
他の好ましい態様において、前記第2位置は、前記遮音パネルが前記外側の部分に向けて押し付けられる状態となる位置であり、前記第2移動手段が前記遮音パネルを当該第2位置まで移動させたときに、当該第2移動手段が前記外側の部分から受ける反作用によって前記支持部材が移動することを規制する規制手段を備える。
他の好ましい態様において、前記第2移動手段が前記遮音パネルを前記第2位置まで移動させたときに当該遮音パネルと前記外側の部分との間に挟まれる前記開口部を囲んでいる形状の密封材を備える。
他の好ましい態様において、前記外側の部分の表面と前記遮音パネルの表面と前記密封材とによって封止される領域において、前記外側の部分の表面と前記遮音パネルの表面の少なくとも一方に、表面積拡大部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来の構成に比べて、開口部を閉じたときの防音性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る防音空間提供システムの構成を示す図である。
【図2】矢視II−IIから見た開閉装置及び開口部を示す図である。
【図3】図2の矢視III−IIIから見た開閉装置及び開口部を示す図である。
【図4】輪郭部材及び遮音パネルが接触している状態を示す図である。
【図5】防音空間提供システムの構成を示すブロック図である。
【図6】コンベアが一部を移動させる動作を説明するための図である。
【図7】遮音パネルが開口部に対向する位置まで移動してきた状態を示す図である。
【図8】枠部材がX軸方向に移動してきた状態を示す図である。
【図9】遮音パネルのZ軸方向への移動を示す図である。
【図10】遮音パネルと輪郭部材とが密着する領域の音の経路を説明するための図である。
【図11】領域の形状の例を示す図である。
【図12】表面積拡大部が形成された遮音パネル又は輪郭部材を示す図である。
【図13】変形例に係る領域を示す図である。
【図14】変形例に係る枠部材を示す図である。
【図15】変形例に係る開閉装置を示す図である。
【図16】変形例に係る開閉装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る防音空間提供システム1の構成を示す図であり、このシステムを、鉛直上方から見たところを示している。
防音空間提供システム1は、工場等で製品又は部品の異音の検査を行う際に、防音された空間を提供するシステムである。防音空間提供システム1は、防音室1000と、搬送装置2000と、開閉装置10とを備える。
防音室1000は、周囲を床、天井及び壁1100で囲まれた部屋である。壁1100は、音を反射する部材とその内部に設けられた音を吸収する部材とを有し、防音室1000の外部空間4000からの音が防音室1000の内部に自身を介して入り込むことを防ぐ(すなわち防音する)ものである。なお、本実施形態では、床及び天井を介して入り込む音はないものとする。壁1100には、外部空間4000に開口する開口部1200及び1300が設けられている。開口部1200及び1300は、防音室1000において対向する壁1100における互いに対向する位置に設けられている。上記の検査を行う検査対象W1は、外部空間4000から開口部1200を通して防音室1000に運び入れられ、開口部1300を通して外部空間4000に運び出される。
【0010】
搬送装置2000は、コンベア2001、2002、2003を有する。これらのコンベアは、無端ベルトをそれぞれ備えたベルトコンベアであり、この無端ベルトに載せられた検査対象W1を搬送方向A1(開口部1200から開口部1300に向かう方向)にそれぞれ搬送する。
防音室1000の内部には、収音装置3000が設けられている。収音装置3000は、マイクロフォン等の収音手段であり、検査対象W1から発せられる音を収集する。
開閉装置10は、遮音パネル200を備えている。開閉装置10は、この遮音パネル200で開口部1200、1300を塞いで閉じたり、その状態から遮音パネル200を外して開いたりする装置である。言い換えれば、開閉装置10は、これらの開口部を開閉する装置である。
なお、図1では、一部のもの(壁1100、遮音パネル200等)が断面で示されている。また、図1を含む以降の図では、互いに直交するX、Y、Zの3軸が方向を表し、鉛直方向上向きをY軸方向、開口部1200が設けられている側の壁1100の法線に沿った方向をZ軸方向、開口部1200が設けられている壁1100に沿った方向をX軸方向で示すものとする。上記の搬送方向A1は、Z軸方向に沿った方向となっている。
【0011】
図2は、図1の矢視II−IIから見た開閉装置10及び開口部1200を示す図である。開口部1200は、Z軸方向から見ると矩形の形状をしており、壁1100に設けられている輪郭部材1110(輪郭部)によって囲まれている。輪郭部材1110は、開口部1200側の内側部1111と壁1100側の外側部1112とを有し、開口部1200の輪郭をなしている。内側部1111には、開口部1200を囲んだ形状のパッキン1120が設けられている。パッキン1120は、ゴム等を材料に形成されており、音を減衰させる密封材として機能する部材である。開口部1200のうち、鉛直下方側の空間には、搬送装置2000が設置されている。
【0012】
開閉装置10は、枠部材100、遮音パネル200、2つのエアシリンダ300、2つのエアシリンダ400及び移動装置500を備える。移動装置500は、エアシリンダ510と、レール520と、車輪530とを有する。
枠部材100は、内側に矩形の穴が空いており、その穴を取り囲む形状となっている。枠部材100の鉛直方向(Y軸方向)の両側(上側及び下側)には、車輪530が2つずつ回転可能に設けられている。
エアシリンダ510は、枠部材100の鉛直方向の中央部と同じ高さで棒状の棒部材131に固定されている。エアシリンダ510は、X軸方向の正負両方向に移動させることが可能なロッド511を有している。ロッド511のX軸方向の端部は、枠部材100の鉛直方向の中央部で枠部材100と接合している。これにより、エアシリンダ510は、X軸方向の正負両方向に枠部材100を移動させる。
レール520は、直線状の部材であり、枠部材100の鉛直方向の上下に1本ずつ設けられている。鉛直下側のレール520は、外部空間4000の床に固定され、もう一方のレール520は、鉛直下側のレール520の鉛直上方に、棒部材131、521によって固定されている。各レール520は、それぞれX軸方向に延伸するように設置されている。各レール520は、車輪530を(それと共に枠部材100を)X軸方向に向かう直線状の軌道に沿って移動させるためのものである。
車輪530は、枠部材100の鉛直方向の両側に2つずつ設けられ、それぞれがレール520と接触している。
【0013】
遮音パネル200は、音を遮蔽する部材により形成されている。また、遮音パネル200は、枠部材100の内側の穴からZ軸の負方向に露出するように設けられている。
エアシリンダ300は、枠部材100のZ軸の負方向側の面に、X軸の正方向側と負方向側とに分けて取り付けられている。エアシリンダ300は、Z軸の正負両方向に移動させることが可能なロッド310を有している。エアシリンダ300は、ロッド310が、枠部材100のY軸方向の中央部に位置し、かつ、枠部材100に空いている穴の位置にくるようにして取り付けられている。
エアシリンダ400は、Z軸方向の正負両方向に移動させることが可能なロッド410を有している。エアシリンダ400は、枠部材100がX軸方向に移動した場合に枠部材100と共に移動するロッド310と接触しない鉛直方向の高さに棒状の固定部材420によって固定されている。言い換えれば、エアシリンダ400は、ロッド310のX軸方向に延在する空間(二点鎖線の境界線L1で示される空間)に接触しない高さに固定されている。また、エアシリンダ400は、エアシリンダ300がX軸方向に移動してきたときに、ロッド410をZ軸方向に移動させるとエアシリンダ300に接触する位置に固定されている。
【0014】
図3は、図2の矢視III−IIIから見た開閉装置10及び開口部1200を示す図である。図3では、壁1100、輪郭部材1110、枠部材100及び遮音パネル200の断面がそれぞれ示されている。
遮音パネル200は、ロッド310のZ軸方向の端部と接合されている。これにより、遮音パネル200は、エアシリンダ300によって支持されており、エアシリンダ300は、枠部材100によって支持されている。つまり、遮音パネル200は、エアシリンダ300を介して間接的に枠部材100によって支持されていることになる。また、遮音パネル200は、ロッド310と接合されていることで、ロッド310同様、Z軸方向の正負両方向に移動させることが可能な状態となっている。
レール520及びエアシリンダ400の配置について説明する。この説明の便宜上、図3において、枠部材100がX軸方向に移動したときに枠部材100とエアシリンダ300が通過する領域の境界を、二点鎖線の境界線L2、L3で示した。境界線L2により示されているように、レール520は、移動する枠部材100が外側部1112と接触しない位置に設置されている。また、境界線L3により示されているように、エアシリンダ400は、ロッド410を最もZ軸の負方向側となる位置に移動させたときに、移動するエアシリンダ300がロッド410と接触しない位置に設置されている。
【0015】
輪郭部材1110及び遮音パネル200の形状について説明する。内側部1111は、外側部1112よりもZ軸方向の寸法が小さい。また、内側部1111及び外側部1112は、防音室1000側の面が、壁1100の防音室1000側の面1101と同一平面上に位置するように設けられている。このため、輪郭部材1110の外部空間4000側には、面1101からのZ軸方向の高さが異なる(外側部1112の方が高い)段差が形成されている。遮音パネル200は、防音室1000側の面201よりもその反対側の面202が大きく、X軸方向の両端部側に段差が形成されている。この段差のうち、面202からのZ軸方向の高さが低くなっている部分には、パッキン210が設けられている。パッキン210は、パッキン1120と同様に、密封材として機能する部材である。これら輪郭部材1110及び遮音パネル200をZ軸方向に対向させて接近させると、図4に示す状態となる。
【0016】
図4は、輪郭部材1110及び遮音パネル200がZ軸方向に対向して接触している状態を示す図である。図4では、分かりやすく示すため、輪郭部材1110、遮音パネル200及びこれらに設けられているパッキンのみを示している。図4(a)では、輪郭部材1110及び遮音パネル200を鉛直下向きに見た断面を示している。遮音パネル200の輪郭部材1110と対向する側の面は、段差によって面201と面203とに分かれている。面201は、開口部1200及び内側部1111と対向し、外側部1112の間に入り込んでパッキン1120と接触している。また、面201は、開口部1200を塞いだ状態となっている。面203は、上記のパッキン210が設けられている面である。面203は、外側部1112と対向し、パッキン210が外側部1112と接触する状態となっている。パッキン1120及び210は、互いに接触する面から押される力によって変形した状態となっている。このように、遮音パネル200は、輪郭部材1110に密着可能な形状をしており、輪郭部材1110に密着することにより、開口部1200を塞いでいる。図4(b)は、輪郭部材1110及び遮音パネル200をX軸方向に見た断面を示している。この場合、遮音パネル200の寸法が図4(a)と異なるが、輪郭部材1110及び遮音パネル200が対向して各々に設けられたパッキンが相互に接触している部分の構成については、図4(a)と同じ形状となっている。
【0017】
上述した開閉装置10の各エアシリンダ及び搬送装置2000は、図示せぬ制御部と配線によって接続し、この制御部の指示に従い動作するようになっている。
図5は、防音空間提供システム1の構成を示すブロック図である。防音空間提供システム1は、制御部2と、記憶部5と、操作部3と、検知部4と、2つの開閉装置10と、搬送装置2000とを備えている。制御部2は、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを備えている。CPUは、メモリに記憶されているプログラムを実行することにより、防音空間提供システム1の各部を制御する。メモリは、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを備えており、CPUによって用いられるプログラムやデータを記憶する。操作部3は、複数の操作ボタンを備えており、利用者が操作した内容を示す操作データを制御部2に供給する。検知部4は、防音室1000の内部に検査すべき検査対象W1が位置していることを検知する装置である。本実施形態では、検査対象W1には、無線タグが取り付けられており、検知部4は、この無線タグと通信することで上記の検知を実行する。記憶部5は、ハードディスクを備えており、各検査対象W1を識別する情報と、開口部1200を開くときと閉じるときとで各エアシリンダのロッドの移動を開始させる時間の間隔を示す情報とを記憶している。各エアシリンダ(140、300、400)は、制御部2により指示されたときに各々のロッドを移動させる。搬送装置2000は、制御部2から指示されることで、各コンベアの回転を開始若しくは終了させ、又はコンベア2002において後述するローラの移動を行う。
【0018】
続いて、開閉装置10の動作について説明する。防音空間提供システム1においては、図2及び図3に示す状態のときに、制御部2が各コンベアの回転の開始を指示し、検査対象W1が防音室1000の内部に搬送される。そして、検知部4は、検知した検査対象W1の情報を制御部2に供給する。制御部2は、検知された検査対象W1が、記憶部5に記憶されている予め定められた検査対象W1を表すものであれば、開口部1200、1300を閉じるための動作を各部に指示する。
図2及び図3に示す状態では、コンベア2002が開口部1200を貫通しているため、遮音パネル200で開口部1200を塞ぐことができない。そこでまず、制御部2は、搬送装置2000に対して、コンベア2002の開口部1200を貫通している部分を移動させるよう指示する。
【0019】
図6は、コンベア2002が一部を移動させる動作を説明するための図であり、図3の矢視VI−VIから見たコンベア2002を示している。図6(a)では、コンベア2002がコンベア2001との境目まで直線状に延在している状態を示している。このとき、枠部材100は図2及び図3に示す位置にあるが、説明の便宜上、図6(a)では、X軸方向に移動してきた場合の枠部材100を二点鎖線で示す。図6(a)に示すとおり、コンベア2002は、枠部材100が移動してくる位置にまで延在している。一方、コンベア2001は、移動してくる枠部材100とは接触しない位置に設置されている。コンベア2002は、この状態から、コンベア2001側の端部のローラを、防音室1000の内部に収まるまで移動させる。図6(b)では、コンベア2002の端部のローラが移動させられて防音室1000の内部に収まった状態を示す。このローラの移動は、例えばモータ又はバネ等を用いて、周知の技術で行われればよい。このようにローラが移動すると、枠部材100をX軸方向に移動させることと、開口部1200を遮音パネル200で塞ぐことが可能となる。
【0020】
続いて、制御部2は、各開閉装置10に対して、開口部1200、1300を閉じるための動作を行うように指示する。なお、両開口部が行う動作は同じであるため、以下では、開口部1200について説明する。
制御部2は、まず、エアシリンダ510に対して、ロッド511をX軸方向に移動させるように指示する。エアシリンダ510は、この指示に従いロッド511を移動させることで、枠部材100をレール520によって形成されている軌道に沿って移動させる。この軌道は、X軸方向に向かう軌道である。そして、エアシリンダ510は、枠部材100を、遮音パネル200が開口部1200に対向する位置(以下「第1位置」という。)に到達するまで移動させる。このように、エアシリンダ510、レール520及び車輪530(すなわち移動装置500)は、遮音パネル200が第1位置に到達するまで枠部材100を移動させる手段(本発明に係る「第1移動手段」)として機能する。
図7は、図2において、遮音パネル200が第1位置まで移動されてきた状態を示す図である。図7では、遮音パネル200の奥にある開口部1200を鎖線で示している。図7に示すとおり、開口部1200は、Z軸方向に見たときに遮音パネル200の中央に位置している。エアシリンダ300は、エアシリンダ400が上述した高さに固定されているため、エアシリンダ400と接触することなく、枠部材100と共に移動する。
【0021】
図8は、枠部材100が遮音パネル200とともに開口部1200に対向する位置まで移動した状態を示す図であり、図7を鉛直上方から見た状態である。この状態において、遮音パネル200の面201は、開口部1200及び内側部1111に対向するところに位置している。また、遮音パネル200の面203は、外側部1112に対向するところに位置している。この状態で、制御部2は、エアシリンダ300に対してロッド310をZ軸方向に向けて移動させるように指示する。エアシリンダ300は、この指示に従いロッド310を移動させることで、ロッド310と共に遮音パネル200をZ軸方向、すなわち輪郭部材1110に向かう方向に移動させる。そして、エアシリンダ300は、遮音パネル200を、遮音パネル200と輪郭部材1110とが密着する位置(以下「第2位置」という。)まで移動させる。このとき、遮音パネル200は、第2位置において、輪郭部材1110と密着して開口部1200を塞いだ状態になる。このように、エアシリンダ300は、移動装置500によって枠部材100が移動させられて遮音パネル200が第1位置に到達したときに、この遮音パネル200を第2位置まで移動させる手段(本発明にかかる「第2移動手段」)として機能する。
【0022】
図9は、遮音パネル200のZ軸方向への移動を示す図である。図9(a)では、エアシリンダ300が、遮音パネル200を上記第2位置まで移動させた状態を示している。このとき、エアシリンダ300がロッド310をZ軸方向に移動させた距離とT1とすると、距離T1は、Z軸方向に移動する前の面201とパッキン1120との距離よりも長くなっている。つまり、パッキン1120及び210は、エアシリンダ300がロッド310をZ軸方向に移動させようとする力によって、図4で示したのと同様に2つの面に挟まれて変形している状態となっている。この状態では、エアシリンダ300は、遮音パネル200、パッキン1120及び210を介して輪郭部材1110に対してZ軸方向に力を加え続けていることになる。言い換えれば、エアシリンダ300は、遮音パネル200を、輪郭部材1110に向けて押し付けている。このエアシリンダ300が加え続けている力に対しては、輪郭部材1110からの反作用が働く。この反作用は、遮音パネル200、パッキン1120及び210、ロッド310を介してエアシリンダ300まで伝わり、エアシリンダ300をZ軸の負方向に押す力となる。この力によって、エアシリンダ300及びこれが取り付けられている枠部材100は、Z軸の負方向に移動しようとする状態となっている。
【0023】
エアシリンダ300及び枠部材100は、エアシリンダ400によってZ軸の負方向への移動を規制されている。詳細には、エアシリンダ400は以下のとおり動作している。制御部2は、エアシリンダ300に対するのと当時に、エアシリンダ400に対して、ロッド410をZ軸方向に移動させるように指示する。エアシリンダ400は、この指示に従い、ロッド410をZ軸方向に移動させて、その端部をエアシリンダ300と接触させる。その後、エアシリンダ300には、上記のとおりZ軸の負方向に押す力が加わってくるため、エアシリンダ400は、この力と釣り合うように、ロッド410に対してZ軸方向に移動させる力を加え続ける。このようにして、エアシリンダ400は、エアシリンダ300及び枠部材100が輪郭部材1110からの反作用によって移動することを規制する規制手段として機能する。
【0024】
制御部2は、防音室1000の内部での検査が終了して、例えば、開口部1200、1300を開くように利用者が操作部3を操作すると、操作部3から供給される操作データに従い、両開口部を開くための動作を各部に指示する。まず、制御部2は、エアシリンダ300及び400に対して、各々のロッドをZ軸の負方向に移動させるように指示する。これらのエアシリンダは、この指示に従い、各々のロッドをZ軸の負方向に移動させる。図9(b)では、エアシリンダ300が、ロッド310を、Z軸の負方向に引っ張り戻した状態を示している。ロッド310は、遮音パネル200と接合しているため、エアシリンダ300は、遮音パネル200も上記第2位置からZ軸の負方向に引っ張り戻している。この後、制御部2は、エアシリンダ510に対して、ロッド511をX軸の負方向に移動させるように指示し、エアシリンダ510がその指示に従って動作することで、枠部材100及び遮音パネル200が上述した第1位置から退くことになる。そして、制御部2は、搬送装置2000に対して、コンベア2002のローラを図6(a)で示した位置に移動させるように指示する。搬送装置2000は、この指示に従い、コンベア2002のローラをその位置に移動させる。こうして、防音空間提供システム1においては、検査済みの検査対象W1を防音室1000から運び出し、次に検査する検査対象W1を防音室1000に運び入れることができるようになる。
以上のとおり各部が動作することで、開閉装置10は、開口部1200を塞ぐ遮音パネル200の開閉を行う。
【0025】
開閉装置10が以上のとおり動作して開口部1200が遮音パネル200により塞がれた状態になると、外部空間4000からの音が防音室1000に最も入り込みやすいのは、輪郭部材1110の表面と遮音パネル200の表面とが密着する領域となる。
図10は、輪郭部材1110の表面と遮音パネル200の表面とが密着する領域Vを伝達する音について説明するための図である。図10(a)は、図9のW部を拡大して示している。図10(a)では、領域Vを格子パターンで示した。図10(a)に示すとおり、領域Vでは、2つのパッキン210及び1120を介して音が伝達されるため、これらのパッキンによって音が減衰される。
図10(b)は、領域Vを伝達する音の経路の一例を示す図である。領域Vは、屈曲した空間であるため、ここを伝達する音は、図10(c)に示すように外部空間4000から防音室1000までを直線状に結ぶ経路で音が伝達する場合と異なり、輪郭部材1110又は遮音パネル200で反射を繰り返すことになる。ここにおいて、屈曲した空間とは、外部空間4000から防音室1000までを直線状に結ぶいかなる経路も遮断する空間のことをいう。音は反射によっても減衰するため、領域Vを伝達する音は、2つのパッキンによる減衰に加え、反射を繰り返すことによっても減衰することになる。
【0026】
なお、領域Vは、他にも様々な形状を取り得る。図11は、領域Vの形状の例を示す図である。図11(a)では、遮音パネル200pの出っ張りに対して輪郭部材1110pが引っ込んでいることで、屈曲して折り返す形状となっている曲部Wpを有する領域Vpが示されている。また、図11(b)では、遮音パネル200qの鋸状の出っ張りに対して輪郭部材1110qが鋸状に引っ込んでいることで、波状に折り返しを繰り返す形状となっている曲部Wqを有する領域Vqが示されている。これらの領域Vp、Vqでは、このような曲部を有しない場合に比べて、音波の経路が長くなり、かつ、反射回数も多くなり、遮音性が高まる。
【0027】
また、領域Vは、輪郭部材1110の表面と遮音パネル200の表面とパッキン210、1120とによって封止されている。この領域Vにおいて、遮音パネル200の表面又は輪郭部材1110の表面の少なくとも一方に、その表面の表面積を拡大した表面積拡大部が形成されていてもよい。表面積拡大部は、吸音材として作用しているとも考えられる。図12は、表面積拡大部が形成された遮音パネル又は輪郭部材を示す図である。図12(a)では、フェルト、多孔質フィルム又はグラスウール等の多孔質部材が貼り付けられた表面積拡大部Urを有する遮音パネル200rの表面と輪郭部材1110rの表面とが密着する領域Vrが示されている。図12(b)では、表面に出っ張りを加える凹凸加工が施された表面積拡大部Usを有する遮音パネル200sの表面と輪郭部材1110sの表面とが密着する領域Vsが示されている。また、図12(c)では、表面に凹みを形成する凹凸加工が施された表面積拡大部Ut1を有する遮音パネル200tの表面と、同じく凹凸加工が施された表面積拡大部Ut2を有する輪郭部材1110tの表面とが密着する領域Vtが示されている。なお、これらの表面は、多孔質加工が施された表面積拡大部を有していてもよい。表面積拡大部は、表面が平坦な場合に比べて、音波が反射するときにその音波を大きく減衰させる。また、これらの音波の多くは、複数回反射を繰り返すため、表面積拡大部で反射する度に減衰を繰り返す。このように、遮音パネル又は輪郭部材は、表面積拡大部を有することで、表面が平坦な場合よりも、遮音効果を高めることができる。図のように、表面積拡大部は、パッキン210と1120との間にあるときに高い遮音効果を得ることができる。
【0028】
以上のとおり、開閉装置10においては、領域Vに2つのパッキンを設け、かつ、屈曲した領域Vを形成することにより、このような領域を設けない場合に比べて、外部空間4000から防音室1000に入り込もうとする音を大きく減衰させ、防音性を高めることができる。また、開閉装置10は、遮音パネル200をX軸方向に移動させてからZ軸方向に真っ直ぐ輪郭部材1110に向けて移動させるため、遮音パネル200をZ軸方向に対して斜めに移動させる構成に比べて、面201の角(段差を形成している部分)が外側部1112と接触しにくくなっている。このため、開閉装置10は、上記斜めに移動させる構成に比べて、面201の端部と外側部1112との間隔、すなわち、領域VのX軸方向の幅を小さくすることができ、領域Vを音が伝達しにくくすることができる。
また、開閉装置10では、パッキン1120及び210に加わる力がZ軸方向に沿っているため、各々をX軸方向にせん断する力(せん断応力)が加わらない。このため、開閉装置10では、各パッキンの摩耗や破損を抑制することできる。これにより、開閉装置10では、上記斜めに移動させる構成に比べて、各パッキンの摩耗や破損により外部空間4000から防音室1000へ伝達する音の音量が増加することを抑制することができる。また、枠部材100は水平方向(X軸方向)に移動するため、枠部材100、遮音パネル200及びエアシリンダ300の重さを車輪530が支え、ロッド511にこれらの重さの分力が加わらない。このため、開閉装置10では、枠部材100を水平方向ではない方向に移動させる場合に比べて、枠部材100を高速に移動させることができる。
【0029】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の実施の一例に過ぎず、次のように種々の応用・変形が可能であり、また、これらの応用・変形は、必要に応じて組み合わせることも可能である。
【0030】
(変形例1)
レール520は、上述した実施形態では、X軸方向に沿って直線状に延伸するものであったが、これに限らず、曲がっているものであってもよい。例えば、壁面が曲面状の壁に設けられた開口部に対して設置するのであれば、その曲面に沿った曲線状のレールを用いればよい。また、このレールは、防音室の壁面に沿ったものでなくともよい。要するに、このレールは、枠部材100を開口部1200及び輪郭部材1110に対向する位置(上述した第1位置)まで導く軌道に沿って移動可能とするものであればよい。
【0031】
(変形例2)
移動装置500は、上述した実施形態では、エアシリンダ510により枠部材100を移動させたが、これに限らず、他の駆動方法により移動させてもよい。例えば、移動装置500は、枠部材100に備えられた駆動力を有する自走式の車輪と、枠部材100が軌道に沿って移動するように誘導する誘導手段とを備えていてもよい。要するに、移動装置500は、定められた軌道に沿って開口部1200に対向する位置まで枠部材100を移動させることができるものであればよい。
【0032】
(変形例3)
移動装置500は、上述した実施形態では、エアシリンダ510の機能により、枠部材100を移動させたり停止させたりしていたが、枠部材100を停止させる手段を別に備えていてもよい。例えば、ばね又はゴム等の弾性を有するストッパーをレール520に設けるといった具合である。これにより、移動装置500は、エアシリンダ510が枠部材100を停止させる力よりも強い力でこれを停止させられるため、ストッパーを設けない場合に比べて、枠部材100を速い速度で移動させたときに定められた位置で停止させやすくすることができる。つまり、この移動装置を用いれば、開口部1200の開閉に要する時間が短くすることができる。
【0033】
(変形例4)
移動装置500は、上述した実施形態では、枠部材100を水平方向(X軸方向)に移動させたが、これ以外の方向に枠部材100を移動させるものを除外するものではない。例えば、移動装置500が枠部材100を移動させる方向は、水平方向に対して斜めの方向であってもよいし、鉛直方向であってもよい。そして、望ましくは、この方向は水平方向であるとよい。この場合、枠部材100、遮音パネル200及びエアシリンダ300の重さを車輪530が支え、ロッド511にはこれらの重さの分力が加わらない。このため、開閉装置10は、ロッド511にこれらの重さの分力が加わる構成に比べて、エアシリンダ510の駆動力を小さくすることができる。
【0034】
(変形例5)
開口部1200は、上述した実施形態では、Z軸方向に見たときに矩形の形状となっていたが、この形状に限らず、正方形、円形又は楕円形等、様々な形状となっていてもよい。要するに、開口部は、防音室1000に運び入れ、及び運び出すもの(上述した実施形態では検査対象W1)が通過可能な大きさ及び形状となっていればよい。
【0035】
(変形例6)
エアシリンダ300は、上述した実施形態では、2つ備えられていたが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。いずれの場合も、遮音パネル200を輪郭部材1110に向けて移動させたり押し付けたりしたときに、遮音パネル200とロッドとを接合させている部分に加わる応力が小さくなるように設けられていればよい。この場合、望ましくは、エアシリンダ400をエアシリンダ300と同じ数だけ設置して、輪郭部材1110からの反作用による各エアシリンダ300のZ軸の負方向への移動を規制するとよい。
【0036】
(変形例7)
エアシリンダ300は、上述した実施形態では、遮音パネル200をZ軸方向に向けて移動させたが、これ以外の方向に遮音パネル200を移動させるものを除外するものではない。例えば、輪郭部材の外側部が壁1100の法線に対して角度をなすような面を開口部1200側に有している場合に、その面に沿ってこの法線に対して同じ角度をなす方向に遮音パネルを移動させるといった具合である。要するに、エアシリンダ300は、遮音パネル200を定められた方向に移動させるものであればよい。これを枠部材100との関係で言い換えれば、開閉装置10では、遮音パネル200が、定められた方向に移動可能な状態で枠部材100により(直接的又は間接的に)支持されていればよい。
【0037】
(変形例8)
防音空間提供システム1においては、パッキン1120及び210は、上述した実施形態とは異なる態様で設けられていてもよい。例えば、両方とも遮音パネル200に設けられていてもよいし、両方とも輪郭部材1110に設けられていてもよい。また、領域Vに設けられるパッキンの個数は、上述した実施形態では2つであったが、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。これらのパッキンは、いずれも、遮音パネル200が輪郭部材1110に押し付けられたときに、開口部1200を囲んだ形状となるものであればよい。そして、望ましくは、2つ以上設けられているとよく、取り付ける個数が多いほど、外部空間4000から防音室1000に入り込む音を大きく減衰させることができる。
また、輪郭部材1110の代わりに、壁1100の開口部1200の輪郭をなす部分が輪郭部材と同じ形状となるように加工されたものが用いられてもよい。要するに、防音空間提供システム1においては、開口部1200の縁よりも外側の部分に遮音パネル200を押し付けられるようになっていればよい。
【0038】
(変形例9)
遮音パネル200は、上述した実施形態では、Z軸方向に見たときに矩形の形状となっていたが、この形状には限らない。また、遮音パネル200は、上述した実施形態では、面201側に段差が形成されているものであったが、段差のない平板状のものであってもよい。要するに、遮音パネルは、輪郭部材に対して密着すると開口部が塞がれた状態となる形状を有するものであればよい。そして、望ましくは、遮音パネルがエアシリンダ300によって上述した第2位置まで移動させられたときに、輪郭部材と遮音パネルとの間に、外部空間4000から防音室1000までを直線状に結ぶいかなる経路も遮断されるような領域を形成するものであるとよい。
【0039】
図13は、本変形例に係る輪郭部材と遮音パネルとの間に形成される領域を示す図である。図13(a)では、輪郭部材1110a及び遮音パネル200aの間に形成される領域Vaを示している。輪郭部材1110a及び遮音パネル200aは、互いに対向する面にそれぞれ2箇所の段差が形成されている。このように、向かい合う面に形成されている段差が多いほど、これらの面の間にできる領域において音が反射する回数が多くなりやすくなり、この領域を通り抜ける音をより大きく減衰させることができる。図13(b)では、対向する面が曲面となっている輪郭部材1110b及び遮音パネル200bの間に形成される領域Vbを示している。領域Vbは、向かい合う面に段差が形成されていないが、これらの向かい合う曲面によって、外部空間4000から防音室1000までを直線状に結ぶいかなる経路も遮断されるように形成されている。このため、領域Vbを伝達する音は、必ず1度は向かい合う面のいずれかで反射することになる。よって、領域Vbであっても、外部空間4000から防音室1000まで直線状の経路で音の伝達が可能な図10(c)に示すような領域に比べ、音をより大きく減衰させることができる。
【0040】
(変形例10)
枠部材100は、上述した実施形態では、Z軸方向に見たときに、内側に矩形の穴が空いており、その穴を取り囲む額縁のような形状をしていたが、これには限らない。例えば、この穴を完全に囲むのではなく、一部が囲まれていない形状であってもよい。
図14は、本変形例に係る枠部材100cを示す図である。枠部材100cは、枠部材100のエアシリンダ300よりも上の部分を除いた形状となっている。枠部材100cには、鉛直下方側にのみ車輪530が設けられており、レール520も、枠部材100cの鉛直下方側にのみ設けられている。この場合であっても、枠部材100cは、エアシリンダ510により力を加えられることで、レール520上をX軸方向に移動する。また、遮音パネル200は、ロッド310に接合されているため、エアシリンダ300によってZ軸方向に移動可能な状態となっている。要するに、枠部材100cは、定められた軌道上を走行可能であり、定められた方向に移動可能な状態で遮音パネル200を支持する部材(支持部材)であればよい。この定められた方向は、遮音パネル200が開口部1200に対抗する位置(第1位置)に到達したときに、その位置から開口部1200に向かう方向である。
【0041】
(変形例11)
遮音パネル200は、上述した実施形態では、エアシリンダ300によってZ軸方向に移動させられ、及び輪郭部材1110に押し付けられていたが、そのためにエアシリンダ以外の駆動方法が用いられてもよい。例えば、開閉装置では、ばねの弾性エネルギー、モータの回転エネルギー、磁性体の吸引力又は斥力等を利用して、遮音パネル200をZ軸方向に移動させるようにしてもよい。また、遮音パネル200は、枠部材100に設けられていないエアシリンダによってZ軸方向に移動させられてもよい。
【0042】
図15は、本変形例に係る開閉装置10dを示す図である。開閉装置10dは、枠部材100に取り付けられたエアシリンダ300ではなく、外部空間4000の床に棒状の部材によって固定されているエアシリンダ300dを備え、エアシリンダ400を備えていない。また、遮音パネル200をZ軸方向に移動させる際の軌道を案内する案内部材110が枠部材100に設けられている。案内部材110は、枠部材100の鉛直上方側及び下方側に設けられたZ軸方向に延伸する棒状の部材である。遮音パネル200dには、案内部材110上を嵌め込むための溝が設けられている。遮音パネル200dは、この溝を案内部材110に嵌め込むことで、X軸方向に位置をずらすことなく、Z軸方向に移動することができる状態となる。つまり、遮音パネル200dは、Z軸方向に移動可能な状態で枠部材100によって支持されている。また、遮音パネル200dには、枠部材100との間に図示せぬばねが設けられており、Z軸の負方向に付勢されている。エアシリンダ300dは、開口部1200及び輪郭部材1110に対向する位置に設置されている。また、エアシリンダ300dは、ロッド310dが最もZ軸の負方向側に移動させた状態のときに、X軸方向に移動してくる枠部材100がロッド310dに接触しない位置に設置されている。
【0043】
エアシリンダ300dは、枠部材100が上述した第1位置に移動してくると、ロッド310dをZ軸方向に移動させ、遮音パネル200を開口部1200側に向けて移動させる。この際、遮音パネル200は、案内部材110によって定められる軌道に沿って移動し、輪郭部材1110に向けて押し付けられる。この場合、エアシリンダ300dは、床に対して固定されているため、輪郭部材1110側からの反作用が遮音パネル200dを介して加えられても、Z軸の負方向への移動が規制された状態となっている。よって、開閉装置10dは、エアシリンダ400を備えていない。そして、エアシリンダ300dがロッド310dをZ軸の負方向に移動させると、遮音パネル200dは、上記ばねによってZ軸の負方向に付勢されているため、この方向に移動して元の位置に戻る。
以上で述べた実施形態及び本変形例において共通しているとおり、要するに、開閉装置においては、遮音パネルが枠部材によってZ軸方向に移動可能な状態で支持されており、枠部材が第1位置にあるときに、その遮音パネルをZ軸方向に向けて上述した第2位置まで移動させるようにエアシリンダが設けられていればよい。
【0044】
(変形例12)
エアシリンダ400は、上述した実施形態では、エアシリンダ300をZ軸方向に押すことで、輪郭部材1110からの反作用による移動を規制したが、これに限らず、枠部材100をZ軸方向に押してもよい。その場合、ロッド410を接触させる位置が、反作用が加えられるエアシリンダ300が取り付けられている位置に近いほど、枠部材100にねじれが生じにくくなる。このため、ロッド410を枠部材100に接触させる位置は、エアシリンダ300に近いほど望ましい。
また、エアシリンダ300及び枠部材100は、上述した実施形態では、エアシリンダ400によってZ軸の負方向への移動が規制されたが、これ以外の方法でこの移動が規制されてもよい。例えば、床に固定された支え棒によって、この移動を規制させてもよい。
【0045】
図16は、本変形例に係る開閉装置10eを示す図である。図16(a)では、枠部材100がX軸方向に移動する前の状態が示されている。開閉装置10eは、エアシリンダ400の代わりに、規制部材430を備えている。規制部材430は、外部空間4000において、開口部1200と対向する位置で床に固定されている。規制部材430は、枠部材100と共に移動してくるエアシリンダ300のZ軸の負方向側に位置し、かつ、ロッド310と接触しない高さとなるように設置されている。図16(b)では、枠部材100がX軸方向に移動してきた状態が示されている。この状態でエアシリンダ300が遮音パネル200を輪郭部材1110側に押し付けると、輪郭部材1110からの反作用によってエアシリンダ300をZ軸の負方向に押し返えされる。この反作用によりZ軸の負方向に移動しようとするエアシリンダ300は、規制部材430と接触してその接触した位置よりもZ軸の負方向に移動しないように規制される。このように、規制部材430は、エアシリンダ400と同様に、エアシリンダ300及びこれが取り付けられている枠部材100のZ軸の負方向への移動を規制している。
【0046】
(変形例13)
開閉装置10は、上述した実施形態では、防音室1000の外側(外部空間4000)に設置されていたが、防音室1000の内部に設置されていてもよい。また、開閉装置10は、防音室1000とは形状が異なる部屋の開口部、又は、1つ若しくは3つ以上の開口部を開閉するために設置されてもよい。要するに、開閉装置10は、防音室として用いられる部屋の壁に設けられている開口部を開閉するためであれば、どこに設置されてもよい。
【0047】
(変形例14)
制御部2、操作部3及び記憶部5は、上述した実施形態では、防音空間提供システム1に備えられていたが、開閉装置10に備えられていてもよい。この場合、例えば、利用者が操作部3を操作して、その操作データを供給されたことを契機に制御部2が各エアシリンダに指示を出し、開口部1200(1300)を開閉するといった具合である。
また、防音空間提供システム1には、上述した実施形態では、検知部4が備えられていたが、これが備えられていなくともよい。この場合、例えば、利用者が検査対象W1の運び入れが完了したことを判断して操作部3を操作し、開閉装置10が操作部3からの操作データの供給を契機にして開口部1200を開閉する。また、例えば、開閉装置10は、搬送装置2000の動作の開始から定められた時間が経過したときに、検査対象W1の運び入れが終わったものとみなして開口部1200を閉じる、といった具合である。
要するに、各エアシリンダを動作させるタイミングが指示されるようになっていれば、制御部、検知部又は記憶部がどこに備えられていてもよく、また、操作部から人の手でそのタイミングが指示されるようになっていてもよい。
【0048】
(変形例15)
本発明は、開閉装置又はこれを備えた防音空間提供システムとしても把握されるものである。なお、防音室1000は、上述した実施形態では、製品を検査するために用いられるものであったが、その使用用途はこれに限らない。また、使用用途が異なる場合、その使用用途に応じた大きさの空間を防音室1000ように使用してもよい。例えば、映画館又はコンサート会場等の出入り口を、防音空間提供システム1のように構成してもよい。この場合、枠部材の軌道の周辺に人がいるか否かを検知する検知手段を備えさせて、検知手段により人が検知されないときに開口部を閉じるといった具合である。要するに、防音室は、開口部を閉じたときの防音性を高めつつ、その開口部の開閉を速く行うことが求められる空間であれば、どのような空間として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…防音空間提供システム、2…制御部、3…操作部、4…検知部、5…記憶部、10…開閉装置、20…レール、100…枠部材、110…案内部材、200…遮音パネル、210、1120…パッキン、300、400、510…エアシリンダ、310、410、511…ロッド、420…固定部材、430…規制部材、520…レール、530…車輪、1000…防音室、1100…壁、1110…輪郭部材、1200、1300…開口部、2000…搬送装置、4000…外部空間、Wp、Wq…曲部、Ur、Us、Ut1、Ut2…表面積拡大部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に開口部を設けた防音室において、
前記防音室の前記開口部を開閉し、当該開口部の縁よりも外側の部分に密着可能な遮音パネルと、
前記遮音パネルを移動可能に支持する支持部材と、
前記遮音パネルが前記開口部に対向する第1位置に到達するまで前記支持部材を移動させる第1移動手段と、
前記第1移動手段によって前記支持部材が移動させられて前記遮音パネルが前記第1位置に到達したときに、当該遮音パネルを、前記外側の部分に密着する第2位置まで移動させる第2移動手段とを備え、
前記遮音パネルは、前記第2位置において、前記外側の部分と密着することにより前記開口部を塞ぐ
ことを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記第2位置において、前記外側の部分の表面と前記遮音パネルの表面とが密着する領域は、前記防音室の外側にある空間から当該防音室に至るまで、屈曲面若しくは曲面で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記第2位置は、前記遮音パネルが前記外側の部分に向けて押し付けられる状態となる位置であり、
前記第2移動手段が前記遮音パネルを当該第2位置まで移動させたときに、当該第2移動手段が前記外側の部分から受ける反作用によって前記支持部材が移動することを規制する規制手段を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記第2移動手段が前記遮音パネルを前記第2位置まで移動させたときに当該遮音パネルと前記外側の部分との間に挟まれる前記開口部を囲んでいる形状の密封材を備える
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記外側の部分の表面と前記遮音パネルの表面と前記密封材とによって封止される領域において、前記外側の部分の表面と前記遮音パネルの表面の少なくとも一方に、表面積拡大部が形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−91956(P2013−91956A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233979(P2011−233979)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】