説明

開閉駆動装置

【課題】クラッチの耐久性を低下させることなく、開閉体を任意の位置で確実に停止させることができる開閉駆動装置を提供する。
【解決手段】モータと、外表面に雄ねじが形成されたロッド部材と、モータの回転力をロッド部材に伝達したり、遮断したりするクラッチと、ロッド部材と螺合し、ロッド部材の回転により直線移動するナット部材と、ナット部材の直線移動により開閉体を開閉作動させる連結部材と、ロッド部材の回転を規制する回転規制手段とを有し、回転規制手段は、係合位置と係合解除位置との間で移動可能な係合部材と、ロッド部材に設けられ、係合部材と係合することで当該ロッド部材の回転を規制する被係合部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両開口部に配置された開閉体の開閉駆動装置に関するものであり、さらに詳しくは自動車等の車両のバックドア又はトランクドア(トランクリッド)の開閉駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の多くには、後開口に跳ね上げ方向に開くバックドア又はトランクドア(トランクリッド)等の開閉体が備えられている。最近、利便性及び(又は)安全性を高める等の目的で、開閉体を電動で行う開閉装置を備えた車両が増えてきている。
【0003】
例えば、特開2004−175211号公報、特開2004−346598号公報に、電力を用いた開閉装置が提案されている。特開2004−175211号公報に記載のドア開閉システムには、モータで送りねじを回転させ、送りねじと螺合して移動するスライダを用いたドア開閉システムが開示されている。
【0004】
また、特開2004−346598号公報に記載の開閉体駆動装置では、ラック及びピニオンを用いて開閉体を押す又は引く動作を行い、開閉体の駆動を行う開閉体駆動装置が開示されている。
【0005】
また、上述のような跳ね上げ方向に開く開閉体は、開閉させる空間が必要であり、開閉中のドアが障害物や人と接触するのを避けたり、強風や降雨のため開閉体の開口量を小さくしたりするため、任意の位置で開閉体を静止させたい場合がある。前記開閉体を任意の位置で静止する開閉装置として、特開2006−265982号公報には、テールゲート(開閉体)が閉鎖認識範囲と開放認識範囲との間の途中位置にあるときにアウターハンドルが操作されると電磁クラッチが接続状態に切り替えられ、これによりガスステーの付勢力に抗してテールゲートを途中位置で保持させることができる車両用自動開閉装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−175211号公報
【特許文献2】特開2004−346598号公報
【特許文献3】特開2006−265982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開2006−265982号公報に記載の車両用自動開閉装置では、クラッチを駆動してテールゲート(開閉体)を停止しているものであり、クラッチを結合させて任意の位置で停止させるためにクラッチの摩耗が促進され、耐久性が低下してしまうおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、クラッチの耐久性を低下させることなく、開閉体を任意の位置で確実に停止させることができる開閉駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、車両の開閉体を開閉駆動する開閉駆動装置であって、モータと、外表面に雄ねじが形成されたロッド部材と、前記モータの回転力を前記ロッド部材に伝達したり、遮断したりするクラッチと、前記ロッド部材と螺合し、前記ロッド部材の回転により直線移動するナット部材と、前記ナット部材の直線移動により前記開閉体を開閉作動させる連結部材と、前記ロッド部材の回転を規制する回転規制手段とを有し、前記回転規制手段は、係合位置と係合解除位置との間で移動可能な係合部材と、前記ロッド部材に設けられ、前記係合部材と係合することで当該ロッド部材の回転を規制する被係合部材とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明によると、係合位置と係合解除位置との間で移動可能な係合部材と、前記係合部材と係合することでロッド部材の回転を規制する被係合部材とを含む回転規制手段が機械的に係合するので、クラッチの耐久性を低下させることなく、開閉体を任意の位置で確実に停止することができる。
【0011】
(2)ロッド部材の軸方向に対して垂直方向に移動する係合部材と、ロッド部材の外周に設けられている被係合部材とが設けられている場合、前記係合部材と前記被係合部材とが機械的に係合するので、係合が確実であり、開閉体を任意の位置でより確実に停止させることができる。
【0012】
(3)凸状に形成された係合部と、ロッド部材の回転方向に所定の間隔を空けて複数設けられた凹状の被係合部材とが機械的に係合する構成となっている場合、係合が確実であり、開閉体を任意の位置で一層確実に停止させることができる。
【0013】
(4)本発明の係合部材がソレノイドにより係合位置と係合解除位置の間を移動可能にされている場合、前記係合部材と被係合部材との係合が確実であり、開閉体を任意の位置で更に確実に停止させることができる。また、前記係合部材の移動が瞬時に行われるので、開閉体を早急に停止させることができる。
【0014】
(5)本発明のソレノイドが自己保持型ソレノイドである場合、係合部材の移動および保持が確実であり、開閉体を任意の位置でより一層確実に停止させることができる。また、ソレノイドの作動を保持させるために電流を流す必要が無いので、バッテリーへの負担も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる開閉駆動装置を用いた車両の後部を示す概略図である。
【図2】本発明にかかる開閉駆動装置の正面図である。
【図3】図2に示す開閉駆動装置をIII-III線で切断した断面図である。
【図4】係合部材の一例の正面図である。
【図5】図4に示す係合部材の側面図である。
【図6】被係合部材の一例の軸方向から見た図である。
【図7】図6に示す被係合部材を軸に沿って切断したときの断面図である。
【図8】係合部材と被係合部材とが係合していない状態の一部を省略した開閉駆動装置の断面図である。
【図9】合部材と被係合部材とが係合している状態の一部を省略した開閉駆動装置の断面図である。
【図10】図8に示す回転規制部をX−X線で切断した断面図である。
【図11】図9に示す回転規制部をXI−XI線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる開閉駆動装置を用いた車両の後部を示す概略図であり、図2は本発明にかかる開閉駆動装置の正面図である。図1に示す開閉駆動装置Aは、車両Crの内部に配置され、車両Crの後部開口部の上端に備えられた支点Fcに回動自在に連結された開閉体Drを開閉する装置である。なお、車両Crでは、開閉体Drの開閉を開閉駆動装置Aだけを用いるものとしているが、これに限定されるものではなく、開閉駆動装置Aと開閉体Drの移動を補助するダンパーを用いる構成としてもよい。以下に、本発明にかかる開閉駆動装置Aの詳細について図面を参照して説明する。
【0017】
図2に示すように、本発明にかかる開閉駆動装置Aは、モータMと、クラッチ1と、ロッド部材2と、ナット部材3と、連結部材4と、回転規制部5(回転規制手段)とを有している。そして、回転規制部5は、係合部材51と、被係合部材52とを含む。以下に本発明にかかる開閉駆動装置Aの各部の詳細について図面を参照しつつ説明する。なお、図2に示す開閉駆動装置Aでは、理解を容易にするためモータMの一部の角度を変え、断面で表示している。
【0018】
図2に示すように、クラッチ1は、ハウジング10の内部に配置された電磁式クラッチである。クラッチ1は従来よく知られた構成であり、図2に示すように、入力軸11と、出力軸12とを備えている。クラッチ1は内部にコイル(不図示)を備えており、コイルに電力が供給されることで、入力軸11と出力軸12とが連結され回転力(トルク)が伝達される。また、コイルに電流が供給されていないとき、入力軸11と出力軸12とが分離され、回転力(トルク)の伝達が停止される。
【0019】
クラッチ1の入力軸11には、モータMの回転軸に取り付けられたウォームギアWgと歯合するウォームホイール111が取り付け固定されている。これにより、モータMの回転軸に発生する回転力がウォームギアWg及びウォームホイール111を介して入力軸11に伝達される。なお、ウォームギアWg及びウォームホイール111の形状を調整することで、モータMから入力軸11に回転力を伝達するときの減速比を調整することが可能である。なお、図2では、理解を容易にするため、モータMの回転軸を紙面に対して垂直で示しているが、実際にはモータMの中心より伸びるものである。
【0020】
クラッチ1の出力軸12はジョイント部材6を介して、ロッド部材2と連結されている。ジョイント部材6はクラッチ1の出力軸12が内部に係合されるクラッチ係合部61と、ロッド部材2を固定するロッド固定部62とを備えている。クラッチ係合部61は、筒形状の部材であり、内部にクラッチ1の出力軸12が挿入される。クラッチの出力軸12の外周面には、周方向に突出し回転軸と平行に伸びる凸状であるスプライン(不図示)が形成されている。そして、クラッチ係合部61は、内周面にスプラインが係合する凹溝(不図示)を備えている。これにより、出力軸12が回転すると、スプラインと凹溝との係合により、出力軸12の回転力がジョイント部材6に伝達される。
【0021】
次にロッド部材2について説明する。図2に示すように、ロッド部材2は、ガイドレール20の内部に回転可能に配置されている。ロッド部材2は、柱状の部材であり、一方の端部に形成された円柱状の連結部21と、連結部21と反対側の端部に形成された被支持部22と、連結部21と被支持部22との間の部分のスクリュー部23とを備えている。
【0022】
ガイドレール20は、金属板を断面コの字状又はリブ付チャンネル状に曲げて成形した部材である。図2等に示すように、ガイドレール20の側面には長手方向に連続する開口202が形成されている。また、ガイドレール20の長手方向先端にはセットプレート201が取り付けられているとともに、反対側の端部にクラッチ1のハウジング10に取り付けるためのブラケット203が固定されている。連結部21が軸受Brgを介してブラケット203に回転可能に支持されているとともに、被支持部22がセットプレート201に回転可能に支持されている。
【0023】
このように、ロッド部材2の両端部(連結部21及び被支持部22)がガイドレール20の両端に配置されたブラケット203及びセットプレート201に回転可能に支持されることでロッド部材2はガイドレール20の内部で回動可能に支持されている。そして、ブラケット203をハウジング10にねじ止めされている。
【0024】
連結部21は、ジョイント部材6に備えられた凹穴であるロッド固定部62に挿入固定されている。ジョイント部材6はクラッチ1の出力軸12と連結されているので、連結部21は出力軸12とジョイント部材6を介して連結される。このとき、クラッチ1の出力軸12とロッド部材2との回転中心が高精度に一致することが好ましい。そのため、ロッド固定部62と連結部21の固定は、圧入、溶接、キーによる連結等を軸のずれを抑制できる固定方法を採用することが好ましい。なお、本発明に開閉駆動装置Aでは、連結部21が挿入されたロッド固定部62の外側から圧力をかけ、ロッド固定部62と連結部21とを圧着する(かしめる)方法が用いられている。
【0025】
また、図2に示しているように、連結部21には、ジョイント部材6のロッド固定部62以外にも、軸受Brg及び回転規制部5の被係合部材52が取り付けられている。連結部21と被係合部材52とはキー500を用いて締結されるものであり、連結部21の外周面には、キー500が挿入されるキー溝211(図7参照)が形成されている。なお、被係合部材52と連結部21の締結はキーによるものに限定されるものではなく、圧入や溶接等であってもよい。軸受Brgは従来よく知られた、玉軸受であり、ブラケット203に固定され、ロッド部材2の連結部21を回転可能に支持している。
【0026】
被支持部22はガイドレール20の先端に取り付けられたセットプレート201に形成された凹穴に回動可能に挿入されるものである。被支持部22がセットプレート201に支持されていることで、ロッド部材2の先端側がふらつくのを抑制し、ロッド部材2のたわみを抑制している。なお、図2に示す開閉駆動装置Aでは、被支持部22は凹穴に挿入されているだけであるが、玉軸受を介して取り付けられるようにしてもよい。
【0027】
なお、図2に示す開閉駆動装置Aにおいて、連結部21及び被支持部22はスクリュー部23の外径よりも小さな外径の円柱状としているが、これに限定されるものではなく、少なくとも一方がスクリュー部23の外径よりも大きな外径の円柱であってもよい。なお、ロッド部材2を円柱状の金属棒を切削加工で製造する場合、連結部21及び被支持部22の外径がスクリュー部23の外径よりも小さい方が、製造が容易であるため、開閉駆動装置Aでは、連結部21及び被支持部22の外径をスクリュー部23の外径よりも小さくしている。スクリュー部23の外周面には、雄ねじが形成されており、ナット部材3の後述する雌ねじ部31が螺合している。
【0028】
次にナット部材3について新たな図面を参照して説明する。図3は図2に示す開閉駆動装置をIII-III線で切断した断面図である。図3において、ナット部材3は左半分を断面で示している。図3に示すように、ナット部材3はスクリュー部23の雄ねじと螺合する雌ねじ部31と、ガイドレール20の内部と接触するライニング32と、ガイドレール20に形成されている開口202より突出し、連結部材4を回動可能に支持するスタッド部33とを備えている。
【0029】
雌ねじ部31は、ナット部材3の本体と別体で形成されており、ナット部材3の本体の中央部を貫通して固定されている。雌ねじ部31がスクリュー部23と螺合していることから、ロッド部材2の回転によって雌ねじ部31はロッド部材2の軸に沿う方向に直線移動する。これにより、雌ねじ部31が備えられたナット部材3は、ロッド部材2及びガイドレール20にガイドされ、ロッド部材2の軸に沿う方向に移動する。なお、雌ねじ部31はナット部材3の本体と一体形成された雌ねじであってもよい。
【0030】
雌ねじ部31とスクリュー部23の雄ねじとは接触しているので、雌ねじ部31とスクリュー部23の雄ねじとの摩擦を低減するため、グリースが塗布されている。これにより雌ねじ部31及び(又は)スクリュー部23の雄ねじの摩耗、発熱を減らすことができる。また、摩擦によるロスが少ないので、モータMの駆動に要する電力も低減することが可能である。
【0031】
なお、グリース以外の潤滑剤が塗布されていてもよく、雌ねじ部31及び(又は)スクリュー部23が摩擦の小さい材料で形成されている場合、潤滑剤を塗布しなくてもよい。また、ライニング32はガイドレール20と接触することで、ナット部材3の摺動時のがたつきやねじれを抑制している。ライニング32とガイドレール20との間にもグリースが塗布し、ライニング32とガイドレール20との摩擦を低減し、ライニング32及び(又は)ガイドレール20の摩耗を低減している。
【0032】
なお、ライニング32はフッ素樹脂等の摺動性の高い材料で形成することで、グリースのような潤滑剤の塗布を省略することが可能である。なお、ライニング32を容易に着脱できるように形成しておくことで、ライニング32が摩耗したときに交換できる。これにより、ナット部材3ががたついたりねじれたりするようになっても、ライニング32を取り換えるだけでよいので無駄を省くことができる。
【0033】
連結部材4は長尺棒状部材であり、一方の端部がスタッド部33に、他方の端部が開閉体Drにそれぞれ回動可能に支持されている。開閉体Drと開閉駆動装置Aとがリンク機構を構成しており、ナット部材3の直線移動により連結部材4を介して開閉体Drが押され(引かれ)、開閉体Drは支点Fcを中心に開閉作動される。なお、開閉体Drの開閉動作の詳細については後ほど詳しく説明する。
【0034】
回転規制部5は、ロッド部材2の回転を規制することで、ナット部材3の摺動を停止するものである。回転規制部の詳細について図面を参照して説明する。図4は係合部材の一例正面図であり、図5は図4に示す係合部材の側面図であり、図6は被係合部材の一例の軸方向から見た図であり、図7は図6に示す被係合部材を軸に沿って切断したときの断面図である。
【0035】
図2、4等に示すように、回転規制部5は、中空で直方体形状のケース50と、ケース50の内部に直線上を往復できるように配置された係合部材51と、ロッド部材2の連結部21に取り付けられた被係合部材52と、係合部材51を移動させるための駆動力を出力するソレノイド53と、係合部材51及びソレノイド53とを連結し、ソレノイド53の動作を係合部材51に伝達するリンクアーム54とを備えている。
【0036】
ケース50はガイドレール20のクラッチ1側の端部の近傍に形成された貫通孔200を係合部材51が貫通できるように、ガイドレール20に固定されている。なお、ケース50は、係合部材51がロッド部材2の中心軸方向に対して垂直方向に移動するように、ガイドレール20に固定されている。また、ケース50は、係合部材51の移動をガイドする移動ガイド501と、リンクアーム54を回転自在に支持する支持軸502とを備えている。
【0037】
係合部材51は、図4、図5に示すように、係合部511と、係合部511と反対側に形成された凹溝512と、凹溝512に備えられた支持軸513とを備えた円柱状の部材である。
【0038】
係合部511は中心軸を挟んで配置された2つの傾斜面を有している。係合部511の2つの傾斜面は、先端に向かって互いに接近するように凸状に形成されており、この2つの傾斜面は、被係合部材52の後述する係合凹部523の側壁と同じ又は略同じ傾斜角を有している。
【0039】
凹溝512は係合部511を径方向に貫通する溝であり、凹溝512の一部を横切るように支持軸513が配置されている。なお、図4、図5に示しているように、支持軸513は、凹溝512と交差(直交)するように配置されており、係合部材51を貫通している。支持軸513はリンクアーム54の後述する係合部連結孔543を貫通している。なお、係合部材51は円柱に限るものではなく、断面多角形(例えば六角形)の柱状部材であってもよい。
【0040】
被係合部材52は上述した通り、ロッド部材2の外周に設けられ、連結部21に取り付け固定されている。図6、図7に示すように、被係合部材52は円筒状の部材であり、ロッド部材2の連結部21が貫通する貫通孔521と、貫通孔521の内面に形成され軸方向の両端部に貫通する貫通溝522と、ロッド部材2の回転方向に所定の間隔を空けて複数設けられた凹状の係合凹部523とを備えている。なお、係合凹部523は周方向に5個形成されているが、それに限定されるものではなく、さらに多く形成されていてもよく、少なくてもよい。なお、係合凹部が多い場合、製造に手間と時間はかかるが、ロッド部材2の停止角度を精度よく調整することが可能である。少ない場合、製造の手間と時間を省くことができるが、ロッド部材2の停止角度の精度が低下する。また、開閉駆動装置Aでは、被係合部材52を、ロッド部材2と別部材として作製し、組み付けるものとしているが、一体に形成されるものであってもよい。
【0041】
被係合部材52は次のようにして、連結部21に取り付けられる。まず、連結部21のキー溝211にキー500を挿入する。キー500は直方体形状の部材でありキー溝211がロッド部材2の軸と平行に形成されているので、キー溝211に挿入されたキー500は、ロッド部材2の軸と平行に配置される。被係合部材52の貫通溝522にキー500が嵌るように、被係合部材52を連結部21に取り付ける。これにより、キー500はキー溝213と貫通溝522との両方と周方向に係合しているので、被係合部材52とロッド部材2との周方向の相対的な移動を抑制することが可能である。
【0042】
図2に示すように、ソレノイド53は、電力によって可動ピン531を駆動するアクチュエータである。ソレノイド53は、自己保持型ソレノイドであり、可動ピン531が突出した位置又は引込んだ位置にあるとき、電力の供給を停止しても、可動ピン531が移動しないように保持するものである。可動ピン531の突出先端には、リンクアーム54の後述するソレノイド連結孔542を貫通するリンクピン532が備えられている。
【0043】
リンクアーム54は、中央部分で屈曲した板状の部材であり、中央部分に形成され、支持軸502が貫通する被支持孔541が形成されている。また、リンクアーム54の一方の端部には、ソレノイド53のリンクピン532が貫通する長孔形状のソレノイド連結孔542が、他方の端部には係合部材51の支持軸513が貫通する長孔形状の係合部連結孔543が形成されている。
【0044】
リンクアーム54は、被支持孔541を支持軸502に回転可能に支持されていることで、シーソーのように形成されており、一方の端部が移動すると他方の端部は被支持孔541を挟んで反対方向に移動する。また、図2に示しているように、リンクアーム54にはダンパー55が取り付けられており、リンクアーム54の動作速度を低減している。これにより、例えば、係合部材51が被係合部材52と接触する等の部材同士が接触するときの音の発生を低減している。なお、ダンパー55はなくても構わない。
【0045】
図2に示すように、回転規制部5は、係合部材51とソレノイド53とが並んで配置されている。係合部材51の移動方向とソレノイド53の可動ピン531の移動方向とは平行であり、可動ピン531のリンクピン532がリンクアーム54のソレノイド連結孔542を貫通することで、可動ピン531とリンクアーム54とが連結されている。また、係合部材51の支持軸513がリンクアーム54の係合部連結孔543を貫通することで、係合部材51とリンクアーム54とが連結されている。
【0046】
以上のように形成された回転規制部5の動作について新たな図面を参照して説明する。図8は係合部材と被係合部材とが係合していない状態の一部を省略した開閉駆動装置の断面図であり、図9は係合部材と被係合部材とが係合している状態の一部を省略した開閉駆動装置の断面図であり、図10は図8に示す回転規制部をX−X線で切断した断面図であり、図11は図9に示す回転規制部をXI−XI線で切断した断面図である。
【0047】
ソレノイド53の可動ピン531が引込み方向に移動すると、リンクアーム54のソレノイド連結孔542がリンクピン532に引っ張られる。このとき、図8に示すように、リンクアーム54は支持軸502を中心にL1方向に回転し、係合部連結孔543が支持軸513を引っ張る。これにより、係合部材51はロッド部材2より離れた、すなわち、被係合部材52との係合が外れて、ロッド部材2が回転可能になる係合解除位置P1(図8、図10参照)に移動する。なお、上述しているように、ソレノイド53が自己保持型ソレノイドであるので、ソレノイド53への電力が停止しても、係合部材51は係合解除位置P1に保持される。
【0048】
一方、ソレノイド53の可動ピン531が突出方向に移動すると、リンクアーム54のソレノイド連結孔542がリンクピン532に押される。このとき、図9に示すように、リンクアーム54は支持軸502を中心に図中R1方向に回転し、係合部連結孔543が支持軸513を押す。これにより、係合部材51はロッド部材2に接近し、被係合部材52と係合する係合位置P2(図9、図11参照)に移動する。なお、上述しているように、ソレノイド53が自己保持型ソレノイドであるので、ソレノイド53への電力が停止しても、係合部材51は係合位置P2に保持される。以上のように、係合部材51はソレノイド53により係合解除位置P1と係合位置P2の間を移動可能にされている。
【0049】
次に開閉駆動装置Aの動作について図面を参照して説明する。開閉駆動装置Aは、モータMより出力された回転力は、クラッチ1を介してロッド部材2に伝達されている。クラッチ1及びモータMが通電状態のとき、モータMが駆動されているとともに、回転力がロッド部材2に回転力が伝達される。
【0050】
回転規制部5の係合部材51が係合解除位置P1にあるとき(図8、図10参照)、係合部材51と被係合部材52とが離れた状態となっているので、回転規制部5はロッド部材2の回転を規制しない状態となっている。この状態のとき、ロッド部材2はモータMの回転力により回転される。ロッド部材2が回転することで、ロッド部材2のスクリュー部23と螺合している雌ねじ部31を備えたナット部材3がガイドレール20に沿って摺動する。
【0051】
図1に示しているように、開閉駆動装置A、連結部材4及び開閉体Drがリンク機構を構成しているので、開閉体Drは支点Fcを中心に開く方向又は閉じる方向に移動する。なお、ナット部材3の摺動方向はロッド部材2の回転方向によって決まる。すなわち、ロッド部材2の回転方向によって、開閉体Drの移動方向(開く方向又は閉じる方向)が決定される。このことから、モータMの回転方向を切り替えることで開閉体Drを開く又は閉じることが可能である。
【0052】
車両Crの背面開口に配置される開閉体Drは、後方に回動しつつ開くので、開閉時に車両Crの後背部に大きなスペースが必要となる。十分なスペースの無い場所で開閉体Drを開く場合、降雨や風で開口を小さくしたい場合、又は、開閉体Drと人あるいは壁等とが接触しそうな場合、開閉体Drの開閉を途中で停止し、開閉体Drをその位置に保持する必要がある。つまり、この手の開閉体Drでは、全開状態から全閉状態の間の任意の場所で停止させ、その位置を保持することが要求される。
【0053】
このような開閉体Drを開閉の途中の任意の位置で保持するため、本発明の開閉駆動装置Aでは回転規制部5でロッド部材2の回転を規制する方法が用いられている。以下に、ロッド部材2の回転の規制方法について詳しく説明する。
【0054】
回転規制部5のソレノイド53を動作させ、可動ピン531を突出させる。これにより、リンクアーム54を介して係合部材51が係合解除位置P1から係合位置P2に移動する。このとき、係合部材51は係合部511が被係合部材52の係合凹部523と係合する。これにより、被係合部材52の動きが係合部材51に規制され、被係合部材52のキー締結されたロッド部材2の回転も規制される。これにより、ナット部材3の移動が停止し、開閉体Drが静止する。なお、上述したようにソレノイド53は自己保持型ソレノイドであるので、ソレノイド53は、可動ピン531が突出した状態で保持される。これにより、係合部材51も係合部511が係合凹部523に係合した係合位置P2(図9、図11参照)に保持される。
【0055】
なお、ロッド部材2が回転している途中で、係合部材51が係合解除位置P1から係合位置P2に移動するとき、係合部511が被係合部材52の外周部分の係合凹部523が形成されていない部分と接触する場合もある。その場合、ロッド部材2が回転することで、係合部511が隣の係合凹部523に挿入され、これにより係合部材51と被係合部材52とが係合され、ロッド部材2の回転が規制される。
【0056】
また、係合部材51の移動方向は、ロッド部材2の軸と直交するものであり、係合部材51の係合部511が被係合部材52の係合凹部523と係合しているとき、係合部511が係合凹部523の側壁から受ける力は、係合部材51の移動方向と交差している。一方、開閉体Drは重力によって下方(閉じる方向)に連結部材4を押す。ナット部材3が連結部材4に押され、ナット部材3が押されることでロッド部材2に回転力が発生する。この回転力によって、係合凹部523の側壁が係合部511を押す。この係合凹部523の側壁が係合部511を押す力は、係合部材51を押し戻す力になりにくく、上述したような力が係合部511に作用しても、ソレノイド53の保持力で係合部材51を係合位置P2に保持することができる。
【0057】
本発明にかかる開閉駆動装置Aを用いることで、係合部材51と被係合部材52とが機械的に係合するので、開閉体Drを任意の位置で確実に停止することが可能である。また、係合部材51と被係合部材52とが係合したのちは、ソレノイド53に電力を供給しなくてもよいので電力消費を低減することが可能である。さらに、本発明の開閉駆動装置Aでは、係合部材51と被係合部材52とが機械的に係合することで、開閉体Drを任意の位置に保持するので、クラッチ1への通電を停止することができる。これにより、従来のようにクラッチでロッド部材2を保持する構成のものに対して、クラッチの摩耗を低減することができ、クラッチの耐久性を向上させることができる。
【0058】
また、ロッド部材とナット部材とをボールねじ構造を用いてもよい。このような、ボールねじ構造を用いることで、ナット部材の摺動時のスクリューと雌ねじとの摩擦を低減し、ロッド部材及び(又は)ナット部材の摩耗を低減することが可能である。また、摩擦を低減することができることで、モータの出力を小さくすることが可能であるので、それだけ、消費電力を低減させることも可能である。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明はリアドアあるいはトランクリッド等の跳ね上げ式の開閉体を電動で開閉する開閉装置として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 クラッチ
11 入力軸
12 出力軸
2 ロッド部材
20 ガイドレール
200 貫通孔
201 セットプレート
202 開口
203 ブラケット
21 連結部
211 キー溝
22 被支持部
23 スクリュー部
3 ナット部材
31 雌ねじ部
32 ライニング
33 スタッド部
4 連結部材
5 回転規制部(回転規制手段)
50 ケース
500 キー
501 移動ガイド
502 支持軸
51 係合部材
511 係合部
512 凹溝
513 支持軸
52 被係合部材
521 貫通孔
522 貫通溝
523 係合凹部
53 ソレノイド
531 可動ピン
532 リンクピン
54 リンクアーム
541 被支持孔
542 ソレノイド連結孔
543 係合部連結孔
55 ダンパー
6 ジョイント部材
61 クラッチ係合部
62 ロッド固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開閉体を開閉駆動する開閉駆動装置であって、
モータと、
外表面に雄ねじが形成されたロッド部材と、
前記モータの回転力を前記ロッド部材に伝達したり、遮断したりするクラッチと、
前記ロッド部材と螺合し、前記ロッド部材の回転により直線移動するナット部材と、
前記ナット部材の直線移動により前記開閉体を開閉作動させる連結部材と、
前記ロッド部材の回転を規制する回転規制手段とを有し、
前記回転規制手段は、
係合位置と係合解除位置との間で移動可能な係合部材と、
前記ロッド部材に設けられ、前記係合部材と係合することで当該ロッド部材の回転を規制する被係合部とを含むことを特徴とする開閉駆動装置。
【請求項2】
前記係合部材は、前記ロッド部材の軸方向に対して垂直方向に移動するように設けられ、
前記被係合部は、前記ロッド部材の外周に設けられていることを特徴とする請求項1記載の開閉駆動装置。
【請求項3】
前記係合部材の係合部は凸状に形成され、前記被係合部は前記ロッド部材の回転方向に所定の間隔を空けて複数設けられた凹状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の開閉駆動装置。
【請求項4】
前記係合部材は、ソレノイドにより係合位置と係合解除位置の間を移動可能にされてなることを特徴とする請求項1、2または3記載の開閉駆動装置。
【請求項5】
前記ソレノイドは、自己保持型ソレノイドであることを特徴とする請求項4記載の開閉駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−14996(P2013−14996A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150197(P2011−150197)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】