間充織幹細胞とその使用
動物の自己免疫疾患、アレルギー応答、癌、炎症性疾患、又は線維症の治療方法、動物の臓器又は組織における創傷治癒の促進方法、上皮損傷の修復方法、及び血管新生の促進方法であって、有効量で間充織幹細胞を上記動物に投与する前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2007年3月22日に出願された米国特許出願番号第11/726,676号について言及し、それに対する優先権を主張し、そして、それから受ける利益を主張する。
【0002】
連邦支援の研究又は開発
本発明は、海軍省より与えられた契約番号第N66001-02-C-8068号の下、国庫補助により作り出された。政府は、本願発明の特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
本願発明は、間充織幹細胞に関連する。より特に、本願発明は、様々な組織及び臓器における血管新生を促進し、自己免疫疾患を治療し、アレルギー応答を治療し、癌を治療し、炎症性疾患及び障害を治療し、創傷治癒を促進し、炎症を治療し、そして、上皮損傷を修復することを含めた間充織幹細胞の新規使用に関する。
【0004】
間充織幹細胞(MSC)は、骨芽細胞、筋細胞、軟骨細胞、及び脂肪細胞を含めた系統に容易に分化する多能性幹細胞である(Pittengerら、Science, vol. 284、143ページ(1999年);Haynesworthら、Bone, vol. 13、69ページ(1992年);Prockop、Science, vol. 276、71ページ(1997年))。試験管内での研究は、MSCが筋(Wakitani,ら、Muscle Nerve, vol. 18、1417ページ(1995年))、ニューロン様前駆細胞(Woodburyら、J. Neurosci. Res., vol. 69、908ページ(2002年);Sanchez-Ramosら、Exp. Neurol. vol. 171、109ページ(2001年))、心筋細胞(Tomaら、Circulation, vol. 105、93ページ(2002年);Fakuda、Artif. Organs, vol. 25、187ページ(2001))、及びもしかすると他の細胞型に分化する能力を実証した。加えて、MSCが、造血幹細胞及び胚幹細胞の増殖に有効な支持細胞層を提供することが示された(Eavesら、Ann. N.Y. Acad. Sci., vol. 938、63ページ(2001年);Wagersら、Gene Therapy, vol. 9、606ページ(2002年))。様々な動物モデルを用いた最近の研究では、MSCが傷害を受けた骨、軟骨、半月板、又は心筋組織の修復又は再生に有用であるかもしれないことが示された(DeKok, et al., Clin. Oral Implants Res., vol. 14、ページ481(2003));Wuら、Transplantation, vol. 75、679ページ(2003年);Noelら、Curr. Opin. Investig. Drugs, vol. 3、1000ページ(2002年);Ballasら、J. Cell. Biochem. Suppl. vol. 38、20ページ(2002年);Mackenzieら、Blood Cells Mol. Dis., vol. 27(2002年))。複数の研究者が、骨形成不全症(Pereiraら、Proc. Nat. Acad. Sci., vol. 95、1142ページ(1998))、パーキンソン病(Schwartzら、Hum. Gene Ther. vol. 10、2539ページ(1999年))、脊髄損傷(Choppら、Neuroreport. vol. 11、3001ページ(2000年);Wuら、J. Neurosci. Res., vol. 72、393ページ(2003年))、及び心疾患(Tomitaら、Circulation, vol. 100、247ページ(1999年);Shakeら、Arm, Thorac. Surg., vol. 73、1919ページ(2002年))を含めた動物病態モデルにおける移植に関する有望な結果に従ってMSCを使用した。重要なことには、有望な結果は、また、骨形成不全症(Horwitzら、Blood, vol. 97、1227ページ(2001年);Horowitzら、Proc. Nat. Acad. Sci., vol. 99、8932ページ(2002年))の臨床実験においても報告され、且つ、異種骨移植片の移植を増進させた(Frassoniら、Int. Society for Cell Therapy. SA006 (要約)(2002年);Kocら、J. Clin. Oncol., vol. 18、307ページ(2000年))。
【0005】
MSCは、その表面で主要組織適合性複合体(MHC)クラスI抗原を発現するが、MHCクラスIIは発現せず(Le Blancら、Exp. Hematol., vol. 31、890ページ(2003年);Potianら、J. Immunol., vol. 171、3426ページ(2003年))、且つ、B7又はCD40共刺激分子がなく(Majumdarら、J. Biomed. Sci., vol. 10、228ページ(2003年))、これらの細胞が低い免疫原性表現型しか持たないことを示唆している(Tseら、Transplantation, vol. 75、389ページ(2003年))。MSCは、また、MHCから独立した様式での1つの細胞の分裂反応を抑制する(Bartholomewら、Exp. Hematol. vol. 30、42ページ(2002年);Devineら、Cancer J., vol. 7、576ページ(2001年);DiNicolaら、Blood, vol. 99、3838ページ(2002年))。MSCのこれらの免疫的性質は、それらの移植片移植を増進し、且つ、移植に続いて受容者免疫系が同種異系細胞を認識し、拒絶する能力を制限するかもしれない。免疫応答を調節し、そして、局所的な刺激下でそれらが適正な細胞型に分化するそれらの能力と一緒に造血を支援するMSCによる因子産生は、それらを細胞移植研究に望ましい幹細胞にする(Majumdarら、Hematother. Stem Cell Res., vol. 9、841ページ(2000年);Haynesworthら、J. Cell. Physiol., vol. 166、585ページ(1996年))。
【発明の開示】
【0006】
発明の簡単な説明
出願人は、現在、樹状細胞(DC1とDC2)、エフェクターT細胞(Th1とTh2)、及びNK細胞を含めた単離された免疫細胞集団と間充織幹細胞の相互作用を調べている。そのような相互作用に基づいて、出願人は、間充織幹細胞が免疫応答過程でいくつものステップを調節するかもしれない様々な因子の産生を調節するかもしれないことを発見した。これにより、間充織幹細胞は、免疫系を侵す疾患状態及び障害、又は、炎症を伴う疾患、状態、若しくは障害、上皮損傷、あるいはアレルギー応答の治療に利用されうる。そのような疾患、状態、及び障害には、これだけに制限されることなく、自己免疫疾患、アレルギー、関節炎、炎症性損傷、円形脱毛症(alopecia araeta)(はげ頭症)、歯肉炎や歯周病を含めた歯周疾患、及び免疫応答を伴う他の疾患、状態、又は障害が含まれる。
【0007】
加えて、間充織幹細胞が、新生血管の形成を刺激することによって血管新生を促進する血管内皮増殖因子、つまりVEGFを発現し、そして、分泌すると考えられている。間充織幹細胞は、また、VEGFを産生するように末梢血単核細胞(PBMC)を刺激する。
【0008】
さらに、間充織幹細胞は、癌抑制及びウイルス感染に対する免疫を促進するインターフェロン-β(IFN-β)を産生するように樹状細胞(DC)を刺激すると考えられている。
本発明の詳細な説明
【0009】
本発明の側面により、動物の自己免疫疾患及び移植片対宿主病から成る群から選択される疾患を治療する方法が提供される。前記方法には、動物の疾患を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与することが含まれる。
【0010】
本発明のこの側面の範囲はいずれかの理論上の推論に制限されないが、間充織幹細胞が自己免疫疾患と移植片対宿主病を抑制する少なくとも1つの作用機序は、T細胞(TReg細胞)、及び/又は樹状細胞(DC)からのインターロイキン-10(IL-10)の放出を誘導することによると考えられる。
【0011】
本発明に従って治療されうる自己免疫疾患には、これだけに制限されることなく、多発性硬化症、1型糖尿病、関節リウマチ、ブドウ膜炎、自己免疫性甲状腺疾患、炎症性腸疾患、強皮症、グレーブス病、ループス、クローン病、自己免疫性リンパ増殖性疾患(ALPS)、脱髄性疾患、自己免疫性脳脊髄膜炎、自己免疫性胃炎(AIG)、及び自己免疫性糸球体疾患が含まれる。また、本明細書中で先に述べられるように、移植片対宿主疾患も治療されうる。しかしながら、当然のごとく、本発明の範囲は本明細書中に言及された特定の疾患の治療に限定されない。
【0012】
1つの態様において、間充織幹細胞が投与される動物は哺乳動物である。前記哺乳動物は、ヒト及びヒト以外の霊長目動物を含めた霊長目動物であってもよい。
【0013】
通常、間充織幹細胞(MSC)療法は、例えば、以下の順序:MSC含有組織の採取、MSCの単離と増殖、そして、生化学的操作又は遺伝子操作の有無にかかわらず、動物へのMSCの投与、に基づく。
【0014】
投与された間充織幹細胞は、均質の組成物であるか、又はMSCに富む混合細胞であるかもしれない。均質の間充織幹細胞組成物は、接着性骨髄若しくは骨膜細胞を培養することによって得てもよく、そして、その間充織幹細胞組成物は、接着性骨髄若しくは骨膜細胞を培養することによって得てもよく、そして、その間充織幹細胞は、独特のモノクローナル抗体により認識される特定の細胞表面マーカによって特定されうる。間充織幹細胞に富む細胞集団を得るための方法は、例えば、米国特許番号第5,486,359号に記載されている。間充織幹細胞の代替起源には、これだけに制限されることなく、血液、皮膚、臍帯血、筋、脂肪、骨、及び軟骨膜が含まれる。
【0015】
間充織幹細胞は、様々な手順によって投与してもよい。間充織幹細胞は、静脈内投与、動脈内投与、又は腹腔内投与によるなど全身的に投与してもよい。
【0016】
間充織幹細胞は、自家、同種、又は異種を含めた起源の範囲に由来することもある。
【0017】
間充織幹細胞は、動物の自己免疫疾患又は移植片対宿主病を治療するのに有効な量で投与される。間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与してもよい。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の量は、その患者の年齢、体重、及び性別、治療される自己免疫疾患、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。
【0018】
間充織幹細胞は、許容される医薬担体と共に投与してもよい。例えば、間充織幹細胞は、注射又は局所適用のための医薬として許容される液体媒体又はゲル中、細胞懸濁液として投与してもよい。
【0019】
本発明の他の側面により、動物の炎症反応を治療する方法が提供される。その方法には、前記動物の炎症反応を治療するのに有効な量で動物に間充織幹細胞を投与することが含まれる。
【0020】
本発明のこの側面の範囲は、いずれの理論上の推論にも限定されないが、間充織幹細胞は調節性T細胞(TReg)へのT細胞の成熟を促進し、その結果、炎症反応を制御すると考えられる。間充織幹細胞は、また、タイプ1ヘルパーT細胞(Th1細胞)を抑制し、その結果、例えば、乾癬に伴うものなどの特定の炎症反応におけるインターフェロン-γ(IFN-γ)の発現を減少させるとも考えられている。
【0021】
1つの態様において、治療される炎症反応は、乾癬に伴うものである場合もある。
【0022】
他の態様において、間充織幹細胞は、炎症を軽減し、それによりその間充織幹細胞がアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、若しくは脳細胞損傷などの疾患又は障害において活性膠細胞によって引き起こされる神経変性を制限するために、間充織幹細胞が脳内で小膠細胞、及び/又は星状細胞に接触するような動物に投与してもよい。
【0023】
さらに他の態様において、間充織幹細胞は、その間充織幹細胞が乾癬、慢性皮膚炎、及び接触皮膚炎において起こりうる炎症を軽減するために、皮膚の表皮のケラチン生成細胞とランゲルハンス細胞と接触するような動物に投与してもよい。この態様は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、表皮のケラチン生成細胞とランゲルハンス細胞と接触し、T細胞受容体の発現とサイトカイン分泌特性を変更して、低減された腫瘍壊死因子α(TNF-α)の発現、及び増強された調節性T細胞(TReg細胞)集団をもたらすと考えられる。
【0024】
さらなる態様において、間充織幹細胞は、これだけに制限されることなく、変形性関節症や関節リウマチ、及びウェブサイトwww.arthritis.org/conditions/diseasesで列挙されている他の関節炎疾患を含めた関節炎、並びに関節炎様の状態において起こる骨の炎症を軽減するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、計画的でないが、間充織幹細胞は、滑液中の記憶T細胞によるインターロイキン-17分泌を抑制するかもしれないと考えられる。
【0025】
他の態様において、間充織幹細胞は、それぞれ炎症性腸疾患及び慢性肝炎中の腸及び肝臓の炎症を制限するために使用してもよい。本発明のこの側面の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、増強されたインターロイキン-10(IL-10)の分泌と調節性T細胞(TReg細胞)の産生を促進すると考えられる。
【0026】
他の態様において、間充織幹細胞は、熱傷、外科手術、及び移植を含めた敗血症や外傷などの病的状態における過剰な好中球及びマクロファージ活性化を抑制するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、IL-10などの抑制性サイトカインの分泌を促進し、且つ、マクロファージ遊走阻止因子を抑制すると考えられる。
【0027】
他の態様において、間充織幹細胞は、角膜、水晶体、色素上皮細胞、及び網膜を含めた目、脳、脊髄、妊娠子宮及び胎盤、卵巣、精巣、副腎皮質、肝臓、及び毛嚢などの免疫特権部位の炎症を制御するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、IL-10などの抑制性サイトカインの分泌やTReg細胞の産生を促進すると考えられる。
【0028】
さらに他の態様において、間充織幹細胞は、透析、及び/又は糸球体腎炎中の末期腎不全(ESRD)感染症に伴う組織損傷を治療するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、腎臓の修復を促進するかもしれないと考えられる。間充織幹細胞は、また、傷害を受けた腎臓組織の修復を助けるはずである新たな血管形成を刺激する血管内皮増殖因子、つまりVEGFをも発現し、そして、分泌する。
【0029】
さらなる態様において、間充織幹細胞は、インフルエンザ、C型肝炎、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス感染、及びエプスタイン・バーウイルスなどのウイルス感染を制御するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、インターフェロン-β(IFN-β)の分泌を促進すると考えられる。
【0030】
さらに他の態様において、間充織幹細胞は、リーシュマニア感染やヘリコバクター感染などの寄生虫感染を制御するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、2型ヘルパーT(Th2)細胞による応答を媒介し、その結果、増強されたB細胞による免疫グロブリンE(IgE)の産生を促進すると考えられる。
【0031】
他の態様において、間充織幹細胞は、肺病又は障害から生じる炎症を治療するために動物に投与してもよい。そのような肺病又は障害には、これだけに制限されることなく、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、喘息、及び肺高血圧症が含まれる。
【0032】
この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、先に触れた肺病又は障害における炎症反応は、TNF-α、及び/又はMCP-1の分泌にかかわる。間充織幹細胞は、間充織幹細胞の化学走化性物質であるTNF-α、及び/又はMCP-1の増強された産生が原因で、炎症を起こしている肺組織に移動すると考えられる。
【0033】
しかし、当然のことながら、本発明のこの側面の範囲は、いずれかの特定の炎症反応の治療に制限されない。
【0034】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、ヒト及びヒト以外の霊長動物を含めた哺乳動物に投与してもよい。
【0035】
間充織幹細胞は、また、本明細書中で先に記載のとおり、全身的に投与してもよい。あるいは、変形性関節症又は関節リウマチの症例では、間充織幹細胞は、関節炎の関節に直接投与してもよい。
【0036】
間充織幹細胞は、動物の炎症反応を治療するのに有効な量で投与される。間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与してもよい。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の的確な服用量は、様々な患者の年齢、体重、及び性別、治療される炎症反応、並びにその範囲及び重症度を含めた要因に依存する。
【0037】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、許容される医薬担体と共に投与してもよい。
【0038】
本発明の他の側面により、動物の炎症を治療する方法、及び/又は上皮損傷を修復する方法が提供される。その方法には、動物の炎症、及び/又は上皮損傷を治療するのに有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0039】
本発明のこの側面の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、T細胞による炎症誘発性サイトカインであるTNF-αとインターフェロン-γの分泌の減少、及びT細胞による抗炎症性サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)とインターロイキン-4(IL-4)の分泌の増加を引き起こすと考えられる。間充織幹細胞は、また、ナチュラルキラー(NK)細胞によるインターフェロン-γ分泌の減少を引き起こすとも考えられる。
【0040】
本発明のこの側面に従って治療されうる炎症、及び/又は上皮損傷には、これだけに制限されることなく、自己免疫疾患、移植器官の拒絶反応、熱傷、切り傷、裂創、及び皮膚潰瘍形成と糖尿病の潰瘍形成を含む潰瘍形成を含めた様々な疾患及び障害によって引き起こされる炎症、及び/又は上皮損傷が含まれるが、これだけに制限されない。
【0041】
1つの態様において、間充織幹細胞は、これだけに制限されることなく、関節リウマチ、クローン病、1型糖尿病、多発硬化症、強皮症、グレーブス病、ループス、炎症性腸疾患、自己免疫性胃炎(AIG)、及び自己免疫性糸球体疾患を含めた自己免疫疾患に起因する上皮損傷を修復するために動物に投与される。間充織幹細胞は、また、移植片対宿主病(GVHD)に起因する上皮損傷をも修復するかもしれない。
【0042】
本発明のこの側面は、特に、移植片対宿主病に起因する上皮損傷の修復に適用でき、そして、より特に、皮膚、及び/又は胃腸系に影響を及ぼすグレードIII及びIVの移植片対宿主病を含めた重度の移植片対宿主病に起因する上皮損傷の修復に適用できる。特に、出願人は、間充織幹細胞が重度の移植片対宿主病、そして、特に、グレードIII及びIVの消化管の移植片対宿主病に罹患している患者に投与された時、その間充織幹細胞の投与が、上記患者の皮膚、及び/又は潰瘍を起こした腸上皮組織の修復をもたらしたことを発見した。
【0043】
他の態様において、間充織幹細胞は、移植した器官又は組織の拒絶反応によって引き起こされる、これだけに制限されることなく、腎臓、心臓、及び肺を含めた移植器官又は組織に対する上皮損傷を修復するために動物に投与される。
【0044】
さらに他の態様において、間充織幹細胞は、熱傷、切り傷、裂創、及びこれだけに制限されることなく、皮膚潰瘍形成や糖尿病の潰瘍形成を含めた潰瘍形成によって引き起こされた上皮損傷を修復するために動物に投与される。
【0045】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、ヒト及びヒト以外の霊長動物を含めた哺乳動物に投与してもよい。
【0046】
間充織幹細胞は、また、本明細書中で先に記載のとおり、全身的に投与してもよい。
【0047】
間充織幹細胞は、動物の上皮損傷を修復するために有効な量で投与される。間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与してもよい。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の的確な服用量は、患者の年齢、体重、及び性別、修復する上皮損傷のタイプ、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存する。
【0048】
本発明のさらに他の側面により、動物の癌を治療する方法が提供される。その方法には、動物の癌を治療するのに有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0049】
本発明のこの側面の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、順々に腫瘍抑制剤として機能するIFN-β分泌に導く樹状細胞との相互作用を起こすと考えられる。治療されうる癌には、これだけに制限されることなく、肝細胞癌腫、子宮頚癌、膵臓癌、前立腺癌、線維肉腫、髄芽腫(medullablastoma)、及び星状細胞腫が含まれる。しかし、当然のことながら、本発明の範囲は、いずれかの特定のタイプの癌に制限されない。
【0050】
前記動物は、本明細書中で先に記載のとおり、ヒトやヒト以外の霊長動物を含めた哺乳動物であるかもしれない。
【0051】
間充織幹細胞は、動物の癌を治療するのに有効な量で動物に投与される。通常、間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与される。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の的確な量は、患者の年齢、体重、及び性別、治療される癌のタイプ、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存する。
【0052】
間充織幹細胞は、許容される医薬担体と共に投与され、且つ、本明細書中で先に記載のとおり、全身的に投与してもよい。あるいは、間充織幹細胞は、治療される癌に直接投与してもよい。
【0053】
本発明のさらに他の側面により、動物のアレルギー疾患又は障害を治療する方法が提供される。その方法には、動物のアレルギー疾患又は障害を治療するのに有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0054】
本発明のこの側面の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、急性アレルギー応答後に投与されると、肥満細胞の活性化、及び脱顆粒の阻害をもたらすと考えられる。また、間充織幹細胞は、好塩基球の活性化を下方制御し、且つ、TNF-αなどのサイトカイン、インターロイキン-8や単球走化性タンパク質、若しくはMCP-1などのケモカイン、ロイコトリエンなどの脂質メディエータを抑制し、そして、ヒスタミン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、及びカテプシンなどの主要なメディエータを抑制すると考えられる。
【0055】
治療されうるアレルギー疾患又は障害には、これだけに制限されることなく、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、及び接触皮膚炎が含まれる。しかし、当然のことながら、本発明の範囲は、いずれか特定のアレルギー疾患又は障害に制限されない。
【0056】
間充織幹細胞は、動物のアレルギー疾患又は障害を治療するのに有効な量でその動物に投与される。その動物は、哺乳動物であるかもしれない。前記哺乳動物は、ヒト及びヒト以外の霊長動物を含めた霊長動物であるかもしれない。通常、間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与される。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。的確な服用量は、患者の年齢、体重、及び性別、治療されるアレルギー疾患又は障害、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。
【0057】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、許容される医薬担体と共に投与してもよい。間充織幹細胞は、例えば、静脈内又は動脈内投与などによって全身的に投与してもよい。
【0058】
本発明のさらなる側面により、動物の創傷治癒を促進する方法が提供される。その方法には、動物の創傷治癒を促進するのに有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0059】
本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、本明細書中で先に触れたとおり、間充織幹細胞が、TReg細胞と樹状細胞にインターロイキン-10(IL-10)を放出させると考えられる。IL-10は、創傷において炎症を制限又は制御し、その結果、創傷の治癒を促進する。
【0060】
さらに、間充織幹細胞は、他の細胞型による分泌因子を誘導することによって創傷治癒と骨折治癒を促進するかもしれない。例えば、間充織幹細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)による血管内皮増殖因子(VEGF)のプロスタグランジンE2(PGE2)媒介性放出、並びに成長ホルモン、インスリン、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、インスリン様成長因子結合タンパク質-3(IGFBP-3)、及びエンドセリン-1のPGE2媒介性放出を誘発するかもしれない。
【0061】
治癒されうる損傷には、これだけに制限されることなく、切り傷裂創、熱傷、及び皮膚潰瘍形成に起因するものが含まれる。
【0062】
間充織幹細胞は、動物の創傷治癒を促進するのに有効な量でその動物に投与される。前記動物は、哺乳動物であるかもしれず、そして、その哺乳動物は、ヒト、及びヒト以外の霊長動物を含めた霊長動物であるかもしれない。通常、間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与される。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の的確な量は、患者の年齢、体重、及び性別、並びに治療される損傷の範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。
【0063】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、許容される医薬担体と共に投与してもよい。間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、全身的に投与してもよい。あるいは、間充織幹細胞は、間充織幹細胞を含む包帯剤又はリザーバにより体液中など、損傷に直接投与してもよい。
【0064】
本発明のさらに他の側面により、動物の線維症又は線維性障害を治療するか、又は予防する方法が提供される。その方法には、動物の線維症又は線維性障害を治療するか、又は予防するために有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0065】
間充織幹細胞は、動物の、これだけに制限されることなく、肝硬変、末期腎不全を伴う腎臓の線維症、及び線維化した肺障害若しくは疾患を含め、そして、これだけに制限されることなく、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、石綿肺症、及び肺高血圧症や喘息に起因する線維症を含めた炎症性要素を加えて含むかもしれない、あらゆるタイプの線維症又は線維性障害を治療するか、又は予防するために上記動物に投与してもよい。当然のことながら、本発明の範囲は、いずれか特定のタイプの線維症又は線維性障害に制限されない。
【0066】
1つの態様において、間充織幹細胞は、肺疾患、又は肺不全若しくは肺線維症に至る他の臓器の疾患による肺機能を改善するために動物に投与される。そのような疾患は、線維化を受け、また、炎症性、及び/又は免疫学的要素を加えて持ち、且つ、これだけに制限されることなく、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、肺高血圧症、石綿肺症、及び特発性肺線維症(IPF)が含まれる。
【0067】
急性呼吸促迫症候群(ARDS)は、これだけに制限されることなく、人工呼吸器による傷害や胸部への突然の鈍的外傷を含めた様々な原因がある命を脅かす肺病である。その疾患は、ガス交換の障害、並びに炎症メディエータの随伴性発現及び分泌をもたらす肺実質の炎症を特徴とする。これらの炎症メディエータには、TNF-α、IL-1、IL-8、及び単球遊走因子、つまりMCP-1が含まれる。TNF-αとMCP-1は、間充織幹細胞の化学走化性物質である。これにより、損傷を受けた肺におけるTNF-αとMCP-1の発現増加は、肺組織損傷領域への間充織幹細胞動員を促進する。
【0068】
慢性閉塞性肺疾患、つまりCOPDは、世界的規模の疾病、そして死亡の主な原因である。COPDは、慢性気管支炎又は肺気腫による気道閉塞を特徴とする。COPDは、肺胞組織の伸縮性の喪失と肺胞組織への損害をもたらす肺胞壁の肥厚と炎症、並びに粘液堆積物による肺気管支の目詰りを特徴とする。
【0069】
COPDにおける炎症反応には、IL-6、IL-1β、TNF-α、及びMCP-1の局所的な分泌が含まれる。本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、傷害を受けた肺における化学走化性物質であるTNF-αとMCP-1の増強された産生によりCOPD患者の傷害を受けた肺組織に移動すると考えられる。
【0070】
加えて、増強された好中球浸潤は、COPDの特徴であり、そして、好中球炎症は、コルチコステロイド療法などの最近のCOPD治療に対して抵抗性である。本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞を用いた治療は、好中球の化学走化性物質として機能する因子の下方制御によって好中球炎症を抑制すると考えられる。
【0071】
加えて、最近の証拠から、COPDの炎症性要素が体内の他の組織に広がるかもしれないことが示唆されている(Heaneyら、Current Med. Chem. vol. 14, No. 7、787-796ページ(2007年))。本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないものとするが、間充織幹細胞は、その上、そのような部位に特異的に向かい、そして、局所的な治癒過程に関与すると考えられる。
【0072】
肺細胞のアポトーシス死は、COPDのもう1つの結果である(Calabreseら、Respir. Res., vol. 6、14ページ(2005年))。間充織幹細胞は、肝細胞増殖因子(HFG)と線維芽細胞成長因子(FGFs)を含めた様々な増殖因子を分泌し、それらは肺気腫症の治療に有益であることが示されている(Shigemuraら、Circulation, vol. III、1407ページ(2005年);Morinoら、Chest, vol. 128、920ページ(2005年))。
【0073】
喘息は、気道が様々な刺激に対する過敏性の亢進を発現する慢性又は再発性炎症状態であり;気管支の過剰応答性、炎症、増強された粘液産生、及び間欠気道閉塞を特徴とする。
【0074】
線維症の徴候は、軽度の喘息を患う喘息患者にさえ認められた(Larsenら、Am. J. Respir. Crit.-Care Med., vol. 170、1049-1056ページ(2004年))。重度の喘息を患う患者において、繰り返されるアレルギー性炎症の発作は、肺組織の大規模な瘢痕化と線維症につながる可能性がある。
【0075】
本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないものとするが、間充織幹細胞は、喘息に伴う炎症及び免疫反応を下方制御し、並びにそれに関連する線維性及び瘢痕組織を修復すると考えられる。
【0076】
特発性肺線維症(IPF)は、肺の進行性瘢痕化が特徴的である。瘢痕化は、呼吸し、そして、重要臓器が普通に機能するのに十分な酸素を得る患者の能力を妨げる。傷害を受けた肺上皮細胞は、それに続いてアポトーシス、及び過剰なTNF-αとMCP-1の産生を開始する。線維症が継続すると、間質又は気嚢を囲む組織は、次第に厚く、そして、硬くなる。疾患が進行すると、酸素が、気嚢から肺の毛細管まで効果的に通過できない。
【0077】
本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないものとするが、TNF-α及びMCP-1の発現は、損傷を受けた肺組織への間充織幹細胞の動員をもたらすと考えられる。
【0078】
本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないものとするが、間充織幹細胞は、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの分泌を下方制御して、現場への炎症細胞動員のその後の減少をもたらすことにより炎症反応を抑制することによって肺線維症を患う動物の肺機能を改善する。また、間充織幹細胞は、免疫応答を引き起こすそれらの肺障害における免疫応答を抑制し、その結果、細胞媒介性、並びに可溶性因子媒介性の組織細胞殺滅を予防すると考えられる。
【0079】
間充織幹細胞は、また、アポトーシスからの組織細胞の保護によって組織修復を手助けし、そして、HGF、VEGF、及びFGFsなどの増殖因子の分泌を介して組織特異的幹細胞の細胞増殖と動員を刺激する。加えて、間充織幹細胞は、肺組織における病理学的な再構築と瘢痕形成を予防する。
【0080】
より特に、間充織幹細胞は、TNF-αの局所的発現を減少させ、それが順々にTGF-β発現の減少、及び瘢痕形成に寄与する主な細胞である繊維芽細胞の動員の減少に通じると考えられる。加えて、間充織幹細胞は、既存の肺瘢痕組織を再構築し、及び/又はマトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMPs)の発現と局所的な分泌を通じて瘢痕の拡大を予防する。MMPsの酵素活性は、瘢痕組織に含まれるそれらのタンパク質を含めた細胞外マトリックス・タンパク質の分解に導く。
【0081】
間充織幹細胞は、動物の線維症若しくは線維性障害を治療するか、又は予防するために有効な量で上記動物に投与される。その動物は、哺乳動物であるかもしれず、そして、上記哺乳動物は、ヒト及びヒト以外の霊長動物を含めた霊長動物であるかもしれない。通常、間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与される。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の的確な量は、患者の年齢、体重、及び性別、並びに治療されるか、又は予防される線維症又は線維性障害の範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。
【0082】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、許容される医薬担体と共に投与してもよい。間充織幹細胞は、同様に本明細書中で先に記載のとおり、全身的に投与してもよい。
【0083】
本発明の他の目的は、血管新生を必要としている動物の組織又は臓器の血管新生を促進することである。
【0084】
これにより、本発明のさらなる側面に従って、動物の臓器又は組織における血管新生を促進する方法が提供される。その方法には、動物の臓器又は組織における血管新生を促進するために有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0085】
血管新生は、既存の微小血管床からの新生血管の形成である。
【0086】
血管新生の誘導は、冠状動脈及び末梢動脈機能不全症を治療するために使用されるかもしれず、これにより、冠動脈障害、虚血性心疾患、及び末梢動脈障害の治療に対する非侵襲的、且つ、治癒的アプローチであるかもしれない。血管新生は、心臓以外の組織及び臓器における疾患及び障害の治療に、そして、心臓以外の臓器の発達、及び/又は維持に影響を及ぼすかもしれない。血管新生は、内部及び外部の創傷、並びに皮膚の潰瘍の治療に影響を及ぼすかもしれない。血管新生は、また、胚着床、及び胎盤成長、並びに胚性脈管構造の発達にも影響を及ぼす。血管新生は、また、骨形成と軟骨吸収の共役に不可欠であり、且つ、正しい成長板形態形成に不可欠である。
【0087】
さらに、血管新生は、十分な栄養物とガス輸送を提供するために、密度の高い血管網を必要とする肝臓などの高代謝性臓器の上手な運営と維持管理に必要である。
【0088】
間充織幹細胞は、様々な手順によって血管新生を必要とする組織又は臓器に投与される。間充織幹細胞は、静脈内、動脈内、又は腹腔内投与などによって全身的に投与されるかもしれず、あるいは、間充織幹細胞は、血管新生を必要とする組織又は臓器への直接的な注入などによって血管新生を必要とする組織又は臓器に直接投与してもよい。
【0089】
間充織幹細胞は、自家、同種間、又は異種間を含めた起源の範囲に由来するかもしれない。
【0090】
本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、動物に投与されると、新生血管の形成を刺激する、末梢血単核細胞(PBMC)の血管内皮増殖因子、つまりVEGFの産生を刺激すると考えられる。
【0091】
1つの態様において、前記動物は哺乳動物である。その哺乳動物は、ヒト及びヒト以外の霊長動物を含めた霊長動物であるかもしれない。
【0092】
本発明に従って、間充織幹細胞は、血管新生を通じて緩和されるか、治療されるか、又は予防され得るあらゆる疾患又は障害の治療、緩和、又は予防に利用されてもよい。これにより、例えば、間充織幹細胞は、四肢、すなわち、腕部、脚部、手、及び足、並びに頚部、又は様々な臓器におけるものを含めた動脈閉塞を治療するために動物に投与してもよい。例えば、脳に供給される間充織幹細胞は、動脈閉塞を治療するために使用され、その結果、脳卒中を治療するか、又は予防するかもしれない。また、間充織幹細胞は、胎児及び生後の角膜の血管を治療するために使用され、そして、糸球体の構造化を提供するために使用してもよい。他の態様において、間充織幹細胞は、内部及び外部の両方の創傷の治療、並びに、これだけに制限されることなく、糖尿病や鎌状赤血球貧血などの疾患によって引き起こされた皮膚の潰瘍を含めた足、手、脚部、又は腕部に見られる皮膚の潰瘍の治療に利用されてもよい。
【0093】
さらに、血管新生は、胚着床及び胎盤形成にかかわるので、間充織幹細胞は、胚着床を促進し、且つ、流産を予防するために利用されてもよい。
【0094】
加えて、間充織幹細胞は、まだ生まれていない動物での脈管構造の発達を促進するために、ヒトを含めたまだ生まれていない動物に投与してもよい。
【0095】
他の態様において、間充織幹細胞は、軟骨吸収と骨形成を促進するために、並びに正しい成長板の形態形成を促進するために、生まれたか、又はまだ生まれていない動物に投与される。
【0096】
間充織幹細胞は、動物の血管新生を促進するのに有効な量で投与される。間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与してもよい。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の量は、患者の年齢、体重、及び性別、治療されるか、緩和されるか、若しくは予防される疾患又は障害、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。
【0097】
間充織幹細胞は、許容される医薬担体と共に投与してもよい。例えば、間充織幹細胞は、注射用の医薬として許容される液体媒体中の細胞懸濁液として投与してもよい。注射は、局所的、すなわち、血管新生を必要とする組織又は臓器に対して直接的であっても、又は全身的であってもよい。
【0098】
間充織幹細胞は、治療薬をコードしている1つ以上のポリヌクレオチドを用いて遺伝子組み換えられてもよい。前記ポリヌクレオチドは、適切な発現ビヒクルを介して間充織幹細胞に提供されてもよい。間充織幹細胞を遺伝子組み換えするために利用されうる発現ビヒクルには、これだけに制限されることなく、レトロウイルス・ベクター、アデノウイルス・ベクター、及びアデノ随伴ウイルス・ベクターが含まれる。
【0099】
治療薬をコードする適切なポリヌクレオチドの選択は、治療される疾患若しくは障害、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。治療薬をコードするポリヌクレオチド、及び適切な発現ビヒクルは、米国特許番号第6,355,239号にさらに記載されている。
【0100】
先に触れた療法及び治療において利用される場合、間充織幹細胞が、これだけに制限されることなく、増殖因子、サイトカイン、抗炎症薬などの薬物、樹状細胞などの間充織幹細胞以外の細胞を含めた当業者に知られている他の治療薬と組み合わせて利用されるかもしれず、そして、適宜、ヒアルロン酸などの細胞用の可溶性担体と共に、又はコラーゲン、ゼラチン、又は他の生体適合性ポリマーなどの固体マトリックスと組み合わせて投与されうることは理解される。
【0101】
本明細書中に記載の方法は、数多くの方法により、そして、当該技術分野で周知である様々な変更及びその変形を用いて実施されるうることが理解されるべきである。また、作用の様式、又は細胞型の間の相互作用に関して示したあらゆる理論が、どんな形であっても本願発明を限定するものとして解釈されるべきでなく、本発明の方法がより完全に理解されるように提示されたことも認識されるであろう。
【実施例】
【0102】
本発明を、以下の実施例に関してここで説明する;しかし、当然のことながら、本発明の範囲はそれによって制限されない。
【0103】
実施例1
ヒトMSCの培養の材料と方法
【0104】
ヒトMSCを、Pittengerら、Science, vol. 284、143ページ(1999年)によって説明されたように培養した。簡単に言えば、髄質サンプルを、Poietics TechnologiesのCambrex Biosciences部門によるインフォームド・コンセントに続いて、匿名の提供者の腸骨稜から採取した。MSCを、1%の抗生物質-抗真菌溶液(Invitrogen、Carlsbad, California)及び10%のウシ胎仔血清(FBS、JRH BioSciences、Lenexa, Kansas)を含む完全ダルベッコ変法イーグル培地-低グルコース(Life Technologies、Carlsbad, California)中で培養した。MSCを、接着性単層として培養し、そして、トリプシン/EDTA(0.05%のトリプシンで37℃にて3分間)を用いてはがした。使用したすべてのMSCを、多分化能に関して前もって特徴づけし、そして、間葉系統(軟骨細胞、脂質生成、及び骨形成)に分化する能力を保持していた(Pittengerら、Science, vol. 284、143ページ(1999年))。
【0105】
樹状細胞の分離
末梢血単核細胞(PBMC)を、Poietics TechnologiesのCambrex Biosciences部門(Walkersville, MD)から入手した。単球系統(CD1c+)の樹状細胞(DC)の前駆細胞を、Dzionekら、J. Immunol., vol. 165、6037ページ(2000年)による2段階の磁気選別法を使用してPBMCから確実に選択した。簡単に言えば、CD1cを発現するB細胞を、磁性ビーズを使用してCD19+細胞の中から磁気的に除去し、それに続いて、ビオチン標識CD1c(BDCA1+)及び抗ビオチン抗体を用いてB細胞除去画分を標識し、そして、製造業者の指示(Miltenyi Biotech、Auburn, California)に従って磁気カラムを利用して非標識細胞画分からそれらを分離した。形質細胞様系統のDCの前駆細胞を、陽性標識抗体コートした細胞(BDCA2+)(Miltenyi Biotech、Auburn, California)の免疫磁気ソーティングによってPBMCから単離した。
【0106】
MSC-DC培養
ほとんどの実験では、ヒトMSC及びDCを、同じ数で様々な期間、培養し、そして、細胞培養上清を回収し、さらなる評価まで−80℃にて保存した。選択した実験において、MSCを、成熟DC1又はDC2細胞(1:1のMSC:DC比)と一緒に3日間培養し、次に、あらゆる増殖を予防するために、混合培養物(MSC及びDC)に放射線を照射した。次に、抗体精製し、未感作の同種T細胞(CD4+、CD45RA+)を、放射線照射したMSC/DCに加え、そして、さらに6日間培養した。非接着細胞画分(精製T細胞)を、次に、培養物から回収し、2度洗浄し、そして、PHAでさらに24時間、再刺激し、その後に、細胞培養上清を採集し、そして、ELISAによって分泌されたIFN-γ及びIL-4について分析した。
【0107】
NK細胞の分離
精製したNK細胞集団を、一次試薬としてのビオチン結合モノクローナル抗体のカクテル(抗−CD3、−CD14、−CD19、−CD36、及び抗IgE抗体)と、二次標識試薬としてのマイクロビーズに結合した抗ビオチン・モノクローナル抗体で磁気的に標識した非NK細胞を除去することによって得た。磁気的に標識した非NK細胞を、磁場内のMACS(Miltenyi Biotech、Auburn, California)カラム内に保持しながら、NK細胞を通過させ、そして、回収した。
【0108】
TReg細胞集団の分離
TReg細胞集団を、2段階単離手順を使用して単離した。最初に、非CD4+T細胞を、ビオチン標識抗体カクテルと抗ビオチン・マイクロビーズで間接的に磁気的に標識した。次に、標識細胞を、MACSカラム(Miltenyi Biotech、Auburn, California)による分離によって除去した。次に、CD4+CD25+細胞を、CD25マイクロビーズで直接標識し、そして、あらかじめ濃縮したCD4+T細胞画分からの正の選択によって単離した。磁気的に標識したCD4+CD25+T細胞をカラム上に保持し、そして、磁場からカラムを取り除いた後に溶出した。
【0109】
MSCの存在下で生じた増強されたCD4+CD25+集団が、実際に抑制性であるかどうか測定するために、CD4+CD25+TReg細胞集団を、2段階の磁気的単離手順を使用してPBMC、又はMSC+PBMC(MSC対PBMC比が1:10)(あらゆるその他の刺激なしに3日間培養された)培養物から単離した。あらゆるさらなる増殖を防ぐために、これらの細胞に放射線照射し、そして、応答細胞がPHA(2.5μg/ml)の存在下で同種のPBMC(刺激細胞対応答細胞の比が1:100)であるところの混合リンパ球反応(MLR)における刺激細胞として使用した。培養を48時間実施し、その後、3Hチミジンを加えた。取込まれた放射能を24時間後にカウントした。
【0110】
PBMCを、MSCの不存在下若しくは存在下で培養し(MSC対PBMCの比は1:10)、それに続いて、非接着画分を採集し、そして、FITC標識グルココルチコイド誘発TNF受容体、又はGITR、及びPE標識CD4で免疫染色した。
【0111】
TH1/TH2細胞の産生
末梢血単核細胞(PBMC)を、単球を取り除くために、37℃にて45分間、2×106細胞/mlにて蒔いて培養した。非接着画分を、MSCの存在下若しくは不存在下、TH1(IL-2(4ng/ml)+IL-12(5ng/ml)+抗IL-4(1μg/ml))又はTH2(IL-2(4ng/ml)+IL-4(4ng/ml)+抗IFN-γ(1μg/ml))条件のもと、プレート結合抗CD3(5μg/ml)及び抗CD28(1μg/ml)抗体の存在下で3日間インキューベートした。前記細胞を、洗浄し、次に、PHA(2.5μg/ml)でさらに24時間又は48時間、再刺激し、それに続いて、ELISA(R&D Systems、Minneapolis, Minnesota)によって培養上清中のIFN-γ及びIL-4レベルを計測した。
MSC培養上清中のVEGF、PGE2、及びpro-MMP-1のレベルの分析
【0112】
前もって特徴づけしたヒトMSCを使用して、インターロイキン-6(IL-6)、VEGF、脂質メディエータのプロスタグランジンE2(PGE2)、及びマトリックス・メタロプロテイナーゼ1(pro-MMP-1)のレベルを、PBMC(MSC対PBMCの比は1:10)の存在下若しくは不存在下で24時間培養したMSCの培養上清中で分析した。
【0113】
PBMCの増殖
精製したPBMCを、Ficoll-Hypaque(Lymphoprep、Oslo, Norway)によりleukopack(Cambrex、Walkersville, Maryland)を遠心分離することによって調製した。分離した細胞を、分裂促進因子であるPHA(Sigma Chemicals、St. Louis, Missouri)の存在下、MSC(それらを定着させるためにPBMC添加の3〜4時間前に蒔いた)の存在下若しくは不存在下で48時間(三重反復試験で)培養した。選択した実験では、PBMCを、PGE2阻害剤であるインドメタシン(Sigma Chemicals、St. Louis, Missouri)又はNS-938(Cayman Chemicals、 Ann Arbor, Michigan)を含む培地中に再懸濁した。(3H)-チミジンを加え(200μlの培養物中に20μl)、そして、その細胞を、さらに24時間培養した後に自動採集装置を使用して採集した。MSC又はPGE2遮断薬の効果を、PHA存在下の対照応答(100%)に対するパーセンテージとして計算した。
【0114】
定量的RT-PCR
細胞ペレットからの全RNAを、市販キット(Qiagen、Valencia, California)を使用し、そして、製造業者の指示に従って調製した。混入ゲノムDNAを、DNA-freeキット(Ambion、Austin, Texas)を使用して取り除いた。定量的RT-PCRを、0.5μMの濃度のプライマーと共にQuantiTect SYBR Green RT-PCRキット(Qiagen、Valencia, California)を使用してMJ Research Opticon検出システム(South San Francisco, California)を用いて実施した。異なる条件下で培養した細胞における発現レベルの相対変化を、内部対照としてβ-アクチンを使用することでCt値(交点)の相違によって計算した。COX-1及びCOX-2特異的プライマーのための配列は、以下の:COX-1:5’-CCG GAT GCC AGT CAG GAT GAT G-3’(順方向)、5’-CTA GAC AGC CAG ATG CTG ACA G-3’(逆方向);COX-2:5’-ATC TAC CCT CCT CAA GTC CC-3’(順方向に)、5’-TAC CAG AAG GGC AGG ATA CAG-3’(逆方向)であった。
【0115】
増加した同種PBMCを、PHA(2.5μg/ml)の存在下、96ウェル・プレート内に蒔いた一定数のMSC(2,000細胞/ウェル)と一緒に72時間インキューベートし、そして、3Hチミジン取込み(1分間あたりのカウント、cpm)を測定した。PBMCとMSCを、1:1、1:3、1:10、1:30、及び1:81のMSC:PBMC比で培養した。
【0116】
結果
本研究では、ヒトMSCと、樹状細胞(DC1とDC2)、エフェクターT細胞(TH1とTH2)、及びNK細胞を含めた単離した免疫細胞集団との相互作用を調べた。それぞれの免疫細胞型とMSCの相互作用には、MSCが免疫応答過程のいくつかのステップを調節するかもしれないことを示唆する特定の因果関係があった。MSC免疫調節効果を調節し、その原因となるかもしれない分泌因子の産生を評価し、そして、プロスタグランジン合成が関与した。
【0117】
骨髄系(DC1)と形質細胞様(DC2)前駆樹状細胞を、それぞれBDCA1+細胞とBDCA2+細胞の免疫磁気ソーティングによって単離し、そして、DC1細胞に関してはGM-CSFとIL-4(それぞれ1×103IU/mlと1×103IU/ml)、又はDC2細胞に関してはIL-3(10ng/ml)を伴うインキュベーションによって成熟させた。フローサイトメトリーを使用して、DC1細胞が、HLA-DR+及びCD11c+であったのに対して、DC2細胞は、HLA-DR+及びCD123+であった(図1A)。炎症性物質である細菌性リポ多糖(LPS、1ng/ml)の存在下において、DC1細胞は、中程度のレベルのTNF-αを産生したが、MSCが存在した場合には(調べた比は1:1及び1:10)、TNF-α分泌の>50%の低減があった(図1B)。その一方、DC2細胞は、LPSの存在下でIL-10を産生し、そして、そのレベルは、MSC:DC2共培養(1:1)により2倍を超える増加をした(図1B)。そのため、MSCは、より寛容原性の表現型に向かって培養物中の活性DCのサイトカイン特徴を修飾した。さらに、活性DCは、MSCと共に培養されると、未感作のCD4+T細胞によって分泌されるIFN-γを低減し、且つ、IL-4レベルを高めることができ(図1C)、親炎症性から抗炎症性T細胞表現型へのMSC介在シフトが示唆された。
【0118】
増強されたIL-10分泌は制御性細胞の産生に影響を及ぼすので(Kingsleyら、J. Immunol., vol. 168、1080ページ(2002年))、制御性T細胞(TReg)を、PBMCとMSCの共培養においてフローサイトメトリーによって定量化した。PBMCのMSCとの3〜5日間の培養により、抗CD4と抗CD25抗体を用いたPBMCの染色によって測定されるTReg細胞数の増加があり(図2A)、MSC誘発寛容原性応答をさらに支持した。MSC存在下で生じたCD4+CD25+TReg細胞集団は、高められたレベルのグルココルチコイド誘発TNF受容体(GITR)、つまりTReg細胞集団で発現される細胞表面受容体を発現し、そして、それは同種のT細胞増殖を抑制するので、本来は抑制的である(図3A、B)。次に、MSCを、T細胞分化に影響を及ぼすそれらの直接的な能力に関して調査した。抗体で選択した精製T細胞(CD4+Th細胞)を使用して、IFN-γを産生するTH1細胞、及びがIL-4を産生するTH2細胞を、MSCの存在下若しくは不存在下で作製した。分化中にMSCが存在していた場合、TH1細胞による減少したIFN-γ分泌、及びTH2細胞による増強されたIL-4分泌があった(図2B)。Th細胞がエフェクターTH1又はTH2型に分化した後に(3日間で)MSCを培養物に添加した場合に、IFN-γ又はIL-4レベルの有意な変化は見られなかった(データ未掲載)。これらの実験は、MSCがエフェクターT細胞分化に対して直接的に影響を及ぼし、液性表現型に向かってT細胞サイトカイン分泌を変更することを示唆している。
【0119】
同様に、MSCを、1:1の比にて精製NK細胞(CD3−、CD14−、CD19−、CD36−)と一緒に様々な期間(0〜48hrs)培養した場合に、培養上清中のIFN-γ分泌は減少し(図2C)、その結果、MSCがNK細胞機能も調節することが示唆された。
【0120】
先行研究は、MSCが可溶性因子によってT細胞機能を修飾することを示した(LeBlancら、Exp. Hematol., vol. 31、890ページ(2003年);Tseら、Transplantation, vol. 75、389ページ(2003年))。MSCが、IL-6、プロスタグランジンE2、VEGF、及びpro MMP-1を含めたいくつかの因子を構成的に分泌し、そして、それぞれのレベルがPBMCとの培養によって高められることが観察された(図5)。DCによるTNF-αの抑制とIL-10産生の増強につながるMSC由来因子を調査するために、プロスタグランジンE2が活性DCによるTNF-α産生を抑制することが示されているので(Vassiliouら、Cell. Immunol. vol. 223、120ページ(2003年))、プロスタグランジンE2の潜在的役割を調査した。MSC培養物(0.5×106細胞/mlの24時間培養物)からの馴化培地には、約1000pg/mlのPGE2が含まれていた(図4A)。前記培養上清中には既知のPGE2分泌の誘導因子、例えば、TNF-α、IFN-γ、又はIL-1βの存在は検出できず(データ未掲載)、MSCによるPGE2の構成的分泌を示した。hMSCによるPGE2分泌は、既知のPGE2産生阻害剤であるNS-398(5μM)及びインドメタシン(4μM)の存在下で60〜90%抑制された(図4A)。PGE2分泌の放出は、構成的に活性なシクロオキシゲナーゼ酵素1(COX-1)と誘導性シクロオキシゲナーゼ酵素2(COX-2)の酵素活性の結果として起こるので(Harrisら、Trends Immunol., vol. 23、144ページ(2002年))、トランス-ウェル培養系を使用してMSC及びPBMCにおけるCOX-1及びCOX-2のmRNA発現を分析した。MSCは、PBMCと比較して、有意に高いレベルのCOX-2を発現し、そして、その発現レベルは、24時間のMSCとPBMCの共培養(MSC対PBMCの比が1:10)により>3倍に増加した(図4B)。COX-1レベルの緩やか変化は、MSC-PBMC共培養(図5)によるPGE2分泌の増大がCOX-2の上方制御によって媒介されていることを示唆していると考えられた。DC及びT細胞に対するMSCの免疫調節効果がPGE2によって媒介されたかどうか調査するために、MSCを、PGE2 阻害剤であるNS398又はインドメタシンの存在下で活性化樹状細胞(DC1)又はTH1細胞と一緒に培養した。NS-398又はインドメタシンの存在は、それぞれDC1sによるTNF-α分泌、及びTH1細胞からのIFN-γ分泌を増強し(図4C)、免疫細胞型に対するMSCの効果が、分泌されたPGE2によって媒介されうることを示唆している。最近の研究では、MSCが、様々な刺激によって誘発したT細胞増殖を抑制することが示された(DeNicolaら、Blood, vol. 99、3838ページ(2002年);LeBlancら、Scand. J. Immunol., vol 57、11ページ(2003年))。MSCが用量依存的様式で分裂促進因子誘発T細胞増殖を抑制すること(図6)、そして、PGE2阻害剤であるNS-398(5μM)又はインドメタシン(4μM)が存在した場合、阻害剤を含まない対照と比較して、MSC含有培養のPHA処理PBMCによる(3H)チミジン取込みにおいて>70%の増加があったこと(図4D)が観察された。
【0121】
要約において、他の免疫細胞型とのMSC相互作用のモデルを提案している(図7)。成熟T細胞が存在する場合、MSCは、それらと直接的に相互作用し、そして、炎症誘発性IFN-γ産生を抑制し(経路1)、且つ、調節性T細胞表現型(経路3)及び抗炎症性TH2細胞を促進する(経路5)かもしれない。さらに、MSCは、PGE2を分泌することによってDCを通じてT細胞免疫応答の結末を変更することができ、炎症誘発性DC1細胞を抑制し(経路2)、且つ、抗炎症性DC2細胞(経路4)又は調節性DC(経路3)を促進する。順々にTH2免疫に向かう転換は、IgE/IgG1サブタイプ抗体の産生の増強(経路7)に向かうB細胞活性で変化を示唆している。MSCは、NK細胞からのIFN-γ分泌を抑制するそれらの能力によって、NK細胞機能を修飾する可能性がある(経路6)。MSC:免疫細胞相互作用のこのモデルは、他のいくつかの研究室で実施された実験と一致している(LeBlancら、Exp. Hematol., vol. 31、890ページ(2003年);Tseら、Transplantation, vol. 75、389ページ(2003年);DiNicolaら、Blood, vol. 99、3838ページ(2002年))。提案した作用機序のさらなる実験が進行中であり、そして、MSC投与の生体内での効果を調べるために、動物実験がここで必要である。
【0122】
実施例2
間充織幹細胞を、重度のグレードIVの消化管移植片対宿主病(GVHD)に罹患している33歳女性患者に与えた。前記患者は、他のすべてのGVHD治療が無効であった。患者の結腸の内視鏡像では、治療前には潰瘍形成と炎症の領域が示された。患者の結腸の組織像では、治療前には移植片対宿主病が患者の腸陰窩の大部分を破壊していることが示された。
【0123】
患者には、50mlのPlasma Lyte A(Baxter)中、同種の間充織幹細胞を体重1キログラムあたり3×106細胞の量で静脈内注入した。
【0124】
患者を、注入後2週間で評価した。注入後2週間の時点で、患者の結腸の内視鏡像では、治療前に見えていた炎症と潰瘍形成の領域が消散したことが示された。加えて、患者の結腸の生検では、腸陰窩の有意な再生が示された。これにより、患者への間充織幹細胞の投与は、消化管の移植片対宿主病の炎症性要素の有意な減少をもたらし、且つ、新しい機能的な腸組織の再生をもたらした。
【0125】
実施例3
間充織幹細胞が2.5×106細胞/mlの濃度にて懸濁液で存在するPlasma Lyte A(Baxter)中の間充織幹細胞の懸濁液の静脈内注入によって、9人の患者に、体重1キログラムあたり0.5×106個の間充織幹細胞を与え、10人の患者に、体重1キログラムあたり1.6×106個の間充織幹細胞を与え、そして、15人の患者に、体重1キログラムあたり5.0×106個の間充織幹細胞を与えた。これにより、与えられた間充織幹細胞懸濁液の全容積は、細胞の投与量と患者の体重に依存した。
【0126】
19人の患者に、プラシーボ用量のPlasma LyteAを与えた。プラシーボ用量は、間充織幹細胞で治療した患者に与えられた間充織幹細胞懸濁物の容量に比例して低用量、中用量、及び高用量であった。プラシーボ患者の中で、5人の患者に低用量の懸濁液を与え、4人の患者に中用量の懸濁液を与え、そして、10人の患者に高用量の懸濁液を与えた。
【0127】
治療に関連する潜在的変化を検出するために、FEV1肺活量測定試験を6カ月間にわたり実施した。試験を、米国胸部学会のガイドラインに従っておこなった(Millerら、Eur. Respir. J., vol. 26、319-338ページ(2005年))。
【0128】
努力呼気量、つまりFEV1は、体温(37℃)、大気圧、水蒸気での飽和状態(BTPS)にて、リットル単位で表される、完全吸気の位置からの努力呼気の1秒間に吐き出された息の最大容量である。予測FEV1値を、年齢、性別、伸長、及び人種に基づいて各患者について計算した。男性についての予測FEV1を、以下の:
予測FEV1=0.0414×伸長(cm)−0.0244×年齢(歳)−2.190
として計算した(Crapoら、Am. Rev. Respir. Dis., vol. 123、659-664ページ(1981年))。
【0129】
女性についての予測FEV1を、以下の:
予測FEV1=0.0342×伸長(cm)−0.0255×年齢(歳)−1.578
として計算した(Crapo、1981年)。
【0130】
前記の値を、アフリカ系アメリカ人履歴をもつ者以外の男女について計算した。アフリカ系アメリカ人履歴をもつ男女については、前記の値に0.88の修正係数を掛けた。
【0131】
それぞれの患者の体重も記録した。体重はFEV1値の測定に織り込まれないが、肥満は計測される肺気量を下げるかもしれず、且つ、体重の変化は肺機能のわずかな変化をもたらし得る。
【0132】
すべての患者についてのFEV1値を、マウスピース又は患者の口に挿入されたチューブに接続した肺活量計を使用して計測した。各患者の伸長と体重を計測し、そして、ノーズ・クリップを各患者に取り付けた。完全に、且つ、素早く吸入し、全肺容量にて1秒未満止め、そして、それ以上の空気が吐き出せないまで最大限に息を吐き出すように各患者が指示した。前記手順を、三重反復試験で繰り返し、そして、各患者についてのFEV1値を計測した。FEV1値から、予測FEV1の割合(%)(Pred. FEV1%)の値を計算した。各患者についての予測FEV1の割合(%)(Pred. FEV1%)の値を、以下の:
【数1】
のとおり計算した。
【0133】
治療後6カ月(180日)までの様々な時間間隔にて、患者についてのPred. FEV1%値の改善率(%)も計算した。MSC及びプラシーボ治療群の結果を、図8に示す。前述の結果は、すべてのMSC治療患者のPred. FEV1%値の平均変化率(%)、及びプラシーボを受けたすべての患者のPred. FEV1%値の平均変化率(%)を示している。
【0134】
対照患者群と比較して、MSCで治療した患者は、注入後3日から6カ月まで、ベースライン(前治療)値に対して、Pred. FEV1%のより大きな改善を示した。注入後10及び30日にて、MSC治療患者とプラシーボ患者について観察されたPred. FEV1%値の改善の相違は、統計的に有意であった(p<0.05)。
【0135】
MSC治療患者とプラシーボ患者には、また、患者がトレッドミル上を歩き、そこで各患者が歩いた距離を6分間隔で計測するトレッドミル試験も受けさせた。距離測定を、治療後(ベースライン)、そして、治療後1カ月、3カ月、及び6カ月におこなった。前記試験を、ATS(米国胸部学会)のガイドラインに従って実施した(Am. J. Respir. Crit. Care Med., vol. 166、111ページ(2002年))。
【0136】
ベースライン距離と比較されるすべてのMSC治療患者及びすべてのプラシーボ治療患者が歩行した距離の平均変化率(%)を、図9に示す。3カ月と6カ月の時点の両方で、MSC治療患者が、プラシーボを受けた患者と比較して、歩行した距離の延長を示した。
【0137】
治療のすぐ後、そして、治療の1、3、及び6カ月後に患者が受けた6分間のトレッドミル試験に続いて、患者の心拍数回復を測定した。
【0138】
心拍数回復の結果を、図10に示す。図10に示されているように、治療の6カ月後に、プラシーボ治療を受けた患者と比較した場合に、トレッドミル歩行の停止後、15分以内にベースライン値への心拍数の回復を示すMSC治療を受けた患者の割合(%)の相違が、統計的に有意であった。
【0139】
Pred. FEV1%、歩行距離、及び心拍数回復における改善に関する先の結果は、プラシーボ群と比較して、間充織幹細胞で治療した患者が、肺機能を改善したことを示している。先の結果は、線維性肺疾患又は障害が間充織幹細胞によって治療され、それによって、間充織幹細胞が、肺機能を改善し、肺における既存の瘢痕組織を減少させ、及び/又は肺におけるさらなる瘢痕組織の拡大を予防するかもしれないことを示唆している。
【0140】
公開された特許出願を含めたすべての特許、刊行物、受託受入番号、及びデータベース受入番号は、各特許、刊行物、受託受入番号、及びデータベース受入番号が具体的に、且つ、個別に援用されたかのように同程度まで援用される。
【0141】
しかし、当然のことながら、本発明の範囲は、先に記載の具体的な態様に制限されない。本発明は、特に記載した以外にも実施されるかもしれず、なおかつ、添付の請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0142】
図面のいくつかの観点の簡単な説明
本発明は、以下の図面に関してここで説明する:
【図1A】MSCは、樹枝状細胞機能を調節する。(A)HLA-DR及びCD11cに対する抗体を使用した成熟単球DC1細胞の、並びにHLA-DR及びCD123(IL-3受容体)に対する抗体を使用した形質細胞様のDC2細胞のフローサイトメトリー解析。(---):アイソタイプ対照;(−):FITC/PE結合抗体。
【図1B】(B)MSCは、それぞれ活性DC1及びDC2からのTNF-α分泌を抑制し(第1Y軸)、及びIL-10分泌を増強する(第2Y軸)。
【図1C】(C)成熟DC1細胞と一緒に培養したMSCは、単独のMSC又はDCと比較して、T細胞によるIFN-γ分泌を抑制し(第1Y軸)、且つ、IL-4レベルを増強する(第2Y軸)。MSC存在下での炎症誘発性のIFN-γの産生低下と、抗炎症性のIL-4の産生促進は、抗炎症性表現型に向かうT細胞集団の転換を示した。
【図2A】MSCは、炎症誘発性エフェクターであるT細胞の機能を抑制する。(A)PBMCを染色することによるTReg細胞数(%単位)、あるいは、FITC結合CD4(X軸)及びPE結合CD25(Y軸)抗体を用いたMSC+PBMC培養物(MSC+PBMC)中の非接着画分のフローサイトメトリー解析。ゲートは、バックグラウンドとしてのアイソタイプ対照抗体に基づいて設定した。グラフは、5つの独立した実験を代表するものである。
【図2B】(B)MSCの存在下で生じたTH1細胞は、低減されたレベルのIFN-γを分泌し(第1Y軸)、そして、MSCの存在下で生じたTH2細胞は、細胞培養上清中に増強された量のIL-4を分泌した(第2Y軸)。
【図2C】(C)MSCは、24ウェル・プレート内で0、24、又は48時間、培養した精製NK細胞からのIFN-γ分泌を抑制する。示されたデータは、1つの実験における平均±SDサイトカイン分泌であり、3つの独立した実験を代表するものである。
【図3A】MSCは、増加したTReg細胞集団数と増強されたGITR発現の原因となる。(A)(さらなる刺激なしに3日間培養した)PBMC、又はMSC+PBMC(MSC対PBMCが1:10)培養物からのCD4+CD25+TReg細胞集団は、2段階の磁気単離手順を使用することで単離された。(さらなる増殖を防ぐために)これらの細胞に放射線を照射し、そして、フィトヘマグルチニン(PHA)(2.5mg/ml)の存在下、応答体が同種のPBMC(刺激細胞対応答細胞が1:100)であるところの混合リンパ球反応(MLR)における刺激体として使用された。その細胞を、48時間培養し、それに続いて3Hチミジンを加え、そして、取込まれた放射能が24時間後にカウントされた。結果は、MSCの存在下で生じたTReg集団(レーン3)が、MSCの不存在下で生じたTReg細胞(レーン2)に対して機能的に類似していることを示した。
【図3B】(B)PBMCは、MSC(MSC対PBMCが1:10)の不存在下(上のプロット)又は存在下(下のプロット)、3日間培養され、それに続いて非接着画分が回収され、そして、FITC標識GITRとPE標識CD4で免疫染色された。結果は、MSCの存在下で培養された細胞におけるGITR発現が2倍を超える増加を示す。
【図4A】MSCは、PGE2を産生し、そして、遮断PGE2は、MSC介在免疫調節効果を逆転させる。(A)培養上清中のPGE2分泌(平均±SD)を、様々な濃度のPGE2遮断薬であるNS-398又はインドメタシン(Indometh.)の存在下若しくは不存在下で培養したMSCから得た。阻害剤濃度はμM単位であり、そして、提示されたデータは24時間の培養後に得られた値である。
【図4B】(B)リアルタイムRT-PCRを使用したMSC及びPBMCにおけるCOX-1とCOX-2の発現。MSCは、PBMCと比較して、有意に高いレベルのCOX-2を発現し、そして、PBMCの存在下でMSCが培養された時、MSCのCOX-2発現において3倍を超える増加があった。3つの独立した実験の中の1つからの代表的なデータが示されている。MSC+PBMC培養を、MSCが下部チャンバー内に配置され、そして、PBMCが上部チャンバー内に配置されるトランスウェル・チャンバー・プレート内で準備した。
【図4C】(C)PGE2遮断薬であるインドメタシン(Ind.)又はNS-398の存在は、対照と比較して、活性DCからのTNF-α分泌(□)、及びTH1細胞からのIFN-γ分泌(□)を増加させる。データは、MSCとPGE2阻害剤の不存在下で生じた培養物からの%変化として計算された。
【図4D】(D)MSC-PBMC共培養(1:10)中のPGE2遮断剤であるインドメタシン(Indo)とNS-398の存在は、PHA処理PBMCに対するMSC介在抗増殖効果を逆転させる。示したデータは、1つの実験からのものであり、3つの独立した実験を代表するものである。
【図5】構成的なMSCサイトカイン分泌は、同種のPBMCの存在下で高められる。前もって特徴づけしたヒトMSCを使用して、PBMC(MSC対PBMCが1:10)の存在下(斜線の棒グラフ)又は不存在下(白抜きの棒グラフ)で24時間培養したMSCの培養上清中のサイトカインのIL-6及びVEGF、脂質メディエータのPGE2、及びマトリックス・メタロプロテイナーゼ1(pro MMP-1)のレベルが分析された。MSCは、IL-6、VEGF、及びPGE2を構成的に産生し、そして、これらの因子のレベルは、PBMCとの共培養により増加し、その結果、MSCが炎症性環境において免疫機能を調節する役割を果たすかもしれないことを示唆している。
【図6】MSCは、用量依存的様式で、分裂促進因子誘導性T細胞増殖を抑制する。増加した同種PBMCを、PHA(2.5mg/ml)の存在下若しくは不存在下で96ウェル・プレート上に蒔かれた一定数のMSC(2,000細胞/ウェル)と一緒に72時間インキューベートし、そして、3Hチミジン取込み(1分あたりのカウント数、つまりcpm単位)を測定した。MSCの存在下でPHA処理PBMCの増殖の用量依存的抑制があった。3つの独立した実験の中の1つからの代表的な結果が示されている。同様の結果は、LeBlancら、Scand J. Immunol., vol. 57、11ページ(2003年)によって報告された。
【図7】提案されているMSC作用機序の概略図。MSCは、先天性(DC経路2〜4;及びNK経路6)、並びに適応的(T経路1と5、及びB経路7)免疫系の両方から細胞に影響を及ぼすことによってそれらの免疫調節効果を媒介する。侵入病原体に対する応答において、未成熟DCは、可能性のある侵入部位に移動し、成熟し、そして、(抗原特異的、且つ、共刺激シグナルによって)保護的なエフェクターT細胞(細胞性TH1又は液性TH2免疫)になるように無感作T細胞を用意する能力を取得する。MSC-DC相互作用の間、直接的な細胞間接触によるか又は分泌因子を介してMSCは、細胞性応答(経路2)を開始するDCの能力を制限するか、又は液性応答(経路4)を開始する能力を促進することによって、免疫応答の結末を変えるかもしれない。また、成熟エフェクターT細胞が存在している時には、MSCは、TH2応答(経路5)に向け、そして、たぶん、GvHD及び自己免疫疾患病徴の抑制のための望ましい結末である、B細胞活性(経路7)を生じる増強されたIgEに向けてTH1(経路1)応答のバランスをゆがめるようにそれらと相互作用するかもしれない。TReg集団(経路3)の増強された産生をもたらすそれらの能力によりMSCは、許容性がある表現型をもたらすかもしれず、且つ、それらの局所的な微小環境におけるバイスタンダー炎症を弱めることによって受容宿主を助けるかもしれない。破線(----)は、提案した作用機序を表す。
【図8】MSC治療は、プラシーボを受けた患者と比較して、間充織幹細胞で治療された患者において予測1秒間努力呼気容量(Pred. FEV1%)のパーセントに改善をもたらす。
【図9】6分後のトレッドミル上を歩行した距離の測定。MSCで治療した患者は、プラシーボを受けた患者と比較して、歩行距離の増加を示した。
【図10】トレッドミル試験を受けた患者の心拍数の回復。トレッドミル試験を受けた患者のより高い割合(%)の患者が、15分以内に、又はプラシーボ治療を受けた患者より短時間のうちに心拍数のベースライン値への回復を示した。
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2007年3月22日に出願された米国特許出願番号第11/726,676号について言及し、それに対する優先権を主張し、そして、それから受ける利益を主張する。
【0002】
連邦支援の研究又は開発
本発明は、海軍省より与えられた契約番号第N66001-02-C-8068号の下、国庫補助により作り出された。政府は、本願発明の特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
本願発明は、間充織幹細胞に関連する。より特に、本願発明は、様々な組織及び臓器における血管新生を促進し、自己免疫疾患を治療し、アレルギー応答を治療し、癌を治療し、炎症性疾患及び障害を治療し、創傷治癒を促進し、炎症を治療し、そして、上皮損傷を修復することを含めた間充織幹細胞の新規使用に関する。
【0004】
間充織幹細胞(MSC)は、骨芽細胞、筋細胞、軟骨細胞、及び脂肪細胞を含めた系統に容易に分化する多能性幹細胞である(Pittengerら、Science, vol. 284、143ページ(1999年);Haynesworthら、Bone, vol. 13、69ページ(1992年);Prockop、Science, vol. 276、71ページ(1997年))。試験管内での研究は、MSCが筋(Wakitani,ら、Muscle Nerve, vol. 18、1417ページ(1995年))、ニューロン様前駆細胞(Woodburyら、J. Neurosci. Res., vol. 69、908ページ(2002年);Sanchez-Ramosら、Exp. Neurol. vol. 171、109ページ(2001年))、心筋細胞(Tomaら、Circulation, vol. 105、93ページ(2002年);Fakuda、Artif. Organs, vol. 25、187ページ(2001))、及びもしかすると他の細胞型に分化する能力を実証した。加えて、MSCが、造血幹細胞及び胚幹細胞の増殖に有効な支持細胞層を提供することが示された(Eavesら、Ann. N.Y. Acad. Sci., vol. 938、63ページ(2001年);Wagersら、Gene Therapy, vol. 9、606ページ(2002年))。様々な動物モデルを用いた最近の研究では、MSCが傷害を受けた骨、軟骨、半月板、又は心筋組織の修復又は再生に有用であるかもしれないことが示された(DeKok, et al., Clin. Oral Implants Res., vol. 14、ページ481(2003));Wuら、Transplantation, vol. 75、679ページ(2003年);Noelら、Curr. Opin. Investig. Drugs, vol. 3、1000ページ(2002年);Ballasら、J. Cell. Biochem. Suppl. vol. 38、20ページ(2002年);Mackenzieら、Blood Cells Mol. Dis., vol. 27(2002年))。複数の研究者が、骨形成不全症(Pereiraら、Proc. Nat. Acad. Sci., vol. 95、1142ページ(1998))、パーキンソン病(Schwartzら、Hum. Gene Ther. vol. 10、2539ページ(1999年))、脊髄損傷(Choppら、Neuroreport. vol. 11、3001ページ(2000年);Wuら、J. Neurosci. Res., vol. 72、393ページ(2003年))、及び心疾患(Tomitaら、Circulation, vol. 100、247ページ(1999年);Shakeら、Arm, Thorac. Surg., vol. 73、1919ページ(2002年))を含めた動物病態モデルにおける移植に関する有望な結果に従ってMSCを使用した。重要なことには、有望な結果は、また、骨形成不全症(Horwitzら、Blood, vol. 97、1227ページ(2001年);Horowitzら、Proc. Nat. Acad. Sci., vol. 99、8932ページ(2002年))の臨床実験においても報告され、且つ、異種骨移植片の移植を増進させた(Frassoniら、Int. Society for Cell Therapy. SA006 (要約)(2002年);Kocら、J. Clin. Oncol., vol. 18、307ページ(2000年))。
【0005】
MSCは、その表面で主要組織適合性複合体(MHC)クラスI抗原を発現するが、MHCクラスIIは発現せず(Le Blancら、Exp. Hematol., vol. 31、890ページ(2003年);Potianら、J. Immunol., vol. 171、3426ページ(2003年))、且つ、B7又はCD40共刺激分子がなく(Majumdarら、J. Biomed. Sci., vol. 10、228ページ(2003年))、これらの細胞が低い免疫原性表現型しか持たないことを示唆している(Tseら、Transplantation, vol. 75、389ページ(2003年))。MSCは、また、MHCから独立した様式での1つの細胞の分裂反応を抑制する(Bartholomewら、Exp. Hematol. vol. 30、42ページ(2002年);Devineら、Cancer J., vol. 7、576ページ(2001年);DiNicolaら、Blood, vol. 99、3838ページ(2002年))。MSCのこれらの免疫的性質は、それらの移植片移植を増進し、且つ、移植に続いて受容者免疫系が同種異系細胞を認識し、拒絶する能力を制限するかもしれない。免疫応答を調節し、そして、局所的な刺激下でそれらが適正な細胞型に分化するそれらの能力と一緒に造血を支援するMSCによる因子産生は、それらを細胞移植研究に望ましい幹細胞にする(Majumdarら、Hematother. Stem Cell Res., vol. 9、841ページ(2000年);Haynesworthら、J. Cell. Physiol., vol. 166、585ページ(1996年))。
【発明の開示】
【0006】
発明の簡単な説明
出願人は、現在、樹状細胞(DC1とDC2)、エフェクターT細胞(Th1とTh2)、及びNK細胞を含めた単離された免疫細胞集団と間充織幹細胞の相互作用を調べている。そのような相互作用に基づいて、出願人は、間充織幹細胞が免疫応答過程でいくつものステップを調節するかもしれない様々な因子の産生を調節するかもしれないことを発見した。これにより、間充織幹細胞は、免疫系を侵す疾患状態及び障害、又は、炎症を伴う疾患、状態、若しくは障害、上皮損傷、あるいはアレルギー応答の治療に利用されうる。そのような疾患、状態、及び障害には、これだけに制限されることなく、自己免疫疾患、アレルギー、関節炎、炎症性損傷、円形脱毛症(alopecia araeta)(はげ頭症)、歯肉炎や歯周病を含めた歯周疾患、及び免疫応答を伴う他の疾患、状態、又は障害が含まれる。
【0007】
加えて、間充織幹細胞が、新生血管の形成を刺激することによって血管新生を促進する血管内皮増殖因子、つまりVEGFを発現し、そして、分泌すると考えられている。間充織幹細胞は、また、VEGFを産生するように末梢血単核細胞(PBMC)を刺激する。
【0008】
さらに、間充織幹細胞は、癌抑制及びウイルス感染に対する免疫を促進するインターフェロン-β(IFN-β)を産生するように樹状細胞(DC)を刺激すると考えられている。
本発明の詳細な説明
【0009】
本発明の側面により、動物の自己免疫疾患及び移植片対宿主病から成る群から選択される疾患を治療する方法が提供される。前記方法には、動物の疾患を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与することが含まれる。
【0010】
本発明のこの側面の範囲はいずれかの理論上の推論に制限されないが、間充織幹細胞が自己免疫疾患と移植片対宿主病を抑制する少なくとも1つの作用機序は、T細胞(TReg細胞)、及び/又は樹状細胞(DC)からのインターロイキン-10(IL-10)の放出を誘導することによると考えられる。
【0011】
本発明に従って治療されうる自己免疫疾患には、これだけに制限されることなく、多発性硬化症、1型糖尿病、関節リウマチ、ブドウ膜炎、自己免疫性甲状腺疾患、炎症性腸疾患、強皮症、グレーブス病、ループス、クローン病、自己免疫性リンパ増殖性疾患(ALPS)、脱髄性疾患、自己免疫性脳脊髄膜炎、自己免疫性胃炎(AIG)、及び自己免疫性糸球体疾患が含まれる。また、本明細書中で先に述べられるように、移植片対宿主疾患も治療されうる。しかしながら、当然のごとく、本発明の範囲は本明細書中に言及された特定の疾患の治療に限定されない。
【0012】
1つの態様において、間充織幹細胞が投与される動物は哺乳動物である。前記哺乳動物は、ヒト及びヒト以外の霊長目動物を含めた霊長目動物であってもよい。
【0013】
通常、間充織幹細胞(MSC)療法は、例えば、以下の順序:MSC含有組織の採取、MSCの単離と増殖、そして、生化学的操作又は遺伝子操作の有無にかかわらず、動物へのMSCの投与、に基づく。
【0014】
投与された間充織幹細胞は、均質の組成物であるか、又はMSCに富む混合細胞であるかもしれない。均質の間充織幹細胞組成物は、接着性骨髄若しくは骨膜細胞を培養することによって得てもよく、そして、その間充織幹細胞組成物は、接着性骨髄若しくは骨膜細胞を培養することによって得てもよく、そして、その間充織幹細胞は、独特のモノクローナル抗体により認識される特定の細胞表面マーカによって特定されうる。間充織幹細胞に富む細胞集団を得るための方法は、例えば、米国特許番号第5,486,359号に記載されている。間充織幹細胞の代替起源には、これだけに制限されることなく、血液、皮膚、臍帯血、筋、脂肪、骨、及び軟骨膜が含まれる。
【0015】
間充織幹細胞は、様々な手順によって投与してもよい。間充織幹細胞は、静脈内投与、動脈内投与、又は腹腔内投与によるなど全身的に投与してもよい。
【0016】
間充織幹細胞は、自家、同種、又は異種を含めた起源の範囲に由来することもある。
【0017】
間充織幹細胞は、動物の自己免疫疾患又は移植片対宿主病を治療するのに有効な量で投与される。間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与してもよい。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の量は、その患者の年齢、体重、及び性別、治療される自己免疫疾患、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。
【0018】
間充織幹細胞は、許容される医薬担体と共に投与してもよい。例えば、間充織幹細胞は、注射又は局所適用のための医薬として許容される液体媒体又はゲル中、細胞懸濁液として投与してもよい。
【0019】
本発明の他の側面により、動物の炎症反応を治療する方法が提供される。その方法には、前記動物の炎症反応を治療するのに有効な量で動物に間充織幹細胞を投与することが含まれる。
【0020】
本発明のこの側面の範囲は、いずれの理論上の推論にも限定されないが、間充織幹細胞は調節性T細胞(TReg)へのT細胞の成熟を促進し、その結果、炎症反応を制御すると考えられる。間充織幹細胞は、また、タイプ1ヘルパーT細胞(Th1細胞)を抑制し、その結果、例えば、乾癬に伴うものなどの特定の炎症反応におけるインターフェロン-γ(IFN-γ)の発現を減少させるとも考えられている。
【0021】
1つの態様において、治療される炎症反応は、乾癬に伴うものである場合もある。
【0022】
他の態様において、間充織幹細胞は、炎症を軽減し、それによりその間充織幹細胞がアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、若しくは脳細胞損傷などの疾患又は障害において活性膠細胞によって引き起こされる神経変性を制限するために、間充織幹細胞が脳内で小膠細胞、及び/又は星状細胞に接触するような動物に投与してもよい。
【0023】
さらに他の態様において、間充織幹細胞は、その間充織幹細胞が乾癬、慢性皮膚炎、及び接触皮膚炎において起こりうる炎症を軽減するために、皮膚の表皮のケラチン生成細胞とランゲルハンス細胞と接触するような動物に投与してもよい。この態様は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、表皮のケラチン生成細胞とランゲルハンス細胞と接触し、T細胞受容体の発現とサイトカイン分泌特性を変更して、低減された腫瘍壊死因子α(TNF-α)の発現、及び増強された調節性T細胞(TReg細胞)集団をもたらすと考えられる。
【0024】
さらなる態様において、間充織幹細胞は、これだけに制限されることなく、変形性関節症や関節リウマチ、及びウェブサイトwww.arthritis.org/conditions/diseasesで列挙されている他の関節炎疾患を含めた関節炎、並びに関節炎様の状態において起こる骨の炎症を軽減するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、計画的でないが、間充織幹細胞は、滑液中の記憶T細胞によるインターロイキン-17分泌を抑制するかもしれないと考えられる。
【0025】
他の態様において、間充織幹細胞は、それぞれ炎症性腸疾患及び慢性肝炎中の腸及び肝臓の炎症を制限するために使用してもよい。本発明のこの側面の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、増強されたインターロイキン-10(IL-10)の分泌と調節性T細胞(TReg細胞)の産生を促進すると考えられる。
【0026】
他の態様において、間充織幹細胞は、熱傷、外科手術、及び移植を含めた敗血症や外傷などの病的状態における過剰な好中球及びマクロファージ活性化を抑制するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、IL-10などの抑制性サイトカインの分泌を促進し、且つ、マクロファージ遊走阻止因子を抑制すると考えられる。
【0027】
他の態様において、間充織幹細胞は、角膜、水晶体、色素上皮細胞、及び網膜を含めた目、脳、脊髄、妊娠子宮及び胎盤、卵巣、精巣、副腎皮質、肝臓、及び毛嚢などの免疫特権部位の炎症を制御するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、IL-10などの抑制性サイトカインの分泌やTReg細胞の産生を促進すると考えられる。
【0028】
さらに他の態様において、間充織幹細胞は、透析、及び/又は糸球体腎炎中の末期腎不全(ESRD)感染症に伴う組織損傷を治療するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、腎臓の修復を促進するかもしれないと考えられる。間充織幹細胞は、また、傷害を受けた腎臓組織の修復を助けるはずである新たな血管形成を刺激する血管内皮増殖因子、つまりVEGFをも発現し、そして、分泌する。
【0029】
さらなる態様において、間充織幹細胞は、インフルエンザ、C型肝炎、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス感染、及びエプスタイン・バーウイルスなどのウイルス感染を制御するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、インターフェロン-β(IFN-β)の分泌を促進すると考えられる。
【0030】
さらに他の態様において、間充織幹細胞は、リーシュマニア感染やヘリコバクター感染などの寄生虫感染を制御するために使用してもよい。この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、2型ヘルパーT(Th2)細胞による応答を媒介し、その結果、増強されたB細胞による免疫グロブリンE(IgE)の産生を促進すると考えられる。
【0031】
他の態様において、間充織幹細胞は、肺病又は障害から生じる炎症を治療するために動物に投与してもよい。そのような肺病又は障害には、これだけに制限されることなく、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、喘息、及び肺高血圧症が含まれる。
【0032】
この態様の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、先に触れた肺病又は障害における炎症反応は、TNF-α、及び/又はMCP-1の分泌にかかわる。間充織幹細胞は、間充織幹細胞の化学走化性物質であるTNF-α、及び/又はMCP-1の増強された産生が原因で、炎症を起こしている肺組織に移動すると考えられる。
【0033】
しかし、当然のことながら、本発明のこの側面の範囲は、いずれかの特定の炎症反応の治療に制限されない。
【0034】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、ヒト及びヒト以外の霊長動物を含めた哺乳動物に投与してもよい。
【0035】
間充織幹細胞は、また、本明細書中で先に記載のとおり、全身的に投与してもよい。あるいは、変形性関節症又は関節リウマチの症例では、間充織幹細胞は、関節炎の関節に直接投与してもよい。
【0036】
間充織幹細胞は、動物の炎症反応を治療するのに有効な量で投与される。間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与してもよい。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の的確な服用量は、様々な患者の年齢、体重、及び性別、治療される炎症反応、並びにその範囲及び重症度を含めた要因に依存する。
【0037】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、許容される医薬担体と共に投与してもよい。
【0038】
本発明の他の側面により、動物の炎症を治療する方法、及び/又は上皮損傷を修復する方法が提供される。その方法には、動物の炎症、及び/又は上皮損傷を治療するのに有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0039】
本発明のこの側面の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、T細胞による炎症誘発性サイトカインであるTNF-αとインターフェロン-γの分泌の減少、及びT細胞による抗炎症性サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)とインターロイキン-4(IL-4)の分泌の増加を引き起こすと考えられる。間充織幹細胞は、また、ナチュラルキラー(NK)細胞によるインターフェロン-γ分泌の減少を引き起こすとも考えられる。
【0040】
本発明のこの側面に従って治療されうる炎症、及び/又は上皮損傷には、これだけに制限されることなく、自己免疫疾患、移植器官の拒絶反応、熱傷、切り傷、裂創、及び皮膚潰瘍形成と糖尿病の潰瘍形成を含む潰瘍形成を含めた様々な疾患及び障害によって引き起こされる炎症、及び/又は上皮損傷が含まれるが、これだけに制限されない。
【0041】
1つの態様において、間充織幹細胞は、これだけに制限されることなく、関節リウマチ、クローン病、1型糖尿病、多発硬化症、強皮症、グレーブス病、ループス、炎症性腸疾患、自己免疫性胃炎(AIG)、及び自己免疫性糸球体疾患を含めた自己免疫疾患に起因する上皮損傷を修復するために動物に投与される。間充織幹細胞は、また、移植片対宿主病(GVHD)に起因する上皮損傷をも修復するかもしれない。
【0042】
本発明のこの側面は、特に、移植片対宿主病に起因する上皮損傷の修復に適用でき、そして、より特に、皮膚、及び/又は胃腸系に影響を及ぼすグレードIII及びIVの移植片対宿主病を含めた重度の移植片対宿主病に起因する上皮損傷の修復に適用できる。特に、出願人は、間充織幹細胞が重度の移植片対宿主病、そして、特に、グレードIII及びIVの消化管の移植片対宿主病に罹患している患者に投与された時、その間充織幹細胞の投与が、上記患者の皮膚、及び/又は潰瘍を起こした腸上皮組織の修復をもたらしたことを発見した。
【0043】
他の態様において、間充織幹細胞は、移植した器官又は組織の拒絶反応によって引き起こされる、これだけに制限されることなく、腎臓、心臓、及び肺を含めた移植器官又は組織に対する上皮損傷を修復するために動物に投与される。
【0044】
さらに他の態様において、間充織幹細胞は、熱傷、切り傷、裂創、及びこれだけに制限されることなく、皮膚潰瘍形成や糖尿病の潰瘍形成を含めた潰瘍形成によって引き起こされた上皮損傷を修復するために動物に投与される。
【0045】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、ヒト及びヒト以外の霊長動物を含めた哺乳動物に投与してもよい。
【0046】
間充織幹細胞は、また、本明細書中で先に記載のとおり、全身的に投与してもよい。
【0047】
間充織幹細胞は、動物の上皮損傷を修復するために有効な量で投与される。間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与してもよい。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の的確な服用量は、患者の年齢、体重、及び性別、修復する上皮損傷のタイプ、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存する。
【0048】
本発明のさらに他の側面により、動物の癌を治療する方法が提供される。その方法には、動物の癌を治療するのに有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0049】
本発明のこの側面の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、順々に腫瘍抑制剤として機能するIFN-β分泌に導く樹状細胞との相互作用を起こすと考えられる。治療されうる癌には、これだけに制限されることなく、肝細胞癌腫、子宮頚癌、膵臓癌、前立腺癌、線維肉腫、髄芽腫(medullablastoma)、及び星状細胞腫が含まれる。しかし、当然のことながら、本発明の範囲は、いずれかの特定のタイプの癌に制限されない。
【0050】
前記動物は、本明細書中で先に記載のとおり、ヒトやヒト以外の霊長動物を含めた哺乳動物であるかもしれない。
【0051】
間充織幹細胞は、動物の癌を治療するのに有効な量で動物に投与される。通常、間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与される。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の的確な量は、患者の年齢、体重、及び性別、治療される癌のタイプ、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存する。
【0052】
間充織幹細胞は、許容される医薬担体と共に投与され、且つ、本明細書中で先に記載のとおり、全身的に投与してもよい。あるいは、間充織幹細胞は、治療される癌に直接投与してもよい。
【0053】
本発明のさらに他の側面により、動物のアレルギー疾患又は障害を治療する方法が提供される。その方法には、動物のアレルギー疾患又は障害を治療するのに有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0054】
本発明のこの側面の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、急性アレルギー応答後に投与されると、肥満細胞の活性化、及び脱顆粒の阻害をもたらすと考えられる。また、間充織幹細胞は、好塩基球の活性化を下方制御し、且つ、TNF-αなどのサイトカイン、インターロイキン-8や単球走化性タンパク質、若しくはMCP-1などのケモカイン、ロイコトリエンなどの脂質メディエータを抑制し、そして、ヒスタミン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、及びカテプシンなどの主要なメディエータを抑制すると考えられる。
【0055】
治療されうるアレルギー疾患又は障害には、これだけに制限されることなく、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、及び接触皮膚炎が含まれる。しかし、当然のことながら、本発明の範囲は、いずれか特定のアレルギー疾患又は障害に制限されない。
【0056】
間充織幹細胞は、動物のアレルギー疾患又は障害を治療するのに有効な量でその動物に投与される。その動物は、哺乳動物であるかもしれない。前記哺乳動物は、ヒト及びヒト以外の霊長動物を含めた霊長動物であるかもしれない。通常、間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与される。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。的確な服用量は、患者の年齢、体重、及び性別、治療されるアレルギー疾患又は障害、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。
【0057】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、許容される医薬担体と共に投与してもよい。間充織幹細胞は、例えば、静脈内又は動脈内投与などによって全身的に投与してもよい。
【0058】
本発明のさらなる側面により、動物の創傷治癒を促進する方法が提供される。その方法には、動物の創傷治癒を促進するのに有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0059】
本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、本明細書中で先に触れたとおり、間充織幹細胞が、TReg細胞と樹状細胞にインターロイキン-10(IL-10)を放出させると考えられる。IL-10は、創傷において炎症を制限又は制御し、その結果、創傷の治癒を促進する。
【0060】
さらに、間充織幹細胞は、他の細胞型による分泌因子を誘導することによって創傷治癒と骨折治癒を促進するかもしれない。例えば、間充織幹細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)による血管内皮増殖因子(VEGF)のプロスタグランジンE2(PGE2)媒介性放出、並びに成長ホルモン、インスリン、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、インスリン様成長因子結合タンパク質-3(IGFBP-3)、及びエンドセリン-1のPGE2媒介性放出を誘発するかもしれない。
【0061】
治癒されうる損傷には、これだけに制限されることなく、切り傷裂創、熱傷、及び皮膚潰瘍形成に起因するものが含まれる。
【0062】
間充織幹細胞は、動物の創傷治癒を促進するのに有効な量でその動物に投与される。前記動物は、哺乳動物であるかもしれず、そして、その哺乳動物は、ヒト、及びヒト以外の霊長動物を含めた霊長動物であるかもしれない。通常、間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与される。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の的確な量は、患者の年齢、体重、及び性別、並びに治療される損傷の範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。
【0063】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、許容される医薬担体と共に投与してもよい。間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、全身的に投与してもよい。あるいは、間充織幹細胞は、間充織幹細胞を含む包帯剤又はリザーバにより体液中など、損傷に直接投与してもよい。
【0064】
本発明のさらに他の側面により、動物の線維症又は線維性障害を治療するか、又は予防する方法が提供される。その方法には、動物の線維症又は線維性障害を治療するか、又は予防するために有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0065】
間充織幹細胞は、動物の、これだけに制限されることなく、肝硬変、末期腎不全を伴う腎臓の線維症、及び線維化した肺障害若しくは疾患を含め、そして、これだけに制限されることなく、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、特発性肺線維症(IPF)、石綿肺症、及び肺高血圧症や喘息に起因する線維症を含めた炎症性要素を加えて含むかもしれない、あらゆるタイプの線維症又は線維性障害を治療するか、又は予防するために上記動物に投与してもよい。当然のことながら、本発明の範囲は、いずれか特定のタイプの線維症又は線維性障害に制限されない。
【0066】
1つの態様において、間充織幹細胞は、肺疾患、又は肺不全若しくは肺線維症に至る他の臓器の疾患による肺機能を改善するために動物に投与される。そのような疾患は、線維化を受け、また、炎症性、及び/又は免疫学的要素を加えて持ち、且つ、これだけに制限されることなく、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、肺高血圧症、石綿肺症、及び特発性肺線維症(IPF)が含まれる。
【0067】
急性呼吸促迫症候群(ARDS)は、これだけに制限されることなく、人工呼吸器による傷害や胸部への突然の鈍的外傷を含めた様々な原因がある命を脅かす肺病である。その疾患は、ガス交換の障害、並びに炎症メディエータの随伴性発現及び分泌をもたらす肺実質の炎症を特徴とする。これらの炎症メディエータには、TNF-α、IL-1、IL-8、及び単球遊走因子、つまりMCP-1が含まれる。TNF-αとMCP-1は、間充織幹細胞の化学走化性物質である。これにより、損傷を受けた肺におけるTNF-αとMCP-1の発現増加は、肺組織損傷領域への間充織幹細胞動員を促進する。
【0068】
慢性閉塞性肺疾患、つまりCOPDは、世界的規模の疾病、そして死亡の主な原因である。COPDは、慢性気管支炎又は肺気腫による気道閉塞を特徴とする。COPDは、肺胞組織の伸縮性の喪失と肺胞組織への損害をもたらす肺胞壁の肥厚と炎症、並びに粘液堆積物による肺気管支の目詰りを特徴とする。
【0069】
COPDにおける炎症反応には、IL-6、IL-1β、TNF-α、及びMCP-1の局所的な分泌が含まれる。本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、傷害を受けた肺における化学走化性物質であるTNF-αとMCP-1の増強された産生によりCOPD患者の傷害を受けた肺組織に移動すると考えられる。
【0070】
加えて、増強された好中球浸潤は、COPDの特徴であり、そして、好中球炎症は、コルチコステロイド療法などの最近のCOPD治療に対して抵抗性である。本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞を用いた治療は、好中球の化学走化性物質として機能する因子の下方制御によって好中球炎症を抑制すると考えられる。
【0071】
加えて、最近の証拠から、COPDの炎症性要素が体内の他の組織に広がるかもしれないことが示唆されている(Heaneyら、Current Med. Chem. vol. 14, No. 7、787-796ページ(2007年))。本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないものとするが、間充織幹細胞は、その上、そのような部位に特異的に向かい、そして、局所的な治癒過程に関与すると考えられる。
【0072】
肺細胞のアポトーシス死は、COPDのもう1つの結果である(Calabreseら、Respir. Res., vol. 6、14ページ(2005年))。間充織幹細胞は、肝細胞増殖因子(HFG)と線維芽細胞成長因子(FGFs)を含めた様々な増殖因子を分泌し、それらは肺気腫症の治療に有益であることが示されている(Shigemuraら、Circulation, vol. III、1407ページ(2005年);Morinoら、Chest, vol. 128、920ページ(2005年))。
【0073】
喘息は、気道が様々な刺激に対する過敏性の亢進を発現する慢性又は再発性炎症状態であり;気管支の過剰応答性、炎症、増強された粘液産生、及び間欠気道閉塞を特徴とする。
【0074】
線維症の徴候は、軽度の喘息を患う喘息患者にさえ認められた(Larsenら、Am. J. Respir. Crit.-Care Med., vol. 170、1049-1056ページ(2004年))。重度の喘息を患う患者において、繰り返されるアレルギー性炎症の発作は、肺組織の大規模な瘢痕化と線維症につながる可能性がある。
【0075】
本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないものとするが、間充織幹細胞は、喘息に伴う炎症及び免疫反応を下方制御し、並びにそれに関連する線維性及び瘢痕組織を修復すると考えられる。
【0076】
特発性肺線維症(IPF)は、肺の進行性瘢痕化が特徴的である。瘢痕化は、呼吸し、そして、重要臓器が普通に機能するのに十分な酸素を得る患者の能力を妨げる。傷害を受けた肺上皮細胞は、それに続いてアポトーシス、及び過剰なTNF-αとMCP-1の産生を開始する。線維症が継続すると、間質又は気嚢を囲む組織は、次第に厚く、そして、硬くなる。疾患が進行すると、酸素が、気嚢から肺の毛細管まで効果的に通過できない。
【0077】
本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないものとするが、TNF-α及びMCP-1の発現は、損傷を受けた肺組織への間充織幹細胞の動員をもたらすと考えられる。
【0078】
本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないものとするが、間充織幹細胞は、炎症誘発性サイトカイン及びケモカインの分泌を下方制御して、現場への炎症細胞動員のその後の減少をもたらすことにより炎症反応を抑制することによって肺線維症を患う動物の肺機能を改善する。また、間充織幹細胞は、免疫応答を引き起こすそれらの肺障害における免疫応答を抑制し、その結果、細胞媒介性、並びに可溶性因子媒介性の組織細胞殺滅を予防すると考えられる。
【0079】
間充織幹細胞は、また、アポトーシスからの組織細胞の保護によって組織修復を手助けし、そして、HGF、VEGF、及びFGFsなどの増殖因子の分泌を介して組織特異的幹細胞の細胞増殖と動員を刺激する。加えて、間充織幹細胞は、肺組織における病理学的な再構築と瘢痕形成を予防する。
【0080】
より特に、間充織幹細胞は、TNF-αの局所的発現を減少させ、それが順々にTGF-β発現の減少、及び瘢痕形成に寄与する主な細胞である繊維芽細胞の動員の減少に通じると考えられる。加えて、間充織幹細胞は、既存の肺瘢痕組織を再構築し、及び/又はマトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMPs)の発現と局所的な分泌を通じて瘢痕の拡大を予防する。MMPsの酵素活性は、瘢痕組織に含まれるそれらのタンパク質を含めた細胞外マトリックス・タンパク質の分解に導く。
【0081】
間充織幹細胞は、動物の線維症若しくは線維性障害を治療するか、又は予防するために有効な量で上記動物に投与される。その動物は、哺乳動物であるかもしれず、そして、上記哺乳動物は、ヒト及びヒト以外の霊長動物を含めた霊長動物であるかもしれない。通常、間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与される。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の的確な量は、患者の年齢、体重、及び性別、並びに治療されるか、又は予防される線維症又は線維性障害の範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。
【0082】
間充織幹細胞は、本明細書中で先に記載のとおり、許容される医薬担体と共に投与してもよい。間充織幹細胞は、同様に本明細書中で先に記載のとおり、全身的に投与してもよい。
【0083】
本発明の他の目的は、血管新生を必要としている動物の組織又は臓器の血管新生を促進することである。
【0084】
これにより、本発明のさらなる側面に従って、動物の臓器又は組織における血管新生を促進する方法が提供される。その方法には、動物の臓器又は組織における血管新生を促進するために有効な量で間充織幹細胞を動物に投与することが含まれる。
【0085】
血管新生は、既存の微小血管床からの新生血管の形成である。
【0086】
血管新生の誘導は、冠状動脈及び末梢動脈機能不全症を治療するために使用されるかもしれず、これにより、冠動脈障害、虚血性心疾患、及び末梢動脈障害の治療に対する非侵襲的、且つ、治癒的アプローチであるかもしれない。血管新生は、心臓以外の組織及び臓器における疾患及び障害の治療に、そして、心臓以外の臓器の発達、及び/又は維持に影響を及ぼすかもしれない。血管新生は、内部及び外部の創傷、並びに皮膚の潰瘍の治療に影響を及ぼすかもしれない。血管新生は、また、胚着床、及び胎盤成長、並びに胚性脈管構造の発達にも影響を及ぼす。血管新生は、また、骨形成と軟骨吸収の共役に不可欠であり、且つ、正しい成長板形態形成に不可欠である。
【0087】
さらに、血管新生は、十分な栄養物とガス輸送を提供するために、密度の高い血管網を必要とする肝臓などの高代謝性臓器の上手な運営と維持管理に必要である。
【0088】
間充織幹細胞は、様々な手順によって血管新生を必要とする組織又は臓器に投与される。間充織幹細胞は、静脈内、動脈内、又は腹腔内投与などによって全身的に投与されるかもしれず、あるいは、間充織幹細胞は、血管新生を必要とする組織又は臓器への直接的な注入などによって血管新生を必要とする組織又は臓器に直接投与してもよい。
【0089】
間充織幹細胞は、自家、同種間、又は異種間を含めた起源の範囲に由来するかもしれない。
【0090】
本発明の範囲は、いずれの理論上の推論にも制限されないが、間充織幹細胞は、動物に投与されると、新生血管の形成を刺激する、末梢血単核細胞(PBMC)の血管内皮増殖因子、つまりVEGFの産生を刺激すると考えられる。
【0091】
1つの態様において、前記動物は哺乳動物である。その哺乳動物は、ヒト及びヒト以外の霊長動物を含めた霊長動物であるかもしれない。
【0092】
本発明に従って、間充織幹細胞は、血管新生を通じて緩和されるか、治療されるか、又は予防され得るあらゆる疾患又は障害の治療、緩和、又は予防に利用されてもよい。これにより、例えば、間充織幹細胞は、四肢、すなわち、腕部、脚部、手、及び足、並びに頚部、又は様々な臓器におけるものを含めた動脈閉塞を治療するために動物に投与してもよい。例えば、脳に供給される間充織幹細胞は、動脈閉塞を治療するために使用され、その結果、脳卒中を治療するか、又は予防するかもしれない。また、間充織幹細胞は、胎児及び生後の角膜の血管を治療するために使用され、そして、糸球体の構造化を提供するために使用してもよい。他の態様において、間充織幹細胞は、内部及び外部の両方の創傷の治療、並びに、これだけに制限されることなく、糖尿病や鎌状赤血球貧血などの疾患によって引き起こされた皮膚の潰瘍を含めた足、手、脚部、又は腕部に見られる皮膚の潰瘍の治療に利用されてもよい。
【0093】
さらに、血管新生は、胚着床及び胎盤形成にかかわるので、間充織幹細胞は、胚着床を促進し、且つ、流産を予防するために利用されてもよい。
【0094】
加えて、間充織幹細胞は、まだ生まれていない動物での脈管構造の発達を促進するために、ヒトを含めたまだ生まれていない動物に投与してもよい。
【0095】
他の態様において、間充織幹細胞は、軟骨吸収と骨形成を促進するために、並びに正しい成長板の形態形成を促進するために、生まれたか、又はまだ生まれていない動物に投与される。
【0096】
間充織幹細胞は、動物の血管新生を促進するのに有効な量で投与される。間充織幹細胞は、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与してもよい。他の態様において、間充織幹細胞は、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与される。投与される間充織幹細胞の量は、患者の年齢、体重、及び性別、治療されるか、緩和されるか、若しくは予防される疾患又は障害、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。
【0097】
間充織幹細胞は、許容される医薬担体と共に投与してもよい。例えば、間充織幹細胞は、注射用の医薬として許容される液体媒体中の細胞懸濁液として投与してもよい。注射は、局所的、すなわち、血管新生を必要とする組織又は臓器に対して直接的であっても、又は全身的であってもよい。
【0098】
間充織幹細胞は、治療薬をコードしている1つ以上のポリヌクレオチドを用いて遺伝子組み換えられてもよい。前記ポリヌクレオチドは、適切な発現ビヒクルを介して間充織幹細胞に提供されてもよい。間充織幹細胞を遺伝子組み換えするために利用されうる発現ビヒクルには、これだけに制限されることなく、レトロウイルス・ベクター、アデノウイルス・ベクター、及びアデノ随伴ウイルス・ベクターが含まれる。
【0099】
治療薬をコードする適切なポリヌクレオチドの選択は、治療される疾患若しくは障害、並びにその範囲及び重症度を含めた様々な要因に依存している。治療薬をコードするポリヌクレオチド、及び適切な発現ビヒクルは、米国特許番号第6,355,239号にさらに記載されている。
【0100】
先に触れた療法及び治療において利用される場合、間充織幹細胞が、これだけに制限されることなく、増殖因子、サイトカイン、抗炎症薬などの薬物、樹状細胞などの間充織幹細胞以外の細胞を含めた当業者に知られている他の治療薬と組み合わせて利用されるかもしれず、そして、適宜、ヒアルロン酸などの細胞用の可溶性担体と共に、又はコラーゲン、ゼラチン、又は他の生体適合性ポリマーなどの固体マトリックスと組み合わせて投与されうることは理解される。
【0101】
本明細書中に記載の方法は、数多くの方法により、そして、当該技術分野で周知である様々な変更及びその変形を用いて実施されるうることが理解されるべきである。また、作用の様式、又は細胞型の間の相互作用に関して示したあらゆる理論が、どんな形であっても本願発明を限定するものとして解釈されるべきでなく、本発明の方法がより完全に理解されるように提示されたことも認識されるであろう。
【実施例】
【0102】
本発明を、以下の実施例に関してここで説明する;しかし、当然のことながら、本発明の範囲はそれによって制限されない。
【0103】
実施例1
ヒトMSCの培養の材料と方法
【0104】
ヒトMSCを、Pittengerら、Science, vol. 284、143ページ(1999年)によって説明されたように培養した。簡単に言えば、髄質サンプルを、Poietics TechnologiesのCambrex Biosciences部門によるインフォームド・コンセントに続いて、匿名の提供者の腸骨稜から採取した。MSCを、1%の抗生物質-抗真菌溶液(Invitrogen、Carlsbad, California)及び10%のウシ胎仔血清(FBS、JRH BioSciences、Lenexa, Kansas)を含む完全ダルベッコ変法イーグル培地-低グルコース(Life Technologies、Carlsbad, California)中で培養した。MSCを、接着性単層として培養し、そして、トリプシン/EDTA(0.05%のトリプシンで37℃にて3分間)を用いてはがした。使用したすべてのMSCを、多分化能に関して前もって特徴づけし、そして、間葉系統(軟骨細胞、脂質生成、及び骨形成)に分化する能力を保持していた(Pittengerら、Science, vol. 284、143ページ(1999年))。
【0105】
樹状細胞の分離
末梢血単核細胞(PBMC)を、Poietics TechnologiesのCambrex Biosciences部門(Walkersville, MD)から入手した。単球系統(CD1c+)の樹状細胞(DC)の前駆細胞を、Dzionekら、J. Immunol., vol. 165、6037ページ(2000年)による2段階の磁気選別法を使用してPBMCから確実に選択した。簡単に言えば、CD1cを発現するB細胞を、磁性ビーズを使用してCD19+細胞の中から磁気的に除去し、それに続いて、ビオチン標識CD1c(BDCA1+)及び抗ビオチン抗体を用いてB細胞除去画分を標識し、そして、製造業者の指示(Miltenyi Biotech、Auburn, California)に従って磁気カラムを利用して非標識細胞画分からそれらを分離した。形質細胞様系統のDCの前駆細胞を、陽性標識抗体コートした細胞(BDCA2+)(Miltenyi Biotech、Auburn, California)の免疫磁気ソーティングによってPBMCから単離した。
【0106】
MSC-DC培養
ほとんどの実験では、ヒトMSC及びDCを、同じ数で様々な期間、培養し、そして、細胞培養上清を回収し、さらなる評価まで−80℃にて保存した。選択した実験において、MSCを、成熟DC1又はDC2細胞(1:1のMSC:DC比)と一緒に3日間培養し、次に、あらゆる増殖を予防するために、混合培養物(MSC及びDC)に放射線を照射した。次に、抗体精製し、未感作の同種T細胞(CD4+、CD45RA+)を、放射線照射したMSC/DCに加え、そして、さらに6日間培養した。非接着細胞画分(精製T細胞)を、次に、培養物から回収し、2度洗浄し、そして、PHAでさらに24時間、再刺激し、その後に、細胞培養上清を採集し、そして、ELISAによって分泌されたIFN-γ及びIL-4について分析した。
【0107】
NK細胞の分離
精製したNK細胞集団を、一次試薬としてのビオチン結合モノクローナル抗体のカクテル(抗−CD3、−CD14、−CD19、−CD36、及び抗IgE抗体)と、二次標識試薬としてのマイクロビーズに結合した抗ビオチン・モノクローナル抗体で磁気的に標識した非NK細胞を除去することによって得た。磁気的に標識した非NK細胞を、磁場内のMACS(Miltenyi Biotech、Auburn, California)カラム内に保持しながら、NK細胞を通過させ、そして、回収した。
【0108】
TReg細胞集団の分離
TReg細胞集団を、2段階単離手順を使用して単離した。最初に、非CD4+T細胞を、ビオチン標識抗体カクテルと抗ビオチン・マイクロビーズで間接的に磁気的に標識した。次に、標識細胞を、MACSカラム(Miltenyi Biotech、Auburn, California)による分離によって除去した。次に、CD4+CD25+細胞を、CD25マイクロビーズで直接標識し、そして、あらかじめ濃縮したCD4+T細胞画分からの正の選択によって単離した。磁気的に標識したCD4+CD25+T細胞をカラム上に保持し、そして、磁場からカラムを取り除いた後に溶出した。
【0109】
MSCの存在下で生じた増強されたCD4+CD25+集団が、実際に抑制性であるかどうか測定するために、CD4+CD25+TReg細胞集団を、2段階の磁気的単離手順を使用してPBMC、又はMSC+PBMC(MSC対PBMC比が1:10)(あらゆるその他の刺激なしに3日間培養された)培養物から単離した。あらゆるさらなる増殖を防ぐために、これらの細胞に放射線照射し、そして、応答細胞がPHA(2.5μg/ml)の存在下で同種のPBMC(刺激細胞対応答細胞の比が1:100)であるところの混合リンパ球反応(MLR)における刺激細胞として使用した。培養を48時間実施し、その後、3Hチミジンを加えた。取込まれた放射能を24時間後にカウントした。
【0110】
PBMCを、MSCの不存在下若しくは存在下で培養し(MSC対PBMCの比は1:10)、それに続いて、非接着画分を採集し、そして、FITC標識グルココルチコイド誘発TNF受容体、又はGITR、及びPE標識CD4で免疫染色した。
【0111】
TH1/TH2細胞の産生
末梢血単核細胞(PBMC)を、単球を取り除くために、37℃にて45分間、2×106細胞/mlにて蒔いて培養した。非接着画分を、MSCの存在下若しくは不存在下、TH1(IL-2(4ng/ml)+IL-12(5ng/ml)+抗IL-4(1μg/ml))又はTH2(IL-2(4ng/ml)+IL-4(4ng/ml)+抗IFN-γ(1μg/ml))条件のもと、プレート結合抗CD3(5μg/ml)及び抗CD28(1μg/ml)抗体の存在下で3日間インキューベートした。前記細胞を、洗浄し、次に、PHA(2.5μg/ml)でさらに24時間又は48時間、再刺激し、それに続いて、ELISA(R&D Systems、Minneapolis, Minnesota)によって培養上清中のIFN-γ及びIL-4レベルを計測した。
MSC培養上清中のVEGF、PGE2、及びpro-MMP-1のレベルの分析
【0112】
前もって特徴づけしたヒトMSCを使用して、インターロイキン-6(IL-6)、VEGF、脂質メディエータのプロスタグランジンE2(PGE2)、及びマトリックス・メタロプロテイナーゼ1(pro-MMP-1)のレベルを、PBMC(MSC対PBMCの比は1:10)の存在下若しくは不存在下で24時間培養したMSCの培養上清中で分析した。
【0113】
PBMCの増殖
精製したPBMCを、Ficoll-Hypaque(Lymphoprep、Oslo, Norway)によりleukopack(Cambrex、Walkersville, Maryland)を遠心分離することによって調製した。分離した細胞を、分裂促進因子であるPHA(Sigma Chemicals、St. Louis, Missouri)の存在下、MSC(それらを定着させるためにPBMC添加の3〜4時間前に蒔いた)の存在下若しくは不存在下で48時間(三重反復試験で)培養した。選択した実験では、PBMCを、PGE2阻害剤であるインドメタシン(Sigma Chemicals、St. Louis, Missouri)又はNS-938(Cayman Chemicals、 Ann Arbor, Michigan)を含む培地中に再懸濁した。(3H)-チミジンを加え(200μlの培養物中に20μl)、そして、その細胞を、さらに24時間培養した後に自動採集装置を使用して採集した。MSC又はPGE2遮断薬の効果を、PHA存在下の対照応答(100%)に対するパーセンテージとして計算した。
【0114】
定量的RT-PCR
細胞ペレットからの全RNAを、市販キット(Qiagen、Valencia, California)を使用し、そして、製造業者の指示に従って調製した。混入ゲノムDNAを、DNA-freeキット(Ambion、Austin, Texas)を使用して取り除いた。定量的RT-PCRを、0.5μMの濃度のプライマーと共にQuantiTect SYBR Green RT-PCRキット(Qiagen、Valencia, California)を使用してMJ Research Opticon検出システム(South San Francisco, California)を用いて実施した。異なる条件下で培養した細胞における発現レベルの相対変化を、内部対照としてβ-アクチンを使用することでCt値(交点)の相違によって計算した。COX-1及びCOX-2特異的プライマーのための配列は、以下の:COX-1:5’-CCG GAT GCC AGT CAG GAT GAT G-3’(順方向)、5’-CTA GAC AGC CAG ATG CTG ACA G-3’(逆方向);COX-2:5’-ATC TAC CCT CCT CAA GTC CC-3’(順方向に)、5’-TAC CAG AAG GGC AGG ATA CAG-3’(逆方向)であった。
【0115】
増加した同種PBMCを、PHA(2.5μg/ml)の存在下、96ウェル・プレート内に蒔いた一定数のMSC(2,000細胞/ウェル)と一緒に72時間インキューベートし、そして、3Hチミジン取込み(1分間あたりのカウント、cpm)を測定した。PBMCとMSCを、1:1、1:3、1:10、1:30、及び1:81のMSC:PBMC比で培養した。
【0116】
結果
本研究では、ヒトMSCと、樹状細胞(DC1とDC2)、エフェクターT細胞(TH1とTH2)、及びNK細胞を含めた単離した免疫細胞集団との相互作用を調べた。それぞれの免疫細胞型とMSCの相互作用には、MSCが免疫応答過程のいくつかのステップを調節するかもしれないことを示唆する特定の因果関係があった。MSC免疫調節効果を調節し、その原因となるかもしれない分泌因子の産生を評価し、そして、プロスタグランジン合成が関与した。
【0117】
骨髄系(DC1)と形質細胞様(DC2)前駆樹状細胞を、それぞれBDCA1+細胞とBDCA2+細胞の免疫磁気ソーティングによって単離し、そして、DC1細胞に関してはGM-CSFとIL-4(それぞれ1×103IU/mlと1×103IU/ml)、又はDC2細胞に関してはIL-3(10ng/ml)を伴うインキュベーションによって成熟させた。フローサイトメトリーを使用して、DC1細胞が、HLA-DR+及びCD11c+であったのに対して、DC2細胞は、HLA-DR+及びCD123+であった(図1A)。炎症性物質である細菌性リポ多糖(LPS、1ng/ml)の存在下において、DC1細胞は、中程度のレベルのTNF-αを産生したが、MSCが存在した場合には(調べた比は1:1及び1:10)、TNF-α分泌の>50%の低減があった(図1B)。その一方、DC2細胞は、LPSの存在下でIL-10を産生し、そして、そのレベルは、MSC:DC2共培養(1:1)により2倍を超える増加をした(図1B)。そのため、MSCは、より寛容原性の表現型に向かって培養物中の活性DCのサイトカイン特徴を修飾した。さらに、活性DCは、MSCと共に培養されると、未感作のCD4+T細胞によって分泌されるIFN-γを低減し、且つ、IL-4レベルを高めることができ(図1C)、親炎症性から抗炎症性T細胞表現型へのMSC介在シフトが示唆された。
【0118】
増強されたIL-10分泌は制御性細胞の産生に影響を及ぼすので(Kingsleyら、J. Immunol., vol. 168、1080ページ(2002年))、制御性T細胞(TReg)を、PBMCとMSCの共培養においてフローサイトメトリーによって定量化した。PBMCのMSCとの3〜5日間の培養により、抗CD4と抗CD25抗体を用いたPBMCの染色によって測定されるTReg細胞数の増加があり(図2A)、MSC誘発寛容原性応答をさらに支持した。MSC存在下で生じたCD4+CD25+TReg細胞集団は、高められたレベルのグルココルチコイド誘発TNF受容体(GITR)、つまりTReg細胞集団で発現される細胞表面受容体を発現し、そして、それは同種のT細胞増殖を抑制するので、本来は抑制的である(図3A、B)。次に、MSCを、T細胞分化に影響を及ぼすそれらの直接的な能力に関して調査した。抗体で選択した精製T細胞(CD4+Th細胞)を使用して、IFN-γを産生するTH1細胞、及びがIL-4を産生するTH2細胞を、MSCの存在下若しくは不存在下で作製した。分化中にMSCが存在していた場合、TH1細胞による減少したIFN-γ分泌、及びTH2細胞による増強されたIL-4分泌があった(図2B)。Th細胞がエフェクターTH1又はTH2型に分化した後に(3日間で)MSCを培養物に添加した場合に、IFN-γ又はIL-4レベルの有意な変化は見られなかった(データ未掲載)。これらの実験は、MSCがエフェクターT細胞分化に対して直接的に影響を及ぼし、液性表現型に向かってT細胞サイトカイン分泌を変更することを示唆している。
【0119】
同様に、MSCを、1:1の比にて精製NK細胞(CD3−、CD14−、CD19−、CD36−)と一緒に様々な期間(0〜48hrs)培養した場合に、培養上清中のIFN-γ分泌は減少し(図2C)、その結果、MSCがNK細胞機能も調節することが示唆された。
【0120】
先行研究は、MSCが可溶性因子によってT細胞機能を修飾することを示した(LeBlancら、Exp. Hematol., vol. 31、890ページ(2003年);Tseら、Transplantation, vol. 75、389ページ(2003年))。MSCが、IL-6、プロスタグランジンE2、VEGF、及びpro MMP-1を含めたいくつかの因子を構成的に分泌し、そして、それぞれのレベルがPBMCとの培養によって高められることが観察された(図5)。DCによるTNF-αの抑制とIL-10産生の増強につながるMSC由来因子を調査するために、プロスタグランジンE2が活性DCによるTNF-α産生を抑制することが示されているので(Vassiliouら、Cell. Immunol. vol. 223、120ページ(2003年))、プロスタグランジンE2の潜在的役割を調査した。MSC培養物(0.5×106細胞/mlの24時間培養物)からの馴化培地には、約1000pg/mlのPGE2が含まれていた(図4A)。前記培養上清中には既知のPGE2分泌の誘導因子、例えば、TNF-α、IFN-γ、又はIL-1βの存在は検出できず(データ未掲載)、MSCによるPGE2の構成的分泌を示した。hMSCによるPGE2分泌は、既知のPGE2産生阻害剤であるNS-398(5μM)及びインドメタシン(4μM)の存在下で60〜90%抑制された(図4A)。PGE2分泌の放出は、構成的に活性なシクロオキシゲナーゼ酵素1(COX-1)と誘導性シクロオキシゲナーゼ酵素2(COX-2)の酵素活性の結果として起こるので(Harrisら、Trends Immunol., vol. 23、144ページ(2002年))、トランス-ウェル培養系を使用してMSC及びPBMCにおけるCOX-1及びCOX-2のmRNA発現を分析した。MSCは、PBMCと比較して、有意に高いレベルのCOX-2を発現し、そして、その発現レベルは、24時間のMSCとPBMCの共培養(MSC対PBMCの比が1:10)により>3倍に増加した(図4B)。COX-1レベルの緩やか変化は、MSC-PBMC共培養(図5)によるPGE2分泌の増大がCOX-2の上方制御によって媒介されていることを示唆していると考えられた。DC及びT細胞に対するMSCの免疫調節効果がPGE2によって媒介されたかどうか調査するために、MSCを、PGE2 阻害剤であるNS398又はインドメタシンの存在下で活性化樹状細胞(DC1)又はTH1細胞と一緒に培養した。NS-398又はインドメタシンの存在は、それぞれDC1sによるTNF-α分泌、及びTH1細胞からのIFN-γ分泌を増強し(図4C)、免疫細胞型に対するMSCの効果が、分泌されたPGE2によって媒介されうることを示唆している。最近の研究では、MSCが、様々な刺激によって誘発したT細胞増殖を抑制することが示された(DeNicolaら、Blood, vol. 99、3838ページ(2002年);LeBlancら、Scand. J. Immunol., vol 57、11ページ(2003年))。MSCが用量依存的様式で分裂促進因子誘発T細胞増殖を抑制すること(図6)、そして、PGE2阻害剤であるNS-398(5μM)又はインドメタシン(4μM)が存在した場合、阻害剤を含まない対照と比較して、MSC含有培養のPHA処理PBMCによる(3H)チミジン取込みにおいて>70%の増加があったこと(図4D)が観察された。
【0121】
要約において、他の免疫細胞型とのMSC相互作用のモデルを提案している(図7)。成熟T細胞が存在する場合、MSCは、それらと直接的に相互作用し、そして、炎症誘発性IFN-γ産生を抑制し(経路1)、且つ、調節性T細胞表現型(経路3)及び抗炎症性TH2細胞を促進する(経路5)かもしれない。さらに、MSCは、PGE2を分泌することによってDCを通じてT細胞免疫応答の結末を変更することができ、炎症誘発性DC1細胞を抑制し(経路2)、且つ、抗炎症性DC2細胞(経路4)又は調節性DC(経路3)を促進する。順々にTH2免疫に向かう転換は、IgE/IgG1サブタイプ抗体の産生の増強(経路7)に向かうB細胞活性で変化を示唆している。MSCは、NK細胞からのIFN-γ分泌を抑制するそれらの能力によって、NK細胞機能を修飾する可能性がある(経路6)。MSC:免疫細胞相互作用のこのモデルは、他のいくつかの研究室で実施された実験と一致している(LeBlancら、Exp. Hematol., vol. 31、890ページ(2003年);Tseら、Transplantation, vol. 75、389ページ(2003年);DiNicolaら、Blood, vol. 99、3838ページ(2002年))。提案した作用機序のさらなる実験が進行中であり、そして、MSC投与の生体内での効果を調べるために、動物実験がここで必要である。
【0122】
実施例2
間充織幹細胞を、重度のグレードIVの消化管移植片対宿主病(GVHD)に罹患している33歳女性患者に与えた。前記患者は、他のすべてのGVHD治療が無効であった。患者の結腸の内視鏡像では、治療前には潰瘍形成と炎症の領域が示された。患者の結腸の組織像では、治療前には移植片対宿主病が患者の腸陰窩の大部分を破壊していることが示された。
【0123】
患者には、50mlのPlasma Lyte A(Baxter)中、同種の間充織幹細胞を体重1キログラムあたり3×106細胞の量で静脈内注入した。
【0124】
患者を、注入後2週間で評価した。注入後2週間の時点で、患者の結腸の内視鏡像では、治療前に見えていた炎症と潰瘍形成の領域が消散したことが示された。加えて、患者の結腸の生検では、腸陰窩の有意な再生が示された。これにより、患者への間充織幹細胞の投与は、消化管の移植片対宿主病の炎症性要素の有意な減少をもたらし、且つ、新しい機能的な腸組織の再生をもたらした。
【0125】
実施例3
間充織幹細胞が2.5×106細胞/mlの濃度にて懸濁液で存在するPlasma Lyte A(Baxter)中の間充織幹細胞の懸濁液の静脈内注入によって、9人の患者に、体重1キログラムあたり0.5×106個の間充織幹細胞を与え、10人の患者に、体重1キログラムあたり1.6×106個の間充織幹細胞を与え、そして、15人の患者に、体重1キログラムあたり5.0×106個の間充織幹細胞を与えた。これにより、与えられた間充織幹細胞懸濁液の全容積は、細胞の投与量と患者の体重に依存した。
【0126】
19人の患者に、プラシーボ用量のPlasma LyteAを与えた。プラシーボ用量は、間充織幹細胞で治療した患者に与えられた間充織幹細胞懸濁物の容量に比例して低用量、中用量、及び高用量であった。プラシーボ患者の中で、5人の患者に低用量の懸濁液を与え、4人の患者に中用量の懸濁液を与え、そして、10人の患者に高用量の懸濁液を与えた。
【0127】
治療に関連する潜在的変化を検出するために、FEV1肺活量測定試験を6カ月間にわたり実施した。試験を、米国胸部学会のガイドラインに従っておこなった(Millerら、Eur. Respir. J., vol. 26、319-338ページ(2005年))。
【0128】
努力呼気量、つまりFEV1は、体温(37℃)、大気圧、水蒸気での飽和状態(BTPS)にて、リットル単位で表される、完全吸気の位置からの努力呼気の1秒間に吐き出された息の最大容量である。予測FEV1値を、年齢、性別、伸長、及び人種に基づいて各患者について計算した。男性についての予測FEV1を、以下の:
予測FEV1=0.0414×伸長(cm)−0.0244×年齢(歳)−2.190
として計算した(Crapoら、Am. Rev. Respir. Dis., vol. 123、659-664ページ(1981年))。
【0129】
女性についての予測FEV1を、以下の:
予測FEV1=0.0342×伸長(cm)−0.0255×年齢(歳)−1.578
として計算した(Crapo、1981年)。
【0130】
前記の値を、アフリカ系アメリカ人履歴をもつ者以外の男女について計算した。アフリカ系アメリカ人履歴をもつ男女については、前記の値に0.88の修正係数を掛けた。
【0131】
それぞれの患者の体重も記録した。体重はFEV1値の測定に織り込まれないが、肥満は計測される肺気量を下げるかもしれず、且つ、体重の変化は肺機能のわずかな変化をもたらし得る。
【0132】
すべての患者についてのFEV1値を、マウスピース又は患者の口に挿入されたチューブに接続した肺活量計を使用して計測した。各患者の伸長と体重を計測し、そして、ノーズ・クリップを各患者に取り付けた。完全に、且つ、素早く吸入し、全肺容量にて1秒未満止め、そして、それ以上の空気が吐き出せないまで最大限に息を吐き出すように各患者が指示した。前記手順を、三重反復試験で繰り返し、そして、各患者についてのFEV1値を計測した。FEV1値から、予測FEV1の割合(%)(Pred. FEV1%)の値を計算した。各患者についての予測FEV1の割合(%)(Pred. FEV1%)の値を、以下の:
【数1】
のとおり計算した。
【0133】
治療後6カ月(180日)までの様々な時間間隔にて、患者についてのPred. FEV1%値の改善率(%)も計算した。MSC及びプラシーボ治療群の結果を、図8に示す。前述の結果は、すべてのMSC治療患者のPred. FEV1%値の平均変化率(%)、及びプラシーボを受けたすべての患者のPred. FEV1%値の平均変化率(%)を示している。
【0134】
対照患者群と比較して、MSCで治療した患者は、注入後3日から6カ月まで、ベースライン(前治療)値に対して、Pred. FEV1%のより大きな改善を示した。注入後10及び30日にて、MSC治療患者とプラシーボ患者について観察されたPred. FEV1%値の改善の相違は、統計的に有意であった(p<0.05)。
【0135】
MSC治療患者とプラシーボ患者には、また、患者がトレッドミル上を歩き、そこで各患者が歩いた距離を6分間隔で計測するトレッドミル試験も受けさせた。距離測定を、治療後(ベースライン)、そして、治療後1カ月、3カ月、及び6カ月におこなった。前記試験を、ATS(米国胸部学会)のガイドラインに従って実施した(Am. J. Respir. Crit. Care Med., vol. 166、111ページ(2002年))。
【0136】
ベースライン距離と比較されるすべてのMSC治療患者及びすべてのプラシーボ治療患者が歩行した距離の平均変化率(%)を、図9に示す。3カ月と6カ月の時点の両方で、MSC治療患者が、プラシーボを受けた患者と比較して、歩行した距離の延長を示した。
【0137】
治療のすぐ後、そして、治療の1、3、及び6カ月後に患者が受けた6分間のトレッドミル試験に続いて、患者の心拍数回復を測定した。
【0138】
心拍数回復の結果を、図10に示す。図10に示されているように、治療の6カ月後に、プラシーボ治療を受けた患者と比較した場合に、トレッドミル歩行の停止後、15分以内にベースライン値への心拍数の回復を示すMSC治療を受けた患者の割合(%)の相違が、統計的に有意であった。
【0139】
Pred. FEV1%、歩行距離、及び心拍数回復における改善に関する先の結果は、プラシーボ群と比較して、間充織幹細胞で治療した患者が、肺機能を改善したことを示している。先の結果は、線維性肺疾患又は障害が間充織幹細胞によって治療され、それによって、間充織幹細胞が、肺機能を改善し、肺における既存の瘢痕組織を減少させ、及び/又は肺におけるさらなる瘢痕組織の拡大を予防するかもしれないことを示唆している。
【0140】
公開された特許出願を含めたすべての特許、刊行物、受託受入番号、及びデータベース受入番号は、各特許、刊行物、受託受入番号、及びデータベース受入番号が具体的に、且つ、個別に援用されたかのように同程度まで援用される。
【0141】
しかし、当然のことながら、本発明の範囲は、先に記載の具体的な態様に制限されない。本発明は、特に記載した以外にも実施されるかもしれず、なおかつ、添付の請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0142】
図面のいくつかの観点の簡単な説明
本発明は、以下の図面に関してここで説明する:
【図1A】MSCは、樹枝状細胞機能を調節する。(A)HLA-DR及びCD11cに対する抗体を使用した成熟単球DC1細胞の、並びにHLA-DR及びCD123(IL-3受容体)に対する抗体を使用した形質細胞様のDC2細胞のフローサイトメトリー解析。(---):アイソタイプ対照;(−):FITC/PE結合抗体。
【図1B】(B)MSCは、それぞれ活性DC1及びDC2からのTNF-α分泌を抑制し(第1Y軸)、及びIL-10分泌を増強する(第2Y軸)。
【図1C】(C)成熟DC1細胞と一緒に培養したMSCは、単独のMSC又はDCと比較して、T細胞によるIFN-γ分泌を抑制し(第1Y軸)、且つ、IL-4レベルを増強する(第2Y軸)。MSC存在下での炎症誘発性のIFN-γの産生低下と、抗炎症性のIL-4の産生促進は、抗炎症性表現型に向かうT細胞集団の転換を示した。
【図2A】MSCは、炎症誘発性エフェクターであるT細胞の機能を抑制する。(A)PBMCを染色することによるTReg細胞数(%単位)、あるいは、FITC結合CD4(X軸)及びPE結合CD25(Y軸)抗体を用いたMSC+PBMC培養物(MSC+PBMC)中の非接着画分のフローサイトメトリー解析。ゲートは、バックグラウンドとしてのアイソタイプ対照抗体に基づいて設定した。グラフは、5つの独立した実験を代表するものである。
【図2B】(B)MSCの存在下で生じたTH1細胞は、低減されたレベルのIFN-γを分泌し(第1Y軸)、そして、MSCの存在下で生じたTH2細胞は、細胞培養上清中に増強された量のIL-4を分泌した(第2Y軸)。
【図2C】(C)MSCは、24ウェル・プレート内で0、24、又は48時間、培養した精製NK細胞からのIFN-γ分泌を抑制する。示されたデータは、1つの実験における平均±SDサイトカイン分泌であり、3つの独立した実験を代表するものである。
【図3A】MSCは、増加したTReg細胞集団数と増強されたGITR発現の原因となる。(A)(さらなる刺激なしに3日間培養した)PBMC、又はMSC+PBMC(MSC対PBMCが1:10)培養物からのCD4+CD25+TReg細胞集団は、2段階の磁気単離手順を使用することで単離された。(さらなる増殖を防ぐために)これらの細胞に放射線を照射し、そして、フィトヘマグルチニン(PHA)(2.5mg/ml)の存在下、応答体が同種のPBMC(刺激細胞対応答細胞が1:100)であるところの混合リンパ球反応(MLR)における刺激体として使用された。その細胞を、48時間培養し、それに続いて3Hチミジンを加え、そして、取込まれた放射能が24時間後にカウントされた。結果は、MSCの存在下で生じたTReg集団(レーン3)が、MSCの不存在下で生じたTReg細胞(レーン2)に対して機能的に類似していることを示した。
【図3B】(B)PBMCは、MSC(MSC対PBMCが1:10)の不存在下(上のプロット)又は存在下(下のプロット)、3日間培養され、それに続いて非接着画分が回収され、そして、FITC標識GITRとPE標識CD4で免疫染色された。結果は、MSCの存在下で培養された細胞におけるGITR発現が2倍を超える増加を示す。
【図4A】MSCは、PGE2を産生し、そして、遮断PGE2は、MSC介在免疫調節効果を逆転させる。(A)培養上清中のPGE2分泌(平均±SD)を、様々な濃度のPGE2遮断薬であるNS-398又はインドメタシン(Indometh.)の存在下若しくは不存在下で培養したMSCから得た。阻害剤濃度はμM単位であり、そして、提示されたデータは24時間の培養後に得られた値である。
【図4B】(B)リアルタイムRT-PCRを使用したMSC及びPBMCにおけるCOX-1とCOX-2の発現。MSCは、PBMCと比較して、有意に高いレベルのCOX-2を発現し、そして、PBMCの存在下でMSCが培養された時、MSCのCOX-2発現において3倍を超える増加があった。3つの独立した実験の中の1つからの代表的なデータが示されている。MSC+PBMC培養を、MSCが下部チャンバー内に配置され、そして、PBMCが上部チャンバー内に配置されるトランスウェル・チャンバー・プレート内で準備した。
【図4C】(C)PGE2遮断薬であるインドメタシン(Ind.)又はNS-398の存在は、対照と比較して、活性DCからのTNF-α分泌(□)、及びTH1細胞からのIFN-γ分泌(□)を増加させる。データは、MSCとPGE2阻害剤の不存在下で生じた培養物からの%変化として計算された。
【図4D】(D)MSC-PBMC共培養(1:10)中のPGE2遮断剤であるインドメタシン(Indo)とNS-398の存在は、PHA処理PBMCに対するMSC介在抗増殖効果を逆転させる。示したデータは、1つの実験からのものであり、3つの独立した実験を代表するものである。
【図5】構成的なMSCサイトカイン分泌は、同種のPBMCの存在下で高められる。前もって特徴づけしたヒトMSCを使用して、PBMC(MSC対PBMCが1:10)の存在下(斜線の棒グラフ)又は不存在下(白抜きの棒グラフ)で24時間培養したMSCの培養上清中のサイトカインのIL-6及びVEGF、脂質メディエータのPGE2、及びマトリックス・メタロプロテイナーゼ1(pro MMP-1)のレベルが分析された。MSCは、IL-6、VEGF、及びPGE2を構成的に産生し、そして、これらの因子のレベルは、PBMCとの共培養により増加し、その結果、MSCが炎症性環境において免疫機能を調節する役割を果たすかもしれないことを示唆している。
【図6】MSCは、用量依存的様式で、分裂促進因子誘導性T細胞増殖を抑制する。増加した同種PBMCを、PHA(2.5mg/ml)の存在下若しくは不存在下で96ウェル・プレート上に蒔かれた一定数のMSC(2,000細胞/ウェル)と一緒に72時間インキューベートし、そして、3Hチミジン取込み(1分あたりのカウント数、つまりcpm単位)を測定した。MSCの存在下でPHA処理PBMCの増殖の用量依存的抑制があった。3つの独立した実験の中の1つからの代表的な結果が示されている。同様の結果は、LeBlancら、Scand J. Immunol., vol. 57、11ページ(2003年)によって報告された。
【図7】提案されているMSC作用機序の概略図。MSCは、先天性(DC経路2〜4;及びNK経路6)、並びに適応的(T経路1と5、及びB経路7)免疫系の両方から細胞に影響を及ぼすことによってそれらの免疫調節効果を媒介する。侵入病原体に対する応答において、未成熟DCは、可能性のある侵入部位に移動し、成熟し、そして、(抗原特異的、且つ、共刺激シグナルによって)保護的なエフェクターT細胞(細胞性TH1又は液性TH2免疫)になるように無感作T細胞を用意する能力を取得する。MSC-DC相互作用の間、直接的な細胞間接触によるか又は分泌因子を介してMSCは、細胞性応答(経路2)を開始するDCの能力を制限するか、又は液性応答(経路4)を開始する能力を促進することによって、免疫応答の結末を変えるかもしれない。また、成熟エフェクターT細胞が存在している時には、MSCは、TH2応答(経路5)に向け、そして、たぶん、GvHD及び自己免疫疾患病徴の抑制のための望ましい結末である、B細胞活性(経路7)を生じる増強されたIgEに向けてTH1(経路1)応答のバランスをゆがめるようにそれらと相互作用するかもしれない。TReg集団(経路3)の増強された産生をもたらすそれらの能力によりMSCは、許容性がある表現型をもたらすかもしれず、且つ、それらの局所的な微小環境におけるバイスタンダー炎症を弱めることによって受容宿主を助けるかもしれない。破線(----)は、提案した作用機序を表す。
【図8】MSC治療は、プラシーボを受けた患者と比較して、間充織幹細胞で治療された患者において予測1秒間努力呼気容量(Pred. FEV1%)のパーセントに改善をもたらす。
【図9】6分後のトレッドミル上を歩行した距離の測定。MSCで治療した患者は、プラシーボを受けた患者と比較して、歩行距離の増加を示した。
【図10】トレッドミル試験を受けた患者の心拍数の回復。トレッドミル試験を受けた患者のより高い割合(%)の患者が、15分以内に、又はプラシーボ治療を受けた患者より短時間のうちに心拍数のベースライン値への回復を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓以外の動物の臓器又は組織における血管新生の促進方法であって:
前記動物の心臓以外の臓器又は組織における血管新生を促進するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記動物が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物が霊長動物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記霊長動物がヒトである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記間充織幹細胞を、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記間充織幹細胞を、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記間充織幹細胞を全身的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記間充織幹細胞を、静脈内に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記間充織幹細胞を、前述の動物の心臓以外の前述の臓器又は組織に直接注射することによって投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
動物の自己免疫疾患及び移植片対宿主病から成る群から選択される疾患の治療方法であって:
前記動物の前記疾患を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、
を含む方法。
【請求項11】
前記動物が哺乳動物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記哺乳動物がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が多発性硬化症である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
動物の炎症反応の治療方法であって:
前記動物の前記炎症反応を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項15】
前記動物が哺乳動物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症反応が乾癬に関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
動物の癌の治療方法であって:
前記動物の癌を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、
を含む方法。
【請求項19】
前記動物が哺乳動物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記哺乳動物がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
動物のアレルギー疾患又は障害の治療方法であって:
前記動物の前記アレルギー疾患又は障害を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項22】
前記動物が哺乳動物である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記哺乳動物がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アレルギー疾患又は障害が、関節炎である、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
動物の創傷治癒の促進方法であって:
前記動物の創傷治癒を促進するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項26】
前記動物が哺乳動物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記哺乳動物がヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
動物の線維性障害の治療又は予防方法であって:
前記動物の前記線維性障害を治療するか又は予防するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項29】
前記線維性障害が急性呼吸促迫症候群である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記線維性障害が慢性閉塞性肺疾患である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記線維性障害が特発性肺線維症である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
動物の上皮損傷の修復方法であって:
前記動物の上皮損傷を修復するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項33】
前記動物が哺乳動物である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記上皮損傷が移植片対宿主病の結果である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
動物の肺疾患の治療方法であって:
前記動物の肺疾患を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項37】
前記肺疾患に、線維性要素と炎症性要素がある、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記肺疾患が慢性閉塞性肺疾患である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
動物の肺機能の改善方法であって:
前記動物の肺機能を改善するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項40】
前記間充織幹細胞を、体重1キログラムあたり約0.5×106細胞〜体重1キログラムあたり約5.0×106細胞の量で投与する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記間充織幹細胞を、前述の患者の努力呼気量を改善するのに有効な量で投与する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記間充織幹細胞を、前述の患者の努力呼気量を少なくとも10%改善するのに有効な量で投与する、請求項41に記載の方法。
【請求項1】
心臓以外の動物の臓器又は組織における血管新生の促進方法であって:
前記動物の心臓以外の臓器又は組織における血管新生を促進するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記動物が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物が霊長動物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記霊長動物がヒトである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記間充織幹細胞を、約1×105細胞/kg〜約1×107細胞/kgの量で投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記間充織幹細胞を、約1×106細胞/kg〜約5×106細胞/kgの量で投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記間充織幹細胞を全身的に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記間充織幹細胞を、静脈内に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記間充織幹細胞を、前述の動物の心臓以外の前述の臓器又は組織に直接注射することによって投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
動物の自己免疫疾患及び移植片対宿主病から成る群から選択される疾患の治療方法であって:
前記動物の前記疾患を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、
を含む方法。
【請求項11】
前記動物が哺乳動物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記哺乳動物がヒトである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が多発性硬化症である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
動物の炎症反応の治療方法であって:
前記動物の前記炎症反応を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項15】
前記動物が哺乳動物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症反応が乾癬に関連する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
動物の癌の治療方法であって:
前記動物の癌を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、
を含む方法。
【請求項19】
前記動物が哺乳動物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記哺乳動物がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
動物のアレルギー疾患又は障害の治療方法であって:
前記動物の前記アレルギー疾患又は障害を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項22】
前記動物が哺乳動物である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記哺乳動物がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アレルギー疾患又は障害が、関節炎である、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
動物の創傷治癒の促進方法であって:
前記動物の創傷治癒を促進するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項26】
前記動物が哺乳動物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記哺乳動物がヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
動物の線維性障害の治療又は予防方法であって:
前記動物の前記線維性障害を治療するか又は予防するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項29】
前記線維性障害が急性呼吸促迫症候群である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記線維性障害が慢性閉塞性肺疾患である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記線維性障害が特発性肺線維症である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
動物の上皮損傷の修復方法であって:
前記動物の上皮損傷を修復するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項33】
前記動物が哺乳動物である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記上皮損傷が移植片対宿主病の結果である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
動物の肺疾患の治療方法であって:
前記動物の肺疾患を治療するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項37】
前記肺疾患に、線維性要素と炎症性要素がある、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記肺疾患が慢性閉塞性肺疾患である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
動物の肺機能の改善方法であって:
前記動物の肺機能を改善するのに有効な量で間充織幹細胞をその動物に投与すること、を含む方法。
【請求項40】
前記間充織幹細胞を、体重1キログラムあたり約0.5×106細胞〜体重1キログラムあたり約5.0×106細胞の量で投与する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記間充織幹細胞を、前述の患者の努力呼気量を改善するのに有効な量で投与する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記間充織幹細胞を、前述の患者の努力呼気量を少なくとも10%改善するのに有効な量で投与する、請求項41に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−522212(P2010−522212A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554770(P2009−554770)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/057828
【国際公開番号】WO2008/116157
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(508241152)オシリス セラピューティクス,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/057828
【国際公開番号】WO2008/116157
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(508241152)オシリス セラピューティクス,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】
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