説明

間質性肺疾患および喘息のためのトレプロスチニル処置

本発明は、間質性肺疾患または喘息、例えば肺線維症などの間質性肺疾患に関連する状態、または喘息に関連する状態の治療または予防するための、トレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩の使用方法を記載する。本発明はまた、有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩を含む、前記状体の治療および/または予防のためのキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2007年2月9日に出願の米国仮出願No.60/900,320および2007年5月25日に出願の米国仮出願No.60/940,218の優先権を主張し、当該出願は、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、間質性肺疾患または喘息、または間質性肺疾患または喘息に関連する状態の治療および/または予防するための、トレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩に使用に関する。本発明はまた、この目的のために使用されるキットにも関する。
【背景技術】
【0003】
突発性肺線維症(IPF)
米国の20万人以上の患者も含めて、世界で500万の人々が肺線維症を患っており、肺線維症による死者数は世界で年に4万人以上である。
【0004】
肺線維症の既知の原因として、職業上および環境上の汚染物質の吸入;強皮症、関節リュウマチ、狼瘡およびサルコイドーシスなどの疾患;望ましくない副作用を有する特定の医薬;放射線治療;遺伝的/家族的状況が挙げられる。既知の原因がすべて当てはまらない場合、その状態を「突発性」肺線維症(IPF)と呼ぶ。
【0005】
突発性肺線維症(IPF)は、正常な肺の領域および線維化領域が入れ替わること、および末梢および胸膜下実質における間質性炎症により特徴づけられる進行性疾患である。線維症の顕著な特徴として、上皮下筋線維芽細胞/線維芽細胞巣、およびコラーゲンおよび細胞外マトリックスの沈着の増加が挙げられる。この過剰な瘢痕組織は肺胞壁の硬化およびコンプライアンスの低下を生じさせ、総肺活量の不可逆的損失および毛細血管への酸素輸送能力の低下を引き起こす。シクロオキシゲナーゼ依存性のアラキドン酸代謝物であるプロスタノイドが肺線維症の発症に関連している。
【0006】
現在、肺線維症に対する効果的な処置または治療が存在しない。処置としては、コルチコステロイドの単独または他の医薬との組合せでの投与;酸素療法;および肺移植が挙げられる。したがって、肺線維症およびその他のタイプの間質性肺疾患の処置のための療法の開発が非常に望まれている。
【0007】
喘息
米国では2000万人以上の人々が喘息と診断されている。喘息は複合的疾患であり、一時的な気流制限、気管支過敏および気道炎症により特徴づけられる。気道閉塞は、典型的には、気管支拡張剤の投与により回復する。しかし疾患が長期にわたる場合は、気道リモデリングのプロセスにより、閉塞部分が回復不能となる場合がある。気道炎症は主として、好酸球およびTh2リンパ球により起こる。
【0008】
プロスタサイクリン(PGI2)は喘息で見られる気道炎症およびリモデリングを防止する役割を有しうる。気道平滑筋細胞の肥大/過形成は喘息での気道狭窄を引き起こす。PGI2は気道平滑筋の抗増殖作用を有する(Belvisi、1998)。プロスタサイクリン受容体(IP受容体)が欠損したマウスには、アレルゲン誘発性炎症の増大(Takahashi、2002;Nagao、2003)および気道リモデリング(Nagao、2003)が認められる。同様に、アレルギー性肺反応(気道好酸球増加、IgE生産、気道過敏)はプロスタグランジンH合成酵素欠損マウスにおいて増大する(Gavett、1999)。炎症のTh2パターンは喘息の特徴である。アレルギー性気道炎症のマウスオボアルブミンモデルにおいて、PGI2は気道において生産され、Th2媒介アレルギー性炎症(IL−4、IL−5、IL−13)および気道過反応性を抑制する(Jaffar、2002)。プロスタサイクリン類縁体のイロプロストは、喘息のマウスモデルにおいて抗炎症作用を有することが示されている(Idzko、2007)。イロプロストは、気道において重要な抗原提示細胞である肺ミエロイド樹上細胞の機能を妨害することによりこの作用を示す。イロプロストは、肺樹状細胞の成熟化および縦隔リンパ節への遊走を妨げ、それによりこれらのリンパ節における抗原特異的Th2応答の誘起を止める。
【0009】
喘息の処置としては、気管支拡張剤などの速放性薬剤の使用などが挙げられる。喘息のための長期制御薬剤としては、コルチコステロイド、長時間作用型βアゴニスト、ロイコトリエン調節剤、クロモリン、ネドクロミル、およびテオフィリンが挙げられる。喘息の処置用のさらなる療法の開発が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様において、本発明は、間質性肺疾患または間質性肺疾患に関連する状態、例えば肺線維症の治療または予防の方法であって、それを必要とする対象に有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩を投与することを含む前記方法である。1つの態様において、本発明は、喘息または喘息に関連する状態の治療または予防の方法であって、それを必要とする対象に有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩を投与することを含む前記方法である。誘導体は、トレプロスチニルの酸誘導体、トレプロスチニルのプロドラッグ、トレプロスチニルの持続放出型、トレプロスチニルの吸入型、トレプロスチニルの経口型、トレプロスチニルの多形体、またはトレプロスチニルの異性体であってよい。別の態様において、肺線維症の処置方法は、突発性肺線維症を対象とする。当該肺線維症は、職業上または環境的暴露によって起こりうるものであり;放射線によって起こる肺線維症、結合組織疾患またはコラーゲン疾患により起こる肺線維症、遺伝的/家族的疾患により起こる肺線維症、薬物副作用により起こる肺線維症、突発性肺線維症およびそれらの組み合わせであってもよい。本発明を使用する処置はまた、肺線維症に関連する疼痛またはその他の症状を抑制し、取り除き、または予防する。
【0011】
本発明の別の態様において、当該方法ではトレプロスチニルの医薬として許容な塩またはその誘導体が投与され、または医薬として許容なその塩が投与される。当該方法の対象は哺乳類、好ましくはヒトである。投与は、静脈内に、吸入で、または錠剤およびカプセル剤からなる群より選択される経口投与用に利用可能な剤形で行われうる。別の態様において、有効量は、少なくとも毎分体重1kg当たり1.0ng(ng/kg(体重)/分)である。あるいは、有効量は、吸入するトレプロスチニル1日当たり5〜500μgである。
【0012】
別の態様において、本発明は、肺疾患、例えば肺線維症を含む間質性肺疾患、または他の状態、例えば喘息の処置方法であって、肺疾患に関連するバイオマーカーを正常化することが知られている薬剤または剤の組み合わせを投与することを含む前記方法を指向する。さらなる態様において、薬剤はトレプロスチニルであり、肺疾患はIPFであり、バイオマーカーはMMP−9、Arg−2、VEG−FおよびPDGFである。
【0013】
別の態様において、本発明は、肺線維症などの間質性肺疾患または間質性肺疾患に関連する状態の治療または予防のためのキットであって、(i)有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩、(ii)1以上の医薬として許容な担体および/または添加剤、および(iii)間質性肺疾患の治療または予防に使用するための説明書を含む前記キットである。別の態様において、本発明は、喘息または喘息に関連する状態の治療または予防のためのキットであって、(i)有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩、(ii)1以上の医薬として許容な担体および/または添加剤、および(iii)喘息の治療または予防に使用するための説明書を含む前記キットである。
【0014】
ここで、構成(i)は静脈内投与、吸入、または経口投与に適した形態の、トレプロスチニルの医薬として許容な塩であってもよい。キットで処置される対象は、哺乳類または好ましくはヒトである。処置される肺線維症は、職業的または環境的暴露により起こる肺線維症;放射線によって起こる肺線維症;結合組織疾患またはコラーゲン疾患により起こる肺線維症;遺伝的/家族的疾患により起こる肺線維症;薬物副作用により起こる肺線維症;突発性肺線維症およびそれらの組み合わせからなる群より選択されうる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、小血管および毛細血管を通る血流の増加により血流を高め、肺線維症などの間質性肺疾患または間質性肺疾患に関連する状態の治療または予防に有効である療法に関する。
【0016】
本発明はまた、喘息または喘息に関連する状態の治療または予防に有効である療法に関する。
【0017】
プロスタサイクリンは、大血管の拡張、平滑筋の弛緩、平滑筋増殖の阻害、ならびに血小板凝集の阻害を生じさせることが既に確認されている小分子であり、血液凝固プロセスに関与する。微小血管レベルおよび皮膚近傍の毛細血管でのトレプロスチニルによる同様の作用は、皮膚血流を高めること、および強皮症、バージャー病、レイノー病、レイノー現象、およびその他の状態に関連する虚血性病変または潰瘍を治癒および/または予防することに寄与すると考えられている
【0018】
本発明は、間質性肺疾患または喘息、または間質性肺疾患または喘息に関連する状態の治療方法および/または予防方法であって、それを必要とする対象に、有効量のトレプロスチニルおよび/またはその誘導体および/または医薬として許容なその塩を投与することを含む前記方法に関する。好適な誘導体としては、トレプロスチニルの酸誘導体、トレプロスチニルのプロドラッグ、トレプロスチニルの持続放出型、トレプロスチニルの吸入型、トレプロスチニルの経口型が挙げられ、米国特許番号6,521,212および6,756,033(Cloutierら)および米国特許出願公報番号20050085540および20050282901(Pharesら)に開示されているものが含まれる。
【0019】
特に特定がなければ、本明細書で使用される冠詞「a」または「an」は「1以上」を意味する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「使用説明書」との句は、間質性肺疾患または喘息、または間質性肺疾患または喘息に関連する状態を治療または予防する目的の、トレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩の投与に関する、任意のFDAが義務づけているラベリング、説明書、または添付文書を意味する。例えば、使用説明書は、限定はされないが、喘息、または間質性肺疾患に関連する状態(例えば肺線維症)、または喘息に関連する状態のための指示、トレプロスチニルにより改善しうる当該状態に関連する具体的症状の識別、および間質性肺疾患または喘息に罹患した対象への推奨投与量を含んでいてもよい。
【0021】
用語「酸誘導体」は、窒素が1または2のC−Cアルキル基で置換されていてもよいアミドを含む、C−Cアルキルエステルおよびアミドを表現するために本明細書で使用される。
【0022】
種々の程度の炎症および線維症を伴う多くの急性および慢性肺疾患は、集合的に間質性肺疾患(ILDs)として言及される。肺の重度の線維症のために、肺動脈高血圧症(PAH)は、しばしばILDのいくつかの形態の後期合併症となる。
【0023】
肺高血圧症は、肺動脈高血圧症(PAH)および肺静脈高血圧症などの複数の疾患を含む。
【0024】
用語「肺線維症」は、肺の組織が肥厚し損傷した状態である。当該状態は医学界では十分に確立しており、息切れ、倦怠、脱力、慢性的乾燥、空咳、食欲不振、および胸部の不快感に関連する。時間とともに肺の損傷は線維化組織により置き換わり、肺組織は肥厚する。この肥厚は、酸素を血液に運搬する肺の能力に損失を与える。この状態は、肺高血圧症などの肺の他の状態から区別される。
【0025】
用語「喘息」は、肺へ空気を運ぶ気道の内部が炎症を起こした状態である。当該状態は医学界で十分に確立している。この炎症は、気道の狭窄および空気の流れの閉塞を引き起こす。この状態は肺の他の状態から区別される。
【0026】
本発明はまた、インビボでトレプロスチニルまたは医薬的に活性なその誘導体に変換される化合物である、トレプロスチニルのバイオプレカーサーまたは「プロドラッグ」を含む。
【0027】
本発明のさらなる側面は、間質性肺疾患または喘息、または間質性肺疾患または喘息に関連する状態の治療または予防のための医薬の製造における、トレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩の使用に関する。
【0028】
本発明はまた、トレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩を使用する方法を包含する。1つの態様において、方法は、REMODULIN(登録商標、リモジュリン)の商品名で現在市販されている、トレプロスチニルナトリウムを使用する。FDAは、1.0mg/mL、2.5mg/mL、5.0mg/mLおよび10.0mg/mLの投薬濃度での注射による肺動脈高血圧の処置のためにトレプロスチニルナトリウムを承認している。トレプロスチニルナトリウムの化学構造式は以下の通りである。
【化1】

【0029】
トレプロスチニルナトリウムは時として、化学名:(a)[(1R,2R,3aS,9aS)−2,3,3a,4,9,9a−ヘキサヒドロ−2−ヒドロキシ−1−[(3S)−3−ヒドロキシオクチル]−1H−ベンズ[f]インデン−5−イル]オキシ]酢酸;または(b)9−デオキシ−2’,9−α−メタノ−3−オキサ−4,5,6−トリノール−3,7−(1’,3’−インターフェニレン)−13,14−ジヒドロ−プロスタグランジンFにより示される。トレプロスチニルナトリウムはまた、UT−15;LRX−15;15AU81;UNIPROSTTM;BW A15AU;およびU−62,840としても知られている。トレプロスチニルナトリウムの分子量は390.52であり、その実験式はC2334である。
【0030】
本発明は、トレプロスチニルの生理的に許容な塩、および本発明の薬理学的に活性な化合物の調製に使用されうるトレプロスチニルの生理的に許容されない塩の使用方法にまで拡張される。
【0031】
トレプロスチニルの生理学的に活性な塩は、塩基から誘導される塩を含む。塩基塩としては、アンモニウム塩(例えば、4級アンモニウム塩など)、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムおよびカリウムの塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムまたはマグネシウムの塩など)、有機塩基との塩(例えば、ジシクロヘキシルアミンおよびN−メチル−D−グルカミンなど)、およびアミノ酸との塩(例えば、アルギニンおよびリジンなど)が挙げられる。
【0032】
4級アンモニウム塩は、例えば、低級アルキルハライド、例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチルクロリド、ブロミドおよびヨージドとの反応、ジアルキルスルフェートとの反応、長鎖ハライド、例えば、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルクロリド、ブロミドおよびヨージドとの反応、アラルキルハライド、例えばベンジルおよびフェネチルブロミドとの反応により形成することができる。
【0033】
本発明による投薬または診断補助において所望の効果を達成するために必要とされる、トレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩の量は、いくつかの要因、例えば、具体的な適用、具体的な化合物の性質、投薬方法、使用する化合物の濃度、および患者の体重および状態などに依存する。間質性肺疾患または喘息、または間質性肺疾患または喘息に関連する状態を治療または予防するための患者毎の日薬量は、1日体重1kg当たり、25μg〜250mg;0.5μg〜2.5mgまたは7μg〜285μgの範囲であってもよい。例えば、1日体重1kg当たり0.5μg〜1.5mgの範囲の静脈内投与は、適宜、体重1kg当たり毎分0.5ng〜1.0μgの点滴注入として投与される。1つの可能な投薬量は、2.5ng/kg/分であり、12週かけて各週2.50ng/kg/分の量で、目標投薬量、例えば、15ng/kg/分に達するまで増加させる。この目的に適した注入液は、例えば、10ng/mL〜1μg/mLである。注射用アンプルは、例えば、0.1μg〜1.0mgを含み、例えば錠剤またはカプセルなどの経口投与用単位薬量製剤は、例えば、0.1〜100mg、典型的には1〜50mgを含む。診断目的のために、単一の単位薬量製剤が投与されうる。生理的に許容な塩の場合、上記に示される重量は活性化合物イオン、すなわちトレプロスチニル由来のイオンを意味する。
【0034】
本発明による医薬または診断助剤(以後、「製剤」と称する)の製造において、トレプロスチニルおよび/またはその誘導体および/または医薬として許容なその塩は、とりわけ、許容される担体と混合されてもよい。担体は、もちろん、製剤中の他の成分と適合するという意味において許容でなければならず、対象にとって有害であってはならない。担体は、固体または液体または両方であってもよく、好ましくは単位薬量製剤、例えば、0.05重量%〜95重量%活性化合物を含んでもよい錠剤として化合物と製剤される。1以上のトレプロスチニルまたはその誘導体または医薬として許容なその塩が本発明の製剤に包含されていてもよく、当該製剤は、成分を混合するためのよく知られた薬学的技術のいずれかにより調製されうる。
【0035】
本発明の製剤は、非経口投与(例えば、皮下、筋肉内、皮内、または静脈内)、経口投与、吸入投与(固体型および液体型)、直腸内、局所、口腔内(例えば、舌下)および経皮投与に適した製剤が含まれるが、任意の所定のケースにおいて最も好適な経路は、処置すべき状態の性質および重篤度およびトレプロスチニル、その誘導体、または医薬として許容なその塩の具体的な型の性質に依存するであろう。
【0036】
非経口投与に適した本発明の製剤は、適宜、トレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩の無菌水性調合液を含み、ここで調合液は、対象とする受容者の血液と等張であってもよい。これらの調合液は、皮下注射の方法により投与されうるが、投与はまた静脈内投与、または筋肉内または皮内注射の方法により達成されうる。前記調合液は、化合物と水またはグリシンまたはクエン酸塩バッファーを混合し、得られた溶液を無菌化し、血液と等張化することにより適宜調製してよい。本発明の注射可能な製剤は、0.1〜5%w/vの活性化合物を含んでいてよく、0.1ml/分/kgの速度で投与されてよい。あるいは、本発明は、0.625〜50ng/kg/分の速度で投与されてもよい。あるいは、本発明は、10〜15ng/kg/分の速度で投与されてもよい。
【0037】
経口投与に適した製剤は、例えばカプセル、カシェ剤、トローチ剤、または錠剤などの、それぞれがトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩の所定量含有する個別の単位で;粉末または顆粒として;水性または非水性液体中の溶液または懸濁液として;または水中油型または油中水型エマルジョンとして提供されうる。前記製剤は、活性化合物および好適な担体(1以上の補助的成分を含んでいてもよい)を合わせる段階を含めて、薬学の任意の好適な方法により調製されうる。
【0038】
一般に、本発明の製剤は、活性化合物を、液体または細かく粉砕された固体担体またはその両方と均一かつ入念に混合し、その後必要であれば、得られた混合物を成形することにより調製される。例えば、錠剤は、活性化合物と、場合によっては1以上の補助的成分を含有する粉末または顆粒を圧縮成形することにより調製されうる。圧縮錠剤は、好適な機械で、場合によっては結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、および/または界面活性剤/分散剤と混合した、粉末または顆粒などの自由流動成型体の化合物を圧縮することにより調製されうる。成形された錠剤は、好適な機械で、不活性な液体結合剤により湿らせた粉末にした化合物を成形することにより作成することができる。
【0039】
口腔内(舌下)投与に適した製剤としては、フレーバー基剤、通常はスクロースおよびアカシアゴムまたはトラガカントゴム中のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩を含むトローチ;およびゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアゴムなどの不活性基剤中に当該化合物を含む、口中剤(pastilles)が挙げられる。
【0040】
直腸内投与に適した製剤は、好ましくは単位薬量座薬として提供される。これらは、トレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩を1以上の慣用の固体担体、例えば、ココアバターと混合し、どの後得られた混合物を成形することにより調製されうる。
【0041】
皮膚への局所適用に適した製剤は、好ましくは軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ジェル、スプレー、エアロゾルまたはオイルの形態をとる。使用されうる担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、および2以上のそれらの組合せが挙げられる。活性化合物は一般的には、0.1〜15%w/w、例えば0.5〜2%w/wの濃度で提供される。経皮投与の製剤は、イオントフォレシス(例えば、Pharmaceutical Research,3巻(6号):318頁(1986年)を参照)により送達されてもよく、典型的には、場合によっては緩衝されているトレプロスチニルまたはその誘導体またはその塩の水性溶液の形態をとってもよい。好適な製剤は、クエン酸塩またはbis/trisバッファー(pH6)またはエタノール/水を含み、0.1〜0.2Mの活性成分を含む。
【0042】
本発明の化合物は、米国特許番号No.4,306,075、米国特許番号No.6,528,688および米国特許番号No.6,441,245に記載された方法と同一または類似の方法により適宜調製される。
【0043】
特定のキットの態様において、トレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩は、皮下投与、持続皮下注入、静脈内投与または吸入に好適な形態である。別のキットの態様において、トレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩は、錠剤およびカプセル剤からなる群から選択される経口投与が可能な形態である。別のキットの態様において、有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩は、少なくとも1.0kg/kg(体重)/分である。
【0044】
肺線維症におけるトレプロスチニルの効果は、Bonner JC、Rice AB、Ingram JL、Moomaw CR、Nyska A、Bradbury A、Sessoms AR、Chulada PC、Morgan DL、Zeldin DC、およびLangenbach R.、「Susceptibility of cyclooxygenase−2−deficient mice to pulmonary fibrogenesis.」、Am.J.Pathol.161巻:459〜470頁,2002年;23頁;およびKeerthisingam CB、Jenkins RG、Harrison NK、Hernandez−Rodriguez NA、Booth H、Laurent GJ、Hart SL、Foster ML、およびMcAnulty RJ.、「Cyclooxygenase−2 deficiency results in a loss of the anti−proliferative response to transforming growth 31 factor−beta in human fibrotic lung fibroblasts and promotes bleomycin−induced pulmonary fibrosis in mice.」、Am.J.Pathol.158巻:1411〜1422頁,2001年に記載された肺線維症のブレオマイシンおよびV2O5モデルなどの肺線維症の動物モデルを使用して試験することができる。当該文献は参照することによりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0045】
本発明の製剤はまた、肺疾患に関連するバイオマーカーを正常化するために使用してもよい。肺疾患および罹患した細胞または組織は、タンパク質および細胞化合物の濃度の変動に関連する。これらの化合物は、疾患の重篤度および経過を評価するためのバイオマーカーを提供する。例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP−9)、アンジオポイエチン−2(Ang−2)、血管内皮由来増殖因子(VEG−F)、および血小板由来増殖因子(PDGF)は肺疾患に関連し、トレプロスチニルまたはその他の薬剤による処置の課程を観察するために、本発明において使用することができる。
【0046】
喘息におけるトレプロスチニルの効果は、慢性ヒト喘息のマウスモデルなどの、喘息の動物モデルを使用して試験することができる。Kumar RKおよびFoster PS.、Immunol Cell Biol.2001年4月;79巻(2号):141〜4頁を参照されたい。
【0047】
既に引用されたすべての公報の開示は、個々の参照によりそれぞれが援用されているのと同じ程度で、それらの全体が参照により本明細書に明示的に援用される。
【0048】
本明細書に記載する実施例は本発明の例示であり、それを限定することを意図していない。本発明の異なる態様は本発明として記載されている。多くのモディフィケーションおよびバリエーションは、本発明の意義や範囲を逸脱しない範囲で本明細書に記載され例示された技術に沿って作成されうる。したがって、実施例は例示にすぎず、本発明の範囲を限定しないことを理解されたい。
【実施例】
【0049】
実施例1
ブレオマイシン誘導性線維症
ブレオマイシン誘導性線維症は、肺線維症の発症のモデル態様として広く使用されている。Smithら、J.Immunol.153巻:4704頁(1994年)を参照されたい。
【0050】
実験マウスおよび対照マウスをブレオマイシンで処置し、肺線維症様症状の発生を確認するために分析する。トレプロスチニルの送達は150ng/kg/分で行う。典型的な実験マウスは約20gであり、皮下投与による180ng/hr、または1.8×10−4mg/hrの送達が行われる。溶液中のトレプロスチニルの濃度は7.2×10−4μg/μLである。
【0051】
18匹のマウスを試験し、9匹にトレプロスチニルを与え、9匹にプラセボを与える。各群の3匹を第7日、第14日、および第21日後に分析し、組織におけるトレプロスチニルの影響を比較する。上記期日の期間経過後、トレプロスチニルで処置したマウスと対照マウスの効果を判断するために、マウスを分析する。ブレオマイシン未処理マウスの効果を、トレプロスチニルを与えたものおよび与えないものの両方のブレオマイシン処理マウスと比較し、肺線維症の経過におけるトレプロスチニル投与の有効性を確認する。
【0052】
実施例2
肺疾患のオボアルブミンモデル
オボアルブミン感受性マウスは、喘息を含む肺疾患の発症のモデル態様として広く使用されている。
【0053】
実験マウスおよび対照マウスをオボアルブミンで処置し、喘息様兆候の発生を確認するために分析する。典型的な実験マウスは約20gである。トレプロスチニルは当該技術分野の当業者によく知られた種々の剤形で送達されてもよく、合計約4.32μg/日がマウスに送達される。
【0054】
18匹のマウスを試験し、9匹にトレプロスチニルを与え、9匹にプラセボを与える。各群の3匹を第7日、第14日、および第21日後に分析し、組織におけるトレプロスチニルの影響を比較する。上記期日の期間経過後、トレプロスチニルで処置したマウスと対照マウスの効果を判断するために、マウスを分析する。オボアルブミン未処理マウスの効果を、トレプロスチニルを与えたものおよび与えないものの両方のオボアルブミン処理マウスと比較し、喘息の経過におけるトレプロスチニル投与の有効性を確認する。
【0055】
実施例3
トレプロスチニルによる肺線維症の処置を評価するために、Belperioらに記載のマウスモデルを使用する。Belperio,J.ら、「Critical role for the chemokine MCP−1/CCR2 in the pathogenesis of bronchioligits obliterans syndrome」、Journal of clinical investigation 108巻:547頁、2001年を参照されたい。このモデルでは、babl/cマウスからc57BL/6マウスの背部に移植された気管が観察され、気管は病理過程について病理組織学的に評価される。
【0056】
トレプロスチニルおよびプラセボをマウスに送達するためにポンプを使用することができる。Alzet浸透圧ポンプ2004は200μlを保持し、0.25μL/hrの流速を有する。その他のポンプは必要に応じて利用してもよい。トレプロスチニルの送達は150ng/kg/分で行う。典型的な実験マウスは約20gであり、皮下投与による180ng/hr、または1.8×10−4mg/hrの送達が行われる。溶液中のトレプロスチニルの濃度は7.2×10−4μg/μLである。
【0057】
C57BL/6背部毎に4つのbalb/cの気管が存在する。
【0058】
18匹のマウスを試験し、9匹にトレプロスチニルを与え、9匹にプラセボを与える。各群の3匹を第7日、第14日、および第21日後に分析し、組織におけるトレプロスチニルの影響を比較する。上記期日の期間経過後、トレプロスチニルで処置したマウスと対照マウスの効果を判断するために、マウスを分析する。病理とマウスBOSスコアのために、すべてのサンプルを分析する。
【0059】
実施例4
患者におけるトレプロスチニル(リモジュリンまたは吸入されたトレプロスチニルの形態で)の効果を、肺疾患を有する患者の運動能力および息切れの標準的評価方法である、ボーグ呼吸困難スコアによる6分間歩行試験を使用して分析する。Guyatt,G.Sullivan,M.ら(Canada Medical Assoc.J.、132巻、1985)を参照されたい。6分間歩行は日々の活動の要請に密接に関連し、患者における臨床試験のための機能的運動能力の安全で簡単な評価方法である。
【0060】
リモジュリンは、2.5〜80ng/kg/分の範囲で静脈内投与または皮下投与により患者に投与される。トレプロスチニルの吸入は、経口で1日4回5〜60μgの範囲で患者に投与される。1つの試験群に薬剤を与え、1つの対照群にプラセボを与えて、2群を対象として試験を行う。対象者は全体で12週間の試験中、プラセボか薬剤を与えられ、例えば2週間毎に6分間歩行試験を使用して、定期的に試験される。
【0061】
一般的手法
6分間歩行のために使用する場所は、最低でも108フィート(33メートル)の長さと少なくとも6〜8フィート(2〜3メートル)の幅をあらかじめ計測しておくべきである。長さには、半ヤード(0.5メートル)の幅毎に印を付けるべきである。その場所は、よく換気を行い、気温は20〜23℃(68〜76°F)に制御すべきである。
【0062】
試験者は、通路の出発点または通路の中間点にストップウォッチを持っていてもよい。患者が継続できない場合には断続的な休憩期間が認められる。患者が短い休憩を必要とする場合は、彼/彼女は立っていても座っていてもよく、彼/彼女が十分に休憩したときにまた開始するが、時計は動かし続ける。6分間の最後に試験者は「ストップ」と号令し、同時に時計を止め、歩行距離を計測する。その後、ボーグ呼吸困難評価を行う。
【0063】
6分間歩行運動試験
患者への説明
【0064】
試験前にとる食事は軽くすべきであることが患者に説明される。快適な衣服およびスニーカーまたは快適なウォーキングシューズを着用するように患者にいうべきである。試験を実施する人は、患者に以下の問答を使用する。
【0065】
「この試験の目的は、6分間でどれほど遠くまであなたが歩くことができるかを調べることです。あなたはこの地点から出発し、端のマーカー(例えば椅子)まで廊下に沿って、そこで向きを変えて戻ってきます。あなたが出発地点に戻ってきたときには、また戻ってください。6分間にできるだけ多くの回数往復してください。必要であれば立ち止まって休憩してもかまいません。あなたが再び続けることができるまであなたがいる場所に留まってください。しかし、この試験について最も重要なことは、6分間であなたが可能な限り長い距離を進むことです。私は時間をお知らせしますので、あなたはいつ6分が終了するかを知ることができます。私が「ストップ」といったら、その場に立ち止まってください。」
【0066】
患者にこの説明をした後に、試験を実施する人は「この試験について何か質問はありますか。」、「あなたが何を行うのか私に説明してください」と尋ねる。
【0067】
その後、試験を実施する人は以下を患者に告げて試験を開始する「準備はいいですか?」、「『ゴー』といったら始めて下さい。」
【0068】
試験を実施する人は、2分および4分の時点で患者に「2分終了しました」、「4分終了しました」と告げる。
【0069】
試験中にその他の説明も励ましも与えない。患者とのアイコンタクトは試験中は避けるべきである。歩行後に、試験を実施する人はボーグスケールを使用して呼吸困難の評価を得る。その人は以下の問答を使用する。
【0070】
ボーグ呼吸困難スコア
「私は以下のスケールを使用して、歩行試験中にあなたに起こった最大の息切れを確認したいと思います(ボーグスケールを示す)。もしも全く息切れが起こらなかった場合、あなたは0ポイントとなります。息切れがそれほどではなかった場合、あなたは0.5〜2を選んで下さい。幾分強い息切れがあった場合、あなたは3を選んで下さい。呼吸が非常に困難であった場合、あなたはそれがどの程度困難であったかに応じて4〜9を選択して下さい。10はあなたがこれまでの人生で経験した中で最大の息切れを示します。もしあなたがこれまでの人生で経験したよりも重度の息切れを感じた場合は、あなたが感じた息切れの程度をしめす10を超える数字を選択して下さい。もし1つの数字があなたの息切れの程度を正確に示さない場合、その間の分数を選択することができます。例えば、4〜5の間の息切れが起こった場合、あなたは4+1/2を選択することができます。」
【0071】
実施例5
この実施例は、肺疾患に関連するバイオマーカーにおけるトレプロスチニルの効果を示す。さらに、トレプロスチニルによる治療が、上記の6分間歩行試験の結果に正の結果を与えることが示される。
【0072】
PAHの44人の患者に研究薬(リモジュリンまたはプラセボ)を投与した。30人の患者にリモジュリンを投与し、14人にプラセボを投与した。12週試験を行った。リモジュリンの平均投与量は、第12週で72.5ng/kg/分(80.0ng/kg/分プラセボ−当量と比較して)であった。リモジュリンはプラセボと比較して93.0メートルの中央値(ノンパラメトリック共分散分析(ANCOVA)による7.0〜187.0(p=0.0077)の95%CI、ホッジス−レーマン推定)で6分間歩行に改善をもたらした。リモジュリンはまた、6MW/ボーグスコアインデックス(p=0.0023)の組み合わせ評価、ボーグ呼吸困難スコア(プラセボと比較して中央値2.0の改善、p=0.23)、およびその他の確証的有効性エンドポイントを有意に改善した。
【0073】
これらの結果は、肺高血圧症の患者についてリモジュリンは、IPFにおいて重要な炎症のプロセスにプラスの効果を有することを示している。このことは、リモジュリンが、例えば、肺機能および運動能力の減少などのIPFの症状の両方を治療できること、および肺高血圧症およびIPFの両方において肺疾患プロセスを改善できることを示唆している。
【0074】
喘息の状況においてメカニズムが異なる場合があるが、肺病変におけるトレプロスチニルの有益な効果は喘息に関連するバイオマーカーを変化させるであろう。
【0075】
PAHを患うベースライン患者は、MMP−9、Ang−2、VEG−F、およびPDGF(それぞれ、マトリックスメタロプロテイナーゼ9、アンジオポエチン−2、血管内皮由来増殖因子、および血小板由来増殖因子)のレベルが通常より高いと考えられていた。12週間のリモジュリン処置は、血中のAng−2およびVEG−Fを顕著に減少させた。PDGFもまた強い減少傾向であった。
【0076】
さらに、Ang−2の減少の程度と6分間歩行試験の改善の程度の間に統計学的に有意な相関があった。さらに、MMP−9自体の変化の程度は有意ではなかったが、MMP−9の減少と6分間歩行距離において観察される臨床上の改善の間には統計学的に有意な相関があった。
【0077】
実施例6
以下の研究は、突発性肺線維症および肺高血圧の患者におけるトレプロスチニルの静脈内投与の効果を示す。以下の測定は、対象における:1)6分間歩行距離(6MWD)におけるベースラインから第12週までの変化、2)安静時の血行動態パラメーター(RHC)におけるベースラインから第12週までの変化、3)ベースラインから第12週までのNew York Heart Association(NYHA)分類、について行った。この研究で行われたその他の測定は、1)第6週および第12週における、6MWD中のO飽和度の低下および飽和度低下の程度の量のベースラインからの変化;2)第6週および第12週における、強制肺活量(FVC)および拡散能力(DLCO)のベースラインからの変化;3)第6週および第12週での、ボーグスケールを使用する呼吸困難におけるベースラインからの変化;4)環状形状(cycle geometry)を使用する運動での血行動態(RHC)におけるベースラインから第12週までの変化、であり:および5)「シグナルカスケード」の分析は、IPFおよびIPF/PAHの間での、サイトカイン/ケモカイン/増殖因子、および下流シグナルカスケードの間の差異を決定するために試みられるであろう。これらのサイトカイン/ケモカイン/増殖因子、および下流シグナルカスケードプロファイルは、どのグループをより強く減少するかの予測に用いられ得る。
【0078】
当初のトレプロスチニルの薬量は、1.25ng/kg/分であり、注入速度は、患者へ週3回、1〜2ng/kg/分の薬量増加まで許容され、最大薬量の40ng/kg/分に達するか、対象に薬量を制限する悪影響(限定はされないが、低血圧、注入部位の反応、注入部位の疼痛、頭痛、下痢、あごの痛み、嘔吐または顔面紅潮などが挙げられる)が認められるまで増加させる。
【0079】
標準的な療法の一部として、以下の手法が対象に行われる:右心カテーテル法、経胸壁心エコー図、6分間歩行、全体の肺機能試験、胸部HRCTおよび一連の血液試験(BNP、Dダイマー、CRP、トロポニンI、および肝機能試験)。
【0080】
最初の右心カテーテル法の時に、サイトカイン/ケモカイン/増殖因子および下流シグナルカスケードプロファイル分析のために、コルディスポート(cordis port)から血液を回収する。また、BNP、C反応性タンパク質、Dダイマー、トロポニンIおよび肝機能試験について標準的な療法の血液試験をためのカテーテル法試験の日に行う。調査用の血液試験には、上部が濃緑色、紫、赤および黄色などの4本の試験管の各々に4cc採血することが含まれる。血液試験(標準的療法および調査用血液)はこの研究に登録されているすべての患者について、スケジュールに基づいて繰り返される。
【0081】
ボーグ呼吸困難スコアは最初の6MWにおいて行われ、その後スケジュール(以下に示す)に基づいて続けて6MWが行われる。NYHA機能分類は研究の当初およびその後スケジュールのとおりに決定される。
【表1】

【0082】
トレプロスチニルの投与を受ける対象は、突発性肺線維症および肺高血圧を患う患者におけるトレプロスチニル処置の正の効果を示す研究のクライテリアにおいて改善を示すこととなる。
【0083】
文献
Belvisi MG,Saunders M,Yacoub M,およびMitchell JA.、「Expression of cyclooxygenase−2 in human airway smooth muscle is associated with profound reductions in cell growth.」、Br J Pharmacol,1998年、125巻:1102〜1108頁。
【0084】
Gavett SH,Madison SL,Chulada PC,ら、「Allergic lung responses are increased in prostaglandin H synthase−deficient mice.」、J Clin Invest,1999年;104巻:721〜732頁。
【0085】
Idzko M,Hammad H,van Nimwegen M,ら、「Inhaled iloprost suppresses the cardinal features of asthma via inhibition of airway dendritic cell function.」、J Clin Invest,2007年、117巻:464〜472頁。
【0086】
Jaffar Z,Wan K−S,およびRoberts K.、「A key role for prostaglandin I2 in limiting lung mucosal Th2, but not Th1, responses to inhaled allergen.」、J Immunol,2002年;169巻:5997〜6004頁。
【0087】
Nagao K,Tanaka H,Komai M,ら、「Role of prostaglandin I2 in airway remodeling induced by repeated allergen challenge in mice.」、Am J Respir Cell Mol Biol,2003年;29巻:314〜320頁。
【0088】
Takahashi Y,Tokuoka S,Masuda T,ら、「Al. Augmentation of allergic inflammation in prostanoid IP receptor deficient mice.」、Br J Pharmacol,2002年;137巻:315〜322頁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺線維症に関連する状態の治療方法または予防方法であって、当該処置を必要とする対象に有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩を投与することを含む前記方法。
【請求項2】
前記誘導体が、トレプロスチニルの酸誘導体、トレプロスチニルのプロドラッグ、トレプロスチニルの持続放出型、トレプロスチニルの吸入型、トレプロスチニルの経口型、トレプロスチニルの多形体、またはトレプロスチニルの異性体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記状態が突発性肺線維症である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記肺線維症が、職業上または環境的暴露によって起こる肺線維症;放射線によって起こる肺線維症;結合組織疾患またはコラーゲン疾患により起こる肺線維症;遺伝的/家族的疾患により起こる肺線維症;薬物副作用により起こる肺線維症;突発性肺線維症およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
肺線維症に関連する疼痛またはその他の症状を抑制し、取り除き、または予防する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
トレプロスチニルの医薬として許容な塩またはその誘導体、または医薬として許容なその塩が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
対象が哺乳類である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記投与が静脈内投与で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記投与が吸入により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記投与が、錠剤およびカプセルからなる群より選択される経口投与可能な剤形で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
有効量が、少なくとも1.0ng/kg(体重)/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
哺乳類がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
対象における肺線維症に関連する状態を治療または予防するためのキットであって、(i)有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩、(ii)1以上の医薬として許容な担体および/または添加剤、および(iii)間質性肺疾患の治療または予防における使用説明書、を含む前記キット。
【請求項14】
肺線維症が、職業上または環境的暴露によって起こる肺線維症;放射線によって起こる肺線維症;結合組織疾患またはコラーゲン疾患により起こる肺線維症;遺伝的/家族的疾患により起こる肺線維症;薬物副作用により起こる肺線維症;突発性肺線維症およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
構成(i)がトレプロスチニルの医薬として許容な塩である、請求項12に記載のキット。
【請求項16】
対象がヒトである、請求項12に記載のキット。
【請求項17】
構成(i)が静脈内投与に適した剤形である、請求項12に記載のキット。
【請求項18】
構成(i)が吸入に適した剤形である、請求項12に記載のキット。
【請求項19】
構成(i)が経口投与に適した剤形である、請求項12に記載のキット。
【請求項20】
肺疾患の処置方法であって、それを必要とする患者に薬剤を投与することを含み、ここで薬剤が肺疾患に関連する少なくとも1つのバイオマーカーの濃度を正常化させる、前記方法。
【請求項21】
薬剤がトレプロスチニルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
肺疾患がIPFである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
バイオマーカーがMMP−9、Arg−2、VEG−FおよびPDGFからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
喘息または喘息に関連する状態の治療方法または予防方法であって、当該処置を必要とする対象に有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩を投与することを含む前記方法。
【請求項25】
前記誘導体が、トレプロスチニルの酸誘導体、トレプロスチニルのプロドラッグ、トレプロスチニルの持続放出型、トレプロスチニルの吸入型、トレプロスチニルの経口型、トレプロスチニルの多形体、またはトレプロスチニルの異性体である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
喘息に関連する疼痛またはその他の症状を抑制し、取り除き、または予防する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
トレプロスチニルの医薬として許容な塩またはその誘導体、または医薬として許容なその塩が投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
対象が哺乳類である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記投与が静脈内投与で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記投与が吸入により行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記投与が、錠剤およびカプセルからなる群より選択される経口投与可能な剤形で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
有効量が、少なくとも1.0ng/kg(体重)/分である、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
有効量が、1日当たりに吸入するトレプロスチニルの5〜500μgである、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
哺乳類がヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
対象における喘息または喘息に関連する状態を治療または予防するためのキットであって、(i)有効量のトレプロスチニルまたはその誘導体、または医薬として許容なその塩、(ii)1以上の医薬として許容な担体および/または添加剤、および(iii)喘息の治療または予防における使用説明書、を含む前記キット。
【請求項36】
構成(i)がトレプロスチニルの医薬として許容な塩である、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
対象がヒトである、請求項35に記載のキット。
【請求項38】
構成(i)が静脈内投与に適した剤形である、請求項35に記載のキット。
【請求項39】
構成(i)が吸入に適した剤形である、請求項35に記載のキット。
【請求項40】
構成(i)が経口投与に適した剤形である、請求項35に記載のキット。

【公表番号】特表2010−518122(P2010−518122A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549268(P2009−549268)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/053467
【国際公開番号】WO2008/098196
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(502278769)ユナイテッド セラピューティクス コーポレーション (10)
【Fターム(参考)】