説明

間隔調整装置

【課題】例えばブレードなどの、間隔を調整すべき部材間の隙間を容易かつ確実に、意図する寸法に調整することが可能な間隔調整装置を提供する。
【解決手段】基準面Fからの高さが異なる複数の領域1(1a,1b,1c)を有する第1調整リング11と、第1調整リングの複数の領域のうち、所定の領域と当接する当接凸部2を備え、当接凸部2の突出高さH0が、第1調整リングの、複数の領域のうち、2以上の領域に当接させることができる寸法の第2調整リング12とを備えた構成とする。
また、第2調整リングの当接凸部が、周方向に所定の間隔をおいて複数配設され、かつ、第1調整リングの高さが異なる複数の領域からなる領域群1G(1G1,1G2,1G3)が、周方向に複数配設された構成とする。
第2調整リングの当接凸部、および、第1調整リングの高さが異なる複数の領域からなる領域群が、それぞれ周方向の、回転対称となる位置に配設された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、間隔調整装置に関し、詳しくは、ブレードなどを所定の間隔をおいて保持する際などに用いられる間隔調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、基台に被取付部材を取り付ける際に、当該基台と被取付部材との間に形成されるクリアランスのばらつきを吸収する目的で、スペーサや座金などが用いられている。
【0003】
また、基台と被取付部材との間に形成される隙間を一定に保つための間隔調整治具として、図9に示すように、基台としてのキャビネットのボス部50に固定される第1の間隔調整部材51と、被取付部材としてのブラウン管の取付けフランジ53に取付けられ、かつ第1の間隔調整部材51に対し回転可能に配置される第2の間隔調整部材52とを備えた間隔調整治具60が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
そして、この間隔調整治具においては、図10および図11に示すように、第1の間隔調整部材51の、段差を有する傾斜面51a,51bと、第2の間隔調整部材52の、段差を有する傾斜面52a,52bを当接させるとともに、傾斜面51a,51bと、傾斜面52a,52bの位置関係を調節することにより、被取付部材としてのブラウン管の取付けフランジ53の高さ(すなわち、基台50とブラウン管の取付けフランジ53の間隔)を調整することができるように構成されている。
【0005】
また、図12に示すように、階段状の面71aを有する第1のスペーサ片71と、同じく階段状の面72aを有する第2のスペーサ片72を用い、例えば、図13に示すように、上側の第2のスペーサ片72を矢印Aの方向に移動させて、第1および第2のスペーサ片71,72の位置関係を変化させることにより高さを調整するようにしたスペーサ80が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
ところで、上記特許文献1の間隔調整治具60においては、第1の間隔調整部材51の傾斜面51a,51b、および第2の間隔調整部材52の傾斜面52a,52bに形成された複数の段差のそれぞれの寸法が、各段差間でほぼ同じとなるように構成されており、係合し合う第1の間隔調整部材51と、第2の間隔調整部材52の寸法精度が十分に高ければ、対応する間隔調整部材51,52の各部分は完全に噛み合うことになり、精度の高い間隔調整を行うことが可能になる。
【0007】
しかしながら、実際は加工精度のばらつきなどにより、全ての対応部分が完全に噛み合うようにすることは極めて困難である。そのため、一部の段差寸法の大きい箇所により実際の間隔が決定されることになり、精度よく間隔を所望の寸法に調整することができなくなるという問題点がある。
【0008】
また、上記特許文献2のスペーサ80においても、第1および第2のスペーサ片71,72の階段状の面71a,72aの各段差部は、その寸法が、各段差間でほぼ同じとなるように構成されているものと考えられるが、加工精度のばらつきなどにより、各段差部の寸法をすべて同一に形成することは困難であり、上述の特許文献1の間隔調整治具60の場合と同様の問題点を包含しているものと考えられる。
【0009】
また、上述の特許文献1および特許文献2の技術を、例えば、セラミック電子部品の製造工程でセラミック成形体を切断して個々のセラミック電子部品素子に分割する場合に用いられる複数のブレードを所定の間隔をおいて保持するための装置として適用したとすると、段差部の一部の、互いに噛み合った箇所だけで、切断の際に発生する抵抗力を受けることになるため、応力を全体に均一に分散させることができず、安定性が不十分になるとともに、その部分の磨耗が激しくなるというような問題が生じることになる。
【特許文献1】特開2003−333460号公報
【特許文献2】実開昭60−045631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は上記課題を解決するものであり、例えばブレードなどの、間隔を調整すべき部材間の隙間を容易かつ確実に、意図する寸法に調整することが可能な間隔調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願発明(請求項1)の間隔調整装置は、
基準面からの高さが異なる複数の領域が周方向に配設された第1調整リングと、
前記第1調整リングの前記高さが異なる複数の領域のうち、所定の領域と当接する当接凸部を備え、前記当接凸部の突出高さが、前記第1調整リングの、前記複数の領域のうち、2以上の領域に当接させることができるだけの寸法を有する第2調整リングとを備え、
前記第2調整リングの前記当接凸部を、前記第1調整リングの前記複数の領域における所定の領域に当接させることにより、前記第1調整リングと前記第2調整リングを当接させた状態での合計厚みが定まり、かつ、
前記第2調整リングの前記当接凸部と、前記当接凸部が当接する前記第1調整リングの前記領域の関係を異ならせることにより、前記第1調整リングと前記第2調整リングを当接させた状態での合計厚みを変化させることができるように構成されており、
前記第1調整リングと前記第2調整リングを組み合わせることにより、厚み寸法の変更が可能なスペーサとして用いられるように構成されていること
を特徴としている。
【0012】
ここで、第1調整リングの複数の領域とは、第1調整リングを第2調整リングに組み合わせたときに当接するそれぞれの当接面のことを言う。第1調整リングと第2調整リングとの組み合わせ角度によって当接する箇所は異なるため、当接面は複数存在することになる。また、領域の関係を異ならせるとは、例えば第1調整リングと第2調整リングとの組み合わせを変えることにより、当接する面を異ならせることを言う。
【0013】
また、請求項2の間隔調整装置は、請求項1の発明の構成において、前記第2調整リングの前記当接凸部の突出高さ寸法が、前記第1調整リングの、前記複数の領域間における前記高さの差の最大値よりも大きい構成となっている。そして、前記当接凸部を、その突出高さ寸法に関して、前記複数の領域を構成する他の領域に接触することなく、第1調整リングの複数の領域のいずれにも当接させ得ることを特徴としている。
【0014】
また、請求項3の間隔調整装置は、請求項1または2記載の発明の構成において、前記第2調整リングの前記当接凸部を平面的に見た場合の中心角が、前記第1調整リングの複数の領域を構成するそれぞれの領域の中心角よりも小さい構成となっている。そして、前記当接凸部を、その周方向の寸法に関して、前記複数の領域を構成する他の領域に接触することなく、第1調整リングの複数の領域のいずれにも当接させ得ることを特徴としている。
【0015】
また、請求項4の間隔調整装置は、請求項1〜3のいずれかの発明の構成において、前記第2調整リングの前記当接凸部が、周方向に所定の間隔をおいて複数配設され、かつ、
前記第1調整リングの高さが異なる複数の領域からなる領域群が、周方向に複数配設されていること
を特徴としている。
【0016】
また、請求項5の間隔調整装置は、請求項4の発明の構成において、前記第2調整リングの前記当接凸部、および、前記第1調整リングの前記領域群が、それぞれ、周方向に所定の間隔をおいて、2〜6個配設されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項6の間隔調整装置は、請求項4または5の発明の構成において、前記第2調整リングの前記当接凸部、および、前記第1調整リングの前記領域群が、それぞれ周方向の、回転対称となる位置に配設されていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項7の間隔調整装置は、請求項4〜6のいずれかの発明の構成において、前記第1調整リングの、複数の領域群のそれぞれを構成する、前記高さが異なる複数の領域が、周方向に、高さの順に並ぶように配設されていることを特徴としている。
【0019】
また、請求項8の間隔調整装置は、請求項1〜7のいずれかの発明の構成において、前記第1調整リングおよび前記第2調整リングの少なくとも一方が、他の部材との係合部であるフランジとしても機能するように構成されていることを特徴としている。
【0020】
また、請求項9の間隔調整装置は、請求項1〜8のいずれかの発明の構成において、複数枚のブレードを所定の間隔をおいて保持するために用いられるものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本願発明(請求項1)の間隔調整装置は、基準面からの高さが異なる複数の領域が周方向に配設された第1調整リングと、前記複数の領域のうち、所定の領域と当接する当接凸部を備え、当接凸部の突出高さが、第1調整リングの、複数の領域のうち、2以上の領域に当接させることができるだけの寸法を有する第2調整リングとを備えているので、第2調整リングの当接凸部を、第1調整リングの複数の領域における所定の領域に当接させることにより、第1調整リングと第2調整リングを当接させた状態における合計厚みが定まり、かつ、第2調整リングの当接凸部と、当接凸部が当接する第1調整リングの領域の関係を異ならせることにより、第1調整リングと第2調整リングを当接させた状態での合計厚みを変化させることができる。
【0022】
すなわち、本願発明の構成によれば、第2調整リングの当接凸部が、第1調整リングの複数の領域を構成する所定の領域が当接しているときには、第1調整リングおよび第2調整リングの、他の領域同士が接触することがないため、第2調整リングの当接凸部を、第1調整リングの所定の領域にのみ当接させることが可能になる。
【0023】
したがって、第1調整リングと第2調整リングの位置関係を変えて両者を当接させるだけで、その合計厚みを任意の厚みとすることが可能になり、本願発明の間隔調整装置を用いることにより、例えばブレードなどの、間隔を調整すべき部材間の隙間を容易かつ確実に、意図する寸法に調整することが可能になる。
なお、本願発明の間隔調整装置においては、第2調整リングの当接凸部が、第1調整リングに配設された複数の領域のうちの2以上に当接するように構成されていればよく、第2調整リングの当接凸部を、第1調整リングに配設された複数の領域のすべてに当接させることができるように構成されている必要はない。すなわち、本願発明は、第2調整リングの当接凸部が、第1調整リングに配設された複数の領域の一部には当接しない場合をも含むものである。
【0024】
また、請求項2の間隔調整装置のように、請求項1の発明の構成において、第2調整リングの当接凸部の突出高さ寸法が、第1調整リングの、複数の領域間における高さの差の最大値よりも大きくなるようにした場合、当接凸部を、その突出高さ寸法に関して、複数の領域を構成する他の領域に接触することなく、第1調整リングの複数の領域のいずれにも当接させることが可能になり、本願発明をより実効あらしめることが可能になる。
【0025】
また、請求項3の間隔調整装置のように、請求項1または2記載の発明の構成において、第2調整リングの当接凸部を平面的に見た場合の中心角を、第1調整リングの複数の領域を構成するそれぞれの領域の中心角よりも小さくするようにした場合、当接凸部を、その周方向の寸法に関して、複数の領域を構成する他の領域に接触することなく、第1調整リングの複数の領域のいずれにも当接させることが可能になり、本願発明をより実効あらしめることが可能になる。
【0026】
また、請求項4の間隔調整装置のように、請求項1〜3のいずれかの発明の構成において、第2調整リングの当接凸部を、周方向に所定の間隔をおいて複数配設するとともに、第1調整リングの高さが異なる複数の領域からなる領域群を、周方向に複数配設することにより、周方向の複数箇所で、第2調整リングの当接凸部を、第1調整リングの高さが異なる複数の領域のうちの所定の領域に当接させることが可能になり、本願発明をより実効あらしめることが可能になる。
【0027】
また、請求項5の間隔調整装置のように、請求項4の発明の構成において、第2調整リングの当接凸部、および、第1調整リングの複数の領域群を、それぞれ、周方向に所定の間隔をおいて、2〜6個の範囲で配設することにより、第2調整リングの当接凸部を、2〜6箇所で、第1調整リングの所定の領域に当接させることが可能になり、その当接状態をより安定させることが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることが可能になる。
なお、第2調整リングの当接凸部、および、第1調整リングの複数の領域群を2〜6個としたのは、2個未満の場合(一個)の場合、当接状態が不安定になりやすいこと、6個を超えると、各部の寸法が小さくなり、第1調整リングと第2調整リングとを所定の位置関係となるように位置合せすることが困難になって、実用性が損なわれることによる。
【0028】
また、請求項6の間隔調整装置のように、請求項4または5の発明の構成において、第2調整リングの当接凸部、および、第1調整リングの領域群を、それぞれ周方向の、回転対称となる位置に配設するようにした場合、当接状態をより安定させることが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることが可能になる。
【0029】
また、請求項7の間隔調整装置のように、請求項4〜6のいずれかの発明の構成において、第1調整リングの、複数の領域群のそれぞれを構成する、高さが異なる複数の領域を、周方向に、高さの順に並ぶように配設した場合、第1調整リングまたは第2調整リングを所定の方向に順に回転させるだけで、順次、第1調整リングと第2調整リングを当接させた状態での合計厚みを段階的に厚くするか、あるいは薄くすることが可能になり、操作性を向上させることが可能になる。
【0030】
また、請求項8の間隔調整装置のように、請求項1〜7のいずれかの発明の構成において、第1調整リングおよび第2調整リングの少なくとも一方が、他の部材との係合部であるフランジとしても機能するように構成した場合、例えば、本願発明の間隔調整装置をダイシング装置のブレード(砥石)の間隔を調整するために用いるような場合に、フランジとしての機能を利用して、間隔を調整すべき対象の部材であるブレードを、あらかじめ第1調整リングおよび/または第2調整リングにセッティングしておくことにより、短時間でダイシング装置に組み付けることが可能になり、作業効率を向上させることが可能になる。
【0031】
また、間隔調整を行うにあたって、フランジと各調整リングを同時に軸方向に引き抜くことも可能である。その場合、例えば、ブレードなどの間隔が狭い場合であっても、フランジを介して調整リングを引き抜いて回転させることにより、簡単に間隔調整を行うことが可能になり、本願発明をさらに実効あらしめることができる。すなわち、調整すべき間隔が狭い場合、調整リング間やその近傍に指が入らず調整しにくいが、そのような場合にも間隔調整作業が容易になる。
【0032】
また、請求項9のように、請求項1〜8のいずれかの発明にかかる間隔調整装置を、複数枚のブレードを所定の間隔をおいて保持する際の間隔調整装置として用いることにより、例えば未焼成のセラミック成形体や、セラミック焼結体を切断して個々の素子に分割する場合などにおいて、所望の寸法を備えた素子を得ることができるような高精度の切断を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本願発明の実施例を示して、本願発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0034】
図1は本願発明の一実施例(実施例1)にかかる間隔調整装置の構成を示す図、図2,3,4は、間隔調整装置を構成する第1調整リングおよび第2調整リングの当接状態と合計厚みの関係を示す図である。
【0035】
この実施例1の間隔調整装置10は、図1に示すように、基準面(例えば図1における裏面F)からの高さが異なる複数の領域(この実施例1では裏面Fからの高さが異なる3つの領域1(1a,1b,1c))が周方向に配設された第1調整リング11と、第1調整リング11の高さが異なる3つの領域1a,1b,1cのうち、所定の領域と当接する、突出高さH0の当接凸部2を備え、当接凸部2の突出高さH0が、第1調整リング11の、前記複数の領域のうち、2以上の領域に当接させることができるだけの寸法を有する第2調整リング12とを備えている。
【0036】
なお、領域1cと領域1bとの段差(高さの差)をH1とし、領域1bと領域1aとの段差をH2とし、領域1aと領域1cとの段差(すなわち、複数の領域1(1a,1b,1c)間における高さの差の最大値Hmax)をH3とすると、段差H3(Hmax)は、段差H1と段差H2を加えた値となるように構成されている。
【0037】
そして、第2調整リング12の当接凸部2を、第1調整リング11の複数の領域1における所定の領域1a,1b,1cに当接させることにより、図2〜図4に示すように、第1調整リング11と第2調整リング12を当接させた状態での合計厚みTが定まるとともに、第2調整リング12の当接凸部2と、当接凸部2が当接する第1調整リング11の領域1a,1b,1cの関係を異ならせることにより、第1調整リング11と第2調整リング12を当接させた状態での合計厚みTを、複数の領域1(1a,1b,1c)の数に対応するようにT1からT3まで段階的に変化させることができるように構成されている。
【0038】
なお、この実施例1では第1調整リング11と第2調整リング12を当接させた状態での合計厚みTを3段階に変化させることができるように構成されている。なお、合計厚みTの変化量は各段階で同じとなるように構成することも可能であり、また、各段階で異なるように構成することも可能である。
【0039】
また、この実施例1の間隔調整装置10においては、第2調整リング12の当接凸部2の突出高さ寸法H0が、第1調整リング11の、複数の領域1(1a,1b,1c)間における高さの差の最大値Hmax(この実施例1では領域1aと領域1cとの段差H3)よりも大きくなるように構成されており、第1および/または第2の調整リング11,12を所定の方向に回転させて、当接凸部2を、複数の領域1(1a,1b,1c)のうちの所望の領域に対向させることにより、当接凸部2を、その突出高さ寸法に関して、複数の領域1(1a,1b,1c)を構成する他の領域に接触させることなく、第1調整リング11の複数の領域1(1a,1b,1c)のうちの所望の領域に当接させることができるように構成されている。
【0040】
さらに、第2調整リング12の当接凸部2を平面的に見た場合の中心角θ0は、第1調整リング11の複数の領域1を構成するそれぞれの領域1a,1b,1cの中心角θ1,θ2,θ3よりもわずかに小さく、当接凸部2は、当接凸部2の周方向の寸法L0(図1)と、複数の領域1(1a,1b,1c)の周方向の寸法L1,L2,L3(図1)との関連において、複数の領域1a,1b,1cを構成する他の領域に接触することなく、第1調整リング11の複数の領域1a,1b,1cのうちの所望の領域に当接させることができるように構成されている。
【0041】
また、この実施例1の間隔調整装置10においては、第2調整リング12の当接凸部2が、周方向に所定の間隔をおいて複数配設され、第1調整リング1の高さが異なる複数の領域1(1a,1b,1c)からなる3つの領域群1G(1G1,1G2,1G3)が、周方向に配設されている。
また、第2調整リング12の当接凸部2、および、第1調整リング11の3個の領域群1Gは、それぞれ周方向の、回転対称となる位置に配設されている。
【0042】
そして、各当接凸部2の面積は同じであり、かつ、各領域群1G(1G1,1G2,1G3)を構成する各領域1a,1b,1cの面積が、各領域群1G1,1G2,1G3において同じになるように構成されている。
【0043】
さらに、第1調整リング11の、複数の領域群1Gのそれぞれを構成する、高さが異なる複数の領域1(1a,1b,1c)は、周方向に、高さの順に並ぶように配設されている。
【0044】
上述のように構成されたこの実施例1の間隔調整装置10によれば、第1調整リング11の複数の領域1(1a,1b,1c)のうちの所定の領域に第2調整リング12の当接凸部2を当接させることにより、第1調整リング11と第2調整リング12を当接させた状態における合計厚みTを所定の厚みとすることができる。また、第1および/または第2の調整リング11,12を所定の方向に回転させて、第2調整リング12の当接凸部2と、当接凸部2が当接する第1調整リング11の領域1(1a,1b,1c)の関係を異ならせることにより、第1調整リング11と第2調整リング12を当接させた状態での合計厚みTを変化させることができる。
【0045】
なお、この実施例1では第1調整リング11と第2調整リング12を当接させた状態での合計厚みTをT1からT3まで3段階に変化させるようにしているが、合計厚みTの変化の段階数や、1つの段階での合計厚みTの変化量などに特別の制約はない。また、合計厚みTの変化量は各段階で同じとしてもよく、また、各段階で異なるようにしてもよい。
【0046】
以下に、図1〜図4を参照しつつ、本願発明の間隔調整装置10を用いて間隔を調整する方法を具体的に説明する。
【0047】
まず、図2に示すように、第2調整リング12の3つの当接凸部2を、第1調整リング11の各領域群1G(1G1,1G2,1G3)の、基準面Fからの高さが最も低い領域1aに当接させることにより、第1調整リング11と第2調整リング12を当接させた状態での合計厚みTが最も小さい値T1となる。
【0048】
また、図3に示すように、第2調整リング12の3つの当接凸部2を、第1調整リング11の各領域群1G(1G1,1G2,1G3)の、基準面Fからの高さが2番目に低い領域1bに当接させることにより、第1調整リング11と第2調整リング12を当接させた状態での合計厚みTが、上述のT1よりも大きい値T2となる。
【0049】
また、図4に示すように、第2調整リング12の3つの当接凸部2を、第1調整リング11の各領域群1G(1G1,1G2,1G3)の、基準面Fからの高さが最も高い領域1cに当接させることにより、第1調整リング11と第2調整リング12を当接させた状態での合計厚みTが最も大きい値T3となる。
【0050】
なお、この実施例1の間隔調整装置10においては、第2調整リング12の3つの当接凸部2、および、第1調整リング1の高さが異なる3つの領域1(1a,1b,1c)からなる領域群1G(1G1,1G2,1G3)を、それぞれ周方向の、回転対称となる位置に配設しており、かつ、各当接凸部2の面積を同じとし、かつ、各領域群1G(1G1,1G2,1G3)を構成する各領域1a,1b,1cの面積を、各領域群1G(1G1,1G2,1G3)において同じにしているため、当接状態をより安定させることが可能になり、精度の高い間隔調整を行うことが可能になる。
【0051】
また、第1調整リング11の、複数の領域群1G(1G1,1G2,1G3)のそれぞれを構成する、高さが異なる複数の領域1(1a,1b,1c)を、周方向に、高さの順に並ぶように配設しているので、第1調整リング11または第2調整リング12を所定の方向に順に回転させるだけで、順次、第1調整リング11と第2調整リング12の合計厚みを段階的に厚くし、あるいは薄くすることが可能になり、高い操作性を実現することができる。
【0052】
なお、上記実施例1では、第2調整リング12の当接凸部2を平面的に見た場合の中心角θ0が、第1調整リング11の複数の領域1を構成するそれぞれの領域1a,1b,1cの中心角θ1,θ2,θ3よりもわずかに小さくなるように構成したが、図5および図6に示すように、第2調整リング12の当接凸部2を平面的に見た場合の中心角θ0を、さらに小さく形成し、第1調整リング11(図1)に代えて、第1調整リング11a(図5および図6では各領域1が4つの領域1a,1b,1c,1dを備えている)に用いた場合にも使用することができるように構成することも可能である。このように構成した場合、4段の厚み変更が可能となる。
【0053】
また、図1における第2調整リング12の当接凸部2の中心角θ0を、図1における第1調整リング11の領域1(1a,1b,1c)の中心角θ1〜θ3に比べて小さくした場合、第1調整リング11の領域1(1a,1b,1c)と第2調整リング12の当接凸部2の当接する面積はいくらか減少することになるが、第1調整リング11の領域1(1a,1b,1c)と、第2調整リング12の当接凸部2の位置関係を変更する際の操作が容易になるというメリットがある。
【実施例2】
【0054】
図7は、上記実施例1にかかる間隔調整装置10を、例えば、セラミック電子部品の製造工程でマザーセラミック積層体を切断して個々のセラミック電子部品素子に分割する場合などに用いられるダイシング装置において、複数のブレード(砥石)を所定の間隔をおいて保持するための間隔調整装置として適用した状態を模式的に示す図である。
【0055】
なお、この実施例2では、第1および第2のブレード(砥石)21,22として、外径52mm、厚み0.01mmのものを用いた。
また、第1および第2のブレード(砥石)21,22として、砥粒がダイヤモンド(平均粒径:6μm)で、このダイヤモンドからなる砥粒をニッケルをボンドとして円盤状のブレードに成形したものを用いた。
【0056】
また、この実施例2では、第1のブレード21と、第2のブレード22の間隔を2mmとした。
【0057】
また、この実施例2では、間隔調整装置10を構成する第1調整リング11および第2調整リング12として、ステンレス鋼製のものを用いた。
さらに、回転軸15としてもステンレス鋼製のものを用いた。
【0058】
この実施例2では、回転軸15に第1のブレード21がセットされ、第1調整リング11と第2調整リング12を当接させた状態の合計厚みTが所定の厚みとなるように調整された状態で、間隔調整装置10が回転軸15にセットされている。
【0059】
そして、間隔調整装置10により所定の間隔が保持されるような態様で、第2のブレード22がセットされ、ナット23により、第1のブレード21、間隔調整装置10および第2のブレード22の全体が回転軸15に固定されている。
【0060】
この実施例2のような態様で、間隔調整装置10を用いることにより、第1のブレード21と第2のブレード22とを、所定の間隔を保った状態で回転軸15に確実に固定することができる。
【0061】
従って、この実施例2のように、本願発明の間隔調整装置10を用い、所定の間隔をおいて保持されたブレード21,22を用いて、マザーセラミック積層体を切断して個々のセラミック電子部品素子に分割することにより、マザーセラミック積層体を、所望の寸法に精度よく切断、分割して、所望の寸法を備えたセラミック電子部品を効率よく製造することが可能になる。
【実施例3】
【0062】
図8は、上記実施例2の変形例である実施例3にかかるものであり、実施例2と同様に、本願発明の間隔調整装置を、例えば、セラミック電子部品の製造工程でマザーセラミック積層体を切断して個々のセラミック電子部品素子に分割する場合などに用いられるダイシング装置において、複数のブレード(砥石)を所定の間隔をおいて保持するための間隔調整装置として適用した状態を模式的に示す図である。
【0063】
この実施例3では、第1のフランジ31と第2のフランジ32に挟まれるようにして第1のブレード21が回転軸15にセットされている。
そして、第2のフランジ32を押圧するように、第1調整リング11が回転軸15の第1のネジ部41に螺合されている。
【0064】
すなわち、この実施例3においては、間隔調整装置10を構成する第1調整リング11が、回転軸15の第1のネジ部41に螺合可能に構成されており、第2のフランジ32を介して第1のブレード21を回転軸15に固定する機能を果たすように構成されている。したがって、この点において、第1調整リング11は他の部材との係合部材としての機能(フランジとしての機能)も果たすように構成されている。
【0065】
また、間隔調整装置10を構成する第2調整リング12も、軸方向への突出部分12aの外周にネジ部42が配設されており、第1のナット24を取り付けることができるように構成されている。したがって、この点において、第2調整リング12も他の部材との係合部材としての機能(フランジとしての機能)を果たすように構成されている。
【0066】
そして、第2調整リング12、第2のブレード22、第3のフランジ33、および第1のナット24が回転軸15にセットされ、さらにこれらが第2のナット25を第2のネジ部43に螺合することにより回転軸15に一体に固定されている。
【0067】
なお、第2調整リング12、第2のブレード22、第3のフランジ33、および第1のナット24を回転軸15に固定するにあたっては、例えば、第2調整リング12に、第2のブレード22を予めセットしておき、第3のフランジ33を介して第1のナット24により、第2のブレード22を第2調整リング12に取り付けた状態で、全体(第2調整リング12、第2のブレード22、第3のフランジ33、第1のナット24)を回転軸15にセットし、その後、第2のナット25を、第2調整リング12の突出部分12aの外周に形成されたネジ部42に螺合させることにより、第2調整リング12、第2のブレード22、第3のフランジ33、および第1のナット24を一括して回転軸15に固定することができる。
【0068】
この実施例3のように、間隔調整装置10を構成する第1調整リング11および第2調整リング12にフランジとしての機能を持たせることにより、第1および第2のブレード21,22、第1、第2および第3のフランジ31,32,33、間隔調整装置10を構成する第1調整リング11および第2調整リング12などを効率よく短時間でダイシング装置などに組み付けることが可能になり、作業効率を向上させることが可能になる。
【0069】
なお、上記実施例1では、第1調整リング11の領域群1G(1G1,1G2,1G3)の数および各領域群1G(1G1,1G2,1G3)を構成する領域1(1a,1b,1c)の数をそれぞれ3個とし、第2調整リング12の当接凸部2の数を3個とした場合について説明したが、第1調整リングの領域群および各領域群を構成する領域の数、第2調整リングの当接凸部の数はこれに限られるものではなく、各部の寸法や具体的な構造などを考慮して、発明の効果を損なわない範囲内で、その数を任意に調整することが可能である。
【0070】
また、上記実施例1では、第2調整リング12の当接凸部2を、第1調整リング11に配設された複数の領域1(1a,1b,1c)のすべてに当接させることができるようにしているが、本願発明においては、第2調整リングの当接凸部が、第1調整リングに配設された複数の領域のうちの2以上に当接するように構成されていればよく、第2調整リングの当接凸部が、第1調整リングに配設された複数の領域の一部(例えば、3つの領域のうちの1つ)には当接しないように構成されていてもよい。
【0071】
また、上記実施例2および3では、間隔調整装置10を、ダイシング装置において複数のブレードの間隔を調整するための装置として用いた場合を例にとって説明したが、本願発明の間隔調整装置は、マルチブレードソーなどの他の装置に用いることも可能である。
【0072】
また、上記実施例では、2つのブレードの間隔を調整する場合を例にとって説明したが、本願発明の間隔調整装置は、3つ以上のブレードの間隔を調整する場合に用いることも可能である。
【0073】
本願発明はさらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、第1調整リングおよび第2調整リングの具体的な構成、当接凸部や基準面からの高さが異なる複数の領域の具体的な形状、間隔を調整すべき部材(例えばブレードなどの被調整部材)の種類などに関し、発明の範囲内において、種々の応用を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明によれば、第1調整リングと第2調整リングを、両者の位置関係を変えて当接させるだけで、その合計厚みを任意の厚みとすることが可能になり、本願発明の間隔調整装置を用いることにより、例えばブレードなどの、間隔を調整すべき部材間の間隔を容易かつ確実に、意図する寸法に調整することが可能になる。
したがって、本願発明は、例えば、セラミック電子部品の製造工程でマザーセラミック積層体を切断して個々のセラミック電子部品素子に分割する場合などに用いられるダイシング装置におけるブレードの間隔調整装置などの用途に広く用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本願発明の一実施例(実施例1)にかかる間隔調整装置の構成を示す図である。
【図2】本願発明の実施例1にかかる間隔調整装置を構成する第1調整リングおよび第2調整リングの当接状態と合計厚みの関係の一例を示す図である。
【図3】本願発明の実施例1にかかる間隔調整装置を構成する第1調整リングおよび第2調整リングの当接状態と合計厚みの関係の他の例を示す図である。
【図4】本願発明の実施例1にかかる間隔調整装置を構成する第1調整リングおよび第2調整リングの当接状態と合計厚みの関係のさらに他の例を示す図である。
【図5】本願発明の実施例1にかかる間隔調整装置の変形例を示す図である。
【図6】本願発明の実施例1にかかる間隔調整装置の変形例である図5を、角度を変えて示す図である。
【図7】本願発明の実施例1にかかる間隔調整装置をブレードの間隔を調整するための間隔調整装置として用いた実施例2のダイシング装置の要部を示す図である。
【図8】本願発明の実施例1にかかる間隔調整装置をブレードの間隔を調整するための間隔調整装置として用いた実施例3のダイシング装置の要部を示す図である。
【図9】従来の間隔調整治具の構成を示す断面図である。
【図10】従来の間隔調整治具を構成する第1の間隔調整部材の構成を示す図である。
【図11】従来の間隔調整治具を構成する第2の間隔調整部材の構成を示す図である。
【図12】従来の他の間隔調整治具(スペーサ)の構成を示す図である。
【図13】従来の他の間隔調整治具(スペーサ)の使用方法を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1(1a,1b,1c,1d) 領域
1G(1G1,1G2,1G3) 領域群
2 当接凸部
10 間隔調整装置
11 第1調整リング
11a 第1調整リング
12 第2調整リング
12a 軸方向への突出部分
15 回転軸
21 第1のブレード
22 第2のブレード
23 ナット
24 第1のナット
25 第2のナット
31 第1のフランジ
32 第2のフランジ
33 第3のフランジ
41 第1のネジ部
42 ネジ部
43 第2のネジ部
F 裏面(基準面)
0 当接凸部の突出高さ寸法
1 領域1cと領域1bとの段差(高さの差)
2 領域1bと領域1aとの段差(高さの差)
3 領域1aと領域1cとの段差(高さの差)
max 複数の領域間における高さの差の最大値
0 当接凸部の周方向の寸法
1,L2,L3 領域の周方向の寸法
T,T1,T2,T3 合計厚み
θ0 当接凸部の中心角
θ1,θ2,θ3 領域の中心角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面からの高さが異なる複数の領域が周方向に配設された第1調整リングと、
前記第1調整リングの前記高さが異なる複数の領域のうち、所定の領域と当接する当接凸部を備え、前記当接凸部の突出高さが、前記第1調整リングの、前記複数の領域のうち、2以上の領域に当接させることができるだけの寸法を有する第2調整リングとを備え、
前記第2調整リングの前記当接凸部を、前記第1調整リングの前記複数の領域における所定の領域に当接させることにより、前記第1調整リングと前記第2調整リングを当接させた状態での合計厚みが定まり、かつ、
前記第2調整リングの前記当接凸部と、前記当接凸部が当接する前記第1調整リングの前記領域の関係を異ならせることにより、前記第1調整リングと前記第2調整リングを当接させた状態での合計厚みを変化させることができるように構成されており、
前記第1調整リングと前記第2調整リングを組み合わせることにより、厚み寸法の変更が可能なスペーサとして用いられるように構成されていること
を特徴とする間隔調整装置。
【請求項2】
前記第2調整リングの前記当接凸部の突出高さ寸法が、前記第1調整リングの、前記複数の領域間における前記高さの差の最大値よりも大きく構成されていることを特徴とする請求項1記載の間隔調整装置。
【請求項3】
前記第2調整リングの前記当接凸部を平面的に見た場合の中心角が、前記第1調整リングの複数の領域を構成するそれぞれの領域の中心角よりも小さく構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の間隔調整装置。
【請求項4】
前記第2調整リングの前記当接凸部が、周方向に所定の間隔をおいて複数配設され、かつ、
前記第1調整リングの高さが異なる複数の領域からなる領域群が、周方向に複数配設されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の間隔調整装置。
【請求項5】
前記第2調整リングの前記当接凸部、および、前記第1調整リングの前記領域群が、それぞれ、周方向に所定の間隔をおいて、2〜6個配設されていることを特徴とする請求項4記載の間隔調整装置。
【請求項6】
前記第2調整リングの前記当接凸部、および、前記第1調整リングの前記領域群が、それぞれ周方向の、回転対称となる位置に配設されていることを特徴とする請求項4または5記載の間隔調整装置。
【請求項7】
前記第1調整リングの、複数の領域群のそれぞれを構成する、前記高さが異なる複数の領域が、周方向に、高さの順に並ぶように配設されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の間隔調整装置。
【請求項8】
前記第1調整リングおよび前記第2調整リングの少なくとも一方が、他の部材との係合部であるフランジとしても機能するように構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の間隔調整装置。
【請求項9】
複数枚のブレードを所定の間隔をおいて保持するために用いられるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の間隔調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−278421(P2007−278421A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106822(P2006−106822)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】