説明

関節リウマチ治療剤

SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有し、AUC0−24値が少なくとも約2.7μg・hr/mL以上になるように設計された関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であり、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩の1日当たり投与量が約20〜120mgである経口用医薬組成物を提供する。当該医薬組成物は、優れた免疫異常改善作用と慢性炎症改善作用を有し、副作用が少ない関節リウマチの治療剤あるいは予防剤として有用かつ臨床適用可能な医薬組成物となりうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む、関節リウマチ患者に対して有用な医薬組成物に関する。
【背景技術】
関節リウマチ(rheumatoid arthritis)は多発性関節炎を主徴とし、同時に多臓器を障害する原因不明の全身性炎症疾患であり、寛解と増悪を繰り返しながら慢性に進行し、無治療で放置すると関節の破壊と変形を来し、やがて運動機能障害を呈し、ときには生命をも脅かす可能性もある疾患である。しかしながら現在の医学では関節リウマチを完全に治癒させることも予防することもできないとされている。従って、現時点での治療目標は早期に診断し、早期から積極的治療を開始し、リウマチ性炎症を可及的速やかにかつ最大限に抑制して、非可逆的変化の出現を防止、ないしはその進展を阻止することにより、患者の身体的、精神的、社会的な生活の質(QOL)の向上を図ることである。
関節リウマチの治療に使用されている主な薬物は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)及び副腎皮質ステロイド薬である。NSAIDsは慢性関節関節リウマチ患者に最初に使用される薬物であり、鎮痛効果は速やかに得られるが、抗炎症作用は1〜2週間後に発現する。NSAIDsには炎症の程度を軽減させる作用はあっても、リウマチ性炎症の進行を阻止したり、関節破壊を防止する作用はない。また、NSAIDsの副作用はその薬理作用(cyclooxygenase−1阻害活性)とは切り離せないものが多く、消化管障害等はしばしば治療の妨げともなる。DMARDsは、関節リウマチの免疫異常を是正することによりリウマチ性炎症を鎮静化させて、寛解導入を目的とする薬物の総称である。DMARDsは一般に遅効性であるが、効果が発現すると長期間に亘って効果が持続する。DMARDsには鎮痛効果がなく、投与開始時は速効性のNSAIDsや副腎皮質ステロイド薬を併用する。一方、問題点として、まれに骨髄抑制、腎炎、間質性肺炎などの重篤な副作用が出現することや至適用量に個人差があることなどが知られている。さらに、従来のDMARDsは投与を持続することにより耐性を示すことが多く(エスケープ現象)、その効果は2〜3年で減弱し、中止に至る例が少なくない。副腎皮質ステロイド薬はリウマチ性炎症を迅速かつ確実に抑制し、短期間ではあるものの、慢性関節関節リウマチ患者のQOLを著しく改善するが、長期連用による効果の減弱、離脱困難(反跳現象、離脱症候群)、関節破壊の進行阻止不能、さらに感染症の誘発、副腎機能不全、消化管障害、骨粗鬆症などの重篤な副作用の出現などの弊害も多い。
一方、下記式1で表される3−[(1S)−1−(2−フルオロビフェニル−4−イル)エチル]−5−{[アミノ(モルフォリン−4−イル)メチレン]アミノ}イソキサゾール(以下、「化合物(I)」、または「SMP−114」とも称する)が優れた自己免疫疾患、炎症性疾患等の治療剤等として有用であることが知られている。すなわち、SMP−114が、代表的な関節リウマチのモデル動物であるアジュバント関節炎ラットおよびコラーゲン関節炎マウスに対する抗関節炎作用を示すことが報告されている(例えば、田頭秋三、「炎症・再生」、Vol.21、No.4、p.472(2001);F.Nishikaku、″Annals of the Rheumatic Diseases″、vol.60 supplement 1,p.159(2001);およびF.Nishikaku、″Annals of the Rheumatic Diseases″,vol.61 supplement 1,p.194(2002)参照)。
式1:

しかし、SMP−114をヒトに投与した場合の体内動態、有効投与量等に関して具体的なことは、これまで全く知られていなかった。
【発明の開示】
関節リウマチ等の自己免疫疾患の治療剤としては、組織の破壊につながる慢性炎症に対する明確な効果が必要である。さらに、根本療法として、疾患の背景に存在する免疫系の異常を抑制する作用を併せ持つことが肝要である。さらに、これらの疾患の治療薬は長期間投与を必要とする場合が多いことから、副作用が少ないことが要求される。
過去には、自己免疫疾患の治療薬候補として、動物モデルの薬効試験の結果より臨床での有用性が期待された候補化合物が多数存在したが、それらの中には臨床試験において副作用、および/または有効性不十分を理由として開発が中止された化合物の例も多い。
本発明は、優れた免疫異常改善作用と慢性炎症改善作用を有し、副作用が少ない関節リウマチの治療剤あるいは予防剤として有用かつ臨床適用可能な医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。SMP−114を用いて、ラットの疾患モデルでの薬効試験を行った結果、薬効発現量のAUC0−24(血清中濃度時間曲線下面積の0−24時間値を表す)が2711〜3582ng・hr/mLであることを見出した。更にヒト成人の反復投与試験の結果から、上記の薬効発現量のAUC0−24をヒトで得るには、少なくとも1日1回約20mgの投与が必要であることを見出した。また、SMP−114は、1日1回約120mgの投与量でヒトに反復投与した場合でも忍容性に問題が無いことを見出した。これらの結果から、副作用が少なくリウマチ性炎症等に強い抑制効果を示すSMP−114の好適な用法用量を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕3−[(1S)−1−(2−フルオロビフェニル−4−イル)エチル]−5−{[アミノ(モルフォリン−4−イル)メチレン]アミノ}イソキサゾール(SMP−114)またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有し、AUC0−24値が少なくとも約2.7μg・hr/mL以上になるように設計された関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であり、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩の1日当たり投与量が約20〜120mgである経口用医薬組成物。
〔2〕SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有し、AUC0−24値が少なくとも約3.6μg・hr/mL以上になるように設計された関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であり、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩の1日当たり投与量が約20〜120mgである経口用医薬組成物。
〔3〕1日当たり投与量が約40〜120mgである、項〔1〕または〔2〕に記載の医薬組成物。
〔4〕1日当たり投与量が約40mg、約80mgまたは約120mgである、項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔5〕1日当たり投与量が約120mgである、項〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔6〕SMP−114以外の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)での治療歴がないか、またはDMARDs治療歴が1剤もしくは2剤である関節リウマチ患者に投与するための、項〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔7〕SMP−114以外の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)が副作用のため投与できない、またはSMP−114以外のDMARDsで効果がない、もしくは効果が不充分な関節リウマチ患者に投与するための、項〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔8〕肝障害、腎障害または胃腸障害により、SMP−114以外のDMARDsが服用できない関節リウマチ患者に投与するための、項〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔9〕肝障害、腎障害または胃腸障害により、メトトレキサートまたはレフルノミドが服用できない関節リウマチ患者に投与するための、項〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔10〕生物学的製剤に対する抗体産生などにより、当該生物学的製剤の充分な効果が期待できない関節リウマチ患者に投与するための、項〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔11〕感染症の懸念がある関節リウマチ患者に投与するための、項〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔12〕VAS(視覚アナログスケール)スコアによる医師全般評価が63未満である関節リウマチ患者に投与するための、項〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔13〕VAS(視覚アナログスケール)スコアによる患者疼痛評価が67未満である関節リウマチ患者に投与するための、項〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔14〕AUC0−24値が少なくとも約2.7μg・hr/mL以上になるように、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として1日当たり約20〜120mg経口投与することを含む、関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善を行う方法。
〔15〕AUC0−24値が少なくとも約3.6μg・hr/mL以上になるように、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として1日当たり約20〜120mg経口投与することを含む、関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善を行う方法。
〔16〕1日当たり投与量が約40mg、約80mgまたは約120mgである、項〔14〕または項〔15〕に記載の方法。
〔17〕1日当たり投与量が約120mgである、項〔14〕または項〔15〕に記載の方法。
〔18〕関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善に有用であり、かつ、以下の条件(1)および(2)を満たす医薬組成物を製造するための、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩の使用:
(1)SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として1日当たり約20〜120mg経口投与するように調製され、かつ、
(2)SMP−114のAUC0−24値が少なくとも約2.7μg・hr/mL以上になるように設計されている。
〔19〕1日当たり投与量が約40mg、約80mgまたは約120mgである、項〔18〕に記載の使用。
〔20〕1日当たり投与量が約120mgである、項〔18〕に記載の使用。
〔21〕SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有する関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であって、SMP−114以外の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)での治療歴がないか、またはDMARDs治療歴が1剤もしくは2剤である関節リウマチ患者に投与するための医薬組成物。
〔22〕SMP−114以外の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)での治療歴が1剤もしくは2剤である項〔21〕に記載の医薬組成物。
〔23〕SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有する関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であって、VAS(視覚アナログスケール)スコアによる医師全般評価が63未満である関節リウマチ患者に投与するための医薬組成物。
〔24〕SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有する関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であって、VAS(視覚アナログスケール)スコアによる患者疼痛評価が67未満である関節リウマチ患者に投与するための医薬組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のSMP−114は、それ自体でもよく、あるいは薬学的に許容しうる塩としても使用することができる。SMP−114の薬学的に許容しうる塩としては、酸付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、カンファー−スルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。なお、好ましくはSMP−114自体(フリー体)が挙げられる。
また、本発明の「SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩」とは、水和物、アルコール和物等の溶媒和物、又はあらゆる態様の結晶形のものを包含するものである。
本発明に用いられるSMP−114は、例えば日本特許第3237608号明細書(対応米国特許:US 6,100,260)、または日本特許第3244672号明細書に記載された方法で製造することができ、複数の結晶形を取りうるが、好ましくは、SMP−114のβ型結晶、すなわち、粉末X線回折において回折角(2θ):6.1、14.1、16.0、18.5、20.0および25.4度に主ピークを示す結晶性のSMP−114が挙げられる。なお、SMP−114のβ型結晶は、国際公開第02/092094号パンフレット(対応EP特許:EP 1374871 A1)に記載の方法で製造することができる。
本発明における「経口用医薬組成物」の形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤または懸濁剤などが挙げられる。これらの製剤は、従来公知の技術を用いて調製され、許容される通常の担体、賦形剤、結合剤、安定剤等を含有することができる。例えば、国際公開第02/092094号パンフレットに記載の種々の方法によりSMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を含む経口用医薬組成物を製造することができる。
本発明の経口用医薬組成物の単位投与形態としては、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩(塩の形態の場合には、酸付加塩の形態ではなくSMP−114を基準として)を約10〜120mg含む医薬組成物を用いることができる。例えば、SMP−114を10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120mg含む単位投与形態の医薬組成物がその例として挙げられる。
本発明の医薬組成物の投与回数は、1日あたり1回または数回に分けて投与することができる。好ましくは1日あたり1回の投与である。本発明の医薬組成物の投与量としては、前記の通り、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として1日当たり約20〜120mg(塩の形態の場合には、酸付加塩の形態ではなくSMP−114を基準としての投与量)が可能である。具体的には、例えば1日当たり約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、または約120mgの投与が可能であり、好ましくは1日当たり約40mg、約80mgまたは約120mgの投与量が挙げられる。さらに好ましくは、1日当たり約120mgが挙げられる。また、本発明の医薬組成物の投与量は、低めの投与量から投与を開始し、前記約20〜120mgの投与量の範囲で一定間隔毎に投与量を漸増していく漸増法によって投与することもできる。
本発明の「身体機能の改善」とは、関節リウマチ患者において、滑膜の慢性炎症による関節の疼痛・膨張などの関節症状を改善し、関節の破壊や変形を抑制することにより日常生活動作能力が改善することをいう。日常生活動作能力は、例えば、衣類着脱・身支度、起立、食事、歩行、衛生、伸展、握力および活動を指標として評価することができる。具体的には、例えば、患者によるHAQ(Health Assessment Questionnaire)(Fries JF,et al.,Arthritis Rheumatism,23,p.137−145,1980)を用いて評価することができる。
本発明の「治療効果」とは、関節リウマチに罹患した動物あるいは患者の慢性炎症、関節破壊、または関節変形等を抑制すること、あるいは身体機能を改善する等のことを指標として、その効果を判断する。また、以下の米国リウマチ学会による改善基準(ACR20;Felson Dt et al.The American College of Rheumatology preliminary definition of improvement in rheumatoid arthritis.,Arthritis Rheum.1995,38:p.727−735;1996,39:p.34−40)を使用することができる。
1)および2)で20%以上の改善が認められ、かつ、3)−7)の5項目のうち少なくともいずれか3項目で20%以上の改善が認められた場合に、「米国リウマチ学会による基準:20%改善」(ACR基準20%改善)とする。
1)疼痛関節数の減少
2)膨張関節数の減少
3)患者による疾患活動性の全般的評価
4)担当医による疾患活動性の全般的評価
5)患者による疼痛度評価
6)患者による身体機能評価
7)CRPまたは赤沈値
同様に、1)および2)で50%以上の改善が認められ、かつ、3)−7)の5項目のうち少なくともいずれか3項目で50%以上の改善が認められた場合に、「米国リウマチ学会による基準:50%改善」(ACR基準50%改善)とする。
本発明の「AUC0−24値」とは、本発明の医薬組成物を経口投与した後の、血清中SMP−114濃度の時間曲線下面積の0−24時間値を表す。この血清中SMP−114濃度は、例えば、実施例1記載の前処理および測定条件に従いHPLC−蛍光法によって、あるいは実施例4記載の前処理および測定条件に従いLC−MS/MS法によって測定することができる。
本発明の医薬組成物は、とりわけ、以下に示すような、従来の治療方法では十分な治療が困難な関節リウマチ患者の治療に有効である。
すなわち、本発明の医薬組成物は、(1)他のDMARDsが副作用のため投与できない、または、(2)他のDMARDsで効果がない、もしくは効果が不充分な関節リウマチ患者の治療に特に有効である。
上記の「DMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)」としては、例えば、金チオリンゴ酸ナトリウム、オーラノフィン、ペニシラミン、ブシラミン、ロベンザリット二ナトリウム、サラゾスルファピリジン、アクタリット、メトトレキサート、ミゾリビン、スルファサラジン、アザチオプリン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、レフルノミド、および本発明のSMP−114等が挙げられる。
上記の「他のDMARDs」とは、SMP−114以外のDMARDsを表す。上記の「他のDMARDs」による副作用としては、例えば、肝障害、腎障害、胃腸障害、血液障害、または骨髄障害などが挙げられる。より具体的には、SMP−114以外のDMARDsとして例えばメトトレキサートまたはレフルノミドを選択した場合、肝障害、血液障害、または骨髄障害を持った関節リウマチ患者には副作用のためメトトレキサートまたはレフルノミドは服用困難である。しかし、副作用の少ないSMP−114は、メトトレキサートまたはレフルノミドで治療できない上記の関節リウマチ患者の治療には特に有効である。
また、関節リウマチの治療にはしばしば免疫抑制剤が用いられるが、免疫抵抗力が低下した関節リウマチ患者(例えば、老齢の関節リウマチ患者、ステロイド剤等の使用により免疫抵抗力が低下した患者など)には、感染症の懸念があるため免疫抑制剤の投与ができない。SMP−114は通常の免疫抑制作用を有しないため、本発明の医薬組成物は、感染症の懸念がある関節リウマチ患者の治療に特に有効である。
また、関節リウマチの治療には、しばしば生物学的製剤(例えば、インフリキシマブ等が挙げられる)が用いられるが、当該生物学的製剤に対する抗体(中和抗体など)が産生される場合があり、このような抗体(中和抗体など)が産生された関節リウマチ患者では、当該生物学的製剤の充分な効果が期待できない。従って、本発明の医薬組成物は、このような抗体が産生された関節リウマチ患者の治療に特に有効である。
【実施例】
以下、参考例、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1
錠剤(20mg錠)の製造
下記処方に従い、マンニット、コーンスターチ及びクロスカルメロースナトリウムを流動層造粒機に仕込み、水難溶性の有効成分を水溶性高分子結合剤溶液に分散懸濁した結合液にてスプレー造粒し、得られた造粒物にステアリン酸マグネシウムを配合後、打錠し、錠剤(20mg錠)を製造した。


なお、上記SMP−114においては、国際公開第02/092094号パンフレットに記載の方法で製造したβ型結晶を使用した。
参考例2
錠剤(40mg錠)の製造
下記処方に従い、マンニット、コーンスターチ及びクロスカルメロースナトリウムを流動層造粒機に仕込み、水難溶性の有効成分を水溶性高分子結合剤溶液に分散懸濁した結合液にてスプレー造粒し、得られた造粒物にステアリン酸マグネシウムを配合後、打錠し、錠剤(40mg錠)を製造した。

なお、上記SMP−114においては、国際公開第02/092094号パンフレットに記載の方法で製造したβ型結晶を使用した。
参考例3
フィルムコーティング錠の製造
参考例1で調製した裸錠をハイコーターHCT30N(フロイント産業)に仕込み、皮膜量が3mgになるようにコーティングを行い、下表の処方を有するフィルムコーティング錠(20mg錠)を得た。

参考例4
SMP−114懸濁液剤の製造
懸濁液剤は、以下の工程1〜3に従って、用時調製して用いた。
工程1)懸濁用液の調製
a)懸濁化剤として、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース):D−マンニトル=1:5混合物600mgの入ったボトルに、精製水50mLを静かに加えた。
b)キャップを締め、超音波洗浄機で超音波処理を10分間以上行い、懸濁化剤を完全に溶解させ、懸濁用液を調製した。
工程2)懸濁液剤の調製
a)投与量に応じて、SMP−114をそれぞれ10、20、40、60、80、100、120または140mg投入した主薬(SMP−114)入りボトルに、工程1で調製した懸濁用液を全量加えて、キャップを締めて10秒間以上手で激しく振り混ぜた。
b)ボトルを超音波洗浄機に浸け、10分間以上超音波処理し、主薬を完全に分散させた。
c)再度10秒間以上手で激しく振り混ぜて均一にし、SMP−114懸濁液剤を調製した。
工程3)投与方法
a)工程2で調製したSMP−114懸濁液剤を振り混ぜ、ボトルから直接経口投与した。
b)投与した空ボトルに精製水50mLを入れ、振り混ぜて全体をすすぎ、この液を再度経口投与した。
なお、上記SMP−114においては、国際公開第02/092094号パンフレットに記載の方法で製造したβ型結晶を使用した。
以下の実施例では、錠剤の場合は参考例3に記載の方法で得られた20mgフィルムコーティング錠、または同様の方法で得られた10mg錠を使用した。懸濁液剤の場合は参考例4に記載の方法で得られた各投与量の懸濁液剤を使用した。プラセボ懸濁液剤は、参考例4と同様に調製した懸濁液剤を使用した。
【実施例1】
ラットにおける薬効発現量のAUC0−24
動物モデルにおいてSMP−114の抗関節炎作用が観察される最小有効量は、アジュバント関節炎ラットでは2.5mg/kg(1日1回経口投与)であった(田頭秋三、「炎症・再生」、Vol.21、No.4、p.472(2001))。また、コラーゲン関節炎マウスでは5mg/kg(1日1回経口投与)であった(F.Nishikaku、″Annals of the Rheumatic Diseases″,vol.61 supplement 1,p.194(2002))。これらの結果から、SMP−114は5mg/kg以上の用量で薬効を発現すると考えられた。
次に、5週令のCrj:CD(SD)ラットを用いて、1ヵ月間および6ヵ月間反復経口投与毒性試験を行なった(いずれも1日1回経口投与)。雌雄のSD系ラット(一群10匹)に10、30、100、300mg/kgの各投与量で1ヵ月間反復投与し、その亜急性毒性および1ヵ月間の休薬による回復性について検討し、単回投与後および30日間反復投与後の血清中のSMP−114の濃度推移を検討した。また、雌雄のSD系ラット(一群12匹)に6、20、60、200mg/kgの各投与量で6ヵ月間反復投与し、その慢性毒性および3ヵ月間の休薬による回復性について検討し、単回投与後および3、6ヶ月間反復投与後の血清中SMP−114濃度推移を検討した。血清中のSMP−114濃度は、試料を弱酸性条件下(pH4.7)にジエチルエーテルで抽出後、HPLC−蛍光法(蛍光波長319nm)により測定した。
ラットにSMP−114を10mg/kgの用量で1ヵ月間投与した際のAUC0−24は7164ng・hr/mL、6mg/kgの用量で6ヵ月間投与した際のAUC0−24は3254ng・hr/mLであったことから、SMP−114を5mg/kgの用量で投与した場合のAUC0−24は2711〜3582ng・hr/mLであると計算された。
【実施例2】
ヒトへの反復投与における薬剤のAUC0−24
20−40歳の健康な日本人男性を対象として反復投与試験を行った。SMP−114の錠剤およびプラセボ錠剤を用い、プラセボ対照二重盲検法により、プラセボあるいはSMP−114 80mgを1日1回7日間経口投与した(SMP−114投与8例、プラセボ投与2例:計10例)。
SMP−114の80mg投与において、定常状態におけるAUC0−24の値は15258.4ng・hr/mLであった。また、本投与量での忍容性に問題はないと判断された。血清中SMP−114濃度は3〜5回の投与によりほぼ定常状態に達し、蓄積性はないと考えられた。
なお、実施例1記載のラットにおける薬効発現量のAUC0−24は2711〜3582ng・hr/mLであり、これをヒトで得るには、上記のAUC0−24の値(15258.4ng・hr/mL)から、14〜19mg/dayが必要であると計算され、SMP−114は約20mg/day以上の投与量でヒトにおいて薬効を発現することが示された。
【実施例3】
単回投与による忍容性試験
(1)健康な日本人男性(20−40歳、体重50kg以上80kg未満、肥満度±20%以内)を対象として単回投与試験を行った。SMP−114の錠剤を用い、プラセボを対照とし、単盲検にてSMP−114 10、20、40、80又は120mgを空腹時に投与した(各用量においてSMP−114投与6例、プラセボ投与2名:計40例)。安全性関連の評価項目として、バイタルサイン(体温、血圧・脈拍数、呼吸数)、12誘導心電図、臨床検査〔血液学的検査、血液生化学的検査、内分泌学的検査(FT4、FT3、TSH)、血清学的検査(ハプトグロビン)、尿検査〕、および有害事象について観察を行った。薬物動態関連の評価項目として、血清中及び尿中の、SMP−114およびその代謝物の濃度を測定した。投与された全ての用量において忍容性の点で問題となる副作用は観察されなかった。
(2)健康なコーカシアン男性(18−50歳、BMI:18〜27kg/m)を対象として単回投与試験を行った。SMP−114懸濁液剤およびプラセボ懸濁液剤を用い、プラセボ対照二重盲検法により、プラセボ、SMP−114 10、20、40、60、80、100、120及び140mgを空腹時に経口投与した(各用量においてSMP−114投与群6例、プラセボ投与群3例:のべ72例)。安全性関連の評価項目として、バイタルサイン(体温、血圧・脈拍数、呼吸数)、12誘導心電図、臨床検査〔血液学的検査、血液生化学的検査、内分泌学的検査(FT4、FT3、TSH)、尿検査〕、および有害事象について観察を行った。薬物動態関連の評価項目として、血清中及び尿中の、SMP−114およびその代謝物の濃度を測定した。投与された全ての用量において、忍容性の点で問題となる副作用は観察されなかった。
【実施例4】
SMP−114の忍容性限界
18−50歳の健康なコーカシアン男性を対象として反復投与試験を行った。SMP−114の錠剤およびプラセボ錠剤を用い、プラセボ対照二重盲検法により、プラセボ、SMP−114 80あるいは120mgを1日1回7日間経口投与した(各用量においてSMP−114投与群8例、プラセボ投与群2例:計20例)。
80mgおよび120mgの両用量において、忍容性の点で問題となる副作用は観察されなかった。従って、約120mgまで忍容性に問題はないと判断された。
血清中SMP−114濃度は3〜5回の投与によりほぼ定常状態に達し、蓄積性は見られなかった。定常状態におけるAUC0−24の値は80mg投与群では10574ng・hr/mL、120mg投与群では16655ng・hr/mLであった。
血清中SMP−114濃度は、以下の前処理および測定条件に従い、LC−MS/MS法により測定した。
1.前処理操作法
検量線用標準試料溶液、QCサンプルおよび分析試料の前処理は以下の通り実施した。
1)検量線用標準試料溶液、QCサンプルおよび分析試料に内標準溶液(d−SMP−114 5ng/mL)を10mL添加して攪拌した。
2)100mmol/L酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.0)1mL、次いでジエチルエーテル6mLを添加し、10分間攪拌後、4℃下、3000rpmで10分間遠心した。
3)上清をガラスチューブに移し、アルミブロック恒温槽を用いて窒素気流下(40℃)で濃縮乾固した。
4)残渣に、50vol%アセトニトリルを120μL加えて、超音波洗浄器とボルテックスミキサーで再溶解した。
5)再溶解液をフィルターに移し、5000rpm、3分間遠心分離した。
6)ろ液をオートサンプラーバイアルに移し、測定試料溶液とした。
2.測定条件
LC−MS/MS測定は以下の条件で実施した。ただし、質量分析計の状態によって最適値が変り得るパラメータ(ガス量、コリジョン電圧など)は、適宜変更した。
1)LC条件
移動相 :溶出液A;0.3vol%酢酸
溶出液B;アセトニトリル
グラジエント表:
時間(分) A(%) B(%)
0 50 50
5 0 100
5.1 50 50
15 50 50
流速 :0.2ml/min
分析カラム :Puresil C18,2.1mm i.d.x150mm,5mm(Waters)
オートサンプラートレイ:4°C
カラム温度 :35°C
バルブスイッチング :0−1.5分 廃棄、
1.5−9.0分 SMP−114のイオン源、
9.0−15.0分 廃棄
注入量 :5mL
2)MS/MS条件
イオン化方法 :エレクトロイオンスプレー法、ポジティブモード
MS/MSモード :SRM(Selected Reaction Monitoring)
モニターイオン:SMP−114 Q1 m/z 395.1→Q3 m/z 199.0(−25eV)
−SMP−114 Q1 m/z 400.2→Q3 m/z 204.0(−25eV)
全スキャン時間 :0.6秒(SMP−114およびd−SMP−114)
イオン化電圧 :4.5kV for SMP−114
シース ガス :70psi(窒素ガス)
補助ガス :30unit(窒素ガス)
キャピラリー管温度 :230°C
コリジョン ガス :2.1−2.2mT(アルゴン)
マルチプライヤー :1300V
【実施例5】
リウマチ患者への有効薬物量の投与
関節リウマチ患者に1日1回食後にSMP−114を経口投与する。用量は、プラセボおよび40mg/日とする(各群15症例)。投与期間は24週間とするが、最初4週間は20mg/日、続く20週間は40mg/日を投与する。投与開始24週後に、「米国リウマチ学会による基準:20%改善」を満たす患者の割合をプラセボおよび40mg/日群で比較して本剤の有効性が評価できる。
【実施例6】
リウマチ患者への有効薬物量の投与
1.試験方法およびACR基準20%改善率
1−5剤の(SMP−114以外の)DMARDs治療歴がある(それらのDMARDsが副作用のため投与できない、または効果がない、もしくは効果が不十分と考えられる)関節リウマチ患者に1日1回食後にSMP−114を経口投与した。用量は、プラセボ、40mg/日、80mg/日および120mg/日とした(各群約50症例)。投与期間は24週間としたが、16週目に規定の有効基準に達していない者は除外された(疼痛関節数、膨張関節数または赤沈値のいずれかに、20%以上の改善が認められた場合を、規定の有効基準に達したとした)。基準に達した者は、盲検を維持したまま24週まで投薬を続けた。投与開始16週後に、「米国リウマチ学会による基準:20%改善」を満たす患者の割合をプラセボ、40mg/日、80mg/日および120mg/日群で比較して本剤の有効性を評価した(本実施例において、ACR基準の3)患者による疾患活動性の全般的評価、4)担当医による疾患活動性の全般的評価、および5)患者による疼痛度評価については、視覚アナログスケール(VAS)により評価した。)。
その結果、投与開始16週後の「米国リウマチ学会による基準:20%改善」を満たす患者の割合は、項目7)として赤沈値を用いた場合、プラセボ、40mg/日、80mg/日および120mg/日群で、23.7、38.2、36.4および37.0%と、実薬群がいずれもプラセボ群の割合を上回った。
また、項目7)としてCRP値を用いた場合も、プラセボ、40mg/日、80mg/日および120mg/日群で、20.3、38.2、34.5および37.0%と、実薬群がいずれもプラセボ群の割合を上回った。



2.ACR基準50%改善率
前記の米国リウマチ学会による改善基準で、
1)および2)で50%以上の改善が認められ、かつ、3)−7)の5項目のうち少なくともいずれか3項目で50%以上の改善が認められた場合に、「米国リウマチ学会による基準:50%改善」(ACR基準50%改善)となり、「米国リウマチ学会による基準:50%改善」を満たす患者の割合で、本剤の有効性が評価できる。
投与開始16週後の「米国リウマチ学会による基準:50%改善」を満たす患者の割合は、7)の赤沈値を用いた場合、プラセボ、40mg/日、80mg/日および120mg/日群で、3.4、10.9、10.9および13.0%と、実薬群がいずれもプラセボ群の割合を上回った。


3.ACRコアセット評価項目
前記の米国リウマチ学会による改善基準の各評価項目およびQOL評価(SF−36)(Ware,JE.& Sherbourne CD.,″The MOS 36−Item Short−Form Health Survey(SF−36);1.Conceptual Framework and Item Selection.″,Med Care 1981;18:806)の改善率で、本剤の有効性が評価できる。改善率は、投与開始16週後における投与開始前からの変化率で表すことができる。
投与開始16週後の各評価項目の改善率は、プラセボ、40mg/日、80mg/日および120mg/日群で、それぞれ以下の通りであった。特に、「患者による疾患活動性の全般的評価」と「SF−36身体的尺度」で、実薬群がいずれもプラセボ群の改善率を有意に上回った。
1)疼痛関節数の減少
20.2、16.0、27.6、22.7%(p値:0.667)
2)膨張関節数の減少
21.6、22.3、18.7、19.7%(p値:0.985)
3)患者による疾患活動性の全般的評価
2.1、19.3、20.5、14.2%(p値:0.043)
4)担当医による疾患活動性の全般的評価
11.9、12.7、21.5、24.1%(p値:0.308)
5)患者による疼痛度評価
0.7、17.1、16.5、17.1%(p値:0.056)
6)患者による身体機能評価
−4.7、4.3、10.6、−8.7%(p値:0.119)
7)−1 CRP
−134.4、−12.3、−26.4、−98.6%(p値:0.089)
7)−2 赤沈値
−2.6、3.2、4.0、−7.5%(p値:0.511)
・SF−36身体的尺度
29.2、33.3、28.8、30.2%(p値:0.029)
・SF−36精神的尺度
43.1、43.7、46.1、44.8%(p値:0.401)
4.層別解析(1)
層別解析として、SMP−114以外の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)での治療歴、すなわち、SMP−114以外のDMARDsをこれまで何剤使用しているか、を指標に解析した。SMP−114以外のDMARDs治療歴が1剤もしくは2剤である関節リウマチ患者(A群)と、治療歴が3剤ないし5剤である関節リウマチ患者(B群)とに分けて解析した結果を以下に示す。

上記の結果より、SMP−114以外のDMARDs治療歴が1剤もしくは2剤である関節リウマチ患者では、DMARDs冶療歴が3剤ないし5剤である患者よりも、SMP−114の治療効果が顕著であることが明らかとなった。すなわち、本発明の医薬組成物を投与する関節リウマチ患者としては、SMP−114以外のDMARDs治療歴が2剤以下(DMARDs治療歴がないか、またはDMARDs治療歴が1剤もしくは2剤)である関節リウマチ患者(このような患者は、DMARDs治療抵抗性の少ない患者と考えられる)がより好ましく、この場合に一層高い治療効果が得られることが認められた。
5.層別解析(2)
『医師全般評価(VAS)』および『患者疼痛評価(VAS)』を指標とする層別解析を行った。(Felson Dt et al.,Arthritis Rheum.,1995,38:p.727−735)
「VAS(visual analog scale;視覚アナログスケール)、100mm」とは、評価者が、評価を0から100mmの線上に表示することにより評価した指標であり、0から100までの整数で表される。線分の長さは100mm以外(例えば、200mmなど)であっても良いが、本明細書でVAS(視覚アナログスケール)とは、0から100までの範囲でスコア化したものを言う。
『医師全般評価(VAS)』とは、担当医による疾患活動性の全般的評価の指標であり、患者の関節炎の状態をVASスコアで評価したものである(No disease activity:0、Very severe disease:100)。
『患者疼痛評価(VAS)』とは、患者による疼痛度評価の指標であり、患者の痛みを患者自身がVASスコアで評価したものである(無痛:0、最大の痛み:100)。
層別解析の結果を以下に示す。



上記の結果より、『医師全般評価(VAS)』<63または『患者疼痛評価(VAS)』<67である関節リウマチ患者では、SMP−114の治療効果が顕著であることが明らかとなった。すなわち、本発明の医薬組成物は、投与前の診断により、『医師全般評価(VAS)』<63および/または『患者疼痛評価(VAS)』<67と診断される関節リウマチ患者に対して、一層高い治療効果が得られることが認められた。
【産業上の利用可能性】
本発明により、リウマチ性炎症を可及的速やかにかつ最大限に抑制して、非可逆的変化の出現を防止、ないしはその進展を阻止することにより、患者の身体的、精神的、社会的な生活の質(QOL)を向上させる、副作用が少ない関節リウマチ治療剤が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−[(1S)−1−(2−フルオロビフェニル−4−イル)エチル]−5−{[アミノ(モルフォリン−4−イル)メチレン]アミノ}イソキサゾール(SMP−114)またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有し、AUC0−24値が少なくとも約2.7μg・hr/mL以上になるように設計された関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であり、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩の1日当たり投与量が約20〜120mgである経口用医薬組成物。
【請求項2】
SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有し、AUC0−24値が少なくとも約3.6μg・hr/mL以上になるように設計された関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であり、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩の1日当たり投与量が約20〜120mgである経口用医薬組成物。
【請求項3】
1日当たり投与量が約40〜120mgである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1日当たり投与量が約40mg、約80mgまたは約120mgである、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
1日当たり投与量が約120mgである、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
SMP−114以外の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)での治療歴がないか、またはDMARDs治療歴が1剤もしくは2剤である関節リウマチ患者に投与するための、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
SMP−114以外の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)が副作用のため投与できない、またはSMP−114以外のDMARDsで効果がない、もしくは効果が不充分な関節リウマチ患者に投与するための、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
肝障害、腎障害または胃腸障害により、SMP−114以外のDMARDsが服用できない関節リウマチ患者に投与するための、請求項1〜7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
肝障害、腎障害または胃腸障害により、メトトレキサートまたはレフルノミドが服用できない関節リウマチ患者に投与するための、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
生物学的製剤に対する抗体産生などにより、当該生物学的製剤の充分な効果が期待できない関節リウマチ患者に投与するための、請求項1〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
感染症の懸念がある関節リウマチ患者に投与するための、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
VAS(視覚アナログスケール)スコアによる医師全般評価が63未満である関節リウマチ患者に投与するための、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項13】
VAS(視覚アナログスケール)スコアによる患者疼痛評価が67未満である関節リウマチ患者に投与するための、請求項1〜12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
AUC0−24値が少なくとも約2.7μg・hr/mL以上になるように、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として1日当たり約20〜120mg経口投与することを含む、関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善を行う方法。
【請求項15】
AUC0−24値が少なくとも約3.6μg・hr/mL以上になるように、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として1日当たり約20〜120mg経口投与することを含む、関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善を行う方法。
【請求項16】
1日当たり投与量が約40mg、約80mgまたは約120mgである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
1日当たり投与量が約120mgである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善に有用であり、かつ、以下の条件(1)および(2)を満たす医薬組成物を製造するための、SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩の使用:
(1)SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として1日当たり約20〜120mg経口投与するように調製され、かつ、
(2)SMP−114のAUC0−24値が少なくとも約2.7μg・hr/mL以上になるように設計されている。
【請求項19】
1日当たり投与量が約40mg、約80mgまたは約120mgである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
1日当たり投与量が約120mgである、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有する関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であって、SMP−114以外の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)での治療歴がないか、またはDMARDs治療歴が1剤もしくは2剤である関節リウマチ患者に投与するための医薬組成物。
【請求項22】
SMP−114以外の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)での治療歴が1剤もしくは2剤である請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有する関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であって、VAS(視覚アナログスケール)スコアによる医師全般評価が63未満である関節リウマチ患者に投与するための医薬組成物。
【請求項24】
SMP−114またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含有する関節リウマチの慢性炎症抑制、関節破壊抑制、関節変形進行抑制、または身体機能改善のための医薬組成物であって、VAS(視覚アナログスケール)スコアによる患者疼痛評価が67未満である関節リウマチ患者に投与するための医薬組成物。

【国際公開番号】WO2004/096230
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505923(P2005−505923)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006105
【国際出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】