関節構造及び短下肢装具
【課題】耐久性に優れ製造コストを低減可能な関節構造、及び抗力付与具の脱着が容易であり生体との親和性が高い関節構造を足継手として用いた短下肢装具を提供することを目的とする。
【解決手段】2つの関節部材2,3が回動可能に軸連結され、当該関節部材間2,3の回動に対して抗力付与具4により抗力を付与させ得る関節構造1であって、抗力付与具4が、厚さ方向に連接する薄片6と、厚さ方向に並設された薄片6の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第1の保持体7と、厚さ方向に並設された薄片6の他の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第2の保持体7、薄片6を囲繞し当該薄片6の移動可能範囲を制限する可撓性の囲繞体8と、備え、薄片6を取り囲む空間Sの収縮により抗力を可変的に付与し、2つの関節部材2,3がそれぞれ第1及び第2の保持体7に取り外し可能に固定される関節構造1。
【解決手段】2つの関節部材2,3が回動可能に軸連結され、当該関節部材間2,3の回動に対して抗力付与具4により抗力を付与させ得る関節構造1であって、抗力付与具4が、厚さ方向に連接する薄片6と、厚さ方向に並設された薄片6の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第1の保持体7と、厚さ方向に並設された薄片6の他の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第2の保持体7、薄片6を囲繞し当該薄片6の移動可能範囲を制限する可撓性の囲繞体8と、備え、薄片6を取り囲む空間Sの収縮により抗力を可変的に付与し、2つの関節部材2,3がそれぞれ第1及び第2の保持体7に取り外し可能に固定される関節構造1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節構造、特に2つの関節部材が回動可能に軸連結された関節構造、及び、該関節構造を足継手として用いる短下肢装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳卒中や外傷等による片麻痺患者や要介護認定の高齢者の中には、自らの意思に関わらず足関節が底屈方向に伸び緊張する下垂足の障害をかかえた患者が数多く存在している。この障害をかかえる患者は、歩行動作の際に足先が垂れ下がるために円滑な体重移動を行えず、また爪先が床に引っかかる等により上手く歩行できないことから、常に転倒の危険にさらされながら日常生活を送っている。このような患者が健常歩行に近い歩行動作を行なうために、足関節の動きを制限する補助具として短下肢装具(Ankle-Foot Orthoses:AFO)が一般に用いられている。
【0003】
従来の短下肢装具は、足首をほぼ90°に曲げた状態に固定するシューホーン型などの装具が主流であった。しかしながら、このような短下肢装具を用いた場合、下垂足を阻止することはできるが、足関節を固定してしまい、膝折れ現象などが生じ、不自然でぎこちない歩行動作となる。そこで、最近では、これを改善し、足関節に適切な範囲の自由度を与え、底屈方向や背屈方向の動きを可能とする短下肢装具が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示された短下肢装具においては、下腿部装着体11に対して足底載置体12(図10参照。)を接続する足継手として、底屈及び背屈方向に回動可能に連結し可変的な抗力を外力による回動に対して付与する関節構造が開示されている。このような関節構造として、例えば図11及び図12に示す関節構造90は、下腿部装着体11と足底載置体12との間の外力による回動に対して抗力付与具91が抗力を付与する。
【0005】
抗力付与具91は、図12(b)にその部分透視図を示すように、並設された2つの群の薄片92がその貫通孔を挿通するパイプ93により配置されるとともに、これら2つの群の薄片92がそれぞれ互い違いとなるように貫通孔を挿通するパイプ94により当該ピン94を中心の回動可能かつ厚さ方向に接するように連接され、これら全ての薄片92が中空の袋体95の内部空間に収容されている。そして、図11(a)に示すように、パイプ93を挿通するピン96のネジ部が下腿部装着体11と足底載置体12にそれぞれ螺合により固定され、パイプ94を挿通するピン97のネジ部がナット98に螺合により固定されている。袋体95に接合されたチューブ99には、袋体95の内部空間の内圧を変更する不図示の手段が接続されている。
【0006】
このように構成された関節構造90において、下腿部装着体11と足底載置体12とが、外力によって相対的に回動するとき、下腿部装着体11と足底載置体12に固定されたピン96が挿通するパイプ93によりそれぞれ並設される2つの群の薄片92も相対的に回動する。このとき、これらの薄片92を互い違いに連接するパイプ94に挿通されるピン97が回動軸の中心となる。関節構造90は、袋体95の内部空間の内圧を制御することによって、密着した各薄片92間の接触面に生じる摩擦力が変化するので、下腿部装着体11と足底載置体12との間を相対的に回動させる外力に対して抗力を可変的に付与することが可能となる。
【0007】
このような関節構造90を足継手として用いることにより、短下肢装具は、袋体95の内部空間を負圧にすることにより、下腿部装着体11に対して足底載置体12が底屈及び背屈方向に回動する動きを拘束するために必要な抗力を簡易かつ容易に付与することができる。また、付与する抗力は摩擦力という受動的な力であるので、故障等により暴走せず安全を確実に確保することができる。
【特許文献1】特願2005−157483号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の関節構造90においては、薄片92を収容する袋体95を貫通させてパイプ93,94が接合されている。そのため、袋体95とパイプ93,94との接合が困難であり製造コストが高くなるとともに、パイプ94に挿通されるピン97を軸として回動するので袋体95の内部空間から空気漏れが起こりやすく耐久性に劣るという問題があった。また、抗力付与具91を脱着するためには、下腿部装着体11及び足底載置体12と4本のピン96との接続を解除する必要があるので、抗力付与具91の交換が困難であるという問題があった。また、抗力付与具91を上下両側から挟むように下腿部装着体11と足底載置体12に固定する必要があるため全高が高くなるなど、小型化や軽量化が困難であるという問題があった。
【0009】
さらに、短下肢装具の足継手は、装着者の体格や症状によって歩行改善に適した特性の補助を付与するため、また各人の嗜好もあるため、その場で実際に試みながら抗力の大きさ等を微調整する必要がある。しかしながら、前記従来の関節構造90を足継手として用いた短下肢装具においては、抗力付与具91の交換が困難であり、抗力の調整に手間がかかるという問題があった。また、関節構造90の製造コストが高くため、短下肢装具の製造コストも高くなるという問題があった。また、関節構造90の耐久性が劣るため、関節構造90を交換する頻度が多いという問題があった。また、関節構造90の小型化や軽量化が困難であるため、歩行動作に影響を与え、生体との親和性が低くなるという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、耐久性に優れ製造コストを低減可能な関節構造を提供することを目的とする。また、抗力付与具の脱着が容易であり生体との親和性が高い関節構造を足継手として用いた短下肢装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
当該目的を達成するために、請求項1に記載の関節構造は、2つの関節部材が回動可能に軸連結され、当該関節部材間の回動に対して抗力付与具により抗力を付与させ得る関節構造であって、前記抗力付与具が、厚さ方向に連接する薄片と、厚さ方向に並設された前記薄片の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第1の保持体と、厚さ方向に並設された前記薄片の他の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第2の保持体と、前記薄片を囲繞し当該薄片の移動可能範囲を制限する可撓性の囲繞体と、備え、前記薄片を取り囲む空間の収縮により前記抗力を可変的に付与し、前記2つの関節部材がそれぞれ前記第1及び第2の保持体に取り外し可能に固定されることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の関節構造は、請求項1に記載の関節構造において、前記第1の保持体に保持される薄片と、前記第2の保持体に保持される薄片とが、厚さ方向に交互に位置するように連接することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の関節構造は、請求項1又は2に記載の関節構造において、前記薄片を取り囲む空間と外部との連通する連通口を前記第1又は第2の保持体に設けることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の短下肢装具は、下腿部に装着される下腿部装着体と足底を載せる足底載置体とを接続する足継手として、請求項1から3の何れか1項に記載の関節構造を用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の関節構造によれば、厚さ方向に並設された薄片の一群を当該厚さ方向に移動可能に第1及び第2の保持体が遊嵌して保持し、薄片を囲繞し当該薄片の移動可能範囲を可撓性の囲繞体が制限する。そのため、関節部材や当該関節部材を回動可能に連結する軸に薄片の一群を保持するために、囲繞体を貫通するパイプ等を設ける必要がない。そのため、囲繞体とパイプ等とを接合する必要がないので従来に比べて製造コストを低減することが可能となるとともに、囲繞体とパイプ等との接合部から空気漏れが起こることがないので従来に比べて耐久性を向上することができる。また、2つの関節部材がそれぞれ第1及び第2の保持体に取り外し可能に固定される。そのため、抗力付与具を関節部材から容易に脱着することができ、抗力付与具を容易に交換することができる。また、薄片の厚さ方向の両側から挟むように抗力付与具を関節部材に固定する必要がないため、従来に比べて全高を低くすることができ、小型化や軽量化が可能となる。
【0016】
請求項2に記載の関節構造によれば、第1の保持体に保持される薄片と、第2の保持体に保持される薄片とが、厚さ方向に交互に位置するように連接する。そのため、第1及び第2の保持体にそれぞれ保持される2つの群の薄片のみを、抗力付与具を構成する薄片とするので、関節構造の構成が簡易になり、小型化や軽量化がさらに可能となる。また、回動の中心が、2つの群の薄片の互いに連接する部分に位置することになり、関節部材の回動をさらに円滑に行うことが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の関節構造によれば、薄片を取り囲む空間と外部との連通する連通口を第1又は第2の保持体に設ける。そのため、囲繞体にチューブ等により連通口を設ける必要がないので、囲繞体とチューブ等との接合部から空気漏れが起こることがないので従来に比べて耐久性を向上することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の短下肢装具によれば、下腿部に装着される下腿部装着体と足底を載せる足底載置体とを接続する足継手として、請求項1から3の何れか1項に記載の関節構造を用いる。そのため、抗力付与具の交換が容易であるので、抗力の調整に手間がかからない。また、関節構造の製造コストを低減することが可能であるため、短下肢装具の製造コストを低減することができる。また、関節構造の耐久性が優れるため、短下肢装具の寿命を延ばすこととが可能となる。また、関節構造の小型化や軽量化が可能であるため、歩行動作に与える影響が低減し、生体との親和性が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に実施の形態に係る関節構造1は、図1から図3に示すように、回動可能に軸連結された2つの関節部材2,3と、当該関節部材2,3間の回動に対して抗力を付与させ得る抗力付与具4と、を備えている。
【0020】
関節部材2,3は、第1の関節部材2と第2の関節部材3とからなり、これらの関節部材2,3が軸5にて回動自在に連結されている。第1及び第2の関節部材2,3は、それぞれ回動自在に軸連結される関節体2a,3aと抗力付与具4を取り付けるための取付体2b,3bとから構成され、取付体2b,3bが関節体2a,3aにそれぞれ固定されている。ここでは、関節体2a,3a及び取付体2b,3bはステンレスやアルミニウム等の金属など剛性の高い材質からなり、ボルト2c,3cにより取付体2b,3bが関節体2a,3aに固定されている。第1の関節部材2の関節体2aには、貫通孔が形成されており、該貫通孔に内挿されるボールベアリングやニードルベアリング等の軸受5aを介して軸5が回動自在に挿通されている。一方、第2の関節部材3の関節体3aにはネジ孔が形成されており、該ネジ孔に軸5の端部に形成されたネジ部が螺結され、軸5が関節体3aに固定されている。関節体2aと関節体3aとの間には、軸5が挿通する平座金5bが配設されている。第1及び第2の関節部材2,3は、図示しない部材にそれぞれ固定する便宜を考慮して、関節体2a,3aの底面が同一面上に位置するように形成され、さらにネジ孔が貫設されている。
【0021】
抗力付与具4は、図4及び図5にその部分透視図を示すように、厚さ方向に連接する薄片6と、厚さ方向に並設された薄片6の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌してそれぞれ保持する2つの保持体7と、薄片6を囲繞し当該薄片6の移動可能範囲を制限する可撓性の囲繞体8(図4及び図5に2点鎖線にて示す。)と、備えている。
【0022】
各薄片6は、同形状の薄厚のシート状部材であり、ポリスチレン、ポリプロピレンや塩化ビニルなどの合成樹脂等からなる。その表裏面は、鋸歯状等の凹凸形状を形成することにより、摩擦係数を大きくすることが好ましい。薄片6は、例えば、一辺に半円を、当該一辺に対向する辺に矩形状の突片を備えた矩形状のものであるが、この形状に特に限定されるものではない。
【0023】
保持体7は、厚さ方向に並設された薄片6の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持するものであり、合成樹脂等の剛性の高い材質からなる。保持体7は、薄片6の突片より僅少に大きく形成された形状が、厚さ方向に貫設されており、該貫設された部分に薄片6の一群が遊嵌し、傾斜等することなく厚さ方向に移動可能に保持される。保持体7の幅は、薄片6の幅と略同一であることが好ましい。保持体7には、貫通孔が形成されており、図1から図3に示すように、該貫通孔を挿通するボルト9を関節部材2,3の取付体2b,3bのネジ孔に螺合させることにより取り外し可能に固定される。なお、関節構造1の全高を抑えるため、ボルト9の頭部が保持体7の上面から突出しないように、ボルト9の頭部を収容可能な凹陥部を設けることが好ましい。
【0024】
一方の保持体7に保持される一群の薄片6と、他方の保持体7に保持される一群の薄片6とが、厚さ方向に交互に(互い違いに)位置するように連接することが好ましい。交互に配置される薄片6は、その半円の中心が厚さ方向に略一致することが好ましい。
【0025】
囲繞体8は、薄片6を囲繞し当該薄片6の移動可能範囲を制限する可撓性の密着性の良好な薄いシート状部材であり、ゴム等の耐久性に優れ空気を透過させない変形容易な軟質素材からなる。囲繞体8は、その端部がそれぞれ保持体7の周面に渡って接着剤等により密着して固定されている。囲繞体8と2つの保持体7により密閉された断面略矩形状の空間Sが形成されており、当該空間S内に薄片6が収容され、薄片6を所定の相互関係に配設するとともにその自由な移動を所定の範囲内に規制している。薄片6の厚さ方向の合計厚さより空間Sの内高が大きく、空間Sの内圧が外部の大気圧と均衡している等所定以下の圧力である(以下、「常圧」という。)場合、空間S内に収容された各薄片6は、その間に隙間を有しており、その厚さ方向に移動可能となっている。なお、取付体2b,3bには、抗力付与具4の載置面に、囲繞体8と保持体7との接着部との干渉を回避する逃げ部を設けている。
【0026】
空間S内の内圧を変更することができる図示しない内圧変更手段が、空間S内と連通する連通口を有する細長い管状体(チューブ)8aによって接続されている。内圧変更手段は、例えば、空間S内の空気を出し入れ可能なポンプや、空間S内の空気を出すことが可能な排出ポンプ及び空間Sを外部に開放することにより外圧と均衡とする開放弁である。
【0027】
このように構成された関節構造1において、第1の関節部材2と第2の関節部材3とが、任意の外力によって軸5を回動中心として相対的に回動するとき、2つの保持体7がそれぞれ関節部材2,3の取付体2b,3bに固定されているため、2つの保持体7も同様に相対的に回動し、これに伴い各保持体7に保持される一群の薄片6も相対的に回動する。このとき、薄片6の半円の中心が回動の略中心となるので、薄片6との接触により囲繞体8が破損する恐れは減少されている。
【0028】
関節構造1は、空間Sの内圧を制御することによって、2つの関節部材2,3間の相対的に回動させる外力に対して抗力を付与することが可能となる。空間Sの内圧が大気圧と均衡している場合には、各薄片6間の接触面に摩擦力がほとんど生じず、外力に対して抗力を付与しない。一方、空間Sの内圧を負圧として各薄片6を密着させると、密着面に摩擦力が生じ、該摩擦力が前記外力に対する抗力となる。空間Sの内圧によって摩擦力が変化するので、空間Sの内圧を制御することによって、前記外力に対して抗力を可変的に付与することができる。
【0029】
空間Sが適量の空気で満たされて、内圧が常圧の場合においては、空間Sが一定容積に維持されて、前記したように、薄片6はその厚さ方向に移動可能な状態である。そのため、各薄片6間の接触面に摩擦力がほとんど生じず、2つの関節部材2,3間は回動自在であり、外力による回動に対する抗力をほとんど(僅かな摩擦抵抗を除き)付与しない。
【0030】
一方、空間Sの空気が流出されて、内圧が所定圧以下の負圧となった状態においては、空間Sの容積が収縮して、各薄片Sの表面と裏面とがそれぞれ密着し、これら密着面に摩擦力が生じ、該摩擦力が2つの関節部材2,3を相対的に回動させる外力に対する抗力を付与する。
【0031】
前記摩擦力は、それぞれ密着面に作用する法線方向の力(以下、法線力という。)に、密着面の摩擦係数を乗じたものであるから、法線力を制御することにより、該密着面に生じる摩擦力を制御することができる。すなわち、内圧を制御することにより、抗力を任意に変動させることができる。また、密着面の大きさを変更する、例えば、薄片6の枚数を変更する、薄片6の表面積を変更することにより、付与可能な抗力を変更することができる。また、密着面の摩擦係数を変更することにより、すなわち、薄片6の表裏面の表面粗さを変更することにより、付与可能な抗力を変更することができる。このように、薄片6の枚数や表面粗さ等を適宜変更することにより、適切な抗力を付与可能とすることが簡単にできる。
【0032】
以上説明したように、この関節構造1によれば、厚さ方向に並設された薄片6の一群を当該厚さ方向に移動可能に2つの保持体7がそれぞれ遊嵌して保持し、薄片6を囲繞し当該薄片6の移動可能範囲を可撓性の囲繞体8が制限する。そのため、関節部材2,3や当該関節部材2,3を回動可能に連結する軸5に薄片6を保持するために、上記従来の関節構造90のように、囲繞体8を貫通するパイプ等を設ける必要がない。そのため、囲繞体8とパイプ等とを接合する必要がないので従来に比べて製造コストを低減することが可能となるとともに、囲繞体8とパイプ等との接合部から空気漏れが起こることがないので従来に比べて耐久性を向上することができる。
【0033】
また、2つの関節部材2,3がそれぞれ保持体7に取り外し可能に固定される。そのため、抗力付与具4を関節部材2,3に対して容易に脱着することができ、抗力付与具4を容易に交換できる。そして、付与可能な最大抗力等の抗力の特性を、薄片6の枚数や摩擦係数を変更することにより、大きな変更幅の特性を自在に調整することができる。また、薄片6の枚数等が偏向することにより抗力付与具4の全高が変わっても取り付け互換性を確保することができる。また、薄片6の厚さ方向の両側から挟むように抗力付与具4を関節部材2,3に固定する必要がないため、従来に比べて全高を低くすることができ、小型化や軽量化が可能となる。
【0034】
なお、本実施の形態で示した関節構造は、本発明に係る関節構造の一態様にすぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、各保持体7が保持する一群の薄片6同士が交互に位置する場合、すなわち、並置する2群の薄片6からなる場合の例を示したが、並置する薄片が3群以上からなる場合であってもよい。例えば、図6に示すように、一方の保持体7に保持される一群の薄片6と、何れの保持体にも保持されない一群の長円状の薄片6Aと、他方の保持体7に保持される一群の薄片6と、を備え、長円状の薄片6Aがその表裏面にてそれぞれ1つの薄片6と隣接するように配置されているものであってもよい。囲繞体8Aがこれら全ての薄片6,6Aを囲繞することによりその移動可能範囲を規制し、長円状の薄片6Aも所定範囲内に移動が制限される。また、図7に示すように、一方の保持体7に保持される一群の薄片6と、何れの保持体にも保持されない一群の長円状の薄片6Bと、他方の保持体7に保持される一群の薄片6と、を備え、長円状の薄片6Bがその表裏面にてそれぞれ2つの薄片6に隣接するように配置されているものであってもよい。囲繞体8Bがこれら全ての薄片6,6Bを囲繞することによりその移動可能範囲を規制し、長円状の薄片6Bも所定範囲内に移動が制限される。
【0035】
また、抗力付与具4を上方から抑える押え具を設けてもよい。例えば、図8に示すように、押え具9Aの下面が抗力付与具4の保持体7の上面に接触するように、関節部材2´,3´の取付体2b´,3b´の天面に形成されたネジ孔にボルト9Bが螺結されて、押え具9が関節部材2´,3´に固定されている。これにより、抗力付与具4をより安定的に固定することができる。
【0036】
また、薄片6を取り囲む空間Sと外部との連通する連通口を保持体に設けてもよい。例えば、図9に示すように、保持体7Aは、薄片6を保持する面と外側に位置する側面とを連結する孔7aが形成され、該孔が空間Sと不図示の内圧変更手段と接続する連通口となっている。これにより、囲繞体8にチューブ等により連通口を設ける必要がないので、囲繞体8とチューブ等との接合部から空気漏れが起こることがなく、耐久性を向上することができる。
【0037】
また、図示しないが、関節部材2,3の関接体2a,3aと取付体2b,3bとを一体化してもよい。これにより、さらに関節構造1に薄厚化、軽量化が可能となる。また、関節部材2,3を抗力付与具4の一方の側(図1等における下側)だけではなく、両方の側から挟むように抗力付与具4を取り付けてもよい。これにより、さらに強度の向上が可能となる。また、複数の抗力付与具4を積み重ねるように取り付けてもよい。また、抗力付与具4の空間Sを複数に区分してそれぞれの内圧を調整するものであってもよい。これにより、さらに付与可能な抗力の微調整が可能となる。
【0038】
以下、本発明の実施形態に係る関節構造1を用いた短下肢装具としての短下肢装具10について説明する。この短下肢装具10は、図10に示すように、装着者Mの下腿部に装着される下腿部装着体11と、装着者Mの足底を載せる足底載置体12と、下腿部装着体11に対して足底載置体12を底屈及び背屈方向に回動(揺動)可能に連結する足継手としての関節構造1と、足底載置体12の接地面に設けられたポンプ(容積可変体)13と、を備えている。
【0039】
下腿部装着体11は、装着者Mの下腿部のふくらはぎ部周りを覆うように、合成樹脂材等の軽量で硬質な材質から一体的に薄厚に成形されるものであり、固定ベルト14によって装着者Mの下腿部に装着される。下腿部装着体11は関節構造1の第1の関節部材2に固定されている。具体的には、下腿部装着体11は、その下端部がボルトにより第1の関節部材2の関節体2aに固定されている。足底載置体12は、装着者Mの足底を載せることができ、かつ踵部周りを覆うように、足底載置体12と同様に、合成樹脂材等の軽量で硬質な材質から一体的に薄厚に成形されるものであり、固定ベルト15によって装着者Mの足部に装着される。足底載置体12は関節構造1の第2の関節部材3に固定されている。具体的には、足底載置体12は、その上端部がボルトにより第2の関節部材3の関節体3aに固定されている。
【0040】
ポンプ13は、内部空間に流出入する空気を透過させない素材からなり、足底載置体12の底面である接地面に設けられている。ポンプ13の内部空間は、その容積が外力により可変なものであり、抗力付与具4の空間Sと空気が流出入可能なようにチューブ16を介して連通している。ポンプ13は、例えば、その底部が平らな板状膜からなり、側部が蛇腹状の膜からなるものである。そして、ポンプ13は、装着者Mの体重を利用した足踏み式のポンプであり、装着者Mが歩行する際、足底載置体12の底面と地面との間に挟まれて密閉された内部空間の容積が圧縮されることにより内圧を高めることができる。なお、ポンプ13として電動ポンプ等を用いてもよい。
【0041】
以下、歩行動作に応じた短下肢装具10の動作について説明する。まず、足底載置体12が接地していないとき、ポンプ13の内部空間の容積は圧縮されず、その内圧は低い。そして、抗力付与具4の空間Sの内圧は負圧となっており、下腿部装着体11に対して足底載置体12が底屈及び背屈方向に回動する動きを拘束している。
【0042】
次に、踵部が接地したとき、ポンプ13の内部空間は足底載置体12の底面と地面との間に挟まれて踵部側から順次圧縮され、ポンプ13の内圧が除々に高まる。これにより、ポンプ13側からチューブ16を介して抗力付与具4の空間Sに空気が流入し、空間Sの内圧が除々に高くなり、抗力付与具4の各薄片6間における摩擦力が減少し、関節部材2,3にそれぞれ固定された下腿部装着体11と足底載置体12との間の回動に対する抗力が除々に弱まる。このようにして、足先の急激な垂れ下りを防止しつつ、踵部から足底全面に渡って滑らかに体重移動させるよう補助することができる。
【0043】
次に、爪先部が接地とした時、ポンプ13の内部空間は足底載置体12の底面と地面との間に挟まれて圧縮され、ポンプ13の内圧がさらに高まる。これにより、ポンプ13側からチューブ16を介して抗力付与具4の空間Sに空気がさらに流入し、空間Sの内圧が高くなって常圧となり、薄片6間の摩擦力が消滅し、関節部材2,3にそれぞれ固定された下腿部装着体11と足底載置体12とが回動自在となり、回動に対する抗力がなくなる。このようにして、足底載置体12の拘束を解除し、装着者Mの体重を利用し足底全面をうまく接地させるよう補助することができる。
【0044】
次に、踵部が離地した時、ポンプ13の内部空間は足底載置体12の底面と地面との間にて踵部側から開放されて踵部側から順次伸張し、ポンプ13の内圧が除々に低くなる。これにより、抗力付与具4の空間Sからチューブ16を介してポンプ13の内部空間に空気が流入し、空間Sの内圧が除々に低くなり、抗力付与具4の各薄片6間における摩擦力が増加し、回動に対する抗力が除々に強まる。このようにして、足先の急激な垂れ下りを防止しつつ、足底全面から爪先部に渡って滑らかに体重移動させるよう補助することができる。
【0045】
次に、爪先部が離地した時、抗力付与具4の空間Sの内圧が負圧のまま維持され、抗力付与具4の各薄片6間における摩擦力が大きく、回動に対する抗力が最大の状態となり、回動が拘束される。このようにして、足底載置体12を拘束し、足先が垂れ下がって地面に接触することを防止するよう補助することができる。
【0046】
以上説明したように、この短下肢装具10によれば、抗力付与具4の交換が容易であるので、抗力の調整に手間がかからない。また、関節構造1の製造コストを低減することが可能であるため、短下肢装具10の製造コストを低減することができる。また、関節構造1の耐久性が優れるため、短下肢装具10の寿命を延ばすこととが可能となる。また、関節構造1の小型化や軽量化が可能であるため、歩行動作に与える影響が低減し、生体との親和性が高くなる。
【0047】
また、歩行動作に応じた抗力を適宜付与して補助するので、装着者Mの歩行動作を改善させることができる。また、装着者Mの歩行動作によって、ポンプ13を動作させているので、ポンプ13を電力等により動作させる必要がないので、軽量化できる利点がある。
【0048】
なお、関節構造1の抗力付与具4の空間Sとポンプ13との間を流出入する空気の流量を調整する流量調整弁を設け、この流量調整弁を制御することにより、関節構造1の空間Sの内圧を調整して、足底載置体12の拘束を適宜調整するものであってもよい。また、踵部や爪先が接地しているか否かを検知するセンサ、抗力付与具4の空間Sやポンプ13の内部空間の圧力を検知するセンサを設け、このセンサから発信される検知信号を考慮して、流量制御弁の流量を調整してもよい。また、抗力付与具4の空間Sやポンプ13の内部空間と連通する内部空間を有し、流量制御弁等の弁を備えた補助タンクを設けてもよい。この場合、ポンプ13の内部空間の伸縮とは独立させて、空間Sの内圧を調整することが可能となり、装着者Mの歩行動作をさらに改善させることができる。なお、空気の代わりに、ヘリウムガス、アルゴンガス等の気体を用いてもよい。
【0049】
なお、本発明に係る短下肢装具は、本発明の実施の形態として示した短下肢装具10に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜設計変更できることは勿論である。例えば、膝関節の動きも代償する長下肢装具に関節構造1を用いたものであってもよい。さらに、本発明に係る短下肢装具は、障害をかかえる患者が歩行動作の際に補助具として用いることに限定されるものではなく、健常者がスポーツトレーニングを行なう際に用いるものであってもよい。例えば、各種運動動作に応じて足関節に作用する空気抵抗や水の流体抵抗等の負荷を抗力として付与することにより、仮想現実的にスポーツトレーニングを行なう擬似体験装置に本発明に係る短下肢装具を適用させることができる。また、歩行動作に応じて足関節に作用する負荷を抗力として適切に付与することにより、足関節周り等の筋肉を効果的に鍛える筋肉トレーニング装置に本発明に係る短下肢装具を適用させることができる。また、ハイカットシューズ等の運動トレーニング用の靴に内蔵させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る関節構造1を示し、(a)は斜視図、(b)は一部分解斜視図である。
【図2】関節構造1を示す分解斜視図である。
【図3】図1(a)におけるA−A断面図である。
【図4】(a)及び(b)は関節構造1の抗力付与具4を示す部分透視斜視図であり、(c)はその薄片を示す斜視図である。
【図5】(a)から(b)は関節構造1の抗力付与具4を示す部分透視上面図であり、(c)はその薄片を示す斜視図である。
【図6】(a)から(c)は、関節構造1の抗力付与具4の変形例を示す部分透視上面図である。
【図7】(a)から(c)は、関節構造1の抗力付与具4の他の変形例を示す部分透視上面図である。
【図8】関節構造1の変形例を示し、(a)は部分分解斜視図、(b)は断面図である。
【図9】関節構造1の抗力付与具4の他の変形例を示し、(a)は部分斜視図、(b)は部分透視上面図である。
【図10】本発明の実施の形態に短下肢装具10の外観構成を示す側面図である。
【図11】従来の関節構造90を示し、(a)は部分分解斜視図であり、(b)は側面図である。
【図12】従来の関節構造90の抗力付与具4を示し、(a)は解斜視図であり、(b)は部分分解透視斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 関節構造
2、3 関節部材
4 抗力付与具
5 軸
6 薄片
7 保持体
8 囲繞体
10 短下肢装具
11 下腿部装着体
12 足底載置体
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節構造、特に2つの関節部材が回動可能に軸連結された関節構造、及び、該関節構造を足継手として用いる短下肢装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳卒中や外傷等による片麻痺患者や要介護認定の高齢者の中には、自らの意思に関わらず足関節が底屈方向に伸び緊張する下垂足の障害をかかえた患者が数多く存在している。この障害をかかえる患者は、歩行動作の際に足先が垂れ下がるために円滑な体重移動を行えず、また爪先が床に引っかかる等により上手く歩行できないことから、常に転倒の危険にさらされながら日常生活を送っている。このような患者が健常歩行に近い歩行動作を行なうために、足関節の動きを制限する補助具として短下肢装具(Ankle-Foot Orthoses:AFO)が一般に用いられている。
【0003】
従来の短下肢装具は、足首をほぼ90°に曲げた状態に固定するシューホーン型などの装具が主流であった。しかしながら、このような短下肢装具を用いた場合、下垂足を阻止することはできるが、足関節を固定してしまい、膝折れ現象などが生じ、不自然でぎこちない歩行動作となる。そこで、最近では、これを改善し、足関節に適切な範囲の自由度を与え、底屈方向や背屈方向の動きを可能とする短下肢装具が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示された短下肢装具においては、下腿部装着体11に対して足底載置体12(図10参照。)を接続する足継手として、底屈及び背屈方向に回動可能に連結し可変的な抗力を外力による回動に対して付与する関節構造が開示されている。このような関節構造として、例えば図11及び図12に示す関節構造90は、下腿部装着体11と足底載置体12との間の外力による回動に対して抗力付与具91が抗力を付与する。
【0005】
抗力付与具91は、図12(b)にその部分透視図を示すように、並設された2つの群の薄片92がその貫通孔を挿通するパイプ93により配置されるとともに、これら2つの群の薄片92がそれぞれ互い違いとなるように貫通孔を挿通するパイプ94により当該ピン94を中心の回動可能かつ厚さ方向に接するように連接され、これら全ての薄片92が中空の袋体95の内部空間に収容されている。そして、図11(a)に示すように、パイプ93を挿通するピン96のネジ部が下腿部装着体11と足底載置体12にそれぞれ螺合により固定され、パイプ94を挿通するピン97のネジ部がナット98に螺合により固定されている。袋体95に接合されたチューブ99には、袋体95の内部空間の内圧を変更する不図示の手段が接続されている。
【0006】
このように構成された関節構造90において、下腿部装着体11と足底載置体12とが、外力によって相対的に回動するとき、下腿部装着体11と足底載置体12に固定されたピン96が挿通するパイプ93によりそれぞれ並設される2つの群の薄片92も相対的に回動する。このとき、これらの薄片92を互い違いに連接するパイプ94に挿通されるピン97が回動軸の中心となる。関節構造90は、袋体95の内部空間の内圧を制御することによって、密着した各薄片92間の接触面に生じる摩擦力が変化するので、下腿部装着体11と足底載置体12との間を相対的に回動させる外力に対して抗力を可変的に付与することが可能となる。
【0007】
このような関節構造90を足継手として用いることにより、短下肢装具は、袋体95の内部空間を負圧にすることにより、下腿部装着体11に対して足底載置体12が底屈及び背屈方向に回動する動きを拘束するために必要な抗力を簡易かつ容易に付与することができる。また、付与する抗力は摩擦力という受動的な力であるので、故障等により暴走せず安全を確実に確保することができる。
【特許文献1】特願2005−157483号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の関節構造90においては、薄片92を収容する袋体95を貫通させてパイプ93,94が接合されている。そのため、袋体95とパイプ93,94との接合が困難であり製造コストが高くなるとともに、パイプ94に挿通されるピン97を軸として回動するので袋体95の内部空間から空気漏れが起こりやすく耐久性に劣るという問題があった。また、抗力付与具91を脱着するためには、下腿部装着体11及び足底載置体12と4本のピン96との接続を解除する必要があるので、抗力付与具91の交換が困難であるという問題があった。また、抗力付与具91を上下両側から挟むように下腿部装着体11と足底載置体12に固定する必要があるため全高が高くなるなど、小型化や軽量化が困難であるという問題があった。
【0009】
さらに、短下肢装具の足継手は、装着者の体格や症状によって歩行改善に適した特性の補助を付与するため、また各人の嗜好もあるため、その場で実際に試みながら抗力の大きさ等を微調整する必要がある。しかしながら、前記従来の関節構造90を足継手として用いた短下肢装具においては、抗力付与具91の交換が困難であり、抗力の調整に手間がかかるという問題があった。また、関節構造90の製造コストが高くため、短下肢装具の製造コストも高くなるという問題があった。また、関節構造90の耐久性が劣るため、関節構造90を交換する頻度が多いという問題があった。また、関節構造90の小型化や軽量化が困難であるため、歩行動作に影響を与え、生体との親和性が低くなるという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、耐久性に優れ製造コストを低減可能な関節構造を提供することを目的とする。また、抗力付与具の脱着が容易であり生体との親和性が高い関節構造を足継手として用いた短下肢装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
当該目的を達成するために、請求項1に記載の関節構造は、2つの関節部材が回動可能に軸連結され、当該関節部材間の回動に対して抗力付与具により抗力を付与させ得る関節構造であって、前記抗力付与具が、厚さ方向に連接する薄片と、厚さ方向に並設された前記薄片の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第1の保持体と、厚さ方向に並設された前記薄片の他の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第2の保持体と、前記薄片を囲繞し当該薄片の移動可能範囲を制限する可撓性の囲繞体と、備え、前記薄片を取り囲む空間の収縮により前記抗力を可変的に付与し、前記2つの関節部材がそれぞれ前記第1及び第2の保持体に取り外し可能に固定されることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の関節構造は、請求項1に記載の関節構造において、前記第1の保持体に保持される薄片と、前記第2の保持体に保持される薄片とが、厚さ方向に交互に位置するように連接することを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の関節構造は、請求項1又は2に記載の関節構造において、前記薄片を取り囲む空間と外部との連通する連通口を前記第1又は第2の保持体に設けることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の短下肢装具は、下腿部に装着される下腿部装着体と足底を載せる足底載置体とを接続する足継手として、請求項1から3の何れか1項に記載の関節構造を用いることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の関節構造によれば、厚さ方向に並設された薄片の一群を当該厚さ方向に移動可能に第1及び第2の保持体が遊嵌して保持し、薄片を囲繞し当該薄片の移動可能範囲を可撓性の囲繞体が制限する。そのため、関節部材や当該関節部材を回動可能に連結する軸に薄片の一群を保持するために、囲繞体を貫通するパイプ等を設ける必要がない。そのため、囲繞体とパイプ等とを接合する必要がないので従来に比べて製造コストを低減することが可能となるとともに、囲繞体とパイプ等との接合部から空気漏れが起こることがないので従来に比べて耐久性を向上することができる。また、2つの関節部材がそれぞれ第1及び第2の保持体に取り外し可能に固定される。そのため、抗力付与具を関節部材から容易に脱着することができ、抗力付与具を容易に交換することができる。また、薄片の厚さ方向の両側から挟むように抗力付与具を関節部材に固定する必要がないため、従来に比べて全高を低くすることができ、小型化や軽量化が可能となる。
【0016】
請求項2に記載の関節構造によれば、第1の保持体に保持される薄片と、第2の保持体に保持される薄片とが、厚さ方向に交互に位置するように連接する。そのため、第1及び第2の保持体にそれぞれ保持される2つの群の薄片のみを、抗力付与具を構成する薄片とするので、関節構造の構成が簡易になり、小型化や軽量化がさらに可能となる。また、回動の中心が、2つの群の薄片の互いに連接する部分に位置することになり、関節部材の回動をさらに円滑に行うことが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の関節構造によれば、薄片を取り囲む空間と外部との連通する連通口を第1又は第2の保持体に設ける。そのため、囲繞体にチューブ等により連通口を設ける必要がないので、囲繞体とチューブ等との接合部から空気漏れが起こることがないので従来に比べて耐久性を向上することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の短下肢装具によれば、下腿部に装着される下腿部装着体と足底を載せる足底載置体とを接続する足継手として、請求項1から3の何れか1項に記載の関節構造を用いる。そのため、抗力付与具の交換が容易であるので、抗力の調整に手間がかからない。また、関節構造の製造コストを低減することが可能であるため、短下肢装具の製造コストを低減することができる。また、関節構造の耐久性が優れるため、短下肢装具の寿命を延ばすこととが可能となる。また、関節構造の小型化や軽量化が可能であるため、歩行動作に与える影響が低減し、生体との親和性が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に実施の形態に係る関節構造1は、図1から図3に示すように、回動可能に軸連結された2つの関節部材2,3と、当該関節部材2,3間の回動に対して抗力を付与させ得る抗力付与具4と、を備えている。
【0020】
関節部材2,3は、第1の関節部材2と第2の関節部材3とからなり、これらの関節部材2,3が軸5にて回動自在に連結されている。第1及び第2の関節部材2,3は、それぞれ回動自在に軸連結される関節体2a,3aと抗力付与具4を取り付けるための取付体2b,3bとから構成され、取付体2b,3bが関節体2a,3aにそれぞれ固定されている。ここでは、関節体2a,3a及び取付体2b,3bはステンレスやアルミニウム等の金属など剛性の高い材質からなり、ボルト2c,3cにより取付体2b,3bが関節体2a,3aに固定されている。第1の関節部材2の関節体2aには、貫通孔が形成されており、該貫通孔に内挿されるボールベアリングやニードルベアリング等の軸受5aを介して軸5が回動自在に挿通されている。一方、第2の関節部材3の関節体3aにはネジ孔が形成されており、該ネジ孔に軸5の端部に形成されたネジ部が螺結され、軸5が関節体3aに固定されている。関節体2aと関節体3aとの間には、軸5が挿通する平座金5bが配設されている。第1及び第2の関節部材2,3は、図示しない部材にそれぞれ固定する便宜を考慮して、関節体2a,3aの底面が同一面上に位置するように形成され、さらにネジ孔が貫設されている。
【0021】
抗力付与具4は、図4及び図5にその部分透視図を示すように、厚さ方向に連接する薄片6と、厚さ方向に並設された薄片6の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌してそれぞれ保持する2つの保持体7と、薄片6を囲繞し当該薄片6の移動可能範囲を制限する可撓性の囲繞体8(図4及び図5に2点鎖線にて示す。)と、備えている。
【0022】
各薄片6は、同形状の薄厚のシート状部材であり、ポリスチレン、ポリプロピレンや塩化ビニルなどの合成樹脂等からなる。その表裏面は、鋸歯状等の凹凸形状を形成することにより、摩擦係数を大きくすることが好ましい。薄片6は、例えば、一辺に半円を、当該一辺に対向する辺に矩形状の突片を備えた矩形状のものであるが、この形状に特に限定されるものではない。
【0023】
保持体7は、厚さ方向に並設された薄片6の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持するものであり、合成樹脂等の剛性の高い材質からなる。保持体7は、薄片6の突片より僅少に大きく形成された形状が、厚さ方向に貫設されており、該貫設された部分に薄片6の一群が遊嵌し、傾斜等することなく厚さ方向に移動可能に保持される。保持体7の幅は、薄片6の幅と略同一であることが好ましい。保持体7には、貫通孔が形成されており、図1から図3に示すように、該貫通孔を挿通するボルト9を関節部材2,3の取付体2b,3bのネジ孔に螺合させることにより取り外し可能に固定される。なお、関節構造1の全高を抑えるため、ボルト9の頭部が保持体7の上面から突出しないように、ボルト9の頭部を収容可能な凹陥部を設けることが好ましい。
【0024】
一方の保持体7に保持される一群の薄片6と、他方の保持体7に保持される一群の薄片6とが、厚さ方向に交互に(互い違いに)位置するように連接することが好ましい。交互に配置される薄片6は、その半円の中心が厚さ方向に略一致することが好ましい。
【0025】
囲繞体8は、薄片6を囲繞し当該薄片6の移動可能範囲を制限する可撓性の密着性の良好な薄いシート状部材であり、ゴム等の耐久性に優れ空気を透過させない変形容易な軟質素材からなる。囲繞体8は、その端部がそれぞれ保持体7の周面に渡って接着剤等により密着して固定されている。囲繞体8と2つの保持体7により密閉された断面略矩形状の空間Sが形成されており、当該空間S内に薄片6が収容され、薄片6を所定の相互関係に配設するとともにその自由な移動を所定の範囲内に規制している。薄片6の厚さ方向の合計厚さより空間Sの内高が大きく、空間Sの内圧が外部の大気圧と均衡している等所定以下の圧力である(以下、「常圧」という。)場合、空間S内に収容された各薄片6は、その間に隙間を有しており、その厚さ方向に移動可能となっている。なお、取付体2b,3bには、抗力付与具4の載置面に、囲繞体8と保持体7との接着部との干渉を回避する逃げ部を設けている。
【0026】
空間S内の内圧を変更することができる図示しない内圧変更手段が、空間S内と連通する連通口を有する細長い管状体(チューブ)8aによって接続されている。内圧変更手段は、例えば、空間S内の空気を出し入れ可能なポンプや、空間S内の空気を出すことが可能な排出ポンプ及び空間Sを外部に開放することにより外圧と均衡とする開放弁である。
【0027】
このように構成された関節構造1において、第1の関節部材2と第2の関節部材3とが、任意の外力によって軸5を回動中心として相対的に回動するとき、2つの保持体7がそれぞれ関節部材2,3の取付体2b,3bに固定されているため、2つの保持体7も同様に相対的に回動し、これに伴い各保持体7に保持される一群の薄片6も相対的に回動する。このとき、薄片6の半円の中心が回動の略中心となるので、薄片6との接触により囲繞体8が破損する恐れは減少されている。
【0028】
関節構造1は、空間Sの内圧を制御することによって、2つの関節部材2,3間の相対的に回動させる外力に対して抗力を付与することが可能となる。空間Sの内圧が大気圧と均衡している場合には、各薄片6間の接触面に摩擦力がほとんど生じず、外力に対して抗力を付与しない。一方、空間Sの内圧を負圧として各薄片6を密着させると、密着面に摩擦力が生じ、該摩擦力が前記外力に対する抗力となる。空間Sの内圧によって摩擦力が変化するので、空間Sの内圧を制御することによって、前記外力に対して抗力を可変的に付与することができる。
【0029】
空間Sが適量の空気で満たされて、内圧が常圧の場合においては、空間Sが一定容積に維持されて、前記したように、薄片6はその厚さ方向に移動可能な状態である。そのため、各薄片6間の接触面に摩擦力がほとんど生じず、2つの関節部材2,3間は回動自在であり、外力による回動に対する抗力をほとんど(僅かな摩擦抵抗を除き)付与しない。
【0030】
一方、空間Sの空気が流出されて、内圧が所定圧以下の負圧となった状態においては、空間Sの容積が収縮して、各薄片Sの表面と裏面とがそれぞれ密着し、これら密着面に摩擦力が生じ、該摩擦力が2つの関節部材2,3を相対的に回動させる外力に対する抗力を付与する。
【0031】
前記摩擦力は、それぞれ密着面に作用する法線方向の力(以下、法線力という。)に、密着面の摩擦係数を乗じたものであるから、法線力を制御することにより、該密着面に生じる摩擦力を制御することができる。すなわち、内圧を制御することにより、抗力を任意に変動させることができる。また、密着面の大きさを変更する、例えば、薄片6の枚数を変更する、薄片6の表面積を変更することにより、付与可能な抗力を変更することができる。また、密着面の摩擦係数を変更することにより、すなわち、薄片6の表裏面の表面粗さを変更することにより、付与可能な抗力を変更することができる。このように、薄片6の枚数や表面粗さ等を適宜変更することにより、適切な抗力を付与可能とすることが簡単にできる。
【0032】
以上説明したように、この関節構造1によれば、厚さ方向に並設された薄片6の一群を当該厚さ方向に移動可能に2つの保持体7がそれぞれ遊嵌して保持し、薄片6を囲繞し当該薄片6の移動可能範囲を可撓性の囲繞体8が制限する。そのため、関節部材2,3や当該関節部材2,3を回動可能に連結する軸5に薄片6を保持するために、上記従来の関節構造90のように、囲繞体8を貫通するパイプ等を設ける必要がない。そのため、囲繞体8とパイプ等とを接合する必要がないので従来に比べて製造コストを低減することが可能となるとともに、囲繞体8とパイプ等との接合部から空気漏れが起こることがないので従来に比べて耐久性を向上することができる。
【0033】
また、2つの関節部材2,3がそれぞれ保持体7に取り外し可能に固定される。そのため、抗力付与具4を関節部材2,3に対して容易に脱着することができ、抗力付与具4を容易に交換できる。そして、付与可能な最大抗力等の抗力の特性を、薄片6の枚数や摩擦係数を変更することにより、大きな変更幅の特性を自在に調整することができる。また、薄片6の枚数等が偏向することにより抗力付与具4の全高が変わっても取り付け互換性を確保することができる。また、薄片6の厚さ方向の両側から挟むように抗力付与具4を関節部材2,3に固定する必要がないため、従来に比べて全高を低くすることができ、小型化や軽量化が可能となる。
【0034】
なお、本実施の形態で示した関節構造は、本発明に係る関節構造の一態様にすぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、各保持体7が保持する一群の薄片6同士が交互に位置する場合、すなわち、並置する2群の薄片6からなる場合の例を示したが、並置する薄片が3群以上からなる場合であってもよい。例えば、図6に示すように、一方の保持体7に保持される一群の薄片6と、何れの保持体にも保持されない一群の長円状の薄片6Aと、他方の保持体7に保持される一群の薄片6と、を備え、長円状の薄片6Aがその表裏面にてそれぞれ1つの薄片6と隣接するように配置されているものであってもよい。囲繞体8Aがこれら全ての薄片6,6Aを囲繞することによりその移動可能範囲を規制し、長円状の薄片6Aも所定範囲内に移動が制限される。また、図7に示すように、一方の保持体7に保持される一群の薄片6と、何れの保持体にも保持されない一群の長円状の薄片6Bと、他方の保持体7に保持される一群の薄片6と、を備え、長円状の薄片6Bがその表裏面にてそれぞれ2つの薄片6に隣接するように配置されているものであってもよい。囲繞体8Bがこれら全ての薄片6,6Bを囲繞することによりその移動可能範囲を規制し、長円状の薄片6Bも所定範囲内に移動が制限される。
【0035】
また、抗力付与具4を上方から抑える押え具を設けてもよい。例えば、図8に示すように、押え具9Aの下面が抗力付与具4の保持体7の上面に接触するように、関節部材2´,3´の取付体2b´,3b´の天面に形成されたネジ孔にボルト9Bが螺結されて、押え具9が関節部材2´,3´に固定されている。これにより、抗力付与具4をより安定的に固定することができる。
【0036】
また、薄片6を取り囲む空間Sと外部との連通する連通口を保持体に設けてもよい。例えば、図9に示すように、保持体7Aは、薄片6を保持する面と外側に位置する側面とを連結する孔7aが形成され、該孔が空間Sと不図示の内圧変更手段と接続する連通口となっている。これにより、囲繞体8にチューブ等により連通口を設ける必要がないので、囲繞体8とチューブ等との接合部から空気漏れが起こることがなく、耐久性を向上することができる。
【0037】
また、図示しないが、関節部材2,3の関接体2a,3aと取付体2b,3bとを一体化してもよい。これにより、さらに関節構造1に薄厚化、軽量化が可能となる。また、関節部材2,3を抗力付与具4の一方の側(図1等における下側)だけではなく、両方の側から挟むように抗力付与具4を取り付けてもよい。これにより、さらに強度の向上が可能となる。また、複数の抗力付与具4を積み重ねるように取り付けてもよい。また、抗力付与具4の空間Sを複数に区分してそれぞれの内圧を調整するものであってもよい。これにより、さらに付与可能な抗力の微調整が可能となる。
【0038】
以下、本発明の実施形態に係る関節構造1を用いた短下肢装具としての短下肢装具10について説明する。この短下肢装具10は、図10に示すように、装着者Mの下腿部に装着される下腿部装着体11と、装着者Mの足底を載せる足底載置体12と、下腿部装着体11に対して足底載置体12を底屈及び背屈方向に回動(揺動)可能に連結する足継手としての関節構造1と、足底載置体12の接地面に設けられたポンプ(容積可変体)13と、を備えている。
【0039】
下腿部装着体11は、装着者Mの下腿部のふくらはぎ部周りを覆うように、合成樹脂材等の軽量で硬質な材質から一体的に薄厚に成形されるものであり、固定ベルト14によって装着者Mの下腿部に装着される。下腿部装着体11は関節構造1の第1の関節部材2に固定されている。具体的には、下腿部装着体11は、その下端部がボルトにより第1の関節部材2の関節体2aに固定されている。足底載置体12は、装着者Mの足底を載せることができ、かつ踵部周りを覆うように、足底載置体12と同様に、合成樹脂材等の軽量で硬質な材質から一体的に薄厚に成形されるものであり、固定ベルト15によって装着者Mの足部に装着される。足底載置体12は関節構造1の第2の関節部材3に固定されている。具体的には、足底載置体12は、その上端部がボルトにより第2の関節部材3の関節体3aに固定されている。
【0040】
ポンプ13は、内部空間に流出入する空気を透過させない素材からなり、足底載置体12の底面である接地面に設けられている。ポンプ13の内部空間は、その容積が外力により可変なものであり、抗力付与具4の空間Sと空気が流出入可能なようにチューブ16を介して連通している。ポンプ13は、例えば、その底部が平らな板状膜からなり、側部が蛇腹状の膜からなるものである。そして、ポンプ13は、装着者Mの体重を利用した足踏み式のポンプであり、装着者Mが歩行する際、足底載置体12の底面と地面との間に挟まれて密閉された内部空間の容積が圧縮されることにより内圧を高めることができる。なお、ポンプ13として電動ポンプ等を用いてもよい。
【0041】
以下、歩行動作に応じた短下肢装具10の動作について説明する。まず、足底載置体12が接地していないとき、ポンプ13の内部空間の容積は圧縮されず、その内圧は低い。そして、抗力付与具4の空間Sの内圧は負圧となっており、下腿部装着体11に対して足底載置体12が底屈及び背屈方向に回動する動きを拘束している。
【0042】
次に、踵部が接地したとき、ポンプ13の内部空間は足底載置体12の底面と地面との間に挟まれて踵部側から順次圧縮され、ポンプ13の内圧が除々に高まる。これにより、ポンプ13側からチューブ16を介して抗力付与具4の空間Sに空気が流入し、空間Sの内圧が除々に高くなり、抗力付与具4の各薄片6間における摩擦力が減少し、関節部材2,3にそれぞれ固定された下腿部装着体11と足底載置体12との間の回動に対する抗力が除々に弱まる。このようにして、足先の急激な垂れ下りを防止しつつ、踵部から足底全面に渡って滑らかに体重移動させるよう補助することができる。
【0043】
次に、爪先部が接地とした時、ポンプ13の内部空間は足底載置体12の底面と地面との間に挟まれて圧縮され、ポンプ13の内圧がさらに高まる。これにより、ポンプ13側からチューブ16を介して抗力付与具4の空間Sに空気がさらに流入し、空間Sの内圧が高くなって常圧となり、薄片6間の摩擦力が消滅し、関節部材2,3にそれぞれ固定された下腿部装着体11と足底載置体12とが回動自在となり、回動に対する抗力がなくなる。このようにして、足底載置体12の拘束を解除し、装着者Mの体重を利用し足底全面をうまく接地させるよう補助することができる。
【0044】
次に、踵部が離地した時、ポンプ13の内部空間は足底載置体12の底面と地面との間にて踵部側から開放されて踵部側から順次伸張し、ポンプ13の内圧が除々に低くなる。これにより、抗力付与具4の空間Sからチューブ16を介してポンプ13の内部空間に空気が流入し、空間Sの内圧が除々に低くなり、抗力付与具4の各薄片6間における摩擦力が増加し、回動に対する抗力が除々に強まる。このようにして、足先の急激な垂れ下りを防止しつつ、足底全面から爪先部に渡って滑らかに体重移動させるよう補助することができる。
【0045】
次に、爪先部が離地した時、抗力付与具4の空間Sの内圧が負圧のまま維持され、抗力付与具4の各薄片6間における摩擦力が大きく、回動に対する抗力が最大の状態となり、回動が拘束される。このようにして、足底載置体12を拘束し、足先が垂れ下がって地面に接触することを防止するよう補助することができる。
【0046】
以上説明したように、この短下肢装具10によれば、抗力付与具4の交換が容易であるので、抗力の調整に手間がかからない。また、関節構造1の製造コストを低減することが可能であるため、短下肢装具10の製造コストを低減することができる。また、関節構造1の耐久性が優れるため、短下肢装具10の寿命を延ばすこととが可能となる。また、関節構造1の小型化や軽量化が可能であるため、歩行動作に与える影響が低減し、生体との親和性が高くなる。
【0047】
また、歩行動作に応じた抗力を適宜付与して補助するので、装着者Mの歩行動作を改善させることができる。また、装着者Mの歩行動作によって、ポンプ13を動作させているので、ポンプ13を電力等により動作させる必要がないので、軽量化できる利点がある。
【0048】
なお、関節構造1の抗力付与具4の空間Sとポンプ13との間を流出入する空気の流量を調整する流量調整弁を設け、この流量調整弁を制御することにより、関節構造1の空間Sの内圧を調整して、足底載置体12の拘束を適宜調整するものであってもよい。また、踵部や爪先が接地しているか否かを検知するセンサ、抗力付与具4の空間Sやポンプ13の内部空間の圧力を検知するセンサを設け、このセンサから発信される検知信号を考慮して、流量制御弁の流量を調整してもよい。また、抗力付与具4の空間Sやポンプ13の内部空間と連通する内部空間を有し、流量制御弁等の弁を備えた補助タンクを設けてもよい。この場合、ポンプ13の内部空間の伸縮とは独立させて、空間Sの内圧を調整することが可能となり、装着者Mの歩行動作をさらに改善させることができる。なお、空気の代わりに、ヘリウムガス、アルゴンガス等の気体を用いてもよい。
【0049】
なお、本発明に係る短下肢装具は、本発明の実施の形態として示した短下肢装具10に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜設計変更できることは勿論である。例えば、膝関節の動きも代償する長下肢装具に関節構造1を用いたものであってもよい。さらに、本発明に係る短下肢装具は、障害をかかえる患者が歩行動作の際に補助具として用いることに限定されるものではなく、健常者がスポーツトレーニングを行なう際に用いるものであってもよい。例えば、各種運動動作に応じて足関節に作用する空気抵抗や水の流体抵抗等の負荷を抗力として付与することにより、仮想現実的にスポーツトレーニングを行なう擬似体験装置に本発明に係る短下肢装具を適用させることができる。また、歩行動作に応じて足関節に作用する負荷を抗力として適切に付与することにより、足関節周り等の筋肉を効果的に鍛える筋肉トレーニング装置に本発明に係る短下肢装具を適用させることができる。また、ハイカットシューズ等の運動トレーニング用の靴に内蔵させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る関節構造1を示し、(a)は斜視図、(b)は一部分解斜視図である。
【図2】関節構造1を示す分解斜視図である。
【図3】図1(a)におけるA−A断面図である。
【図4】(a)及び(b)は関節構造1の抗力付与具4を示す部分透視斜視図であり、(c)はその薄片を示す斜視図である。
【図5】(a)から(b)は関節構造1の抗力付与具4を示す部分透視上面図であり、(c)はその薄片を示す斜視図である。
【図6】(a)から(c)は、関節構造1の抗力付与具4の変形例を示す部分透視上面図である。
【図7】(a)から(c)は、関節構造1の抗力付与具4の他の変形例を示す部分透視上面図である。
【図8】関節構造1の変形例を示し、(a)は部分分解斜視図、(b)は断面図である。
【図9】関節構造1の抗力付与具4の他の変形例を示し、(a)は部分斜視図、(b)は部分透視上面図である。
【図10】本発明の実施の形態に短下肢装具10の外観構成を示す側面図である。
【図11】従来の関節構造90を示し、(a)は部分分解斜視図であり、(b)は側面図である。
【図12】従来の関節構造90の抗力付与具4を示し、(a)は解斜視図であり、(b)は部分分解透視斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 関節構造
2、3 関節部材
4 抗力付与具
5 軸
6 薄片
7 保持体
8 囲繞体
10 短下肢装具
11 下腿部装着体
12 足底載置体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの関節部材が回動可能に軸連結され、当該関節部材間の回動に対して抗力付与具により抗力を付与させ得る関節構造であって、
前記抗力付与具が、
厚さ方向に連接する薄片と、
厚さ方向に並設された前記薄片の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第1の保持体と、
厚さ方向に並設された前記薄片の他の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第2の保持体と、
前記薄片を囲繞し当該薄片の移動可能範囲を制限する可撓性の囲繞体と、備え、前記薄片を取り囲む空間の収縮により前記抗力を可変的に付与し、
前記2つの関節部材がそれぞれ前記第1及び第2の保持体に取り外し可能に固定されることを特徴とする関節構造。
【請求項2】
前記第1の保持体に保持される薄片と、前記第2の保持体に保持される薄片とが、厚さ方向に交互に位置するように連接することを特徴とする請求項1に記載の関節構造。
【請求項3】
前記薄片を取り囲む空間と外部との連通する連通口を前記第1又は第2の保持体に設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の関節構造。
【請求項4】
下腿部に装着される下腿部装着体と足底を載せる足底載置体とを接続する足継手として、請求項1から3の何れか1項に記載の関節構造を用いることを特徴とする短下肢装具。
【請求項1】
2つの関節部材が回動可能に軸連結され、当該関節部材間の回動に対して抗力付与具により抗力を付与させ得る関節構造であって、
前記抗力付与具が、
厚さ方向に連接する薄片と、
厚さ方向に並設された前記薄片の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第1の保持体と、
厚さ方向に並設された前記薄片の他の一群を当該厚さ方向に移動可能に遊嵌して保持する第2の保持体と、
前記薄片を囲繞し当該薄片の移動可能範囲を制限する可撓性の囲繞体と、備え、前記薄片を取り囲む空間の収縮により前記抗力を可変的に付与し、
前記2つの関節部材がそれぞれ前記第1及び第2の保持体に取り外し可能に固定されることを特徴とする関節構造。
【請求項2】
前記第1の保持体に保持される薄片と、前記第2の保持体に保持される薄片とが、厚さ方向に交互に位置するように連接することを特徴とする請求項1に記載の関節構造。
【請求項3】
前記薄片を取り囲む空間と外部との連通する連通口を前記第1又は第2の保持体に設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の関節構造。
【請求項4】
下腿部に装着される下腿部装着体と足底を載せる足底載置体とを接続する足継手として、請求項1から3の何れか1項に記載の関節構造を用いることを特徴とする短下肢装具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−313041(P2007−313041A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146100(P2006−146100)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、産業技術研究助成事業「空気圧可変要素を利用したインテリジェント足関節装具開発」、産業活力再生特別措置法第30条適用を受ける特許出願)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、産業技術研究助成事業「空気圧可変要素を利用したインテリジェント足関節装具開発」、産業活力再生特別措置法第30条適用を受ける特許出願)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】
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