説明

防塵マスク

【課題】装着者の口から容易に口当て部を外すことができる防塵マスクの提供。
【解決手段】装着者の口Moが当てられる口当て部12にフィルタ13が取り付けられ、この口当て部12を含む筒状の本体11で装着者の口Moから首Neまでを覆う防塵マスク10において、本体11は、可撓体からなり、口当て部12の上端を装着者の顎Chの下まで撓ませることができる。
【効果】口当て部12の上端を装着者の顎Chの下まで撓ませることで、装着者の口Moから口当て部12を外すことができる。このため、装着者の口Moから容易に口当て部12を外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防塵マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
研削作業等において、空気を濾過して粉塵等を防ぐために作業者等が着用して、鼻や口を覆う顔面マスクは周知である。これらのマスクは、作業者の鼻と口を覆う位置に保持するため、後頭部の周りに取付ける一つ又は複数のバンドを有するものや、マスクの左右端から、着用者の耳の後部周りへ延在する耳掛け用ループ取付具を備えているマスクが、一般的である。
【0003】
これらのマスクの着用では、休憩時において、水分補給や、リラックスをする場合には、鼻や口の覆われている部分を外したい場合がある。
この場合、後頭部のバンドに手を回してこれを外し、あるいは、左右の耳後部に手を回してこれを耳から外して、マスクを取外し、そのマスクを手に持ったまま、あるいは、どこか清潔な場所に一時おいておくこととなる。
【0004】
これらの休憩時の煩わしさを解消するため、例えば特許文献1においては、垂下バンドを有して、マスクが鼻や口を覆わない場合は、首の回りに保持できるものが提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1のものは、マスクを外すに当たっては、左右の耳後部に手を回してこれを耳から外す手間は変わらない。また、作業時、首周りに粉塵等の付着がある場合があり、マスク垂下状態では、それらの粉塵が、外されたマスクに付着しないように、気遣うことになる。
【0006】
特許文献2は、防寒用マスクである。口当て部から首を覆う首当て部が延設されているものである。
【0007】
例えばこれを、防塵マスクとして転用した場合、首周りに防塵等の付着は発生しない。しかし特許文献2のマスクの場合、図1のものにおいては、後頭部に手を回して係止部材を外して、顔面に当接している側を、外側にして晒して垂らすことになり、粉塵の付着への気遣いは、依然残る。
【0008】
図8のものは、左右側部において伸縮性部材が設けられ、径方向に拡張させて頭から被りやすくしているものである。この場合、径方向の伸縮で、頭から被るあるいは、頭上方向へ完全に脱ぐことを容易にしたとされているが、一時的な休憩時に、鼻や口を覆う部分を一時的にずらして開放させる等への配慮、工夫は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2001−507263公報
【特許文献2】特開昭62−243811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、一時的な休憩時に、鼻や口を覆う部分を一時的にずらして開放できると共に、当該部分の粉塵等の付着を阻止可能とした防塵マスクの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、装着者の口が当てられる口当て部にフィルタが取り付けられ、この口当て部を含む筒状の本体で装着者の口から首までを覆う防塵マスクにおいて、本体は、可撓体からなり、口当て部の上端を装着者の顎の下まで撓ませることができることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明では、本体は、伸縮性を有する素材が用いられることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明では、伸縮性を有する素材は、編み物であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、口当て部には、フィルタを着脱自在に掛り止めるための掛り止め部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、口当て部に開口を設け、且つ掛り止め部を本体の内周側に設けることで、フィルタを内周側から口当て部に向かって掛かり止め、フィルタの少なくとも一部が開口から露出されることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、本体に、口当て部を装着者へ密着させるための締め付け部材が取付けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項7に係る発明では、締め付け部材は、口当て部から装着者の後頭部に向かって延ばされ、装着者の後頭部を回しがけする紐状部材からなり、紐状部材が、本体に対して相対的に移動可能に取り付けられており、紐状部材を移動させることで、本体が収縮するように撓むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、本体は、可撓体からなり、口当て部の上端を装着者の顎の下まで撓ませることができる。口当て部の上端を装着者の顎の下まで撓ませることで、装着者の口から口当て部を外すことができる。このため、装着者の口から容易に口当て部を外すことができる。
【0019】
一方、本体は、装着者の口から首までを覆うので、防塵マスクの装着時は、口や鼻から首部分までが防塵可能となる。この為、口当て部を顎の下まで撓ませてもフィルターの顔面当接側への粉塵等の付着を阻止することが可能である。
以上から、一時的な休憩時に、鼻や口を覆う部分を一時的にずらして開放できると共に、当該部分の粉塵等の付着を阻止可能とした防塵マスクということができる。
【0020】
請求項2に係る発明では、本体は、伸縮性を有する素材が用いられる。本体が伸縮性を有するため、口当て部を口に当てる場合は本体が伸張し、口当て部を顎の下まで撓ませる場合は本体が収縮する。本体が伸縮することで、さらに容易に装着者の口から口当て部を外すことができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、伸縮性を有する素材は、編み物である。即ち、本体は編み物糸を編んでなる。編み物糸で編んだ本体が、装着者の口や首を覆うため、装着者は良好な装着感を得ることができる。
さらに、編み物は伸縮性に優れると共に保温性にも優れているので、寒冷地や寒冷時に好適である。
【0022】
請求項4に係る発明は、口当て部には、フィルタを着脱自在に掛り止めるための掛り止め部が設けられている。フィルタは口当て部に着脱自在に掛かり止められる。適切な時期に、フィルタのみを取り替えればよく、経済的である。
【0023】
請求項5に係る発明では、口当て部に開口を設け、且つ掛り止め部を内周側に設ける。内周側から開口に対して押すようにして、フィルタを口当て部に掛かり止める。このとき、フィルタの一部が開口から露出されるようにすることで、開口がフィルタの位置決めの役割を果たす。フィルタが開口によって位置決めされることで、フィルタの装着を容易に行うことができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、本体に、口当て部を装着者へ密着させるための締め付け部材が取付けられている。締め付け部材で、口当て部を装着者へ密着させる。口当て部に取り付けられるフィルタがより装着者に密着する。
【0025】
請求項7に係る発明では、締め付け部材は、口当て部から装着者の後頭部に向かって延ばされ、装着者の後頭部を回しがけする紐状部材からなる。紐状部材を移動させることで本体が収縮し、装着者にフィルタを密着させる。フィルタの装着者への密着性を高めるために、紐状部材を操作するだけでよく、有益である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1に係る防塵マスクの斜視図である。
【図2】フィルタの開口部への取付け方を説明する図である。
【図3】防塵マスクを装着した形態の側面図である。
【図4】防塵マスクを装着した形態の正面図である。
【図5】防塵マスクを顎の下に撓ませた形態の側面図である。
【図6】防塵マスクを顎の下に撓ませた形態の正面図である。
【図7】実施例2に係る防塵マスクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0028】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、防塵マスク10は、筒状の本体11と、この本体11の一部である口当て部12に取り付けられたフィルタ13と、このフィルタ13の上部15及び下部16を通り、フィルタ13を装着者に対して押付けることで密着させる締め付け部材としての紐状部材17、17とからなる。
【0029】
本体11は、毛糸、レース糸、絹糸、刺繍糸、リリヤン等、伸縮性を有する編み物糸を編んでなる。これらの素材を編んだ本体11は、可撓性を有する。即ち、本体11は、伸縮性を有する素材を用いた可撓体である。
【0030】
このような編み物の他にも、伸縮性を有する素材には、フェルトやギャザなどが適用できる。
編み物はこれらに比べて、伸縮性に優れ装着感もよく保温性を持たせることもできる。
【0031】
フィルタ13は、装着者が空気を吸込むための空気吸込み口22が、口当て部12の一部に設けられた開口24から外部に臨むようにして取付けられている。即ち、フィルタ13の一部は、開口24から露出されている。
このようなフィルタ13の取付け方について、次図で詳細に説明する。
【0032】
図2は、本体11の右断面視図とフィルタ13の正面図である。
図2に示すように、口当て部12の内周側には、フィルタ13を掛かり止めるための面ファスナ製の右側掛り止め部26R(Rは装着者から見て右を示す添え字。以下同じ。)が設けられている。
尚、図には表れないが、左側の同位置に左側掛かり止め部26L(Lは装着者から見て左を示す添え字である。以下同じ。)が設けられている。
【0033】
一方、フィルタ13の両側方であって、掛り止め部26に対応する位置に、面ファスナ27R、27Lが取付けられている。
【0034】
フィルタ13を本体11に取り付けるには、内周側から開口24に対して押すようにして、フィルタ13を口当て部12に掛かり止める。
より具体的には、面ファスナ27を掛り止め部26に向かって押すようにして掛かり止める。このとき、フィルタ13の一部が開口24から外部(図面左)に向かって露出されるようにすることで、開口24がフィルタ13の位置決めの役割を果たす。フィルタ13が開口24によって位置決めされることで、フィルタ13の装着を容易に行うことができる。
【0035】
加えて、フィルタ13は口当て部12に着脱自在に掛かり止められる。フィルター機能を維持するための適切な交換時期がきたら、フィルタ13のみを取り替えればよく経済的である。
【0036】
ここで、本体11は外周生地28と内周生地29との二重の生地からなる。この外周生地28と内周生地29との間に紐状部材17が通される。紐状部材17を引っ張った場合であっても、紐状部材17と装着者の間に内周生地29が挟まれているため、内周生地29がクッションの役割を果たす。
【0037】
さらに、紐状部材17を外周生地28で覆うことで、外部に露出する紐状部材17の長さを短くすることができる。紐状部材17をできるだけ外観に現さないようにすることで、防塵マスク10の外観性が高まる。
フィルタ13が取り付けられた防塵マスク10の装着の仕方について次図で詳細に説明する。
【0038】
図3に示すように、装着者Mnは、頭上から被るようにして防塵マスク10を装着する。このような防塵マスク10によれば、装着者の口Moから首Neまでを覆うことができる。このことにより、口Mo周りに飛散する粉塵のみならず、首Ne周りに向かって飛散する粉塵に対しても防塵の効果を得ることができる。
【0039】
防塵マスク10を被った後は、紐状部材17、17に取付けられたストッパ32のボタン33を押しながら、紐状部材17、17を矢印に示すよう引っ張る。これにより、本体11が撓みながら収縮され、フィルタ13が装着者Mnにより密着する。
【0040】
加えて、紐状部材17、17は、口当て部12から装着者の後頭部Baに向かって延ばされ、装着者の後頭部Baを回しがけする。紐状部材17、17を移動させる(引っ張る)ことで本体11が収縮し、装着者Mnにフィルタ13を密着させる。フィルタ13の装着者Mnへの密着性を高めるために、紐状部材17、17を操作するだけでよく、操作が簡単であり有益である。
【0041】
加えて、フィルタ13の上部15及び下部16から装着者の後頭部Baに向かって、紐状部材17、17を設けた。フィルタ13の中央(例えば、空気吸い込み口22の上面)を紐状部材17で押さえる場合に比べ、上部15及び下部16の両端から押さえた方が、よりフィルタ13を装着者Mnに密着させることができる。
また、ストッパ32を用いた構成とすることで、ボタン35を開放するだけで容易に密着状態を維持でき、また、ボタン35を押すだけで、簡単に緩めることができる。
【0042】
なお、紐状部材17は、ストッパ32で紐状部材17の移動を止めるものの他、装着者の後頭部Baで紐状部材17を結ぶようなものや、紐状部材17の先端に係合穴と係合部材を取り付けて係合させるものであってもよい。
このような防塵マスク10は、口当て部12の上部に鼻当て部19が設けられている。鼻当て部19について次図で詳細に説明する。
【0043】
図4に示すように、口当て部12の上部には、略への字状を呈し装着者の鼻に被せられる鼻当て部19が延ばされている。鼻当て部19を略への字状に上方に延ばすことで、装着者の視界を遮らずに装着者の鼻まで防塵マスク10を装着させることができる。
防塵マスク10の装着時は、口や鼻から首部分までの粉塵等の付着を阻止することができる。
【0044】
このような防塵マスク10の装着中に、例えば休憩をするために口当て部12を口から外したいことがある。このような場合の、防塵マスク10の使用の仕方について次図で詳細に説明する。
【0045】
図5に示すように、装着者の口Moから口当て部12を外す場合は、ストッパ32のボタン33を押しながら、矢印で示すようにストッパ32を移動させる。移動させることで、収縮されていた本体11が緩む。本体11を緩ませた後、装着者Mnは防塵マスク10を首Neに向かって下ろすと、口当て部12を容易に装着者の顎Chの下まで撓ませることができ、装着者の口Moから口当て部12を外すことができる。
【0046】
図6に示すように、本体11には伸縮性を有する素材が用いられる。本体11が伸縮性を有するため、口当て部12を口に当てる場合は本体11が伸張し、口当て部12を顎Chの下まで撓ませる場合は本体11が収縮する。本体11が伸縮することで、さらに容易に装着者の口Moから口当て部12を外すことができる。
【0047】
加えて、伸縮性を有する素材は、編み物である。即ち、本体11は編み物糸を編んでなる。編み物糸で編んだ本体11が、装着者の口Moや首Neを覆うため、装着者Mnは良好な装着感を得ることができる。
【0048】
さらに、防塵マスク10は、装着者の口Moから首Neまでを覆うことができる。即ち、首Neの周りへの粉塵の付着を防止している。これにより装着者Mnは、首Neの周りに飛散した粉塵がフィルタ13に付着することを気にせずに、顎Chの下に口当て部12を撓ませることができる。
このような防塵マスク10の別実施例について次図で説明する。
【実施例2】
【0049】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図7に示されるように、防塵マスク40は、口当て部41に開口(図1、符号24参照。)を有さない。
また、掛り止め部26がフィルタ13の上下を掛かり止めるように設けられている。
【0050】
このような防塵マスク40においても、口当て部41の上端を装着者の顎の下まで撓ませることで、装着者の口から口当て部41を外すことができる。このため、装着者の口から容易に口当て部41を外すことができる、という本発明の効果を得ることができる。
【0051】
さらに、開口を設けなかった場合は、装着者の口がフィルタ13及び口当て部41の両方で覆われる。このため、フィルタ13のみで覆われた場合に比べ、フィルターの交換時期を比較的長くでき、より経済的である。
【0052】
尚、本発明に係る防塵マスクでは、掛り止め部に面ファスナを用いたが、ボタンやフック等フィルタを掛かり止めることができるものであれば、これらのものに限られない。
また、掛かり止め位置は、実施例1は左右以外の例えば、上下位置であっても良く、実施例2で左右に配置しても良い。また、いずれの実施例においても、斜め四方の4箇所に配置しても良い。
尚、掛かり止め部は、左右対称に配置させることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の防塵マスクは、粉塵が飛散する研削作業に好適である。
【符号の説明】
【0054】
10、40…防塵マスク、11…本体(編み物)、12、41…口当て部、13…フィルタ、17…紐状部材(締め付け部材)、24…開口、26…掛り止め部、Mn…装着者、Mo…口、Ne…首、Ch…顎。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の口が当てられる口当て部にフィルタが取り付けられ、この口当て部を含む筒状の本体で前記装着者の口から首までを覆う防塵マスクにおいて、
前記本体は、可撓体からなり、前記口当て部の上端を前記装着者の顎の下まで撓ませることができることを特徴とする防塵マスク。
【請求項2】
前記本体は、伸縮性を有する素材が用いられることを特徴とする請求項1記載の防塵マスク。
【請求項3】
前記伸縮性を有する素材は、編み物であることを特徴とする請求項2記載の防塵マスク。
【請求項4】
前記口当て部には、前記フィルタを着脱自在に掛り止めるための掛り止め部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の防塵マスク。
【請求項5】
前記口当て部に開口を設け、且つ前記掛り止め部を前記本体の内周側に設けることで、
前記フィルタを前記内周側から前記口当て部に向かって掛かり止め、前記フィルタの少なくとも一部が前記開口から露出されることを特徴とする請求項4記載の防塵マスク。
【請求項6】
前記本体に、前記口当て部を前記装着者へ密着させるための締め付け部材が取付けられていることを特徴とする請求項2記載の防塵マスク。
【請求項7】
前記締め付け部材は、口当て部から前記装着者の後頭部に向かって延ばされ、前記装着者の後頭部を回しがけする紐状部材からなり、
前記紐状部材が、前記本体に対して相対的に移動可能に取り付けられており、
前記紐状部材を移動させることで、前記本体が収縮するように撓むことを特徴とする請求項6記載の防塵マスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−130872(P2011−130872A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291801(P2009−291801)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】