説明

防壁を備えた塗布器具

液状、ゲル状、ペースト状または粉末状の製品のための塗布器具が記載され、この塗布器具は、上記製品を自由形態で収容する収納部と、上記製品のための流出口とを備えている。本発明によれば、少なくとも一つの動作状態において、上記製品のための、上記収納部から上記流出口への直線的な通路を少なくとも部分的に封鎖する防壁を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状、ゲル状、ペースト状または粉末状製品、特に化粧品のための塗布器具(アプリケータ)に関し、上記製品を自由形態で収容する収納部と、上記製品の流出口とを備えた塗布器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した種類の塗布器具は公知である。特に上記製品が液状(低粘度)のみでなく、ゲル状、ペースト状または粉末状である場合に、旧来の塗布器具に関しては、この塗布器具が、特に製造者から販売店に輸送されるときに生じるような揺動を受けた場合に、上記製品が収納部から流出口に移動し、この流出口から流出することがしばしば観察されている。特に上記流出口から流出した製品の量は、その後の(適切な)使用に関して無駄な消費になる。さらにそれが塗布器具を汚すことにもなる。
【0003】
しかしながら、上記塗布器具をハンドバッグ等に入れて持ち回るとき、すなわち日常の行動において上記塗布器具が揺動を受けるという事実も問題である。より具体的に言うと、上記塗布器具がそのような揺動を受けた結果、上記製品が流出口から流出する可能性があることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、本明細書の冒頭に記載した種類の塗布器具を、それが揺動を受けた場合の有害な結末から防護されるように改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記課題は、少なくとも一つの動作状態において、上記製品のための、上記収納部から上記流出口への直線的な通路を、少なくとも部分的に封鎖する防壁によって解決される。
【0006】
本発明によれば、少なくとも一つの動作状態において、上記収納部から上記流出口への直線的な通路は少なくとも部分的に封鎖され、上記製品が上記収納部から上記流出口へ移動するためには、実質的に「回り道」をする必要がある。しかしながら、この塗布器具が揺動を受けた場合には、通常上記製品は一方向に移動する。したがって、この揺動は、製品が上記「回り道」をすることを意味しない。むしろ、塗布器具が揺動を受けた場合には、上記製品は、上記流出口への通路を見出すことなく、上記防壁に衝突したり、上記防壁を押圧したりするのみである。換言すれば、上記防壁は、例えば落下により揺動された場合に材料をそらすために、同時に材料の流動を禁止するために設けられるものである。
【0007】
上記防壁が必然的に伴う、すなわち上記製品が「回り道」をすることによる使用時における流動速度の増加、および流れをそらすことによる壁に対する摩擦の増加は、激しい乱流効果を、したがって製品の混合を生じさせ、これにより、生じる可能性がある製品の一部の分離傾向に対処することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態によれば、上記防壁は、少なくとも二つの動作状態、すなわち、上記収納部から上記流出口への通路を第1の程度に封鎖する第1の動作状態と、上記通路を上記第1の程度よりも少ない第2の程度に封鎖する第2の動作状態とを採ることが可能である。
【0009】
このような構造は、例えば製造者から販売店までの輸送に関しては、上記第1の動作状態に設定することによって、製品が上記流出口を通じて(偶発的に)流出することに対する特に高度の予防手段を備えることを可能にする。これに対して、製品が流出口から流出することに対するいくらか軽度の予防手段を備えた上記第2の動作状態は、日常生活に対して妥当である。
【0010】
本発明によれば、上記観点から、上記第1の動作状態においては、上記防壁が上記通路を完全に封鎖することを可能にする。このことは、例えば製造者から販売店までの輸送中に、流出口から製品が流出することに対する完璧な予防手段を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記防壁は、上記第1の動作状態から上記第2の動作状態へ変位可能であるが、その逆は不可能である。換言すれば、上記変位は非可逆的である。このような非可逆性は、上記第1の動作状態において、上記収納部から上記流出口までの上記製品の通路を上記防壁が完全に封鎖する場合に特に有用である。より具体的に言えば、誤動作を防止する。
【0012】
本発明によれば、上記防壁が上記直線的通路を横切る壁と、この壁を横切る通路とを備えていることが好ましい。
【0013】
この実施の形態は特に製作が簡単である。
【0014】
その観点から、上記第1の動作状態において上記通路が閉塞され、かつ上記第2の動作状態においては上記通路が部分的に開くようにすることができる。再び言うが、この実施の形態は、特に製作が簡単と見受けられる。
【0015】
本発明の特に好ましい実施の形態によれば、上記防壁は壷状の部品である。この種の部品は特に製作が簡単である。
【0016】
特に取扱いが簡単なことで好ましい本発明の実施の形態は、上記防壁が上記収納部に対して、および/または上記流出口に対して変位可能なことである。
【0017】
本発明の特に好ましい実施の形態によれば、上記防壁は、上記収納部から上記流出口へ向かう上記製品の移動方向へ摺動可能である。
【0018】
上述の摺動方向は、一般に鉛筆形状の塗布器具の長手方向である。本発明によれば、この場合の防壁を変位可能にしても、鉛筆の太さ方向の寸法の増大を必要としない。
【0019】
最後に、本発明によれば、上記防壁が、上記収納部内における圧力の上昇に応答して、上記第1の動作状態から上記第2の動作状態に向かう方向へ変位するのが好ましい。
【0020】
この構成は、上記製品の上記収納部から上記通路への移動が、通常は上記収納部内における圧力の上昇によって行なわれるので、事実上自動的構成と言える。したがって、この塗布器具が通常の態様で使用される場合に、上記第1の動作状態から上記第2の動作状態への上記防壁の自動的な変位が行なわれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の好ましい実施の形態による化粧品の塗布器具の第1の動作状態を示す概略的拡大縦断面図である。図2は、図1の塗布器具の第2の動作状態を示す。
【0023】
図示の塗布器具は、例えば口紅12のような液状化粧品が収容されている収納部10を備えている。この収納部10は、搬送路14を介して塗布器具の作用面16に連通している。作用面16には、そのうちの一つが符号18で示されている複数の流出口が設けられている。
【0024】
図1に示された動作状態(第1の動作状態)においては、収納部10の作用面16に向いている側が、開口部22に嵌められた栓(防壁)20によって閉塞されている。第1の動作状態においては、開口部22の内壁に対してシール関係にあるシーリング隆起24がシール状態を保っている。図1に示された第1の動作状態においては、栓20が収納部10を閉塞しているので、口紅12は作用面の流出口18を通過することが不可能である。
【0025】
図2に示された第2の動作状態においては、栓20が、図1に示された第1の動作状態に対して作用面16に向かう方向に変位される。この変位は、周囲に延びる突出部26が段部28に当接することによって制限される。
【0026】
第2の動作状態(図2)においては、栓20はもはや収納部10をシールしていない。特に栓20は、第2の動作状態において、収納部10から搬送路14を通じて流出口18に至る経路を開く通路30,32を備えている。この場合、第2の動作状態においては、通路30,32が通路22と部分的にのみオーバーラップするが、栓20は開口部22から僅かに突出するだけである。
【0027】
第2の動作状態においては、口紅12は、収納部10から流出口18までの経路を、通路30,32を通って「回り道」をする。この回り道により、流速および壁に対する栓20の摩擦が増大し、その結果、材料(口紅)に強い渦が生じて分離しがちな材料が混合される。
【0028】
収納部10内に圧力が加わると、口紅12は、収納部10から搬送路14を介して流出口18を備えた作用面16に運ばれる。栓20が第1の動作状態にあるときには、初めはこのような圧力は口紅12を移動させる原因にはならないが、栓20を図1に示された第1の動作状態から図2に示された第2の動作状態まで変位させる原因となる。このような圧力は、例えば回動機構(図示せず)の作動によっても発生させることができるが、より具体的に言うと、この圧力は、いわゆる最初の回転時に、すなわち、収納部10内の口紅12で満たされていないデッドスペースを無くす動作時に既に発生している。栓20が一旦第2の動作状態(図2)になると、通路30,32が存在しているので、栓20はもはや第1の動作状態(図1)には戻れない。換言すれば、栓20の第1の動作状態(図1)から第2の動作状態(図2)への変位は非可逆的である。
【0029】
第2の動作状態(図2)において、通路30,32は、口紅12が収納部10から流出口18に向かって移動するのを可能にはするが、壷状の栓20の底壁34は、この塗布器具が揺動された結果、口紅12が偶発的に収納部10から流出口18に移動するのを防止するのに十分である。より具体的に言うと、上記揺動は口紅12の直線的な移動の引金になるだけで、通路30,32を抜けて壷状の栓20の底壁34を巡る「回り道」を通る移動の引金にはならない。
【0030】
上述した本発明の特徴、請求項および図面は、個々に、または組み合わせて、本発明の種々の実施の形態を実施するために不可欠なものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の好ましい実施の形態による化粧品の塗布器具の第1の動作状態を示す概略的拡大縦断面図
【図2】図1の塗布器具の第2の動作状態を示す概略的拡大縦断面図
【符号の説明】
【0032】
10 収納部
12 口紅(製品)
14 搬送路
16 作用面
18 流出口
20 栓(防壁)
22 開口部
30,32 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状、ゲル状、ペースト状または粉末状の製品(12)のための塗布器具であって、
前記製品(12)が自由形態で収容される収納部(10)と、前記製品(12)のための流出口(18)とを備えたものにおいて、
少なくとも一つの動作状態において、前記製品(12)のための、前記収納部(10)から前記流出口(18)への直線的な通路を少なくとも部分的に封鎖する防壁(20)を備えていることを特徴とする塗布器具。
【請求項2】
前記防壁(20)は、前記収納部(10)から前記流出口(18)への通路を第1の程度に封鎖する第1の動作状態と、前記通路を前記第1の程度よりも少ない第2の程度に封鎖する第2の動作状態との、少なくとも二つの動作状態を採ることが可能なものであることを特徴とする請求項1記載の塗布器具。
【請求項3】
前記防壁(20)は、前記第1の動作状態において前記通路を完全に封鎖するものであることを特徴とする請求項2記載の塗布器具。
【請求項4】
前記防壁(20)は、前記第1の動作状態から前記第2の動作状態へ変位可能であるが、その逆は不可能なものであることを特徴とする請求項2または3記載の塗布器具。
【請求項5】
前記防壁(20)は、前記直線的な通路を横切る壁(34)と、該壁(34)を横切る通路(30,32)とを備えたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の塗布器具。
【請求項6】
前記通路(30,32)は、前記第1の動作状態においてにおいて閉塞され、かつ前記第2の動作状態において少なくとも部分的に開くものであることを特徴とする請求項5記載の塗布器具。
【請求項7】
前記防壁(20)は、壷形状を有するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の塗布器具。
【請求項8】
前記防壁(20)は、前記収納部(10)に対して、および/または前記流出口(18)に対して変位可能なものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の塗布器具。
【請求項9】
前記防壁(20)は、前記製品(12)のための、前記収納部(10)から前記流出口(18)への通路の方向へ摺動可能なものであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の塗布器具。
【請求項10】
前記防壁(20)は、前記収納部(10)内における圧力の上昇に応答して、前記第1の動作状態から前記第2の動作状態に向かう方向へ変位するものであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の塗布器具。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−528244(P2007−528244A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502314(P2007−502314)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005569
【国際公開番号】WO2005/118152
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(597139631)シュヴァン−スタビロ コスメティクス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (15)
【Fターム(参考)】