説明

防振ゴム組成物

【課題】低動倍率化を実現でき、耐久性等に優れるとともに、耐熱性が極めて高い防振ゴムを作り得ると同時に、その製造過程における加硫時のガス発生量を抑制することができる防振ゴム組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)成分とともに、下記の(B)、(C)および(D)成分を含有する防振ゴム組成物とする。
(A)ジエン系ゴム。
(B)カーボンブラック。
(C)モノメタクリル酸亜鉛を必須成分とする(メタ)アクリル酸モノマー。
(D)下記の(d1)および(d2)の少なくとも一つの吸着フィラー。
(d1)その組成に、ケイ素、アルミニウム、ナトリウム、カルシウムの四元素を全て含むゼオライト。
(d2)ハイドロタルサイト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ゴム組成物に関するものであり、詳しくは、自動車等のエンジンの支持機能および振動伝達を抑制するためのエンジンマウント等に使用される防振ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車には、振動や騒音の低減を目的として、防振ゴム組成物が用いられている。このような防振ゴム組成物には、その加硫体(防振ゴム)において、高剛性、高強度で、振動伝達の抑制が必要であることから、動倍率〔動的ばね定数(Kd)/静的ばね定数(Ks)〕の値を小さくすること(低動倍率化)が要求される。従来、この低動倍率化の対策としては、例えば、防振ゴム組成物において、補強剤としてカーボンブラックを用い、カーボンブラックの配合量や粒子径,ストラクチャー等の因子を制御することで対応している(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−269236号公報
【特許文献2】特開2002−241539号公報
【特許文献3】特開2005−113094号公報
【特許文献4】特開平8−269237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特に自動車等の用途において、防振ゴム組成物からなる防振ゴムには、耐熱性が要求される。従来、この種の防振ゴムの耐熱性を向上させる手法としては、防振ゴム組成物において、老化防止剤の添加量や加硫系の最適化により成立させるのが一般的である。
【0005】
しかしながら、上記のような従来の手法では、防振ゴムの耐久性や低動倍率化を阻害するおそれがある。そこで、このような問題を生じることなく耐熱性を向上させる手法として、本発明者らは、防振ゴム組成物において、アクリレートモノマーを含有させることを検討した。しかしながら、アクリレートモノマーは、加硫時にガスを発生させ、このことが、金型汚染の原因や、発泡による、防振ゴム組成物の融着不良、防振ゴム(加硫体)の接着不良を誘発するおそれがある。さらに、このような防振ゴムの発泡痕は、その防振ゴムの外観不良や亀裂の原因にもなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低動倍率化を実現でき、耐久性等に優れるとともに、耐熱性が極めて高い防振ゴムを作り得ると同時に、その製造過程における加硫時のガス発生量を抑制することができる防振ゴム組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の防振ゴム組成物は、下記の(A)成分とともに、下記の(B)、(C)および(D)成分を含有するという構成をとる。
(A)ジエン系ゴム。
(B)カーボンブラック。
(C)モノメタクリル酸亜鉛を必須成分とする(メタ)アクリル酸モノマー。
(D)下記の(d1)および(d2)の少なくとも一つの吸着フィラー。
(d1)その組成に、ケイ素,アルミニウム,ナトリウム,カルシウムの四元素を全て含むゼオライト。
(d2)ハイドロタルサイト。
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、防振ゴム組成物からなる防振ゴムの耐久性や低動倍率化を阻害することなく、耐熱性を飛躍的に向上させるのに、モノメタクリル酸亜鉛が非常に有効であることを突き止めた。しかしながら、モノメタクリル酸亜鉛は、加硫時におけるガス発生量が多く、そのため、先に述べたような発泡等の問題を生じる。そこで、本発明者らは、耐熱性を阻害することなく、モノメタクリル酸亜鉛から発生したガスを吸着させるためのフィラー(吸着フィラー)を、防振ゴム組成物に含有させることを想起し、各種実験を重ねた。その結果、ケイ素,アルミニウム,ナトリウム,カルシウムの四元素を全て含む特殊なゼオライト(d1)や、ハイドロタルサイト(d2)を、吸着フィラーとして含有させると、加硫時におけるガス発生量の抑制作用(ガス吸着作用)が高く、しかも、上記特定の吸着フィラーは、耐熱性を阻害しないことから、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の防振ゴム組成物は、ジエン系ゴム(A成分)とともに、カーボンブラック(B成分)と、モノメタクリル酸亜鉛等の(メタ)アクリル酸モノマー(C成分)と、特定の吸着フィラー(D成分)とを配合してなるものである。そのため、本発明の防振ゴム組成物は、低動倍率化を実現でき、耐久性等に優れるとともに、耐熱性が極めて高い防振ゴムを作り得ると同時に、その製造過程(加硫時)におけるガス発生量を抑制することができる。そして、上記ガス発生量の抑制により、金型汚染、発泡による防振ゴム(加硫体)の接着不良,外観不良,亀裂等を解消することができる。なお、上記特定の吸着フィラーによるガス発生量の抑制等は、比較的安価な改良手段であることから、本発明は、コスト面からも有用である。そして、上記各成分からなる本発明の防振ゴム組成物は、それから得られる防振ゴムの耐熱性が大幅に向上していることから、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等の防振ゴム材料として、好適に用いられる。それ以外に、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の用途にも用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0011】
本発明の防振ゴム組成物は、ジエン系ゴム(A成分)と、カーボンブラック(B成分)と、モノメタクリル酸亜鉛を必須成分とする(メタ)アクリル酸モノマー(C成分)と、特定の吸着フィラー(D成分)とを配合してなるものである。
【0012】
上記ジエン系ゴム(A成分)としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、強度や低動倍率化の点で、天然ゴムが好適に用いられる。
【0013】
つぎに、上記ジエン系ゴム(A成分)とともに用いられるカーボンブラック(B成分)としては、例えば、SAF級,ISAF級,HAF級,MAF級,FEF級,GPF級,SRF級,FT級,MT級等の種々のグレードのカーボンブラックが用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、コスト、耐久性等の点から、FEF級カーボンブラックが好適に用いられる。また、補強剤として、上記カーボンブラックとともに、シリカ、シランカップリング剤で表面処理されたシリカ、タルク等の補強剤を用いることもできる。この場合、各種ゴム特性の再現性、練りゴムの貯蔵安定性、コストの観点から、補強剤全体の80重量%以上がカーボンブラックであることが好ましい。
【0014】
上記カーボンブラック(B成分)の平均粒径(一次粒子径)は、補強性の観点から、20〜200nmの範囲が好ましい。
【0015】
ここで、上記カーボンブラック(B成分)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、10〜100部の範囲が好ましく、特に好ましくは、20〜70部の範囲である。すなわち、上記配合量が少なすぎると、一定水準の補強性を満足できなくなるからであり、逆に上記配合量が多すぎると、動倍率が高くなったり、粘度が上昇して加工性が悪化するといった問題が生じるからである。なお、上記のように、カーボンブラックとともに、シリカ、シランカップリング剤で表面処理されたシリカ、タルク等の補強剤を用いる場合においても、この範囲内で配合することが好ましい。
【0016】
つぎに、上記(A)および(B)成分とともに用いられる(メタ)アクリル酸モノマー(C成分)としては、モノメタクリル酸亜鉛を必須成分とする(メタ)アクリル酸モノマーが用いられる。すなわち、モノメタクリル酸亜鉛を必須成分とすることにより、耐熱性(特に熱老化防止効果)が飛躍的に向上するようになるからである。上記(C)成分の(メタ)アクリル酸モノマーは、モノメタクリル酸亜鉛のみからなるものであっても、モノメタクリル酸亜鉛と他の(メタ)アクリル酸モノマーとを併用してなるものであってもよいが、耐熱性(特に熱老化防止効果)の観点から、(メタ)アクリル酸モノマー(C成分)全体の50重量%以上がモノメタクリル酸亜鉛であることが好ましい。なお、上記の「(メタ)アクリル酸モノマー」とは、アクリル酸モノマー(アクリレートモノマー)あるいはメタクリル酸モノマー(メタクリレートモノマー)を意味する。そして、モノメタクリル酸亜鉛以外の(メタ)アクリル酸モノマーとしては、例えば、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、ステアリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、フェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、イソボニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、エトキシ化(2)ヒドロキシエチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、モノアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛、ジアクリル酸亜鉛等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸モノマー(C成分)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、0.5〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは、1〜6部の範囲である。すなわち、上記(メタ)アクリル酸モノマーの配合量が、上記範囲よりも少ないと、所望の熱老化防止効果が得られず、逆に上記範囲を超えると、ゴム組成物の架橋状態が変化し、防振性や耐へたり性が悪化するからである。
【0018】
つぎに、上記(A)〜(C)成分とともに用いられる特定の吸着フィラー(D成分)としては、その組成に、ケイ素(Si),アルミニウム(Al),ナトリウム(Na),カルシウム(Ca)の四元素を全て含むゼオライト(d1)や、ハイドロタルサイト(d2)といった吸着フィラーが用いられる。これらの吸着フィラー(d1)および(d2)は、単独で用いても、併せて用いてもよい。なお、一般的な吸着フィラーである酸化マグネシウムは、耐熱性を阻害するおそれがあるため、本発明の防振ゴム組成物には添加されない。また、一般的に、ゼオライトとは、二酸化ケイ素からなる結晶格子における、ケイ素元素の一部が、アルミニウム元素に置き換わり、結晶格子全体が負に帯電し、ナトリウム、カルシウム、カリウムといったカチオンを取込むことにより、電荷のバランスが取られてなるものをいい、天然ゼオライトの他、上記のような組成となるよう合成された合成ゼオライトが存在するが、本発明の防振ゴム組成物において配合されるゼオライト(d1)は、その組成が、ケイ素(Si),アルミニウム(Al),ナトリウム(Na),カルシウム(Ca)の四元素を全て含むものであることを要する。すなわち、これら四元素のうちのいずれかを含まない場合、加硫時にモノメタクリル酸亜鉛から大量に発生するガスの吸着効果(ガス発生量の抑制効果)に劣るからである。
【0019】
上記特定の吸着フィラー(D成分)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、2〜15部の範囲が好ましく、特に好ましくは、2〜10部の範囲である。すなわち、上記吸着フィラーの配合量が上記範囲よりも少ないと、所望のガス発生量抑制効果(発泡抑制効果等)が得られず、逆に上記範囲を超えると、動倍率が上がり、防振ゴム特性が悪化するからである。
【0020】
また、本発明の防振ゴム組成物においては、上記(A)〜(D)成分とともに、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、プロセスオイル等を必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
【0021】
上記加硫剤としては、例えば、硫黄(粉末硫黄,沈降硫黄,不溶性硫黄)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0022】
上記加硫剤の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、0.3〜7部の範囲が好ましく、特に好ましくは1〜5部の範囲である。すなわち、上記加硫剤の配合量が少なすぎると、充分な架橋構造が得られず、動倍率、耐へたり性が悪化する傾向がみられ、逆に加硫剤の配合量が多すぎると、耐熱性が低下する傾向がみられるからである。
【0023】
上記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、架橋反応性に優れる点で、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0024】
また、上記加硫促進剤の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、0.5〜7部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5部の範囲である。
【0025】
上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、特に架橋反応性に優れる点で、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)が好適に用いられる。
【0026】
上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等があげられる。
【0027】
上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。
【0028】
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0029】
また、上記老化防止剤の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、1〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは2〜5部の範囲である。
【0030】
上記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0031】
また、上記プロセスオイルの配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、1〜50部の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜30部の範囲である。
【0032】
本発明の防振ゴム組成物は、例えば、つぎのようにして調製することができる。すなわち、上記ジエン系ゴム(A成分)と、カーボンブラック(B成分)と、モノメタクリル酸亜鉛を必須成分とする(メタ)アクリル酸モノマー(C成分)と、特定の吸着フィラー(D成分)と、必要に応じて、老化防止剤,プロセスオイル等とを適宜に配合し、これらをバンバリーミキサー等を用いて、約50℃の温度から混練りを開始し、100〜160℃で、3〜5分間程度混練を行う。つぎに、これに、加硫剤,加硫促進剤等を適宜に配合し、オープンロールを用いて、所定条件(例えば、50℃×4分間)で混練することにより、防振ゴム組成物を調製することができる。その後、得られた防振ゴム組成物を、高温(150〜170℃)で5〜30分間、加硫することにより防振ゴムを作製することができる。
【0033】
そして、防振ゴムの材料として、上記のように本発明の防振ゴム組成物を用いることにより、加硫時におけるガス発生量が抑制されることから、加硫形成時に用いる金型の汚染を解消することができ、さらに、発泡による防振ゴム(加硫体)の接着不良,外観不良,亀裂等を解消することができるようになる。また、本発明の防振ゴム組成物は、低動倍率化を実現でき、耐久性等に優れるとともに、耐熱性が極めて高い防振ゴムを作り得ることができる。このことから、上記のように調製された本発明の防振ゴム組成物は、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等の防振ゴム材料として好ましく用いられる。
【実施例】
【0034】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0035】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0036】
〔NR〕
天然ゴム
【0037】
〔酸化亜鉛〕
酸化亜鉛2種、堺化学工業社製
【0038】
〔ステアリン酸〕
ルーナックS30、花王社製
【0039】
〔老化防止剤〕
オゾノン6C、精工化学社製
【0040】
〔ワックス〕
サンノック、大内新興化学社製
【0041】
〔鉱物油〕
ナフテン系オイル(出光興産社製、ダイアナプロセスNM−280)
【0042】
〔カーボンブラック〕
FEF級カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)
【0043】
〔吸着フィラー(i)〕
合成ゼオライト(ミズカシーブス5AP、水澤化学工業社製)
【0044】
〔吸着フィラー(ii)〕
ハイドロタルサイト(DHT4A、協和化学工業社製)
【0045】
〔吸着フィラー(iii)〕
酸化マグネシウム(協和マグ#150、協和化学工業社製)
【0046】
〔吸着フィラー(iv)〕
合成ゼオライト(ミズカライザーDS、水澤化学工業社製)
【0047】
〔吸着フィラー(v)〕
合成ゼオライト(ミズカシーブス EX122、水澤化学工業社製)
【0048】
〔吸着フィラー(vi)〕
合成ゼオライト(シルトンCPT−30、水澤化学工業社製)
【0049】
〔吸着フィラー(vii)〕
合成ゼオライト(ミズカライフP−1、水澤化学工業社製)
【0050】
〔吸着フィラー(viii)〕
合成ゼオライト(ミズカライフF−2G、水澤化学工業社製)
【0051】
〔吸着フィラー(ix)〕
合成ゼオライト(STABINEX CSH、水澤化学工業社製)
【0052】
〔加硫促進剤(i)〕
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)(ノクセラーCZ、大内新興化学社製)
【0053】
〔加硫促進剤(ii)〕
テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)(サンセラーTT、三新化学工業社製)
【0054】
〔加硫剤〕
硫黄、軽井沢精錬所社製
【0055】
〔(メタ)アクリル酸モノマー (i)〕
モノメタクリル酸亜鉛(PRO11542、サートマー社製)
【0056】
〔(メタ)アクリル酸モノマー (ii)〕
2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(スミカライザーGM、住友化学社製)
【0057】
〔(メタ)アクリル酸モノマー (iii)〕
ノニルフェノールEO変性アクリレート(アロニックスM111、東亞合成化学社製)
【0058】
なお、上記吸着フィラーとして準備した合成ゼオライト〔吸着フィラー(i),(iv),(v),(vi),(vii),(viii),(ix)〕のうち、その組成に、ケイ素(Si),アルミニウム(Al),ナトリウム(Na),カルシウム(Ca)の四元素を含む(○)か否(×)かは、下記の表1に示す通りである。
【0059】
【表1】

【0060】
〔実施例1〕
NR100部と、酸化亜鉛5部と、ステアリン酸1部と、老化防止剤2部と、ワックス2部と、鉱物油5部と、カーボンブラック30部と、吸着フィラー(i)2部と、(メタ)アクリル酸モノマー (i)3部とを配合し、これらを、バンバリーミキサーによって、140℃で5分間混練した。つぎに、これに、加硫剤1部と、加硫促進剤(i)2部と、加硫促進剤(ii)1部とを配合し、オープンロールを用いて、60℃で5分間混練することにより、防振ゴム組成物を調製した。
【0061】
〔実施例2〜11、比較例1〜8〕
後記の表2〜表4に示すように、各成分の配合量等を変更する以外は、実施例1に準じて、防振ゴム組成物を調製した。
【0062】
このようにして得られた実施例および比較例の防振ゴム組成物を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表2〜表4に併せて示した。
【0063】
〔初期物性〕
各防振ゴム組成物を、160℃×20分の条件でプレス成形(加硫)し、テストピースを作製した。そして、JIS K6251に準じて、その常態物性(TS,EB,Hs)を測定した。
TS:破断点強度(MPa)
EB:破断点伸び(%)
Hs:硬度(JIS A)
【0064】
〔耐熱性〕
上記作製のテストピースを、100℃の高温雰囲気下にて70時間放置した(熱老化試験)後、上記と同様にして、破断点伸び(EB)を測定した。そして、初期物性に対する、熱老化試験後の破断点伸びの低下率(ΔEB)を算出し、耐熱性評価において、その値が10%以下であるものを「○」と表記し、満たさないものを「×」と表記した。
【0065】
〔発泡性〕
各防振ゴム組成物の未加硫ゴムシート(厚み12.5mm)を、直径28mmの円筒状に打抜き、サンプルを作製し、そのサンプルを、150℃のオーブン内で20分間加熱(プレスをかけないで加硫)した。そして、上記サンプルの外観や、上記サンプルを切断した際の断面の発泡状態を目視評価した。すなわち、上記サンプルに発泡痕が顕著に確認されたものを×、若干の発泡痕は確認されたが、実使用に支障のない程度であったものを△、発泡痕が確認されなかったものを○と評価した。
【0066】
〔動特性(動倍率)〕
上記作製のテストピースの動ばね定数(Kd100)および静ばね定数(Ks)を、それぞれJIS K 6394に準じて測定した。その値をもとに、動倍率(Kd100/Ks)を算出した。
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
上記結果から、実施例のゴム組成物は、動特性に優れ、さらに、熱老化後であってもゴム物性(EB)が劣化しにくく、耐熱性に優れていることがわかる。また、実施例のゴム組成物は、加硫時におけるガス発生量の抑制効果が高く、加硫の際にプレス加硫しなくても、その加硫体に、発泡痕がみられなかった。
【0071】
これに対して、比較例1では、吸着フィラーが不含であり、加硫助剤であるモノメタクリル酸亜鉛[((メタ)アクリル酸モノマー (i) ]による発泡が起こり、その加硫体に、発泡痕が顕著にみられた。比較例2では、酸化マグネシウムにより、加硫時におけるガス発生量を抑制することができたが、その反面、耐熱性が悪化する結果となった。比較例3〜8では、実施例1と同様、吸着フィラーとして合成ゼオライトを用いているが、前記表1に示す通り、比較例3〜8で使用している合成ゼオライトは、実施例1で使用している合成ゼオライトのように、その組成に、ケイ素(Si),アルミニウム(Al),ナトリウム(Na),カルシウム(Ca)の四元素を全て含んでいない。そして、比較例4〜8のゴム組成物は、加硫時におけるガス発生量を抑制する効果が低く、実施例1に比べ、その加硫体に発泡痕が顕著にみられた。比較例3のゴム組成物は、比較例4〜8に比べると、加硫体の発泡は顕著に生じなかったが、耐熱性において、本発明の基準を満たすことができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の防振ゴム組成物は、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等の防振材料として好ましく用いられるが、それ以外にも、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の用途にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分とともに、下記の(B)、(C)および(D)成分を含有することを特徴とする防振ゴム組成物。
(A)ジエン系ゴム。
(B)カーボンブラック。
(C)モノメタクリル酸亜鉛を必須成分とする(メタ)アクリル酸モノマー。
(D)下記の(d1)および(d2)の少なくとも一つの吸着フィラー。
(d1)その組成に、ケイ素,アルミニウム,ナトリウム,カルシウムの四元素を全て含むゼオライト。
(d2)ハイドロタルサイト。
【請求項2】
上記(C)成分の配合量が、上記(A)成分100重量部に対して0.5〜10重量部である請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
上記(D)成分の配合量が、上記(A)成分100重量部に対して2〜15重量部である請求項1または2記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
上記(C)成分の(メタ)アクリル酸モノマー全体の50重量%以上がモノメタクリル酸亜鉛であり、50重量%以下が、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート,ステアリルメタクリレート,トリデシルメタクリレート,ポリプロピレングリコールモノメタクリレート,フェノールEO変性アクリレート,ノニルフェノールEO変性アクリレート,N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド,イソボニルメタクリレート,テトラヒドロフルフリルアクリレート,2−フェノキシエチルメタクリレート,エトキシ化(2)ヒドロキシエチルメタクリレート,イソデシルメタクリレート,モノアクリル酸亜鉛,ジメタクリル酸亜鉛およびジアクリル酸亜鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物の加硫体。

【公開番号】特開2012−82384(P2012−82384A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32402(P2011−32402)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】