防振架台
【課題】部材の剛性や強度でもって地震に対抗する耐震構造のみならず、地震による衝撃力を減退・緩和させる減震技術を付加した防振架台を提供する。
【解決手段】下枠14と、上枠16と、吸振体22と、下枠14と上枠16とを近接離間可能なように連結する上枠移動量規制部18とを具備する防振架台10において、上枠移動量規制部18の規制ボルト52のシャフト部分には、上枠16に設けられた上側挿通孔48周縁の底面又は下枠14に設けられた下側挿通孔34周縁の天面との間に所定のクリアランスCを形成し、規制ボルト52,下枠14及び上枠16よりも機械的強度の小さい材料からなり、地震の際には上側挿通孔48周縁の底面又は下側挿通孔34周縁の天面に衝突して自らが変形或いは破損することで地震のエネルギーを減衰させる1又は複数段の減震ワッシャ20が取り付けられていることを特徴とする。
【解決手段】下枠14と、上枠16と、吸振体22と、下枠14と上枠16とを近接離間可能なように連結する上枠移動量規制部18とを具備する防振架台10において、上枠移動量規制部18の規制ボルト52のシャフト部分には、上枠16に設けられた上側挿通孔48周縁の底面又は下枠14に設けられた下側挿通孔34周縁の天面との間に所定のクリアランスCを形成し、規制ボルト52,下枠14及び上枠16よりも機械的強度の小さい材料からなり、地震の際には上側挿通孔48周縁の底面又は下側挿通孔34周縁の天面に衝突して自らが変形或いは破損することで地震のエネルギーを減衰させる1又は複数段の減震ワッシャ20が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調室外機等のような振動発生機器で発生した振動を吸収する防振架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調室外機などの振動発生機器から発生する振動が基礎に伝わるのを防止するため、振動発生機器と基礎との間に防振架台が介装されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この防振架台は、基礎に取り付けられる矩形状の「下枠」と、振動発生機器が載置・固定される矩形状の「上枠」と、上枠および下枠の間に設けられ、上枠に載置・固定されるのが振動発生機器の荷重やその振動を受止める「吸振体」と、上枠と下枠との上下方向での配置間隔が設定範囲内に収まるよう規制すると共に、水平方向のズレ量を規制する「上枠移動量規制部」とで大略構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−304335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の防振架台では、上述したように上枠と下枠との上下方向での配置間隔が設定範囲内に収まるよう規制すると共に、水平方向のズレ量を規制する「上枠移動量規制部」が設けられているので、地震等が発生して防振架台に垂直或いは水平方向の大きな力が作用した際、上枠移動量規制部に損傷などがなく、この上枠移動量規制部が耐震構造として有効に機能している場合には、上枠に載置・固定した機器の転倒や転倒に伴なう機器の損傷などを防止することができる。
【0006】
しかしながら、想定の範囲を超えるような巨大地震が発生し、地震発生当初この上枠移動量規制部に過大な振動エネルギーが与えられて当該上枠移動量規制部が損傷を受け、耐震構造として有効に機能できなくなったような場合には、その後の大きな揺れによって上枠に載置・固定した機器が転倒し損傷するようになると云った虞がある。
【0007】
つまり、従来の防振架台は、上枠移動量規制部の剛性や強度でもって地震に対抗する耐震構造を有するものであったが、このような耐震構造は、想定される地震の規模に対応した剛性や強度の確保に偏向し、地震による衝撃力の緩和と云う観点に欠けていた。
【0008】
それゆえに、本発明の主たる課題は、部材の剛性や強度でもって地震に対抗する耐震構造のみならず、地震による衝撃力を減退・緩和させる減震技術を付加した防振架台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における第1の発明は、
(a)荷重担持面12に設置される下枠14と、搭載機器Mが載置される上枠16と、前記下枠14と前記上枠16との間に配置される吸振体22と、前記下枠14に対して前記上枠16の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部18とを具備する防振架台10において、
(b)前記上枠移動量規制部18が、
前記下枠14又は前記上枠16に設けられた規制ボルト52と、
前記下枠14又は前記上枠16に形成され、前記規制ボルト52が間隙dを持って挿通される挿通孔33と、
前記下枠14又は前記上枠16の挿通孔33を越えた規制ボルト52の先端部分に螺着された上枠移動量規制ナット60と、
前記規制ボルト52の前記下枠14と前記上枠16との間のシャフト部分に前記下枠14と前記上枠16に対してクリアランスCを持って保持され、規制ボルト52,下枠14及び上枠16よりも機械的強度の小さい減震ワッシャ20とで構成されている
(c)ことを特徴とする防振架台10である。
【0010】
前述のように地震の際に搭載機器Mを載置した上枠16に対して上下又は水平方向に下枠14が大きく揺れ動き、それに呼応して搭載機器Mを載置した上枠16も大きく揺れ動き、その間に下枠14や上枠16が減震ワッシャ20に激しく衝突することになるが、本発明では、規制ボルト52のシャフト部分に、上枠16と下枠14との間にクリアランスCを持って、規制ボルト52,下枠14及び上枠16よりも機械的強度の小さい減震ワッシャ20を螺装しているので、下枠14や上枠16の相対移動量が下枠14と上枠16との間の距離Tよりも遥かに狭いクリアランスCだけ移動しただけで減震ワッシャ20に激しく衝突することになる。このことは移動初期の加速度の小さい段階で減震ワッシャ20に衝突することを意味する。そしてその時に機械的強度の小さい減震ワッシャ20が変形或いは破損することによって、移動初期段階で地震のエネルギーを減殺させることになり、その結果、減震ワッシャ20が変形或いは破損後に規制ボルト52、下枠14及び上枠16に地震のエネルギーが加わったとしても、もはや該エネルギーは規制ボルト52、下枠14又は上枠16を破損させるだけのものは残っておらず、これらの地震による破損を免れさせることが出来る。
【0011】
本発明における第2の発明は、
(イ)荷重担持面12に設置される下枠14と、搭載機器Mが載置される上枠16と、前記下枠14と前記上枠16との間に配置される吸振体22と、前記下枠14に対して前記上枠16の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部18とを具備する防振架台10において、
(ロ)前記吸振体22が、
荷重担持用の圧縮コイルばね66と、
前記圧縮コイルばね66の下部に取り付けられる下部ケース62と、
前記圧縮コイルばね66の上部に取り付けられ、前記圧縮コイルばね66の上面および側面を覆う上部ケース64と、
前記圧縮コイルばね66の内側に遊挿された外筒70a、及び前記外筒70aの内面との間に前記上枠移動量規制部18が許容する水平方向の移動距離よりも狭いクリアランスC3を持って遊挿され、前記外筒70aよりも機械的強度の小さい内筒70bを備える減震機構70とで構成されている
(ニ)ことを特徴とする防振架台10である。
【0012】
上述した上枠移動量規制部18と同様に、想定の範囲を超えるような巨大地震が発生して防振架台10に過大な振動エネルギーが与えられると、上枠移動量規制部18のみならず吸振体22も損傷を受け、最悪の場合、防振機能を発揮することができなくなる。
【0013】
そこで、本発明では、吸振体22の内部に、圧縮コイルばね66の内側に遊挿された外筒70aと、外筒70aの内面との間に上枠移動量規制部18によって許容された移動距離よりも狭いクリアランスC3を持って遊挿され、外筒70aよりも機械的強度の小さい内筒70bとで構成された減震機構70を設けているので、地震の際、下枠14や上枠16の水平方向における相対移動量が上枠移動量規制部18によって許容された移動距離よりも狭いクリアランスC3だけ移動しただけで外筒70aと内筒70bとが激しく衝突することになる。このことは移動初期の加速度の小さい段階で減震機構70を構成する外筒70aと内筒70bとが衝突することを意味する。そしてその時に機械的強度の小さい内筒70bが変形或いは破損することによって、移動初期段階で水平方向の地震エネルギーを減殺させることになり、その結果、内筒70bが変形或いは破損後に規制ボルト52、下枠14及び上枠に水平方向の地震エネルギーが加わったとしても、もはや該エネルギーは規制ボルト52、下枠14又は上枠16を破損させるだけのものは残っておらず、これらの地震による破損を免れさせることが出来る。そして、規制ボルト52、下枠14及び上枠16が破損から守られている以上、吸振体22が損傷するのを確実に防止することができる。
【0014】
本発明における第3の発明は、
(1)荷重担持面12に設置される下枠14と、搭載機器Mが載置される上枠16と、前記下枠14と前記上枠16との間に配置される吸振体22と、前記下枠14に対して前記上枠16の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部18とを具備する防振架台10において、
(2)前記上枠移動量規制部18が、
前記下枠14又は前記上枠16に設けられた規制ボルト52と、
前記下枠14又は前記上枠16に形成され、前記規制ボルト52が間隙dを持って挿通される挿通孔33と、
前記下枠14又は前記上枠16の挿通孔33を越えた規制ボルト52の先端部分に螺着された上枠移動量規制ナット60と、
前記規制ボルト52の前記下枠14と前記上枠16との間のシャフト部分に前記下枠14と前記上枠16に対してクリアランスCを持って保持され、規制ボルト52、下枠14及び上枠16よりも機械的強度の小さい減震ワッシャ20とで構成されており、
(3)前記吸振体22が、
荷重担持用の圧縮コイルばね66と、
前記圧縮コイルばね66の下部に取り付けられる下部ケース62と、
前記圧縮コイルばね66の上部に取り付けられ、前記圧縮コイルばね66の上面および側面を覆う上部ケース64と、
前記圧縮コイルばね66の内側に遊挿された外筒70a、及び前記外筒70aの内面との間に前記上枠移動量規制部18が許容する水平方向の移動距離よりも狭いクリアランスC3を持って遊挿され、前記外筒70aよりも機械的強度の小さい内筒70bを備える減震機構70とで構成されている
(4)ことを特徴とする防振架台10である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防振架台では、想定の範囲を超えるような巨大地震が発生した場合であっても、減震ワッシャ或いは減震機構の減震作用によって過大な振動エネルギーが防振架台の主要構成部材である上枠移動量規制部や吸振体に直接作用するのを防止して、これら上枠移動量規制部や吸振体を正常に機能させることができるようになる。
【0016】
つまり、本発明の防振架台によれば、部材の剛性や強度でもって地震に対抗する耐震構造のみならず、地震による衝撃力を減退・緩和させる減震技術を付加した防振架台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における一実施例の防振架台の使用状態を示す正面図である。
【図2】本発明における一実施例の防振架台の使用状態を示す側面図である。
【図3】本発明における一実施例の防振架台を示す底面図である。
【図4】本発明における一実施例の防振架台を示す平面図である。
【図5】本発明における一実施例の防振架台のコーナー部を示す図で、(A)は平面図、(B)は(A)におけるB−B断面図ある。
【図6】吸振体を示す図で(A)は部分切欠断面図、(B)は(A)におけるB−B断面図ある。
【図7】本発明における他の実施例の防振架台のコーナー部を示す図で、(A)は平面図、(B)は(A)におけるB−B断面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。図1は本発明の一実施例の防振架台10の使用状態を示した正面図、図2は側面図、図3は底面図、図4は平面図である。これらの図が示すように、本実施例の防振架台10は、空調室外機などの振動発生機器から発生する振動が基礎に伝わるのを防止するため、振動発生機器などの機器Mと荷重担持面12との間に配設されるものであり、荷重担持面12に設置される下枠14と、機器Mが載置される上枠16と、下枠14と上枠16とを近接離間可能なように連結する上枠移動量規制部18と、上枠移動量規制部18に取り付けられる減震ワッシャ20と、下枠14と上枠16との間に配置される吸振体22とで大略構成されている。
【0019】
下枠14は、図3に示すように、断面略四角形の4本のパイプ状部材24と、パイプ状部材24同士をコーナー部で接合する4個のコーナー部材26とによって、略四角形に構成されている。パイプ状部材24の長さや太さは、上枠16に載置・固定される機器Mの種類、形状または重量等に応じて適宜変更可能であり、この実施例では、対向する2本のパイプ状部材24が、他の2本のパイプ状部材24よりも長くかつ幅広に形成されている。
【0020】
各コーナー部材26は、図3および図5(B)に示すように、一方のパイプ状部材24の端部が接合される第1接合板部28と、他方のパイプ状部材24の端部が接合される第2接合板部30と、第1接合板部28および第2接合板部30の上部においてこれらを連結する水平板部32とを有しており、水平板部32の中央部には、上枠移動量規制部18を構成する下側挿通孔34が形成されている。
【0021】
上枠16は、図4に示すように、断面略四角形の4本のパイプ状部材36と、パイプ状部材36同士をコーナー部で接合する4個のコーナー部材38とによって、略四角形に構成されている。パイプ状部材36の長さや太さは、パイプ状部材24と同様に、上枠16に載置・固定される機器Mの種類、形状または重量等に応じて適宜変更可能であり、この実施例では、対向する2本のパイプ状部材36が、他の2本のパイプ状部材36よりも長くかつ幅広に形成されている。
【0022】
各コーナー部材38は、図4および図5(B)に示すように、一方のパイプ状部材36の端部が接合される第1接合板部40と、他方のパイプ状部材36の端部が接合される第2接合板部42と、第1接合板部40および第2接合板部42の下部においてこれらを連結する水平板部44と、第1接合板部40および第2接合板部42の上部においてこれらを連結する補強板部46とを有しており、水平板部44の中央部には、上枠移動量規制部18を構成する上側挿通孔48が形成されている。
【0023】
上枠移動量規制部18は、図5に示すように、下枠16に形成された下側挿通孔34と、上枠18に形成された上側挿通孔48と、下側挿通孔34および上側挿通孔48を利用して装着される連結金具50とで構成されている。
【0024】
連結金具50は、下側挿通孔34と上側挿通孔48とに挿通される規制ボルト52を有しており、規制ボルト52の根元部分の形状は、非円形にて形成された下側挿通孔34にガタツキなく嵌合可能な多角形状に形成されている。なお、この規制ボルト52としては汎用の角根ボルトをそのまま用いることができる。また、この規制ボルト52はシャフト部分の先端側が挿通される上側挿通孔33(後述する例では下側挿通孔48;これらを総称する場合は単に「挿通孔33」と云う)との間に間隙dが設けられている。
【0025】
そして、規制ボルト52の外周には、図5(B)に示すように、ワッシャ54、固定ナット56、2枚の減震ワッシャ20、座金付ゴムブッシュ58および上枠移動量規制ナット60が規制ボルト52の根元からこの順で装着されている。
【0026】
ワッシャ54および固定ナット56は、ボルト頭部52aと協働して水平板部32を挟むことによって、規制ボルト52を下枠16に固定するものである。規制ボルト52の下枠16に対する固定部においては、規制ボルト52の非円形の根元部分が非円形の下側挿通孔34に嵌合されるので、規制ボルト52が振動等によって不所望に回転されることはなく、固定ナット56の緩みが生じる心配はない。また、規制ボルト52の根元部分は下側挿通孔34の内面によって真直ぐに支持されるので、規制ボルト52を上側挿通孔48の中心部に傾くことなく真直ぐに通すことが可能であり、規制ボルト52が上側挿通孔48の内面に接して防振特性が損なわれるのを防止できる。
【0027】
減震ワッシャ20は、水平板部44に設けられた上側挿通孔48の底面との間に所定のクリアランスC1をもって取り付けられており、この減震ワッシャ20が上側挿通孔48の底面に当接することによって、上枠18の下方向への振れを抑制すると共に、地震の際には上側挿通孔48の底面に衝突して自らが変形或いは破損することで地震のエネルギーを減衰させる部材である。
【0028】
この減震ワッシャ20は、例えばセラミックスやガラスなどの様にある一定以上の応力が加わると破壊されるクラッシャブルな材料や、変形し易い低降伏鋼或いはアルミ材等の金属材料などを用い、規制ボルト52、下枠14及び上枠16よりも機械的強度が小さくなるように構成されており、その中央部には雌ネジが形成され、この雌ネジが規制ボルト52の雄ネジに螺合されている。したがって、減震ワッシャ20を回転させることによって、その高さを簡単に調整することが可能である。
【0029】
なお、図1乃至図5に実施例では、上側挿通孔48の底面との間に所定のクリアランスC1をもって上段の減震ワッシャ20が取り付けられると共に、この上段の減震ワッシャ20から所定のクリアランスC2をもって下段の減震ワッシャ20が取り付けられている(これら間隔調節可能なクリアランスC1及びC2を総称する場合は単に「クリアランスC」と云う)。つまり、規制ボルト52に上下2段の減震ワッシャ20が取り付けられている場合を示しているが、規制ボルト52に取り付ける減震ワッシャ20の数は、上枠16に載置・固定される機器Mの種類、形状または重量等に応じて適宜変更可能であり、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0030】
また、本実施例では、減震ワッシャ20として、中央部に雌ネジが形成され、規制ボルト52の雄ネジに螺合する構造のものを示しているが、この減震ワッシャ20は、規制ボルト52のシャフトの所定部分に保持できるものであれば、その構造は如何なるものであってもよく、例えば中心部にボルト挿通孔が穿設され、上下両面をナットで挟んで固定するような構造のものであってもよい。
【0031】
上枠移動量規制ナット60は、規制ボルト52から上枠16が離脱するのを防止するとともに、上枠16の上方向への振れを抑制するものであり、座金付ゴムブッシュ58は、上枠18の水平板部44と上枠移動量規制ナット60との間において緩衝材として機能するものである。座金付ゴムブッシュ58は、座金部58aの下面にゴム部58bを取り付けた構造を有しており、座金部58aによってゴム部58bの撓みが抑制され、上枠18の上方向への振れが抑制される。
【0032】
吸振体22は、振動発生機器から上枠16に伝わった振動や基礎から下枠14に伝わった外乱などを吸収する機能を有するものであり、図6に示すように、下枠14におけるパイプ状部材24の上部に嵌着される下部ケース62と、上枠16におけるパイプ状部材36の下部を支持する上部ケース64と、下端が下部ケース62に固定され、かつ、上端が上部ケース64に固定された圧縮コイルばね66と、圧縮コイルばね66に接触する粘弾性片を有するサージング防止部材68と、後述する減震機構70とで構成されている。そして、本実施例では、下枠14の長辺を構成するパイプ状部材24と上枠16の長辺を構成するパイプ状部材36との間に、合計4個の防振部材22が配置されている。
【0033】
減震機構70は、下端が下部ケース62に固定され圧縮コイルばね66の内側に遊挿される外筒70aと、上端が上部ケース64に固定され外筒70aの内面との間に上枠移動量規制部18が許容する水平方向の移動距離よりも狭い所定のクリアランスC3を持って遊挿され、外筒70aよりも機械的強度の小さい内筒70bとで構成されており、地震の際には外筒70aと内筒70bとが衝突してこれらが変形或いは破損することで地震のエネルギーを減衰させる部材である。このように自らが変形或いは破損することによって地震のエネルギーを減衰させる内筒70bは、上述した減震ワッシャ20と同様に、例えばセラミックスやガラスなどの様にある一定以上の応力が加わると破壊されるクラッシャブルな材料や、変形し易い低降伏鋼或いはアルミ材等の金属材料などで構成されている。
【0034】
なお、この実施例では、外筒70aの下端が下部ケース62に固定され、内筒70bの上端が上部ケース64に固定される場合を示したが、この外筒70aと内筒70bの天地を入れ替えるようにしてもよい。
【0035】
以上のように構成された防振架台10を使用する際には、図1及び2に示すように、下枠14が荷重担持面12にアンカーボルト等によって固定され、上枠16の上面に振動発生機器などの機器Mが載置され、この機器Mがボルト等によって上枠16に固定される。そして、吸振体22の振動吸収機能を有効に発揮させるために、減震ワッシャ20及び上枠移動量規制ナット60の高さが調整される。つまり、図5に示すように、上枠16の水平板部44の底面と上段の減震ワッシャ20との間に所定のクリアランスC1(一例を挙げると、厚さ2mmの減震ワッシャ20を用いた場合に2mm程度のクリアランスC1を設ける)が確保される。また、上段と下段の減震ワッシャ20の間にも上記クリアランスC1と同程度のクリアランスC2を設けるようにする。
【0036】
以上のようにクリアランスCが確保された防振架台10において、通常時には、振動発生機器が発する振動や基礎からの外乱などは吸振体22によって吸収され防振機能が発揮されている。そして巨大な地震等によって上枠16に載置された機器Mが過剰に振動すると、上述したように減震ワッシャ20や減震機構70が破損或いは変形することで地震の振動エネルギーが減衰され、上枠移動量規制部18や吸振体22が損傷するのを防止することができる。
【0037】
なお、上述の実施例では、規制ボルト52を下枠14の水平板部32に固定する例を示しているが、図7に示すように、規制ボルト52を上枠16の水平板部44に固定してもよい。この場合には、上枠16の上側挿通孔48が規制ボルト52の根元部に嵌合することになると共に、減震ワッシャ20と下側挿通孔34の天面との間に所定のクリアランスC1を設けることになる。
【0038】
また、減震ワッシャ20と減震機構70とを同時に用いる場合を示しているが、想定する地震の規模などに応じて、減震ワッシャ20又は減震機構70のいずれか一方を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…防振架台
12…荷重担持面
14…下枠
16…上枠
18…上枠移動量規制部
20…減震ワッシャ
22…吸振体
24,36…パイプ状部材
26,38…コーナー部材
32,44…水平板部
33…挿通孔
34…下側挿通孔
46…補強板材
48…上側挿通孔
50…連結金具
52…規制ボルト
56…固定ナット
58…座金付ゴムブッシュ
60…上枠移動量規制ナット
62…下部ケース
64…上部ケース
66…圧縮コイルばね
68…サージング防止部材
70…減震機構
70a…外筒
70b…内筒
M…機器
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調室外機等のような振動発生機器で発生した振動を吸収する防振架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調室外機などの振動発生機器から発生する振動が基礎に伝わるのを防止するため、振動発生機器と基礎との間に防振架台が介装されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この防振架台は、基礎に取り付けられる矩形状の「下枠」と、振動発生機器が載置・固定される矩形状の「上枠」と、上枠および下枠の間に設けられ、上枠に載置・固定されるのが振動発生機器の荷重やその振動を受止める「吸振体」と、上枠と下枠との上下方向での配置間隔が設定範囲内に収まるよう規制すると共に、水平方向のズレ量を規制する「上枠移動量規制部」とで大略構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−304335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の防振架台では、上述したように上枠と下枠との上下方向での配置間隔が設定範囲内に収まるよう規制すると共に、水平方向のズレ量を規制する「上枠移動量規制部」が設けられているので、地震等が発生して防振架台に垂直或いは水平方向の大きな力が作用した際、上枠移動量規制部に損傷などがなく、この上枠移動量規制部が耐震構造として有効に機能している場合には、上枠に載置・固定した機器の転倒や転倒に伴なう機器の損傷などを防止することができる。
【0006】
しかしながら、想定の範囲を超えるような巨大地震が発生し、地震発生当初この上枠移動量規制部に過大な振動エネルギーが与えられて当該上枠移動量規制部が損傷を受け、耐震構造として有効に機能できなくなったような場合には、その後の大きな揺れによって上枠に載置・固定した機器が転倒し損傷するようになると云った虞がある。
【0007】
つまり、従来の防振架台は、上枠移動量規制部の剛性や強度でもって地震に対抗する耐震構造を有するものであったが、このような耐震構造は、想定される地震の規模に対応した剛性や強度の確保に偏向し、地震による衝撃力の緩和と云う観点に欠けていた。
【0008】
それゆえに、本発明の主たる課題は、部材の剛性や強度でもって地震に対抗する耐震構造のみならず、地震による衝撃力を減退・緩和させる減震技術を付加した防振架台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における第1の発明は、
(a)荷重担持面12に設置される下枠14と、搭載機器Mが載置される上枠16と、前記下枠14と前記上枠16との間に配置される吸振体22と、前記下枠14に対して前記上枠16の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部18とを具備する防振架台10において、
(b)前記上枠移動量規制部18が、
前記下枠14又は前記上枠16に設けられた規制ボルト52と、
前記下枠14又は前記上枠16に形成され、前記規制ボルト52が間隙dを持って挿通される挿通孔33と、
前記下枠14又は前記上枠16の挿通孔33を越えた規制ボルト52の先端部分に螺着された上枠移動量規制ナット60と、
前記規制ボルト52の前記下枠14と前記上枠16との間のシャフト部分に前記下枠14と前記上枠16に対してクリアランスCを持って保持され、規制ボルト52,下枠14及び上枠16よりも機械的強度の小さい減震ワッシャ20とで構成されている
(c)ことを特徴とする防振架台10である。
【0010】
前述のように地震の際に搭載機器Mを載置した上枠16に対して上下又は水平方向に下枠14が大きく揺れ動き、それに呼応して搭載機器Mを載置した上枠16も大きく揺れ動き、その間に下枠14や上枠16が減震ワッシャ20に激しく衝突することになるが、本発明では、規制ボルト52のシャフト部分に、上枠16と下枠14との間にクリアランスCを持って、規制ボルト52,下枠14及び上枠16よりも機械的強度の小さい減震ワッシャ20を螺装しているので、下枠14や上枠16の相対移動量が下枠14と上枠16との間の距離Tよりも遥かに狭いクリアランスCだけ移動しただけで減震ワッシャ20に激しく衝突することになる。このことは移動初期の加速度の小さい段階で減震ワッシャ20に衝突することを意味する。そしてその時に機械的強度の小さい減震ワッシャ20が変形或いは破損することによって、移動初期段階で地震のエネルギーを減殺させることになり、その結果、減震ワッシャ20が変形或いは破損後に規制ボルト52、下枠14及び上枠16に地震のエネルギーが加わったとしても、もはや該エネルギーは規制ボルト52、下枠14又は上枠16を破損させるだけのものは残っておらず、これらの地震による破損を免れさせることが出来る。
【0011】
本発明における第2の発明は、
(イ)荷重担持面12に設置される下枠14と、搭載機器Mが載置される上枠16と、前記下枠14と前記上枠16との間に配置される吸振体22と、前記下枠14に対して前記上枠16の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部18とを具備する防振架台10において、
(ロ)前記吸振体22が、
荷重担持用の圧縮コイルばね66と、
前記圧縮コイルばね66の下部に取り付けられる下部ケース62と、
前記圧縮コイルばね66の上部に取り付けられ、前記圧縮コイルばね66の上面および側面を覆う上部ケース64と、
前記圧縮コイルばね66の内側に遊挿された外筒70a、及び前記外筒70aの内面との間に前記上枠移動量規制部18が許容する水平方向の移動距離よりも狭いクリアランスC3を持って遊挿され、前記外筒70aよりも機械的強度の小さい内筒70bを備える減震機構70とで構成されている
(ニ)ことを特徴とする防振架台10である。
【0012】
上述した上枠移動量規制部18と同様に、想定の範囲を超えるような巨大地震が発生して防振架台10に過大な振動エネルギーが与えられると、上枠移動量規制部18のみならず吸振体22も損傷を受け、最悪の場合、防振機能を発揮することができなくなる。
【0013】
そこで、本発明では、吸振体22の内部に、圧縮コイルばね66の内側に遊挿された外筒70aと、外筒70aの内面との間に上枠移動量規制部18によって許容された移動距離よりも狭いクリアランスC3を持って遊挿され、外筒70aよりも機械的強度の小さい内筒70bとで構成された減震機構70を設けているので、地震の際、下枠14や上枠16の水平方向における相対移動量が上枠移動量規制部18によって許容された移動距離よりも狭いクリアランスC3だけ移動しただけで外筒70aと内筒70bとが激しく衝突することになる。このことは移動初期の加速度の小さい段階で減震機構70を構成する外筒70aと内筒70bとが衝突することを意味する。そしてその時に機械的強度の小さい内筒70bが変形或いは破損することによって、移動初期段階で水平方向の地震エネルギーを減殺させることになり、その結果、内筒70bが変形或いは破損後に規制ボルト52、下枠14及び上枠に水平方向の地震エネルギーが加わったとしても、もはや該エネルギーは規制ボルト52、下枠14又は上枠16を破損させるだけのものは残っておらず、これらの地震による破損を免れさせることが出来る。そして、規制ボルト52、下枠14及び上枠16が破損から守られている以上、吸振体22が損傷するのを確実に防止することができる。
【0014】
本発明における第3の発明は、
(1)荷重担持面12に設置される下枠14と、搭載機器Mが載置される上枠16と、前記下枠14と前記上枠16との間に配置される吸振体22と、前記下枠14に対して前記上枠16の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部18とを具備する防振架台10において、
(2)前記上枠移動量規制部18が、
前記下枠14又は前記上枠16に設けられた規制ボルト52と、
前記下枠14又は前記上枠16に形成され、前記規制ボルト52が間隙dを持って挿通される挿通孔33と、
前記下枠14又は前記上枠16の挿通孔33を越えた規制ボルト52の先端部分に螺着された上枠移動量規制ナット60と、
前記規制ボルト52の前記下枠14と前記上枠16との間のシャフト部分に前記下枠14と前記上枠16に対してクリアランスCを持って保持され、規制ボルト52、下枠14及び上枠16よりも機械的強度の小さい減震ワッシャ20とで構成されており、
(3)前記吸振体22が、
荷重担持用の圧縮コイルばね66と、
前記圧縮コイルばね66の下部に取り付けられる下部ケース62と、
前記圧縮コイルばね66の上部に取り付けられ、前記圧縮コイルばね66の上面および側面を覆う上部ケース64と、
前記圧縮コイルばね66の内側に遊挿された外筒70a、及び前記外筒70aの内面との間に前記上枠移動量規制部18が許容する水平方向の移動距離よりも狭いクリアランスC3を持って遊挿され、前記外筒70aよりも機械的強度の小さい内筒70bを備える減震機構70とで構成されている
(4)ことを特徴とする防振架台10である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防振架台では、想定の範囲を超えるような巨大地震が発生した場合であっても、減震ワッシャ或いは減震機構の減震作用によって過大な振動エネルギーが防振架台の主要構成部材である上枠移動量規制部や吸振体に直接作用するのを防止して、これら上枠移動量規制部や吸振体を正常に機能させることができるようになる。
【0016】
つまり、本発明の防振架台によれば、部材の剛性や強度でもって地震に対抗する耐震構造のみならず、地震による衝撃力を減退・緩和させる減震技術を付加した防振架台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における一実施例の防振架台の使用状態を示す正面図である。
【図2】本発明における一実施例の防振架台の使用状態を示す側面図である。
【図3】本発明における一実施例の防振架台を示す底面図である。
【図4】本発明における一実施例の防振架台を示す平面図である。
【図5】本発明における一実施例の防振架台のコーナー部を示す図で、(A)は平面図、(B)は(A)におけるB−B断面図ある。
【図6】吸振体を示す図で(A)は部分切欠断面図、(B)は(A)におけるB−B断面図ある。
【図7】本発明における他の実施例の防振架台のコーナー部を示す図で、(A)は平面図、(B)は(A)におけるB−B断面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。図1は本発明の一実施例の防振架台10の使用状態を示した正面図、図2は側面図、図3は底面図、図4は平面図である。これらの図が示すように、本実施例の防振架台10は、空調室外機などの振動発生機器から発生する振動が基礎に伝わるのを防止するため、振動発生機器などの機器Mと荷重担持面12との間に配設されるものであり、荷重担持面12に設置される下枠14と、機器Mが載置される上枠16と、下枠14と上枠16とを近接離間可能なように連結する上枠移動量規制部18と、上枠移動量規制部18に取り付けられる減震ワッシャ20と、下枠14と上枠16との間に配置される吸振体22とで大略構成されている。
【0019】
下枠14は、図3に示すように、断面略四角形の4本のパイプ状部材24と、パイプ状部材24同士をコーナー部で接合する4個のコーナー部材26とによって、略四角形に構成されている。パイプ状部材24の長さや太さは、上枠16に載置・固定される機器Mの種類、形状または重量等に応じて適宜変更可能であり、この実施例では、対向する2本のパイプ状部材24が、他の2本のパイプ状部材24よりも長くかつ幅広に形成されている。
【0020】
各コーナー部材26は、図3および図5(B)に示すように、一方のパイプ状部材24の端部が接合される第1接合板部28と、他方のパイプ状部材24の端部が接合される第2接合板部30と、第1接合板部28および第2接合板部30の上部においてこれらを連結する水平板部32とを有しており、水平板部32の中央部には、上枠移動量規制部18を構成する下側挿通孔34が形成されている。
【0021】
上枠16は、図4に示すように、断面略四角形の4本のパイプ状部材36と、パイプ状部材36同士をコーナー部で接合する4個のコーナー部材38とによって、略四角形に構成されている。パイプ状部材36の長さや太さは、パイプ状部材24と同様に、上枠16に載置・固定される機器Mの種類、形状または重量等に応じて適宜変更可能であり、この実施例では、対向する2本のパイプ状部材36が、他の2本のパイプ状部材36よりも長くかつ幅広に形成されている。
【0022】
各コーナー部材38は、図4および図5(B)に示すように、一方のパイプ状部材36の端部が接合される第1接合板部40と、他方のパイプ状部材36の端部が接合される第2接合板部42と、第1接合板部40および第2接合板部42の下部においてこれらを連結する水平板部44と、第1接合板部40および第2接合板部42の上部においてこれらを連結する補強板部46とを有しており、水平板部44の中央部には、上枠移動量規制部18を構成する上側挿通孔48が形成されている。
【0023】
上枠移動量規制部18は、図5に示すように、下枠16に形成された下側挿通孔34と、上枠18に形成された上側挿通孔48と、下側挿通孔34および上側挿通孔48を利用して装着される連結金具50とで構成されている。
【0024】
連結金具50は、下側挿通孔34と上側挿通孔48とに挿通される規制ボルト52を有しており、規制ボルト52の根元部分の形状は、非円形にて形成された下側挿通孔34にガタツキなく嵌合可能な多角形状に形成されている。なお、この規制ボルト52としては汎用の角根ボルトをそのまま用いることができる。また、この規制ボルト52はシャフト部分の先端側が挿通される上側挿通孔33(後述する例では下側挿通孔48;これらを総称する場合は単に「挿通孔33」と云う)との間に間隙dが設けられている。
【0025】
そして、規制ボルト52の外周には、図5(B)に示すように、ワッシャ54、固定ナット56、2枚の減震ワッシャ20、座金付ゴムブッシュ58および上枠移動量規制ナット60が規制ボルト52の根元からこの順で装着されている。
【0026】
ワッシャ54および固定ナット56は、ボルト頭部52aと協働して水平板部32を挟むことによって、規制ボルト52を下枠16に固定するものである。規制ボルト52の下枠16に対する固定部においては、規制ボルト52の非円形の根元部分が非円形の下側挿通孔34に嵌合されるので、規制ボルト52が振動等によって不所望に回転されることはなく、固定ナット56の緩みが生じる心配はない。また、規制ボルト52の根元部分は下側挿通孔34の内面によって真直ぐに支持されるので、規制ボルト52を上側挿通孔48の中心部に傾くことなく真直ぐに通すことが可能であり、規制ボルト52が上側挿通孔48の内面に接して防振特性が損なわれるのを防止できる。
【0027】
減震ワッシャ20は、水平板部44に設けられた上側挿通孔48の底面との間に所定のクリアランスC1をもって取り付けられており、この減震ワッシャ20が上側挿通孔48の底面に当接することによって、上枠18の下方向への振れを抑制すると共に、地震の際には上側挿通孔48の底面に衝突して自らが変形或いは破損することで地震のエネルギーを減衰させる部材である。
【0028】
この減震ワッシャ20は、例えばセラミックスやガラスなどの様にある一定以上の応力が加わると破壊されるクラッシャブルな材料や、変形し易い低降伏鋼或いはアルミ材等の金属材料などを用い、規制ボルト52、下枠14及び上枠16よりも機械的強度が小さくなるように構成されており、その中央部には雌ネジが形成され、この雌ネジが規制ボルト52の雄ネジに螺合されている。したがって、減震ワッシャ20を回転させることによって、その高さを簡単に調整することが可能である。
【0029】
なお、図1乃至図5に実施例では、上側挿通孔48の底面との間に所定のクリアランスC1をもって上段の減震ワッシャ20が取り付けられると共に、この上段の減震ワッシャ20から所定のクリアランスC2をもって下段の減震ワッシャ20が取り付けられている(これら間隔調節可能なクリアランスC1及びC2を総称する場合は単に「クリアランスC」と云う)。つまり、規制ボルト52に上下2段の減震ワッシャ20が取り付けられている場合を示しているが、規制ボルト52に取り付ける減震ワッシャ20の数は、上枠16に載置・固定される機器Mの種類、形状または重量等に応じて適宜変更可能であり、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0030】
また、本実施例では、減震ワッシャ20として、中央部に雌ネジが形成され、規制ボルト52の雄ネジに螺合する構造のものを示しているが、この減震ワッシャ20は、規制ボルト52のシャフトの所定部分に保持できるものであれば、その構造は如何なるものであってもよく、例えば中心部にボルト挿通孔が穿設され、上下両面をナットで挟んで固定するような構造のものであってもよい。
【0031】
上枠移動量規制ナット60は、規制ボルト52から上枠16が離脱するのを防止するとともに、上枠16の上方向への振れを抑制するものであり、座金付ゴムブッシュ58は、上枠18の水平板部44と上枠移動量規制ナット60との間において緩衝材として機能するものである。座金付ゴムブッシュ58は、座金部58aの下面にゴム部58bを取り付けた構造を有しており、座金部58aによってゴム部58bの撓みが抑制され、上枠18の上方向への振れが抑制される。
【0032】
吸振体22は、振動発生機器から上枠16に伝わった振動や基礎から下枠14に伝わった外乱などを吸収する機能を有するものであり、図6に示すように、下枠14におけるパイプ状部材24の上部に嵌着される下部ケース62と、上枠16におけるパイプ状部材36の下部を支持する上部ケース64と、下端が下部ケース62に固定され、かつ、上端が上部ケース64に固定された圧縮コイルばね66と、圧縮コイルばね66に接触する粘弾性片を有するサージング防止部材68と、後述する減震機構70とで構成されている。そして、本実施例では、下枠14の長辺を構成するパイプ状部材24と上枠16の長辺を構成するパイプ状部材36との間に、合計4個の防振部材22が配置されている。
【0033】
減震機構70は、下端が下部ケース62に固定され圧縮コイルばね66の内側に遊挿される外筒70aと、上端が上部ケース64に固定され外筒70aの内面との間に上枠移動量規制部18が許容する水平方向の移動距離よりも狭い所定のクリアランスC3を持って遊挿され、外筒70aよりも機械的強度の小さい内筒70bとで構成されており、地震の際には外筒70aと内筒70bとが衝突してこれらが変形或いは破損することで地震のエネルギーを減衰させる部材である。このように自らが変形或いは破損することによって地震のエネルギーを減衰させる内筒70bは、上述した減震ワッシャ20と同様に、例えばセラミックスやガラスなどの様にある一定以上の応力が加わると破壊されるクラッシャブルな材料や、変形し易い低降伏鋼或いはアルミ材等の金属材料などで構成されている。
【0034】
なお、この実施例では、外筒70aの下端が下部ケース62に固定され、内筒70bの上端が上部ケース64に固定される場合を示したが、この外筒70aと内筒70bの天地を入れ替えるようにしてもよい。
【0035】
以上のように構成された防振架台10を使用する際には、図1及び2に示すように、下枠14が荷重担持面12にアンカーボルト等によって固定され、上枠16の上面に振動発生機器などの機器Mが載置され、この機器Mがボルト等によって上枠16に固定される。そして、吸振体22の振動吸収機能を有効に発揮させるために、減震ワッシャ20及び上枠移動量規制ナット60の高さが調整される。つまり、図5に示すように、上枠16の水平板部44の底面と上段の減震ワッシャ20との間に所定のクリアランスC1(一例を挙げると、厚さ2mmの減震ワッシャ20を用いた場合に2mm程度のクリアランスC1を設ける)が確保される。また、上段と下段の減震ワッシャ20の間にも上記クリアランスC1と同程度のクリアランスC2を設けるようにする。
【0036】
以上のようにクリアランスCが確保された防振架台10において、通常時には、振動発生機器が発する振動や基礎からの外乱などは吸振体22によって吸収され防振機能が発揮されている。そして巨大な地震等によって上枠16に載置された機器Mが過剰に振動すると、上述したように減震ワッシャ20や減震機構70が破損或いは変形することで地震の振動エネルギーが減衰され、上枠移動量規制部18や吸振体22が損傷するのを防止することができる。
【0037】
なお、上述の実施例では、規制ボルト52を下枠14の水平板部32に固定する例を示しているが、図7に示すように、規制ボルト52を上枠16の水平板部44に固定してもよい。この場合には、上枠16の上側挿通孔48が規制ボルト52の根元部に嵌合することになると共に、減震ワッシャ20と下側挿通孔34の天面との間に所定のクリアランスC1を設けることになる。
【0038】
また、減震ワッシャ20と減震機構70とを同時に用いる場合を示しているが、想定する地震の規模などに応じて、減震ワッシャ20又は減震機構70のいずれか一方を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…防振架台
12…荷重担持面
14…下枠
16…上枠
18…上枠移動量規制部
20…減震ワッシャ
22…吸振体
24,36…パイプ状部材
26,38…コーナー部材
32,44…水平板部
33…挿通孔
34…下側挿通孔
46…補強板材
48…上側挿通孔
50…連結金具
52…規制ボルト
56…固定ナット
58…座金付ゴムブッシュ
60…上枠移動量規制ナット
62…下部ケース
64…上部ケース
66…圧縮コイルばね
68…サージング防止部材
70…減震機構
70a…外筒
70b…内筒
M…機器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重担持面に設置される下枠と、搭載機器が載置される上枠と、前記下枠と前記上枠との間に配置される吸振体と、前記下枠に対して前記上枠の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部とを具備する防振架台において、
前記上枠移動量規制部が、
前記下枠又は前記上枠に設けられた規制ボルトと、
前記下枠又は前記上枠に形成され、前記規制ボルトが間隙を持って挿通される挿通孔と、
前記下枠又は前記上枠の挿通孔を越えた規制ボルトの先端部分に螺着された上枠移動量規制ナットと、
前記規制ボルトの前記下枠と前記上枠との間のシャフト部分に前記下枠と前記上枠に対してクリアランスを持って保持され、規制ボルト、下枠及び上枠よりも機械的強度の小さい減震ワッシャとで構成されていることを特徴とする防振架台。
【請求項2】
荷重担持面に設置される下枠と、搭載機器が載置される上枠と、前記下枠と前記上枠との間に配置される吸振体と、前記下枠に対して前記上枠の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部とを具備する防振架台において、
前記吸振体が、
荷重担持用の圧縮コイルばねと、
前記圧縮コイルばねの下部に取り付けられる下部ケースと、
前記圧縮コイルばねの上部に取り付けられ、前記圧縮コイルばねの上面および側面を覆う上部ケースと、
前記圧縮コイルばねの内側に遊挿された外筒、及び前記外筒の内面との間に前記上枠移動量規制部が許容する水平方向の移動距離よりも狭いクリアランスを持って遊挿され、前記外筒よりも機械的強度の小さい内筒を備える減震機構とで構成されていることを特徴とする防振架台。
【請求項3】
荷重担持面に設置される下枠と、搭載機器が載置される上枠と、前記下枠と前記上枠との間に配置される吸振体と、前記下枠に対して前記上枠の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部とを具備する防振架台において、
前記上枠移動量規制部が、
前記下枠又は前記上枠に設けられた規制ボルトと、
前記下枠又は前記上枠に形成され、前記規制ボルトが間隙を持って挿通される挿通孔と、
前記下枠又は前記上枠の挿通孔を越えた規制ボルトの先端部分に螺着された上枠移動量規制ナットと、
前記規制ボルトの前記下枠と前記上枠との間のシャフト部分に前記下枠と前記上枠に対してクリアランスを持って保持され、規制ボルト、下枠及び上枠よりも機械的強度の小さい減震ワッシャとで構成されており、
前記吸振体が、
荷重担持用の圧縮コイルばねと、
前記圧縮コイルばねの下部に取り付けられる下部ケースと、
前記圧縮コイルばねの上部に取り付けられ、前記圧縮コイルばねの上面および側面を覆う上部ケースと、
前記圧縮コイルばねの内側に遊挿された外筒、及び前記外筒の内面との間に前記上枠移動量規制部が許容する水平方向の移動距離よりも狭いクリアランスを持って遊挿され、前記外筒よりも機械的強度の小さい内筒を備える減震機構とで構成されていることを特徴とする防振架台。
【請求項1】
荷重担持面に設置される下枠と、搭載機器が載置される上枠と、前記下枠と前記上枠との間に配置される吸振体と、前記下枠に対して前記上枠の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部とを具備する防振架台において、
前記上枠移動量規制部が、
前記下枠又は前記上枠に設けられた規制ボルトと、
前記下枠又は前記上枠に形成され、前記規制ボルトが間隙を持って挿通される挿通孔と、
前記下枠又は前記上枠の挿通孔を越えた規制ボルトの先端部分に螺着された上枠移動量規制ナットと、
前記規制ボルトの前記下枠と前記上枠との間のシャフト部分に前記下枠と前記上枠に対してクリアランスを持って保持され、規制ボルト、下枠及び上枠よりも機械的強度の小さい減震ワッシャとで構成されていることを特徴とする防振架台。
【請求項2】
荷重担持面に設置される下枠と、搭載機器が載置される上枠と、前記下枠と前記上枠との間に配置される吸振体と、前記下枠に対して前記上枠の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部とを具備する防振架台において、
前記吸振体が、
荷重担持用の圧縮コイルばねと、
前記圧縮コイルばねの下部に取り付けられる下部ケースと、
前記圧縮コイルばねの上部に取り付けられ、前記圧縮コイルばねの上面および側面を覆う上部ケースと、
前記圧縮コイルばねの内側に遊挿された外筒、及び前記外筒の内面との間に前記上枠移動量規制部が許容する水平方向の移動距離よりも狭いクリアランスを持って遊挿され、前記外筒よりも機械的強度の小さい内筒を備える減震機構とで構成されていることを特徴とする防振架台。
【請求項3】
荷重担持面に設置される下枠と、搭載機器が載置される上枠と、前記下枠と前記上枠との間に配置される吸振体と、前記下枠に対して前記上枠の上下及び水平方向の移動量を規制する上枠移動量規制部とを具備する防振架台において、
前記上枠移動量規制部が、
前記下枠又は前記上枠に設けられた規制ボルトと、
前記下枠又は前記上枠に形成され、前記規制ボルトが間隙を持って挿通される挿通孔と、
前記下枠又は前記上枠の挿通孔を越えた規制ボルトの先端部分に螺着された上枠移動量規制ナットと、
前記規制ボルトの前記下枠と前記上枠との間のシャフト部分に前記下枠と前記上枠に対してクリアランスを持って保持され、規制ボルト、下枠及び上枠よりも機械的強度の小さい減震ワッシャとで構成されており、
前記吸振体が、
荷重担持用の圧縮コイルばねと、
前記圧縮コイルばねの下部に取り付けられる下部ケースと、
前記圧縮コイルばねの上部に取り付けられ、前記圧縮コイルばねの上面および側面を覆う上部ケースと、
前記圧縮コイルばねの内側に遊挿された外筒、及び前記外筒の内面との間に前記上枠移動量規制部が許容する水平方向の移動距離よりも狭いクリアランスを持って遊挿され、前記外筒よりも機械的強度の小さい内筒を備える減震機構とで構成されていることを特徴とする防振架台。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図6】
【公開番号】特開2013−53661(P2013−53661A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191829(P2011−191829)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000224994)特許機器株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000224994)特許機器株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
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