防曇装置および防曇ミラー装置
【課題】親水膜をコーティングした素子の表面に付着した水が該表面の下部に流れて該表面下部に溜まるのを防止する。
【解決手段】親水膜をコーティングした素子を保持する枠部材の下面にパイプを配置して、素子表面下部に溜まる水を吸い込んで排水する。親水膜をコーティングした素子を保持する枠部材の下縁部に孔を開けて、素子表面下部に溜まる水を吸い込んで排水する。親水膜をコーティングした素子の外周縁部下端面に対向してその下方に空隙を隔てて外枠を配置し、素子表面下部に溜まる水を引き込んで排水する。
【解決手段】親水膜をコーティングした素子を保持する枠部材の下面にパイプを配置して、素子表面下部に溜まる水を吸い込んで排水する。親水膜をコーティングした素子を保持する枠部材の下縁部に孔を開けて、素子表面下部に溜まる水を吸い込んで排水する。親水膜をコーティングした素子の外周縁部下端面に対向してその下方に空隙を隔てて外枠を配置し、素子表面下部に溜まる水を引き込んで排水する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面に親水膜を形成した防曇素子を具えた防曇装置に関し、防曇素子の表面に雨水等の水が溜まるのを防止したものである。また、この発明は、表面に親水膜を形成したミラーを具えた防曇ミラー装置に関し、ミラーの表面に雨水等の水が溜まるのを防止したものである。また、参考発明は、外気に露出する表面を有するレンズ、光透過性フード、光学フィルター、ミラー等の光学素子と、該光学素子を保持する枠部材とを具備するレンズ装置、光透過性フード装置、光学フィルター装置、ミラー装置等の光学装置に関し、光学素子と枠部材との境界部分に雨水等の水が溜まって、光学素子を介して得られる画像に、溜まった水が映り込んだり、光学素子を介して得られる画像がゆがんだりするのを防止したものである。
【背景技術】
【0002】
車載バックカメラや屋外監視カメラ等の屋外で使用されるカメラにおいては、雨天時に、外気に露出する光学素子(レンズ、あるいは、その前面に配置される光透過性フードや光学フィルター等)の表面に水滴が付着すると、映像が不鮮明になる問題がある。そこで、従来より、レンズ表面に付着した水滴を除去する技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、レンズをその光軸を回転軸として回転させて、レンズ表面に付着した水滴を、遠心力により外側に排出して除去する技術が開示されている。ところが、特許文献1記載の技術では、レンズを回転駆動するための機構が必要であり、構成が複雑になる問題があった。
【0003】
また、車両用アウターミラーの表面に付着する水滴を除去する技術として、特許文献2,3に記載されたものがあった。これは、車両用アウターミラーの表面に多孔質シリカ等の親水膜をコーティングすることにより、ミラー表面に付着した水が水滴として留まらないようにしたものである。この技術を応用して、レンズ表面に親水膜をコーティングすれば、特許文献1記載の技術のような複雑な構造を用いることなくレンズ表面に付着した水滴を除去することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−287151号公報
【特許文献2】特開平8−11631号公報
【特許文献3】特開平10−36144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レンズ、あるいは、その前面に配置される光透過性フードや光学フィルター等の光学素子の表面に親水膜をコーティングすると、雨天時に、該光学素子の表面に当たって付着した雨水は、該表面で水滴として留まらずに、該表面に沿って下方に流れ落ちていく。ところが、この下方に流れ落ちた水が、該光学素子と該光学素子を保持する枠部材との境界部分に溜まって水溜まりを形成し、この水溜まりがモニター画像の下部に写り込んで、視認性を悪くする問題があった。図2、図3を参照して、この問題について説明する。
【0006】
図2は、レンズ表面を直接外気に露出させるタイプの屋外用テレビカメラ(車載バックカメラや屋外監視カメラ等)10を、雨天時に使用した状態を示す。(a)はテレビカメラ10の正面図、(b)は同側面図、(c)はテレビカメラ10で撮られてテレビモニタ18に映し出された画像である。テレビカメラ10のレンズ12はレンズ枠14に保持されている。レンズ12の表面には、親水膜がコーティングされている。レンズ12の光軸Lは斜め下方に向けて配置されている。レンズ12の表面に当たった雨水は、親水膜コーティングの作用により、レンズ12の表面に水滴として留まらずに、レンズ12の表面に沿って下方に流れ落ちていく。この下方に流れ落ちた雨水は、レンズ12とレンズ枠14との境界部分に溜まり、水溜まり16を形成する。このため、テレビカメラ10で撮った画像には、図2(c)に示すように、水溜まり16が写り込んでいる。
【0007】
図3は、カメラモジュールをハウジング内に収容したタイプの屋外用テレビカメラ(車載バックカメラや屋外監視カメラ等)20を、雨天時に使用した状態を示す。(a)はテレビカメラ20の正面図、(b)は同側面図、(c)はテレビカメラ20で撮られてテレビモニタ32に映し出された画像である。テレビカメラ20のハウジング22内には、カメラモジュール24が密閉状態に収容されている。ハウジング22の前面開口部22aには、透明ガラス板、透明プラスチック板等で構成された光透過性フード26が嵌め込まれている。したがって、ハウジング22は、光透過性フード26のフード枠を構成する。カメラモジュール24は、ハウジング22内で、レンズ28を光透過性フード26に対面させて、光透過性フード26を透過して外界を撮影する。光透過性フード26の表面には、親水膜がコーティングされている。レンズ28の光軸Lは斜め下方に向けて配置されている。光透過性フード26の表面に当たった雨水は、親水膜コーティングの作用により、光透過性フード26の表面に水滴として留まらずに、光透過性フード26の表面に沿って下方に流れ落ちていく。この下方に流れ落ちた雨水は、光透過性フード26とハウジング22(フード枠)との境界部分に溜まり、水溜まり30を形成する。このため、テレビカメラ20で撮った画像には、図3(c)に示すように、水溜まり30が写り込んでいる。
【0008】
以上のように、光学素子(レンズ12、光透過性フード26、カメラ用光学フィルター等)の表面に親水膜をコーティングすると、雨天時に、光学素子と枠部材との境界部分に水溜まりが形成され、この水溜まりがモニター画像の下部に写り込んで、視認性を悪くしていた。この現象は、表面に親水膜をコーティングした車両用アウターミラーにおいても生じていた。すなわち、図4に示すように、車両用アウターミラー31は、ミラー33をミラーホルダー35(枠部材)で保持した構造を有している。ミラー33の表面に親水膜をコーティングすると、雨天時に、ミラー33の表面に当たった雨水は、親水膜コーティングの作用により、ミラー33の表面に水滴として留まらずに、ミラー33の表面に沿って下方に流れ落ちていく。この下方に流れ落ちた雨水は、ミラー33とミラーホルダー35との境界部分に溜まり、水溜まり37を形成する。このため、ミラー33を介して得られる画像の下部がゆがんで視認性を悪化させていた。また、雨が上がって水溜まり37が乾くと、水溜まり37に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー33の表面下部に白く析出し、ミラーの視界を狭めるとともに見栄えを悪くしていた。
【0009】
図14は水溜まり37が乾いてミラー33の表面下部に無機塩が析出する推定メカニズムを示す。(i)はミラー33の表面が綺麗になっている初期状態である。この状態から雨が降り、雨水がミラー表面33aに当たって付着すると、雨水はミラー表面33aを構成する親水膜17の作用により、ミラー表面33aに水滴として留まらずに、水膜21を形成する。さらに、この雨水はミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちていき、ミラー33の表面下部のミラーホルダー35との境界部分に水溜まり37を形成する。また、この水溜まり37の水はミラー33の下部のミラーホルダー35との間の隙間23を通ってミラー33の背面側のミラーホルダー35との間に形成された空所25に導かれ、該空所25に水溜まり27を形成する。雨が上がると、(iii)に示すようにミラー33の表面の水膜21は蒸発し、ミラー33の表面下部に水溜まり37が残る。水溜まり37の水は徐々に蒸発するが、蒸発するにつれて、ミラー33の背面の水溜まり27の水がミラーホルダー35との間の隙間23を通って水溜まり37に補給される。水溜まり27,37の水が完全に蒸発すると、(vi)に示すようにこの水の中に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー33の表面下部に水垢19として白く析出する。
【0010】
この発明は、表面に親水膜を形成した防曇素子を具えた防曇装置において、防曇素子の表面に雨水等の水が溜まるのを防止しようとするものである。また、この発明は、表面に親水膜を形成したミラーを具えた防曇ミラー装置において、ミラーの表面に雨水等の水が溜まるのを防止しようとするものである。また、参考発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、光学素子と枠部材との境界部分に雨水等の水が溜まるのを抑制して、光学素子を介して得られる画像に、溜まった水が映り込んだり、光学素子を介して得られる画像がゆがんだりするのを防止した光学装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
参考発明の光学装置は、外気に露出する表面を有するレンズ、光透過性フード、光学フィルター、ミラー等の光学素子と、該光学素子を保持する枠部材とを具備し、前記枠部材の下縁部の外周位置に両端が開口した管状部を形成し、該管状部の一端開口部を該枠部材の下縁部前面に隣接する位置に開口させ、該管状部の他端開口部を前記一端開口部よりも後方位置に開口させ、前記管状部が、前記光学素子の表面から前記枠部材の下縁部前面に流れ込む水を、その毛管現象により前記一端開口部から吸い込んで排水するようにしたものである。
【0012】
この参考発明の光学装置によれば、光学素子の表面から枠部材の下縁部前面に流れ込む水を、管状部の毛管現象により吸い込んで排水するようにしたので、光学素子と枠部材との境界部分に雨水等の水が溜まるのを抑制して、光学素子を介して得られる画像に、溜まった水が映り込んだり、光学素子を介して得られる画像がゆがんだりするのを防止することができる。しかも、管状部は枠部材の下縁部の外周位置に形成され、管状部の水を吸い込む一端開口部は枠部材の下縁部前面に隣接する位置に開口しているので、管状部は光学素子の視野に入らず、光学素子を介して得られる映像を視認するのに妨げとならない。
【0013】
この参考発明の光学装置の管状部は、枠部材と別体または一体に構成することができる。また、枠部材の表面に親水膜をコーティングしたり、枠部材の下縁部前面に、光学素子の表面との段差を緩和する切欠を形成して、管状部の一端開口部を、該切欠に隣接する位置に開口させるようにすれば、光学素子から枠部材への水の移動をより円滑にして、管状部による水の吸い込みをより円滑にすることができる。
【0014】
この参考発明の光学装置は、枠部材の下縁部の外周位置に管状部を形成するのに代えて、枠部材の下縁部内に連通孔を形成することもできる。すなわち、外気に露出する表面を有する光学素子と、該光学素子を保持する枠部材とを具備し、前記枠部材の下縁部内に両端が開口した連通孔を形成し、該連通孔の一端開口部を該枠部材の下縁部前面に開口させ、該連通孔の他端開口部を前記一端開口部よりも後方位置に開口させ、前記連通孔が、前記光学素子の表面から前記枠部材の下縁部前面に流れ込む水を、その毛管現象により前記一端開口部から吸い込んで排水するものとして構成することができる。この場合、枠部材の表面に親水膜をコーティングしたり、枠部材の下縁部に、前記光学素子の表面との段差を緩和する切欠を形成して、連通孔の一端開口部を、該切欠位置に開口させるようにすれば、光学素子から枠部材への水の移動をより円滑にして、連通孔による水の吸い込みをより円滑にすることができる。
【0015】
この発明の防曇装置は、表面に親水膜を形成した防曇素子と、該防曇素子の外周縁部に対向してその外方に空隙を隔てて配置された外枠とを具備してなり、前記空隙は少なくとも前記防曇素子の表面側に開口し、前記防曇素子と前記外枠とは前記空隙を形成しない箇所を介して直接または間接に相互に連結されているものである。これによれば、防曇素子の表面に付着した水は、該防曇素子の外周縁部と外枠の間に形成された空隙に引き込まれて排水されるので、防曇素子の表面に水が溜まるのを防止することができる。
【0016】
この発明の防曇装置において、前記空隙は例えば防曇素子の外周縁部の全周や下端面に形成することができる。また、該空隙の距離は例えば0.5mm〜3.0mm、好ましくは0.6mm〜2.2mm、より好ましくは1.0mm〜1.6mmとすることができる。また、該空隙は例えば防曇素子の外周縁部の厚み方向全長にわたり形成することができる。また、防曇素子の表面に対する前記外枠の前端部の前方への突出量は例えば0mm〜5mmとすることができる。また、前記外枠または該外枠につながる箇所には、前記空隙内に引き込まれた水を排水する排水孔を形成することができる。また、この発明の防曇装置は、前記防曇素子を例えばレンズ(監視カメラのレンズ等)、光透過性フード(監視カメラのフード等)、光学フィルター、ガラス窓、ミラー(自動車用アウターミラー、二輪車用ミラー、浴室用ミラー等)とすることができる。
【0017】
この発明の防曇ミラー装置(自動車用アウターミラー、二輪車用ミラー、浴室用ミラー等)は、表面に親水膜を形成したミラーと、前面に形成された開口部内に前記ミラーを収容保持するミラーホルダーとを具備し、前記ミラーの外周縁部と前記ミラーホルダーの前記開口部を構成する外枠の内周面との間に空隙を形成し、前記空隙は前記ミラーの表面側に開口するようにしたものである。これによれば、ミラーの表面に付着した水は、該ミラーの外周縁部と外枠の間に形成された空隙に引き込まれて排水されるので、ミラーの表面に水が溜まるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(参考発明の実施の形態1)
参考発明を、前記図2のレンズ表面を直接外気に露出させるタイプの屋外用テレビカメラに適用した実施の形態を図1に示す(レンズおよびレンズ枠の部分のみ示す。図2と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。屋外用テレビカメラ29において、レンズ枠14は鉄、ステンレス、アルミ等の金属またはプラスチックで円筒状に構成されている。レンズ枠14の先端開口部付近には、レンズ12が嵌め込み装着されている。レンズ12の表面12aには、図示しない親水膜として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜がコーティングされている。これにより、レンズ表面12aは親水性にされている。
【0019】
レンズ枠14の下縁部(全周縁部のうちの下側の部分)14aの外周位置(下縁部14aの直下位置)には、パイプ34が接着剤等により装着されている。パイプ34は、レンズ12の光軸Lに沿った方向に延在した状態で(つまり、パイプ34の軸をレンズ光軸Lと平行に配置した姿勢で)配置されている。パイプ34は、例えばポリプロピレン、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)等のプラスチック、セロハン、金属等の材料で直管円筒状に構成されている。パイプ34の両端は開口しており、その前側の開口部34aは、レンズ枠14の下縁部14aの前面14bに隣接して、該前面14bと同一平面上に前方に向けて開口している。後側の開口部34bは、前側の開口部34aよりも後方に開口している。
【0020】
図5は、図1の屋外用テレビカメラ29を、雨天時に使用した状態を示す。レンズ12の光軸Lは斜め下方に向けられている。(i)は雨水が付着する前の状態である。この状態で雨水がレンズ表面12aに当たって付着すると、(ii)に示すように、雨水39はレンズ表面12aの親水膜コーティングの作用により、レンズ表面12aに水滴として留まらずに、レンズ表面12aに沿って下方に流れ落ちていく。この雨水39は、さらに、レンズ枠下縁部前面14bを通って、パイプ34の前側の開口部34aに至り、パイプ34の毛管現象により、開口部34aからパイプ34内に吸い込まれていく。レンズ枠下縁部前面14bとパイプ開口部34a(開口部端面)は同一平面上にあるので、レンズ枠下縁部前面14bからパイプ開口部34aへの水の移動は円滑に行われる。さらに、雨水39がレンズ表面12aからレンズ枠下縁部前面14bおよびパイプ前側開口部34aを経てパイプ34内に供給され続けると、パイプ34内に雨水39を保持しきれなくなるので、(iii)に示すように、余剰の雨水39がパイプ34の前端部から滴下して(39a)排水される(レンズ光軸Lが水平姿勢の場合は、パイプ34の前後両端部から排水され、レンズ光軸Lが斜め上向き姿勢の場合は、パイプ34の後端部から排水される。)。したがって、雨水39は水溜まりとして大きく成長することなく排水される。これにより、テレビカメラ29で撮った映像に水溜まりが写り込むのが抑制される。なお、レンズ枠14の表面(特に下縁部前面14b)に親水膜をコーティングすることにより、レンズ表面12aからレンズ枠下縁部前面14bへの水の移動をより円滑にして、パイプ34による水の吸い込みをより円滑にすることができる。
【0021】
図1のテレビカメラ29について、パイプ34の長さ、内径、厚みを様々に変化させて実験を行い、効果の違いを確認した。この実験では、セロハンフィルムを基材とする粘着テープを筒状に巻いてパイプ34を作製した。このとき、粘着フィルムを筒状に巻くときの内径および巻き数を調整することにより、任意の内径および任意の厚みを実現した。はじめに、パイプ34の長さと内径を様々に変えて、テレビカメラ29を、図6(a)に示す水平状態と、図6(b)に示す下向き80度の状態にそれぞれ設定してして、レンズ表面12aに水を霧吹きで吹きかけて水溜まりの形成状態(有り、少し有り、無し)を確認した。測定結果を表1に示す。この測定結果によれば、カメラの取り付け角度およびパイプ34の長さによらず、パイプ34の内径が3mm以上(断面積でいえば、7mm2以上)であれば、水溜まりを形成しにくくなり、効果を発揮することがわかった。
【表1】
【0022】
次に、パイプ34の厚みを0.05mm〜5mmまで、0.05mm刻みで変更して、表1と同様の実験を行ったところ、厚みが0.05mm〜3mmまでは水溜まりはなかったが、厚みが3mmを超えると、水が溜まりやすくなった。
【0023】
(参考発明の実施の形態1の変形例)
図1の実施の形態において、レンズ枠14の下縁部前面14bに、レンズ表面12aとの段差を緩和する切欠を形成することにより、レンズ表面12aからレンズ枠下縁部前面14bへの水の移動をより円滑にして、水溜まりが生じるのをより効果的に抑制することができる。そのように構成した実施の形態を図7に示す。屋外用テレビカメラ29’において、レンズ枠14の下縁部14aの前面14bは、平滑面状に切削または成型されて、切欠14cが形成されている。これにより、レンズ表面12aとレンズ枠下縁部前面14bとの境界部分41の段差が緩和されている。このような構造により、レンズ表面12aからレンズ枠下縁部前面14bへの水の移動をより円滑にして、レンズ表面12aとレンズ枠下縁部前面14bとの境界部分41に水溜まりが生じるのをより効果的に抑制することができる。
【0024】
パイプ34の前側の開口部34aは、切欠14cに隣接して、該切欠14cと同一平面上に前方に向けて開口している。切欠14cとパイプ開口部34a(開口部端面)は同一平面上にあるので、切欠14cからパイプ開口部34aへの水の移動は円滑に行われる。なお、切欠14cの表面に親水膜をコーティングすることにより、レンズ表面12aから切欠14cへの水の移動および切欠14cからパイプ開口部34aへの水の移動をさらに円滑にすることができる。
【0025】
図7の構造について、切欠14cの幅を様々に変えて効果を確認したところ、レンズ枠14の外径(実験で使用したレンズ枠14の外径は約16mm)に対して、切欠14cの幅を30%以上にすると、水溜まりを効果的に抑制できた。
【0026】
なお、図1、図7の実施の形態では、パイプ34をレンズ枠14と別体で構成し、接着によりこれらを相互に連結するようにしたが、パイプ34とレンズ枠14を同一材料で一体に構成する(一体成型する)こともできる。
【0027】
(参考発明の実施の形態2)
参考発明を、前記図3のカメラモジュールをハウジング内に収容したタイプの屋外用テレビカメラに適用した実施の形態を図8に示す(図3と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。テレビカメラ45のハウジング22内には、カメラモジュール24が密閉状態に収容されている。ハウジング22の前面開口部22aには、透明ガラス板、透明プラスチック板等で構成された光透過性フード26が嵌め込まれている。したがって、ハウジング22は、光透過性フード26のフード枠を構成する。カメラモジュール24は、ハウジング22内で、レンズ28を光透過性フード26に対面させて、光透過性フード26を透過して外界を撮影する。光透過性フード26の表面26aには、図示しない親水膜として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜がコーティングされている。これにより、光透過性フード表面26aは親水性とされている。
【0028】
フード枠(ハウジング)22の下縁部22bの前面22cは、平滑面状に切削または成型されて、切欠22dが形成されている。これにより、フード枠下縁部前面22c(切欠22d)は光透過性フード26の表面26aとほぼ同一平面状に形成され、両者間の段差が緩和されている。このような構造により、光透過性フード表面26aからフード枠下縁部前面22cへの水の移動を円滑にして、光透過性フード表面26aとフード枠下縁部前面22cとの境界部分43に水溜まりが生じるのを効果的に抑制することができる。なお、ハウジング22の表面(特に、切欠22dの表面)に親水膜をコーティングして、光透過性フード表面26aから切欠22dへの水の移動をより円滑にすることもできる。
【0029】
フード枠下縁部22b内には、複数の連通孔36が、それぞれ光軸Lに沿った方向に延在した状態で(つまり、連通孔36の軸をレンズ光軸Lと平行に配置した姿勢で)、横方向に並べて形成されている。連通孔36の両端は開口しており、その前側の開口部36aは、切欠22dの位置で前方に向けて開口している。また、連通孔36の後部は下方に屈曲しており、連通孔36の後側の開口部36bはフード枠下縁部22bの底面に開口している。
【0030】
図9は、図8の屋外用テレビカメラ45を、雨天時に使用した状態を示す。レンズ光軸Lは斜め下方に向けられている。(i)は雨水が付着する前の状態である。この状態で雨水が光透過性フード26の表面26aに当たって付着すると、(ii)に示すように、雨水44は光透過性フード表面26aの親水膜コーティングの作用により、光透過性フード表面26aに水滴として留まらずに、光透過性フード表面26aに沿って下方に流れ落ちていく。この雨水44は、さらに、フード枠下縁部前面22c(切欠22d)から連通孔36の前側の開口部36aに至り、連通孔36の毛管現象により、開口部36aから連通孔36内に吸い込まれていく。さらに、雨水44が光透過性フード表面26aからフード枠下縁部前面22c(切欠22d)および連通孔前側開口部36aを経て連通孔36内に供給され続けると、連通孔36内に雨水44を保持しきれなくなるので、(iii)に示すように、余剰の雨水44が下縁部前面22c(切欠22d)から滴下して(44a)排水される(レンズ光軸Lが水平姿勢の場合は、後側の開口部36bからも排水され、レンズ光軸Lが斜め上向き姿勢の場合は、主に後側の開口部36bから排水される。)。したがって、雨水44は水溜まりとして大きく成長することなく排水される。これにより、テレビカメラ45で撮った映像に水溜まりが写り込むのが抑制される。
【0031】
(参考発明の実施の形態3)
参考発明をカメラ用光学フィルターに適用した実施の形態を図10に示す。このカメラ用光学フィルター46は、NDフィルター、偏光フィルター等のフィルター板48をフィルター枠50に嵌め込み装着して構成されている。フィルター板48の表面48aには、図示しない親水膜として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜がコーティングされている。これにより、フィルター板表面48aは親水性とされている。フィルター枠50の後部外周面には、この光学フィルター46をカメラのレンズ枠前端部にねじ込み装着するためのねじ51が形成されている。フィルター枠50の下縁部50aの前面50bは、平滑面状に切削または成型されて、切欠50cが形成されている。
【0032】
フィルター枠50の下縁部50aの外周位置(下縁部50aの直下位置)には、パイプ52が接着剤等により装着されている。パイプ52は、フィルター板48の光軸Lに沿った方向に延在した状態で(つまり、パイプ52の軸をフィルター板48の光軸Lと平行に配置した姿勢で)配置されている。パイプ52は、例えばポリプロピレン、ABS等のプラスチック、セロハン、金属等の材料で直管円筒状に構成されている。パイプ52の両端は開口しており、その前側の開口部52aは、フィルター枠50の下縁部50aの前面50b(切欠50c)に隣接して、該前面50b(切欠50c)と同一平面上に前方に向けて開口している。後側の開口部52bは前側の開口部52aよりも後方に開口している。
【0033】
以上の構成によれば、雨天時に、雨水がフィルター板表面48aに当たって付着すると、雨水はフィルター板表面48aの親水膜コーティングの作用により、フィルター板表面48aに水滴として留まらずに、フィルター板表面48aに沿って下方に流れ落ちていく。この雨水は、さらに、フィルター枠下縁部50aの切欠50cを通って、パイプ52の前側の開口部52aに至り、パイプ52の毛管現象により、開口部52aからパイプ52内に吸い込まれていく。フィルター枠下縁部50aの切欠50cとパイプ開口部52a(開口部端面)は同一平面上にあるので、フィルター枠下縁部50aの切欠50cからパイプ開口部52aへの水の移動は円滑に行われる。さらに、雨水がフィルター板表面48aからフィルター枠下縁部50aの切欠50cおよびパイプ前側開口部52aを経てパイプ52内に供給され続けると、パイプ52内に雨水を保持しきれなくなるので、余剰の雨水がパイプ52の前端部もしくは後端部または前後両端部から滴下して排水される。したがって、雨水は水溜まりとして大きく成長することなく排水される。これにより、カメラで撮った映像に水溜まりが写り込むのが抑制される。なお、フィルター枠50の表面(特に切欠50c)に親水膜をコーティングすることにより、フィルター板表面48aから切欠50cへの水の移動をより円滑にして、パイプ52による水の吸い込みをより円滑にすることができる。
【0034】
また、フィルター枠50にパイプ52を設けるのに代えて、前記図8の実施の形態と同様に、フィルター枠下縁部50a自体に連通孔を形成し、連通孔の前側の開口部を切欠50cに開口するものとして構成することもできる。
【0035】
(参考発明の実施の形態4)
参考発明を車両用アウターミラーに適用した実施の形態を図11に示す(図4と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。車両用アウターミラー53は、ミラー33をミラーホルダー35(枠部材)に嵌め込み装着して構成されている。ミラー33の表面33aには、図示しない親水膜として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜がコーティングされている。これにより、ミラー表面33aは親水性とされている。ミラーホルダー35の下縁部35aの前面35bは、平滑面状に切削または成型されて、切欠35cが形成されている。
【0036】
ミラーホルダー35の下縁部35aの外周位置(下縁部35aの直下位置)には、パイプ54が接着剤等により装着されている。パイプ54は、ミラー33の光軸Lに沿った方向に延在した状態で(つまり、パイプ54の軸をミラー33の光軸Lと平行に配置した姿勢で)配置されている。パイプ54は、例えばポリプロピレン、ABS等のプラスチック、セロハン、金属等の材料で直管円筒状に構成されている。パイプ54の両端は開口しており、その前側の開口部54aは、ミラーホルダー35の下縁部35aの前面35b(切欠35c)に隣接して、該前面35b(切欠35c)と同一平面上に前方に向けて開口している。後側の開口部54bは前側の開口部54aよりも後方に開口している。
【0037】
以上の構成によれば、雨天時に、雨水がミラー表面33aに当たって付着すると、雨水はミラー表面33aの親水膜コーティングの作用により、ミラー表面33aに水滴として留まらずに、ミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちていく。この雨水は、さらに、ミラーホルダー下縁部35aの切欠35cを通って、パイプ54の前側の開口部54aに至り、パイプ54の毛管現象により、開口部54aからパイプ54内に吸い込まれていく。ミラーホルダー下縁部35aの切欠35cとパイプ開口部54a(開口部端面)は同一平面上にあるので、ミラーホルダー下縁部35aの切欠35cからパイプ開口部54aへの水の移動は円滑に行われる。さらに、雨水がミラー表面33aからミラーホルダー下縁部35aの切欠35cおよびパイプ前側開口部54aを経てパイプ54内に供給され続けると、パイプ54内に雨水を保持しきれなくなるので、余剰の雨水がパイプ54の前端部もしくは後端部または前後両端部から滴下して排水される。したがって、雨水は水溜まりとして大きく成長することなく排水される。これにより、ミラー33を介して得られる画像の下部がゆがんで視認性を悪化させるのが防止される。また、水溜まりの発生が抑制されるので、雨が上がった後に、雨に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー表面33aの下部に白く析出してミラーの視界を狭めたり見栄えを悪くするのが抑制される。
【0038】
(参考発明の実施の形態5)
参考発明を車両用アウターミラーに適用した他の実施の形態を図12に示す(図11と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。これは、ミラーホルダーの下縁部自体に連通孔を形成したものである。車両用アウターミラー55は、ミラー33をミラーホルダー35(枠部材)に嵌め込み装着して構成されている。ミラー33の表面33aには、図示しない親水膜として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜がコーティングされている。これにより、ミラー表面33aは親水性とされている。ミラーホルダー35の下縁部35dの前面35eは、平滑面状に切削または成型されて、切欠35fが形成されている。
【0039】
ミラーホルダー35の下縁部35d内には、複数の連通孔56が、それぞれ光軸Lに沿った方向に延在した状態で(つまり、連通孔56の軸をミラー光軸Lと平行に配置した姿勢で)、横方向に並べて形成されている。連通孔56の両端は開口しており、その前側の開口部56aは、切欠35fの位置で前方に向けて開口している。また、連通孔56の後側の開口部56bは前側の開口部56aよりも後方に開口している。
【0040】
以上の構成によれば、雨天時に、雨水がミラー表面33aに当たって付着すると、雨水はミラー表面33aの親水膜コーティングの作用により、ミラー表面33aに水滴として留まらずに、ミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちていく。この雨水は、さらに、ミラーホルダー下縁部35dの切欠35fら連通孔56の前側の開口部56aに至り、連通孔56の毛管現象により、開口部56aから連通孔56内に吸い込まれていく。さらに、雨水がミラー表面33aから切欠35fおよび連通孔前側開口部56aを経て連通孔56内に供給され続けると、連通孔56内に雨水を保持しきれなくなるので、余剰の雨水が切欠35fもしくはその背面位置またはこれら両面から滴下して排水される。したがって、雨水は水溜まりとして大きく成長することなく排水される。これにより、ミラー33を介して得られる画像の下部がゆがんで視認性を悪化させるのが防止される。また、水溜まりの発生が抑制されるので、雨が上がった後に、雨に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー表面33aの下部に白く析出してミラーの視界を狭めたり見栄えを悪くするのが抑制される。
【0041】
なお、前記実施の形態では、管状部の開口部および連通孔の開口部の形状を円形としたが、開口部の形状はこれに限るものでなく、例えば楕円、三角形や四角形などの多角形に形成することもできる。また、開口部の形状がいずれの場合にも、開口部の縦横比は、1に近いことが望ましい。図13は、図1の構造について、管状部の開口部を円形以外の形状に形成した例である。すなわち、図13(a)は直管正四角筒状のパイプ58を使用して、該パイプ58の前後開口部58a,58bの正面形状を正四角形に形成したものである。同(b)は、正三角筒状のパイプ60を使用して、該パイプ60の前後開口部60a,60bの正面形状を正三角形に形成したものである。同(c)は、正六角筒状のパイプ62を使用して、該パイプ62の前後開口部62a,62bの正面形状を正六角形に形成したものである。前述のように、管状部の開口部の形状が円形の場合には、その内径(開口部径)が3mm以上(断面積でいえば、7mm2以上)あれば、水溜まりを形成しにくくなるので、管状部の開口部の形状が円形以外である場合にも、該開口部の断面積を7mm2以上にするのが望ましいと考えられる。断面積を7mm2以上にするためには、図13(a)の正四角形状の開口部58a,58bの場合はその一辺の長さを約2.6mm以上に形成し、同(b)の正三角形状の開口部60a,60bの場合はその一辺の長さを約4mm以上に形成し、同(c)の正六角形の場合はその一辺の長さを約1.6mm以上に形成すればよい。
【0042】
また、前記実施の形態では、光学素子の表面に親水膜がコーティングされている場合について説明したが、参考発明はこれに限らず、光学素子の表面に親水膜がコーティングされていない場合にも適用できる。すなわち、光学素子の表面に親水膜がコーティングされていない場合には、光学素子の表面に付着した水が水滴として該表面に留まりやすくなるが、水滴がある程度以上大きくなれば、該水滴は該表面に沿って下方に流れ落ちていく。そして、この下方に流れ落ちた水は、光学素子と該光学素子を保持する枠部材との境界部分に溜まって水溜まりを形成し、この水溜まりがモニター画像の下部に写り込んで、視認性を悪くする。そこで、光学素子の表面に親水膜がコーティングされていない場合にも、この参考発明を適用して、管状部や連通孔を形成することにより、光学素子と枠部材との境界部分に雨水等の水が溜まるのを抑制して、光学素子を介して得られる画像に、溜まった水が映り込んだり、光学素子を介して得られる画像がゆがんだりするのを防止することができる。
【0043】
(本願発明の実施の形態1)
この発明を車両用アウターミラーに適用した実施の形態を図15に示す(図4と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。車両用アウターミラー64において、ミラーホルダー35の前面には、ミラー33の面よりも大口径の開口部66が形成されている。開口部66内奥の内周面には、該開口部66を形成する外枠35hの全周に沿って複数個の保持用リブ68がほぼ均等間隔で突出形成されている。保持用リブ68の角部には角形に切り欠かれた受け部68aが形成されている。また、ミラーホルダー35の外枠下縁部35haまたは該外枠下縁部35haよりも奥の箇所には、単一または複数の排水孔70が貫通形成されている。
【0044】
ミラー33の表面33aには、親水膜17として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜が全面にコーティングされている。これにより、ミラー表面33aは親水性とされている。ミラー33の背面には、ヒーターパネル72が貼り付けられている。ミラー33はミラーホルダー35の開口部66内に収容され、ミラー33の外周縁部33bの背面側角部が保持用リブ68の受け部68aに支持される。ミラー33の背面のヒーターパネル72とミラーホルダー35の底部35gとは両面テープまたは接着剤74で相互に接合されている。これにより、ミラー33とミラーホルダー35は一体化されている。このとき、ミラー33の外周縁部33bは保持用リブ68の受け部68aで支持されているので、ミラー33はミラーホルダー35の開口部66内の中央位置に正確に位置決めされるとともに、車両走行時にミラー33に振動(ビビリ)が生じるのが防止される。
【0045】
ミラー33とミラーホルダー35を上記のように一体化した状態では、ミラー33の外周縁部33bとミラーホルダー35の外枠35hとの間に空隙76が全周にわたりほぼ均一の間隔(ギャップ長)で形成される。空隙76の距離d1(ギャップ長)は0.5mm〜3mmが好適である。すなわち、空隙距離d1を0.5mm〜3mmに設定したところ、ミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちる水を空隙76に良好に引き込んで、ミラー表面33aの下部(ミラー視野の範囲内)に大きな水溜まりが形成されるのを抑制することができた。また、空隙距離d1が0.5mm〜3mmのときは水垢が析出されにくく、またたとえ析出しても空隙距離d1が0mmの従来品に比べてその濃さは薄く目立ちにくいものであった。
【0046】
空隙距離d1による水垢の析出高さの変化について実験した。実験は、空隙距離d1を約0.5mm〜約2.0mmの範囲で約0.5mmステップで異ならせた複数の車両用アウターミラーの試料1〜9を用意して次の手順で行った。
《実験手順》
1)ステンレスパッドに水道水を水深30mmになるように注入する。
2)このステンレスパッドの水道水中に試料を実使用時の姿勢に近い、鏡面が水面に垂直となる状態に保持して2分間浸漬する。
3)2分間の浸漬を終了したら、試料を、その鏡面を垂直に保持したまま水面から引き上げて30秒間水切りを行う。
4)予め80°Cに設定された高温槽に試料を垂直に吊して1時間保持する。
5)試料を高温槽から取り出す。
6)ミラー表面33aの下部に析出した水垢の、ミラー表面下端部からの高さを計測する。
【0047】
各試料の水垢析出高さの計測結果を表2に示す。
【表2】
【0048】
図16は表2の結果をプロットしたものである。図16中の曲線はその近似曲線である。なお、空隙距離d1が0mmの従来品について同様の実験をしたところ、水垢析出高さは4.2mm〜6.5mmであった。これらの実験結果によれば、空隙距離d1を0.6mm〜2.2mmに設定すると空隙距離d1が0mmの従来品に比べて水垢析出高さを低減でき、空隙距離d1を1.0mm〜1.6mmに設定すると水垢析出高さを特に低減できることがわかる。また、水道水に代えて純水を使用して上記と同様の実験をしたところ、水垢析出は生じなかった。この結果から、水に含まれる不純物、ミネラル分が水垢の要素であることがわかる。
【0049】
また、ミラー表面33aに対する外枠35h(特に外枠下縁部35ha)の前端部35ha’の前方への突出量d2は0mm(突出なし)〜5mmが好適である。すなわち、ミラー表面33aに対し前端部35ha’が引っ込んでいる場合(つまりd2の値が負の場合)には、ミラー表面33aの外周縁部33bの付近に付着した水を空隙76(特にミラー33の外周縁部下端面33baに臨む空隙76a)に引き込む能力が低下する。また、ミラー表面33aに対し外枠35hが5mmよりも多く突出すると、その突出部分がミラーの視界を狭める。
【0050】
なお、図15の例では空隙76はその奥行き方向についてミラー33の厚み方向全長にわたり形成されているが、水を引き込む能力が確保される限りミラー33の厚み方向の途中まで形成する(すなわち、ミラー33の厚み方向後部は空隙が形成されていない構造とする)こともできる。また、ミラー33の外周縁部33bがミラーホルダー35から浮いていると該外周縁部33bのカット端面がぎらつきを生じ運転者にとって目障りになる可能性がある。そこで、該外周縁部33bを例えばすりガラス状に加工することにより、該カット端面のぎらつきを防止することができる。
【0051】
以上の構成の車両用アウターミラー64による雨天時および雨が上がったときの動作を図17を参照して説明する。(i)はミラー表面33aが綺麗になっている初期状態である。この状態から雨が降り、雨水がミラー表面33aに当たって付着すると、雨水はミラー表面33aの親水膜17の作用により、ミラー表面33aに水滴として留まらずに、水膜77を形成する。さらに、この雨水はミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちていき、(ii)に示すように空隙76a内でミラー33の外周縁部下端面33baに水溜まり78として垂れ下がる。水溜まり78が少し大きくなると、(iii)に示すように水溜まり78は外枠下縁部35haの内周面35haaに着地し、空隙76a内を満たしていく。すなわち、空隙76aの距離d1が比較的短いので、水溜まり78の水は水滴として滴下する前に内周面35haaに伝わって流れる。したがって、外枠35h(35ha)が無い場合に比べてミラー33の外周縁部下端面33baからの水の離れがよくなる。雨水が空隙76a内にさらに供給されると、余剰の雨水は、排水孔70または空隙76aの前方の開口部から水滴80として滴下して排水される。雨が上がると、ミラー表面33aの水膜77は自然に蒸発しあるいはヒーターパネル72に通電して強制的に蒸発する。また、空隙76aに残留した雨水はしだいに蒸発する。空隙76a内の水が完全に蒸発すると、(iv)に示すようにこの水の中に含まれていたカルシウム等の無機塩が、空隙76aの内周面(ミラーホルダー外枠下縁部内周面35haaおよびミラー外周縁部下端面33ba)に水垢82として白く析出する。
【0052】
以上のようにして、図15の車両用アウターミラー64によれば、雨天時にミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちてきた雨水は空隙76a内に引き込まれるため、ミラー表面33aの下部(ミラー視野の範囲内)に水溜まりを形成するのが抑制される。したがって、ミラー33を介して得られる画像の下部がゆがんで視認性を悪化させるのが防止される。また、ミラー表面33aの下部に水溜まりを形成するのが抑制されるので、雨が上がった後に、雨に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー表面33aの下部に水垢として白く析出してミラーの視界を狭めたり見栄えを悪くするのが抑制される。
【0053】
また、親水膜コーティングミラーがヒーター付ミラーである場合には、ミラーがミラーホルダーに全周で嵌め込み装着されていると、ヒーター駆動を繰り返すうちにミラー表面の下縁部のみならずミラー表面の外周縁部付近全周に水垢が析出することが判明した。これに対し、図15の車両用アウターミラー64のようにミラー33の外周縁部33bの全周に空隙76を形成すると、ヒーター駆動を繰り返してもミラー表面33aの外周縁部33bの付近の全周いずれの箇所においても水垢の析出が抑制されることが分かった。もっとも、図15の車両用アウターミラー64のようにミラー33の外周縁部33bの全周に空隙76を形成する構造は、ヒーターを有しないミラーにも適用できることは言うまでもない。
【0054】
(本願発明の実施の形態2)
この発明を車両用アウターミラーに適用した実施の形態を図18に示す(図15と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。これは、図15の車両用アウターミラー64がヒーター付ミラーであってミラー33の外周縁部33bの全周に空隙76を形成しているのに対し、図18の車両用アウターミラー84はヒーター無しミラーとして構成してミラー33の外周縁部33bの下端面33baに限定して空隙96を形成したものである。車両用アウターミラー84は、ミラー33をミラーホルダー35に嵌め込み装着して構成されている。ミラーホルダー35の前面には、ミラー33を収容するための開口部86が形成されている。ミラーホルダー35の開口部86を形成する外枠35hのうち、下縁部35haを除く各縁部(左縁部35hb、上縁部35hc、右縁部35hd)の前端部には、ミラー33を嵌め込み装着するために折り返し35iが形成されている。開口部86を正面から見た開口寸法は、左右方向の寸法Dhがミラー33の左右方向の寸法よりも小さく、上下方向の寸法Dvがミラー33の上下方向の寸法よりも大きく設定されている。開口部86内奥の内周面には、ミラーホルダー35の外枠下縁部35haに沿って複数個の保持用リブ88がほぼ均等間隔で突出形成されている。保持用リブ88の角部には角形に切り欠かれた受け部88aが形成されている。また、ミラーホルダー35の外枠下縁部35haまたは該外枠下縁部35haよりも奥の箇所には、単一または複数の排水孔90が貫通形成されている。
【0055】
ミラー33の表面33aには、親水膜17として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜が全面にコーティングされている。これにより、ミラー表面33aは親水性とされている。ミラー33はミラーホルダー35の開口部86内に収容され、ミラー33の外周縁部33bのうち下端面33baを除く各端面(左、上、右の各端面)の前面側角部がミラーホルダー35の外枠35hの折り返し35iに係止され、ミラー33の下端面33baの背面側角部が保持用リブ88の受け部88aに支持される。ミラー33の背面とミラーホルダー35の底部35gとは両面テープまたは接着剤94で相互に接合されている。これにより、ミラー33とミラーホルダー35は一体化されている。このとき、ミラー33の外周縁部33bは保持用リブ88の受け部88aおよび外枠35hの折り返し35iで支持されているので、ミラー33はミラーホルダー35の開口部86内の中央位置に正確に位置決めされるとともに、車両走行時にミラー33に振動(ビビリ)が生じるのが防止される。
【0056】
ミラー33とミラーホルダー35を上記のように一体化した状態では、ミラー33の下端面33baとミラーホルダー35の外枠下縁部内周面35haaとの間に、ミラー表面33aの下部に付着した水を引き込むための空隙96がほぼ均一の間隔(ギャップ長)で形成される。空隙96の距離d1(ギャップ長)は前記実施の形態1と同様に0.5mm〜3.0mm、好ましくは0.6mm〜2.2mm、より好ましくは1.0mm〜1.6mmとすることができる。また、ミラー表面33aに対する外枠下縁部35haの前端部35ha’の前方への突出量d2は0mm(突出なし)〜5mmが好適である。すなわち、ミラー表面33aに対し前端部35ha’が引っ込んでいる場合(つまりd2の値が負の場合)には、ミラー表面33aの下部に付着した水を空隙96に引き込む能力が低下する。また、ミラー表面33aに対し外枠下縁部35haが5mmよりも多く突出すると、その突出部分がミラーの視界を狭める。また、空隙96はミラー33の厚み方向全長にわたり形成されている。なお、空隙96に臨むミラー33の外周縁部下端面33baをすりガラス状に加工すると、該外周縁部下端面33baのカット端面のぎらつきを防止することができる。
【0057】
以上の構成の車両用アウターミラー84による雨天時および雨が上がったときの動作は前出の図17と同じである。すなわち、ミラー33の表面が綺麗になっている(i)の初期状態から雨が降り、雨水がミラー表面33aに当たって付着すると、雨水はミラー表面33aの親水膜17の作用により、ミラー表面33aに水滴として留まらずに、水膜77を形成する。さらに、この雨水はミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちていき、(ii)に示すように空隙96内でミラー33の外周縁部下端面33baに水溜まり78として垂れ下がる。水溜まり78が少し大きくなると、(iii)に示すように水溜まり78は外枠下縁部35haの内周面35haaに着地し、空隙96内を満たしていく。すなわち、空隙96aの距離d1が比較的短いので、水溜まり78の水は水滴として滴下する前に内周面35haaに伝わって流れる。したがって、外枠35h(35ha)が無い場合に比べてミラー33の外周縁部下端面33baからの水の離れがよくなる。雨水が空隙96内にさらに供給されると、余剰の雨水は、排水孔90または空隙96の前方の開口部から水滴80として滴下して排水される。雨が上がると、ミラー33の表面の水膜77は自然に蒸発する。また、空隙96に残留した雨水はしだいに蒸発する。空隙96内の水が完全に蒸発すると、(iv)に示すようにこの水の中に含まれていたカルシウム等の無機塩が、空隙96の内周面(ミラーホルダー外枠下縁部内周面35haaおよびミラー外周縁部下端面33ba)に水垢82として白く析出する。
【0058】
以上のようにして、図18の車両用アウターミラー84によれば、雨天時にミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちてきた雨水は空隙96内に引き込まれるため、ミラー表面33aの下部(ミラー視野の範囲内)に水溜まりを形成するのが抑制される。したがって、ミラー33を介して得られる画像の下部がゆがんで視認性を悪化させるのが防止される。また、ミラー表面33aの下部に水溜まりを形成するのが抑制されるので、雨が上がった後に、雨に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー表面33aの下部に水垢として白く析出してミラーの視界を狭めたり見栄えを悪くするのが抑制される。また、この車両用アウターミラー84は、ミラー33の下縁部を除く各縁部(左、上、右の各縁部)がミラーホルダー外枠35hの下縁部35haを除く各縁部(左縁部35hb、上縁部35hc、右縁部35hd)に接触している(すなわち、これら各縁部35hb、35hc、35hdでミラー33とミラーホルダー35との間に空隙が形成されていない)ものの、ヒーター無しミラーであるので、ミラー表面33aの左、上、右の各部に水垢が析出されるのは抑制される。
【0059】
(本願発明の実施の形態3)
この発明をレンズ、光透過性フード、光学フィルター、ガラス窓等の透過型防曇装置に適用した実施の形態を図19に示す。この透過型防曇装置98は防曇素子100を外枠102に嵌め込み装着して構成されている。防曇素子100は透明部材101の表面100a(外気に露出する面)に、親水膜103として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜を全面にコーティングして構成されている。これにより、防曇素子表面100aは親水性とされている。
【0060】
防曇素子100の下端面100bと外枠102の下縁部102aの内周面102aaとの間には、防曇素子表面100aの下部に付着した水を引き込むための空隙104がほぼ均一の間隔(ギャップ長)で形成されている。空隙104の距離d3(ギャップ長)は前記実施の形態1,2と同様に0.5mm〜3.0mm、好ましくは0.6mm〜2.2mm、より好ましくは1.0mm〜1.6mmとすることができる。また、防曇素子表面100aに対する外枠下縁部102aの前端部102a’の前方への突出量d4は0mm(突出なし)以上が好適である。すなわち、防曇素子表面100aに対し前端部102a’が引っ込んでいる場合(つまりd4の値が負の場合)には、防曇素子表面100aの下部に付着した水を空隙104に引き込む能力が低下する。空隙104は防曇素子100の厚み方向全長にわたり形成されている。空隙104は後方に開口している。なお、空隙104に臨む防曇素子100の下端面100bをすりガラス状に加工すると、該下端面100bのカット端面のぎらつきを防止することができる。
【0061】
以上の構成の透過型防曇装置98によれば、雨が降って雨水が防曇素子表面100aに当たって付着すると、雨水は防曇素子表面100aの親水膜103の作用により、防曇素子表面100aに水滴として留まらずに、水膜を形成する。さらに、この雨水は防曇素子表面100aに沿って下方に流れ落ちていき、空隙104内で防曇素子100の外周縁部下端面100bに水溜まりとして垂れ下がる。この水溜まりが少し大きくなると、この水溜まりは外枠102の下縁部内周面102aaに着地し、空隙104内を満たしていく。すなわち、空隙104aの距離d3が比較的短いので、水溜まりの水は水滴として滴下する前に外枠102の下縁部内周面102aaに伝わって流れる。したがって、外枠102(102a)が無い場合に比べてミラー33の防曇素子下端面100bからの水の離れがよくなる。雨水が空隙104内にさらに供給されると、余剰の雨水は、空隙104の前方または後方の開口部から水滴として滴下して排水される。雨が上がると、防曇素子100の表面の水膜は自然に蒸発する。また、空隙104に残留した雨水はしだいに蒸発する。空隙104内の水が完全に蒸発すると、この水の中に含まれていたカルシウム等の無機塩が、空隙104の内周面(外枠102の下縁部内周面102aaおよび防曇素子100の外周縁部下端面100b)に水垢として白く析出する。
【0062】
以上のようにして、図19の透過型防曇装置98によれば、雨天時に防曇素子表面100aに沿って下方に流れ落ちてきた雨水は空隙104内に引き込まれるため、防曇素子表面100aの下部(防曇素子100の視野の範囲内)に水溜まりを形成するのが抑制される。したがって、防曇素子100を介して得られる画像の下部がゆがむのが防止される。また、防曇素子表面100aの下部に水溜まりを形成するのが抑制されるので、雨が上がった後に、雨に含まれていたカルシウム等の無機塩が、防曇素子表面100aの下部に水垢として白く析出して視界を狭めたり見栄えを悪くするのが抑制される。
【0063】
参考発明の光学装置は次のように体系化できる。
(1)外気に露出する表面を有する光学素子と、該光学素子を保持する枠部材とを具備し、前記枠部材の下縁部の外周位置に両端が開口した管状部を形成し、該管状部の一端開口部を該枠部材の下縁部前面に隣接する位置に開口させ、該管状部の他端開口部を前記一端開口部よりも後方位置に開口させ、前記管状部が、前記光学素子の表面から前記枠部材の下縁部前面に流れ込む水を、その毛管現象により前記一端開口部から吸い込んで排水する光学装置。
(2)前記管状部の肉厚が0.05mmから3mmである(1)項記載の光学装置。
(3)前記管状部が、前記光学素子の光軸に沿った方向に延在して形成されている(1)項または(2)項記載の光学装置。
(4)前記管状部が、前記枠部材と別体のパイプで構成されている(1)項から(3)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(5)前記管状部が、前記枠部材と一体に構成されている(1)項から(3)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(6)前記枠部材の下縁部前面に、前記光学素子の表面との段差を緩和する切欠が形成され、前記管状部の一端開口部を、該切欠に隣接する位置に開口させてなる(1)項から(5)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(7)外気に露出する表面を有する光学素子と、該光学素子を保持する枠部材とを具備し、前記枠部材の下縁部内に両端が開口した連通孔を形成し、該連通孔の一端開口部を該枠部材の下縁部前面に開口させ、該連通孔の他端開口部を前記一端開口部よりも後方位置に開口させ、前記連通孔が、前記光学素子の表面から前記枠部材の下縁部前面に流れ込む水を、その毛管現象により前記一端開口部から吸い込んで排水する光学装置。
(8)前記枠部材の下縁部に、前記光学素子の表面との段差を緩和する切欠が形成され、前記連通孔の一端開口部を、該切欠位置に開口させてなる(7)項記載の光学装置。
(9)前記開口部の内径が3mm以上である(1)項から(8)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(10)前記開口部の断面積が7mm2以上である(1)項から(9)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(11)前記枠部材の前記下縁部の表面に親水膜がコーティングされている(1)項から(10)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(12)前記光学素子が、レンズ、光透過性フード、光学フィルター、ミラーのいずれかである(1)項から(11)項のいずれか1つに記載の光学装置。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】参考発明を、レンズ表面を直接外気に露出させるタイプの屋外用テレビカメラに適用した実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図2】レンズ表面を直接外気に露出させるタイプの従来の屋外用テレビカメラを、雨天時に使用した状態を示す図である。
【図3】カメラモジュールをフード内に収容したタイプの従来の屋外用テレビカメラを、雨天時に使用した状態を示す図である。
【図4】従来の車両用アウターミラーを示す正面図および断面図である。
【図5】図1の実施の形態における排水作用を示す側面図である。
【図6】表1の実験の説明図である。
【図7】図1の実施の形態の変形例を示す正面図および断面図である。
【図8】参考発明を、カメラモジュールをハウジング内に収容したタイプの屋外用テレビカメラに適用した実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図9】図8の実施の形態における排水作用を示す側面図である。
【図10】参考発明を、カメラ用光学フィルターに適用した実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図11】参考発明を車両用アウターミラーに適用した実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図12】参考発明を車両用アウターミラーに適用した他の実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図13】管状部の開口部を円形以外の形状に形成した参考発明の他の実施の形態を示す正面図である。
【図14】表面に親水膜をコーティングした従来の車両用アウターミラーにおいて、雨が上がった後にミラー表面下部に無機塩が析出する推定メカニズムを示す断面図である。
【図15】この発明を車両用アウターミラーに適用した実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図16】空隙距離d1による水垢の析出高さの実験結果を示す線図である。
【図17】図15および図18の車両用アウターミラー64,84による雨天時および雨が上がったときの動作を示す断面図である。
【図18】この発明を車両用アウターミラーに適用した他の実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図19】この発明を透過型装置に適用した他の実施の形態を示す正面図および断面図である。
【符号の説明】
【0065】
12…レンズ(光学素子)、12a…レンズ表面(外気に露出する表面)、14…レンズ枠(枠部材)、14a…レンズ枠の下縁部、14b…レンズ枠の下縁部前面、14c…切欠、22…ハウジング、フード枠(枠部材)、22b…フード枠の下縁部、22c…フード枠の下縁部前面、26…光透過性フード(光学素子)、26a…外気に露出する表面、29,29’…屋外用テレビカメラ(光学装置)、33…ミラー(光学素子、防曇素子)、33a…ミラー表面(外気に露出する表面)、34,58,60,62…パイプ(管状部)、34a,58a,60a,62a…パイプの一端開口部、34b,58b,60b,62b…管状部の他端開口部、35…ミラーホルダー(枠部材)、35a,35d…ミラーホルダーの下縁部、35b,35e…ミラーホルダーの下縁部前面、35c,35f…切欠、36…連通孔、36a…連通孔の一端開口部、36b…管状部の他端開口部、46…カメラ用光学フィルター(光学装置)、48…フィルター板(光学素子)、48a…フィルター板表面(外気に露出する表面)、50…フィルター枠(枠部材)、50a…フィルター枠の下縁部、50b…フィルター枠の下縁部前面、50c…切欠、52…パイプ(管状部)、52a…パイプの一端開口部、52b…管状部の他端開口部、53…車両用アウターミラー(光学装置)、54…パイプ(管状部)、54a…パイプの一端開口部、54b…管状部の他端開口部、55…車両用アウターミラー(光学装置)、56…連通孔、56a…連通孔の一端開口部、56b…連通孔の他端開口部、L…光学素子の光軸、17,103…親水膜、33b…ミラー外周縁部、33ba,100b…ミラー外周縁部下端面、35h,102…外枠、35haa…外枠の内周面、35ha’,102a’…外枠の前端部、64,84…車両用アウターミラー(防曇装置、防曇ミラー装置)、72…ヒーターパネル、76,76a,96,96a,104…空隙、70,90…排水孔、86…開口部、98…透過型防曇装置、100…防曇素子。
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面に親水膜を形成した防曇素子を具えた防曇装置に関し、防曇素子の表面に雨水等の水が溜まるのを防止したものである。また、この発明は、表面に親水膜を形成したミラーを具えた防曇ミラー装置に関し、ミラーの表面に雨水等の水が溜まるのを防止したものである。また、参考発明は、外気に露出する表面を有するレンズ、光透過性フード、光学フィルター、ミラー等の光学素子と、該光学素子を保持する枠部材とを具備するレンズ装置、光透過性フード装置、光学フィルター装置、ミラー装置等の光学装置に関し、光学素子と枠部材との境界部分に雨水等の水が溜まって、光学素子を介して得られる画像に、溜まった水が映り込んだり、光学素子を介して得られる画像がゆがんだりするのを防止したものである。
【背景技術】
【0002】
車載バックカメラや屋外監視カメラ等の屋外で使用されるカメラにおいては、雨天時に、外気に露出する光学素子(レンズ、あるいは、その前面に配置される光透過性フードや光学フィルター等)の表面に水滴が付着すると、映像が不鮮明になる問題がある。そこで、従来より、レンズ表面に付着した水滴を除去する技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、レンズをその光軸を回転軸として回転させて、レンズ表面に付着した水滴を、遠心力により外側に排出して除去する技術が開示されている。ところが、特許文献1記載の技術では、レンズを回転駆動するための機構が必要であり、構成が複雑になる問題があった。
【0003】
また、車両用アウターミラーの表面に付着する水滴を除去する技術として、特許文献2,3に記載されたものがあった。これは、車両用アウターミラーの表面に多孔質シリカ等の親水膜をコーティングすることにより、ミラー表面に付着した水が水滴として留まらないようにしたものである。この技術を応用して、レンズ表面に親水膜をコーティングすれば、特許文献1記載の技術のような複雑な構造を用いることなくレンズ表面に付着した水滴を除去することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−287151号公報
【特許文献2】特開平8−11631号公報
【特許文献3】特開平10−36144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レンズ、あるいは、その前面に配置される光透過性フードや光学フィルター等の光学素子の表面に親水膜をコーティングすると、雨天時に、該光学素子の表面に当たって付着した雨水は、該表面で水滴として留まらずに、該表面に沿って下方に流れ落ちていく。ところが、この下方に流れ落ちた水が、該光学素子と該光学素子を保持する枠部材との境界部分に溜まって水溜まりを形成し、この水溜まりがモニター画像の下部に写り込んで、視認性を悪くする問題があった。図2、図3を参照して、この問題について説明する。
【0006】
図2は、レンズ表面を直接外気に露出させるタイプの屋外用テレビカメラ(車載バックカメラや屋外監視カメラ等)10を、雨天時に使用した状態を示す。(a)はテレビカメラ10の正面図、(b)は同側面図、(c)はテレビカメラ10で撮られてテレビモニタ18に映し出された画像である。テレビカメラ10のレンズ12はレンズ枠14に保持されている。レンズ12の表面には、親水膜がコーティングされている。レンズ12の光軸Lは斜め下方に向けて配置されている。レンズ12の表面に当たった雨水は、親水膜コーティングの作用により、レンズ12の表面に水滴として留まらずに、レンズ12の表面に沿って下方に流れ落ちていく。この下方に流れ落ちた雨水は、レンズ12とレンズ枠14との境界部分に溜まり、水溜まり16を形成する。このため、テレビカメラ10で撮った画像には、図2(c)に示すように、水溜まり16が写り込んでいる。
【0007】
図3は、カメラモジュールをハウジング内に収容したタイプの屋外用テレビカメラ(車載バックカメラや屋外監視カメラ等)20を、雨天時に使用した状態を示す。(a)はテレビカメラ20の正面図、(b)は同側面図、(c)はテレビカメラ20で撮られてテレビモニタ32に映し出された画像である。テレビカメラ20のハウジング22内には、カメラモジュール24が密閉状態に収容されている。ハウジング22の前面開口部22aには、透明ガラス板、透明プラスチック板等で構成された光透過性フード26が嵌め込まれている。したがって、ハウジング22は、光透過性フード26のフード枠を構成する。カメラモジュール24は、ハウジング22内で、レンズ28を光透過性フード26に対面させて、光透過性フード26を透過して外界を撮影する。光透過性フード26の表面には、親水膜がコーティングされている。レンズ28の光軸Lは斜め下方に向けて配置されている。光透過性フード26の表面に当たった雨水は、親水膜コーティングの作用により、光透過性フード26の表面に水滴として留まらずに、光透過性フード26の表面に沿って下方に流れ落ちていく。この下方に流れ落ちた雨水は、光透過性フード26とハウジング22(フード枠)との境界部分に溜まり、水溜まり30を形成する。このため、テレビカメラ20で撮った画像には、図3(c)に示すように、水溜まり30が写り込んでいる。
【0008】
以上のように、光学素子(レンズ12、光透過性フード26、カメラ用光学フィルター等)の表面に親水膜をコーティングすると、雨天時に、光学素子と枠部材との境界部分に水溜まりが形成され、この水溜まりがモニター画像の下部に写り込んで、視認性を悪くしていた。この現象は、表面に親水膜をコーティングした車両用アウターミラーにおいても生じていた。すなわち、図4に示すように、車両用アウターミラー31は、ミラー33をミラーホルダー35(枠部材)で保持した構造を有している。ミラー33の表面に親水膜をコーティングすると、雨天時に、ミラー33の表面に当たった雨水は、親水膜コーティングの作用により、ミラー33の表面に水滴として留まらずに、ミラー33の表面に沿って下方に流れ落ちていく。この下方に流れ落ちた雨水は、ミラー33とミラーホルダー35との境界部分に溜まり、水溜まり37を形成する。このため、ミラー33を介して得られる画像の下部がゆがんで視認性を悪化させていた。また、雨が上がって水溜まり37が乾くと、水溜まり37に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー33の表面下部に白く析出し、ミラーの視界を狭めるとともに見栄えを悪くしていた。
【0009】
図14は水溜まり37が乾いてミラー33の表面下部に無機塩が析出する推定メカニズムを示す。(i)はミラー33の表面が綺麗になっている初期状態である。この状態から雨が降り、雨水がミラー表面33aに当たって付着すると、雨水はミラー表面33aを構成する親水膜17の作用により、ミラー表面33aに水滴として留まらずに、水膜21を形成する。さらに、この雨水はミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちていき、ミラー33の表面下部のミラーホルダー35との境界部分に水溜まり37を形成する。また、この水溜まり37の水はミラー33の下部のミラーホルダー35との間の隙間23を通ってミラー33の背面側のミラーホルダー35との間に形成された空所25に導かれ、該空所25に水溜まり27を形成する。雨が上がると、(iii)に示すようにミラー33の表面の水膜21は蒸発し、ミラー33の表面下部に水溜まり37が残る。水溜まり37の水は徐々に蒸発するが、蒸発するにつれて、ミラー33の背面の水溜まり27の水がミラーホルダー35との間の隙間23を通って水溜まり37に補給される。水溜まり27,37の水が完全に蒸発すると、(vi)に示すようにこの水の中に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー33の表面下部に水垢19として白く析出する。
【0010】
この発明は、表面に親水膜を形成した防曇素子を具えた防曇装置において、防曇素子の表面に雨水等の水が溜まるのを防止しようとするものである。また、この発明は、表面に親水膜を形成したミラーを具えた防曇ミラー装置において、ミラーの表面に雨水等の水が溜まるのを防止しようとするものである。また、参考発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、光学素子と枠部材との境界部分に雨水等の水が溜まるのを抑制して、光学素子を介して得られる画像に、溜まった水が映り込んだり、光学素子を介して得られる画像がゆがんだりするのを防止した光学装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
参考発明の光学装置は、外気に露出する表面を有するレンズ、光透過性フード、光学フィルター、ミラー等の光学素子と、該光学素子を保持する枠部材とを具備し、前記枠部材の下縁部の外周位置に両端が開口した管状部を形成し、該管状部の一端開口部を該枠部材の下縁部前面に隣接する位置に開口させ、該管状部の他端開口部を前記一端開口部よりも後方位置に開口させ、前記管状部が、前記光学素子の表面から前記枠部材の下縁部前面に流れ込む水を、その毛管現象により前記一端開口部から吸い込んで排水するようにしたものである。
【0012】
この参考発明の光学装置によれば、光学素子の表面から枠部材の下縁部前面に流れ込む水を、管状部の毛管現象により吸い込んで排水するようにしたので、光学素子と枠部材との境界部分に雨水等の水が溜まるのを抑制して、光学素子を介して得られる画像に、溜まった水が映り込んだり、光学素子を介して得られる画像がゆがんだりするのを防止することができる。しかも、管状部は枠部材の下縁部の外周位置に形成され、管状部の水を吸い込む一端開口部は枠部材の下縁部前面に隣接する位置に開口しているので、管状部は光学素子の視野に入らず、光学素子を介して得られる映像を視認するのに妨げとならない。
【0013】
この参考発明の光学装置の管状部は、枠部材と別体または一体に構成することができる。また、枠部材の表面に親水膜をコーティングしたり、枠部材の下縁部前面に、光学素子の表面との段差を緩和する切欠を形成して、管状部の一端開口部を、該切欠に隣接する位置に開口させるようにすれば、光学素子から枠部材への水の移動をより円滑にして、管状部による水の吸い込みをより円滑にすることができる。
【0014】
この参考発明の光学装置は、枠部材の下縁部の外周位置に管状部を形成するのに代えて、枠部材の下縁部内に連通孔を形成することもできる。すなわち、外気に露出する表面を有する光学素子と、該光学素子を保持する枠部材とを具備し、前記枠部材の下縁部内に両端が開口した連通孔を形成し、該連通孔の一端開口部を該枠部材の下縁部前面に開口させ、該連通孔の他端開口部を前記一端開口部よりも後方位置に開口させ、前記連通孔が、前記光学素子の表面から前記枠部材の下縁部前面に流れ込む水を、その毛管現象により前記一端開口部から吸い込んで排水するものとして構成することができる。この場合、枠部材の表面に親水膜をコーティングしたり、枠部材の下縁部に、前記光学素子の表面との段差を緩和する切欠を形成して、連通孔の一端開口部を、該切欠位置に開口させるようにすれば、光学素子から枠部材への水の移動をより円滑にして、連通孔による水の吸い込みをより円滑にすることができる。
【0015】
この発明の防曇装置は、表面に親水膜を形成した防曇素子と、該防曇素子の外周縁部に対向してその外方に空隙を隔てて配置された外枠とを具備してなり、前記空隙は少なくとも前記防曇素子の表面側に開口し、前記防曇素子と前記外枠とは前記空隙を形成しない箇所を介して直接または間接に相互に連結されているものである。これによれば、防曇素子の表面に付着した水は、該防曇素子の外周縁部と外枠の間に形成された空隙に引き込まれて排水されるので、防曇素子の表面に水が溜まるのを防止することができる。
【0016】
この発明の防曇装置において、前記空隙は例えば防曇素子の外周縁部の全周や下端面に形成することができる。また、該空隙の距離は例えば0.5mm〜3.0mm、好ましくは0.6mm〜2.2mm、より好ましくは1.0mm〜1.6mmとすることができる。また、該空隙は例えば防曇素子の外周縁部の厚み方向全長にわたり形成することができる。また、防曇素子の表面に対する前記外枠の前端部の前方への突出量は例えば0mm〜5mmとすることができる。また、前記外枠または該外枠につながる箇所には、前記空隙内に引き込まれた水を排水する排水孔を形成することができる。また、この発明の防曇装置は、前記防曇素子を例えばレンズ(監視カメラのレンズ等)、光透過性フード(監視カメラのフード等)、光学フィルター、ガラス窓、ミラー(自動車用アウターミラー、二輪車用ミラー、浴室用ミラー等)とすることができる。
【0017】
この発明の防曇ミラー装置(自動車用アウターミラー、二輪車用ミラー、浴室用ミラー等)は、表面に親水膜を形成したミラーと、前面に形成された開口部内に前記ミラーを収容保持するミラーホルダーとを具備し、前記ミラーの外周縁部と前記ミラーホルダーの前記開口部を構成する外枠の内周面との間に空隙を形成し、前記空隙は前記ミラーの表面側に開口するようにしたものである。これによれば、ミラーの表面に付着した水は、該ミラーの外周縁部と外枠の間に形成された空隙に引き込まれて排水されるので、ミラーの表面に水が溜まるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(参考発明の実施の形態1)
参考発明を、前記図2のレンズ表面を直接外気に露出させるタイプの屋外用テレビカメラに適用した実施の形態を図1に示す(レンズおよびレンズ枠の部分のみ示す。図2と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。屋外用テレビカメラ29において、レンズ枠14は鉄、ステンレス、アルミ等の金属またはプラスチックで円筒状に構成されている。レンズ枠14の先端開口部付近には、レンズ12が嵌め込み装着されている。レンズ12の表面12aには、図示しない親水膜として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜がコーティングされている。これにより、レンズ表面12aは親水性にされている。
【0019】
レンズ枠14の下縁部(全周縁部のうちの下側の部分)14aの外周位置(下縁部14aの直下位置)には、パイプ34が接着剤等により装着されている。パイプ34は、レンズ12の光軸Lに沿った方向に延在した状態で(つまり、パイプ34の軸をレンズ光軸Lと平行に配置した姿勢で)配置されている。パイプ34は、例えばポリプロピレン、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)等のプラスチック、セロハン、金属等の材料で直管円筒状に構成されている。パイプ34の両端は開口しており、その前側の開口部34aは、レンズ枠14の下縁部14aの前面14bに隣接して、該前面14bと同一平面上に前方に向けて開口している。後側の開口部34bは、前側の開口部34aよりも後方に開口している。
【0020】
図5は、図1の屋外用テレビカメラ29を、雨天時に使用した状態を示す。レンズ12の光軸Lは斜め下方に向けられている。(i)は雨水が付着する前の状態である。この状態で雨水がレンズ表面12aに当たって付着すると、(ii)に示すように、雨水39はレンズ表面12aの親水膜コーティングの作用により、レンズ表面12aに水滴として留まらずに、レンズ表面12aに沿って下方に流れ落ちていく。この雨水39は、さらに、レンズ枠下縁部前面14bを通って、パイプ34の前側の開口部34aに至り、パイプ34の毛管現象により、開口部34aからパイプ34内に吸い込まれていく。レンズ枠下縁部前面14bとパイプ開口部34a(開口部端面)は同一平面上にあるので、レンズ枠下縁部前面14bからパイプ開口部34aへの水の移動は円滑に行われる。さらに、雨水39がレンズ表面12aからレンズ枠下縁部前面14bおよびパイプ前側開口部34aを経てパイプ34内に供給され続けると、パイプ34内に雨水39を保持しきれなくなるので、(iii)に示すように、余剰の雨水39がパイプ34の前端部から滴下して(39a)排水される(レンズ光軸Lが水平姿勢の場合は、パイプ34の前後両端部から排水され、レンズ光軸Lが斜め上向き姿勢の場合は、パイプ34の後端部から排水される。)。したがって、雨水39は水溜まりとして大きく成長することなく排水される。これにより、テレビカメラ29で撮った映像に水溜まりが写り込むのが抑制される。なお、レンズ枠14の表面(特に下縁部前面14b)に親水膜をコーティングすることにより、レンズ表面12aからレンズ枠下縁部前面14bへの水の移動をより円滑にして、パイプ34による水の吸い込みをより円滑にすることができる。
【0021】
図1のテレビカメラ29について、パイプ34の長さ、内径、厚みを様々に変化させて実験を行い、効果の違いを確認した。この実験では、セロハンフィルムを基材とする粘着テープを筒状に巻いてパイプ34を作製した。このとき、粘着フィルムを筒状に巻くときの内径および巻き数を調整することにより、任意の内径および任意の厚みを実現した。はじめに、パイプ34の長さと内径を様々に変えて、テレビカメラ29を、図6(a)に示す水平状態と、図6(b)に示す下向き80度の状態にそれぞれ設定してして、レンズ表面12aに水を霧吹きで吹きかけて水溜まりの形成状態(有り、少し有り、無し)を確認した。測定結果を表1に示す。この測定結果によれば、カメラの取り付け角度およびパイプ34の長さによらず、パイプ34の内径が3mm以上(断面積でいえば、7mm2以上)であれば、水溜まりを形成しにくくなり、効果を発揮することがわかった。
【表1】
【0022】
次に、パイプ34の厚みを0.05mm〜5mmまで、0.05mm刻みで変更して、表1と同様の実験を行ったところ、厚みが0.05mm〜3mmまでは水溜まりはなかったが、厚みが3mmを超えると、水が溜まりやすくなった。
【0023】
(参考発明の実施の形態1の変形例)
図1の実施の形態において、レンズ枠14の下縁部前面14bに、レンズ表面12aとの段差を緩和する切欠を形成することにより、レンズ表面12aからレンズ枠下縁部前面14bへの水の移動をより円滑にして、水溜まりが生じるのをより効果的に抑制することができる。そのように構成した実施の形態を図7に示す。屋外用テレビカメラ29’において、レンズ枠14の下縁部14aの前面14bは、平滑面状に切削または成型されて、切欠14cが形成されている。これにより、レンズ表面12aとレンズ枠下縁部前面14bとの境界部分41の段差が緩和されている。このような構造により、レンズ表面12aからレンズ枠下縁部前面14bへの水の移動をより円滑にして、レンズ表面12aとレンズ枠下縁部前面14bとの境界部分41に水溜まりが生じるのをより効果的に抑制することができる。
【0024】
パイプ34の前側の開口部34aは、切欠14cに隣接して、該切欠14cと同一平面上に前方に向けて開口している。切欠14cとパイプ開口部34a(開口部端面)は同一平面上にあるので、切欠14cからパイプ開口部34aへの水の移動は円滑に行われる。なお、切欠14cの表面に親水膜をコーティングすることにより、レンズ表面12aから切欠14cへの水の移動および切欠14cからパイプ開口部34aへの水の移動をさらに円滑にすることができる。
【0025】
図7の構造について、切欠14cの幅を様々に変えて効果を確認したところ、レンズ枠14の外径(実験で使用したレンズ枠14の外径は約16mm)に対して、切欠14cの幅を30%以上にすると、水溜まりを効果的に抑制できた。
【0026】
なお、図1、図7の実施の形態では、パイプ34をレンズ枠14と別体で構成し、接着によりこれらを相互に連結するようにしたが、パイプ34とレンズ枠14を同一材料で一体に構成する(一体成型する)こともできる。
【0027】
(参考発明の実施の形態2)
参考発明を、前記図3のカメラモジュールをハウジング内に収容したタイプの屋外用テレビカメラに適用した実施の形態を図8に示す(図3と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。テレビカメラ45のハウジング22内には、カメラモジュール24が密閉状態に収容されている。ハウジング22の前面開口部22aには、透明ガラス板、透明プラスチック板等で構成された光透過性フード26が嵌め込まれている。したがって、ハウジング22は、光透過性フード26のフード枠を構成する。カメラモジュール24は、ハウジング22内で、レンズ28を光透過性フード26に対面させて、光透過性フード26を透過して外界を撮影する。光透過性フード26の表面26aには、図示しない親水膜として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜がコーティングされている。これにより、光透過性フード表面26aは親水性とされている。
【0028】
フード枠(ハウジング)22の下縁部22bの前面22cは、平滑面状に切削または成型されて、切欠22dが形成されている。これにより、フード枠下縁部前面22c(切欠22d)は光透過性フード26の表面26aとほぼ同一平面状に形成され、両者間の段差が緩和されている。このような構造により、光透過性フード表面26aからフード枠下縁部前面22cへの水の移動を円滑にして、光透過性フード表面26aとフード枠下縁部前面22cとの境界部分43に水溜まりが生じるのを効果的に抑制することができる。なお、ハウジング22の表面(特に、切欠22dの表面)に親水膜をコーティングして、光透過性フード表面26aから切欠22dへの水の移動をより円滑にすることもできる。
【0029】
フード枠下縁部22b内には、複数の連通孔36が、それぞれ光軸Lに沿った方向に延在した状態で(つまり、連通孔36の軸をレンズ光軸Lと平行に配置した姿勢で)、横方向に並べて形成されている。連通孔36の両端は開口しており、その前側の開口部36aは、切欠22dの位置で前方に向けて開口している。また、連通孔36の後部は下方に屈曲しており、連通孔36の後側の開口部36bはフード枠下縁部22bの底面に開口している。
【0030】
図9は、図8の屋外用テレビカメラ45を、雨天時に使用した状態を示す。レンズ光軸Lは斜め下方に向けられている。(i)は雨水が付着する前の状態である。この状態で雨水が光透過性フード26の表面26aに当たって付着すると、(ii)に示すように、雨水44は光透過性フード表面26aの親水膜コーティングの作用により、光透過性フード表面26aに水滴として留まらずに、光透過性フード表面26aに沿って下方に流れ落ちていく。この雨水44は、さらに、フード枠下縁部前面22c(切欠22d)から連通孔36の前側の開口部36aに至り、連通孔36の毛管現象により、開口部36aから連通孔36内に吸い込まれていく。さらに、雨水44が光透過性フード表面26aからフード枠下縁部前面22c(切欠22d)および連通孔前側開口部36aを経て連通孔36内に供給され続けると、連通孔36内に雨水44を保持しきれなくなるので、(iii)に示すように、余剰の雨水44が下縁部前面22c(切欠22d)から滴下して(44a)排水される(レンズ光軸Lが水平姿勢の場合は、後側の開口部36bからも排水され、レンズ光軸Lが斜め上向き姿勢の場合は、主に後側の開口部36bから排水される。)。したがって、雨水44は水溜まりとして大きく成長することなく排水される。これにより、テレビカメラ45で撮った映像に水溜まりが写り込むのが抑制される。
【0031】
(参考発明の実施の形態3)
参考発明をカメラ用光学フィルターに適用した実施の形態を図10に示す。このカメラ用光学フィルター46は、NDフィルター、偏光フィルター等のフィルター板48をフィルター枠50に嵌め込み装着して構成されている。フィルター板48の表面48aには、図示しない親水膜として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜がコーティングされている。これにより、フィルター板表面48aは親水性とされている。フィルター枠50の後部外周面には、この光学フィルター46をカメラのレンズ枠前端部にねじ込み装着するためのねじ51が形成されている。フィルター枠50の下縁部50aの前面50bは、平滑面状に切削または成型されて、切欠50cが形成されている。
【0032】
フィルター枠50の下縁部50aの外周位置(下縁部50aの直下位置)には、パイプ52が接着剤等により装着されている。パイプ52は、フィルター板48の光軸Lに沿った方向に延在した状態で(つまり、パイプ52の軸をフィルター板48の光軸Lと平行に配置した姿勢で)配置されている。パイプ52は、例えばポリプロピレン、ABS等のプラスチック、セロハン、金属等の材料で直管円筒状に構成されている。パイプ52の両端は開口しており、その前側の開口部52aは、フィルター枠50の下縁部50aの前面50b(切欠50c)に隣接して、該前面50b(切欠50c)と同一平面上に前方に向けて開口している。後側の開口部52bは前側の開口部52aよりも後方に開口している。
【0033】
以上の構成によれば、雨天時に、雨水がフィルター板表面48aに当たって付着すると、雨水はフィルター板表面48aの親水膜コーティングの作用により、フィルター板表面48aに水滴として留まらずに、フィルター板表面48aに沿って下方に流れ落ちていく。この雨水は、さらに、フィルター枠下縁部50aの切欠50cを通って、パイプ52の前側の開口部52aに至り、パイプ52の毛管現象により、開口部52aからパイプ52内に吸い込まれていく。フィルター枠下縁部50aの切欠50cとパイプ開口部52a(開口部端面)は同一平面上にあるので、フィルター枠下縁部50aの切欠50cからパイプ開口部52aへの水の移動は円滑に行われる。さらに、雨水がフィルター板表面48aからフィルター枠下縁部50aの切欠50cおよびパイプ前側開口部52aを経てパイプ52内に供給され続けると、パイプ52内に雨水を保持しきれなくなるので、余剰の雨水がパイプ52の前端部もしくは後端部または前後両端部から滴下して排水される。したがって、雨水は水溜まりとして大きく成長することなく排水される。これにより、カメラで撮った映像に水溜まりが写り込むのが抑制される。なお、フィルター枠50の表面(特に切欠50c)に親水膜をコーティングすることにより、フィルター板表面48aから切欠50cへの水の移動をより円滑にして、パイプ52による水の吸い込みをより円滑にすることができる。
【0034】
また、フィルター枠50にパイプ52を設けるのに代えて、前記図8の実施の形態と同様に、フィルター枠下縁部50a自体に連通孔を形成し、連通孔の前側の開口部を切欠50cに開口するものとして構成することもできる。
【0035】
(参考発明の実施の形態4)
参考発明を車両用アウターミラーに適用した実施の形態を図11に示す(図4と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。車両用アウターミラー53は、ミラー33をミラーホルダー35(枠部材)に嵌め込み装着して構成されている。ミラー33の表面33aには、図示しない親水膜として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜がコーティングされている。これにより、ミラー表面33aは親水性とされている。ミラーホルダー35の下縁部35aの前面35bは、平滑面状に切削または成型されて、切欠35cが形成されている。
【0036】
ミラーホルダー35の下縁部35aの外周位置(下縁部35aの直下位置)には、パイプ54が接着剤等により装着されている。パイプ54は、ミラー33の光軸Lに沿った方向に延在した状態で(つまり、パイプ54の軸をミラー33の光軸Lと平行に配置した姿勢で)配置されている。パイプ54は、例えばポリプロピレン、ABS等のプラスチック、セロハン、金属等の材料で直管円筒状に構成されている。パイプ54の両端は開口しており、その前側の開口部54aは、ミラーホルダー35の下縁部35aの前面35b(切欠35c)に隣接して、該前面35b(切欠35c)と同一平面上に前方に向けて開口している。後側の開口部54bは前側の開口部54aよりも後方に開口している。
【0037】
以上の構成によれば、雨天時に、雨水がミラー表面33aに当たって付着すると、雨水はミラー表面33aの親水膜コーティングの作用により、ミラー表面33aに水滴として留まらずに、ミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちていく。この雨水は、さらに、ミラーホルダー下縁部35aの切欠35cを通って、パイプ54の前側の開口部54aに至り、パイプ54の毛管現象により、開口部54aからパイプ54内に吸い込まれていく。ミラーホルダー下縁部35aの切欠35cとパイプ開口部54a(開口部端面)は同一平面上にあるので、ミラーホルダー下縁部35aの切欠35cからパイプ開口部54aへの水の移動は円滑に行われる。さらに、雨水がミラー表面33aからミラーホルダー下縁部35aの切欠35cおよびパイプ前側開口部54aを経てパイプ54内に供給され続けると、パイプ54内に雨水を保持しきれなくなるので、余剰の雨水がパイプ54の前端部もしくは後端部または前後両端部から滴下して排水される。したがって、雨水は水溜まりとして大きく成長することなく排水される。これにより、ミラー33を介して得られる画像の下部がゆがんで視認性を悪化させるのが防止される。また、水溜まりの発生が抑制されるので、雨が上がった後に、雨に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー表面33aの下部に白く析出してミラーの視界を狭めたり見栄えを悪くするのが抑制される。
【0038】
(参考発明の実施の形態5)
参考発明を車両用アウターミラーに適用した他の実施の形態を図12に示す(図11と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。これは、ミラーホルダーの下縁部自体に連通孔を形成したものである。車両用アウターミラー55は、ミラー33をミラーホルダー35(枠部材)に嵌め込み装着して構成されている。ミラー33の表面33aには、図示しない親水膜として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜がコーティングされている。これにより、ミラー表面33aは親水性とされている。ミラーホルダー35の下縁部35dの前面35eは、平滑面状に切削または成型されて、切欠35fが形成されている。
【0039】
ミラーホルダー35の下縁部35d内には、複数の連通孔56が、それぞれ光軸Lに沿った方向に延在した状態で(つまり、連通孔56の軸をミラー光軸Lと平行に配置した姿勢で)、横方向に並べて形成されている。連通孔56の両端は開口しており、その前側の開口部56aは、切欠35fの位置で前方に向けて開口している。また、連通孔56の後側の開口部56bは前側の開口部56aよりも後方に開口している。
【0040】
以上の構成によれば、雨天時に、雨水がミラー表面33aに当たって付着すると、雨水はミラー表面33aの親水膜コーティングの作用により、ミラー表面33aに水滴として留まらずに、ミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちていく。この雨水は、さらに、ミラーホルダー下縁部35dの切欠35fら連通孔56の前側の開口部56aに至り、連通孔56の毛管現象により、開口部56aから連通孔56内に吸い込まれていく。さらに、雨水がミラー表面33aから切欠35fおよび連通孔前側開口部56aを経て連通孔56内に供給され続けると、連通孔56内に雨水を保持しきれなくなるので、余剰の雨水が切欠35fもしくはその背面位置またはこれら両面から滴下して排水される。したがって、雨水は水溜まりとして大きく成長することなく排水される。これにより、ミラー33を介して得られる画像の下部がゆがんで視認性を悪化させるのが防止される。また、水溜まりの発生が抑制されるので、雨が上がった後に、雨に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー表面33aの下部に白く析出してミラーの視界を狭めたり見栄えを悪くするのが抑制される。
【0041】
なお、前記実施の形態では、管状部の開口部および連通孔の開口部の形状を円形としたが、開口部の形状はこれに限るものでなく、例えば楕円、三角形や四角形などの多角形に形成することもできる。また、開口部の形状がいずれの場合にも、開口部の縦横比は、1に近いことが望ましい。図13は、図1の構造について、管状部の開口部を円形以外の形状に形成した例である。すなわち、図13(a)は直管正四角筒状のパイプ58を使用して、該パイプ58の前後開口部58a,58bの正面形状を正四角形に形成したものである。同(b)は、正三角筒状のパイプ60を使用して、該パイプ60の前後開口部60a,60bの正面形状を正三角形に形成したものである。同(c)は、正六角筒状のパイプ62を使用して、該パイプ62の前後開口部62a,62bの正面形状を正六角形に形成したものである。前述のように、管状部の開口部の形状が円形の場合には、その内径(開口部径)が3mm以上(断面積でいえば、7mm2以上)あれば、水溜まりを形成しにくくなるので、管状部の開口部の形状が円形以外である場合にも、該開口部の断面積を7mm2以上にするのが望ましいと考えられる。断面積を7mm2以上にするためには、図13(a)の正四角形状の開口部58a,58bの場合はその一辺の長さを約2.6mm以上に形成し、同(b)の正三角形状の開口部60a,60bの場合はその一辺の長さを約4mm以上に形成し、同(c)の正六角形の場合はその一辺の長さを約1.6mm以上に形成すればよい。
【0042】
また、前記実施の形態では、光学素子の表面に親水膜がコーティングされている場合について説明したが、参考発明はこれに限らず、光学素子の表面に親水膜がコーティングされていない場合にも適用できる。すなわち、光学素子の表面に親水膜がコーティングされていない場合には、光学素子の表面に付着した水が水滴として該表面に留まりやすくなるが、水滴がある程度以上大きくなれば、該水滴は該表面に沿って下方に流れ落ちていく。そして、この下方に流れ落ちた水は、光学素子と該光学素子を保持する枠部材との境界部分に溜まって水溜まりを形成し、この水溜まりがモニター画像の下部に写り込んで、視認性を悪くする。そこで、光学素子の表面に親水膜がコーティングされていない場合にも、この参考発明を適用して、管状部や連通孔を形成することにより、光学素子と枠部材との境界部分に雨水等の水が溜まるのを抑制して、光学素子を介して得られる画像に、溜まった水が映り込んだり、光学素子を介して得られる画像がゆがんだりするのを防止することができる。
【0043】
(本願発明の実施の形態1)
この発明を車両用アウターミラーに適用した実施の形態を図15に示す(図4と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。車両用アウターミラー64において、ミラーホルダー35の前面には、ミラー33の面よりも大口径の開口部66が形成されている。開口部66内奥の内周面には、該開口部66を形成する外枠35hの全周に沿って複数個の保持用リブ68がほぼ均等間隔で突出形成されている。保持用リブ68の角部には角形に切り欠かれた受け部68aが形成されている。また、ミラーホルダー35の外枠下縁部35haまたは該外枠下縁部35haよりも奥の箇所には、単一または複数の排水孔70が貫通形成されている。
【0044】
ミラー33の表面33aには、親水膜17として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜が全面にコーティングされている。これにより、ミラー表面33aは親水性とされている。ミラー33の背面には、ヒーターパネル72が貼り付けられている。ミラー33はミラーホルダー35の開口部66内に収容され、ミラー33の外周縁部33bの背面側角部が保持用リブ68の受け部68aに支持される。ミラー33の背面のヒーターパネル72とミラーホルダー35の底部35gとは両面テープまたは接着剤74で相互に接合されている。これにより、ミラー33とミラーホルダー35は一体化されている。このとき、ミラー33の外周縁部33bは保持用リブ68の受け部68aで支持されているので、ミラー33はミラーホルダー35の開口部66内の中央位置に正確に位置決めされるとともに、車両走行時にミラー33に振動(ビビリ)が生じるのが防止される。
【0045】
ミラー33とミラーホルダー35を上記のように一体化した状態では、ミラー33の外周縁部33bとミラーホルダー35の外枠35hとの間に空隙76が全周にわたりほぼ均一の間隔(ギャップ長)で形成される。空隙76の距離d1(ギャップ長)は0.5mm〜3mmが好適である。すなわち、空隙距離d1を0.5mm〜3mmに設定したところ、ミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちる水を空隙76に良好に引き込んで、ミラー表面33aの下部(ミラー視野の範囲内)に大きな水溜まりが形成されるのを抑制することができた。また、空隙距離d1が0.5mm〜3mmのときは水垢が析出されにくく、またたとえ析出しても空隙距離d1が0mmの従来品に比べてその濃さは薄く目立ちにくいものであった。
【0046】
空隙距離d1による水垢の析出高さの変化について実験した。実験は、空隙距離d1を約0.5mm〜約2.0mmの範囲で約0.5mmステップで異ならせた複数の車両用アウターミラーの試料1〜9を用意して次の手順で行った。
《実験手順》
1)ステンレスパッドに水道水を水深30mmになるように注入する。
2)このステンレスパッドの水道水中に試料を実使用時の姿勢に近い、鏡面が水面に垂直となる状態に保持して2分間浸漬する。
3)2分間の浸漬を終了したら、試料を、その鏡面を垂直に保持したまま水面から引き上げて30秒間水切りを行う。
4)予め80°Cに設定された高温槽に試料を垂直に吊して1時間保持する。
5)試料を高温槽から取り出す。
6)ミラー表面33aの下部に析出した水垢の、ミラー表面下端部からの高さを計測する。
【0047】
各試料の水垢析出高さの計測結果を表2に示す。
【表2】
【0048】
図16は表2の結果をプロットしたものである。図16中の曲線はその近似曲線である。なお、空隙距離d1が0mmの従来品について同様の実験をしたところ、水垢析出高さは4.2mm〜6.5mmであった。これらの実験結果によれば、空隙距離d1を0.6mm〜2.2mmに設定すると空隙距離d1が0mmの従来品に比べて水垢析出高さを低減でき、空隙距離d1を1.0mm〜1.6mmに設定すると水垢析出高さを特に低減できることがわかる。また、水道水に代えて純水を使用して上記と同様の実験をしたところ、水垢析出は生じなかった。この結果から、水に含まれる不純物、ミネラル分が水垢の要素であることがわかる。
【0049】
また、ミラー表面33aに対する外枠35h(特に外枠下縁部35ha)の前端部35ha’の前方への突出量d2は0mm(突出なし)〜5mmが好適である。すなわち、ミラー表面33aに対し前端部35ha’が引っ込んでいる場合(つまりd2の値が負の場合)には、ミラー表面33aの外周縁部33bの付近に付着した水を空隙76(特にミラー33の外周縁部下端面33baに臨む空隙76a)に引き込む能力が低下する。また、ミラー表面33aに対し外枠35hが5mmよりも多く突出すると、その突出部分がミラーの視界を狭める。
【0050】
なお、図15の例では空隙76はその奥行き方向についてミラー33の厚み方向全長にわたり形成されているが、水を引き込む能力が確保される限りミラー33の厚み方向の途中まで形成する(すなわち、ミラー33の厚み方向後部は空隙が形成されていない構造とする)こともできる。また、ミラー33の外周縁部33bがミラーホルダー35から浮いていると該外周縁部33bのカット端面がぎらつきを生じ運転者にとって目障りになる可能性がある。そこで、該外周縁部33bを例えばすりガラス状に加工することにより、該カット端面のぎらつきを防止することができる。
【0051】
以上の構成の車両用アウターミラー64による雨天時および雨が上がったときの動作を図17を参照して説明する。(i)はミラー表面33aが綺麗になっている初期状態である。この状態から雨が降り、雨水がミラー表面33aに当たって付着すると、雨水はミラー表面33aの親水膜17の作用により、ミラー表面33aに水滴として留まらずに、水膜77を形成する。さらに、この雨水はミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちていき、(ii)に示すように空隙76a内でミラー33の外周縁部下端面33baに水溜まり78として垂れ下がる。水溜まり78が少し大きくなると、(iii)に示すように水溜まり78は外枠下縁部35haの内周面35haaに着地し、空隙76a内を満たしていく。すなわち、空隙76aの距離d1が比較的短いので、水溜まり78の水は水滴として滴下する前に内周面35haaに伝わって流れる。したがって、外枠35h(35ha)が無い場合に比べてミラー33の外周縁部下端面33baからの水の離れがよくなる。雨水が空隙76a内にさらに供給されると、余剰の雨水は、排水孔70または空隙76aの前方の開口部から水滴80として滴下して排水される。雨が上がると、ミラー表面33aの水膜77は自然に蒸発しあるいはヒーターパネル72に通電して強制的に蒸発する。また、空隙76aに残留した雨水はしだいに蒸発する。空隙76a内の水が完全に蒸発すると、(iv)に示すようにこの水の中に含まれていたカルシウム等の無機塩が、空隙76aの内周面(ミラーホルダー外枠下縁部内周面35haaおよびミラー外周縁部下端面33ba)に水垢82として白く析出する。
【0052】
以上のようにして、図15の車両用アウターミラー64によれば、雨天時にミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちてきた雨水は空隙76a内に引き込まれるため、ミラー表面33aの下部(ミラー視野の範囲内)に水溜まりを形成するのが抑制される。したがって、ミラー33を介して得られる画像の下部がゆがんで視認性を悪化させるのが防止される。また、ミラー表面33aの下部に水溜まりを形成するのが抑制されるので、雨が上がった後に、雨に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー表面33aの下部に水垢として白く析出してミラーの視界を狭めたり見栄えを悪くするのが抑制される。
【0053】
また、親水膜コーティングミラーがヒーター付ミラーである場合には、ミラーがミラーホルダーに全周で嵌め込み装着されていると、ヒーター駆動を繰り返すうちにミラー表面の下縁部のみならずミラー表面の外周縁部付近全周に水垢が析出することが判明した。これに対し、図15の車両用アウターミラー64のようにミラー33の外周縁部33bの全周に空隙76を形成すると、ヒーター駆動を繰り返してもミラー表面33aの外周縁部33bの付近の全周いずれの箇所においても水垢の析出が抑制されることが分かった。もっとも、図15の車両用アウターミラー64のようにミラー33の外周縁部33bの全周に空隙76を形成する構造は、ヒーターを有しないミラーにも適用できることは言うまでもない。
【0054】
(本願発明の実施の形態2)
この発明を車両用アウターミラーに適用した実施の形態を図18に示す(図15と共通する箇所には、同一の符号を用いる。)。これは、図15の車両用アウターミラー64がヒーター付ミラーであってミラー33の外周縁部33bの全周に空隙76を形成しているのに対し、図18の車両用アウターミラー84はヒーター無しミラーとして構成してミラー33の外周縁部33bの下端面33baに限定して空隙96を形成したものである。車両用アウターミラー84は、ミラー33をミラーホルダー35に嵌め込み装着して構成されている。ミラーホルダー35の前面には、ミラー33を収容するための開口部86が形成されている。ミラーホルダー35の開口部86を形成する外枠35hのうち、下縁部35haを除く各縁部(左縁部35hb、上縁部35hc、右縁部35hd)の前端部には、ミラー33を嵌め込み装着するために折り返し35iが形成されている。開口部86を正面から見た開口寸法は、左右方向の寸法Dhがミラー33の左右方向の寸法よりも小さく、上下方向の寸法Dvがミラー33の上下方向の寸法よりも大きく設定されている。開口部86内奥の内周面には、ミラーホルダー35の外枠下縁部35haに沿って複数個の保持用リブ88がほぼ均等間隔で突出形成されている。保持用リブ88の角部には角形に切り欠かれた受け部88aが形成されている。また、ミラーホルダー35の外枠下縁部35haまたは該外枠下縁部35haよりも奥の箇所には、単一または複数の排水孔90が貫通形成されている。
【0055】
ミラー33の表面33aには、親水膜17として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜が全面にコーティングされている。これにより、ミラー表面33aは親水性とされている。ミラー33はミラーホルダー35の開口部86内に収容され、ミラー33の外周縁部33bのうち下端面33baを除く各端面(左、上、右の各端面)の前面側角部がミラーホルダー35の外枠35hの折り返し35iに係止され、ミラー33の下端面33baの背面側角部が保持用リブ88の受け部88aに支持される。ミラー33の背面とミラーホルダー35の底部35gとは両面テープまたは接着剤94で相互に接合されている。これにより、ミラー33とミラーホルダー35は一体化されている。このとき、ミラー33の外周縁部33bは保持用リブ88の受け部88aおよび外枠35hの折り返し35iで支持されているので、ミラー33はミラーホルダー35の開口部86内の中央位置に正確に位置決めされるとともに、車両走行時にミラー33に振動(ビビリ)が生じるのが防止される。
【0056】
ミラー33とミラーホルダー35を上記のように一体化した状態では、ミラー33の下端面33baとミラーホルダー35の外枠下縁部内周面35haaとの間に、ミラー表面33aの下部に付着した水を引き込むための空隙96がほぼ均一の間隔(ギャップ長)で形成される。空隙96の距離d1(ギャップ長)は前記実施の形態1と同様に0.5mm〜3.0mm、好ましくは0.6mm〜2.2mm、より好ましくは1.0mm〜1.6mmとすることができる。また、ミラー表面33aに対する外枠下縁部35haの前端部35ha’の前方への突出量d2は0mm(突出なし)〜5mmが好適である。すなわち、ミラー表面33aに対し前端部35ha’が引っ込んでいる場合(つまりd2の値が負の場合)には、ミラー表面33aの下部に付着した水を空隙96に引き込む能力が低下する。また、ミラー表面33aに対し外枠下縁部35haが5mmよりも多く突出すると、その突出部分がミラーの視界を狭める。また、空隙96はミラー33の厚み方向全長にわたり形成されている。なお、空隙96に臨むミラー33の外周縁部下端面33baをすりガラス状に加工すると、該外周縁部下端面33baのカット端面のぎらつきを防止することができる。
【0057】
以上の構成の車両用アウターミラー84による雨天時および雨が上がったときの動作は前出の図17と同じである。すなわち、ミラー33の表面が綺麗になっている(i)の初期状態から雨が降り、雨水がミラー表面33aに当たって付着すると、雨水はミラー表面33aの親水膜17の作用により、ミラー表面33aに水滴として留まらずに、水膜77を形成する。さらに、この雨水はミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちていき、(ii)に示すように空隙96内でミラー33の外周縁部下端面33baに水溜まり78として垂れ下がる。水溜まり78が少し大きくなると、(iii)に示すように水溜まり78は外枠下縁部35haの内周面35haaに着地し、空隙96内を満たしていく。すなわち、空隙96aの距離d1が比較的短いので、水溜まり78の水は水滴として滴下する前に内周面35haaに伝わって流れる。したがって、外枠35h(35ha)が無い場合に比べてミラー33の外周縁部下端面33baからの水の離れがよくなる。雨水が空隙96内にさらに供給されると、余剰の雨水は、排水孔90または空隙96の前方の開口部から水滴80として滴下して排水される。雨が上がると、ミラー33の表面の水膜77は自然に蒸発する。また、空隙96に残留した雨水はしだいに蒸発する。空隙96内の水が完全に蒸発すると、(iv)に示すようにこの水の中に含まれていたカルシウム等の無機塩が、空隙96の内周面(ミラーホルダー外枠下縁部内周面35haaおよびミラー外周縁部下端面33ba)に水垢82として白く析出する。
【0058】
以上のようにして、図18の車両用アウターミラー84によれば、雨天時にミラー表面33aに沿って下方に流れ落ちてきた雨水は空隙96内に引き込まれるため、ミラー表面33aの下部(ミラー視野の範囲内)に水溜まりを形成するのが抑制される。したがって、ミラー33を介して得られる画像の下部がゆがんで視認性を悪化させるのが防止される。また、ミラー表面33aの下部に水溜まりを形成するのが抑制されるので、雨が上がった後に、雨に含まれていたカルシウム等の無機塩が、ミラー表面33aの下部に水垢として白く析出してミラーの視界を狭めたり見栄えを悪くするのが抑制される。また、この車両用アウターミラー84は、ミラー33の下縁部を除く各縁部(左、上、右の各縁部)がミラーホルダー外枠35hの下縁部35haを除く各縁部(左縁部35hb、上縁部35hc、右縁部35hd)に接触している(すなわち、これら各縁部35hb、35hc、35hdでミラー33とミラーホルダー35との間に空隙が形成されていない)ものの、ヒーター無しミラーであるので、ミラー表面33aの左、上、右の各部に水垢が析出されるのは抑制される。
【0059】
(本願発明の実施の形態3)
この発明をレンズ、光透過性フード、光学フィルター、ガラス窓等の透過型防曇装置に適用した実施の形態を図19に示す。この透過型防曇装置98は防曇素子100を外枠102に嵌め込み装着して構成されている。防曇素子100は透明部材101の表面100a(外気に露出する面)に、親水膜103として、例えば、酸化チタン等の光触媒膜と多孔質シリカ等の親水膜による二層膜を全面にコーティングして構成されている。これにより、防曇素子表面100aは親水性とされている。
【0060】
防曇素子100の下端面100bと外枠102の下縁部102aの内周面102aaとの間には、防曇素子表面100aの下部に付着した水を引き込むための空隙104がほぼ均一の間隔(ギャップ長)で形成されている。空隙104の距離d3(ギャップ長)は前記実施の形態1,2と同様に0.5mm〜3.0mm、好ましくは0.6mm〜2.2mm、より好ましくは1.0mm〜1.6mmとすることができる。また、防曇素子表面100aに対する外枠下縁部102aの前端部102a’の前方への突出量d4は0mm(突出なし)以上が好適である。すなわち、防曇素子表面100aに対し前端部102a’が引っ込んでいる場合(つまりd4の値が負の場合)には、防曇素子表面100aの下部に付着した水を空隙104に引き込む能力が低下する。空隙104は防曇素子100の厚み方向全長にわたり形成されている。空隙104は後方に開口している。なお、空隙104に臨む防曇素子100の下端面100bをすりガラス状に加工すると、該下端面100bのカット端面のぎらつきを防止することができる。
【0061】
以上の構成の透過型防曇装置98によれば、雨が降って雨水が防曇素子表面100aに当たって付着すると、雨水は防曇素子表面100aの親水膜103の作用により、防曇素子表面100aに水滴として留まらずに、水膜を形成する。さらに、この雨水は防曇素子表面100aに沿って下方に流れ落ちていき、空隙104内で防曇素子100の外周縁部下端面100bに水溜まりとして垂れ下がる。この水溜まりが少し大きくなると、この水溜まりは外枠102の下縁部内周面102aaに着地し、空隙104内を満たしていく。すなわち、空隙104aの距離d3が比較的短いので、水溜まりの水は水滴として滴下する前に外枠102の下縁部内周面102aaに伝わって流れる。したがって、外枠102(102a)が無い場合に比べてミラー33の防曇素子下端面100bからの水の離れがよくなる。雨水が空隙104内にさらに供給されると、余剰の雨水は、空隙104の前方または後方の開口部から水滴として滴下して排水される。雨が上がると、防曇素子100の表面の水膜は自然に蒸発する。また、空隙104に残留した雨水はしだいに蒸発する。空隙104内の水が完全に蒸発すると、この水の中に含まれていたカルシウム等の無機塩が、空隙104の内周面(外枠102の下縁部内周面102aaおよび防曇素子100の外周縁部下端面100b)に水垢として白く析出する。
【0062】
以上のようにして、図19の透過型防曇装置98によれば、雨天時に防曇素子表面100aに沿って下方に流れ落ちてきた雨水は空隙104内に引き込まれるため、防曇素子表面100aの下部(防曇素子100の視野の範囲内)に水溜まりを形成するのが抑制される。したがって、防曇素子100を介して得られる画像の下部がゆがむのが防止される。また、防曇素子表面100aの下部に水溜まりを形成するのが抑制されるので、雨が上がった後に、雨に含まれていたカルシウム等の無機塩が、防曇素子表面100aの下部に水垢として白く析出して視界を狭めたり見栄えを悪くするのが抑制される。
【0063】
参考発明の光学装置は次のように体系化できる。
(1)外気に露出する表面を有する光学素子と、該光学素子を保持する枠部材とを具備し、前記枠部材の下縁部の外周位置に両端が開口した管状部を形成し、該管状部の一端開口部を該枠部材の下縁部前面に隣接する位置に開口させ、該管状部の他端開口部を前記一端開口部よりも後方位置に開口させ、前記管状部が、前記光学素子の表面から前記枠部材の下縁部前面に流れ込む水を、その毛管現象により前記一端開口部から吸い込んで排水する光学装置。
(2)前記管状部の肉厚が0.05mmから3mmである(1)項記載の光学装置。
(3)前記管状部が、前記光学素子の光軸に沿った方向に延在して形成されている(1)項または(2)項記載の光学装置。
(4)前記管状部が、前記枠部材と別体のパイプで構成されている(1)項から(3)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(5)前記管状部が、前記枠部材と一体に構成されている(1)項から(3)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(6)前記枠部材の下縁部前面に、前記光学素子の表面との段差を緩和する切欠が形成され、前記管状部の一端開口部を、該切欠に隣接する位置に開口させてなる(1)項から(5)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(7)外気に露出する表面を有する光学素子と、該光学素子を保持する枠部材とを具備し、前記枠部材の下縁部内に両端が開口した連通孔を形成し、該連通孔の一端開口部を該枠部材の下縁部前面に開口させ、該連通孔の他端開口部を前記一端開口部よりも後方位置に開口させ、前記連通孔が、前記光学素子の表面から前記枠部材の下縁部前面に流れ込む水を、その毛管現象により前記一端開口部から吸い込んで排水する光学装置。
(8)前記枠部材の下縁部に、前記光学素子の表面との段差を緩和する切欠が形成され、前記連通孔の一端開口部を、該切欠位置に開口させてなる(7)項記載の光学装置。
(9)前記開口部の内径が3mm以上である(1)項から(8)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(10)前記開口部の断面積が7mm2以上である(1)項から(9)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(11)前記枠部材の前記下縁部の表面に親水膜がコーティングされている(1)項から(10)項のいずれか1つに記載の光学装置。
(12)前記光学素子が、レンズ、光透過性フード、光学フィルター、ミラーのいずれかである(1)項から(11)項のいずれか1つに記載の光学装置。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】参考発明を、レンズ表面を直接外気に露出させるタイプの屋外用テレビカメラに適用した実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図2】レンズ表面を直接外気に露出させるタイプの従来の屋外用テレビカメラを、雨天時に使用した状態を示す図である。
【図3】カメラモジュールをフード内に収容したタイプの従来の屋外用テレビカメラを、雨天時に使用した状態を示す図である。
【図4】従来の車両用アウターミラーを示す正面図および断面図である。
【図5】図1の実施の形態における排水作用を示す側面図である。
【図6】表1の実験の説明図である。
【図7】図1の実施の形態の変形例を示す正面図および断面図である。
【図8】参考発明を、カメラモジュールをハウジング内に収容したタイプの屋外用テレビカメラに適用した実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図9】図8の実施の形態における排水作用を示す側面図である。
【図10】参考発明を、カメラ用光学フィルターに適用した実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図11】参考発明を車両用アウターミラーに適用した実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図12】参考発明を車両用アウターミラーに適用した他の実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図13】管状部の開口部を円形以外の形状に形成した参考発明の他の実施の形態を示す正面図である。
【図14】表面に親水膜をコーティングした従来の車両用アウターミラーにおいて、雨が上がった後にミラー表面下部に無機塩が析出する推定メカニズムを示す断面図である。
【図15】この発明を車両用アウターミラーに適用した実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図16】空隙距離d1による水垢の析出高さの実験結果を示す線図である。
【図17】図15および図18の車両用アウターミラー64,84による雨天時および雨が上がったときの動作を示す断面図である。
【図18】この発明を車両用アウターミラーに適用した他の実施の形態を示す正面図および断面図である。
【図19】この発明を透過型装置に適用した他の実施の形態を示す正面図および断面図である。
【符号の説明】
【0065】
12…レンズ(光学素子)、12a…レンズ表面(外気に露出する表面)、14…レンズ枠(枠部材)、14a…レンズ枠の下縁部、14b…レンズ枠の下縁部前面、14c…切欠、22…ハウジング、フード枠(枠部材)、22b…フード枠の下縁部、22c…フード枠の下縁部前面、26…光透過性フード(光学素子)、26a…外気に露出する表面、29,29’…屋外用テレビカメラ(光学装置)、33…ミラー(光学素子、防曇素子)、33a…ミラー表面(外気に露出する表面)、34,58,60,62…パイプ(管状部)、34a,58a,60a,62a…パイプの一端開口部、34b,58b,60b,62b…管状部の他端開口部、35…ミラーホルダー(枠部材)、35a,35d…ミラーホルダーの下縁部、35b,35e…ミラーホルダーの下縁部前面、35c,35f…切欠、36…連通孔、36a…連通孔の一端開口部、36b…管状部の他端開口部、46…カメラ用光学フィルター(光学装置)、48…フィルター板(光学素子)、48a…フィルター板表面(外気に露出する表面)、50…フィルター枠(枠部材)、50a…フィルター枠の下縁部、50b…フィルター枠の下縁部前面、50c…切欠、52…パイプ(管状部)、52a…パイプの一端開口部、52b…管状部の他端開口部、53…車両用アウターミラー(光学装置)、54…パイプ(管状部)、54a…パイプの一端開口部、54b…管状部の他端開口部、55…車両用アウターミラー(光学装置)、56…連通孔、56a…連通孔の一端開口部、56b…連通孔の他端開口部、L…光学素子の光軸、17,103…親水膜、33b…ミラー外周縁部、33ba,100b…ミラー外周縁部下端面、35h,102…外枠、35haa…外枠の内周面、35ha’,102a’…外枠の前端部、64,84…車両用アウターミラー(防曇装置、防曇ミラー装置)、72…ヒーターパネル、76,76a,96,96a,104…空隙、70,90…排水孔、86…開口部、98…透過型防曇装置、100…防曇素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に親水膜を形成した防曇素子と、
該防曇素子の外周縁部に対向してその外方に空隙を隔てて配置された外枠とを具備してなり、
前記空隙は少なくとも前記防曇素子の表面側に開口し、
前記防曇素子と前記外枠とは前記空隙を形成しない箇所を介して直接または間接に相互に連結されている防曇装置。
【請求項2】
前記空隙が前記防曇素子の外周縁部の全周に形成されている請求項1記載の防曇装置。
【請求項3】
前記空隙が前記防曇素子の外周縁部の下端面に形成されている請求項1記載の防曇装置。
【請求項4】
前記空隙の距離が0.5mm〜3.0mm、好ましくは0.6mm〜2.2mm、より好ましくは1.0mm〜1.6mmである請求項1から3のいずれか1つに記載の防曇装置。
【請求項5】
前記空隙が前記防曇素子の外周縁部の厚み方向全長にわたり形成されている請求項1から4のいずれか1つに記載の防曇装置。
【請求項6】
前記防曇素子の表面に対する前記外枠の前端部の前方への突出量が0mm〜5mmである請求項1から5のいずれか1つに記載の防曇装置。
【請求項7】
前記外枠または該外枠につながる箇所に、前記空隙内に引き込まれた水を排水する排水孔が形成されている請求項1から6のいずれか1つに記載の防曇装置。
【請求項8】
前記防曇素子が、レンズ、光透過性フード、光学フィルター、ガラス窓、ミラーのいずれかである請求項1から7のいずれか1つに記載の防曇装置。
【請求項9】
表面に親水膜を形成したミラーと、
前面に形成された開口部内に前記ミラーを収容保持するミラーホルダーとを具備し、
前記ミラーの外周縁部と前記ミラーホルダーの前記開口部を構成する外枠の内周面との間に空隙を形成してなり、
前記空隙は前記ミラーの表面側に開口している防曇ミラー装置。
【請求項1】
表面に親水膜を形成した防曇素子と、
該防曇素子の外周縁部に対向してその外方に空隙を隔てて配置された外枠とを具備してなり、
前記空隙は少なくとも前記防曇素子の表面側に開口し、
前記防曇素子と前記外枠とは前記空隙を形成しない箇所を介して直接または間接に相互に連結されている防曇装置。
【請求項2】
前記空隙が前記防曇素子の外周縁部の全周に形成されている請求項1記載の防曇装置。
【請求項3】
前記空隙が前記防曇素子の外周縁部の下端面に形成されている請求項1記載の防曇装置。
【請求項4】
前記空隙の距離が0.5mm〜3.0mm、好ましくは0.6mm〜2.2mm、より好ましくは1.0mm〜1.6mmである請求項1から3のいずれか1つに記載の防曇装置。
【請求項5】
前記空隙が前記防曇素子の外周縁部の厚み方向全長にわたり形成されている請求項1から4のいずれか1つに記載の防曇装置。
【請求項6】
前記防曇素子の表面に対する前記外枠の前端部の前方への突出量が0mm〜5mmである請求項1から5のいずれか1つに記載の防曇装置。
【請求項7】
前記外枠または該外枠につながる箇所に、前記空隙内に引き込まれた水を排水する排水孔が形成されている請求項1から6のいずれか1つに記載の防曇装置。
【請求項8】
前記防曇素子が、レンズ、光透過性フード、光学フィルター、ガラス窓、ミラーのいずれかである請求項1から7のいずれか1つに記載の防曇装置。
【請求項9】
表面に親水膜を形成したミラーと、
前面に形成された開口部内に前記ミラーを収容保持するミラーホルダーとを具備し、
前記ミラーの外周縁部と前記ミラーホルダーの前記開口部を構成する外枠の内周面との間に空隙を形成してなり、
前記空隙は前記ミラーの表面側に開口している防曇ミラー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−34101(P2011−34101A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233932(P2010−233932)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2006−47391(P2006−47391)の分割
【原出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2006−47391(P2006−47391)の分割
【原出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】
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