説明

防毒マスク

【発明が解決しようとする課題】 小型・軽量かつ安価で、特に常温で湿度の高い雰囲気下においてもその使用初期から長時間に亘り優れたCO除去特性を有する防毒マスクを提供することをその課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】 アルミナ、シリカ、ゼオライトおよび活性炭よりなる群から選ばれた1種以上の基材に銅塩を担持させてなるCO吸着材と、マンガン系触媒を含んでなるCO酸化触媒を備えたことを特徴とする防毒マスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災等において発生する一酸化炭素(CO)等の有毒ガスを除去する防毒マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建物火災による死亡原因の多くは化学物質による有毒ガス中毒が占め、そのうちCO中毒が約半数を占めるといわれている。
【0003】
このため、宿泊施設やオフィスビル等において、火災時の緊急避難の際に用いることができる簡便な対CO用の防毒マスクを常備したいという要請がある。この防毒マスクは、小型かつ安価で、安全な場所への避難完了までの一定時間CO中毒から被災者を守ることが要求される。
【0004】
COは、有機物の不完全燃焼等により日常生活の身近な所で発生し、無色、無味、無臭、無刺激で、常温では気体で酸素より軽く、その存在に容易に気が付かない極めて危険なガスである。そして、このCOの人体に与える影響について表1に示しているが、大気中のCO濃度100ppm(0.01容量%)ですでに中毒症状が出現し、0.15容量%で死亡する可能性がある。ちなみに病理学的には、心臓と大脳とくにその白質が冒されやすく、大脳の症状が後遺症となることが知られており、その際の発生機序が特異で、一旦意識が覚めた後、数週間してから重篤な後遺症が出現してくるもので、その際の症状は歩行障害や言語障害は少なく、記憶障害に失行、失認の大脳の症状が見られることも知られている。
【0005】
【表1】

【0006】
そして、こうした人体への考慮した許容CO濃度は、日本産業衛生学会によると50ppmとされている。
【0007】
これらのデータより、対CO用の防毒マスクは避難設定時間(安全な場所への避難完了までの一定時間)における総CO通過量をできるだけ少なくすることが求められており、COの通過量は少なければ少ないほどその除毒効果が高く人体への影響を最小限に抑えられることはいうまでもない。
【0008】
この防毒マスクの用途に用いられる触媒としてMnO2・CuO系のホプカライト触媒等のCO酸化触媒が開発されている。しかしながらホプカライト触媒等のCO酸化触媒は常温(室温)においてCOを酸化除去する活性を有するものの、吸気中の水分によってその酸化能力が急激に低下してしまう欠点がある。このため、現在市販されている防毒マスクはCO酸化触媒とともに、吸気中の水分を除去するために活性炭やゼオライト等の吸湿剤が併用されているが、かかる対策では薬剤(触媒+吸湿剤)の容量が非常に大きくなる割にはCOを完全に除去することができない(後記比較例参照)といった問題がある。
【0009】
また、これらCO酸化触媒によるCOの無毒化は触媒反応であるため、触媒が活性機能を発現するのにある程度の高い温度が必要である。このため、防毒マスクにCOを含むガスの供給が開始されてから、CO酸化触媒が吸着熱や酸化反応熱によって一定温度に達して活性機能を発現し十分なCO除毒能力が発揮されるまでに数分程度を要する欠点もある。
【0010】
一方、CO酸化触媒の耐吸湿特性を改善したものとして、細孔直径が110Å以下の細孔を実質的に含まないアルミナ担体上に白金またはパラジウムとともに鉄、コバルト、マンガン、銅、クロム、錫、鉛、セリウムよりなる群から選んだ少なくとも一種を担持させたCO酸化触媒が提案されている(特許文献1参照)。この触媒を使用すれば吸湿剤を必要とせず、防毒マスクの小型化・軽量化が可能となるが、白金またはパラジウムという非常に高価な貴金属を必要とし、防毒マスクの単価が著しく高くなる。このため、同時に多人数を避難させる必要がある建物火災等に対してはコストが嵩み実用的でない。
【特許文献1】特許2554905号公報
【特許文献2】特開昭63−310627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述した従来の技術背景に鑑み、小型・軽量かつ安価で、特に常温で湿度の高い雰囲気下においてもその使用初期から長時間に亘り優れたCO除去特性を有する防毒マスクを提供することをその課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はこのような課題の解決のために完成されたものであって、その要旨とする特徴は以下の通りである。
(1)アルミナ、シリカ、ゼオライトおよび活性炭よりなる群から選ばれた1種以上の基材に銅塩を担持させてなるCO吸着材と、マンガン系触媒を含んでなるCO酸化触媒を備えたことを特徴とする防毒マスク。
(2)前記CO吸着材と前記CO酸化触媒をそれぞれ層状に充填したことを特徴とする前記(1)に記載の防毒マスク。
(3)前記CO吸着剤を少なくとも大気側に位置させてなることを特徴とする前記(2)に記載の防毒マスク。
(4)火災時の緊急避難の際に用いられる前記(1)〜(3)のいずれかに記載の防毒マス。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルミナ、シリカ、ゼオライトおよび活性炭よりなる群から選ばれた1種以上の基材に銅塩を担持させてなるCO吸着材と、マンガン系触媒を含んでなるCO酸化触媒とを有効に組み合わせたマスクの構成を採用することにより、小型・軽量かつ安価でしかも特に常温で湿度の高い雰囲気下での使用においても初期から長時間にわたり優れたCO除去特性を有する防毒マスクを提供することができ、火災時などのCO発生時において被災者が安全な場所への避難完了までCO中毒などを確実に防止できるといった有利な効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者らは、前述した課題を解決するため、耐吸湿特性に劣るCO酸化触媒に代え、高純度CO分離回収装置等に使用されている、常温においても耐吸湿特性に優れるCO吸着剤を適用できるのではないかと考え、先ずこれを確認すべく下記の実験を行なうことにした。
(実験例1)
CO吸着剤と従来のCO酸化触媒のCO除去挙動の相違を確認するため、「火災避難用保護具の試験方法および判断基準」に準拠し、以下の条件で実験を行った。すなわち、アルミナゲルの基材に塩化銅を担持させたCO吸着剤のみを充填してなる充填層と、市販の防毒マスクで使用されているホプカライトCO酸化触媒のみを充填してなる充填層とのそれぞれに、30L/minに相当するCOを含有する空気を透過させ、透過空気中のCO濃度(以下、「透過CO濃度」という。)を測定した。COを含有する空気としては、CO:2500ppm・空気バランス・20℃(入り口ガス温度)で、相対湿度0%の乾ガスと相対湿度65%の湿ガスの2種類のガスを使用した。
【0015】
図1に本実験によって得られた透過CO濃度の経時変化を示す。この図1から明かなように、従来のCO酸化触媒では、乾ガスの場合、透過CO濃度は通ガス開始後すぐに約50ppmに達し、その後時間とともに徐々に上昇している。湿ガスの場合、初期の透過CO濃度は通ガス開始後すぐに約100ppmに達し、その後は乾ガスと同様、時間とともに徐々に上昇している。
これに対し、塩化銅すなわち銅塩を担持したCO吸着剤(以下、単にCO吸着剤ということがある)では、透過CO濃度は、乾ガス、湿ガスとも通ガス開始後ほぼ同じ時間(本実験では5〜6分)までは0ppmであり、その後急激に上昇している。
このような透過CO濃度の経時変化の相違はCO酸化触媒とCO吸着剤のCO除去機構の相違によるものと考えられる。
すなわち、CO酸化触媒はCOを空気中のO2で酸化してCO2に変化させることによりCOを無毒化するものであり、その触媒活性に応じて透過ガスのCO濃度が定まる。このため、通ガス直後の触媒活性が十分に高い場合でもCOを完全にはCO2まで酸化できず透過ガス中に一定量のCOが残存する。触媒活性は経時劣化するため時間とともに残存CO量が増加する。また、この触媒活性の劣化は水分の存在により助長されるため、湿ガスの場合、残存CO量が多くなる。しかしながら、CO酸化触媒はCO吸着剤に比べで、残存CO量の増加が緩やかであり、CO吸着剤の残存CO量が急激に増加する5〜6分を過ぎても約20分を経過するまではCO吸着剤よりも良好なCO除去特性を維持していることが分る。
一方、CO吸着剤は、COそのものを吸着剤の吸着サイトに吸着させて除去するものであり、未使用の吸着サイトが十分に存在する間すなわち使用初期においてはほぼ完全にCOを除去(1ppm以下)できるが、通ガス後一定時間経過して吸着サイト全部にCOが吸着し、吸着能力が失われるとそれ以上COを除去できなくなり、破過が生じる。なお現状詳細は不明であるが、CO吸着剤においては水が吸着する吸着サイトとCOが吸着する吸着サイトがほとんど重複しないものと想定され、このため処理ガス中に水分が存在してもCO吸着能力はそれほど低下しないものと考えられる。
本発明者らは上記実験結果から、銅塩を担持したCO吸着剤は常温かつ高湿度雰囲気下においても通ガス開始直後からppmオーダーの微量のCOに対しても高いCO除去能力(特性)を発揮し、COが検出不能なレベル(1ppm以下)にまで除去できる事実が見出されたことから、この吸着剤を防毒マスクに適用すれば前述した本発明の課題をほぼ達成しうる確信を得た。
ところが、一方で、この実験結果では、前記考察の通りCO吸着剤が、使用初期の期間ではCO除去特性が非常に優れているものの、一定時間を経過した後においてはその特性が急激に低下し、長時間に亘る継続使用においてはなお不十分であり、本発明の課題を全面的に解消するにはさらに創意工夫を必要とすることが分った。
【0016】
このため、本発明者らは本実験結果より、一定期間を経過した後においては従来の酸化触媒の方がCO吸着剤よりも相対的に高い除去性能を維持していることに着目し、使用開始から長時間に亘る継続使用を意図した場合、CO吸着剤とCO酸化触媒とをうまく組み合わせて併用した構成とすれば上記課題を一挙に解決できる防毒マスクを完成できるのではないかと考えた。
(実験例2)
こうした知見と発想に基づき、本発明者らはさらにCO吸着剤と組み合わせるべきCO酸化触媒の選定のためにCO酸化触媒として代表的なマンガン系触媒と白金系触媒のCO除去特性について下記のような比較実験をおこなった。
【0017】
マンガン系触媒(担持基材:アルミナゲル)と白金系触媒(担持基材:活性炭)を入れた充填層にCO濃度が2500ppmでその湿度を変化させた室温の空気を透過させ、透過後の空気のCO濃度を測定して両触媒によるCO除去率を求めた。この結果を表2に示す。
【0018】
【表2】

【0019】
表2の結果より、相対湿度が0%すなわち乾ガスの場合は、白金系触媒によるCO除去率が72%であるのに対して、マンガン系触媒の除去率は100%となっており、マンガン系触媒が白金系触媒より遥かに優れていることがわかる。また、相対湿度が上昇すると、マンガン系触媒による除去率が急激に低下するのに対し、白金系触媒による除去率はその低下が小さく、白金系触媒のほうがマンガン系触媒に勝っていることが分かる。
【0020】
そこで、上記の実験結果から、CO吸着剤と組み合わせの観点からすると、CO吸着剤が吸湿性が高いことから、これと共存する酸化触媒がたとえ高湿度のガスに対してCOの除去特性が低くても、乾いたガスを対象としたときに優れたCOの除去特性を発揮するものがより適切な対象と考え、湿度0%のCO除去率が100%であるマンガン系触媒をCO吸着剤と組み合わせるべきCO酸化触媒の有力候補と判断し、さらに両者の組み合わせによってもたらされる有利な作用効果などを研究し、これを検証(後述の実施例参照))した結果、やはりマンガン系触媒を担持させてなるCO酸化触媒がCO吸着剤の組み合わせ対象として最適であるとの結論を得て、本発明を完成させるに至った。
【0021】
これは、マンガン系触媒を担持させてなるCO酸化触媒(以下、マンガン系CO酸化触媒ということがある)をCO吸着剤に組み合わせて使用すると、白金やパラジウムなどの他の酸化触媒を選択した場合に比較し、マンガンが触媒中に自ら取り込んでいる酸素によってCOを直接酸化するため常温域における活性が遥かに高く、しかもCO吸着剤の吸着熱によるマンガン系触媒の活性度の向上と相まって、使用開始から長時間に亘り、優れたCO除去特性が安定して維持されることになるからである。また、マンガン系CO酸化触媒は他の白金やパラジウムなどに比べて、安価であり、コスト面でも有利であり、実用に適する。
【0022】
本発明はこのようにCO吸着剤とマンガン系CO酸化触媒とを組み合わせた構成の防毒マスクとした点をその基本的な特徴とするものでこのような構成とすることで、共存する双方の利点を生かしながらしかも欠点を互いに補い合って解消する所謂有機的な組み合わせを実現するものである。
【0023】
すなわち、CO吸着剤は使用開始から一定時間経過するまでの初期においては非常に高いCO除去性能を発揮する利点があり、これと共存するマンガン系CO酸化触媒が初期の除去性能に劣るという欠点をカバーし、またマンガン系CO酸化触媒が一定時間経過後においてCO除去性能の低下が緩やかである利点を有しており、これと共存するCO吸着剤が一定時間経過後においてCO除去性能が著しく低下する欠点をカバーする。
【0024】
また、CO吸着剤が耐吸湿特性に優れるため、周囲の水分が除去され、これにより共存するマンガン系CO酸化触媒の周囲の水分により劣化し易いといった欠点をカバーすることができる。しかも、前記の如く、マンガン系CO酸化触媒が有する特異なCO酸化作用により、特に常温においてCO除去特性を効果的に維持することができる。
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
本発明に係る防毒マスクは口と鼻を覆う面体に、CO吸着剤とマンガン系CO酸化触媒とを充填した吸収缶を取り付けたものとする。CO吸着剤は、アルミナゲルの基材に塩化銅を担持させたものとする。マンガン系CO酸化触媒はホプカライト触媒とする。
【0027】
これらのCO吸着剤とマンガン系CO酸化触媒は吸収缶にそれぞれ層状に且つガスの入口側すなわち上流側(大気側)にCO吸着剤を、ガスの出口側すなわち下流側(人体の顔面側)にマンガン系CO酸化触媒それぞれ位置させて吸収缶に充填された2層タイプものが好ましい。
【0028】
このようにガスの上流側にCO吸着剤(層)を配置することによって、ガス中のCOを除去すると同時に水分をここで捕捉、除去することができるため、下流側に配置されたマンガン系CO酸化触媒(層)の水分による劣化を効果的に抑制でき、この触媒の寿命を長くでき、その結果として長時間に亘りCO除去特性をより高く維持することが可能となる。また、上流側のCO吸着剤(層)の通過時に発生する吸着熱によってガスが加熱されるため、下流側の前記CO酸化触媒(層)が初期より活性化し、CO除去特性を向上させることができる。すなわち、CO吸着剤とマンガン系CO酸化触媒とを組み合わせに際して、上記の如く、両者の共存状態や配置構成を工夫することで、これらの連携、共同による特異な作用、効果を発揮できるものである。
【0029】
上記実施形態においてはCO吸着剤の基材としてアルミナゲルを挙げたがシリカ、ゼオライト又は活性炭を基材として用いても同効である。マンガン系CO酸化触媒としてホプカライト(MnO2・CuO系)を挙げたが、Mn酸化物系、Mn酸化物系・銅酸化物系などのMn酸化物を含むものであれば他のCO酸化触媒を適用しても良い。また、マンガン系CO酸化触媒の担持基材として活性炭に代えてアルミナ、シリカ又はゼオライトを使用してもかまわない。さらに、マンガン系CO酸化触媒として上記のように担持基材(担体)に保持せず、マンガン系触媒を単独で用いても良い。
【0030】
さらに、上記実施形態ではCO吸着剤とマンガン系CO酸化触媒の吸収缶への充填構成について2層タイプのものを推奨したが、これに限定されず、CO吸着剤とマンガン系CO酸化触媒のCO吸着剤とを混合したものを充填した単層タイプのものでも、またCO吸着剤層の間にマンガン系CO酸化触媒層をサンドイッチした3層タイプ、両者の層を交互に4層以上に配置したタイプでも良く、何れも本発明の課題を達成しうる。さらに、両者を3層以上の多層に構成する場合は、前述の2層構成の時の両層の配置と同様な考え方に立脚して、少なくともCO吸着剤からなる1層をガスの入り口側の最初の層に位置させることが特に好ましく、また、マンガン系CO酸化触媒は少なくともガスの出口側の最後の層に位置させることが望ましい。
【0031】
なお、CO吸着材及びマンガン系CO酸化触媒については市販されたものを利用しても良いし、又、周知の製法により製造したものを用いても良い。
(実施例1)
本発明の優れた効果を明確にするため以下に実施例を挙げる。
【0032】
アルミナゲルの基材に塩化銅を担持させてなるCO吸着剤をガス入口側(すなわち、上流側)に、活性炭の基材にホプカライトCO酸化触媒をガス出口側(すなわち、下流側)にそれぞれ層状に充填してなる充填層を用いた。そして、この充填層に30L/minに相当する湿度調整された空気である湿ガス(入り口ガス温度:20℃、相対湿度:65%)、CO含有量:2500ppm)を2.5cm/sの空塔速度で透過させ、透過CO濃度の測定を行った。なお、同図2(図3も同じ)のグラフは15秒間隔で継続的に測定した値をプロットしたものである。
【0033】
このときの透過CO濃度の経時変化を図2に示す。同図から明らかなように、透過CO濃度は2時間以上0容量%に維持されており、常温で湿ガスに対してもガスの供給開始から極めて長時間に亘ってCOを完全に除去できる能力を有することが分かる。また、入り口ガス温度と同じ20℃であった充填層の温度が10分後より15℃前後上昇していることからも知れるように、ガス入口側に配置されたCO吸着剤の層による吸着熱によってこれを通過したガスが加熱され、この加熱されたガスが出口側に配置されたマンガン系CO酸化触媒の層を通過するに伴って同マンガン系CO酸化触媒が前記の温度上昇を起こして、活性化され、このことが優れたCO除去特性を維持することに有利な影響をもたらしているものと見られる。
(実施例2)
上記実施例1における空塔速度(2.5cm/s)を2倍の5.0cm/sとして、他の条件は実施例1と同じ条件で湿ガスを透過させ、同様に透過CO濃度の測定を行った。
【0034】
このときの透過CO濃度の経時変化を図3に示す。同図から明らかなように、空塔速度を実施例1の2倍に速めた場合においても、透過CO濃度は約1時間は0容量%に維持されており、常温で湿ガスに対してもやはりガスの供給開始から長時間に亘ってCOを完全に除去できる能力を有することが分かる。
【0035】
(比較例)
これに対し、比較例として選択した4種類の防毒マスク市販品(市販品1:ミニケムラーIII、市販品2:ガーディマスク、市販品3:ケムラ
ージュニア、市販品4:ライフカプセルPGS)は、すべてホプカライトCO酸化触媒(または同CO酸化触媒+吸湿剤)のみを用いた(すなわち、CO吸着剤を用いていない)ものである。これらの市販品における透過CO濃度の経時変化を図4に示す。
【0036】
図4から明らかなように、いずれの防毒マスクにおいても、通ガス開始後の5分以下の初期の段階から50ppm以上のCOが透過してしまい、長時間に亘って微量のCOを全く除去できないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】CO吸着剤とCO酸化触媒のそれぞれに対してCO含有空気を透過させた実験例1おける透過CO濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図2】CO吸着剤とマンガン系CO酸化触媒の2層構成とした充填層にCO含有空気を透過させた本発明の実施例1における透過CO濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図3】CO吸着剤とマンガン系CO酸化触媒の2層構成とした充填層にCO含有空気を透過させた本発明の実施例2における透過CO濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図4】市販されている各種のCO酸化触媒で構成した充填層にCO含有空気を透過させた比較例における透過CO濃度の経時変化を示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ、シリカ、ゼオライトおよび活性炭よりなる群から選ばれた1種以上の基材に銅塩を担持させてなるCO吸着材とマンガン系触媒を含んでなるCO酸化触媒を備えたことを特徴とする防毒マスク。
【請求項2】
前記CO吸着材と前記CO酸化触媒をそれぞれ層状に充填してなることを特徴とする請求項1の防毒マスク。
【請求項3】
前記CO吸着剤を少なくとも大気側に位置させてなることを特徴とする請求項2に記載の防毒マスク。
【請求項4】
火災時の緊急避難の際に用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の防毒マスク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−20701(P2006−20701A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199314(P2004−199314)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000192073)株式会社モリタ (80)
【Fターム(参考)】