説明

防水コネクタ

【課題】コネクタハウジングに装着するパッキンの挿入が容易であり、組立作業性が向上する防水コネクタを提供する。
【解決手段】防水コネクタは、筒型に形成されたコネクタハウジング13と、コネクタハウジング13の外周壁47に沿って周設され、コネクタ嵌合方向の前方に開口する空所49と、空所49の底面53としての立上り後壁55に穿設された貫通孔57と、空所内に嵌装されるパッキン17と、パッキン17に形成され、貫通孔57に挿通される係止突起67と、コネクタハウジング13のコネクタ嵌合方向の後方に係止される電線カバー15と、を備える。係止突起67は、貫通孔57に圧入されることなく、貫通孔57に挿入可能であり、且つ、電線カバー15がコネクタハウジング13に係止される際に、電線カバー15が貫通孔57を貫通した係止突起67の係止部69を貫通孔57の開口縁59に係止させる方向に押圧付勢することにより、パッキン17がコネクタハウジング13に対して固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
雌雄のコネクタを嵌合して内蔵した端子金具により電気的接続をする場合、雨水等のかかる可能性のある場所では、短絡事故を防ぐために防水コネクタが使用される(例えば、特許文献1参照)。
図7及び図8に示すように、この防水コネクタ501は、雄コネクタハウジング503と雌コネクタハウジング505とを有する。雄コネクタハウジング503は、パッキン507を嵌装する空所509を備え、パッキン507の係止突起部511が空所509の底面513(立上り後壁515)の貫通孔517を貫通して係止される。空所509に雌コネクタハウジング505の套体部519が嵌入すると、パッキン507が圧縮されると共に、雄コネクタハウジング503に設けられたロッキングアーム521の先端部と雌コネクタハウジング505に形成された係止突起523が係合して雄コネクタハウジング503と雌コネクタハウジング505とはロックされる。このロック状態において、雌コネクタハウジング505の圧接面525がパッキン507を空所509内に押し込んで、雄コネクタハウジング503と雌コネクタハウジング505との間を密閉し、水の浸入を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−129303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、雄コネクタハウジング503に対するパッキン507の取り付け時、パッキン507の係止突起部511を圧縮させて貫通孔517に挿通するためには、大きな挿入力が必要であった。そこで、全ての係止突起部511が各貫通孔517に適切に挿通されなかったり、組立作業性を低下させたりする原因となっていた。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、コネクタハウジングに装着するパッキンの挿入が容易であり、組立作業性が向上する防水コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 筒型に形成されたコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの外周壁に沿って周設され、コネクタ嵌合方向の前方に開口する空所と、前記空所の底面としての立上り後壁に穿設された貫通孔と、前記空所内に嵌装されるパッキンと、前記パッキンに形成され、前記貫通孔に挿通される係止突起と、前記コネクタハウジングのコネクタ嵌合方向の後方に係止される電線カバーと、を備える防水コネクタであって、前記係止突起は、前記貫通孔に圧入されることなく、前記貫通孔に挿入可能であり、且つ、前記電線カバーが前記コネクタハウジングに係止される際に、前記電線カバーの内壁縁部が前記貫通孔を貫通した前記係止突起の係止部を前記貫通孔の開口縁に係止させる方向に押圧付勢することにより、前記パッキンが前記コネクタハウジングに対して固定されることを特徴とする防水コネクタ。
【0007】
上記(1)の構成の防水コネクタによれば、コネクタハウジングにパッキンが組み込まれると、貫通孔の後方にパッキンの係止突起が突出する。係止突起は、貫通孔に抵抗なく貫通できる大きさに設定されており、パッキン挿入時は、圧入されることなく装着可能となる。これにより、パッキン挿入時においては、係止突起が貫通孔に干渉しないため組付け作業性が良好となる。
電線カバーがコネクタハウジングに取り付けられた際に、当該電線カバーの内壁縁部が係止突起の係止部に干渉する(ラップする)位置に配置されている。そこで、干渉位置に配置された内壁縁部は、係止部を撓ませることで、係止突起の係止部と貫通孔の開口縁との間に係り代を発生させ、係止保持力を持たせることができる。また、相手方ハウジングとの嵌合前であってもパッキンが確実に抜け止めされるので、運搬時にパッキンがコネクタハウジングから脱落することもない。
【0008】
(2) 上記(1)の構成の防水コネクタであって、前記電線カバーの内壁縁部が、前記係止突起の係止部に当接して前記貫通孔の開口縁に係止させる方向に押圧付勢する拾いテーパ部を有していることを特徴とする防水コネクタ。
【0009】
上記(2)の構成の防水コネクタによれば、係止突起を適切な方向に確実に押圧付勢することができる。また、電線カバーの挿入をスムースに行える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る防水コネクタによれば、コネクタハウジングに装着するパッキンの挿入が容易であり、組立作業性が向上する。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る防水コネクタの分解斜視図である。
【図2】図1に示したコネクタハウジングのパッキン装着前の縦断面図である。
【図3】図1に示した防水コネクタのパッキン装着後の縦断面図である。
【図4】(a)は図3におけるA部の拡大図であり、(b)は図3におけるB部の拡大図である。
【図5】図3に示した防水コネクタの電線カバー装着後の縦断面図である。
【図6】図5におけるC部の拡大図である。
【図7】従来の防水コネクタの雄コネクタハウジングとパッキンの分解斜視図である。
【図8】(a)は図7の雄コネクタハウジングに雌コネクタハウジングが嵌合した従来の防水コネクタの断面図、(b)は(a)のパッキン装着部の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る防水コネクタ11は、筒型に形成されたコネクタハウジング13と、コネクタハウジング13のコネクタ嵌合方向の後方に係止される電線カバー15と、パッキン17と、を具備する。なお、本明細書中、コネクタハウジング13は相手コネクタとの嵌合側を前、その反対側を後とする。
【0014】
コネクタハウジング13及び電線カバー15は、それぞれが樹脂製(例えばPBT:ポリブチレンテレフタート等)の一体成形品からなる。コネクタハウジング13は、略直方体形状であり、相手コネクタとの嵌合側に嵌合ブロック部19が表出する。嵌合ブロック部19の前面には相手端子の進入開口21が縦横に配設される。進入開口21は内部の端子収容室23に連通して、それぞれの端子収容室23には端子金具(図示せず)がランス25に係止されて収容される(図2参照)。
【0015】
端子金具の後端には電線(図示せず)が接続され、電線はコネクタハウジング13の後面27から導出される。後面27から導出される電線は、コネクタ搭載車両の仕様に応じコネクタ嵌合方向に直交する一方側(右取付側)または他方側(左取付側)に屈曲して取り出される。コネクタハウジング13の後面27にはカバー受入溝29が形成され、このカバー受入溝29に電線カバー15の内壁縁部31が挿入される。
【0016】
電線カバー15は、一対の平行なカバー側板33の一端同士を斜壁板35で連結し、二方向が開口した箱状に形成される。電線カバー15の一方の開口はコネクタハウジング13の後面27を覆う電線導入開口37となり、他方の開口は電線取出開口39となる。
【0017】
それぞれのカバー側板33及び斜壁板35の内壁縁部31には、係止凸部41が突設され、係止凸部41はコネクタハウジング側の係止凹部44に係止することで後面27から導出された電線を覆うように電線カバー15をコネクタハウジング13に係止固定する。係止凸部41及び係止凹部44は、電線カバー15が右取付側または左取付側に対応して係止固定できるように配設されている。これにより、電線カバー15は、電線の取り出し方向に応じ、電線取出開口39が右取付側または左取付側となる二方向の向きでコネクタハウジング13に選択的に装着可能となる。
【0018】
なお、防水コネクタ11には、コネクタハウジング13の側壁43に突設された軸45に係合する低挿入力レバー(図示せず)が取り付けられる。電線カバー15は、低挿入力レバーが取り付けられた後にコネクタハウジング13に取り付けられる。
【0019】
コネクタハウジング13には外周壁47が形成され、外周壁47は嵌合ブロック部19の外側に離間して形成される。そこで、図2に示すように、コネクタハウジング13にはこの外周壁47に沿って空所49が周設され、空所49はコネクタ嵌合方向の前方に開口する。この空所49には、相手コネクタの套体部51(図3参照)が挿入される。
【0020】
図4(a)に示すように、空所49の底面53としての立上り後壁55には、貫通孔57が穿設される。つまり、貫通孔57は、立上り後壁55を貫通して空所49とカバー受入溝29とを連通する。貫通孔57は、立上り後壁55の面積よりも小さく形成される。これにより、貫通孔57の周囲は開口縁59となっている。
【0021】
図2に示すように、空所49にはパッキン17が嵌装される。パッキン17は環状に形成され、パッキン本体61の外周には複数のリップ63がコネクタ嵌合方向に並んで突設される。このリップ63は、相手コネクタの套体部51の内面に水密に密着する。パッキン本体61には、コネクタ嵌合方向に対して直交方向に起立する起立部65が形成される。起立部65は、図4(a)に示す立上り後壁55に対面して接触する。起立部65にはコネクタ嵌合方向に沿う方向で係止突起67が突設され、係止突起67は貫通孔57に挿入される。係止突起67の突出先端側には係止部69が形成される。この係止部69は、貫通孔57に抵抗なく挿入できる大きさで形成されている。すなわち、係止突起67は、貫通孔57に圧入されることなく挿入可能となる。
【0022】
貫通孔57を貫通した係止突起67は、カバー受入溝29内に配置される。係止突起67は、カバー受入溝29に電線カバー15が挿入されると、図5及び図6に示すように、内壁縁部31によってコネクタ嵌合方向と直交する内方に向けて押圧付勢される。即ち、電線カバー15は、コネクタハウジング13に係止される際に、貫通孔57を貫通した係止突起67の係止部69を、貫通孔57の開口縁59に係止させる方向(図6の下方向)に内壁縁部31が押圧付勢して撓ませる。これにより、係止突起67の係止部69と貫通孔57の開口縁59との間に係り代73が発生し、係止突起67に貫通孔57に対する係止保持力を持たせることができる。従って、パッキン17は、コネクタハウジング13に対して固定される。
【0023】
更に、図4(b)に示すように、電線カバー15の内壁縁部31には、拾いテーパ部71が形成されている。拾いテーパ部71は、カバー受入溝29への挿入に伴って係止突起67の係止部69に当接し、図5及び図6に示すように、貫通孔57の開口縁59に係止させる方向に係止部69を押圧付勢する。
【0024】
次に、上記構成のパッキン係止構造を有する防水コネクタ11の作用を説明する。
上述した防水コネクタ11は、コネクタハウジング13の空所49にパッキン17が組み込まれると、貫通孔57の後方側となるカバー受入溝29にパッキン17の係止突起67が突出する(図3参照)。
【0025】
係止突起67は、貫通孔57に抵抗なく貫通できる大きさに設定されており、パッキン挿入時は、圧入されることなく装着可能となる。これにより、パッキン挿入時においては、係止突起67が貫通孔57に干渉しないため組付け作業性が良好となる。
【0026】
図5及び図6に示すように、電線カバー15がコネクタハウジング13に取り付けられると、電線カバー15の内壁縁部31がカバー受入溝29に挿入される。カバー受入溝29に挿入された内壁縁部31は、係止突起67の係止部69に干渉する(ラップする)位置に配置されている。干渉位置に配置された内壁縁部31は、係止部69を撓ませることで、係止部69と開口縁59との間に係り代73を発生させ、係止突起67に貫通孔57に対する係止保持力を持たせることができる。つまり、開口縁59に係止部69を引っ掛けた状態とすることができる。
【0027】
上述したように、本実施形態の防水コネクタ11は、電線カバー15をコネクタハウジング13に取り付けることで、相手コネクタとの嵌合前であってもパッキン17が確実に抜け止めされるので、運搬時にパッキン17がコネクタハウジング13から脱落することもない。
【0028】
また、本実施形態の防水コネクタ11では、内壁縁部31に拾いテーパ部71が設けられることで、カバー受入溝29に挿入された内壁縁部31が係止突起67の係止部69に正面から当接することを回避できる。これにより、係止突起67を適切な方向に確実に押圧付勢することができる。また、このことは、内壁縁部31の挿入抵抗を軽減することにもなり、電線カバー15の挿入をスムースにできる。
【0029】
従って、上述した本実施形態に係る防水コネクタ11によれば、コネクタハウジング13に装着するパッキン17の挿入が容易であり、組立作業性が向上する。
なお、本発明の防水コネクタは、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0030】
11…防水コネクタ
13…コネクタハウジング
15…電線カバー
17…パッキン
31…内壁縁部
47…外周壁
49…空所
53…底面
55…立上り後壁
57…貫通孔
59…開口縁
67…係止突起
69…係止部
71…拾いテーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒型に形成されたコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングの外周壁に沿って周設され、コネクタ嵌合方向の前方に開口する空所と、
前記空所の底面としての立上り後壁に穿設された貫通孔と、
前記空所内に嵌装されるパッキンと、
前記パッキンに形成され、前記貫通孔に挿通される係止突起と、
前記コネクタハウジングのコネクタ嵌合方向の後方に係止される電線カバーと、
を備える防水コネクタであって、
前記係止突起は、前記貫通孔に圧入されることなく、前記貫通孔に挿入可能であり、且つ、
前記電線カバーが前記コネクタハウジングに係止される際に、前記電線カバーの内壁縁部が前記貫通孔を貫通した前記係止突起の係止部を前記貫通孔の開口縁に係止させる方向に押圧付勢することにより、前記パッキンが前記コネクタハウジングに対して固定されることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の防水コネクタであって、
前記電線カバーの内壁縁部が、前記係止突起の係止部に当接して前記貫通孔の開口縁に係止させる方向に押圧付勢する拾いテーパ部を有していることを特徴とする防水コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−105591(P2013−105591A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247780(P2011−247780)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】