説明

防水シートおよび防水シートを用いた防水床構造

【課題】防水性能を十分に確保しつつ接着性を向上して防水シートの撓みやしわなどの発生を防止することができる防水シートおよび防水シートを用いた床構造を提供する。
【解決手段】防水性を有するシート状の基材21の表面および裏面に繊維層22a,22bを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防水シートおよび防水シートを用いた防水床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面所や脱衣所などの水周りの床構造にあっては、近年ユニット化が進んでおり、樹脂により成形されたものが主流となりつつある(例えば、特許文献1参照)。しかし、このようなユニット化されたものは、規格品で寸法の制約があることから、規格外の洗面所や脱衣所を製作する場合には依然として木材を用いて製作される場合が多い。
このような木材を用いた床構造の場合、水濡れに対して脆弱であるため、通常は防水性を有したポリエチレンやEVAなどからなる防水シートを被覆して、木材の水濡れを防止している。
【特許文献1】特開2006−132197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の防水シートおよび防水シートを用いた防水床構造では、オレフィン系の樹脂であるポリエチレンやEVAなどからなる防水シートで木製の床板を被覆しているため、例えば、防水シートのズレを防止するために床板に接着剤を用いて防水シートを固定した場合、ポリエチレンやEVA(エチレン・ビニル・アセテート)などが難接着物質であることから、木材と防水シート、および、防水シートと内装材との間の十分な接着力が得られず、防水シートがずれて撓みやしわなどが生じてしまう虞がある。
【0004】
そこで、この発明は、防水性能を十分に確保しつつ接着性を向上して防水シートの撓みやしわなどを防止することができる防水シートおよび防水シートを用いた床構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した防水シートは、防水性を有するシート状の基材(例えば、実施の形態における基材21)の表面および裏面に繊維層(例えば、実施の形態における繊維層22a,22b)を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した防水床構造は、請求項1に記載の防水シート(例えば、実施の形態における防水シート20)を用いた防水床構造であって、接着により床板(例えば、実施の形態における床板2)を前記防水シートで被覆し、さらに該防水シートの上面に内装材(例えば、実施の形態における内装材25)を接着により固定して設けることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した防水床構造は、請求項2に記載の防水床構造において、前記防水シートは、前記床板に加えて該床板の周縁から立ち上がる壁板(例えば、実施の形態における壁板7)の下部内面を被覆することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載した防水床構造は、請求項2又は3に記載の防水床構造において、前記床板と該床板の周縁から立ち上がる壁板との接合部(例えば、実施の形態における接合部S)を、防水性を有したパッチ部材(例えば、実施の形態におけるパッチ部材P)により内側から被覆し、このパッチ部材により被覆された前記床板の上面を前記防水シートで被覆することを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載した防水床構造は、請求項4に記載の防水床構造において、前記パッチ部材が、前記床板の角部(例えば、実施の形態におけるコーナ部C)に形成される接合部を被覆する入隅用パッチ(例えば、実施の形態における入隅用パッチ部材10)と、前記床板の辺部に形成される接合部を被覆する中間部用パッチ(例えば、実施の形態における中間部用パッチ部材11)とで構成され、前記入隅用パッチは、前記床板に沿う下板部(例えば、実施の形態における下板部13)および隣接する前記壁板に沿う2枚の上板部(例えば、実施の形態における上板部14)が一体的に形成されてなり、前記中間部パッチは、前記床板に沿う下板部(例えば、実施の形態における下板部15)と壁板に沿う上板部(例えば、実施の形態における上板部16)とが一体的に形成されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載した防水床構造は、請求項4又は5に記載の防水床構造において、前記パッチ部材と前記床板および壁板との隙間が防水テープ(例えば、実施の形態における防水テープ18)で目張りされてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、防水シートの表面および裏面に設けた繊維層に接着剤が染み込んで絡みつくため、接着剤が硬化した際に接着剤が繊維層から剥離するのを防止することができる。したがって、防水性を確保しつつ施工した防水シートが撓んだりしわが生じたりするのを防止することができる効果がある。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、防水シートの裏面に設けた繊維層により防水シートと床板との接着力を向上させることができるとともに、防水シートの表面に設けた繊維層により防水シートと内装材との接着力を向上させることができるため、防水シートの撓みやしわの発生を防止するとともに、防水シートの撓みなどによる内装材への影響を抑制することができる効果がある。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、請求項2の効果に加え、壁板の下部を防水シートにより防水しつつ、防水シートの裏面の繊維層により防水シートと壁板との接着力を向上させることができるため、壁板を被覆する防水シートの剥がれを防止することができる効果がある。
【0014】
請求項4に記載した発明によれば、請求項2又は3の効果に加え、パッチ部材により床板と壁板との接合部から水が床下に入り込むのを防止することができるため、防水シートとパッチ部材とによる2重の防水構造となり信頼性の向上を図ることができる効果がある。
【0015】
請求項5に記載した発明によれば、請求項5の効果に加え、床板に沿う下板部と2枚の壁板に沿う2枚の上板部とが一体的に形成されてなる入隅用パッチを床板の角部の接合部に配置し、さらに、床板に沿う下板部と壁板に沿う上板部とが一体的に形成されてなる中間部パッチを床板の辺部に形成される接合部に配置するだけでよいため、防水性能を向上しつつ作業工数を低減して作業者の負担を軽減することができる効果がある。
【0016】
請求項6に記載した発明によれば、請求項4又は5の効果に加え、パッチ部材と床板および壁板との間を防水テープにより目張りすることで、パッチ部材と床板との隙間から床下に水が浸入するのを防止することができるため、防水シート、パッチ部材および防水テープによる3重の防水構造となり、したがって、更なる防水性能の向上を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
この実施形態は、この発明を洗面所や脱衣所など水周りの床構造に適用したものであって、床下に排水管や給水管などを配策する空間を確保するべく、例えば建物の下の地面やベタ基礎などの上に鋼製の束を介して床板を配設したいわゆる2重床構造となっている。
【0018】
図1に示す2重床構造1は、床板2が所定間隔に配置された木根太3によって下方から支持され、この木根太3が、地面、ベタ基礎およびスラブなどに立設される鋼製やプラスチック製の複数の束4によりその両端部や長手方向中央部など所定位置で支持される。木根太3は、床板2を下方から支持する骨組みを構成するもので、支持重量に応じた太さの角材が適宜用いられる。ここで、木根太3と束4との接触部分には木製の合板5が挟まれ、また、束4の足部は地面、ベタ基礎およびスラブなどに接着により固定されている
【0019】
図1、図2に示すように、木根太3には、床板2を構成する上合板2aと下合板2bとが重ねられて釘などで木根太3に固定されている。この床板2を構成する下合板2bの厚さ(例えば12〜15mm)は、上合板2aの厚さ(例えば、5.5mm程度)よりも相対的に厚く設定されている。
また、床板2は、その周縁から上方に向かって立ち上がる壁板7によって囲まれている。この壁板7は、合板等の板材で構成されており図示しない天井に至っている。
【0020】
そして、上述した木根太3や床板2などの木材によって組み立てられた2重床には、防水加工が施される。まず、図3に示すように、床板2と壁板7との間の接合部Sは、ポリエチレンなどの防水性を有した薄型(例えば、0.5mm程度)の軟質材からなる入隅用パッチ部材10と中間部用パッチ部材11とで被覆される。
入隅用パッチ部材10は、床板2のコーナ部Cの接合部Sを内側から防水するための部材であり、床板2と平行に形成され床板2の上面に当接する板状(例えば、100mm角程度)の下板部13と、この下板部13の隣り合う2辺から上方に立ち上がり隣り合う2枚の壁板7と平行に形成され各壁板7の内面に当接する2枚の上板部14(例えば、100mm角程度)とが一体的に形成されてなる。
【0021】
中間部用パッチ部材11は、上述した床板2のコーナ部C同士を結ぶ中間部Tの接合部Sを内側から防水するためのものであり、床板2の辺に沿って長尺で所定幅(例えば、100mm程度)を有した下板部15と、この下板部15の壁板7側から壁板7に沿って立ち上がり一定の高さ(例えば、100mm程度)で形成された上板部16とが一体的に形成されてなる。なお、上述した入隅用パッチ部材10と中間部用パッチ部材11とでパッチ部材Pが構成されている。
【0022】
入隅用パッチ部材10と中間部用パッチ部材11とはその端部が若干重なった状態で接合部Sの内側に載置され、さらに、入隅用パッチ部材10と床板2および壁板7との隙間が防水テープ18により目張りされ(図示略)、同様に、中間部用パッチ部材11と床板2および壁板7との隙間が防水テープ18により目張りされている(図1参照)。
防水テープ18は、防水性を有し片面に粘着材が塗布されたアクリル樹脂系やブチルゴム系などの粘着テープを用いることができ、十分な幅寸法を有するものを用いるのが好ましい。なお、上述した入隅用パッチ部材10と中間部用パッチ部材11とが重なる部分については、どちらが上になってもよい。
【0023】
上述したパッチ部材Pに防水テープ18が貼付された状態で、床板2の上面および壁板7の下部内面は、防水シート20により被覆される。防水シート20は、図4に示すように、防水性を有したシート状の基材21および、この基材21の表裏面にそれぞれ固定された繊維層22a,22bからなる。基材21は、例えば、厚さ0.2mm程度のオレフィン系の樹脂であるPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET、あるいはEVA等を用いるのが好ましく、繊維層22a,22bはオレフィン系やポリエステル系の不織布などを用いるのが好ましい。この繊維層22a,22bは、厚さ0.2mm程度が好適であり、溶着等によって基材21に固定されている。そして、このように構成された防水シート20が、防水性を有した木工用の接着剤などによって床板2の上面および壁板7の内面に固定される。なお、壁板7を被覆する領域は下部内面に限られず、壁板7全域に亘ってもよい。また、繊維層22a,22bは不織布に限られるものではなく、例えば、織物などであってもよい。なお、図1、図2では、図示都合上、接着剤を省略している。
【0024】
さらに、防水シート20の上面には、内装材25が接着剤により固定される。内装材25としては、接着剤により固定するユニット式のタイル等を用いることができる。この内装材25と防水シート20とを接着する接着剤は、内装材25の接着に適したものを用いるのが好ましい。図1,2では、内装材25として予め複数のタイル27をモルタル28で固めて形成したユニット式のタイルを用いた一例を示しており、このユニット式のタイルは壁板7を覆う防水シート20よりも若干上方の壁板7まで覆っている。なお、接着作業を行う際には、防水シート20の繊維層22a,22b側に接着剤を塗布しても良いし、また、床板2、壁板7および内装材25側に塗布するようにしても良い。
【0025】
ところで、床板2を構成する上合板2aおよび下合板2bには、コーナ部C近傍に貫通孔29(例えば、φ80程度)が形成され、この貫通孔29に向かって所定の水勾配が設定されている。
【0026】
図5に示すように、貫通孔29は、床下に配置された排水配管41の開口部41aの鉛直上方に形成されており、貫通孔29の周縁の床板2の上面には、上述した入隅用パッチ部材10および中間部用パッチ部材11と同様に防水性を有した貫通孔用パッチ部材30が載置される。図5,6に示すように、貫通孔用パッチ部材30は、貫通孔29よりも十分に大きく(例えば、200mm角程度)、ポリエチレン等で薄型(例えば、0.5mm程度)に成型された軟質材の主板部31を備え、その中心部分には、下方に向かって漸次縮径する縮径部32が形成されている。
【0027】
縮径部32の下端部の内径は、詳細を後述する排水目皿42を構成する本体枠部42aの小径部43よりも若干小さく形成されており、上方から排水目皿42の小径部43を押し込むことで、その内径が貫通孔用パッチ部材30の伸縮性により若干拡大され、縮径部32の内周面が小径部43の外周面を締付けて密着する状態となり、これにより、貫通孔用パッチ部材30と排水目皿42との間の水密構造をなす。なお、図5では、排水配管41がスラブ40を貫通する場合を示しているが、このような構成に限られるものではない。
【0028】
貫通孔用パッチ部材30の主板部31が床板2の上に載置されると、縮径部32は貫通孔29内を臨む位置に配置される。ここで、この貫通用パッチ部材30は、上述した入隅用パッチ部材10や中間部用パッチ部材11と同一の工程で施工され、この施工後に防水シート20および内装材25が接着剤によって順次取り付けられることとなる。ここで、貫通孔用パッチ部材30の位置決めを行うために接着剤等を用いて仮止めを行うのが好ましい。
【0029】
防水シート20および内装材25には、床板2の貫通孔29が配置される鉛直方向上方に、各々貫通孔29よりも大径な貫通孔50,51が形成されている。ここで、防水シート20および内装材25を床板2に取り付ける際に貫通孔29、貫通孔50,51の中心位置を一致させることで、貫通孔29に排水目皿42の大径部46が挿入可能となる。
【0030】
排水目皿42は、塩化ビニル等の樹脂やステンレス等の金属で成型され、その下部に貫通孔29よりも小径に形成されて貫通孔29を貫通する小径部43が形成され、その上部には有段成型されて貫通孔50,51の内径と略同一外径に形成された大径部44が形成されている。
【0031】
小径部43は、その外周面と貫通孔29の内周面との間に上述した貫通孔用パッチ部材30の縮径部32が入り込むための所定の隙間dが確保できる程度に、その外径が貫通孔29の内径よりも小径に形成されている。また、排水目皿42が取り付けられた状態で、小径部43の下端部43aは、その外周面と排水配管41の内周面との間に若干の隙間を形成しつつ排水配管41の上部内側に挿入されるようになっている。
【0032】
一方、大径部44は、その底壁45が主板部31上に載置されるとともに、その周壁部46が、防水シート20と内装材25との貫通孔50,51を貫通するように配置される。大径部44の上縁部分には径方向外側に向かって突出するつば部47が形成されており、内装材25の貫通孔50の上部開口部52の周縁に沿って形成された凹状の支持部48に支持されている。そして、この支持部48により、つば部47の上面と内装材25の上面とが面一な状態でつば部47が支持部48に支持される。
【0033】
また、大径部44の内側には、排水目皿42を構成するストレーナ42bが着脱自在に取り付けられている。このストレーナ42bは、複数の長孔53が形成された略円形の上壁部54と、上壁部54の周縁から下方に延びて上壁部54を支持する円筒部55とからなる。なお、図示都合上、図5では上合板2aおよび下合板2bを併せて床板2とし、また貫通孔用パッチ部材30と床板2との隙間を目張りする防水テープ18と、防水シート20および床板2を接着する接着剤と、防水シート20および内装材25を接着する接着剤とを省略している。
【0034】
すなわち、内装材25上に流下した水は、床板2の水勾配により貫通孔29側に向かい、ストレーナ42bの長孔53を介して排水目皿42の内部に入り込み排水配管41へと至る。この際、水が例えば、排水目皿42の周縁等から浸入しても、防水シート20により床下への浸入が防止されるとともに、仮に防水シート20で水の浸入を防げなかった場合であっても、貫通孔用パッチ部材30と排水目皿42が密着しているため、防水シート20で防げなかった水が床下へ流下するのを防止することができる。
【0035】
したがって、上述した実施形態によれば、防水シート20の表面および裏面に設けた繊維層22a,22bに接着剤が染み込んで絡みつくため、防水シート20の床板2、壁板7に接着する側にこれら床板2、壁板7に適した接着剤を用いるとともに、防水シート20の内装材25を接着する側に、内装材25に適した接着剤を用いることで、接着剤が硬化した際に接着剤が繊維層22a,22bから剥離して防水シート20の接着不良を防止することができる。したがって、防水性を確保しつつ施工した防水シート20が撓んだりしわが生じたりするのを防止することができる。
【0036】
また、防水シート20の裏面に設けた繊維層22aにより防水シート20と床板2との接着力を向上させつつ、防水シート20の表面に設けた繊維層22bにより防水シート20と内装材25との接着力を向上させることができるため、防水シート20の撓みやしわの発生を防止するとともに、防水シート20の撓みなどによる内装材25への影響を抑制することができる。
【0037】
さらに、壁板7の下部を防水シート20により防水しつつ、防水シート20の裏面の繊維層22aにより防水シート20と壁板7との接着力を向上させることができるため、壁板7を被覆している防水シート20の剥がれを防止することができる。
【0038】
そして、パッチ部材Pにより床板2と壁板7との接合部Sから水が床下に入り込むのを防止することができるため、防水シート20とパッチ部材Pとによる2重の防水構造となり信頼性の向上を図ることができる。
【0039】
さらに、床板2に沿う下板部13と2枚の壁板7に沿う2枚の上板部14とが一体的に形成されてなる入隅用パッチ部材10を床板2のコーナ部Cの接合部Sに配置し、さらに、床板2に沿う下板部15と壁板7に沿う上板部16とが一体的に形成されてなる中間部用パッチ部材11を中間部Tに形成される接合部Sに配置するだけでよいため、防水性能を向上しつつ作業工数を低減して作業者の負担を軽減することができる。
【0040】
また、パッチ部材Pと床板2および壁板7との間を防水テープ18により目張りすることで、パッチ部材Pと床板2との隙間から床下に水が浸入するのを防止することができるため、防水シート20、パッチ部材Pおよび防水テープ18による3重の防水構造となり、その結果、更なる防水性能の向上を図ることができる。
さらに、木造の2重床構造において、とりわけ床下への水の浸入を確実に防止することができる。
【0041】
[他の態様]
上述した貫通孔用パッチ部材30の他の態様として、例えば、図7に示す貫通孔用パッチ部材30aを用いても良い。この貫通孔用パッチ部材30aは、主板部31の中心部分に貫通孔29の孔径と略同一に形成された円形部32aを備えている。この円形部32aの内側には、貫通孔33(例えば、φ40程度)が形成された伸縮部34を有している。また、これら円形部32aの内周と伸縮部34との間には、伸縮部34を主板部31に一体的に成型するための中間部35が設けられている。ここで、伸縮部34は、防水性および伸縮性を有したエラストマー樹脂等で形成されているため、貫通孔33の内径よりも大きく、且つ、主板部31の円形部32aの内径以下の排水目皿42が貫通するのを許容することができる。この際、排水目皿42の外周面に伸縮部34の内周面が密着するので、排水目皿42の外周面と貫通孔用パッチ部材30aとの間に水密構造を構成することができる。このように貫通孔用パッチ部材30aを構成することにより、排水目皿42の小径部43の外径の選択自由度が向上し、その結果、様々な外径の排水配管41に対応可能となる。
【0042】
また、図6に示す貫通孔用パッチ部材30を、例えば、図8に示すように用いてもよい。この図8に示す他の態様を、図5に示す2重床構造と同一部分に同一符号を付して説明する。
図8に示す2重床構造の場合、スラブ40を立ち上がる排水配管41の上端の位置に合わせて床板2の上面位置を設定している。貫通孔用パッチ部材30は、その主板部31が、貫通孔29周縁の床板2の上面に載置され、貫通孔用パッチ部材30の縮径部32が排水配管41の内部を臨んでいる。ここで、床板2の貫通孔29は、排水配管41とのクリアランスを確保すべくその内径が排水配管41の外径よりも若干大きく形成されており、貫通孔29の内周面と排水配管41の外周面との間には隙間が生じている。また、貫通孔用パッチ部材30は、縮径部32の下端部の内径が排水配管41よりもやや小さく設定されている。
【0043】
貫通孔用パッチ部材30の上には、排水目皿60が取り付けられている。排水配管41が床板2の位置まで立ち上がっていることから、この排水目皿60は、上述した排水目皿42の小径部43を省略した薄型で底壁45を備えた略筒状に形成された枠体61を備えたものとなっている。そして、この枠体61の内側には、長孔53が形成された上壁部54とその周縁から下方に延びる周壁部55とから構成されるストレーナ42bが着脱自在に設けられる。ここで、貫通孔用パッチ部材30が取り付けられた床板2の上には、防水シート20及び内装材25が上述した実施形態と同様に順次接着剤により固定される。なお、内装材25と枠体56との間をコーキング材等で防水処理してもよい。
このように構成することで、貫通孔用パッチ部材30が床板2の上面から排水配管41の内部を臨む位置に至り、排水配管41および床板2の上面との間に挟持されて水密構造を構成する。そのため、排水目皿60の周囲から水が浸入したとしても、水が床板2に接触するのを防止できるとともに、排水配管41と床板2との間から水が床下に浸入するのを防止することができる。
【0044】
なお、この発明は上述した実施形態に限られるものではなく、例えば、2重床構造以外の床構造に適用しても良い。
さらに、上記実施形態では木材を用いた床構造について説明したが、この発明は、防水性が要求される材料を用いた床構造に好適である。また、床板2に合板を用いた場合について説明したが、合板に限られるものではない。
【0045】
そして、上述の実施形態では、防水シート20が床板2上面から壁板7内面を連続して被覆している場合について説明したが、床板2上面と壁板7内面とで分割して被覆するようにしても良い。また、パッチ部材の上から防水テープで目張りしたが、パッチ部材と床板2および壁板7とを防水性を有した両面テープで固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態における2重床構造を示す部分断面斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるパッチ部材の施工例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における防水シートの断面図である。
【図5】本発明の実施形態における図1のB−B線に沿う断面図である。
【図6】本発明の実施形態における貫通孔用パッチ部材の斜視図である。
【図7】貫通孔用パッチ部材の他の態様を示す斜視図である。
【図8】図6に示す貫通孔用パッチ部材を用いた2重床構造の他の態様を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
2 床板
7 壁板
10 入隅用パッチ部材(入隅用パッチ)
11 中間部用パッチ部材(中間部用パッチ)
13 下板部
14 上板部
15 下板部
16 上板部
20 防水シート
21 基材
22a,22b 繊維層
25 内装材
S 接合部
P パッチ部材
C コーナ部(角部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水性を有するシート状の基材の表面および裏面に繊維層を設けたことを特徴とする防水シート。
【請求項2】
請求項1に記載の防水シートを用いた防水床構造であって、
接着により床板を前記防水シートで被覆し、さらに該防水シートの上面に内装材を接着により固定して設けることを特徴とする防水シートを用いた防水床構造。
【請求項3】
前記防水シートは、前記床板に加えて該床板の周縁から立ち上がる壁板の下部内面を被覆することを特徴とする請求項2に記載の防水シートを用いた防水床構造。
【請求項4】
前記床板と該床板の周縁から立ち上がる壁板との接合部を、防水性を有したパッチ部材により内側から被覆し、このパッチ部材により被覆された前記床板の上面を前記防水シートで被覆することを特徴とする請求項2又は3に記載の防水シートを用いた防水床構造。
【請求項5】
前記パッチ部材は、前記床板の角部に形成される接合部を被覆する入隅用パッチと、前記床板の辺部に形成される接合部を被覆する中間部用パッチとで構成され、前記入隅用パッチは、前記床板に沿う下板部および隣接する前記壁板に沿う2枚の上板部が一体的に形成されてなり、前記中間部パッチは、前記床板に沿う下板部と壁板に沿う上板部とが一体的に形成されてなることを特徴とする請求項4に記載の防水シートを用いた防水床構造。
【請求項6】
前記パッチ部材と前記床板および壁板との隙間が防水テープで目張りされてなることを特徴とする請求項4又は5に記載の防水シートを用いた防水床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−155994(P2009−155994A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338515(P2007−338515)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】