説明

防水シート施工用治具及びそれを用いた防水シートの施工方法

【課題】建物躯体の室外側面に、室内側に居る作業者によって室内側から防水シートを張付け施工可能とした防水シート施工用治具とする。
【解決手段】建物躯体1の室外側面1aに取付けたガイド部材10に沿って移動する治具本体20と、この治具本体20に、着脱自在に吊り下げて取付けられ、ロール状の防水シート2を回転自在に支持する防水シート支持部材30とを備え、前記治具本体20をガイド部材10に沿って移動しながら防水シート支持部材30で支持したロール状の防水シート2を繰り出し可能とした防水シート施工用治具で、この治具であれば、建物躯体1の室内側に居る作業者が、その建物躯体1の開口4を通してロール状の防水シート2を移動しながら繰り出して建物躯体1の室外側面1aに接することができるので、その建物躯体1の室外側面1aに、その建物躯体1の室内側に居る作業者によって室内側から防水シート2を張付け施工することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体に取付ける外壁材の下地材等として用いる防水シートを、その建物躯体の室外側面等に張付け施工する際に用いる防水シート施工用治具及び、その防水シート施工用治具を用いて防水シートを建物躯体の室外側面等に張付け施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物躯体に外壁材を取付ける場合に、その建物躯体の室外側面に下地材として防水シートを張付け、この防水シートの上に外壁材を取付けることが実施されている。
前述の防水シートを建物躯体の室外側面に張付け施工する際に用いる治具が種々提案されている。
例えば、特許文献1に開示されたように、ロール状の防水シートを回転自在に支承する形状で、作業者が手で持って移動するようにした防水シート施工用治具が提案されている。
この防水シート施工用治具を用いて防水シートを張付け施工する方法は、治具を作業者が手で持って移動することで防水シートを引き出し、張付け施工する方法と、治具を足場の支柱、踏板に引っ掛けて吊り下げ、防水シートを引き出し張付け施工する方法がある。
【0003】
【特許文献1】特開平11−148229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の治具は、その治具を作業者が手で持って移動して防水シートを引き出して張付け施工したり、又は治具を足場などに吊り下げて防水シートを引き出して張付け施工する構成である。
このようであるから、前者のようにして防水シートを張り付け施工する場合には、治具とロール状の防水シートを作業者が手で持って移動するので、その作業が重労働で、面倒である。
また、後者のようにして防水シートを張り付け施工する場合には、ロール状の防水シートを張り付ける長さだけ引き出し、その引き出した防水シートを1度に張り付けるので、防水シートがしわになったりし易く、正しく真っ直ぐな姿勢で張り付け施工できないことがある。
【0005】
また、従来の治具を用いて建物躯体の室外側面に、室内側からの防水シートの張付け施工はやりづらく、事実上は張付けできない。
例えば、治具にロール状の防水シートを支持した状態で、その治具を建物躯体の室外側に配設し、建物躯体の室内側に居る作業者が手を出して治具を持ち、その治具を移動して防水シートを引き出して張付け施工することになるので、その作業がやりづらく、事実上は張付け施工できない。
特に、長尺な外壁材を縦向きに取付ける外壁材タテ張り施工の場合に、1枚の防水シートを外壁材取付部の全長に亘って一度に張付けるようにすると、その防水シートの幅(上下寸法)が広く、ロール状の防水シートの重さが大重量となるので、その大重量の防水シートを支承した治具を室内側の作業者が手で持って移動することは事実上無理で、防水シートを室内側から張付け施工できない。
【0006】
このようであるから、狭小地での外壁材取付け作業の際に、前述した従来の治具を用いて防水シートを建物外壁の室外側面に張付けることができない。
なお、狭小地とは隣接境界と建物躯体との間の距離が短い(例えば500mm以下)場合等である。
【0007】
本発明の目的は、建物躯体に防水シートを、しわなどが生じることなく真っ直ぐな状態で簡単に張付け施工でき、しかも建物躯体の室外側面に、その建物躯体の室外側から防水シートを張付け施工することが可能である防水シート施工用治具及びそれを用いた防水シートの施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の防水シート施工用治具は、建物躯体に取付けたガイド部材に沿って移動自在であると共に、防水シートを繰り出し自在に支持し、前記ガイド部材に沿って移動しながら前記防水シートを繰り出し可能としたことを特徴とする防水シート施工用治具である。
【0009】
この防水シート施工用治具において防水シートを繰り出し自在に支持するには、ロール状の防水シートを回転自在に支持したり、防水シートを蛇腹状に順次折り畳みした状態で支持することができる。
【0010】
本発明の第2の防水シート施工用治具は、防水シート張付け面に取付けたガイド部材に沿って移動する治具本体と、
この治具本体に、着脱自在に吊り下げて取付けられ、ロール状の防水シートを回転自在に支持する防水シート支持部材とを備え、
前記治具本体をガイド部材に沿って移動しながら防水シート支持部材で支持したロール状の防水シートを繰り出し可能としたことを特徴とする防水シート施工用治具である。
【0011】
本発明の第2の防水シート施工用治具においては、ガイド部材は防水シート張付け面の上部寄りに取付けられ、
防水シート支持部材の上部が治具本体に取付けられ、この防水シート支持部材の中間部にロール状の防水シートが支持され、その防水シート支持部材の下部に振れ止め部材を取付け、
この振れ止め部材は、前記防水シート張付け面の下部寄りに接するようにすることができる。
このようにすれば、防水シート支持部材の上部が防水シート張付け面の上部寄りに沿って治具本体とともに左右に移動し、その防水シート支持部材の下部は振れ止め部材で振れ止めされながら防水シート張付け面の下部寄りに沿って左右に移動する。
したがって、ロール状の防水シートを防水シート張付け面に沿ってスムーズに左右に移動することができる。
【0012】
本発明の第2の防水シート施工用治具においては、ガイド部材は、上向きの第1ガイド部、防水シート張付け面と反対側に向かう第2ガイド部、防水シート張付け面に向かう第3ガイド部を有し、
治具本体は、前記第1・第2・第3ガイド部にそれぞれ接する第1・第2・第3ガイドローラを備えていることができる。
このようにすれば、治具本体をガイド部材に沿って防水シート張付け面に接近、離隔方向に振れ動くことなしに安定してスムーズに移動できる。
【0013】
本発明の第2の防水シート施工用治具においては、治具本体は、防水シート張付け面と反対側に開口し、上下面に貫通した凹部を有し、
防水シート支持部材の上部は、その上部を防水シート張付け面に向けて移動して前記凹部に挿入し、下方に移動することで治具本体に吊り下げて取付けられる形状とすることができる。
このようにすれば、防水シート支持部材の上部を、防水シート張付け面に向けて移動して凹部に挿入した後に、その上部を下方に移動して治具本体に吊り下げて取付けできるので、その防水シート支持部材の上部を治具本体に簡単に吊り下げて取付けできる。
【0014】
本発明の第1の防水シートの施工方法は、建物躯体に取付けたガイド部材に沿って本発明の防水シート施工用治具を移動自在に支持する工程と、その防水シート施工用治具を移動すると同時に防水シートを繰り出して建物躯体に順次張り付ける工程を有した防水シートの施工方法である。
【0015】
本発明の第2の防水シートの施工方法は、前述の請求項2,3,4,5いずれか1項に記載の防水シート施工用治具を用いて防水シートを建物躯体の室外側面に張付ける方法であって、
前記建物躯体は、その防水シート張付け部分に室外側面と室内側面とに貫通した複数の開口を左右に間隔を置いて有し、
この建物躯体の室外側面における開口よりも上部にガイド部材を、室内側に居る作業者が開口を通して取付ける工程と、
室内側に居る作業者が開口を通して治具本体を、ガイド部材に移動自在に取付ける工程と、
室内側に居る作業者が開口を通してロール状の防水シートを支持した防水シート支持部材を、前記治具本体に吊り下げて取付ける工程と、
室内側に居る作業者が前記開口を通してロール状の防水シートを移動しながら繰り出して開口を閉じる工程と、
室内側に居る作業者が前記防水シートで閉じられた開口と隣接した開口を通して防水シートを開口の周縁に固定する工程を有した防水シートの施工方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の防水シート施工用治具であれば、防水シートを支持した治具をガイド部材に沿って移動するので、その作業が簡単である。
また、治具を移動しながら防水シートを繰り出し、その繰り出した部分を張り付け施工する作業をくり返すことで防水シートを建物躯体に張り付け施工できるので、防水シートがしわになったりせずに正しく真っ直ぐな状態で張り付け施工できる。
【0017】
本発明の第2の防水シート施工用治具によれば、ロール状の防水シートを支持した防水シート支持部材が治具本体とともにガイド部材に沿って移動するから、重量の重いロール状の防水シートを軽い力でスムーズに移動しながら繰り出しすることができる。
また、防水シート支持部材を治具本体に吊り下げて取付けたり、取り外したりすることができるから、防水シート支持部材を治具本体とは別に単体として取り扱うことができる。
【0018】
このようであるから、ガイド部材を建物躯体の室外側面に取付け、その建物躯体の防水シート張付け部に形成した開口を通して室内側に居る作業者が治具本体をガイド部材に取付け、その治具本体に、ロール状の防水シートを支持した防水シート支持部材を前記開口を通して吊り下げて取付け、そのロール状の防水シートを開口を通して室内側に居る作業者が移動しながら繰り出しすることができるので、建物躯体の室外側面に、その建物躯体の室内側から防水シートを張付け施工することが可能である。
【0019】
本発明の第1の防水シートの施工方法であれば、建物躯体に防水シートをしわなどが生じることなく真っ直ぐな状態で簡単に張付け施工できる。
【0020】
本発明の第2の防水シートの施工方法であれば、建物躯体の室外側面に防水シートを、その建物躯体の室内側に居る作業者によって張付けできる。
したがって、長尺な外壁材を縦向きとして取付けるタテ張り施工の際に、その外壁材の長さと同様な幅広い防水シートを、建物躯体の室外側面に室内側から張付け、その後に外壁材を室内側から取付けできるから、狭小地においても外壁材をタテ張り施工することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1に示すように、建物躯体の防水シート張付け面、例えば建物躯体1の室外側面1aに防水シート2を張付け、その防水シート2に接するようにして外壁材3を建物躯体1の室外側面1aに取付ける。
前記建物躯体1の外壁材取付部分(防水シート張付け部)には縦長の開口4が左右方向に間隔を置いて複数有する。この開口4は建物躯体1の室外側面1aと室内側面1bとに亘って開口連通している。
例えば、下の横材(土台)5と上の横材(胴縁)6と柱7、間柱8で縦長の開口4を形成し、この開口4は床と天井との間の寸法と略等しい。
前記防水シート2は開口2の下縁部(土台5)と開口2の上縁部(胴縁6)とに亘って張付けられるように幅広い。例えば、幅が3mである。
前記外壁材3は開口4の下縁部(土台5)と開口2の上縁部(胴縁6)とに亘って取付けられるように長尺で、縦向きに取付けられる。つまり、外壁材3はタテ張り施工で取付けられる。
前記防水シート2は透湿性を有する透湿防水シートが好ましいが、透湿性を有しない防水シートでも良い。
【0022】
次に、前述の防水シート2を張付け施工するための防水シート施工用治具を図2〜図5に基づいて説明する。
前述の治具は、図2に示すように防水シート張付け面である建物躯体1の室外側面1aに左右方向に向けて取付けたガイド部材10に沿って左右に移動する治具本体20と、この治具本体20に着脱自在に吊り下げて取付けられ、ロール状の防水シートを回転自在に支持する防水シート支持部材30と、この防水シート支持部材30の下部を室内外側方向、つまり防水シート張付け面に接近、離隔方向に振れ動くことがないようにする振れ止め部材40を備えている。
【0023】
前記治具本体20は室内外側方向(前述の防水シート張付け面に接近、離隔する方向)に倒れたり、振れ動いたりせずに安定した姿勢を維持してガイド部材10に沿って左右方向にスムーズに、軽い力で移動するようにしてある。
例えば、前記ガイド部材10は上向きの第1ガイド部11と室外側(防水シート張付け面と反対側)に向かう第2ガイド部12と室内側(防水シート張付け面)に向かう第3ガイド部13を有する。
前記治具本体20は、前記第1ガイド部11に接する第1ガイドローラ21と、前記第2ガイド部12に接する第2ガイドローラ22と前記第3ガイド部13に接する第3ガイドローラ23を有する。
そして、第1ガイドローラ21が第1ガイド部11に沿って回転することで治具本体20を左右方向にスムーズに移動するように支持し、第2ガイドローラ22が第2ガイド部12に沿って回転することで治具本体20が室外側(防水シート張付け面と反対側)に倒れたり、振れ動かないように支持し、第3ガイドローラ23が第3ガイド部13に沿って回転することで治具本体20が室内側(防水シート張付け面)に倒れたり、振れ動いたりしないように支持する。
【0024】
前記ガイド部材10は建物躯体1の室外側面1aにおける開口4の上縁部分(防水シート張付け面の上部寄り)、例えば図1に仮想線で示すように胴縁6に取付けてある。
この実施の形態では、前記ガイド部材10を、外壁材3を取付けるための下端カバー14と水切り15で構成している。
前記下端カバー14は建物躯体1の室外側面1aに取付けられ、外壁材3の下端部が嵌め込みされる上向き凹部を有し、その上向き凹部を形成する立上り片14aの上端部が第1ガイド部11で、その立上り片14の室内側縦向面が第3ガイド部13である。
前記水切り15は建物躯体1の室外側面1aに取付けられ、下端カバー14よりも下方で、かつ室外側に突片した水切り片15aを有し、その水切り片15aの室外側縦面が第2ガイド部12である。
【0025】
この下端カバー14、水切り15は室内側に居る作業者が開口4を通して胴縁6の室外側面に簡単に取付けできるようにしてある。
また、前記治具本体20は防水シート支持部材30を取り外した状態で、室内側に居る作業者が建物躯体1の開口4を通してガイド部材10に移動自在に取付けできるようにしてある。
【0026】
前記防水シート支持部材30は、ロール状の防水シート2を回転自在に縦向きで支持した状態で、室内側に居る作業者が建物躯体1の開口4を通して治具本体20に吊り下げて取付けできるようにしてある。
例えば、防水シート支持部材30は軸31と、この軸31の上部寄りに設けた引掛け部材32と、軸31の上下中間に設けた上部支持部材33と、軸31の下部寄りに設けた下部支持部材34を備え、その下部支持部材34でロール状の防水シート2の下端部を軸31に対して回転自在で落下しないように支持し、かつそのロール状の防水シート2の上端部を上部支持部材33で回転自在に支持する。
前記治具本体20には室外側面20a(つまり、防水シート張付け面と反対側)に開口した凹部24が上下面に亘って形成され、この凹部24に引掛け部材32を室内外側方向から嵌め込むことで、その引掛け部材32が治具本体20の上面20bに接し、前記軸31の上部が治具本体20に吊り下げて取付けられる。
【0027】
前記振れ止め部材40は、防水シート支持部材30を前述のように治具本体20に吊り下げて取付けることで、その振れ止め部材40が建物躯体1の室外側面1aにおける開口4の下縁部分(防水シート張付け面の下部寄り)に接し、防水シート支持部材30が左右に移動する際に、その下部が室内外側方向(前述の防水シート張付け面に接近、離隔する方向)に振れないように支持する。
例えば、振れ止め部材40は前記軸31に対して回転自在な円板41を有し、この円板41が建物躯体1の室外側面1aに接し、治具本体20の移動によって円板41が回転する。
なお、防水シート支承部材30の上部を治具本体20にしっかりと支持し、その防水シート支承部材30の下部が大きく触れないようにすれば、前述の振れ止め部材40を設けなくとも良い。
【0028】
このようであるから、防水シート施工用治具を室内側に居る作業者によって室内側から建物躯体1の開口4を通して、その建物躯体1の室外側面1aに沿って左右方向に移動自在に取付けできる。
そして、室内側に居る作業者がロール状の防水シート2を回転しながら左右一方に移動することで、その防水シート2を順次繰り出して建物躯体1の室外側面1aに接することができるから、防水シート2を室内側に居る作業者によって室内側から建物躯体1の室外側面1aに簡単に取付けできる。
【0029】
次に、各部材の具体形状を説明する。
前記治具本体20は図3〜図5に示すように室内側部分20−1の上下寸法が小さく、室外側部分20−2の上下寸法が大きい断面略鉤形状の長尺材で、その室内側部分20−1に空洞部25が上下面に貫通して形成してある。
この空洞部25に第1ガイドローラ21が横軸周りに回転自在に取付けてあり、その第1ガイドローラ21は室内側部分20−1の下面よりも下方に突出する。
前記室内側部分20−1の下面に第3ガイドローラ23が縦軸回りに回転自在に取付けてあると共に、前記室外側部分20−2の下面に第2ガイドローラ22が縦軸回りに回転自在に取付けてある。
そして、第2ガイドローラ22は室外側寄りで、第3ガイドローラ23は室内側寄りである。
前記凹部24は、スリット状部24aと円形部24bを有し、そのスリット状部24aの幅は円形部24bの直径よりも小さい。
【0030】
前記軸31は図2に示すように角軸としてある。この軸31の径は凹部24のスリット状部24aの幅よりも小さい。
前記引掛け部材32は上部大径筒32aと下部小径筒32bで段付き筒形状で、この引掛け部材32の中心孔に軸31の上部を挿入し、ロックボルト35を上部大径筒32aに螺合して軸31に押しつけて固定してある。このロックボルト35は大径の握り部35aを有している。
前記上部大径筒32aの直径は治具本体20の凹部24の円形部24bの直径よりも大きく、下部小径部32bの直径は、前記凹部24のスリット状部24aの幅より大きく、円形部24bの直径よりも小さい。
【0031】
このようであるから、軸31を治具本体20の凹部24内に挿入し、その後に軸31を下方に移動することで、引掛け部材32の下部小径筒32bが凹部24の円形部24b内に嵌合して上部大径筒32aの下面が治具本体20の上面20bに接するので、軸31が治具本体20に吊り下げ支持されると共に、軸31が治具本体20に対して室内外側方向にガタつくことがなく、しかも下部小径筒32bが凹部24のスリット状部24aから抜け出しできないので、軸31が治具本体20の凹部24から室外側に抜けることがない。
つまり、防水シート支持部材30の上部は、その上部を建物躯体1の室外側面1a(防水シート張付け面)に向けて移動して前記凹部24に挿入し、下方に移動することで治具本体20に吊り下げて取付けられる形状である。
【0032】
前記上部支持部材33は筒形状で、その外周面33aの下部寄りにテーパ面33bを有している。
この上部支持部材33の中心孔に軸31を挿通し、前述と同一のロックボルト35を上下支持部材33に螺合して軸31に押しつけて長手方向に移動しないように固定する。
そして、この上部支持部材33の外周面33aにロール状の防水シート2の内周面、例えば円筒状の芯2aを接して回転自在に支持する。
つまり、円筒状の芯2aに防水シート2を巻装してロール状の防水シートとする。この芯2aは円筒ではなく、角筒でも良い。
【0033】
前記下部支持部材34は、軸31の下部に取付けた取付用筒体36の上部小径部分36aに回転自在に取付けた筒形状で、その外周面34aの上部寄りにテーパ面34bを有すると共に、下部寄りにフランジ34cが一体的に設けてある。
そして、ロール状の防水シート2の内周面(前述の芯2a)が外周面34aに接し、下面がフランジ部34cに接してロール状の防水シートの下部を回転自在で、かつ落下しないように支持する。
【0034】
前記取付用筒体36の中心孔に軸31の下部が挿通され、その下部大径部分36bに前述のロックボルト35を螺合して軸31に押しつけて長手方向に移動しないように固定する。
前記取付用筒体36の中間部分36cに前述の円板41を回転自在に取付けて振れ止め部材40としてある。
【0035】
前記上部支持部材33と下部支持部材34は、テーパ面33b,34bを有するので、このテーパ面33b,34bに前述の芯2aの上端、下端を接して支持できるから、若干の径の異なる芯2aを支持できる。
また、上部支持部材33と下部支持部材34との間には円形パイプ37が設けられ、この円形パイプ37内に軸31が挿通しているので、ロール状の防水シートは円形パイプ37に接しながらスムーズに回転できる。
【0036】
次に、建物躯体1の室外側面1aに防水シート2を室内側から張付け施工する作業を説明する。
前記ガイド部材10(下端カバー14、水切り15)を建物躯体1の室外側面1aに、開口4を通して室内側から取付ける。
室内側から治具本体20を建物躯体1の開口4を通して前記ガイド部材10に取付ける。
ロール状の防水シートを軸31に上部支持部材33と下部支持部材34で回転自在で、落下しないように支持する。
このロール状の防水シートを支持した防水シート支持部材30を室内側から建物躯体1の開口4を通して治具本体20に、前述のように吊り下げて取付ける。
【0037】
図6(a)に示すように、ロール状の防水シート2の巻終わり端縁2bを開口4の一端縦縁(間柱8)に位置合わせし、室内側に居る作業者が開口4から身を室外側に出しながら手を延ばして前述の巻き終わり端縁2bを間柱8に固着具2cで固着して取付ける。
【0038】
次に、室内側に居る作業者が建物躯体1の開口4から手を出してロール状の防水シート2を持って左右一方(矢印方向)に引張ることでロール状の防水シート2を繰り出しながら治具全体を左右一方に移動して図6(b)に示すように、前述の間柱8と隣接した間柱8まで防水シート2を引張り、開口4を防水シート2で閉じる。
【0039】
この状態で防水シート2により閉じられた開口4と隣接した開口から室内側に居る作業者が身を室外側に出しながら手を延ばして図6(c)に示すように、開口4を閉じている防水シート2を開口4の周縁に固着具2cで固着する。
【0040】
次に前述と同様にしてロール状の防水シート2を左右一方に移動して図6(d)に示すように開口4を防水シート2で閉じる。
そして、隣接した開口4から室内側に居る作業者が前述と同様にして開口4を覆っている防水シート2を固着具2cで開口4の周縁に固着する。
【0041】
この動作を順次繰り返して防水シート2を建物躯体1の室外側面1aに取付ける。
なお、作業の途中でロール状の防水シート2を使い切ってしまった場合には、室内側に居る作業者が開口4から手を出して、防水シート支持部材30を前述と反対に操作して治具本体20から取り外し、室内側に移動して新しいロール状の防水シート2を回転自在に支持する。
そして、ロール状の防水シート2を支持した防水シート支持部材30を、前述と同様にして治具本体20に吊り下げて取付ける。
この後に、前述のようにして防水シート2を取付ける。
【0042】
図1に示す外壁材3を防水シート2の上に取付けるには、図6(c)に示すように開口4を閉じた防水シート2を、その開口2の周縁に固着具2cで固着して張付けした後に、その開口2と隣接した開口4を通して室内側に居る作業者によって開口4を閉じている防水シート2の上に外壁材3を取付ける。
【0043】
前述の実施の形態では建物躯体1の室外側面1aに室内側に居る作業者によって防水シート2を張付け施工することを説明したが、本発明の治具を用いて防水シート2を前述の建物躯体1の室外側面1a以外の部分に張付け施工できる。
つまり、本発明の防水シート施工用治具によれば、任意の防水シート張付け面に防水シートを簡単に張付け施工できる。
【0044】
例えば、本発明の防水シート施工用治具の治具本体20と防水シート支持部材30を一体とし、その防水シート施工用治具をガイド部材に沿って移動自在で防水シートを繰り出し自在に支持するものとする。
前述の防水シートを繰り出し自在に支持するには、前述のようにロール状の防水シートを回転自在に支持するのが好ましいが、防水シートを蛇腹状に順次折り畳みした状態で支持しても良い。
また、ガイド部材を建物躯体の下部に取付け、治具の下部をそのガイド部材に沿って移動自在としても良い。
例えば、図2に示すガイド部材10を建物躯体1の室外側面1aにおける開口4の下縁部分に取付ける。
治具における軸31の下部に治具本体20を取付け、その軸31の上部に振れ止め部材40を取付けて、防水シート支持部材30の上部寄りに振れ止め部材40、下部寄りに治具本体20を備えた治具とする。この場合には振れ止め部材40を設けなくとも良い。
そして、治具本体20をガイド部材10に沿って移動自在とする。
また、ガイド部材を建物躯体の上部と下部に取付け、治具の上部と下部を各ガイド部材に沿って移動自在としても良い。
【0045】
前述した防水シート施工用治具によれば、建物躯体の室外側面、室内側面にガイド部材を取り付けて室外側に居る作業者、室内側に居る作業者によって治具を移動しながら防水シートを順次繰り出して室外側面、室内側面に張り付け施工できる。
この場合に、防水シートを張付け面の全長に亘って繰り出して一度の張り付け施工せずに、所定の長さだけ繰り出して張り付け施工することを何日か繰り返して施工できるので、防水シートにしわが生じたりせずに真っ直ぐ正しい状態で張り付け施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】建物躯体の外壁材取付部分の概略斜視図である。
【図2】防水シート張付け治具の一部破断側面図である。
【図3】治具本体の正面図である。
【図4】治具本体の平面図である。
【図5】図3のA−A断面図である。
【図6】防水シートの張付け動作説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1…建物躯体、1a…室外側面(防水シート張付け面)、2…防水シート、3…外壁材、4…開口、10…ガイド部材、11…第1ガイド部、12…第2ガイド部、13…第3ガイド部、20…治具本体、21…第1ガイドローラ、22…第2ガイドローラ、23…第3ガイドローラ、24…凹部、30…防水シート支持部材、31…軸、32…引掛け部材、33…上部支持部材、34…下部支持部材、40…振れ止め部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に取付けたガイド部材に沿って移動自在であると共に、防水シートを繰り出し自在に支持し、前記ガイド部材に沿って移動しながら前記防水シートを繰り出し可能としたことを特徴とする防水シート施工用治具。
【請求項2】
建物躯体の防水シート張付け面に取付けたガイド部材に沿って移動する治具本体と、
この治具本体に、着脱自在に吊り下げて取付けられ、ロール状の防水シートを回転自在に支持する防水シート支持部材とを備え、
前記治具本体をガイド部材に沿って移動しながら防水シート支持部材で支持したロール状の防水シートを繰り出し可能としたことを特徴とする防水シート施工用治具。
【請求項3】
ガイド部材は防水シート張付け面の上部寄りに取付けられ、
防水シート支持部材の上部が治具本体に取付けられ、この防水シート支持部材の中間部にロール状の防水シートが支持され、その防水シート支持部材の下部に振れ止め部材を取付け、
この振れ止め部材は、前記防水シート張付け面の下部寄りに接するようにした請求項2記載の防水シート施工用治具。
【請求項4】
ガイド部材は、上向きの第1ガイド部、防水シート張付け面と反対側に向かう第2ガイド部、防水シート張付け面に向かう第3ガイド部を有し、
治具本体は、前記第1・第2・第3ガイド部にそれぞれ接する第1・第2・第3ガイドローラを備えている請求項2又は3記載の防水シート施工用治具。
【請求項5】
治具本体は、防水シート張付け面と反対側に開口し、上下面に貫通した凹部を有し、
防水シート支持部材の上部は、その上部を防水シート張付け面に向けて移動して前記凹部に挿入し、下方に移動することで治具本体に吊り下げて取付けられる形状とした請求項2又は3又は4記載の防水シート施工用治具。
【請求項6】
請求項1,2,3,4,5いずれか1項に記載の防水シート施工用治具を用いて防水シートを建物躯体に張付ける施工方法であって、
前記建物躯体に取付けたガイド部材に沿って防水シート施工用治具を移動自在に支持する工程と、
その防水シート施工用治具を移動すると同時に防水シートを繰り出して建物躯体に順次張付ける工程を有した防水シートの施工方法。
【請求項7】
請求項2,3,4,5いずれか1項に記載の防水シート施工用治具を用いて防水シートを建物躯体の室外側面に張付ける施工方法であって、
前記建物躯体は、その防水シート張付け部分に室外側面と室内側面とに貫通した複数の開口を左右に間隔を置いて有し、
この建物躯体の室外側面における開口よりも上部にガイド部材を、室内側に居る作業者が開口を通して取付ける工程と、
室内側に居る作業者が開口を通して治具本体を、ガイド部材に移動自在に取付ける工程と、
室内側に居る作業者が開口を通してロール状の防水シートを支持した防水シート支持部材を、前記治具本体に吊り下げて取付ける工程と、
室内側に居る作業者が前記開口を通してロール状の防水シートを移動しながら繰り出して開口を閉じる工程と、
室内側に居る作業者が前記防水シートで閉じられた開口と隣接した開口を通して防水シートを開口の周縁に固定する工程を有した防水シートの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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