説明

防水フラットケーブル

【課題】 シール性に優れるフラットケーブルの防水構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 防水フラットケーブル30は複数本のケーブル35を同ケーブル35より薄い板状の繋ぎ部36によって帯状に繋げたフラットケーブル本体31と、その外周に嵌着されるゴム栓40とからなる。フラットケーブル本体31の端末部は繋ぎ部36が切り落とされている。これにより、各ケーブル35は独立した状態に切り離され、しかも独立した各ケーブル35は断面が円形状をなしている。一方、ゴム栓40にはケーブル挿通孔41がそれぞれ形成されている。これら各ケーブル挿通孔41は円形をなすとともに、その径はケーブル35の径サイズに比べてやや小さい設定とされている。そのため、各ケーブル35をゴム栓40の各ケーブル挿通孔41内に挿通させたときにはゴム栓40が各ケーブル35の全周に亘ってほぼ均等に密着する。これにより、高いシール性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水フラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シール用のゴム栓を備えた防水フラットケーブルが知られている(特許文献1)。このものは、フラットケーブルと絶縁ハウジングとの間に、両間をシールするためのシール部材を介挿させている。そして、絶縁ハウジングにおけるシール部材が組み付けられる開口部分に、シール部材押圧部材を設けている。このシール部材押圧部材は、絶縁ハウジングに対してシール部材並びにフラットケーブルが組み付けられた後に、シール部材を押圧変形させることで、当該シール部材をフラットケーブルに密着させてシール性を高めるように機能する。
【特許文献1】特開平6−203910公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、フラットケーブル1は複数の電線を併設されたものであるから、その断面形状は、図9に示すように凹凸形状となる。そのため、フラットケーブルの外周のうち曲率が変化する部分(同図のA部)においてはゴム栓3がフラットケーブル1に密着し難く防水の信頼性に欠け、改善の余地があった。本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シール性に優れるフラットケーブルの防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、複数のケーブルを同ケーブルより薄い板状をなす繋ぎ部によって併設した状態に接続してなるフラットケーブル本体と、前記ケーブルが挿通されるケーブル挿通孔を備えたシール部材とからなる防水フラットケーブルであって、前記フラットケーブル本体の端末部のうち前記ケーブル挿通孔に挿通される部分は各ケーブルを独立させるように前記繋ぎ部が切除されるとともに、切り離された各ケーブルは断面円形状をなす一方、前記ケーブル挿通孔は断面円形状をなしているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記シール部材は切り離された各ケーブルを個別に挿通させるケーブル挿通孔を複数備えた一括ゴム栓であるところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、複数のケーブルを同ケーブルより薄い板状をなす繋ぎ部によって併設した状態に接続してなるフラットケーブル本体と、前記ケーブルが挿通されるケーブル挿通孔を備えたシール部材とからなる防水フラットケーブルであって、前記フラットケーブル本体のうち前記ケーブル挿通孔に対して挿通される差し込み部には、前記繋ぎ部を肉盛りして同差し込み部を断面楕円形状とする肉盛り部が形成される一方、前記シール部材のケーブル挿通孔は断面楕円形状をなしているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
<請求項1の発明>
請求項1の発明によれば、各ケーブルはそれぞれ切り離された状態にあって、しかも、その断面は円形状をなす。そのため、ゴム栓が各ケーブルの全周に亘ってほぼ均等に密着することとなり、シールに関する信頼性が高まる。
【0008】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、シール部材は各ケーブルを一括してシール・保持する一括ゴム栓であるから、作業時にケーブル同士が絡まり合ったりすることがなく、取り扱いに優れる。
【0009】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によれば、フラットケーブル本体には肉盛り部が形成されており、同部分は断面が楕円形状をなしている。このような構成であれば、肉盛り部が設けられていない場合に比べてケーブル同士がなだらかに繋がれることとなるから、ゴム栓がフラットケーブルの全周に亘って密着し易くなり、シールに関する信頼性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4によって説明する。
図1に示す20はエンジンルームの側壁であって、同側壁20には円形の貫通孔21が形成されている。同貫通孔21には防水フラットケーブル30が挿通されるようになっており、この防水フラットケーブル30によって、エンジンルームの内外が電気的に接続されるようになっている。
【0011】
防水フラットケーブル30は図1に示すように、併設される複数本のケーブル(本実施形態では3本)35を同ケーブル35より薄い板状の繋ぎ部36によって帯状に繋げたものであり、更にその外周にはシール用のゴム栓(本発明のシール部材に相当する)40が嵌着されるようになっている。具体的に説明すると、図2に示すように、防水フラットケーブル30の端末部(図2における手前側の端部)は繋ぎ部36とケーブル35の外周を覆う外被の一部が切り落とされている。これにより、各ケーブル35は独立した状態に切り離され、しかも独立した各ケーブル35は断面が円形状をなしている。
【0012】
一方、ゴム栓40はケーブル35の延び方向に沿った円筒状をなすとともに、前記各ケーブル35と対向する位置にはケーブル挿通孔41がそれぞれ形成されている。これら各ケーブル挿通孔41は断面が円形をなすとともに、その径はケーブル35の径サイズに比べてやや小さい設定とされている。そのため、各ケーブル35をゴム栓40の各ケーブル挿通孔41内にやや圧入気味に挿通させたときには、各ケーブル35の全周に沿ってゴム栓40の圧縮率が等しくなる。
従って、組み付け状態においては、ケーブル挿通孔41の孔壁と各ケーブル35の外周面とが嵌合する合わせ部分がケーブル35の全周に亘ってほぼ均等に密着する。
尚、以下の説明において防水フラットケーブル30のうちゴム栓40以外の部分をフラットケーブル本体31とする。
【0013】
また、図3に示すようにゴム栓40の端面のうち防水フラットケーブル30の繋ぎ部36と対面する側の面には各ケーブル35並びに繋ぎ部36を受け入れ可能な収容部47が凹設されており、同図に示すように組み付け状態においては、同収容部47内に繋ぎ部36の先端部が差し込まれるようになっている。このような構成とすることで、ゴム栓40とフラットケーブル本体31との接続部分の剛性が確保出来るし、また、収容部47の奥面と繋ぎ部36の端面とが組み付けの際に突き当たることでストッパとして機能する。
【0014】
ゴム栓40の外周であって、厚さ方向の前後両端部には、その全周に亘って鍔縁43が外方に張り出すようにして形成されている。この鍔縁43は側壁20の貫通孔21の孔径に比べて大径とされており、ゴム栓40を貫通孔21に組み付けた時には前後の鍔縁43が貫通孔21の孔壁を挟み付け、防水フラットケーブル30を側壁20に対して抜止め状態に保持するようになっている。
尚、ゴム栓40の外周のうち両鍔縁43に挟まれた部分は、貫通孔21内に差し込まれる連結部45であるが、この連結部45の外径は側壁20の貫通孔21の内径の大きさよりやや大径に形成されている。
【0015】
次に、本実施形態の作用・効果について説明する。
防水フラットケーブル30をエンジンルームの側壁20に対して組み付けるには、まずフラットケーブル本体31のうち繋ぎ部36が切除された側をゴム栓40の収容部47側に向ける。その状態から独立した状態にある各ケーブル35をゴム栓40のケーブル挿通孔41に対してやや圧入気味に差し込んで、ゴム栓40をフラットケーブル本体31に対して外嵌させておく。
【0016】
そして、ゴム栓40を側壁20の貫通孔21に対して対向させるとともに、その状態からフラットケーブル本体31と共に、ゴム栓40を貫通孔21内に圧入する。すると、挿入方向先端側の鍔縁43が弾性的に撓んでゴム栓40は徐々に貫通孔21内に差し込まれてゆく。やがて、鍔縁43は貫通孔21を通過して弾性的に復帰する。これにより、前後の両鍔縁43が貫通孔21の孔壁を挟み込むことでゴム栓40、ひいては防水フラットケーブル30全体がエンジンルームの側壁20に対して抜止め状態に保持されることとなる。
【0017】
この抜止め状態においては、貫通孔21の孔壁21Aを介してゴム栓40の連結部45には内向きの押し込み力が作用する。一方、ゴム栓40のケーブル挿通孔41は断面が円形であり、同部分に差し込まれるケーブル35もその断面は円形状をなす。そのため、ゴム栓40からの押圧力が各ケーブル35の全周に亘って均等に作用することとなり(図4における右側のケーブル参照)、各ケーブル35とケーブル挿通孔41とが嵌合する合わせ部分が隙間無く密着する。
また、ゴム栓40は断面が円形であり、側壁20の貫通孔21も断面が円形である。そのためゴム栓40の連結部45は貫通孔21の孔壁21Aに対してその全周に亘って隙間無く密着する。以上のことからゴム栓40とケーブル35との間、並びにゴム栓40と貫通孔21との間が隙間無くより確実にシールされる。加えて、ゴム栓40は各ケーブル35を一括してシール・保持する一括ゴム栓であるから取り扱いにも優れる。
【0018】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図5ないし図8によって説明する。
実施形態1では、フラットケーブル本体31の端末側の繋ぎ部36を切除することで各ケーブル35を独立させるとともに、ゴム栓40に対して各ケーブル35を個別に挿通させる形態としたが、実施形態2においてはゴム栓(シール部材)60に対する差し込み部55に肉盛り部57を設けている。図6に示すように、肉盛り部57は隣り合うケーブル54の外周間を平らに繋ぐようになっており、同部分においてフラットケーブル本体50は断面が楕円形状をなしている。一方、ゴム栓60に形成されるケーブル挿通孔61も断面が楕円形状をなすとともに、その孔の大きさは差し込み部55の大きさに比べてやや小さく設定されている。
【0019】
そのため、組み付け時においては、ゴム栓40からの押圧力が差し込み部55の全周に亘ってほぼ均等に作用することとなり、差し込み部55の外周とケーブル挿通孔61の内壁とが嵌合する合わせ部分が隙間無く密着する。これにより、実施形態1と同様のシール効果が得られる。
また、このような構成であれば、組み付けの際には、各ケーブル54をケーブル挿通孔61に対して一括した状態で組み付けることが出来るから組み付け作業性に優れるものとなる。その他の構成については、実施形態1と同一であるため同じ部品には同一の符号を付して重複した説明を省略するものとする。
【0020】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0021】
(1)実施形態1においては、ゴム栓40は各ケーブル35を一括してシールする一括タイプであったが、各ケーブル35を個別にシールする分割タイプであってもよい。
【0022】
(2)実施形態2においては、差し込み部55は各ケーブル54を一括する構成としたが断面楕円形状であればよく、例えば、複数に分割されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1における防水フラットケーブル並びに側壁の斜視図
【図2】防水フラットケーブルの分解斜視図
【図3】防水フラットケーブルを側壁に取り付けた状態を表す断面図(ケーブルに平行な方向の断面図)
【図4】防水フラットケーブルを側壁に取り付けた状態を表す断面図(ケーブルに垂直な方向の断面図)
【図5】実施形態2における防水フラットケーブル並びに側壁の斜視図
【図6】防水フラットケーブルの分解斜視図
【図7】防水フラットケーブルを側壁に取り付けた状態を表す断面図(ケーブルに垂直な方向の断面図)
【図8】防水フラットケーブルを側壁に取り付けた状態を表す断面図(ケーブルに平行な方向の断面図)
【図9】従来例の断面図
【符号の説明】
【0024】
30…防水フラットケーブル
35…ケーブル
36…繋ぎ部
40…ゴム栓
41…ケーブル挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケーブルを同ケーブルより薄い板状をなす繋ぎ部によって併設した状態に接続してなるフラットケーブル本体と、
前記ケーブルが挿通されるケーブル挿通孔を備えたシール部材とからなる防水フラットケーブルであって、
前記フラットケーブル本体の端末部のうち前記ケーブル挿通孔に挿通される部分は各ケーブルを独立させるように前記繋ぎ部が切除されるとともに、
切り離された各ケーブルは断面円形状をなす一方、前記ケーブル挿通孔は断面円形状をなしていることを特徴とする防水フラットケーブル。
【請求項2】
前記シール部材は切り離された各ケーブルを個別に挿通させるケーブル挿通孔を複数備えた一括ゴム栓であることを特徴とする請求項1に記載の防水フラットケーブル。
【請求項3】
複数のケーブルを同ケーブルより薄い板状をなす繋ぎ部によって併設した状態に接続してなるフラットケーブル本体と、
前記ケーブルが挿通されるケーブル挿通孔を備えたシール部材とからなる防水フラットケーブルであって、
前記フラットケーブル本体のうち前記ケーブル挿通孔に対して挿通される差し込み部には、前記繋ぎ部を肉盛りして同差し込み部を断面楕円形状とする肉盛り部が形成される一方、
前記シール部材のケーブル挿通孔は断面楕円形状をなしていることを特徴とする防水フラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−4720(P2006−4720A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178767(P2004−178767)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】