説明

防水工事用シート及び防水工事方法

【課題】下地からの防水塗膜の剥離並びに塗膜の亀裂回避を確保した上で、より施工性に優れ、かつ、下地への接着剤塗布が不要な、建築物の防水工法を提供すること。
【解決手段】開孔を有する非接着性のフィルム又はシートからなる脱気層と接着層との積層構造を含む防水工事用シートであって、前記脱気層および/または前記接着層の少なくとも一部が前記積層構造から突出している防水工事用シートにより防水工事を施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物又は土木構造物の防水工事方法並びに当該方法に使用する防水工事用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリート等からなる建築物又は土木構造物の屋上の防水工法として、屋上の下地表面にウレタン系防水材等の防水材を塗布して防水塗膜を形成する塗膜防水工法が知られている。
【0003】
しかしながら、塗膜防水工法では、下地に残存していた水分等が太陽熱によって気化・膨張し、その結果、塗膜が下地から剥離したり、塗膜に亀裂が発生して防水機能を失う問題がある。また、下地表面の凹凸が大きい場合は、塗膜表面にも凹凸が現れてしまい、美観を損ねる。
【0004】
そこで、特開平7−144393号公報、特開2004−131955号公報に記載されるように、ポリウレタンフィルムをラミネートした不織布シートを下地上に接着剤で貼着することが提案されている。この場合、下地からの湿気等は脱気層としての不織布シート中の空隙を通過して、脱気筒等の脱気装置から外気に放出されるので、塗膜の剥離又は亀裂を回避することができる。また、下地表面の凹凸は不織布シートにて吸収され、塗膜表面の凹凸の形成も防止することができる。
【0005】
しかしながら、このように不織布シートを脱気層として使用する場合、十分な脱気性を確保する為に密度が小さく且つ目付の大きい不織布シートを使用せざるを得ず、防水層が全体として厚くなり施工性が劣る。また、下地表面に接着剤を塗布する工程が必要であり、更に、接着剤が下地からの水分等の影響を受けて変質するおそれがある。
【0006】
一方、特開2001−303723号公報では、裏面に通気手段としての溝を形成したシートを下地表面に接着剤で貼着することが提案されている。この場合、下地からの湿気等は溝に沿って外気に放出される。
【0007】
しかしながら、このように溝形成シートを脱気層として使用する場合、所定の深さの溝を形成するために比較的厚いシートを使用する必要があり、やはり施工性が劣る。また、冬期等の低温条件時に溝部からクラックが発生し易く、夏期等の高温条件下では溝が次第に変形し、縮小又は消滅してしまうので、脱気機能の長期的な維持ができないとともに、塗膜表面の変形を招いてしまうという問題点がある。また、下地表面に接着剤を塗布する工程が必要となり、更に、接着剤が下地からの水分等の影響を受けて変質するおそれが依然として存在する。
【特許文献1】特開平7−144393号公報
【特許文献2】特開2004−131955号公報
【特許文献3】特開2001−303723号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の従来技術の現状に鑑みて為されたものであって、下地からの防水塗膜の剥離並びに塗膜の亀裂回避を確保した上で、より施工性に優れ、かつ、下地への接着剤塗布が不要な、建築物又は土木構造物の防水工法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、開孔を有する非接着性のフィルム又はシートからなる脱気層と接着層との積層構造を含む防水工事用シートであって、前記脱気層および/または前記接着層の少なくとも一部が前記積層構造から突出していることを特徴とする防水工事用シートによって達成される。
【0010】
前記脱気層は3mm〜20mmの最大幅を有する脱気用通路を形成することが好ましい。また、前記接着層上には防水層が形成されていることが好ましい。
【0011】
更に、本発明の防水工事用シートは、前記接着層と前記防水層との間に中間層を備えることが好ましく、当該中間層として、特に、層間強度が100g/cm以上の不織布が好ましい。
【0012】
上記の防水工事用シートは、その脱気層を建築物又は土木構造物の下地表面に貼着することによって施工可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の防水工事用シートは、脱気層が薄いフィルム又はシートからなるので、全体の厚みを抑制することができる。したがって、建築物又は土木構造物の下地からの防水工事用シートの剥離並びに亀裂回避を確保した上で、より施工性に優れた防水工事を行うことができる。また、下地への接着剤塗布が不要なので、施工期間の短縮を図ることができ、更に、下地からの水分等による接着剤の変質のおそれがない。
【0014】
更に、本発明の防水工事用シートは、脱気層および/または接着層の少なくとも一部が前記積層構造から突出しているので、シート同士の接合を容易に行うことが可能である。また、シート同士の接合部位に脱気層が現れないので外部からの水分の侵入を防ぐことができる。更に、前記接合部位に圧力が印加しても脱気性能が影響を受けることがない。特に、脱気層の脱気用通路が3mm〜20mmの最大幅を有する場合は、塗膜表面の形状に影響を与えることなく、更に脱気性能が高まる。
【0015】
そして、本発明の防水工事用シートの接着層の表面に防水層が予め形成されている場合は、施工現場での防水材の塗布が不要となり、更に施工が容易である。また、防水層と接着層との間に中間層が存在する場合は、中間層が下地の凹凸を吸収するので、防水層表面の平滑性を良好に維持することができる。更に、中間層の材質を適宜選択することにより、防水層と接着層との接着性を更に向上させることもできる。特に、中間層が不織布の場合は、層間強度が100g/cm以上の不織布を使用することによって、経時的な毛羽立ちを低減し、また、防水工事用シート全体の耐摩耗性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の防水工事用シートの実施形態の一例を示す断面図であり、図2は図1を脱気層1側からみた平面図である。
【0018】
図1及び2に示す例では、脱気層1の表面の一方に接着層2が積層されて防水工事用シートが構成されている。図2から明らかなように、脱気層1は、開孔1bを有する非接着性のフィルム又はシートからなり、開孔1bは接着層2と下地との接着部位を構成し、一方、非開孔部位(非接着部位)は脱気用通路1aとして機能する。すなわち、下地に含まれた空気・水分及び下地と防水工事用シートとの接着面に残存した空気が太陽熱等で温められて気化・膨張した際には、当該空気又は水蒸気は脱気用通路1aに沿って図示しない脱気筒等へ導かれて外界に放出される。したがって、本発明では、前記空気又は水蒸気による防水工事用シートの膨張を回避することができ、防水工事用シートの下地からの剥離及び亀裂の発生を防止することができる。
【0019】
脱気層1の開孔率は好ましくは25〜90%であり、より好ましくは30〜65%である。開孔率が25%未満では下地に対する脱気層1の接着性が不十分となるおそれがあり、開孔率が90%を越えると十分な脱気性能の確保が困難となるおそれがある。
【0020】
脱気層1としては、開孔を有するフィルム又はシートであればその材質は特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなるプラスチック製のフィルム又はシートが好ましい。また、プラスチック製フィルム又はシートに代えて、例えば、幅1〜20mm、好ましくは2〜10mmのプラスチックストリップを縦横又は斜めに配してなるネットも使用できる。ネットの一例として、積水フィルム(株)製 商品名「ソフ」や、新日石プラスト(株)製 商品名「ワリフ」等が挙げられる。脱気層1は単一のフィルム、シート又はネットから構成されていてもよく、また、複数のフィルム、シート又はネットの積層体でもよい。
【0021】
脱気層1として、フィルム又はシートにエンボス加工が施されたものは、表面が凹凸状になっているので、脱気性をより確保でき、より好ましい。エンボス加工されたプラスチック製フィルム又はシートを適宜選択・組み合わせた積層体の使用は、脱気性をより確保するという観点より、更に望ましい。
【0022】
開孔1bの形状は特に限定されるものではなく、三角形、四角形(正方形及び長方形を含む)、五角形等の角形、円形、楕円形等の任意の形状をとることができる。また、開孔1bの間隔も任意である。例えば、開孔が円形の場合は、必要に応じて、直径を5〜100mm、好ましくは10〜80mmとし、また、間隔を5〜100mm、好ましくは10〜80mmとして脱気層1に形成することができる。なお、開孔1bのそれぞれの形状及びサイズ、並びに、それらの間隔は同一とされる必要はない。但し、脱気層1の通気性を維持するためには脱気用通路1aが連続する必要があるので、複数の開孔1bを形成する場合は、開孔1bは不連続に配置される。
【0023】
脱気層1の開孔率を大きく変更せずとも開孔1bの形状を適宜選択することによって通気量の増大を図ることも可能である。例えば、空気抵抗を最小化するためには脱気用通路1aを可能な限り直線状に保つことが可能な形状が開孔1bの形状として好ましい。図2に示す例では、脱気用通路1aが全て直線状となるように長方形の開孔1bの列が脱気層1に複数設けられているので特に好ましい。なお、図2に示す開孔1bのパターンでは、脱気用通路の最大幅が3〜20mmの場合、好ましくは6〜20mmの場合、に脱気用シート表面の平滑性を維持しつつ通気量の増大を図ることができる。
【0024】
脱気層1の厚みは典型的には1〜1000μmであるが、10〜200μmが好ましく、15〜100μmがより好ましい。本発明では、このように脱気層1が薄いので全体の厚みを抑制することが可能であり、防水工事用シートの軽量化により施工性を向上させることができる。また、脱気層に脱気用の溝を形成しないので、冬期等の低温条件下でも脱気層にクラックが発生することがなく、また、夏期等の高温条件下で溝が次第に変形し、縮小又は消滅することがない。したがって、防水工事用シート表面の変形を招かないので、長期の美観を維持することができる。
【0025】
接着層2は脱気層1の開孔1bを介して脱気層1を下地に貼着する機能を有する。したがって、本発明の防水工事用シートを下地に固定する場合には、接着剤を下地に予め塗布する必要がない。これにより、接着剤が下地からの水分の影響を受けて変質して接着力が低下するおそれがなく、また、接着剤を下地上に均一に塗布する熟練を要する作業を回避して防水工事の工程を削減することが可能である。また、接着層2は下地にクラックが発生した場合にその挙動を吸収するとともに、塗膜の二次防水の機能をも発揮する。
【0026】
接着層2は、天然ゴムや合成ゴムを主成分として、必要に応じて、粘着性付与樹脂、軟化剤、充填材、老化防止剤等を混練して得られる粘着性非加硫ゴムシートであることが望ましい。ゴムとしては、耐久性に優れたブチルゴムが最適であり、シートの厚さは、0.2〜3.0mm程度が望ましいが、0.5〜2.0mmがより好ましい。
【0027】
下地に貼着される接着層2の表面には例えば図示しない剥離紙が取り付けられて防水工事用シートとして流通される。本発明の防水工事用シートは、図示しない剥離紙を取り除いた後に、脱気層1を下地に接触させて接着層2により貼着することによって容易に施工することができる。
【0028】
図1に示す本発明の防水工事用シートは、その表面にウレタン系防水材等の防水材を塗布・乾燥して防水層を形成して防水性を付与することが可能であるが、防水材と接着層2との接着性を向上させるために、図3に示すように中間層3を接着層2の表面に形成することが好ましい。なお、中間層3は下地の凹凸を吸収するので、防水層表面の平滑性を良好に維持する効果をも有する。
【0029】
中間層3としては、接着層2と防水層との接着性を高めることが可能なものであればその材質は限定されるものではないが、典型的には、不織布シート、プラスチックフィルム、プラスチックフォーム又はこれらの積層体である。
【0030】
不織布シートは、ポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン、ビニロン、ポリウレタン系などの不織布シートが使用できるが、一般的なポリエステルスパンボンド不織布の使用が経済的である。不織布の目付としては、10〜200g/mであることが望ましく、35〜100g/mがより好ましい。また、不織布の層間強度は100g/cm以上が好ましく、300g/cm以上が特に好ましい。このように、層間強度の高い不織布を使用することによって、経時的な毛羽立ちを低減し、また、防水工事用シート全体の耐摩耗性が向上する。
【0031】
上記の層間強度は以下の方法により測定される。まず、不織布から5cm×10cmの大きさの試料を切り出すと共に、同一の大きさのダミー不織布を用意する。次に、ダミー不織布を2つ折りにし、折り目を一辺として、前記試料とダミー不織布で5cm×15cmとなるよう、その表裏を強力なクラフトテープで全面に貼りつなぎ合わせる。その後、ダミー不織布の中央部をナイフ等で切断し2分した後、ダミー不織布をもって左右に片面から約3cm程度を手で剥離させた後、引張試験機のチャックの上下に剥離させた両側をセットする。チャック間距離は5cmとし、ヘッド速度200cm/分で引張試験を実施する。このとき、伸長時の応力の極大値の大きい方から3個、極小値の小さい方から3個の数値をそれぞれ読み取り、その6個の平均をもって層間強度の1つのデータとする。この試験を3回繰り返して得られた3つのデータの平均値を層間強度とする。
【0032】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン系等のフィルムが使用でき、厚さは10〜50μm程度が好ましい。また、プラスチックフォームとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン系等の発泡体が使用でき、発泡倍率5〜50倍で厚さ0.5〜5mm程度が好ましい。
【0033】
図1乃至図3に示す本発明の防水工事用シートは、下地上に貼着後に接着層2又は中間層3の表面に防水材を塗布・乾燥して防水層を形成するものであるが、この他に、本発明では、接着層2又は中間層2の表面に防水層を予め形成した防水工事用シートを下地上に貼着してもよい。
【0034】
図4は、中間層3の表面に予め防水層4を形成した本発明の防水工事用シートの一例を示すものである。防水層1としては、防水性を有する限り任意の材質のものが使用可能であるが、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ゴムアスファルト系、ポリマーセメント系、セメント系、アスファルト系、又は、塩化ビニール系等の公知の防水材を好適に使用することができる。
【0035】
図4に示す防水工事用シートは、図5に示すように、下地5上に脱気層1を接触させた状態で貼着され、固定されることによって施工される。この場合、防水層4を施工現場で形成する必要がないので、防水工事の工程を更に削減することができる。
【0036】
図1乃至5に示す本発明の防水工事用シートの例では、接着層2、中間層3及び防水層4の幅が脱気層1の幅より大きく、接着層2、中間層3及び防水層4の端部が脱気層1との積層部分から外方に突出している。これにより、接着層2はその全面が脱気層1によって覆われることがなく、その端部の一部が露出する。したがって、本発明の防水工事用シート同士の接合を容易に行うことができる。なお、図1乃至5に示す例以外にも、本発明の防水工事用シートは、脱気層の幅を接着層の幅よりも大きくして、脱気層の一部が接着層との積層部位から突出していてもよい。特に、脱気層及び接着層のそれぞれの端部が脱気層及び接着層の積層部位から異なる方向に突出することが好ましい。この点につき以下に説明する。
【0037】
図6は、脱気層1、接着層2、中間層3及び防水層4の幅が同一で各層の全表面が完全に他の層によって被覆されている防水工事用シートと、同様に、同一幅の脱気層1´、接着層2´、中間層3´及び防水層4´が積層されて端部が鉛直方向に揃えられている防水工事用シートとを接合した例を示す断面図である。図6の例では、接合部位に脱気層1´の端部が現れてしまい、この部分から外気中の水分が侵入するおそれがある。また、空間6が必然的に形成されるので、この部分に上方から圧力が印加されると空間6が容易に押し潰される。したがって、脱気層1´が大きく変形して脱気性能が損なわれるおそれがある。
【0038】
一方、図7は、脱気層1の一部が接着層2、中間層3及び防水層4との積層構造の端部から左方に突出した本発明の防水工事用シートと、接着層2´、中間層3´及び防水層4´の一部が脱気層1´との積層構造の端部から右方に突出した本発明の防水工事用シートとを接合した例を示す断面図である。図から明らかなように、本発明の防水工事用シート同士の接合部位には脱気層1´が現れることがない。したがって、接合部位からの水分の侵入を防ぐことができる。更に、図6に示すような空間6が接合部位に形成されないので上方から圧力が加わっても脱気層1、1´が変形しにくい。したがって、脱気性能を良好に維持することができる。
【0039】
本発明の防水工事用シートは、建築物又は土木構造物の下地表面に貼着することによって施工され、当該建築物又は土木構造物の防水工事に使用される。
【0040】
建築物としては、例えば、家屋、ビルディングが挙げられる。土木構造物としては、例えば、水路、ダム、道路、トンネル、鉄道、橋梁等が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明に基づく実施例につき説明する。
【0042】
[実施例1]
カレンダーロールを使って生地出しした接着層としての厚さ0.5mm、幅1,000mmの粘着性非加硫ブチルゴム(配合は表1に示す)シートの片面に、幅1,000mm、目付け30g/mのポリエステル繊維スパンボンド不織布を中間層として配し、他面に、幅3mmの脱気用通路を縦横に網目状に形成した幅950mmのポリエチレン製平板状ネットを脱気層として配した後、該ネット面に離型紙をあてがって長さ20mの防水工事用シートを得た。防水工事用シートにおける開孔率は、50%であった。
【0043】
【表1】

【0044】
[実施例2]
カレンダーロールを使って生地出しした接着層としての厚さ0.5mm、幅1,000mmの粘着性非加硫ブチルゴム(配合は表1に示す)シートの片面に、幅1,000mm、目付け30g/mのポリエステル繊維スパンボンド不織布を中間層として配し、他面に、幅3mmの脱気用横通路及び幅6cmの脱気用縦通路を網目状に形成する幅950mmのポリエチレン製平板状ネットを脱気層として配した後、該ネット面に離型紙をあてがって長さ20mの防水工事用シートを得た。防水工事用シートにおける開孔率は、50%であった。
【0045】
[実施例3]
実施例1と同様の接着層としての厚さ0.5mm、幅1,000mmの粘着性非加硫ブチルゴムシートの片面に中間層として、幅1,000mm、目付け30g/mのポリエステル繊維スパンポンド不織布を配し、他面に幅950mmのポリエチレン製平板状ネット(積水フィルム(株)製 商品名:セキスイソフGX−23)を脱気層として配した後、該ネット面に離型紙をあてがって長さ20mの防水工事用シートを得た。防水工事用シートにおける開孔率は、42%であった。
【0046】
[実施例4]
実施例1と同様の接着層としての厚さ0.5mm、幅1,000mmの粘着性非加硫ブチルゴムシートの片面に中間層として、幅1,000mm、目付け30g/mのポリエステル繊維スパンポンド不織布と、幅1,000mm、厚さ30μmのポリエステルフィルムとを接着剤を用いて貼り合わせた積層体のフィルム側を配し、他面に幅950mmのポリエチレン製平板状ネット(積水フィルム(株)製 商品名:セキスイソフGX−23)を脱気層として配した後、該ネット面に離型紙をあてがって長さ20mの防水工事用シートを得た。防水工事用シートにおける開孔率は、60%であった。
【0047】
[実施例5]
実施例1と同様の接着層としての厚さ0.5mm、幅1,000mmの粘着性非加硫ブチルゴムシートの片面に中間層として、幅1,000mm、目付け30g/mのポリエステル繊維スパンポンド不織布と幅1,000mm、厚さ2mm、発泡倍率30倍のポリエチレンフォームとを接着剤を用いて貼り合わせた複合体のフォーム側を配し、他面に幅950mmのポリエチレン製平板状ネット(積水フィルム(株)製 商品名 セキスイソフHM−22)を脱気層として配した後、該ネット面に離型紙をあてがって長さ20mの防水工事用シートを得た。防水工事用シートにおける開孔率は、66%であった。
【0048】
[実施例6]
実施例1と同様の接着層としての厚さ0.5mm、幅1,000mmの粘着性非加硫ブチルゴムシートの片面に、実施例1と同様の不織布を中間層として配し、他面に直径50mmの孔を50mmの間隔を設けて千鳥状に空けた、幅950mm、厚さ50μmのポリエチレンフィルムを脱気層として配した後、該フィルム面に離型紙をあてがって長さ20mの防水工事用シートを得た。防水工事用シートにおける開孔率は、40%であった。
【0049】
[実施例7]
実施例1と同様の接着層としての厚さ0.5mm、幅1,000mmの粘着性非加硫ブチルゴムシートの片面に、実施例1と同様の不織布を中間層として配し、他面に直径50mmの孔を50mmの間隔を設けて千鳥状に空けた、幅950mm、厚さ28μmのエンボス加工ポリエチレンフィルム(大倉工業(株)製、商品名:エンボスフィルム亀甲)を脱気層として配した後、該フィルム面に離型紙をあてがって、長さ20mの防水工事用シートを得た。防水工事用シートにおける開孔率は、40%であった。
【0050】
[実施例8]
実施例1と同様の接着層としての厚さ0.5mm、幅1,000mmの粘着性非加硫ブチルゴムシートの片面に、実施例1と同様の不織布を中間層として配し、他面に直径50mmの孔を50mmの間隔を設けて千鳥状に空けた、幅950mm、厚さ180μmのポリエチレンネット(新日石プラスト(株)製 商品名:ワリフEX(T))を脱気層として配した後、該ネット面に離型紙をあてがって長さ20mの防水工事用シートを得た。防水工事用シートにおける開孔率は、50%であった。
【0051】
[実施例9]
厚さ28μmのエンボス加工ポリエチレンフィルム(大倉工業(株)製 商品名:エンボスフィルム亀甲)と厚さ180μmポリエチレンネット(新日石プラスト(株)製 商品名:ワリフEX(T)とを縦横30mm間隔に点着して積層体とした。実施例1と同様の接着層としての厚さ0.5mm、幅1,000mmの粘着性非加硫ブチルゴムシートの片面に、実施例1と同様の不織布を中間層として配し、他面に直径50mmの孔を50mmの間隔を設けて千鳥状に空けた上述積層体のエンボス加工ポリエチレンフィルム側を脱気層として配した後に、該積層体面に離型紙をあてがって長さ20mの防水工事用シートを得た。防水工事用シートにおける開孔率は、40%であった。
【0052】
[比較例1]
実施例1と同様の接着層としての厚さ0.5mm、幅1,000mmの粘着性非加硫ブチルゴムシートの片面に実施例1と同様の不織布を中間層として配し、他面に離型紙をあてがって長さ20mの防水工事用シートを得た。
【0053】
通気抵抗性試験
昭和61年版建築工事標準仕様書(JASS−8)第8節 「下地との間の通気抵抗性試験」に準拠して測定を行った。
【0054】
試験体の作成
通気溝を設けた厚さ6mm、長さ1,200mm、幅600mmのフレキシブルボードに、合成ゴム系プライマー「エバーボンドCL−2」(世界長(株)製)を、1m当たり0.2kgの割合で塗布し、各実施例並びに比較例1で得られた防水工事用シートを、長さ1000mm、幅500mmの大きさで貼り付けた。その表面に厚さ2mmになるようポリウレタン系防水材((株)ダイフレックス製、商品名:プラマックス150)を塗布し、更に水性無機質トップコート((株)ダイフレックス製、商品名:HGコート)を1m当たり1.2kgの割合で塗布した後、1週間室内に水平に保持して硬化させ、試験体を作成した。なお表面の仕上がり状態は、いずれも平滑であった。
【0055】
通気抵抗性試験結果を下記表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例1〜9で、流出量は膨れを生じないとされる170cm/分以上であった。
【0058】
時間経過後の膨れの観察
通気抵抗性試験の終了した試験体を6ケ月間屋外に曝露したのち、防水工事用シート全体の膨れを観察した。結果を下記表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
記号の説明
○…膨れなし
×…5〜10ケ所の膨れが発生し凹凸が見られる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の防水工事用シートの実施形態の一例を示す断面図。
【図2】図1を脱気層1側からみた平面図。
【図3】本発明の防水工事用シートの他の実施形態の一例を示す断面図。
【図4】本発明の防水工事用シートの他の実施形態の一例を示す断面図。
【図5】本発明の防水工事用シートの他の実施形態の一例を示す断面図。
【図6】本発明以外の防水工事用シートの接合状態を示す断面図。
【図7】本発明の防水工事用シートの接合状態の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0062】
1、1´ 脱気層
2、2´ 接着層
3、3´ 中間層
4、4´ 防水層
5 下地
6 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開孔を有する非接着性のフィルム又はシートからなる脱気層と接着層との積層構造を含む防水工事用シートであって、
前記脱気層および/または前記接着層の少なくとも一部が前記積層構造から突出していることを特徴とする防水工事用シート。
【請求項2】
前記脱気層が3mm〜20mmの最大幅を有する脱気用通路を形成することを特徴とする、請求項1記載の防水工事用シート。
【請求項3】
前記接着層上に防水層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の防水工事用シート。
【請求項4】
前記接着層と前記防水層との間に中間層を備えることを特徴とする、請求項3記載の防水工事用シート。
【請求項5】
前記中間層が、層間強度が100g/cm以上である不織布であることを特徴とする、請求項4記載の防水工事用シート。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の防水工事用シートの前記脱気層を下地表面に貼着する工程を含む防水工事方法。
【請求項7】
請求項6記載の防水工事方法により防水施工された建築物又は土木構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−299717(P2006−299717A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125734(P2005−125734)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】