説明

防水性シール材及びその製造方法

【課題】基体と、表皮層とを備え、所定の伸びを有する防水性シール材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の防水性シール材100は、基体1と、表皮層2とを備え、表皮層2は紫外線照射により硬化されたウレタンアクリレート硬化物からなり、基体1である樹脂発泡体の表皮層の側の表面に開口するセルの内部に、硬化物21が充填されており、JIS K 6400に基づいて測定した伸びが70%以上であることを特徴とする。また、本発明の防水性シール材の製造方法は、離型シートの一面に、所定の数平均分子量を有するウレタンアクリレートプレポリマーを含有する未硬化原料を塗布して塗膜を形成し、その後、その表面に樹脂発泡体を載置し、次いで、離型シートの側から紫外線を照射し、プレポリマーを硬化させて表皮層を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性シール材及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、柔軟であって十分な止水性を有し、且つ変色もし難い防水性シール材、及び未硬化原料を用いて所定厚さの塗膜を容易に形成することができ、且つ未硬化原料を迅速に硬化させ、表皮層を形成することができるため生産性が高い防水性シール材の製造方法に関する。また、この未硬化原料は優れた保存安定性を有し、取り扱い易い。
【背景技術】
【0002】
従来、防水性シール材として、独泡タイプのEPDM発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体及びポリエチレン発泡体、又は連泡タイプの軟質ポリウレタン発泡体等の、ゴム若しくは樹脂発泡体からなるシートが用いられている。特に、軟質ポリウレタン発泡体シートは優れた圧縮永久歪等を有するため多用されている。これらの防水性シール材は、素材そのものが撥水性であり、ポリ塩化ビニル発泡体シートを除いて通気性も低く、十分な防水性が発現される。
【0003】
防水性シール材の防水性を評価する方法としてはU字試験法が一般に採用されている。これはU字状であって断面が方形等の試片を、所定の圧縮率で2枚のアクリル樹脂板により挟持し、U字状部分に水を入れて底部からの漏水の有無を観察し、漏水に至る時間を測定して評価するものである。この方法により従来から実用に供されている防水性シール材の性能を評価した場合、一般にシール材そのものの透水により漏水することはほとんどない。しかし、シール材とアクリル樹脂板との界面から漏水することが多いため、発泡体シートの表面に止水層を形成し、防水性を向上させたシール材の開発が進められており、実際に、U字試験において実質的に漏水のない防水性シール材も開発されている。
【0004】
止水層を有する防水性シール材としては、ポリウレタンフォームからなる基体と、その表面に設けられた粘着層とからなり、フォームの気泡壁が粘着層に貫入しており、且つ粘着層は粘着付与剤を含有するポリウレタンにより形成されている防水性シール材が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、反応混合液を離型シート上に塗布し、加熱して硬化を促進させ、その表面に発泡体からなる基材を載置し、その後、硬化を完了させることにより製造され、基材の表面に被膜が固着した積層体からなる防水性シール材も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−183963号公報
【特許文献2】特開2003−226913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された防水性シール材では、粘着層は、イソシアネート末端プレポリマーを湿気硬化させてなるポリウレタンにより形成されており、湿気硬化には24〜72時間の長時間を必要とするため、生産性が高いとはいえない。更に、特許文献2に記載された方法により製造された防水性シール材では、被膜は、ポリオールとイソシアネートとを化学反応させ、硬化させて形成されるため、反応混合液のポットライフが短い。また、被膜の硬化が加熱によりなされるため、ライン速度が小さく、生産性が低いという問題もある。
【0007】
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、樹脂発泡体からなる基体と、その一面側及び/又は他面側に設けられたウレタンアクリレート硬化物からなる表皮層とを備え、所定の伸びを有し、十分な柔軟性を備える防水性シール材を提供することを目的とする。また、所定の分子量を有するウレタンアクリレートプレポリマーを含有する未硬化原料を用いて形成した塗膜の表面に樹脂発泡体を載置し、紫外線を照射して未硬化原料を硬化させ、表皮層を形成する工程を備え、生産性が高い防水性シール材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
1.樹脂発泡体からなる基体と、該基体の一面側及び他面側のうちの少なくとも一方に設けられた表皮層とを備える防水性シール材であって、上記表皮層は紫外線照射により硬化されたウレタンアクリレート硬化物からなり、上記樹脂発泡体の該表皮層の側の表面に開口するセルの内部に、該ウレタンアクリレート硬化物が充填されており、JIS K 6400に基づいて測定した伸びが70%以上であることを特徴とする防水性シール材。
2.セルの内部に充填されたウレタンアクリレート硬化物の、該セルの開口面からの最大深さの平均値が10〜300mmである上記1.に記載の防水性シール材。
3.上記樹脂発泡体は軟質ポリウレタン発泡体である上記1.又は2.に記載の防水性シール材。
4.上記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の防水性シール材の製造方法であって、離型シートの一面に、数平均分子量が8000〜45000のウレタンアクリレートプレポリマーを含有する未硬化原料を塗布して塗膜を形成し、その後、該塗膜の表面に上記基体となる樹脂発泡体を載置し、次いで、該離型シートの側から紫外線を照射し、該ウレタンアクリレートプレポリマーを硬化させて上記表皮層を形成することを特徴とする防水性シール材の製造方法。
5.上記ウレタンアクリレートプレポリマーは、2官能であり、分子の両末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する上記4.に記載の防水性シール材の製造方法。
6.上記ウレタンアクリレートプレポリマーは、一方の分子末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有し、他方の分子末端にイソシアネート基を有する化合物と、ポリオールとを反応させてなるウレタンアクリレートプレポリマーである上記4.又は5.に記載の防水性シール材の製造方法。
7.上記ポリオールはポリエーテルポリオールである上記6.に記載の防水性シール材の製造方法。
8.上記ウレタンアクリレートプレポリマーは、一方の分子末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有し、他方の分子末端にイソシアネート基を有する化合物と、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるウレタンアクリレートプレポリマーである上記4.又は5.に記載の防水性シール材の製造方法。
9.上記ポリオールはポリエーテルポリオールである上記8.に記載の防水性シール材の製造方法。
10.上記ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートである上記8.又は9.に記載の防水性シール材の製造方法。
11.上記ウレタンアクリレートプレポリマーの数平均分子量が20000〜45000である上記4.乃至10.のうちのいずれか1項に記載の防水性シール材の製造方法。
12.上記塗膜の厚さが50〜200μmである上記4.乃至11.のうちのいずれか1項に記載の防水性シール材の製造方法。
13.上記未硬化原料の25℃における粘度が1000〜200000mPa・秒である上記4.乃至12.のうちのいずれか1項に記載の防水性シール材の製造方法。
14.上記樹脂発泡体のセル数が40〜100個/inchである上記4.乃至13.のうちのいずれか1項に記載の防水性シール材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防水性シール材によれば、ウレタンアクリレート硬化物が、樹脂発泡体の表皮層側に開口するセルの内部に充填されており、且つ所定の伸びを有し、十分に柔軟であるため、シール材そのものの透水による漏水がないばかりでなく、シール材と被シール体との界面からの漏水も防止することができる。
また、セルの内部に充填されたウレタンアクリレート硬化物の、セルの開口面からの最大深さの平均値が10〜300mmである場合は、硬化物がセルの内部に十分に入り込んでいるため、基体と表皮層とが強固に一体となり、且つ硬化物がセルの内部に入り込み過ぎていないため、樹脂発泡体が有する柔軟性が損なわれず、十分に柔軟な防水性シール材となり、優れた防水性が発現される。
更に、樹脂発泡体が軟質ポリウレタン発泡体である場合は、十分な柔軟性と、高い耐熱性とを併せて有する基体となるため、この基体と表皮層とが一体となった防水性シール材も、十分な柔軟性と、高い耐熱性とを併せて有し、優れた防水性を備える防水性シール材とすることができる。
本発明の防水性シール材の製造方法によれば、表皮層は、所定の分子量を有するウレタンアクリレートプレポリマーを用いて形成された塗膜に、紫外線を照射して硬化させることにより形成されるため、極めて短時間で効率よく表皮層を形成することができ、生産性が高い。また、紫外線硬化型であるため光が当たらない限り硬化せず、未硬化原料のポットライフが長い、更に、ウレタンアクリレートプレポリマーを含有する未硬化原料は常温で液状であるため、通常、加熱を必要とすることなく、樹脂発泡体のセルの内部に容易に充填させることができ、基体と表皮層とが強固に一体となった防水性シール材を製造することができる。
また、ウレタンアクリレートプレポリマーが、2官能であり、分子の両末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する場合は、容易に柔軟な硬化物とすることができ、優れた防水性を備える防水性シール材を製造することができる。
更に、ウレタンアクリレートプレポリマーが、一方の分子末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有し、他方の分子末端にイソシアネート基を有する化合物と、ポリオールとを反応させてなるウレタンアクリレートプレポリマーである場合は、プレポリマーの分子量を容易に大きくすることができ、柔軟な硬化物とすることができるため、優れた防水性を備える防水性シール材を製造することができる。
また、ウレタンアクリレートプレポリマーが、一方の分子末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有し、他方の分子末端にイソシアネート基を有する化合物と、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるウレタンアクリレートプレポリマーである場合は、プレポリマーの分子量をより容易に大きくすることができ、より柔軟な硬化物とすることができるため、より優れた防水性を備える防水性シール材を製造することができる。
更に、ポリオールがポリエーテルポリオールである場合は、ポリエステルポリオールを用いたときと比べて未硬化原料の粘度が低く、塗膜の形成が容易であり、且つ柔軟な硬化物とすることができるため、優れた防水性を備える防水性シール材を製造することができる。
また、ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートである場合は、より柔軟な表皮層をより容易に形成することができ、優れた防水性を備える防水性シール材を製造することができるとともに、経時により表皮層が変色するという問題もない。
更に、ウレタンアクリレートプレポリマーの数平均分子量が20000〜45000である場合は、より柔軟な表皮層とすることができるため、基体である樹脂発泡体の柔軟性が全く損なわれることがなく、優れた防水性を備える防水性シール材を製造することができる。
また、塗膜の厚さが50〜200μmである場合は、表皮層側に開口するセルの内部に硬化物が容易に入り込み、且つ過度に内部にまで入り込むことがないため、樹脂発泡体の柔軟性が損なわれず、優れた防水性を備える防水性シール材を製造することができる。
更に、未硬化原料の25℃における粘度が1000〜200000mPa・秒である場合は、常温(例えば、20〜30℃)で液状であり、且つ適度に粘ちょうであるため、未硬化原料が樹脂発泡体のセル内の所定深さにまで容易に入り込み、十分な柔軟性を有し、優れた防水性を備える防水性シール材を製造することができる。
更に、樹脂発泡体のセル数が40〜100個/inchである場合は、表皮層側に開口するセルの内部の適度な深さまで未硬化原料が容易に入り込み、基体と表皮層とが強固に接合され、且つ樹脂発泡体の柔軟性が損なわれることもなく、優れた防水性を備える防水性シール材を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
[1]防水性シール材
本発明の防水性シール材は、樹脂発泡体からなる基体と、その一面側及び/又は他面側に設けられた表皮層とを備え、表皮層は紫外線照射により硬化されたウレタンアクリレート硬化物からなり、樹脂発泡体の表皮層の側に開口するセルの内部に、ウレタンアクリレート硬化物が充填されており、JIS K 6400に基づいて測定した伸びが70%以上である。
【0011】
上記「樹脂発泡体」は特に限定されない。この樹脂発泡体としては、ポリウレタン発泡体、ポリオレフィン発泡体等が挙げられる。樹脂発泡体としては、圧縮永久歪が小さい等の優れた物性を備えるポリウレタン発泡体が好ましく、特に柔軟性等に優れる連泡型の軟質ポリウレタン発泡体がより好ましい。また、この樹脂発泡体からなる上記「基体」の厚さは特に限定されないが、防水性シール材が用いられる箇所の構造等により適宜の厚さとすることができ、通常、1〜30mm、特に3〜15mmとすることができる。
【0012】
上記「表皮層」は、紫外線照射により硬化されたウレタンアクリレート硬化物からなる。この表皮層は、基体の一面側及び/又は他面側に設けられ、一面のみに設けるか、両面に設けるかは、防水性シール材が用いられる箇所の構造等により適宜設定することができる。更に、本発明の防水性シール材では、表皮層の一部、即ち、ウレタンアクリレート硬化物の一部が、樹脂発泡体の表皮層側に開口するセルの内部に充填されている。このようにセルに硬化物が充填されていることで、アンカー効果により基体と表皮層とが十分な強度で一体に接合される。
【0013】
上記「防水性シール材」は、被シール体に装着され、漏水を防止するための止水材である。そのため、基体と表皮層とを備える防水性シール材全体として適度な柔軟性を有している必要がある。この防水性シール材全体の柔軟性を、防水性シール材の伸びを指標として表した場合、JIS K 6400に基づいて測定した伸びが70%以上でなければならない。
【0014】
防水性シール材の伸びの上限は特に限定されないが、通常、250%、特に200%である。従って、伸びは、70〜250%、特に100〜250%、更に120〜250%であることが好ましく、70〜200%、特に100〜200%、更に120〜200%であることがより好ましい。伸びが70%未満であると、防水性シール材の柔軟性が低下し、特に防水性シール材と被シール体との界面から漏水する。一方、伸びは250%、特に200%であれば十分であり、250%を越えると、柔軟に過ぎ、却って漏水のおそれがあり、好ましくない。
【0015】
上記「紫外線照射により硬化されたウレタンアクリレート硬化物」は、樹脂発泡体の表皮層側に開口するセルの内部に充填されている。この硬化物は、樹脂発泡体の表皮層が形成されている側に充填されており、且つセルの内奥にまで充填されていなければよいが、セルの内部に充填されたウレタンアクリレート硬化物の、セルの開口面からの最大深さ(図1の深さa参照)の平均値が10〜300μm、特に20〜200μm、更に30〜100μmであることが好ましい。硬化物が充填されている最大深さの平均値が10〜300μmであれば、アンカー効果により、基体と表皮層とが強固に一体となり、且つ硬化物がセルの内部に入り込み過ぎていないため、樹脂発泡体が有する柔軟性が損なわれず、十分に柔軟な防水性シール材となるため好ましい。
【0016】
また、表皮層のうちの、樹脂発泡体が有するセルの内部に充填されている充填部を除く他部の平均厚さは、表皮層が、被シール体と全面に渡って均等に、且つ十分に密着することができ、しかも取り扱い時等に容易に破損しない程度の厚さであればよい。この平均厚さは15〜500μm、特に20〜200μm、更に20〜100μmであることが好ましい。平均厚さが15〜500μmであれば、十分な強度を有する表皮層とすることができ、漏水を確実に防止することができる。
尚、上記「最大深さの平均値」及び「他部の平均厚さ」は、防水性シール材の断面を光学顕微鏡により倍率100倍で5視野観察したときに、各々の視野における最大深さ、及びそれぞれの視野における他部の最大厚さと最小厚さとの平均値、の各々の合計を視野の数で除した値である。
【0017】
[2]防水性シール材の製造方法
本発明の防水性シール材の製造方法は、離型シートの一面に、数平均分子量が8000〜45000のウレタンアクリレートプレポリマーを含有する未硬化原料を塗布して塗膜を形成し、その後、塗膜の表面に基体となる樹脂発泡体を載置し、次いで、離型シートの側から紫外線を照射し、ウレタンアクリレートプレポリマーを硬化させて表皮層を形成することを特徴とする。
尚、離型シートは、ウレタンアクリレートプレポリマーを硬化させて表皮層を形成した後、表皮層から剥離し、除去する。
【0018】
上記「離型シート」は、照射された紫外線が十分に透過する限り、その材質は特に限定されない。この離型シートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂などの優れた透光性を有する樹脂からなるシートを用いることができる。また、離型シートの厚さも特に限定されず、塗膜形成、及び表皮層からの剥離、除去等の操作時に取り扱い易く、容易に破断することのない厚さであればよい。この離型シートの厚さは、材質等にもよるが、20〜200μmとすることができる。
【0019】
離型シートの一面に未硬化原料を塗布する方法は特に限定されず、ダイコート法、ロールコート法、リップコート法、グラビアコート法等の各種の方法が挙げられる。ダイコート法、ロールコート法等であれば、連続的に送り出される離型シートの一面に、未硬化原料を供給し、防水性シール材を連続的に製造することができるため好ましい。
【0020】
離型シートの一面に形成される上記「塗膜」の厚さは特に限定されないが、載置される樹脂発泡体のセルの内部の所定深さにまで未硬化原料を滲入させることができる厚さであることが好ましい。この塗膜の厚さは、塗布される未硬化原料の粘度、及び載置される樹脂発泡体の重量等にもよるが、50〜200μm、特に60〜170μm、更に70〜120μmであることが好ましい。塗膜の厚さが50〜200μmであれば、未硬化原料を、樹脂発泡体の表皮層側に開口するセルの内部の所定深さにまで容易に滲入させることができ、且つ未硬化原料が過度に滲入して、製造された防水性シール材の柔軟性が損なわれることもない。
【0021】
上記のようにして形成された塗膜の表面に基体となる樹脂発泡体が載置される。この樹脂発泡体については前記[1]における記載をそのまま適用することができる。上記「載置」は、樹脂発泡体を塗膜の表面に置くのみでよく、載置後、特に未硬化原料の粘度が高い場合は、樹脂発泡体を上方から押圧してもよいが、未硬化原料は液状であり、通常は押圧する必要はない。
【0022】
未硬化原料は、常温(例えば、20〜30℃)で液状であるため、樹脂発泡体を載置後、特に押圧等の操作を必要とすることなく、樹脂発泡体の表皮層側に開口するセルの内部に滲入するが、粘度が特に高いときは、未硬化原料を加温し、粘度を低下させて用いることもできる。例えば、ダイコート法等により未硬化原料を加温し、粘度を低下させて低粘度の塗膜を形成し、この塗膜の表面に樹脂発泡体を載置すれば、未硬化原料を樹脂発泡体のセル内に容易に滲入させることができる。
【0023】
未硬化原料の粘度は特に限定されないが、E型粘度計によって測定した25℃における粘度が1000〜200000mPa・秒であることが好ましく、2000〜150000mPa・秒、特に5000〜100000mPa・秒であることがより好ましい。この粘度が1000〜200000mPa・秒、特に2000〜150000mPa・秒であれば、未硬化原料を樹脂発泡体のセル内の所定深さにまで容易に滲入させることができ、且つ内奥にまで滲入して、製造された防水性シール材の柔軟性が損なわれることもない。また、25℃における粘度が200000mPa・秒を越える未硬化原料である場合は、その粘度が1000〜200000mPa・秒となるように加温して用いることができる。このようにすれば、25℃における粘度が1000〜200000mPa・秒であるときと全く同様に、未硬化原料を樹脂発泡体のセル内の所定深さにまで容易に滲入させることができ、且つ内奥にまで滲入して、製造された防水性シール材の柔軟性が損なわれることもない。
【0024】
更に、未硬化原料を樹脂発泡体のセル内の所定深さにまで滲入させ、且つ滲入させ過ぎないようにするためには、所定のセル数を有する樹脂発泡体を用いることが好ましい。このセル数は40〜100個/inchであることが好ましく、50〜80個/inchであることがより好ましい。セル数が40〜100個/inchであれば、未硬化原料を樹脂発泡体のセル内の所定深さにまで容易に滲入させることができ、且つ内奥にまで滲入して、製造された防水性シール材の柔軟性が損なわれることもない。また、樹脂発泡体の表皮層側に開口する各々のセル内への未硬化原料の滲入深さを均等にすることもできるため、より均質な表皮層を形成することができ、より均質な防水性シール材を製造することができる。
【0025】
未硬化原料を用いて形成された塗膜の表面に樹脂発泡体を載置した後、離型シートの側から紫外線を照射する。これにより、未硬化原料に含有される紫外線重合開始剤の作用によりウレタンアクリレートプレポリマーの重合が開始され、ウレタンアクリレートプレポリマーが硬化してなる表皮層が形成される。紫外線の照射装置としては、水銀アーク、炭素アーク、水銀ランプ等の各種の線源を備える通常の照射装置を特に限定されることなく用いることができる。また、紫外線の波長範囲は、通常、150〜500nmであり、紫外線のピーク照度、積算光量は、適宜設定することができる。
【0026】
上記「ウレタンアクリレートプレポリマー」は、分子中に、ウレタン結合と、アクリレート基又はメタクリレート基(以下、これらを併せていう場合は「(メタ)アクリレート基」という。)を有する。これらの官能基は、一方がアクリレート基であり、他方がメタクリレート基であってもよく、両方ともにアクリレート基又はメタクリレート基であってもよいが、両方ともにメタクリレート基であることが好ましい。分子中、(メタ)アクリレート基が結合している位置も特に限定されないが、両末端に結合していることが好ましく、特に両末端にメタクリレート基が結合しているウレタンアクリレートプレポリマーがより好ましい。
【0027】
また、ウレタンアクリレートプレポリマーの数平均分子量は8000〜45000であり、この数平均分子量は、12000〜45000、特に15000〜43000であることが好ましい。更に、プレポリマーの数平均分子量は、20000〜45000であることがより好ましく、20000〜43000であることが特に好ましい。ウレタンアクリレートプレポリマーの分子量が8000〜45000、特に20000〜45000であれば、伸びが70%以上、特に100%以上、更に120%以上であり、十分な柔軟性を有する防水性シール材を容易に製造することができる。
【0028】
ウレタンアクリレートプレポリマーは、一方の分子末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基(以下、アクリロイル基とメタクリロイル基とを併せていう場合は「(メタ)アクリロイル基」という。)を有し、他方の分子末端にイソシアネート基を有する化合物と、ポリオールとを反応させて調製することができる。この化合物は特に限定されず、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート等を用いることができる。
【0029】
ポリオールも特に限定されず、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール及びポリカーボネートポリオール等の各種のポリオールを用いることができる。このポリオールとしては、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールが用いられることが多く、ポリエーテルポリオールが特に好ましい。ポリエーテルポリオールを用いた場合、未硬化原料の粘度を低くすることができ、塗膜の形成が容易であり、且つ柔軟な表皮層とすることができる。一方、ポリエステルポリオールを用いたときは、未硬化原料の粘度が上昇するとともに、表皮層が硬くなる傾向がある。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパン等のヒドロキシル基を有する化合物に、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合させた化合物などが挙げられる。また、ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、ショ糖等の低分子量ポリオールと、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等のカルボン酸及び/又はその無水物とを縮合重合させた化合物などが挙げられる。
【0031】
ポリオールの官能基数は特に限定されないが、通常、官能基数2又は3のポリオールが用いられ、特に官能基数2のポリオールを用いることが好ましい。更に、ポリオールの数平均分子量も特に限定されないが、分子量の大きいポリオールを用いることが好ましい。分子量の大きいポリオールであれば、ポリイソシアネートを併用することなく、分子量の大きいウレタンアクリレートプレポリマーを容易に作製することができ、柔軟な表皮層とすることができる。このように、数平均分子量の大きいポリオールが好ましいが、これには限界があり、実用に供されているポリオールの数平均分子量は3000〜10000であり、これらのうちから適宜選択して用いることができる。
【0032】
ウレタンアクリレートプレポリマーは、一方の分子末端に(メタ)アクリロイル基を有し、他方の分子末端にイソシアネート基を有する化合物と、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて調製することもできる。化合物としては、前記の各種の化合物を特に限定されることなく用いることができる。また、ポリオールとしては、前記の各種のポリオールを特に限定されることなく用いることができる。このように、ポリイソシアネートを併用する場合は、プレポリマーに、より多くのウレタン結合が導入され、硬化物の耐熱性及び柔軟性が向上する。更に、より容易に数平均分子量の大きいウレタンアクリレートプレポリマーとすることができるため、これによっても、より柔軟な硬化物とすることができる。
【0033】
ポリイソシアネートも特に限定されず、脂肪族系、脂環族系、芳香族系のいずれのポリイソシアネートも用いることができる。このポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)等の脂肪族ポリイソシアネートを用いることができる。また、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添m−キシレンジイソシアネート(水添XDI)等の脂環族ポリイソシアネートを用いることもできる。更に、2,4又は2,6−トリレンジイソシアネート(2,4又は2,6−TDI)、クルードTDI、MDI、クルードMDI、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル4,4’−ジイソシアネート、XDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートを用いることもできる。
【0034】
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環族ポリイソシアネートが好ましく、脂肪族ポリイソシアネートがより好ましい。脂肪族ポリイソシアネートを用いた場合、より柔軟な硬化物とすることができ、経時による硬化物の黄変等の変色もし難い表皮層とすることができるため好ましい。また、脂肪族ポリイソシアネートのうちでも特に直鎖状の炭化水素基を有するポリイソシアネートが、より柔軟、且つより変色し難い硬化物とすることができるため特に好ましい。更に、脂環族ポリイソシアネートも無黄変性という観点で、好ましいポリイソシアネートである。
【0035】
ウレタンアクリレートプレポリマーとしては、ポリエーテルポリオールを用いて調製され、且つ前記の数平均分子量を有するプレポリマーが好ましい。また、ポリイソシアネートを用いる場合は、ポリオールとしてポリエーテルポリオールを、ポリイソシアネートとして脂肪族ポリイソシアネートを、使用し、且つ前記の数平均分子量を有するプレポリマーが好ましい。
【0036】
上記「未硬化原料」は、ウレタンアクリレートプレポリマーの他、紫外線重合開始剤を含有する。この紫外線重合開始剤は、プレポリマーの重合反応を開始させるものであり、未硬化原料に紫外線を照射することによってプレポリマーの重合が開始され、硬化する。紫外線重合開始剤としては、このような用途に用いられる開始剤を特に限定されることなく用いることができる。この紫外線重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン系、アミノアセトフェノン系、アシルアセトフェノン系及びオキシムアセトフェノン系等のアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、チオキサントン系等の各種の紫外線重合開始剤が挙げられる。
【0037】
未硬化原料における光重合開始剤の含有量は、ウレタンアクリレートプレポリマーを100質量部とした場合に、0.1〜2質量部、特に0.5〜2質量部、更に0.7〜1.5質量部とすることができる。光重合開始剤の含有量が0.1質量部未満であると、ウレタンアクリレートプレポリマーの重合、硬化が十分に促進されず好ましくない。一方、2質量部を越えると、重合、硬化が過度に促進され、硬化物が硬くなることがあるため好ましくない。
【0038】
未硬化原料には、防水性シール材の柔軟性等が損なわれない範囲で、ウレタンアクリレートプレポリマー及び紫外線重合開始剤の他に、各種の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、シリカ、タルク等の無機フィラー、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機フィラー、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリエステル等の重合体、顔料、分散安定化剤及び可塑剤等が挙げられる。これらの添加剤が配合される場合、その含有量は、ウレタンアクリレートプレポリマーを100質量部とした場合に、30質量部以下、特に10質量部以下であることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
[1]ウレタンアクリレートプレポリマーの調製
攪拌機を備える反応容器に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)、ポリエーテルポリオール(数平均分子量;10000、官能基数;2、旭硝子社製、商品名「プレミノール4011」)及びMDIを投入し、60℃で4時間攪拌し、混合して、反応させ、ウレタンアクリレートプレポリマーを調製した。
尚、メタクリロイル基とイソシアネート基とを有する化合物と、ポリオールと、MDIとは、各々のモル比が2:2:1となる量比で用いた。
【0040】
[2]防水性シール材の製造
上記[1]で調製したウレタンアクリレートプレポリマー(表1における「P1」のプレポリマーである。)と、このプレポリマーを100質量部とした場合に、1質量部の紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「DAROCUR1173」)とを、ミキサに投入し、30℃で1時間攪拌し、混合して、未硬化原料を調製した。この未硬化原料のE型粘度計によって温度25℃で測定した粘度は9000mPa・秒であった。その後、未硬化原料を温度25℃でコーティングダイから吐出させ、2m/分の速度で連続的に送出される厚さ75μmのPETフィルム上に供給し、ドクターブレードを用いて展延し、厚さ100μmの塗膜を形成した。
【0041】
次いで、塗膜の表面に、平面方向の寸法が1000×2000mm、厚さ10mmの連泡型の軟質ポリウレタン発泡体(セル数;60個/inch、イノアックコーポレーション社製、商品名「ESH」)を載置した。発泡体の重量は906gであり、押圧する等の操作は特にしなかった。その後、搬送される発泡体に向けてPETフィルム側から紫外線照射装置(アイグラフィック社製、UV硬化装置9kw1灯用、水銀ランプ「型式;H09−L31」及びインバーター式電子安定器「型式;UB091−366−01」の組み合わせ)を用いて波長範囲200〜500nmの紫外線を照射し、未硬化原料を硬化させ、紙管に巻き取った。
【0042】
上記の積層体からPETフィルムを剥離、除去し、得られた防水性シール材から長さ50mm、幅10mmの試片を10個切り出し、それぞれの試片の断面を光学顕微鏡により倍率100倍で観察し、各々の視野におけるセルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さ、及びそれぞれの視野における充填部を除く他部の最大厚さと最小厚さとの平均値、の各々の合計を視野の数で除して、セルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さの平均値、及び表皮層の他部の厚さの平均値を算出した。その結果、セルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さの平均値は40μm、表皮層の他部の厚さの平均値は60μmであった。
【0043】
防水性シール材は、概略、図1の説明図のような工程によって製造した。ライン速度はPETフィルムの送出速度と同じであり、2m/分である。従って、未硬化原料21’の調製、塗膜2’の形成、樹脂発泡体1’の載置、及び紫外線の照射の各々の間の経時は極く短時間であり、未硬化原料の調製から紫外線照射前までの未硬化原料の粘度は実質的に変化しない。
【0044】
[3]性能評価
(1)伸び
防水性シール材の伸びをJIS K 6400に基づいて測定した。
(2)防水性
U字試験法により防水性を評価した。即ち、防水性シール材をU字状の打ち抜き型でプレスして打ち抜き、15mm幅のU字状の試片を作製し、この試片に、厚さ方向の両側から2枚のアクリル樹脂板を押し当て、50%圧縮した状態(従って、厚さは約5mmとなる。)で挟持し、U字状の内面底部から100mmの高さまで水を投入して静置し、U字状の外面底部から水が滲み出してくるまでの時間を測定して防水性を評価した。表2の止水性の評価基準は、24時間後に水の滲み出しがなければ○、水が滲み出した場合は×である。
尚、表皮層が設けられていない面は、接着剤によってアクリル樹脂板に接合し、この表皮層が設けられていない面からの漏水がないようにして評価した。
(3)変色性
フェードメータを用いて63℃で5時間曝露したときの黄変度で評価した。表2の変色性の評価基準は、ΔYIが4未満であれば○、ΔYIが4以上であれば△とした。
【0045】
実施例2
メタクリロイル基とイソシアネート基とを有する化合物と、ポリオールと、MDIとを、各々のモル比が2:3:2となる量比で用いた他は、実施例1と同様にしてウレタンアクリレートプレポリマーを調製した(表1における「P2」のプレポリマーである。)。また、このプレポリマーを用いて実施例1と同様にして防水性シール材を製造した。実施例1と同様にして測定した未硬化原料の粘度は140000mPa・秒であった。更に、実施例1と同様にして算出した、セルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さの平均値は37μm、表皮層の他部の厚さの平均値は62μmであった。
【0046】
実施例3
メタクリロイル基とイソシアネート基とを有する化合物と、ポリオールと、HDIとを、各々のモル比が2:2:1となる量比で用いた他は、実施例1と同様にしてウレタンアクリレートプレポリマーを調製した(表1における「P4」のプレポリマーである。)。また、このプレポリマーを用いて実施例1と同様にして防水性シール材を製造した。実施例1と同様にして測定した未硬化原料の粘度は85000mPa・秒であった。更に、実施例1と同様にして算出した、セルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さの平均値は60μm、表皮層の他部の厚さの平均値は40μmであった。
【0047】
実施例4
メタクリロイル基とイソシアネート基とを有する化合物と、ポリオール(ポリエーテルポリオール、数平均分子量;10000、官能基数;2、旭硝子社製、商品名「プレミノール4002)と、MDIとを、各々のモル比が2:2:1となる量比で用いた他は、実施例1と同様にしてウレタンアクリレートプレポリマーを調製した(表1における「P5」のプレポリマーである。)。また、このプレポリマーを用いて実施例1と同様にして防水性シール材を製造した。実施例1と同様にして測定した未硬化原料の粘度は30000mPa・秒であった。更に、実施例1と同様にして算出した、セルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さの平均値は80μm、表皮層の他部の厚さの平均値は20μmであった。
【0048】
実施例5
メタクリロイル基とイソシアネート基とを有する化合物と、ポリオールとを、各々のモル比が2:1となる量比で使用し、MDIは用いなかった他は、実施例1と同様にしてウレタンアクリレートプレポリマーを調製した(表1における「P3」のプレポリマーである。)。また、このプレポリマーを用いて実施例1と同様にして防水性シール材を製造した。実施例1と同様にして測定した未硬化原料の粘度は50000mPa・秒であった。更に、実施例1と同様にして算出した、セルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さの平均値は75μm、表皮層の他部の厚さの平均値は25μmであった。
【0049】
実施例6
メタクリロイル基とイソシアネート基とを有する化合物と、ポリオールと、MDIとを、各々のモル比が2:4:3となる量比で用いた他は、実施例1と同様にしてウレタンアクリレートプレポリマーを調製した(表1における「P6」のプレポリマーである。)。また、このプレポリマーを用いて調製した未硬化原料は下記のように粘度が高かったため、温度60℃でコーティングダイから吐出させた他は、実施例1と同様にして防水性シール材を製造した。実施例1と同様にして測定した未硬化原料の粘度は300000mPa・秒であった(60℃で測定したときの粘度は32000mPa・秒であった。)。更に、実施例1と同様にして算出した、セルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さの平均値は50μm、表皮層の他部の厚さの平均値は50μmであった。
【0050】
実施例7
メタクリロイル基とイソシアネート基とを有する化合物と、ポリオール(ポリエステルポリオール、数平均分子量;5000、官能基数;2、クラレ社製、商品名「クラポールP5010」)と、HDIとを、各々のモル比が2:3:2となる量比で用いた他は、実施例1と同様にしてウレタンアクリレートプレポリマーを調製した(表1における「P7」のプレポリマーである。)。また、このプレポリマーを用いて実施例1と同様にして防水性シール材を製造した。実施例1と同様にして測定した未硬化原料の粘度は80000mPa・秒であった。更に、実施例1と同様にして算出した、セルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さの平均値は50μm、表皮層の他部の厚さの平均値は50μmであった。
【0051】
比較例1
ウレタンアクリレートプレポリマーに代えてポリエステルアクリレート[数平均分子量1200、官能基数;2、東亞合成社製、商品名「アロニックスM6200」(表2では「M6200」と表記する。)]を用いた他は、実施例1と同様にして未硬化原料を調製し、この未硬化原料を用いて実施例1と同様にして防水性シール材を製造した。実施例1と同様にして測定した未硬化原料の粘度は2000mPa・秒であった。更に、実施例1と同様にして算出した、セルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さの平均値は85μm、表皮層の他部の厚さの平均値は15μmであった。
【0052】
比較例2
ウレタンアクリレートプレポリマーに代えてウレタンアクリレート[数平均分子量;4200、官能基数;2、新中村化学社製、商品名「UA−W2」(表2では「UA−W2」と表記する。)]を用いた他は、実施例1と同様にして未硬化原料を調製し、この未硬化原料を用いて実施例1と同様にして防水性シール材を製造した。実施例1と同様にして測定した未硬化原料の粘度は4500mPa・秒であった。更に、実施例1と同様にして算出した、セルに充填された硬化物のセルの開口面からの最大深さの平均値は80μm、表皮層の他部の厚さの平均値は20μmであった。
【0053】
実施例1〜7で用いたウレタンアクリレートプレポリマーの原料組成を表1に記載する。また、実施例1〜7及び比較例1〜2の防水性シール材の、実施例1と同様にして評価した伸び、止水性及び変色性を表2に記載する。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表2の結果によれば、所定の数平均分子量を有するウレタンアクリレートプレポリマーを含有する未硬化原料を用いた実施例1〜5及び7では、室温(25℃)で厚さ100μmの塗膜を容易に形成することができ、実施例6のように粘度が高いときも、加温することにより厚さ100μmの塗膜を容易に形成することができた。また、実施例1〜7のいずれの防水性シール材も伸びは127%以上であり、十分に柔軟であった。更に、U字試験において、表皮層はアクリル樹脂板に密着しており、水は表皮層とアクリル樹脂板との間にまったく滲入せず、24時間経過後も漏水は全くなかった。また、水深を200mmとし、水圧を高くして評価してみたが、同様に24時間経過後、漏水は全く観察されなかった。このように本発明の防水性シール材は、優れた止水性を有する。更に、変色性の評価結果も△又は○であって、実用上、全く問題はなく、HDIを用いた実施例3及び7の防水性シール材は特に優れていた。
【0057】
一方、数平均分子量1200のポリエステルアクリレートを含有する未硬化原料を用いた比較例1、及び数平均分子量4200のウレタンアクリレートを含有する未硬化原料を用いた比較例2では、厚さ100μmの塗膜は容易に形成することができたが、防水性シール材の伸びは比較例1が15%、比較例2が30%と小さく、水深100mmで24時間経過後に漏水が観察され、止水性が劣っていた。また、変色性は比較1及び2ともに特に問題はなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、各種の材質の被シール体の間からの漏水の防止に利用することができる。被シール体の材質は特に限定されず、各種の、樹脂成形体、セラミック成形体、金属成形体等の間に介装させて用いることができる。この防水性シール材によれば、シール材そのものからの漏水もなく、且つ防水性シール材と被シール体との界面からの漏水もないため、確実に止水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の防水性シール材の断面の模式図である。
【図2】本発明の方法により防水性シール材を製造するときの製造工程を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0060】
100;防水性シール材、1;基体(樹脂発泡体)、11;基体が有するセルの開口面、2;表皮層(ウレタンアクリレート硬化物)、21;基体が有するセルに充填された硬化物、a;セルの内部に充填された硬化物の開口面からの深さ、1’;樹脂発泡体、2’;塗膜、21’;未硬化原料、3;コーティングダイ、4;紫外線照射装置、5;ドクターブレード、6;離型シート、7;搬送ロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体からなる基体と、該基体の一面側及び他面側のうちの少なくとも一方に設けられた表皮層とを備える防水性シール材であって、
上記表皮層は紫外線照射により硬化されたウレタンアクリレート硬化物からなり、上記樹脂発泡体の該表皮層の側の表面に開口するセルの内部に、該ウレタンアクリレート硬化物が充填されており、JIS K 6400に基づいて測定した伸びが70%以上であることを特徴とする防水性シール材。
【請求項2】
セルの内部に充填されたウレタンアクリレート硬化物の、該セルの開口面からの最大深さの平均値が10〜300μmである請求項1に記載の防水性シール材。
【請求項3】
上記樹脂発泡体は軟質ポリウレタン発泡体である請求項1又は2に記載の防水性シール材。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の防水性シール材の製造方法であって、
離型シートの一面に、数平均分子量が8000〜45000のウレタンアクリレートプレポリマーを含有する未硬化原料を塗布して塗膜を形成し、その後、該塗膜の表面に上記基体となる樹脂発泡体を載置し、次いで、該離型シートの側から紫外線を照射し、該ウレタンアクリレートプレポリマーを硬化させて上記表皮層を形成することを特徴とする防水性シール材の製造方法。
【請求項5】
上記ウレタンアクリレートプレポリマーは、2官能であり、分子の両末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する請求項4に記載の防水性シール材の製造方法。
【請求項6】
上記ウレタンアクリレートプレポリマーは、一方の分子末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有し、他方の分子末端にイソシアネート基を有する化合物と、ポリオールとを反応させてなるウレタンアクリレートプレポリマーである請求項4又は5に記載の防水性シール材の製造方法。
【請求項7】
上記ポリオールはポリエーテルポリオールである請求項6に記載の防水性シール材の製造方法。
【請求項8】
上記ウレタンアクリレートプレポリマーは、一方の分子末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有し、他方の分子末端にイソシアネート基を有する化合物と、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させてなるウレタンアクリレートプレポリマーである請求項4又は5に記載の防水性シール材の製造方法。
【請求項9】
上記ポリオールはポリエーテルポリオールである請求項8に記載の防水性シール材の製造方法。
【請求項10】
上記ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートである請求項8又は9に記載の防水性シール材の製造方法。
【請求項11】
上記ウレタンアクリレートプレポリマーの数平均分子量が20000〜45000である請求項4乃至10のうちのいずれか1項に記載の防水性シール材の製造方法。
【請求項12】
上記塗膜の厚さが50〜200μmである請求項4乃至11のうちのいずれか1項に記載の防水性シール材の製造方法。
【請求項13】
上記未硬化原料の25℃における粘度が1000〜200000mPa・秒である請求項4乃至12のうちのいずれか1項に記載の防水性シール材の製造方法。
【請求項14】
上記樹脂発泡体のセル数が40〜100個/inchである請求項4乃至13のうちのいずれか1項に記載の防水性シール材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−1409(P2010−1409A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162435(P2008−162435)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】