説明

防水材付横目地材、該防水材付横目地材を用いた外壁材の固定方法及び外壁材固定構造

【課題】外壁材の背面全面に防水シートを貼付することなく、また、外壁材の小口面に複
雑な加工を施すことなく、雨仕舞い性の優れた外壁の目地構造を提供すること。
【解決手段】この発明の防水材付横目地材1は、外壁材10が上下方向に隣接配設された
部分の上下の外壁材9,10間に配設される横目地材である。上下方向に突出して立上り
部4a及び垂下部7aを形成する防水材4,7が横目地材本体部2の背面に固定されて形
成されている。このような横目地材1を用いて、上下方向に隣接配設する二つ以上の外壁
材10A、10Bを固定すると、下側の外壁材10Aの背面10bから立ち上がって防水
材4,7が接合され、その防水材4,7の立上り部4aに、上側の外壁材10Bの背面1
0bが接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水材付横目地材、該防水材付横目地材を用いた外壁材の固定方法及び外壁
材固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の天井梁と床梁との間に立設されるスタッド間に壁パネルを固定するこ
とが行われている(例えば、特許文献1参照。)
ここで、壁パネルとして、例えば、外壁材のような壁パネルを用いる場合には、全外壁
材を1枚の外壁材としてスタッド間に固定するのは、重量などに起因して作業性が悪いの
で、二人の作業者で容易に取り扱える大きさに外壁材を上下方向に分割して施工すること
が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照。)。ここで、一枚の外壁材を上下に
分割配設して固定する場合には、相互の外壁材が隣接配設される目地から、雨水が浸入す
ることを防止するための雨仕舞いが必要である。
【0003】
このため、特許文献2で提案されている外壁材の固定構造では、外壁材の小口面を特殊
な固定金具に合致するように形成することにより、風荷重による浮き上がり防止と雨仕舞
性の確保を図っている。また、特許文献3で提案されている窯業系外壁材の取付構造では
、その図1により明らかなように外壁材と外壁材が固定される柱などの構造体との間の全
面には防水シートが貼られている。
【特許文献1】特開昭61−5142号公報
【特許文献2】実開平5−5971号公報
【特許文献3】実用新案登録第2543275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外壁材として、タイル貼りや重厚感のある外壁材を施工する場合には、
外壁材自体が重いため、取り扱い性が悪く、施工後の外壁材に割れや欠けなどが発生する
ことがあった。
【0005】
特許文献2で提案されている外壁材の上下分割固定構造では、特殊な固定金具に合致し
て外壁材の小口面を加工する必要があるので、加工が複雑となり、また、取付施工中には
外壁材の小口面を破損するなどの課題点がある。
【0006】
また、特許文献3で提案されている窯業系外壁材の取付構造では、構造体1の表面に防
水シートを貼ることにより雨仕舞いをしていたため、防水シートを貼るための下地材が必
要であった。
【0007】
そこで、この発明は、外壁材の背面全面に防水シートを貼付することなく、また、外壁
材の小口面に複雑な加工を施すことなく、雨仕舞い性の優れた外壁の目地構造を提供する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明者等が検討したところ、横目地材の背面にシート状
の防水材を上下方向に突出して立上り部及び垂下部を形成させ、このような横目地材を用
いて外壁材を上下方向に固定すれば、横目地材の背部の上下の外壁材に跨って横目地材に
固定された防水材が配設できるので、外壁材の上下端部の複雑な加工及び外壁材の背面の
全面に防水シートを配設しなくても雨仕舞いができることを認め本発明に到達した。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、外壁材が上下方向に隣接配設された部分の上下の
外壁材間に配設される横目地材であって、上下方向に突出して立上り部及び垂下部を形成
する防水材が横目地材本体部の背面に固定されて形成されていることを特徴とする防水材
付横目地材である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の防水材付横目地材を用いて下側外壁材の上辺小
口面に前記横目地材本体部を貼付するとともに前記外壁材の背面に前記垂下部を貼付する
横目地材貼付工程、該防水材付横目地材が貼付された前記外壁材を外壁取付用間柱間の下
方の所定位置に固定する第1の固定工程、前記外壁材とは異なる他の上側外壁材を前記防
水材付横目地材の上方に配設しつつ上側外壁材を前記外壁取付用間柱間に固定する第2の
固定工程、を含むことを特徴とする外壁材の固定方法である。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記第2の固定工程は、上側外壁材を前記横目地材本体部の上
方から圧接して下方に位置する外壁材と共に前記横目地材本体部を圧縮しつつ上側外壁材
を前記外壁取付用間柱間に固定することを特徴とする請求項2記載の外壁材の固定方法で
ある。
【0012】
請求項4記載の発明は、上下方向に隣接配設する二つ以上の外壁材を固定した外壁材固
定構造であって、下側の外壁材の背面上端部から立ち上がって防水材が接合され、該防水
材の立上り部に、上側の外壁材の背面下端部が接合されていることを特徴とする外壁材固
定構造である。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記上下の外壁材間には防水材に固定された横目地材本体部が
圧縮されて配設されていることを特徴とする請求項4記載の外壁固定構造である。
【0014】
請求項1記載の発明によれば、上下方向に突出して立上り部及び垂下部を形成する防水
材が横目地材本体部の背面に固定されて形成されているので、外壁材の背面全面に防水シ
ートを貼付することなく、また、外壁材の小口面に複雑な加工を施すことなく、雨仕舞い
性の優れた外壁の目地構造を施工できる防水材付横目地材が提供される。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の防水材付横目地材を用いて下側外壁材の
上辺小口面に前記横目地材本体部を貼付するとともに前記外壁材の背面に前記垂下部を貼
付する横目地材貼付工程、該防水材付横目地材が貼付された前記外壁材を外壁取付用間柱
間の下方の所定位置に固定する第1の固定工程、前記外壁材とは異なる他の上側外壁材を
前記防水材付横目地材の上方に配設しつつ上側外壁材を前記外壁取付用間柱間に固定する
第2の固定工程、を行うことにより、外壁材の背面全面に防水シートを貼付することなく
、また、外壁材の小口面に複雑な加工を施すことなく、雨仕舞い性の優れた外壁の目地構
造を与える外壁材の固定方法が提供される。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、前記第2の固定工程は、上側外壁材を前記横目地材本体
部の上方から圧接して下方に位置する外壁材と共に前記横目地材本体部を圧縮しつつ上側
外壁材を前記外壁取付用間柱間に固定することにより、上下の外壁材間には防水材に固定
された横目地材が圧縮されて配設されていることにより、防水材の作用に加えて圧縮され
た横目地材の作用により、一層雨仕舞いが確実となる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、上下方向に隣接配設する二つ以上の外壁材を固定した外
壁材固定構造であって、下側の外壁材の背面上端部から立ち上がって防水材が接合され、
該防水材の立上り部に、上側の外壁材の背面下端部が接合されている外壁材固定構造であ
るので、外壁材の背面全面に防水シートを貼付することなく、また、外壁材の小口面に複
雑な加工を施すことなく、雨仕舞い性の優れた外壁の目地構造が提供される。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、前記上下の外壁材間には防水材に固定された横目地材本
体部が圧縮されて配設されていることにより、上下の外壁材間には防水材に固定された横
目地材が圧縮されて配設されていることにより、防水材の作用に加えて圧縮された横目地
材の作用により、一層雨仕舞いが確実となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外壁材の背面全面に防水シートを貼付することなく、また、外壁材の
小口面に複雑な加工を施すことなく、雨仕舞い性の優れた外壁の目地構造を提供すること
ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の最良の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
先ず、図1は、この発明の最良の形態に係る外壁固定構造を断面により説明する図であ
り、図2は、このような外壁材固定構造を得るための横目地材1を外壁材に固定する横目
地材貼付工程を説明する図であり、図3は、横目地材1が貼付された外壁材(下パネル1
0A)をスタッド間に固定する第1の固定工程を説明する図であり、図4は第1の固定工
程により固定された外壁材(下パネル10A)の上に他の外壁材(中パネル10B)を固
定する第2固定工程を説明する図である。
【0022】
本発明に係る横目地材1は、図2に示すように、長手方向に延びるシート状の横目地材
本体部2を有し、その前面2aは外壁材10の外表面と同色又は同系統色に化粧された化
粧面を有している。この横目地材本体部2の上下面には凹所2b、2cがそれぞれ設けら
れている。上面の凹所2bには凹所2bの深さよりも厚い、適度な厚みを有する防水粘着
テープ3が貼着されている。
【0023】
また、下面の凹所2cには、ポリプロピレン製シートなどの可撓性の防水性シートから
構成される水切り材4の一端4bが間に介在されて凹所2cの深さよりも厚い、適度な厚
みを有する防水粘着テープ5が貼着されている。好ましい実施の形態では、この防水粘着
テープ5の表面(下面)には離型紙6が貼着されている。
【0024】
一方、この水切り材4の他端は、横目地材本体部2の後端から曲折して立設されて立上
り部4aを形成している。この立上り部4aの背面側には、ブチルテープなどの防水粘着
テープ7が貼着され、この防水粘着テープ7は横目地材本体部2よりも下方に垂れ下がっ
て垂下部7aを形成している。好ましい実施の形態では、この垂下部7aの表面側(外壁
材10と接する側)には、離型紙8が貼着されている。
【0025】
次に、横目地材1として離型紙6,8が貼付されている場合を例にして外壁材10へ貼
付する工程について説明する。
【0026】
離型紙6を引き剥がし、防水粘着テープ7面を外壁材10の上辺小口面10cに載置し
て位置決めを行う。離型紙8を引き剥がしつつ外壁材10の背面8bに押し当てることに
より垂下部7aが皺にならないように外壁材10の背面10bに貼り付ける。ついで、立
上り部4aを外壁表面側に倒して、立上り部4aの上から押圧することにより、防水粘着
テープ5を上辺小口面10cに押圧して充分に圧着させる。
【0027】
横目地材1は、位置決めの際に外壁材10の端部に合わせて貼り合わされるが、一方の
端部に合わせると他方の端部から横目地材本体部2の余剰分が飛び出すことがあるが、飛
び出した場合には、外壁材10への貼着後にはみ出した部分の横目地材本体部2のみを切
断する。
【0028】
次に、外壁材をスタッドに取り付ける第1及び第2の固定工程について説明する。
【0029】
以上のようにして横目地材1が貼付された外壁材10は、図3及び図4に示すように、
下方に位置する外壁材10(下パネル10A)をスタッド11に固定する第1の固定工程
の後、上方に位置する外壁材10(中パネル10B)をスタッド11に固定する第2の固
定工程に付される。ここで、この実施例の外壁材10は、一つの外壁材10を上、中、下
の3つに分割している図であり、図3は、外壁材10としての下パネル10Aを、図4は
外壁材10としての中パネル10Bを取り付けている図である。不図示の上パネルを取り
付ける工程は第3の固定工程となるが、第2の固定工程と実質的に同一乃至は均等である
ので詳細な説明は省略している。
【0030】
いずれの図においても、スタッド11の表面には防水シートが貼付され、この防水シー
トの裏面のスタッド11には、それぞれの位置に応じた複数の位置決め用の丸孔11aと
、複数の固定用の長孔11bとが所定位置に穿設されている。
【0031】
横目地材1が当たる部分の防水シートの表面に、図示のとおりスタッド11の長手方向
に沿ってブチルコーキングなどのコーキング材12を塗布する。
【0032】
ついで、外壁材10としての下パネル10Aを下方に位置する二つの丸孔11aにそれ
ぞれ位置決めしつつ、建物の内側からデイジーリベット13,13により取り付ける。固
定後の構造の詳細は図5に示されている。この図5において、符号14は外壁材10の背
面に固定されている取付金具であり、この取付金具14には、リベット固定用の孔14a
が穿設されている。
【0033】
ついで、上方に位置する二つの長孔11bに同様にしてデイジーリベット13により建
物側から固定することにより第1の固定工程が終了する。
【0034】
ついで、図4に示すように、上方に位置する外壁材10としての中パネル10Bを取り
付ける。上方に位置する中パネル10Bの取付に際しては、下パネル10の上辺小口面1
0に固定されている横目地材1を中パネル10Bの下辺小口面10dにより圧縮させつつ
固定させることが好ましい。これにより、間に介在される防水粘着テープ3及び5は、弾
性を有するか塑性変形することにより下パネル10A(上辺小口面10c)と上パネル1
0B(下辺小口面10d)との間に密着されて防水性を増大させる。
【0035】
横目地材1の露出した両端部を適宜のコーキング材などにより封止することにより第2
の固定工程が終了して、概略、図1に示す外壁材固定構造が得られる。
【0036】
この外壁材固定構造では、下パネル10Aと中パネル10Bとが上下方向に隣接配設さ
れ、その間に横目地材1が挿嵌されている。この横目地材1の全面2aは、化粧面とされ
、外壁材と同色であれば、外壁材の分割部が目立たなく、分割前と同等の意匠性を備える
ことができる。
【0037】
また、下パネル10Aの背面10bの上端部付近から防水材としての水切り材4が立ち
上がって立ち上がり部4aを形成し、下パネル10Aの背面10bと中パネル10Bの背
面10bとに跨って防水材としての防水粘着テープ7が接合されている。
【0038】
これにより、上下方向に隣接配設する二つ以上の外壁材を固定した外壁材固定構造であ
って、下側の外壁材の背面上端部から立ち上がって防水材が接合され、該防水材の立上り
部に、上側の外壁材の背面下端部が接合されている外壁材固定構造を得ることができる。
【0039】
そして、このような外壁固定構造では、外壁材の端部は特殊な形状とする必要が無く、
また、外壁材を固定するに先立って、防水材を全面に配設する必要がないという作用効果
を奏する。
【0040】
また、中パネル10Bを横目地材1の上方から圧接して下パネル10Aとの間で圧縮し
つつ中パネル10Bをスタッド11に固定すれば、横目地材1の上下に位置する外壁材(
下パネル10Aと中パネル10B)間には防水材としての防水粘着テープ3及び5が圧縮
されて配設されていることにより、長期間に亘る防水効果を維持することができ、一層雨
仕舞いが確実となる。
【0041】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の
形態に限らず、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含
まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る外壁材固定構造を説明する図である。
【図2】本発明に係る横目地材と横目地材を外壁材に固定する固定方法を説明する斜視図である。
【図3】図2で得られた横目地材が固定された外壁材をスタッドに固定する第1の固定工程を説明する図である。
【図4】図3の次に行われる第2の固定工程を説明する図である。
【図5】外壁材のスタッドへの固定構造の詳細を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1:横目地材
2:横目地材本体部
2a:前面
2b:凹所
2c:凹所
3:防水粘着テープ
4:水切り材
4a:立上り部
4b:一端
5:防水粘着テープ
6:離型紙
7:防水粘着テープ
7a:垂下部
8:離型紙
9:外装材
10:外壁材
10A:下パネル
10B:中パネル
10b:背面
10c:上辺小口面
10d:下辺小口面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁材が上下方向に隣接配設された部分の上下の外壁材間に配設される横目地材であっ
て、
上下方向に突出して立上り部及び垂下部を形成する防水材が横目地材本体部の背面に固
定されて形成されていることを特徴とする防水材付横目地材。
【請求項2】
請求項1記載の防水材付横目地材を用いて下側外壁材の上辺小口面に該横目地材本体部
を貼付するとともに前記外壁材の背面に前記垂下部を貼付する横目地材貼付工程、
該防水材付横目地材が貼付された前記外壁材を外壁取付用間柱間の下方の所定位置に固
定する第1の固定工程、
前記外壁材とは異なる他の上側外壁材を前記防水材付横目地材の上方に配設しつつ上側
外壁材を前記外壁取付用間柱間に固定する第2の固定工程、
を含むことを特徴とする外壁材の固定方法。
【請求項3】
前記第2の固定工程は、上側外壁材を前記横目地材本体部の上方から圧接して下方に位
置する外壁材と共に前記横目地材本体部を圧縮しつつ上側外壁材を前記外壁取付用間柱間
に固定することを特徴とする請求項2記載の外壁材の固定方法。
【請求項4】
上下方向に隣接配設する二つ以上の外壁材を固定した外壁材固定構造であって、
下側の外壁材の背面上端部から立ち上がって防水材が接合され、
該防水材の立上り部に、上側の外壁材の背面下端部が接合されていることを特徴とする
外壁材固定構造。
【請求項5】
前記上下の外壁材間には防水材に固定された横目地材本体部が圧縮されて配設されてい
ることを特徴とする請求項4記載の外壁材固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−83553(P2006−83553A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267482(P2004−267482)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】