説明

防湿蓄熱材及び防湿蓄熱性断熱材

【課題】防湿シート1と潜熱蓄熱材が充填された充填部6付きの蓄熱シート3とを組み合わせた防湿蓄熱材Aの施工性を高める。
【解決手段】防湿蓄熱材Aは、防湿性を有する防湿シート1と、この防湿シート1の一側面に裏面にて剥離可能に一体に接合された蓄熱シート3とを備え、蓄熱シート3は、裏面にて防湿シート1に接合されたシート状の基材4の表面に、内部に潜熱蓄熱材を充填した複数の充填部6,6,…が間隔をあけて配置されたものとされ、蓄熱シート3の基材4に、予め、充填部6,6間の位置に他の部分よりも強度の弱い複数の脆弱部8,8,…を形成して、その脆弱部8,8,…の少なくとも一部で蓄熱シート3が分離部3aと残部3bとに分離可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿蓄熱材及びそれを用いた防湿蓄熱性断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、外気温度の変動に対し、室内の温度を快適な範囲の温度域に維持するために、建物全体の気密性を高める他に、壁、天井、床等の建物の内部に断熱材を施工する対策が行われている。
【0003】
しかし、気密性や断熱性を高めた場合、例えば冬季の晴天日等は日射により室内温度が必要以上に上昇し、快適範囲から外れることがある。
【0004】
このように室内温度を必要以上に高めるいわゆる余剰な熱エネルギーを建物の躯体の一部に蓄熱材を利用して顕熱・潜熱として蓄える技術があり、この蓄熱材は蓄熱及び放熱を効率よく行うために、その室外側に断熱材を設けることが行われている。
【0005】
また、住宅では、室内側から建物の躯体内部に浸入する湿気による内部結露が問題となるため、断熱材の内側には、湿気の浸入を防止するシート状等の防湿材や防湿層を設けることが一般的に行われている。
【0006】
上記蓄熱材として、従来、シート状の基材と、この基材の表面に間隔をあけて配置され、内部に潜熱蓄熱材が充填された複数の充填部とを有するシート状のものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−286795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記従来の特許文献1の充填部付きのシート状蓄熱シートを防湿シートと一体にしておけば、それを施工することで、防湿シートによる防湿効果と蓄熱シートによる蓄熱効果とを同時に得ることができ、施工も簡易になる。しかし、その場合、施工の際に以下のような問題が生じる。
【0009】
すなわち、住宅における天井の高さは様々であり、この防湿シート及び蓄熱シートを一体化した防湿蓄熱シートを断熱材と共に壁の柱間や柱と間柱との間に施工するとき、施工現場で高さ寸法に合わせてカットする寸法調整が必要となる。しかし、壁及び天井の取合い部分や壁及び床の取合い部分の施工では、防湿シートを連続させるために、隣り合う防湿シートを重ね合わせて施工する必要があるので、蓄熱シートは寸法の余る部分が生じるが、複数の充填部を有するので、そのまま施工することが困難となる。
【0010】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、充填部付きのシート状蓄熱シートに改良を加えることにより、防湿シート及び蓄熱シートが一体の防湿蓄熱材を容易に施工できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的の達成のため、この発明では、防湿蓄熱材における蓄熱シートを充填部間で防湿シートに対し分離可能又は折り返し可能とした。
【0012】
具体的には、請求項1の発明では、防湿蓄熱材は、防湿性を有する防湿シートと、この防湿シートの一側面に裏面にて剥離可能に一体に接合された蓄熱シートとを備えてなり、この蓄熱シートは、裏面にて防湿シートに接合されたシート状の基材と、この基材の表面に間隔をあけて配置され、内部に潜熱蓄熱材が充填された複数の充填部とを有している。
【0013】
そして、上記蓄熱シートの基材には、予め、充填部間の位置に他の部分よりも強度の弱い複数の脆弱部が形成されていて、その脆弱部の少なくとも一部で蓄熱シートが、防湿シートから剥離されて分離される分離部と残部とに分離可能とされていることを特徴とする。
【0014】
この請求項1の発明では、蓄熱シートの基材に、予め複数の脆弱部が形成されていて、その脆弱部の少なくとも一部で蓄熱シートが分離部と残部とに分離可能とされているので、施工時に寸法調整のために、防湿シートを残して蓄熱シートをカットする必要があるときには、その寸法に対応する位置の脆弱部で蓄熱シートを分離部と残部とに分離し、分離部を防湿シートから剥離して除去すればよく、その残部により蓄熱シートは施工の寸法に対応した長さとなる。このことによって施工を容易に行うことができる。また、脆弱部は充填部間の位置に形成されているので、カットの際に充填部が破損することはない。
【0015】
請求項2の発明では、蓄熱シートの複数の充填部は、分離された分離部が残部に対し該分離部の充填部が残部の充填部間に収容された状態で重ねられるような間隔で配列されているものとする。
【0016】
この請求項2の発明では、蓄熱シートの複数の充填部は分離部の充填部が残部の充填部間に収容される間隔で配列されているので、脆弱部で分離した分離部を廃棄せずに、その充填部が残部の充填部間に位置するように重ねて施工することができる。このことにより、カットした蓄熱シートの充填部も施工されるので、壁の蓄熱効果を高めることができる。
【0017】
請求項3の発明では、脆弱部は連続するスリットとする。
【0018】
この請求項3の発明では、分離部を分離するのが容易な望ましい脆弱部を実現することができる。
【0019】
請求項4の発明では、請求項1の発明と同様に、防湿蓄熱材は、防湿性を有する防湿シートと、この防湿シートの一側面に裏面にて剥離可能に一体に接合された蓄熱シートとを備えてなり、上記蓄熱シートは、裏面にて防湿シートに接合されたシート状の基材と、該基材の表面に間隔をあけて配置され、内部に潜熱蓄熱材が充填された複数の充填部とを有するものとする。
【0020】
そして、上記蓄熱シートの基材には、予め、充填部間の位置に複数の折り返し予定部が形成されていて、該折り返し予定部の少なくとも一部で蓄熱シートが、防湿シートから剥離されて折り返される折り返し部と残部とに区画可能とされ、蓄熱シートの充填部は、上記折り返された折り返し部が残部に対し該折り返し部の充填部が残部の充填部間に収容された状態で重ねられるような間隔で配列されていることを特徴とする。
【0021】
この請求項4の発明では、蓄熱シートの基材に、予め複数の折り返し予定部が形成されていて、その折り返し予定部の少なくとも一部で蓄熱シートが折り返し部と残部とに区画可能とされているので、施工時に寸法調整のために、防湿シートを残して蓄熱シートをカットする必要があるときには、その寸法に対応する位置の折り返し予定部で蓄熱シートを防湿シートから剥離しながら折り返して、折り返し部と残部とに区画すればよく、その残部により蓄熱シートは施工の寸法に対応した長さとなる。このことによって施工を容易に行うことができる。また、折り返し予定部は充填部間の位置に形成されているので、折り返しの際に充填部が破損することはない。
【0022】
また、蓄熱シートの複数の充填部は、折り返し部の充填部が残部の充填部間に収容される間隔で配列されているので、折り返し予定部で残部と区画した折り返し部を、その充填部が残部の充填部間に位置するように重ねて施工することができる。このことにより、折り返し部の充填部も施工されるので、壁の蓄熱効果を高めることができる。
【0023】
請求項5の発明では、防湿蓄熱性断熱材は、上記防湿蓄熱材と、該防湿蓄熱材の蓄熱シート側に配置された繊維系断熱材とが一体化されていることを特徴とする。
【0024】
この請求項5の発明では、防湿蓄熱材と繊維系断熱材とが一体化されているので、両者を別々に施工をする場合に比べ、施工の容易化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1の発明によると、内部に潜熱蓄熱材が充填された複数の充填部を有する蓄熱シートを裏面にて防湿シートに剥離可能に一体化し、その蓄熱シートの基材において充填部間の位置に複数の脆弱部を形成して、その脆弱部の少なくとも一部で蓄熱シートを分離部と残部とに分離可能としたことにより、施工時に寸法調整のために、防湿シートを残して蓄熱シートをカットするときには、その寸法に対応する位置の脆弱部で蓄熱シートを分離部と残部とに分離して、施工を容易に行うことができる。
【0026】
請求項2の発明によれば、蓄熱シートの複数の充填部の配列を、分離部が残部に対し分離部の充填部が残部の充填部間に収容された状態で重ねられるような間隔としたことにより、脆弱部で残部と分離した分離部を廃棄せずに、その充填部が残部の充填部間に位置するように重ねて施工することができ、壁の蓄熱効果を高めることができる。
【0027】
請求項3の発明によれば、脆弱部は連続するスリットとしたことにより、望ましい脆弱部を実現できる。
【0028】
請求項4の発明によれば、内部に潜熱蓄熱材が充填された複数の充填部を有する蓄熱シートを裏面にて防湿シートに剥離可能に一体化し、その蓄熱シートの基材において充填部間の位置に複数の折り返し予定部を形成して、その折り返し予定部の少なくとも一部で蓄熱シートを折り返し部と残部とに区画可能とし、蓄熱シートの充填部の配列を、折り返し部が残部に対し折り返し部の充填部が残部の充填部間に収容された状態で重ねられるような間隔とし
たことにより、施工時に寸法調整のために、防湿シートを残して蓄熱シートをカットするときには、その寸法に対応する位置の折り返し予定部で蓄熱シートを折り返し部と残部とに区画して、施工を容易に行うことができるとともに、折り返し部を、その充填部が残部の充填部間に位置するように重ねて施工して、壁の蓄熱効果を高めることができる。
【0029】
請求項5の発明によると、防湿蓄熱材と、その蓄熱シート側に配置された繊維系断熱材とを一体化したことにより、防湿蓄熱材及び繊維系断熱材を別々に施工をする場合に比べ、施工の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は本発明の実施形態1に係る防湿蓄熱材を表面側から見た正面図である。
【図2】図2は防湿蓄熱材の側面図である。
【図3】図3は防湿蓄熱材を断熱材と共に施工する状態を示す断面図である。
【図4】図4は本発明の実施形態2を示す図1相当図である。
【図5】図5は実施形態2を示す図2相当図である。
【図6】図6は、防湿蓄熱材と繊維系断熱材とが一体化された本発明の実施形態3に係る防湿蓄熱性断熱材を施工状態で示す斜視図である。
【図7】図7は実施形態3に係る防湿蓄熱性断熱材の施工状態を示す断面図である。
【図8】図8は、防湿蓄熱材における蓄熱シートの複数の充填部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0032】
(実施形態1)
図1及び図2は本発明の実施形態1に係る防湿蓄熱材Aを示し、この防湿蓄熱材Aは、防湿シート1と、この防湿シート1の表面に裏面にて剥離可能に一体に接合された蓄熱シート3とを備えてなる2層構造のものとされている。防湿蓄熱材Aは、図3に示すように、例えば住宅の壁部における柱21,21(間柱でもよい)と、図示しない上側の梁及び下側の土台と、外側の面材24及び内側の面材(図示せず)との間に繊維系断熱材Bと共に施工される。
【0033】
上記防湿シート1は、防湿性を有するもので、例えばポリエチレンフィルム、アルミ蒸着フィルム、パラフィン紙、アルミ箔、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS、アクリル樹脂等の単体又はこれらの複合体からなる。
【0034】
上記蓄熱シート3は、裏面にて防湿シート1に剥離可能にラミネートされて接合一体化されたシート状の基材4と、この基材4の表面に互いに間隔をあけて配置された複数の充填部6,6,…とを有する。複数の充填部6,6,…は、図1に示すように、例えば蓄熱シート3の幅方向(図1の左右方向)に2列に並んだ状態で長さ方向(図1の上下方向)に等間隔をあけて配列されている。各充填部6は、円形状で厚さの薄い可撓性のあるパック(袋)のものであり、図示しないが、その内部に潜熱蓄熱材が充填されている。
【0035】
これら基材4や充填部6のパックは伝熱性の高い材料からなり、例えばアルミニウム、ポリエチレンやポリオレフィン等を用いることができる。尚、充填部6のパックについては、内部に充填される潜熱蓄熱材で溶解又は膨潤しないものを用いる必要がある(潜熱蓄熱材としてのパラフィンはオレフィン等を膨潤させる)。また、PET及びポリエチレンの複合体にアルミニウムを蒸着したものを用いることができる。
【0036】
上記充填部6の潜熱蓄熱材は、パックに封入されて使用されるため、マイクロカプセル化されていない潜熱蓄熱材やゲル化された潜熱蓄熱材等も用いることができる。
【0037】
潜熱蓄熱材としては、例えばn−オクタデカン、n−ヘキサデカンが主原料のノルマルパラフィンが用いられる。このノルマルパラフィンは、融点が23〜28℃のもので、基本的に融点よりも低い温度で固体となり、融点以上の高い温度で液体となる。この潜熱蓄熱材としてのノルマルパラフィンは略そのままアルミニウムパック等の充填部6に詰められて使用され、温度変化に応じて固体・液体と相変化する。ノルマルパラフィンの比重は約0.8である。
【0038】
ノルマルパラフィン以外の潜熱蓄熱材としては、無機水和塩(塩化カルシウム六水和塩、硫酸ナトリウム十水和塩等)、脂肪酸類(パルミチン酸、ミリスチン酸等)、芳香族炭化水素化合物(ベンゼン、p−キシレン等)、エステル化合物(パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等)、アルコール類(ステアリルアルコール等)、ポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0039】
上記蓄熱シート3の基材4には、予め、複数の充填部6,6間の位置(充填部6を除いた位置)に他の部分よりも強度の弱い複数(図示例で2本)の脆弱部8,8,…が形成されている。この実施形態では、脆弱部8は、連続するスリット(ミシン目)からなるもので、長さ方向(図1で上下方向)に隣接する充填部6,6間の位置に蓄熱シート3の幅方向両端間を結ぶように直線状に形成されており、これら複数の脆弱部8,8,…の少なくとも一部(例えば図1上側の脆弱部8)で蓄熱シート3が、防湿シート1から剥離されて分離される分離部3aと残部3bとに分離可能とされている。
【0040】
また、上記蓄熱シート3における複数の充填部6,6,…は、例えば長さ方向に隣り合う充填部6,6同士の間隔dが各充填部6の直径D(<d)よりも大きくなるように配列されている。このことで、図1で仮想線にて示すように、上記分離された分離部3aを表裏反転させて残部3b表面に重ねたときに、分離部3aの充填部6,6が残部3bの充填部6,6間のスペースに収容されるようになっており、このような収容状態で分離部3aが残部3bに対し重ね合わせ可能となっている。すなわち、蓄熱シート3の複数の充填部6,6,…は、分離された分離部3aが残部3bに対し該分離部3aの充填部6,6が残部3bの充填部6,6間に収容された状態で重ねられるような間隔dで配列されている。
【0041】
したがって、この実施形態においては、図3に示すように、防湿蓄熱材Aは、例えば住宅の壁部における柱21,21、梁、土台、外側の面材24及び内側の面材の間に繊維系断熱材Bと共に、以下のように施工される。
【0042】
すなわち、外側の面材24の内側(室内側)に断熱材Bが配置され、その内側に防湿蓄熱材Aがその表面の蓄熱シート3側を外側にしかつ裏面の防湿シート1を内側にして、タッカー等で柱、梁や土台等に打ち付け固定されて施工される。このタッカー等による固定は、蓄熱シート3の充填部6以外の位置で行われる。
【0043】
そのとき、防湿蓄熱材Aを施工現場で高さ寸法等に合わせてカットする寸法調整が必要となるが、防湿蓄熱材Aにおいて、裏側の防湿シート1は、壁及び天井の取合い部分や壁及び床の取合い部分では、他の防湿シート1と重ね合わせて施工するのに対し、蓄熱シート3は寸法の余る部分が生じる。この蓄熱シート3の基材4には、前もって複数の脆弱部8,8,…が形成されており、この脆弱部8,8,…で蓄熱シート3が分離部3aと残部3bとに分離可能とされているので、上記のように、施工時の寸法調整のために、防湿シート1を残して蓄熱シート3をカットする必要があるときには、防湿蓄熱材Aをタッカー等による固定の前に粘着テープ等で仮止めしておき、その仮止め状態で、防湿シート1はそのままで、蓄熱シート3の寸法外の部分のみを引っ張り、図2に示すように、蓄熱シート3を必要な寸法に対応する位置の脆弱部8(例えば図1上側のもの)で上側の分離部3aと下側の残部3bとに分離し、分離部3aを基材4において防湿シート1から剥離して除去する。こうすれば、蓄熱シート3は残部3bで施工の寸法に対応した長さとなり、この残部3bのみをタッカー等により固定して施工すればよい。このことで防湿蓄熱材Aの施工を容易に行うことができる。
【0044】
また、脆弱部8は充填部6,6間の位置に形成されているので、カットの際に充填部6が破損することはない。
【0045】
さらに、上記蓄熱シート3における複数の充填部6,6,…は、長さ方向に隣り合う充填部6,6同士の間隔dが各充填部6の直径Dよりも大きくなるように配列されている。そのため、上記脆弱部8で残部3bと分離した分離部3aを廃棄せず、図1で仮想線にて示すように、その分離部3aを表裏反転させて残部3bの表面に重ね、分離部3aの充填部6,6が残部3bの充填部6,6間のスペースに収容されるように施工することができる。このことにより、カットした蓄熱シート3における分離部3aの充填部6,6も残部3bの充填部6,6,…と共に施工されることとなり、壁全体の蓄熱効果を高めることができる。また、分離部3aを廃棄することによる廃材が生じることもない。
【0046】
(実施形態2)
図4及び図5は本発明の実施形態2を示し(尚、以下の実施形態では、図1〜図3と同じ部分は同じ符号を付して詳細な説明を省略する)、上記実施形態1では脆弱部8によって分離し、その分離部3aを残部3bに重ねるようにしているのに対し、折り返しによって重ねるようにしている。
【0047】
すなわち、この実施形態では、防湿蓄熱材Aは、上記実施形態1と同様に、防湿性を有する防湿シート1と、この防湿シート1の一側面に裏面にて剥離可能に一体に接合された蓄熱シート3とを備えてなる。また、蓄熱シート3は、裏面にて防湿シート1に接合されたシート状の基材4と、該基材4の表面に間隔をあけて配置され、内部に潜熱蓄熱材(図示せず)が充填された複数の充填部6,6,…とを有する。
【0048】
そして、実施形態1と異なり、上記蓄熱シート3の基材4には、予め、充填部6,6間の位置(充填部6を除いた位置)に複数の折り返し予定部9,9,…が形成されていて、その折り返し予定部9,9,…の少なくとも一部で蓄熱シート3が折り返し部3cと残部3bとに区画可能とされている。この折り返し予定部9,9,…は、例えば印刷等のマーキングによって形成されている。
【0049】
また、上記蓄熱シート3における複数の充填部6,6,…は、実施形態1と同様に、例えば長さ方向に隣り合う充填部6,6同士の間隔dが各充填部6の直径D(<d)よりも大きくなるように配列されており、これら充填部6,6,…は、上記折り返された折り返し部3cが残部3bに対し該折り返し部3cの充填部6,6が残部3bの充填部6,6間に収容された状態で重ねられるような間隔dで配列されている。
【0050】
したがって、この実施形態においても、防湿蓄熱材Aを施工現場で高さ寸法に合わせてカットする寸法調整を行う際、防湿蓄熱材Aにおいて、裏側の防湿シート1に対し、蓄熱シート3に寸法の余る部分が生じるとき、その蓄熱シート3の基材4に形成されている複数の折り返し予定部9,9,…の少なくとも一部で蓄熱シート3が折り返し部3cと残部3bとに区画可能とされているので、その寸法に対応する位置の折り返し予定部9で蓄熱シート3を折り返して折り返し部3cと残部3bとに区画すればよく、蓄熱シート3(その残部3b)は施工の寸法に対応した長さとなる。このことによって施工を容易に行うことができるとともに、折り返し予定部9,9,…は充填部6,6間の位置に形成されているので、折り返しの際に充填部6が破損することはない。
【0051】
そして、蓄熱シート3の充填部6は折り返し部3cの充填部6,6が残部3bの充填部6,6間に収容される間隔dで配列されているので、折り返し予定部9,9,…で残部3bと区画した折り返し部3cを、その充填部6,6が残部3bの充填部6,6間に位置するように重ねて施工することができる。このことにより、折り返し部3cの充填部6も施工されるので、壁全体の蓄熱効果を高めることができる。
【0052】
(実施形態3)
図6及び図7は実施形態3を示す。この実施形態3では、上記実施形態1(実施形態2であってもよい)に係る防湿蓄熱材Aが上記繊維系断熱材Bと剥離可能に接合一体化されており、両者によって防湿蓄熱性断熱材Cが構成されている。上記防湿蓄熱材Aと繊維系断熱材Bとの一体化は、接着剤等による貼着一体化するか、或いは繊維系断熱材Bの外被部分内に防湿蓄熱材Aを一体的に包装すればよい。
【0053】
この防湿蓄熱性断熱材Cにおいては、防湿蓄熱材Aの表面側(蓄熱シート3側)に繊維系断熱材Bが配置されている。また、防湿蓄熱材Aは大きさが断熱材Bよりも大きくて、その周縁部は該断熱材Bよりも外方向に所定幅だけ延びており、この周縁部により防湿蓄熱性断熱材Cを周縁で固定するための耳部12が形成されている。その他の構成は実施形態1又は実施形態2と同様である。
【0054】
この実施形態3においては、図6及び図7に示すように、防湿蓄熱性断熱材Cを断熱材Bが外側に向くように配置して柱21,21間のスペースに嵌挿し、防湿蓄熱材A周縁の耳部12で柱等に固定すればよい。その場合、寸法調整が必要であると、上記実施形態1又は実施形態2で説明したのと同様に、不要な断熱材Bを切断して除去するとともに、防湿蓄熱材Aにおける防湿シート1はそのままで、蓄熱シートを脆弱部で分離したり或いは折り返し予定部で折り返したりすればよい。
【0055】
したがって、この実施形態でも、上記実施形態1又は実施形態2と同様の作用効果を奏することができる。そのことに加え、防湿蓄熱材Aと繊維系断熱材Bとが一体化されているので、両者を別々に施工をする場合に比べ、施工の容易化を図ることができる。
【0056】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態1又は実施形態2では、図1又は図4に示すように、蓄熱シート3の各充填部6を円形状のものにし、複数の充填部6,6,…は、蓄熱シート3の幅方向に2列に並んだ状態で長さ方向に等間隔をあけて配列されているが、この充填部6の形状や配列は実施形態1又は実施形態2のものに限定されない。図8は充填部6の形状及び配列の他の例を示したものであり、図8(a)に示すものでは、蓄熱シート3の各充填部6はやや小径の円形状のものであるが、複数の充填部6,6,…は、蓄熱シート3の幅方向に3列に並んだ状態で長さ方向に等間隔をあけて配列されている。また、図8(b)に示すものでは、蓄熱シート3の各充填部6は小径の円形状のものであり、複数の充填部6,6,…は、蓄熱シート3の幅方向に6列に並んだ状態で長さ方向に等間隔をあけて配列されている。さらに、図8(c)及び図8(d)に示すものでは、いずれも各充填部6は幅方向に延びる細長い矩形状のもので、複数の充填部6,6,…が蓄熱シート3の幅方向に1列に並んだ状態で長さ方向に等間隔をあけて配列されており、図8(c)に示すものの充填部6の大きさが図8(d)に示すものよりも大きくなっている。そして、これらの例において、図示していないが、実施形態1,2と同様に、複数の脆弱部8,8,…や折り返し予定部9,9,…が、充填部6,6間の位置(充填部6を除いた位置)に形成されていればよい。
【0057】
また、上記実施形態1では、蓄熱シート3における複数の充填部6,6,…は、長さ方向に隣り合う充填部6,6同士の間隔dが各充填部6の直径Dよりも大きくなるように配列することで、分離部3aを表裏反転させて残部3b表面に重ねたときに、分離部3aの充填部6,6が残部3bの充填部6,6間のスペースに収容されるようにしているが、分離部3aの位置を蓄熱シート3の幅方向にずらして、その充填部6,6を残部3bの充填部6,6のスペースに収容できるようにしてもよい。要は分離部3aの充填部6,6が残部3bの充填部6,6間のスペースに収容されるように、蓄熱シート3における複数の充填部6,6,…の配列を設定しさえすればよい。
【0058】
さらに、上記実施形態1では、分離部3aを残部3bと重ねて施工するようにしているが、分離部3aをそのまま除去することもできる。しかし、壁全体の蓄熱効果を高め得る等の点では、実施形態1のように分離部3aを残部3bと重ねて施工するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、防湿シートと潜熱蓄熱材が充填された充填部付きの蓄熱シートとを組み合わせた防湿蓄熱材の施工性を高め得るので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0060】
A 防湿蓄熱材
B 繊維系断熱材
1 防湿シート
3 蓄熱シート
3a 分離部
3b 残部
3c 折り返し部
4 基材
6 充填部
D 直径
d 充填部間の間隔
8 脆弱部
9 折り返し予定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防湿性を有する防湿シートと、該防湿シートの一側面に裏面にて剥離可能に一体に接合された蓄熱シートとを備えてなり、
上記蓄熱シートは、裏面にて防湿シートに接合されたシート状の基材と、該基材の表面に間隔をあけて配置され、内部に潜熱蓄熱材が充填された複数の充填部とを有し、
上記蓄熱シートの基材には、予め、充填部間の位置に他の部分よりも強度の弱い複数の脆弱部が形成されていて、該脆弱部の少なくとも一部で蓄熱シートが、防湿シートから剥離されて分離される分離部と残部とに分離可能とされていることを特徴とする防湿蓄熱材。
【請求項2】
請求項1において、
蓄熱シートの複数の充填部は、分離された分離部が残部に対し該分離部の充填部が残部の充填部間に収容された状態で重ねられるような間隔で配列されていることを特徴とする防湿蓄熱材。
【請求項3】
請求項1又は2において、
脆弱部は連続するスリットであることを特徴とする防湿蓄熱材。
【請求項4】
防湿性を有する防湿シートと、該防湿シートの一側面に裏面にて剥離可能に一体に接合された蓄熱シートとを備えてなり、
上記蓄熱シートは、裏面にて防湿シートに接合されたシート状の基材と、該基材の表面に間隔をあけて配置され、内部に潜熱蓄熱材が充填された複数の充填部とを有し、
上記蓄熱シートの基材には、予め、充填部間の位置に複数の折り返し予定部が形成されていて、該折り返し予定部の少なくとも一部で蓄熱シートが、防湿シートから剥離されて折り返される折り返し部と残部とに区画可能とされ、
蓄熱シートの複数の充填部は、上記折り返された折り返し部が残部に対し該折り返し部の充填部が残部の充填部間に収容された状態で重ねられるような間隔で配列されていることを特徴とする防湿蓄熱材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つの防湿蓄熱材と、該防湿蓄熱材の蓄熱シート側に配置された繊維系断熱材とが一体化されていることを特徴とする防湿蓄熱性断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−167453(P2012−167453A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27634(P2011−27634)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】