説明

防災無線システムの受信装置

【課題】使用場所が変わったり上位装置が変化したりした場合でも、予め設定された複数周波数チャネルの中から最適なものを迅速に選択できるようにした防災無線システムの受信装置を提供する。
【解決手段】受信装置1に、周波数チャネル絞り込み部8とデータ解析部9と受信チャネル確定部10とを設け、周波数チャネル絞り込み部8において例えば検出値15a〜15gと予め設定した使用可否判定閾値13a〜13gとを比較して使用可能な周波数チャネルの絞り込みを行い、データ解析部9においてこの絞り込んだ周波数チャネルの中から予め設定した優先順位に従って受信チャネルを確定し、受信チャネル確定部10によってデータ解析部で確定した一つの使用周波数チャネルを受信チャネルとするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる周波数チャネルで上位装置からの受信を行う防災無線システムの受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地方自治体で使用される防災無線システムは、災害発生時などに必要な情報を各受信装置へ音声または文字等で提供するように構成されているが、市町村合併などにより広範囲で機能する必要がある。このため、複数の基地局や中継局等の上位装置を使用し、異なる複数の周波数チャネルを使用できるようにしている(例えば、特許文献1を参照)。また、この防災無線システムで使用する戸別受信機などの受信装置は、複数ある周波数チャネルから最も適当なものを選択して受信する必要があるのと同時に、主として災害発生時の避難を想定した市町村内での移動に際しても、移動先でも同様に受信可能でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−218906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防災無線システムにおける受信装置では、1つの受信チャネルのみを予め設定して使用することが考えられるが、この場合、受信チャネルを選択する必要がないため、装置の起動から受信可能状態となるまでの時間は短くて済むが、受信装置を他の場所に移動して使用する場合、先が予め設定していた受信チャネルと移動先の上位装置との間の周波数チャネルが一致しないと、受信することが出来なくなってしまう。このため、受信装置を他の場所に移動して使用する場合、保守員が移動先に適したものとなるように再度設定を行う必要がある。これに対して、受信装置が複数の周波数チャネルを使用できるようにすることも考えられるが、この場合も、受信装置起動時に複数の周波数チャネルの中から受信チャネルを選択しなければならず、電波品質の悪い周波数チャネルを選択する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、使用場所が変わった場合でも、予め設定された複数周波数チャネルの中から最適なものを迅速に選択できるようにした防災無線システムの受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、異なる周波数チャネルで複数の上位装置からの電波を受信可能な防災無線システムの受信機において、現在使用可能な周波数チャネルの絞り込みを行う周波数チャネル絞り込み部と、この周波数チャネル絞り込み部によって絞り込んだ周波数チャネルの中から予め設定した周波数チャネルの優先順位に従って受信チャネルを確定するデータ解析部と、このデータ解析部で確定した一つの使用周波数チャネルを受信チャネルとする受信チャネル確定部とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明による防災無線システムの受信装置は、当初とは異なる位置で使用したり、上位装置が故障したりした場合でも、その都度、周波数チャネル絞り込み部において使用可能な周波数チャネルの絞り込みを行い、その後、絞り込んだ周波数チャネルの中からデータ解析部において予め設定した優先順位に従って受信チャネルを確定し、このデータ解析部で確定した一つの使用周波数チャネルを受信装置の受信チャネルとするので、簡単、かつ短時間で受信チャネルを確定することができ、他の自治体等からの電波を受信することなく、確実に所望の上位装置からの品質の良い電波を受信することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は,本発明の一実施の形態による防災無線システムの受信装置を示すブロック構成図である。
【図2】図2は、図1に示した受信装置における要部の処理動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は、図1に示した受信装置における不揮発性メモリ内に格納した選定テーブルの説明図である。
【図4】図4は、図1に示した受信装置の受信電界強度取得部における検出例を示す受信電界強度特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の位置実施の形態による防災無線システムの受信装置を示すブロック構成図である。
受信装置1は、上位装置からの無線を受信する無線受信部2と、この無線受信部2の受信情報を音声または文字などで出力する音声出力部3および表示出力部4と、記憶部5内に格納したプログラムなどに基づいて受信装置1内の各種制御を行う制御部6などから成る通常構成の他に、無線受信部2から後述する複数の使用周波数チャネル毎に受信電界強度を抽出する受信電界強度取得部7と、この受信電界強度取得部7で取得した使用周波数チャネル毎の受信電界強度を使用周波数チャネル毎の使用可否判定閾値と比較して周波数チャネルを絞り込む周波数チャネル絞り込み部8と、この周波数チャネル絞り込み部8で絞り込んだ周波数チャネルを解析するデータ解析部9と、このデータ解析部9で選定した一つの使用周波数チャネルを確定して無線受信部2で受信する使用周波数チャネルとする受信チャネル確定部10と、上述した使用周波数チャネル毎に使用優先順位と使用可否判定閾値とを関連付けて格納した不揮発性メモリ11などを有して構成している。また、これらの追加された各部での後述する処理を行うプログラムなどは記憶部5内に格納され、制御部6によって処理が制御される。
【0011】
図2は、上述した受信装置1において新たに追加した処理動作を示すフローチャートである。
先ず、ステップS1では、受信装置1の使用前設定として受信周波数チャネルの選定準備設定を行う。この選定準備設定は、例えば、図3に示すように予め使用が想定される複数の使用周波数チャネル番号12毎に、使用優先順位13と、受信可否の絞り込みを行うために定めた使用可否判定閾値14とを関連付けた選定テーブルを図1に示した不揮発性メモリ11内に格納して行う。この選定テーブル例では、使用可否判定閾値14が低く、かつ使用優先順位13が高い使用周波数チャネル番号12に確定するのが容易になるようにしているが、これらは使用形態などに応じて調整可能である。
【0012】
このように使用優先順位13と使用可否判定閾値14とを複数の各使用周波数チャネル12毎に選定可能にした選定テーブルを設定したことにより、防災無線システムの無線エリア設計に則した受信環境での受信装置1の運用を行うことができる。例えば、通常は、受信装置1の近傍における良好な基地局や中継局などの上位装置からの電波を受信し、良好な電波環境で運用するが、災害発生時に中継局が使用不能となった場合や、災害発生時に受信装置1を避難先へ移動して使用する場合、多少電波環境が悪くても次のようにして受信させることが可能となる。
【0013】
災害発生時に中継局が使用不能となった場合や、災害発生時に受信装置1を避難先へ移動して使用する場合、受信装置1は、ステップS2で今が受信チャネルの調整タイミングであることを検出してから、図2のステップS3〜S6で示す周波数チャネルの絞り込み処理を行う。この周波数チャネルの絞り込み処理を開始する受信チャネルの調整タイミングは、防災情報の受信前に、受信装置1の起動時または電波圏外からの復帰時など様々な信号をとらえて行うことができるが、いずれの場合でも、受信チャネルを選択する処理の第一段階として行う。
【0014】
このとき、周波数チャネル絞り込み部8は、ステップS3で受信電界強度取得部7によって無線受信部2から各使用周波数チャネル番号12毎の受信電界強度の検出値を取得し、ステップS4で、予め定めた順番に従って使用周波数チャネル番号12毎に、その検出値と、ステップS1で不揮発性メモリ11に記憶した選定テーブルの対応する各使用可否判定閾値14とを比較する。
【0015】
例えば、図4に示すように横軸に使用周波数チャネル番号を、また縦軸に受信電界強度を表した受信電界強度特性図で示したとき、各使用周波数チャネル番号毎の受信電界強度の検出値15a〜15gをそれぞれ図示のように検出したとする。また同図では、図3で説明した各使用周波数チャネル番号12に対応して、各受信電界強度の検出値15a〜15gを縦棒状実線で示し、妨害波等による受信電界強度の検出値15bを縦棒状点線で示し、また図3に示した各使用周波数チャネル番号12に対応して各使用可否判定閾値14a〜14gを横点線で示している。ここでは、使用周波数チャネル番号「200」,「370」,「679」は、その受信電界強度の検出値15b,15d,15fが使用可否判定閾値14b,14d,14fを超えており、使用可能となっている。
【0016】
電波受信状況が図4に示した受信電界強度特性図のような場合、周波数チャネル絞り込み部8は、上述したステップS4で、無線受信部2から受信電界強度取得部7によって取り込んだ使用周波数チャネル番号のうち、先ず登録順位1番目(n=1)として使用周波数チャネル番号12aにおける実際の受信電界強度の検出値15aと、図3に示した選定テーブルの使用周波数チャネル番号12aに対応する使用可否判定閾値13aとを比較する。その結果、実際の検出値15aは使用可否判定閾値13aより小さいので、ステップS7に進み、このステップS7では、登録順位2番目(n=n+1)として次の使用周波数チャネル番号12bの受信電界強度の検出値15bを取り出すよう指示を与える。これを受けた周波数チャネル絞り込み部8は、ステップS4で、2番目に取り出した検出値15bと、図3に示した使用周波数チャネル番号12bに対応する使用可否判定閾値13bとを比較する。このとき、周波数チャネル絞り込み部8は、実際の検出値15bの方が使用可否判定閾値13bより大きいので、今度はステップS5に進んで検出値15bに対応する使用周波数チャネル番号12bを使用可能なものとして抽出する。
【0017】
ステップS6では、上述した比較が全ての使用周波数チャネル番号に対して完了したか否かを判定し、完了していない場合、ステップS7で次の使用周波数チャネル番号12cの受信電界強度の検出値15cを抽出し、同様の比較を行い、使用周波数チャネル番号12gの受信電界強度の検出値15gまで同様の処理を繰り返し行う。
【0018】
その後、周波数チャネル絞り込み部8は、ステップS6で各使用周波数チャネル番号12の全てにおいて比較が行われたと判定すると、使用可否判定閾値14b,14d,14fを超えている検出値15b,15d,15fに対応する各使用周波数チャネル番号「200」,「370」,「679」の抽出を完了する。これによって、現時点での使用可能なものが使用周波数チャネル番号「200」,「370」,「679」に絞り込まれたことになる。
【0019】
続いて、受信装置1は、図2に示したステップS8〜S11で受信データ解析処理を行う。
データ解析部9は、周波数チャネル絞り込み部8から使用周波数チャネル番号「200」,「370」,「679」に関する絞り込み信号を受けると、先ず、ステップS7で図3に示した選定テーブルの使用周波数チャネル番号「200」,「370」,「679」に対応した使用優先順位13を不揮発性メモリ11から読み出す。
【0020】
次いで、データ解析部9は、ステップS9でそれらの中から最も優先順位が高い(m=1)番目ものを抽出する。ここでは、図3に示した選定テーブルの使用周波数チャネル番号「200」には使用優先順位「1」が登録されているため、データ解析部9は、ステップS9で最初に使用周波数チャネル番号「200」を(m=1)番目として抽出し、これが所定の上位装置からのものであるか否かを判定する。
【0021】
ここでデータ解析部9は、この使用周波数チャネル番号「200」の電波の受信を行い、受信データの解析を行う。この受信データ解析時には、受信データの形式やデータタイミングなどの物理的条件の他に、受信データ内に含まれる市町村コードや製造者識別番号などの論理的条件を使用して判定を行う。データ解析部9は、使用周波数チャネル番号「200」の解析を行った結果、データ形式が解析不能であったり、市町村コードが所望のものと異なるなどの結果を得たとすると、使用周波数チャネル番号「200」に対して妨害波、雑音、他自治体からの電波などが混入したとものとして、所定の上位装置からの電波ではないと判定する。
【0022】
次いで、データ解析部9は、ステップS10に進み、次に2番目(m=m+1)に優先順位の高いもの、つまり使用優先順位「3」として登録された使用周波数チャネル番号「370」を抽出し、ステップS9で電波の受信を行って受信データの解析を実施する。このとき先程の使用周波数チャネル番号「200」とは異なり物理的条件と論理的条件が所定の上位装置からのものと判定する。この時点で、データ解析部9は、三番目に高い優先順位「5」の使用周波数チャネル番号「679」の解析を中止し、ステップS11に進んで、選定した使用周波数チャネル番号「370」の選定信号を受信チャネル確定部10に出力する。
【0023】
この選定信号を受信した受信チャネル確定部10は、ステップS12で無線受信部2に確定信号を送り、無線受信部2がこの確定した受信周波数チャネルで電波を受信するように同調処理などを行い、その後の防災情報受信に備える。
【0024】
このような防災無線システムの受信装置1によれば、災害発生時に中継局等の上位装置が使用不能となった場合や、災害発生時に受信装置1を避難先へ移動して使用する場合、受信装置1の起動時または電波圏外からの復帰時などのタイミングで、周波数チャネル絞り込み部8において例えば検出値15a〜15gと予め設定した使用可否判定閾値13a〜13gとを比較して使用可能な周波数チャネルの絞り込みを行い、データ解析部9においてこの絞り込んだ周波数チャネルの中から予め設定した優先順位に従って受信チャネルを確定し、受信チャネル確定部10においてこのデータ解析部9で確定した一つの使用周波数チャネルを受信チャネルとするようにしたため、当初とは異なる状態で使用した場合でも、その都度、使用可能な周波数チャネルの絞り込みを行い、この絞り込んだ周波数チャネルの中から予め設定した優先順位に従って、簡単、かつ短時間で受信チャネルを確定することができるので、他の自治体等からの電波を受信することなく、確実に所望の上位装置からの電波を受信することができるようになる。
【0025】
上述した受信装置1では、受信電界強度取得部7において受信電界強度(RSSl)の検出値15a〜15gを取得し、周波数チャネル絞り込み部8でこの受信電界強度の検出値15a〜15gを用いて使用可能な周波数チャネルの絞り込みを行っているが、上述した周波数チャネル絞り込み部8の判定には、簡易的なエラーレート測定などの判定に時間を要さない他の要素を使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明による防災無線システムは、図1に示した構成のものに限らず他の構成の防災無線システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 受信装置
2 無線受信部
3 音声出力部
4 表示出力部
5 制御部
6 記憶部
7 受信電界強度取得部
8 周波数チャネル絞り込み部
9 データ解析部
10 受信チャネル確定部
11 不揮発性メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる周波数チャネルで複数の上位装置からの電波を受信可能な防災無線システムの受信機において、現在使用可能な周波数チャネルの絞り込みを行う周波数チャネル絞り込み部と、この周波数チャネル絞り込み部によって絞り込んだ周波数チャネルの中から予め設定した周波数チャネルの優先順位に従って受信チャネルを確定するデータ解析部と、このデータ解析部で確定した一つの使用周波数チャネルを受信チャネルとする受信チャネル確定部とを設けたことを特徴とする防災無線システムの受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−114810(P2011−114810A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271945(P2009−271945)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】