説明

防災監視システム

【課題】コンピュータシステムによる統合防災監視を前提としつつ、そのディスプレイ装置やコンピュータシステムの障害時にも対応可能でかつ低コストで実現できる防災監視システムを実現する。
【解決手段】複数の検知機器・防災機器とネットワークを介して接続され、検知機器の警報を発報し、防災機器の情報を表示するディスプレイ装置を備えた防災監視サーバと、前記ネットワークとは異なる回線を介して前記検知機器・防災機器と接続された警報盤とからなり、前記警報盤の盤面には、前記各検知機器からの警報を発報する警報領域と、前記防災機器を操作する操作手段が配置された操作領域と、前記検知機器・防災機器の個々の状態を表示する表示手段と、前記防災監視サーバまたはディスプレイ装置の障害を検出したときに、前記ネットワークから前記回線に切り替えて警報盤による警報、操作、表示を行う異常検出手段とを有する防災監視システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス漏れ検出、火災検出等を行う防災監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の防災監視システムとしては、特開平9−186711号公報(特許文献1)が知られている。
【0003】
このシステムでは、伝送路を主線と副線とから構成し、ノードに、CPU制御部と、主線側および副線側のそれぞれにネットワーク通信インターフェース部およびネットワーク制御部とを設けている。CPU制御部は、主線および副線による各ノード間の現在の接続状態を示す接続状態テーブルを備えており、伝送障害発生時には、接続状態テーブルに基づき自己とデータ送信先のノードとの間で障害が発生していない伝送路をデータ伝送経路として主線副線を問わず検索する。そして、検索された経路中主線副線間でデータの中継が必要なノードに対しデータ中継を指令して自己と送信先ノードとの間の伝送路を形成しデータ伝送を行うようになっている。
【0004】
また、特開平5−40890号公報(特許文献2)は、防災監視システムのディスプレイの表示に関する技術であり、ディプレイに、複数の端末機器からの発報信号に応じてこれらの複数の端末機器の位置に異常が表示されることで、ウィンドウ表示を行う範囲が確保できない場合には、危険度の低い端末機器の表示位置にウィンドウ表示を行い、危険度の高い端末機器の表示を確保するようにしたものである。
【0005】
なお、上記の他に防災監視システムにおけるデータ伝送方法に関する技術として特開平5−12589号公報(特許文献3)、防災総合システムに関する技術として特開2005−115796号公報(特許文献4)、総合監視システムに関する技術として特開2000−207663号公報(特許文献5)がある。
【特許文献1】特開平9−186711号公報
【特許文献2】特開平5−40890号公報
【特許文献3】特開平5−12589号公報
【特許文献4】特開2005−115796号公報
【特許文献5】特開2000−207663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プラント設備の防災操作・監視(ガス検知器、低温検知、水幕散水、粉末消火等)は、主に警報盤上での表示および操作が中心だった(図3参照)。この警報盤は、盤上が警報領域2aと操作領域2bと監視領域2cとに分割されており、警報領域2aは盤上の上部に警報窓が設けられ、ガス検知機器等が動作した場合には、当該設備の警報を発報するようになっていた。また、監視領域2cは、盤面にプラントの全体系統図が描かれており、その中にガス検知器等の検出機器の作動ランプが配置されていた。そして、操作領域2bには、操作スイッチ、操作ボタン等が配置されていた。なお、図中12は計算機であり、ガス検知器盤7から受信したガス濃度に基づいてあらかじめ設定された濃度値との比較計算を行っている。
【0007】
この警報盤によるシステムは拡張性に乏しく、維持コストが高く、さらに大規模なプラント設備の場合には盤面数が多くなり、緊急時の操作・監視に不向きであった。
【0008】
このような点から上記特許文献に示すように、監視システムをコンピュータシステムで構成し、そのディスプレイ装置を用いて監視を行う方式が種々提案されている。
【0009】
ところが、このようなディスプレイ装置を用いたコンピュータシステムに置き換えた場合、万が一ディスプレイ装置またはその制御系(コンピュータシステム)が故障した場合、ディスプレイ装置を監視対象とした操作ができなくなり、防災監視そのものが不可能になる危険があった。そのために、当該ディスプレイ装置やコンピュータシステムを二重化してこの危険を回避することも考えられるが、コスト高となり、メンテナンス性も低下する可能性があった。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、コンピュータシステムによる統合防災監視を前提としつつ、そのディスプレイ装置やコンピュータシステムの障害時にも対応可能でかつ低コストで実現できる防災監視システムを実現することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明では、以下の手段を採用した。
【0012】
すなわち、本発明は、複数の検知機器・防災機器とネットワークを介して接続され、検知機器の警報を発報し、防災機器の情報を表示するディスプレイ装置を備えた防災監視サーバと、前記ネットワークとは異なる回線を介して前記検知機器・防災機器と接続された警報盤とからなり、前記警報盤の盤面には、前記各検知機器からの警報を発報する警報領域と、前記防災機器を操作する操作手段が配置された操作領域と、前記検知機器・防災機器の個々の状態を表示する表示手段と、前記防災監視サーバまたはディスプレイ装置の障害を検出したときに、前記ネットワークから前記回線に切り替えて警報盤による警報、操作、表示を行う異常検出手段とを有する防災監視システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コンピュータシステム(防災監視サーバ)による統合防災監視を前提としながら、警報盤による監視・操作を行うことにより、警報盤での警報は防災監視サーバまたはそのディスプレイ装置に障害があった際に対応できればよく、操作手段および表示手段を集約化できる。そのため、コンピュータシステムを二重化するよりも簡易かつ低コストで危険回避が可能で、かつ従来の警報盤よりも集約化することで警報盤自体も小型化かつ低コスト化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の最良の実施形態を図を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態の防災監視システムの概念図である。
【0016】
同図において、1は防災監視サーバ、2は警報盤をそれぞれ示している。防災監視サーバ1はネットワーク(NW:保安防災ループ)に接続されており、このネットワーク(NW:保安防災ループ)には、防災制御装置4を介して防災補助リレー盤8、水消火設備凍結防止盤10および粉末消火補助リレー盤11が接続されている。また、保安防災ループにはさらにイーサネット(登録商標)等の汎用LANを介してガス検知盤7とガス検知部5が接続されている。
【0017】
防災監視サーバ1は、図2に示すように、メモリ(MM)を有する中央処理装置(CPU)を中心に、バスを介して接続された大型スクリーン(SCR)、表示装置(CRT)、入力装置(KBD)、ハードディスク装置(HD)、ネットワークインターフェース(
NW I/F)を有している。
【0018】
ハードディスク装置(HD)には、オペレーティングシステム(OS)とともに、各種アプリケーションプログラム(AP)およびデータベース(DB)が構築されている。当該防災監視サーバ1における各種の監視は当該アプリケーションプログラム(AP)がデータベース(DB)のデータを参照しながら行うようになっている。
【0019】
なお、バス(BUS)には、障害検出部3が接続されており、この障害検出部3は、当該防災監視サーバ1または大型スクリーン(SCR)、表示装置(CRT)等のディスプレイ装置に障害があった場合に、これらの障害を検出して警報盤2に通知する機能を有している。
【0020】
警報盤2は、その盤面が警報領域2aと操作領域2bと表示領域2cとに区画されている。警報領域2aにはスピーカが内蔵されて、あらかじめ用意された警報音が発報されるようになっている。また、操作領域2bには各種の操作スイッチ、押釦スイッチ等が配置されて防災制御装置4に接続された各種センサ・機器盤8〜11を直接操作できるようになっている。また、表示領域2cには各機器盤8〜11の状態を示す表示ランプ(LED)が取り付けられており、各機器盤8〜11の状態が直接目視で把握できるようになっている。そして、警報盤2は、前記ネットワーク(NW)とは別の回線で直接防災制御装置4やガス検知器盤7と接続されており、これらの検知情報や操作信号を直接やりとりできるようになっている。
【0021】
次に、本実施形態の防災監視システムを用いた災害時の処理手順を図4および図5を用いて説明する。
【0022】
まず、図4のフロー図では、防災監視サーバ1の中央処理装置(CPU)が、災害の発生を検知し(ステップ401)、表示装置(CRT)の故障を検出すると(402)、大型スクリーン(SCR)にも障害が発生しているか否かを検出する(404)。
【0023】
この結果、表示装置(CRT)も大型スクリーン(SCR)も故障している場合、中央処理装置(CPU)は、障害検出部3に表示系の装置の故障を通知する。
【0024】
障害検出部3から防災監視サーバ1の表示系の障害通知を受信すると、防災監視権限は警報盤2に移管され、警報盤2はその警報領域2a、操作領域2b、表示領域2cによって防災監視を継続する(405)。
【0025】
一方、表示装置(CRT)が故障していない場合には表示装置(CRT)および大型スクリーン(SCR)での操作・監視を継続する(403)。
【0026】
また、表示装置(CRT)のみが故障し、大型スクリーン(SCR)は正常である場合には、大型スクリーン(SCR)のみによる操作・監視を継続する(406)。
【0027】
図4のフロー図は、防災監視サーバ1自体に障害が発生した場合、またはネットワーク(NW)に障害が発生した場合の処理フローである。
【0028】
防災監視サーバ1の中央処理装置(CPU)が災害が発生したことを検知し(501)、その後、防災監視サーバ1(制御装置)自体、またはネットワーク(NW)に異常があるか否かを検出する(502)。このとき、防災監視サーバ1(制御装置)自体、およびネットワーク(NW)に異常が発生していないときには、表示装置(CRT)および大型スクリーン(SCR)による操作・監視を継続する(504)。
【0029】
また、防災監視サーバ1(制御装置)自体、またはネットワーク(NW)に異常が発生している場合には、中央処理装置(CPU)が障害通知を障害検出部3に対して送信できない場合がある。
【0030】
障害検出部3は、平常時は、中央処理装置(CPU)から所定間隔毎に非障害状態通知を受診するようにしておき、非障害状態通知を所定の回数分連続して受診できなかったときに防災監視サーバ1またはネットワーク(NW)に障害が発生したものとみなして、警報盤2に対して障害発生通知を送信する。障害検出部3から防災監視サーバ1またはネットワーク(NW)の障害通知を受信すると、防災監視権限は警報盤2に移管され、警報盤2はその警報領域2a、操作領域2b、表示領域2cによって防災監視を継続する(503)。
【0031】
このように、本実施形態では、防災監視サーバ1による防災監視・操作を前提にしながら、障害発生時には操作盤2による防災監視・操作が可能となっている。
【0032】
このように、警報盤2での警報は防災監視サーバ1またはそのディスプレイ装置(CRTまたはSCR)に障害があった際に対応できればよく、盤面上の操作手段および表示手段を集約化できる。そのため、コンピュータシステムを二重化するよりも簡易かつ低コストで危険回避が可能で、かつ従来の警報盤よりも集約化することで警報盤自体も小型化かつ低コスト化できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、大型プラント設備における防災操作・監視を行う防災監視システムに利用するものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態の防災監視システムの概念図
【図2】実施形態の防災監視システムの機能ブロック図
【図3】従来技術の警報盤の概念図
【図4】実施形態による防災監視・操作のフロー図(1)
【図5】実施形態による防災監視・操作のフロー図(2)
【符号の説明】
【0035】
1 防災監視サーバ
2 警報盤
2a 警報領域
2b 操作領域
2c 表示領域
3 障害検出部
4 防災制御装置
5 ガス検出器
7 ガス検知器盤
8 防災補助リレー盤
10 水消火設備凍結防止盤
11 粉末消火補助リレー盤
12 計算機
CPU 中央処理装置
MM メインメモリ
BUS バス
HD ハードディスク装置
AP アプリケーションプログラム
DB データベース
OS オペレーティングシステム
SCR 大型スクリーン(ディスプレイ装置)
CRT 表示装置(ディスプレイ装置)
KBD 入力装置
NW I/F ネットワークインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検知機器・防災機器とネットワークを介して接続され、検知機器の警報を発報し、防災機器の情報を表示するディスプレイ装置を備えた防災監視サーバと、
前記ネットワークとは異なる回線を介して前記検知機器・防災機器と接続された警報盤とからなり、
前記警報盤の盤面には、前記各検知機器からの警報を発報する警報領域と、前記防災機器を操作する操作手段が配置された操作領域と、前記検知機器・防災機器の個々の状態を表示する表示手段と、前記防災監視サーバまたはディスプレイ装置の障害を検出したときに、前記ネットワークから前記回線に切り替えて警報盤による警報、操作、表示を行う異常検出手段とを有する防災監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−58427(P2007−58427A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241332(P2005−241332)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】