説明

防爆無線アンテナ

【課題】効率よく無線通信ができる防爆無線アンテナを実現する。
【解決手段】防爆型機器本体に設けられた防爆アンテナにおいて、防爆型機器本体の周面に設けられたアンテナ取り付け穴と、このアンテナ取り付け穴に接合面の耐圧防爆構造の条件を充足して一端が取り付けられた45°エルボ型継手と、この45°エルボ型継ぎ手の他端に接合面の耐圧防爆構造の条件を充足して一端が取り付けられアンテナを内蔵し且つ耐圧防爆構造の強度条件を充足する電波透過性材料により作られたアンテナカバーとを具備したことを特徴とする防爆アンテナである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よく無線通信ができる防爆無線アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防爆無線アンテナに関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平9−182284号公報
【0004】
図6は従来より一般に使用されている従来例の構成説明図である。
防爆アンテナ1は、危険場所内に耐圧防爆構造の全閉容器30及び受信アンテナ4が設置され、この全閉容器30内にFM受信機3を収納して構成されるが、この受信アンテ4を容器としてのソケット10内に収納するように取り付ける。
【0005】
このソケット10は、受信アンテナ4が受信する電波を透過する材質、例えばプラスチック、エポキシ樹脂等の合成樹脂又はガラス等で耐圧防爆構造の中空筒状体として形成され、この中空筒状体の基部に形成される螺子部14を全閉容器30の取付螺子孔31に内部が連通状態となるように螺合係止される構成である。
【0006】
このソケット10の全閉容器30への係止は、螺子部14が取付螺子孔31に螺合することにより予め定められた所定の耐圧防爆構造を満足する構成とされる。
また、全閉容器30の取付螺子孔31に螺合されたソケット10は、その螺子部14の端部近傍にロックナット10aを装着して全閉容器30に対して密着係合させる構成である。
【0007】
次に、前記構成に基づく本実施形態の組立取付動作及び受信動作について説明する。
まず、全閉容器30内にFM受信機3を収納し、このFM受信機3に対して電源配線53及び接地配線54が各々接続されると共に、受信アンテナ4が一端に接続された伝送線路50も接続される。
【0008】
この接続された伝送線路50及び受信アンテナ4を全閉容器30の取付螺子孔31に内部から外部へ向かって挿通させ、全閉容器30の外部に引き出す。この引き出した受信アンテナ4をソケット10に収納した状態で、このソケット10の螺子部14を全閉容器30の取付螺子孔31に螺合させる。
この螺合された螺子部14に対してさらにロックナット10aを螺合させることによりソケット10を全閉容器30に固着係止させる。
【0009】
なお、前記受信アンテナ4のソケット10への収納は伝送線路50をFM受信機3へ接続する前に実行し、このソケット10内への受信アンテナ4が収納された後に受信アンテナ4に一端が接続された伝送線路50を全閉容器30の取付螺子孔31に外部から内部へ向かって挿通し、この取付螺子孔31に螺子部14を螺合してソケット10を全閉容器30に固着係合させる。
さらに、この挿通した伝送線路50の他端を前記全閉容器30内に収納されたFM受信機3に接続することもできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような装置においては、以下の間題点がある。
アンテナの取付方向が固定されており、アンテナ4を垂直方向に向けての設置しかできない。
即ち、防爆エリアにて使用するアンテナ4は、防爆ケース30に固定されており、設置方向が限定されている。
【0011】
一方、防爆ケース30は、設置スペース、防爆ケースの配管A方向等の都合により、防爆ケースの設置位置が、たとえば、図6に示す水平位置から、図7に示す垂直位置に設置せざるを得ない場合が生ずる。
【0012】
この場合、アンテナ4は水平方向に限定されることになり、効率良い無線通信ができない。
自在継手などによりアンテナを希望の方向に自由に変えることもできるが、耐圧防爆性能を満足するようにすると小型化が困難となる。
【0013】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、防爆エリアにおいても、防爆ケースの設置方向を考慮せずに、効率よく無線通信ができる防爆無線アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1の防爆無線アンテナにおいては、
防爆型機器本体に設けられた防爆アンテナにおいて、防爆型機器本体の周面に設けられたアンテナ取り付け穴と、このアンテナ取り付け穴に接合面の耐圧防爆構造の条件を充足して一端が取り付けられた屈曲したエルボ型継手と、この屈曲したエルボ型継ぎ手の他端に接合面の耐圧防爆構造の条件を充足して一端が取り付けられアンテナを内蔵し且つ耐圧防爆構造の強度条件を充足する電波透過性材料により作られたアンテナカバーとを具備したことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項2の防爆無線アンテナにおいては、請求項1記載の防爆無線アンテナにおいて、
前記アンテナは、複数のアンテナが使用されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3の防爆無線アンテナにおいては、請求項1記載の防爆無線アンテナにおいて、
前記アンテナは、線状アンテナが使用されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項4の防爆無線アンテナにおいては、請求項1記載の防爆無線アンテナにおいて、
前記アンテナは、パッチアンテナが使用されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項5の防爆無線アンテナにおいては、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の防爆無線アンテナにおいて、
前記アンテナカバーは、ナイロン66ガラス繊維入り材が使用されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項6の防爆無線アンテナにおいては、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の防爆無線アンテナにおいて、
前記アンテナカバーは、表面積が100平方センチ以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項7の防爆無線アンテナにおいては、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の防爆無線アンテナにおいて、
前記アンテナカバーは、表面積が20平方センチ以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項8の防爆無線アンテナにおいては、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の防爆無線アンテナにおいて、
前記アンテナカバー内には、前記アンテナ素子と電子回路とが内蔵されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
屈曲したエルボ型継手を回動させることにより、防爆型機器本体の設置方向によらず容易に無線電波の偏波面を合わせることができ、効率よく無線通信ができる防爆アンテナが得られる。
【0023】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
複数のアンテナを接続し、受信状況の良いアンテナを随時切り替えながら受信するアンテナダイバーシティ方式や複数入力・複数出力の無線通信方式(MIMO)においても、回転により干渉することなく希望の向きに複数のアンテナを設置することができる防爆アンテナが得られる。
【0024】
本発明の請求項3によれば、次のような効果がある。
線状アンテナは簡単な構造で高利得を得られるアンテナである。かつ棒状であるので耐圧防爆構造を充足する機械的強度の高い構造である円柱形状をとることができる。それにより少ないプラスチック表面積にて防爆アンテナを構成できる防爆アンテナが得られる。
【0025】
本発明の請求項4によれば、次のような効果がある。
波長の長い周波数帯においても、高誘電率材料にアンテナを作りこむ誘電体アンテナの使用によりアンテナ自体の小型化が可能となり、プラスチック表面積に関する防爆要件を満足した防爆アンテナが得られる。
【0026】
本発明の請求項5によれば、次のような効果がある。
アンテナカバーは、使用温度範囲が比較的広く機械的強度の高いナイロン66ガラス繊維入り材ナイロンを使用することにより、薄肉としても耐圧防爆要件を満足する強度と表面積に抑えることができる防爆アンテナが得られる。
【0027】
本発明の請求項6によれば、次のような効果がある。
プラスチック製容器の表面積を100cm2以下とすることにより、耐圧防爆規格の一般的電機機器のグループ適用となり、限定された雰囲気ガスの環境下で使用可能な防爆アンテナが得られる。
【0028】
本発明の請求項7によれば、次のような効果がある。
プラスチック製容器の表面積を20cm2以下とすることにより、耐圧防爆規格の最上位電気機器のグループ適用となり、水素、アセチレン雰囲気ガスの環境下でも使用でき、どんな耐圧防爆環境下でも使用可能な防爆アンテナが得られる。
【0029】
本発明の請求項8によれば、次のような効果がある。
防爆型機器本体より高周波用同軸ケーブルでのアンテナへの給電から、電子回路をアンテナカバー内に内蔵することで、同軸ケーブルによる引き回しがなくなり、同軸ケーブルによる減衰が無い良好な通信が可能となる防爆アンテナが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図、図2は図1の動作説明図である。
図において、図4と同一記号の構成は同一機能を表す。
以下、図4との相違部分のみ説明する。
【0031】
図1において、アンテナ取り付け穴21は、防爆型機器本体22の周面に設けられている。
45°エルボ型継手23は、Oリング231を介して、アンテナ取り付け穴21に、接合面の耐圧防爆構造の条件を充足して一端が取り付けられている。
即ち、45°エルボ型継手23は、防爆型機器本体22にねじこまれる構造であり、ねじ仕様も耐圧防爆性能を有する構造である。
【0032】
45°エルボ型継手23には、アンテナ位置固定用ロックナット231が、アンテナ取り付け穴21に取り付けられている。
アンテナ位置固定用ロックナット232を緩めて、45°エルボ型継手23を回転させることで、防爆型機器本体22の設置位置、たとえば、防爆型機器本体22が水平位置から垂直位置になった場合にも、アンテナ方向を偏波面に合わせて設置することができる。
180度回転させるとアンテナは水平⇔垂直と偏波面を合わせることができる。
【0033】
アンテナカバー24は、45°エルボ型継ぎ手23の他端に、Oリング241を介して、接合面の耐圧防爆構造の条件を充足して一端が取り付けられ、アンテナ25を内蔵し、且つ耐圧防爆構造の強度条件を充足している。
即ち、アンテナカバー24と45°エルボ型継ぎ手23間は微小な隙間と充分なはめあい長さを持ち耐圧防爆規格を充分満足する構造を有する。
アンテナカバー24と45°エルボ型継ぎ手23とは、アンテナカバー固定用ロックナット242により固定されている。
【0034】
この場合は、アンテナ25は、線状のアンテナが使用されている。
また、アンテナカバー24は、ナイロン66ガラス繊維入り材が使用されている。
また、アンテナカバー24は、表面積が100平方センチメートル以下にされている。
なお、アンテナカバー24は、表面積が20平方センチメートル以下にされても良い。
【0035】
アンテナカバー24の内部には、線状のアンテナ25を内蔵し高周波信号のフィードライン、信号ライン及びGND共に防爆型機器本体22とは絶縁された状態を保つ。
アンテナ25への給電用高周波同軸ケーブルは、エポキシ系注型樹脂の固着結合体251により耐圧防爆性能を有するアンテナカバー24に固着結合される。
【0036】
以上の構成において、防爆型機器本体22が、例えば水平配置用に組み立てられた防爆無線アンテナであっても、アンテナの方向は同じ条件を満足して、且つ防爆型機器本体22を垂直配置用に組み立てることができる。
防爆型機器本体22が、例えば水平配置用であるものを垂直配置用に配置すると、防爆無線アンテナは、図2の二点鎖線に示す如き位置になる。
【0037】
アンテナ位置固定用ロックナット232を緩めて、45°エルボ型継手23を回転させることで、アンテナ方向を偏波面に合わせて設置することができる。
【0038】
この結果、45°エルボ型継手23を回動させることにより、防爆型機器本体22の設置方向によらず容易に無線電波の偏波面を合わせることができ、効率よく無線通信ができる防爆アンテナが得られる。
【0039】
線状アンテナ25は簡単な構造で高利得を得られるアンテナである。かつ棒状であるので耐圧防爆構造を充足する機械的強度の高い構造である円柱形状をとることができる。それにより少ないプラスチック表面積にて防爆アンテナを構成できる防爆アンテナが得られる。
【0040】
アンテナカバー24は、使用温度範囲が比較的広く機械的強度の高いナイロン66ガラス繊維入り材ナイロンを使用することにより、薄肉としても耐圧防爆要件を満足する強度と表面積に抑えることができる防爆アンテナが得られる。
【0041】
プラスチック製容器の表面積を100cm2以下とすることにより、耐圧防爆規格の一般的電機機器のグループ適用となり、限定された雰囲気ガスの環境下で使用可能な防爆アンテナが得られる。
【0042】
プラスチック製容器の表面積を20cm2以下とすれば、耐圧防爆規格の最上位電気機器のグループ適用となり、水素、アセチレン雰囲気ガスの環境下でも使用でき、どんな耐圧防爆環境下でも使用可能な防爆アンテナが得られる。
しかも、電波伝搬特性が良い1/2波長型の線状アンテナ25アンテナでも使用することができる
【0043】
図3は本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図3においては、アンテナは、ダイバーシティアンテナ31が使用されている。
この結果、複数のアンテナを接続し、受信状況の良いアンテナを随時切り替えながら受信するアンテナダイバーシティ方式や複数入力・複数出力の無線通信方式(MIMO)においても、回転により干渉することなく希望の向きに複数のアンテナを設置することができる防爆アンテナが得られる。
【0044】
図4は本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図4は図3の防爆型機器本体22の水平配置に対して、垂直配置にも対応できるようにしたものである。
【0045】
図5は本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
本実施例においては、アンテナカバー24内に、アンテナ素子25と電子回路41とが内蔵されている。
【0046】
この結果、防爆型機器本体22より高周波用同軸ケーブルでのアンテナ25への給電から、電子回路をアンテナカバー24内に内蔵することで、同軸ケーブルによる引き回しがなくなり、同軸ケーブルによる減衰が無い、良好な通信が可能となる防爆アンテナが得られる。
【0047】
なお、前述の実施例においては、アンテナに付いて、線状アンテナと説明したが、これに限ることはなく、例えばパッチアンテナであっても良い。
【0048】
その場合は、波長の長い周波数帯においても、高誘電率材料にアンテナを作りこむ誘電体アンテナの使用によりアンテナ自体の小型化が可能となり、プラスチック表面積に関する防爆要件を満足した防爆アンテナが得られる。
【0049】
なお、内蔵アンテナ25はスリーブアンテナでなく、F形アンテナ、逆F型アンテナ、マイクロストリップアンテナ等でも良いことは勿論である。
【0050】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】図1の動作説明図である。
【図3】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図4】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図5】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図6】従来より一般に使用されている従来例の構成説明図である。
【図7】図6の動作説明図である。
【符号の説明】
【0052】
21 アンテナ取り付け穴
22 防爆型機器本体
23 45°エルボ型継手
231 Oリング
232 アンテナ位置固定用ロックナット
24 アンテナカバー
241 Oリング
242 アンテナカバー固定用ロックナット
25 アンテナ
251 固着結合体
31 ダイバーシティアンテナ
41 電子回路
A 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防爆型機器本体に設けられた防爆アンテナにおいて、
防爆型機器本体の周面に設けられたアンテナ取り付け穴と、
このアンテナ取り付け穴に接合面の耐圧防爆構造の条件を充足して一端が取り付けられた屈曲したエルボ型継手と、
この屈曲したエルボ型継ぎ手の他端に接合面の耐圧防爆構造の条件を充足して一端が取り付けられアンテナを内蔵し且つ耐圧防爆構造の強度条件を充足する電波透過性材料により作られたアンテナカバーとを具備したことを特徴とする防爆アンテナ。
【請求項2】
前記アンテナは、複数のアンテナが使用されていること
を特徴とする請求項1記載の防爆アンテナ。
【請求項3】
前記アンテナは、線状アンテナが使用されていること
を特徴とする請求項1記載の防爆アンテナ。
【請求項4】
前記アンテナは、パッチアンテナが使用されていること
を特徴とする請求項1記載の防爆アンテナ。
【請求項5】
前記アンテナカバーは、ナイロン66ガラス繊維入り材が使用されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の防爆アンテナ。
【請求項6】
前記アンテナカバーは、表面積が100平方センチ以下であること
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の防爆アンテナ。
【請求項7】
前記アンテナカバーは、表面積が20平方センチ以下であること
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の防爆アンテナ。
【請求項8】
前記アンテナカバー内には、前記アンテナ素子と電子回路とが内蔵されたこと
を特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の防爆アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−78835(P2008−78835A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253628(P2006−253628)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】