説明

防犯装置及び防犯システム

【課題】電気配線や電池交換を必要とせずに電力を得ることができ、また小型化が容易な自己発電型の防犯装置及び防犯システムを提供することを課題とするものである。
【解決手段】防犯装置2は、圧電素子21と衝突部材22を具備し衝突部材22が圧電素子21に衝突して発電する発電部材20を備え、防備を要する箇所に発生する変動を検知して、前記発電部材20で発電する電力により警報を行う。また防犯システム1では、防犯装置2と、防犯装置2と離間して設けられる検出装置5とが備えられ、防犯装置2が検出装置5に信号を発信することで第1の警報を行い、検出装置では前記信号を受信して第2の警報を実行する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家屋や建物等に侵入されたり、物を盗まれたりすることに備える防犯装置及び防犯システムの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、家庭やオフィス等に備えられる防犯装置として種々のものが知られている。その形態は一般的には、玄関や窓等の出入口あるいは塀や外壁等の家屋の周辺に防犯装置をあらかじめ設けておき、盗み等を目的とする侵入者が玄関や窓の戸を開けたり塀や外壁を上ったりすることを検知して、警報音等を発生させることが多かった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような防犯装置は、いつ来るかわからない侵入者に備えていつでも作動できるように電力の供給が必要であるため、電力線から電力を供給する場合には、電気配線が施される。しかし、特に窓ガラスや、塀や外壁等の家屋の周辺に設置する場合には、電気配線が引き回されることが多いため、侵入者に防犯装置を気づかれて回避されたり、電力線を切断されたりすることがあり、せっかくの防犯装置が肝心なときに機能しないことが心配される。また電池を使用する場合には、電池切れの心配や、頻繁な電池交換も必要となるという不便があった。
【0004】
また、家庭で使用する場合、例えば一戸建ての住宅を例にとると、侵入者は、玄関、勝手口、各部屋の窓、外壁、塀等から侵入する可能性がある。そのため、これら全てに防犯装置を設置し常時作動させておくと、その電気代だけでも大きな負担となるので、経費を節約したいという要望があった。
【0005】
さらに、特に窓ガラスの内側や、塀や外壁等の家屋の周辺に設置する場合には、防犯装置自体が大きな物であると、侵入者に不信に思われて気づかれやすいため、装置全体の小型化や、装置の隠蔽が要望されていた。
【0006】
このような課題を考慮して、本発明では電気配線や電池交換を必要とせずに電力を得ることができ、また小型化が容易な自己発電型の防犯装置及び防犯システムを提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記、課題を解決するために本発明の防犯装置は次のような手段を採用する。
【0008】
すなわち、請求項1では、圧電素子と衝突部材を具備し衝突部材が圧電素子に衝突して発電する発電部材を備え、防備を要する箇所に発生する変動を検知して、前記発電部材で発電する電力により警報を行う。
【0009】
この手段では、盗みやいたずら、侵入等による被害を防備する必要のある箇所に何らかの変動が生じると、この変動を検知して、衝突部材が圧電素子に衝突することによる自己発電の電力で警報を発する。ここで言う警報とは、音や光や音声等の発生、信号の発信等により、近傍や遠隔のいずれか一方または双方に知らせることを指している。そして、発電部材による自己発電と警報との関係は、変動を検知することで発電部材の発電を開始させて警報を実行する形態や、発電部材はあらかじめ発電しているが出力が抑制されており、変動を検知することで発電の出力を開始させて警報を実行する形態や、あらかじめ発電部材で発電された電力は警報のための手段に供給されているが警報の出力が抑制されており、変動を検知することで警報の出力を開始させる形態等が適用できる。
【0010】
また、請求項2では、圧電素子と衝突部材を具備し衝突部材が圧電素子に衝突して発電する発電部材と、発電された電力により警報する警報部と、警報部の実行の可否を制御する制御部材とを備え、発電部材と制御部材のいずれか一方を出入口や窓等の戸に、他方を前記戸の開放により戸と乖離する周辺部に設け、戸の開放により制御部材が警報部を実行させる。
【0011】
この手段では、出入口や窓等の戸が開放されることに起因して、制御部材は発電部材の衝突部材を圧電素子に衝突させる。この自己発電の開始により、発電された電力を受けた警報部では警報が実行される。これにより戸が開放されたことが警報される。出入口や窓等の戸としては、開き戸の扉、引き戸の戸片、窓ガラス、雨戸、金庫や容器の扉等がある。また、周辺部は戸の周りの建具や壁、戸枠等や、開放される戸以外の戸である。なお、周辺部となる戸は、前記開放される戸と同時に開放されても、閉塞されたままであってもいずれでもよい。
【0012】
また、請求項3では、圧電素子と衝突部材を具備し衝突部材が圧電素子に衝突して発電する発電部材と、発電された電力により警報する警報部と、警報部の実行の可否を制御する制御部材とを備え、発電部材と制御部材のいずれか一方を出入口や窓等の戸の開放時に変位する変位部に、他方を前記戸の開放により変位部と乖離する周辺部に設け、戸の開放により制御部材が警報部を実行させる。
【0013】
この手段では、出入口や窓等の戸の開放にともなって変位部が変位することに起因して、制御部材は発電部材の衝突部材を圧電素子に衝突させる。この自己発電の開始により、発電された電力を受けた警報部では警報が実行される。これにより戸が開放されたことが警報される。戸の開放時に変位する変位部としては、戸のノブ、戸の錠、ドアクローザ等である。周辺部は、戸片、錠の周囲、戸枠等である。
【0014】
また、請求項4では、圧電素子と衝突部材を具備し衝突部材が圧電素子に衝突して発電する発電部材と、発電された電力により警報する警報部と、警報部の実行の可否を制御する制御部材とを備え、発電部材と制御部材のいずれか一方を移動される可能性を有する対象物に、他方を前記対象物の移動により対象物と乖離する周辺部に設け、対象物の移動により制御部材が警報部を実行させる。
【0015】
この手段では、対象物が盗みや略奪等の盗難により移動されることに起因して、制御部材は発電部材の衝突部材を圧電素子に衝突させる。この自己発電の開始により、発電された電力を受けた警報部では警報が実行される。これにより対象物が移動されたことが警報される。対象物としては、金庫、CD(現金自動支払機)、ATM(現金自動預入支払機)、宝石箱、絵画、調度品等であり、周辺部は床、壁や周辺の家具等である。
【0016】
また、請求項5では、圧電素子と衝突部材を具備し衝突部材が圧電素子に衝突して発電する発電部材と、発電された電力により警報する警報部と、塀や壁等の近傍に設けられ発電部材に直接的または間接的に付設される線状部材とを備え、線状部材にかかる張力の変化により発電部材が変位して発電する。
【0017】
この手段では、線状部材に掛かっていた張力が、引っ張られることで変化すると、線状部材が直接的または間接的に付設されている発電部材も引っ張られ、衝突部材が圧電素子に衝突する。この自己発電の開始により、発電された電力を受けた警報部では警報が実行される。線状部材は、塀や壁等の近傍に設けられているため、壁や塀に近づくまたは上ろうとする動作により、接触されて張力に変化が生じる。これにより塀や壁への侵入者の接近が警報される。塀や壁の他に、フェンス、垣根等に線状部材を設けても良い。
【0018】
また、請求項6では、請求項1から5のいずれかに記載の防犯装置において、発電部材には、圧電素子と衝突部材を収納するハウジングと、弾性を有するとともにハウジングに取り付けられて衝突部材が圧電素子への衝突を繰り返すようハウジングを振動させる弾性部材とが備えられることを特徴とする。
【0019】
この手段では、弾性部材の弾性によりハウジングや弾性部材に外力が加えられると振動状態に入り、圧電素子への衝突部材の衝突が繰り返され発電が連続して発生する。これにより、大きな電力を発電部材に発生させることができる。
【0020】
また、請求項7では、請求項6記載の防犯装置において、弾性部材はバネ定数に方向性を有する弾性体からなり、弾性部材の最も小さいバネ定数の方向を、衝突部材が圧電素子に衝突する方向と一致させるようハウジングに取り付けられることを特徴とする。
【0021】
この手段では、弾性部材は、衝突部材が圧電素子に衝突する方向に最も変位しやすく、その他の方向へは変位しにくくなる。そのため、圧電素子への衝突部材の衝突を妨げる動きが抑制されるとともに、圧電素子へ衝突部材が衝突する方向への動きに転換されやすくなる。
【0022】
また、請求項8では、請求項6記載の防犯装置において、弾性部材は伸縮性を有する弾性体からなり、弾性部材はハウジングを挟むように設けられ、弾性部材の伸縮により衝突部材が圧電素子への衝突を繰り返すよう振動することを特徴とする。
【0023】
この手段では、一度外力として圧力や振動が加えられると、弾性部材の弾性による伸縮で弾性部材に挟まれたハウジングが振動状態に入り、圧電素子への衝突部材の衝突が繰り返され発電が連続して発生する。またハウジングが弾性部材に挟まれているために、その振動方向が規制される。
【0024】
また、請求項9では、請求項8記載の防犯装置において、弾性部材はその伸縮方向が衝突部材の圧電素子への衝突方向と一致するようハウジングの対向する両端に取り付けられることを特徴とする。
【0025】
この手段では、ハウジングを挟んで弾性部材が伸縮して振動することにより、衝突部材の衝突方向への移動が促進される。
【0026】
また、請求項10では、請求項2から9のいずれかに記載の防犯装置において、発電部材と制御部材との間には磁力が形成され、制御部材は発電部材との乖離で生じる磁力の変化で発電部材を振動させて警報部を実行させることを特徴とする。
【0027】
この手段では、発電部材と制御部材は、磁性材料や磁性層または磁石が設けられて、磁力が形成される。発電部材と制御部材との乖離により、磁力の吸引力の変化で発電部材が引っ張られたり、あるいは磁力の反発力の変化で発電部材が押されたりすることで、発電部材全体の振動動作が開始され、自己発電が行われる。
【0028】
また、請求項11では、請求項2から9のいずれかに記載の防犯装置において、発電部材と制御部材とが係合し、制御部材は発電部材との乖離で生じる係合の解除で発電部材を振動させて警報部を実行させることを特徴とする。
【0029】
この手段では、発電部材と制御部材は、発電部材全体の振動動作を抑制するよう係合しており、発電部材と制御部材との乖離によって係合が解除される際に発電部材が引っ張られ、発電部材全体の振動動作が開始されて、自己発電が行われる。
【0030】
また、請求項12では、請求項2から9のいずれかに記載の防犯装置において、衝突部材と制御部材との間に磁力が形成され、制御部材は衝突部材との乖離で生じる磁力の変化で衝突部材を圧電素子に衝突させて警報部を実行させることを特徴とする。
【0031】
この手段では、衝突部材と制御部材は、磁性材料や磁性層または磁石が設けられて、磁力が形成される。衝突部材と制御部材との乖離により、磁力の吸引力の変化で衝突部材が引っ張られたり、あるいは磁力の反発力の変化で衝突部材が押されたりすることで、衝突部材の圧電素子への衝突動作が開始され、自己発電が行われる。
【0032】
また、上記課題を解決するために、本発明の防犯システムでは次のような手段を採用する。
【0033】
すなわち、請求項13では、請求項1から12のいずれかに記載の防犯装置と、防犯装置と離間して設けられる検出装置とが備えられ、防犯装置が検出装置に信号を発信することで第1の警報を行い、検出装置では前記信号を受信して第2の警報を実行する。
【0034】
この手段では、防犯装置は、自己発電した電力で信号を発信することにより第1の警報を実行し、まず離間した場所に設けられた検出装置に知らせる。そして、検出装置では、さらに近傍や遠隔に通知することで第2の警報を実行する。すなわち、防犯装置は検出装置を介して警報を行う。検出装置の実行する第2の警報とは、音や光や音声等の発生、信号(電話や電子メールも含む)の発信等により知らせることを指している。そして、検出装置は、1または複数の防犯装置からの信号を受信する。
【0035】
また、請求項14では、請求項13記載の防犯システムにおいて、検出装置は外部にネットワークを介して通知することで第2の警報を実行することを特徴とする。
【0036】
この手段では、検出装置が防犯装置から信号を受信すると、ネットワークとして公衆回線(移動体通信も含む)や専用回線等の様々な通信手段から選択された手段により、外部に居る人や外部の機関に連絡することで、第2の警報が実行される。外部としては、例えば警察、警備会社、被害者の緊急連絡先等である。
【0037】
また、請求項15では、請求項13または14記載の防犯システムにおいて、検出装置は第2の警報の実行の可否を外部制御されることを特徴とする。
【0038】
この手段では、防犯装置から信号が発信されても、この信号に基づいて検出装置が第2の警報を実行するか否かが外部から制御される。この外部制御は、防犯装置からの信号受信の可否を制御する場合と、防犯装置から信号を受信した後の第2の警報実行の可否を制御する場合とがある。
【0039】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の実施の形態(1)として、防犯装置及び防犯システムについて図面に基づいて説明する。図1は実施の形態(1)の防犯システムの説明図、図2は実施の形態(1)の防犯装置の側方からみた断面図、図3は実施の形態(1)の防犯装置の発電部材の断面図、図4は実施の形態(1)の防犯システムの回路のブロック図、図5、図6は実施の形態(1)の防犯装置の回路図、図7、図8は実施の形態(1)の応用例の説明図である。
【0040】
実施の形態(1)の防犯装置2は、圧電素子21と衝突部材22を具備し衝突部材22が圧電素子21に衝突して発電する発電部材20を備え、防備を要する箇所に発生する変動を検知して、前記発電部材20で発電する電力により警報を行う。
【0041】
実施の形態(1)の防犯装置2では、警報を行う警報部と、警報部の実行の可否を制御する制御部材60とを備えている。実施の形態(1)では、警報部は、第1の警報として発電部材20で発生した電力により信号を発信する発信部32である。防犯システム1では、この防犯装置2と、防犯装置2からの信号を受信して第2の警報を実行する検出装置5とが備えられている。防犯装置2から発信される信号は空中を伝搬する信号であり、ここでは無線信号(電波信号)であるとするがその他に超音波信号、光信号、赤外線信号、音波信号等でもよい。
【0042】
防犯装置2と検出装置5とを備えた防犯システムの構成としては、3通りの形態が考えられる。1つめは、防犯装置2の警報部が発電部材20で発生した電力により音や光、音声等を発して第1の警報を実行する場合、すなわち防犯装置2が信号を発信しないため検出装置5では何も実行しない(第2の警報を行わない)場合である。2つめは、防犯装置2の発電部材20で発生した電力により第1の警報の実行として信号を発信して、受信した検出装置5が音や光、音声等を発したり外部へ通報したりして第2の警報を実行する場合である。3つめは、防犯装置2の警報部が発電部材20で発生した電力により、第1の警報として音や光、音声等を発するとともに信号を発信して、受信した検出装置5でも音や光、音声等を発したり外部へ通報したりして第2の警報を実行する場合である。実施の形態(1)では、2つめの場合を説明するが、その他の場合を適用してもよい。
【0043】
実施の形態(1)の防犯装置2では、発電部材20と制御部材60との間に磁力が形成されており、平常時には、発電部材20と制御部材60が磁力により吸引しあって、発電部材20の発電が生じない。そして、侵入に伴う動作で制御部材60との間の磁力がなくなることにより発電が開始されて、警報部である発信部32が信号を発信するよう構成されている。
【0044】
図1に示すように防犯装置2では、発電部材20と制御部材60のいずれか一方を出入口や窓等の戸91に、他方を前記戸91の開放により戸91と乖離する周辺部92に設けている。戸91は、開き戸の扉、引き戸の戸片、窓ガラス、雨戸、金庫や容器の扉、蓋等の、侵入者により開放される可能性がある戸ならいずれでもよい。周辺部92は、戸91が開放されたときに、その戸91と乖離する部位であれば任意に選ぶことができる。図1では、開閉の妨げにならず、かつ屋外から視認されにくい部位として、制御部材60を窓のガラス戸911の、屋内側の下端に取り付け、発電部材20をガラス戸911の屋内側の戸枠部分に取り付けている状態を図示している。この戸枠部分は不動であるため、ガラス戸911が開放されると発電部材20と制御部材60は乖離する。
【0045】
検出装置5は、防犯装置2と離間して設置することができ、侵入者から発見されにくい場所や、検出装置5に電力を供給しやすい場所、管理しやすい場所、音や光等の警報が実行されたときに気づかれやすい場所等の任意の場所に設置される。具体的には、例えば一戸建ての家の場合には居間や台所等、ビル等の建物の場合には管理事務所等に設けられるが、これに限定されない。また、この検出装置5は、1台で1または複数の防犯装置2からの信号を受信することができる。複数の防犯装置2から信号を受信する場合には、それぞれの信号には識別情報が含まれており、どこに配置された防犯装置2から信号が発信されたかが判別できる。検出装置5が実行する第2の警報としては、近傍の周囲に知らせる場合と、遠隔の外部に知らせる場合とがある。周囲に知らせる警報としては、音(サイレン等)や音声(威嚇の音声や、在宅を装う音声等)、光等がある。外部に知らせる警報としては、ネットワーク53を介して警察や警備会社、また居住者の携帯電話や緊急連絡先等への通報がある。ネットワーク53としては、公衆回線(移動体通信も含む)、専用回線等の様々な通信手段を含んでおり、電話による通報の他、インターネットや電子メールで通報してもよい。ここでは、周囲と外部の双方に警報を実行するものとして説明するが、いずれか一方で構成してもよい。
【0046】
また、この検出装置5は、第2の警報の実行の可否を外部制御される。外部制御は検出装置5に対するリモコン操作で行われる。検出装置5に電話をかける(電子メールでもよい)ことで操作してもよい。防犯装置2では、戸91が開放される度に、第1の警報として発信部32から信号を発信する。そのため、侵入者による戸91の開放だけでなく、居住者が戸91を開放した場合も信号が発信されるので、検出装置5側で第2の警報の実行の可否を制御することにより、侵入者による動作のときのみ、第2の警報を実行するように構成している。この制御は、防犯装置2からの信号受信の可否を制御する場合と、防犯装置2から信号を受信した後の警報実行の可否を制御する場合とがあるが、ここでは後者の場合であるとして説明する。これにより例えば、防犯装置5が玄関の戸に設置されている場合には、居住者が外出直後、家の外から検出装置5にリモコン操作することで、検出装置5は第2の警報を実行するよう設定され、居住者の帰宅直前に家の外から検出装置5にリモコンを操作することで、検出装置5は第2の警報を実行しないように設定される。
【0047】
防犯装置2の構成図の一例を図2に示すが、図示した配置や形状に限定するものではない。まず発電部材20は、ケース40に収容されており、ケース40は図示されていない適切な手段(接着剤、両面テープ、ねじ止め等)で周辺部92に取り付けられている。また、制御部材60は磁石61を備え、この磁石61が図示していない適切な手段(接着剤、両面テープ、ねじ止め等)で戸91に取り付けられている。ケース40は、透磁性を有する素材からなっておりその形状は任意であるが、この実施の形態(1)では直方体に形成したものを図示している。このケース40は保護用に設けたものであるため省略してもよい。
【0048】
発電部材20には、圧電素子21と衝突部材22を収納するハウジング23と、ハウジング23を支持するための基部41と、弾性を有しハウジング23と基部41とを連結するとともに、衝突部材22が圧電素子21への衝突を繰り返すようハウジング23を振動させる弾性部材42とが備えられる。ケース40の底面が基部41を兼用している。磁石61と対向する発電部材20の側面202には、磁性層201として磁性の金属板が貼り付けられている。磁性層201としては金属板に替えて磁性膜を形成したり磁石を貼り付けたりしてもよい。この磁性層201と磁石61により、発電部材20と制御部材60との間に、磁力による吸引力が作用するように構成している。基部41には弾性部材42が上方に突出するように取り付けられ、この弾性部材42により発電部材20が基部41に連結されている。ハウジング23には発信部32を含む回路部30が併設されている。弾性部材42は弾性を有しており、磁石61が発電部材20に近接しているときには、磁石61に発電部材20の磁性層201が吸引され、発電部材20全体が磁石61側に傾倒した状態(弾性変形しバランスが崩れた状態)を維持する。この状態では、衝突部材22は圧電素子21に当接しているだけで歪を与えないので発電はなされない。そして、磁石61が発電部材20から離れて磁性層201に作用していた吸引力が解除されると、弾性部材42は傾倒した状態から復帰しようとしてその弾性により発電部材20を振動させ、衝突部材22の圧電素子21への衝突、発電を開始させる。なお、ケース40が省略されている場合では、戸91が閉まり磁石61が発電部材20に近接しているときに、弾性部材42が中立の状態で吸引しあう位置関係としてもよい。
【0049】
各部の構成についてさらに説明する。まず発電部材20の構成を、図3を用いて説明する。箱形のハウジング23の内部の相対する壁側にそれぞれ取り付けた圧電素子21に、ハウジング23の内部で転動する衝突部材22が衝突するように構成されている。衝突部材22はボールからなっている。圧電素子21は、PZT系の2枚の板形の圧電セラミックス板211、212を分極が互いに逆になるように接合することにより、直列に接続された発電構成として分極による打ち消しが防止されて発電性能が高められるようになっている。また、圧電素子21は、板形のクッション材25の中央部分または両端部に接着剤24(接着以外の固着方法でもよい)で部分的に接着され、クッション材25は接着剤24でハウジング23に固定されている。従って、圧電セラミックス板211、212の振動が継続されて発電性能が高められるとともに、衝突部材22の衝突の衝撃から圧電素子21が保護される。そして、圧電素子21の表裏面に形成された膜状の電極(図示されていない)には、リード線261〜264がそれぞれ接続されて回路部30に引き出される。また、圧電素子21の表面(衝突部材22が衝突する面)には衝突部材22の衝撃から圧電素子21を保護する薄板形のプロテクタ27が固着されている。また、相対する圧電素子21の間には、衝突部材22の転動移動の方向を抑制して正確に圧電素子21のプロテクタ27が固着された部分に衝突するように案内するガイド28が設けられている。ガイド28としてここでは筒状のガイドを示しているが、仕切り板でもよい。
【0050】
各部の素材としては、まず圧電セラミックス板211、212には、チタンジルコン酸亜鉛系の素材が好適であるがこれに限定されるものではない。また、この圧電セラミックス板211、212は、振動を長く持続してより多くの発電を得るために、できるだけ硬くQ値が高い物の方が望ましい。具体的にはQ値は1000以上が好ましく、さらにはQ値が2000以上のものであることがより好ましい。クッション材25の素材としては、合成樹脂材、ゴム材、あるいはこれらをスポンジ状にした軟質材料が適しているが、具体的には、発泡ポリエチレン等が好適である。衝突部材22の素材としては、その圧電素子21を破壊しない程度に重量が重い方が発電効率がよく、具体的にはタングステンや鉄等が好適である。また、プロテクタ27の素材としては、硬い金属あるいは合成樹脂等が適しており、具体的にはリン青銅やステンレス等が好適で、加工性の良いリン青銅が使いやすい。
【0051】
なお、発電部材20の構成及び圧電素子21の発電のさせ方は、上述に限定されるものではない。この実施の形態(1)では、発電部材20の圧電素子21が対向した2箇所に設けられ、衝突部材22が圧電素子21、21間で往復運動するように構成されているが、圧電素子21を1箇所または3箇所以上設けてもよい。また、例えば、本発明者が特開2001−145375号公報に示した2つの衝突部材を用いる構成や、衝突部材をバネ材で吊り下げる構成等も適用できる。また、単層の圧電セラミックス板211にこれと歪み変形量が釣り合うよう厚み調整された金属板を貼り合わせて、金属板側から衝突部材22を衝突させて発電する構成を適用してもよい。
【0052】
次に、弾性部材42について図2を用いてさらに説明する。弾性部材42は、その両端がハウジング23及び基部41とに適切な手段(接着や溶着等)により固定されている。また、弾性部材42はバネ定数に方向性を有する弾性体からなっており、弾性部材42が有するバネ定数の中で最も小さいバネ定数の方向を、衝突部材22が圧電素子21に衝突する方向(以降、衝突方向と記載する)と一致させるよう発電部材20に取り付けられている。すなわち、弾性部材42が有するX、Y、Z方向のバネ定数のうち、最も小さいバネ定数を有する方向をX方向とすると、図2中に示すようにこの矢印X方向を、衝突方向(図2中の矢印W方向)と一致するように弾性部材42をハウジング23に取り付けている。なお、図2の図中では、ハウジング23の下方を弾性部材42で連結しているが、弾性部材42の最も小さいバネ定数が衝突方向と一致するよう取り付けることができれば、弾性部材42を発電部材20の側方やその他の位置と連結してもよい。
【0053】
また、弾性部材42の衝突方向と一致する方向のバネ定数は、発電部材20の振動の周期をできるだけ小さくするものが選択されている。発電部材20の振動の周期を小さくすることによって、単位時間あたりの圧電素子21への衝突部材22の衝突回数を増加させ、全体としての発電量を増加させることができる。周期を小さくするには、発電部材20の質量を小さく、バネ定数を大きくすることが求められるが、制御部材60が乖離して磁力による吸引がなくなったときを想定してできるだけ振動の周期を小さくするバネ定数が選ばれる。また、実施の形態(1)ではハウジング23全体及び弾性部材42の質量に比べて基部41の質量を十分大きくガッチリした構成にすることによっても、寄生振動による振動の減衰を減らすことができる。なお、基部41をケース40の底面としてガッチリと固定せずに、発電部材20と弾性部材42とでできる固有振動と、基部41の固有振動とを共振させるように構成して、寄生振動による振動の減衰を減らしてもよい。
【0054】
実施の形態(1)では、弾性部材42に用いる弾性体として板バネを用いている。板バネはバネ定数に方向性を有する弾性体であり、保有するバネ定数の中で一方向が特に小さなバネ定数を有している。そして、この最も変位し易い方向(X方向)を衝突方向(W方向)に一致させるよう発電部材20に取り付けている。また板バネはX方向のバネ定数に比べて、Y、Z方向のバネ定数が無限大に近い。そのため、磁石61の乖離していく方向がどの方向であっても、弾性部材42に衝突方向に交差するY、Z方向(圧電素子の設けられていないハウジング23の側面に衝突部材22が衝突する方向や、発電部材20が上下方向に変位する方向等)への変位が生じないため、衝突部材22の衝突方向への動きを邪魔する振動を発生しにくい。また、X方向のみが柔らかく変位しやすいため、磁石61がどの方向に乖離しても、X方向への動きに転換されやすい。このように、板バネは衝突方向への振動を発生させ、かつ連続させるのに好適である。
【0055】
弾性部材42には、上述の板バネの他に、ゴム材(シリコンゴム等)やゲル材(熱可逆性エラストマー等)、また発泡材や低ヤング率Ti合金(弾性変形の大きいTi合金)を用いてもよい。これらゴム材やゲル材は、縦横高さの形状を変えることでバネ定数に方向性をもたせたり、バネ定数を変えたりすることができる。また弾性部材42にコイルバネを用いてもよいが、この場合には、衝突部材22が衝突方向のみに移動するよう発電部材20の動きを抑制して発電部材20を支持することが望ましい。
【0056】
次に、図4〜図6を用いて防犯システム1の回路について説明する。図4のブロック図に示すように発電部材20の出力が回路部30に取り出される。回路部30には、発電部材20で発生した交流電力を整流して充電する充電部31と上述の発信部32とが備えられている。そして、第1の警報として発信部32から発信された信号は、検出装置5の受信部51に受信され、警報部52で第2の警報として、音や光による周囲への通知とともに、ネットワーク53を介してあらかじめ設定した外部にも通知する。この警報部52による警報の可否が外部から制御される。また、表示部54では、複数設置された防犯装置2のうち、どの防犯装置2から信号を受信したか表示(ランプの点滅、赤ランプの点灯等)する。
【0057】
回路部30の充電部31には、整流手段311と充電手段312と判定手段313と放電スイッチ手段314とが備えられている。整流手段311は、発電部材20で出力された交流電力を整流して脈流にする手段である。充電手段312は、整流手段311により得られた脈流を直流として充電する手段である。判定手段313は、充電手段312の充電量を圧電素子21の発電のタイミングに応じて間欠的に監視し判定する手段である。この手段では、充電量は監視の際にごく少量消費されるが、間欠的に監視しているので監視による電力の消費を抑え、充電量への影響を低減させている。放電スイッチ手段314は、判定手段313により充電手段312の充電量が発信可能なレベルに達したことが判定された時に、充電手段312の放電を開始させ、後段の発信部32に電力を供給する手段である。
【0058】
発信部32には、通信制御手段321と信号スイッチ手段322と信号発生手段323と放電停止手段324とが備えられている。通信制御手段321は、通信に必要な動作を行う手段であり、この手段は充電部31から電力が供給されることで開始される。この手段では、動作の開始により信号スイッチ手段322をONさせるように働くとともに、発信のためのデータを信号発生手段323に渡す。信号スイッチ手段322は、通信制御手段321によりONされて、信号発生手段323に電力を供給する手段である。信号発生手段323は、通信制御手段321より受け取った発信のためのデータを信号に変換して発信する。放電停止手段324は、充電部31からの電力の供給を停止させるように放電スイッチ手段314を動作させる手段である。この手段は、通信制御手段321が発信のために必要なデータを全て信号発生手段323に渡し終わったら、通信制御手段321により動作させられる。
【0059】
図5、図6を用いてさらに説明する。図5、図6は連続した回路図であり、S点、+点、−点により接続される。整流手段311はダイオードD1〜D6により全波整流の回路が形成されており、発電部材20で出力された交流電力をここで整流し脈流として後段に出力する。発電部材20から取り出された4本のリード線261〜264のうちリード線262、263が結線され、3本のリード線が6個のダイオードD1〜D6に接続されている。なお、ここでは、リード線262、263を結線してダイオードの数を削減する回路を形成しているが、リード線262、263を結線せずに8個のダイオードに接続して全波整流の回路を形成してもよい。
【0060】
充電手段312は、コンデンサC1を備えている。このコンデンサは充電電池に代替してもよい。整流手段311で整流された脈流は、コンデンサC1に直流として逐次充電され、衝突部材22が圧電素子21に衝突して発電を繰り返すたびにコンデンサC1の両端の電圧が高くなる。
【0061】
放電スイッチ手段314には、自己保持型電流スイッチが用いられている。実施の形態(1)では、相補トランジスタを用いており、PNPトランジスタTr1とNPNトランジスタTr2とを組み合わせている。この放電スイッチ手段314では、b点に、c点の電圧より約0.6V(Tr1により決まる値)低い電圧が印加されると、Tr1がONとなりほぼ同時にTr2がONとなる。このように放電スイッチ手段314がON状態となると、c点とd点の間はきわめて低いインピーダンスとなる。そして、充電手段312のコンデンサC1に貯めた電力を放電し、きわめて少ないロスで通信制御手段321に供給する。そして、このON状態は、自己保持状態となり放電停止するまで継続する。
【0062】
判定手段313は、コンデンサC2、C3と抵抗R1、R2を備えている。C3は誤動作防止用に設けたものである。コンデンサC2と抵抗R1は、圧電素子21からの出力である図5中に示すa点と放電スイッチ手段314の図6中に示すb点との間に設けられている。そして、この時定数で充電量の判定の際にb点に電圧を印加する時間を決めている。a点には衝突部材22が圧電素子21に衝突する度に交流電力が発生するが、この電圧は、コンデンサC1の両端の電圧にダイオードD6の順方向の電圧を加えた値である。そして、コンデンサC1が充電により電圧上昇するとともにa点の交流電圧も上昇する。つまり、a点ではコンデンサC1両端の直流電圧にほぼ比例した交流電圧が、衝突部材22が衝突するたびに、すなわち間欠的に得られる。そしてこのa点での交流電圧は、抵抗R1とコンデンサC2の時定数で決めたごく短時間だけb点に印加される。b点の電圧は抵抗R1、R2の分配比により決められ、上述したようにb点の電圧がc点の電圧よりも約0.6V(Tr1により決まる値)低い電圧の値を超えると放電スイッチ手段314がONとなる。ここでは、b点の電圧は「c点の電圧×(1−R2/(R1+R2))」で示されるため、このb点の電圧がc点の電圧よりも約0.6V低い電圧「c点の電圧−約0.6V」と等しくなった時が判定の閾値となり、これをもって充電量のレベルを判定する。そのため、R1とR2を調整することで放電を開始させる充電量を発信可能なレベルに調整することができる。このレベルは発信する信号に応じて任意に設定される。なお、ここではリード線264側にa点を設けているが、リード線261側や、接続されたリード線262、263側に設けてもよい。また、ここでは2つの圧電素子のうち、一方の圧電素子21が発電するタイミング毎に判定を行うよう構成しているが、双方の圧電素子21が発電するタイミングで判定を行ったり、あるいは、圧電素子21が発電するタイミングのn回毎(nは任意の数)に判定を行ったりするよう構成してもよい。
【0063】
通信制御手段321は、通信制御回路3211とコンデンサC7と抵抗R8とFET1を備えている。コンデンサC7は動作安定用に設けたものである。抵抗R8とFET1は通信制御回路3211と信号スイッチ手段322を低消費電力でインターフェースするためのレベル変換に設けたものである。充電部31からの放電により通信制御回路3211に電力が供給されると、通信制御回路3211の内部で発信に必要な手順が実行される。なお、通信制御回路3211は消費電力の小さいものである。
【0064】
信号スイッチ手段322は、PNPトランジスタTr4と抵抗R6、R7とコンデンサC6を備えている。信号発生回路3231が比較的大電力を必要とするために、この信号スイッチ手段322では大電力用トランジスタスイッチTr4を使って、信号発生回路3231に電力を供給するよう構成している。信号スイッチ手段322では、通信制御回路3211からの発信開始の指令がFET1を通って、抵抗R7を通ってトランジスタTr4をONさせると、信号発生手段323で発信を開始させるよう動作する。
【0065】
信号発生手段323は、信号発生回路3231とアンテナ3232を備えており、信号スイッチ手段322により電力が供給されると、通信制御回路3211から受け取った発信のためのデータを無線信号に変換してアンテナ3232から発信する。
【0066】
放電停止手段324は、PNPトランジスタTr3と抵抗R4、R5とコンデンサC4、C5とを備えている。コンデンサC4、C5は、誤動作防止用に設けている。この手段では、通信制御回路3211が発信のために必要なデータを信号発生回路3231に送出し終えたら、通信制御回路3211から抵抗R4を通してトランジスタTr3をONさせる信号を出力する。トランジスタTr3がONとなると放電スイッチ手段314の自己保持は解除となり、コンデンサC1に貯まっていた電力の放電は停止して、発信動作は終了する。
【0067】
このように構成された実施の形態(1)の防犯システム1の動作について説明する。ここでは具体的な一例として防犯装置2が一戸建て住宅の玄関と各部屋の窓の戸に設置され、検出装置5がその住宅の居間に設置される場合を例示する。
【0068】
まず、居住者は、侵入者が開放する可能性を有する複数の戸及びその周辺部に防犯装置2を取り付ける。防犯装置2は電力線の配線が不要であるため、コンセントから遠い場所や、配線しにくい場所であっても手軽に取り付けることができる。そして、そのうちの1つとして図1に示すように、窓の戸91に防犯装置2の制御部材60の磁石61が取り付けられ、この戸91の周辺部92に、この戸91が閉じられているときに磁石61と対向するよう発電部材20を有したケース40が取り付けられる。各防犯装置2から発信される信号には、それぞれを識別するための識別情報が含まれており、1台の検出装置5で複数の信号を受信し、識別して検出する。また、検出装置5の表示部54では、防犯装置2から信号を受信すると、例えば「玄関」「居間の窓」「寝室の窓」等の記載に対応するランプが点灯するようにして、侵入場所がわかるようにあらかじめ設定されている。
【0069】
居住者が在宅中には、検出装置5はリモコン操作により、玄関や窓の戸91が開放されて防犯装置2からの信号を受信しても、第2の警報を実行しないように設定されている。そして、居住者が外出する際には、外出直後にリモコン操作により検出装置5が警報を実行するように設定される。もちろん、居住者の行動で防犯装置2が信号を発信する心配がない場合には、常に検出装置5の第2の警報を実行するよう設定してよい。
【0070】
そして、もし留守中に居間の窓が侵入者により解放されると、磁石61が発電部材20から乖離する。これにより、それまで制御部材60の磁石61に引き付けられていた発電部材20が磁力から開放されると、図2に示すように弾性部材42の弾性により振動を開始する。そして、この振動により発電部材20の衝突部材22が圧電素子21に衝突し自己発電する。さらに弾性部材50の弾性により発電部材20が振動状態に入り、衝突部材22が転動して圧電素子21への衝突を繰り返す。すなわち磁石61が発電部材20から乖離すると、発電部材20が連続して振動し、これにより発電部材20では連続して発電する。
【0071】
そして、発生した電力は、発電部材20から回路部30に入力される。回路部30では、圧電素子21が発電するたびにその出力から交流電圧を取り出し、これを判定手段313に用いて充電量を判定している。このような充電量の間欠的な監視、判定は、充電量が増加するタイミングで効率よく判定される。その上、判定のために無駄な電力を消費することが大幅に抑制されるので、発信に必要な電力を素早く充電して発信部32に供給できる。これにより戸91が開放されたタイミングで発信部32から信号が発信される。
【0072】
発信部32から発信された信号は第1の警報として、検出装置5の受信部51に受信され、警報部52で第2の警報が実行される。第2の警報では、音や光、あるいは音声で侵入者を威嚇したり在宅を装ったりして、侵入者の退散を促す。また、ネットワーク53による電話通報で、警察に事件の発生を速やかに伝え、また外出中の居住者にも連絡する。
【0073】
このように 実施の形態(1)では、防犯装置2が自己発電するため、防犯装置2への電力の供給手段に煩わされることなく、防犯を必要とする任意の場所に取り付けることができる。また、電力配線がなく小型であるため一見して防犯装置と気づかれにくく保安性を高められる。また、いつ侵入してくるかわからない侵入者に備えて、可能性のある場所全てに設置しても、防犯装置2は待機中も作動中も電気代がかからないため、経済的な負担が大幅に軽減される。
【0074】
なお、防犯装置2は、図1に図示した配置とは逆に、発電部材20をガラス戸911に設け、制御部材60を周辺部92に設けてもよい。また、図1に示したようにガラス戸911、912による引き違い戸のような場合には、一方の戸に対して、他方の戸を周辺部とみなしてもよい。この場合には、ガラス戸911、912の一方もしくは双方が開けられたときに、これらの交差する側の一辺93、93どうしが乖離するため、一辺93、93のいずれか一方に発電部材20を他方に制御部材60を設けることが望ましい。引き違い戸だけでなく、観音開きされる戸にも同様に適用できる。
【0075】
図7、図8に実施の形態(1)の防犯装置2の応用例を示す。図7は、戸91として玄関の開き戸の扉913(ドア)に防犯装置2を取り付けた状態を示している。この図では、制御部材60である磁石61を扉913に取り付け、発電部材20を扉913の上方の戸枠を周辺部92として取り付けている。板バネからなる弾性部材42の一端が発電部材20のハウジング23の側面202に、他端が周辺部92に付設され、ハウジング23が扉913側に弾性部材42によってぶら下がった状態になっている。弾性部材42の板バネは、鋼材であるため磁性を有するので、ここでは発電部材20への磁性層201の付設は省略されている。この構成では、扉913が閉じられているときには、磁石61と発電部材20側の弾性部材42が磁力により吸引している。そして、扉913が開放されると、磁石61に発電部材20が吸引されたまま弾性部材42が変形し始め、ある角度以上に扉913が開放されると磁石61が乖離し、反力で発電部材20が振動状態となる。これにより、発電部材20の自己発電が行われ、警報として発信部32から信号が発信される。
【0076】
図8は、窓の戸91の建具の内部に、防犯装置2を取り付けた状態を示している。戸91は、アルミサッシ等の建具で、そのフレーム部分の内部空間に発電部材20や制御部材60を収納し、取り付けている。図8に示すように戸91はガラス戸911、912からなる引き違い戸で、お互いが交差する側の一辺93、93付近で、ガラス戸911に発電部材20を、ガラス戸912に制御部材60の磁石61を収納している。磁石61と対向する発電部材20の側面202には、磁性層201が形成され、制御部材60との間で吸引力が作用している。そして、ガラス戸911、912の一方または双方が開放されると、磁石61が発電部材20から離れ始め、その方向に弾性部材42が変形し始めるが、磁力が作用しなくなるまで磁石61が乖離すると、反力で発電部材20が振動状態となる。これにより、発電部材20の自己発電が行われ、警報として発信部32から信号が発信される。この形態では、あらかじめ戸91に防犯装置2を組み込んだ商品として構成することができる。
【0077】
次に本発明の実施の形態(2)の防犯装置について図面に基づいて説明する。図9は実施の形態(2)の防犯装置の説明図である。実施の形態(1)と同様の説明には同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0078】
実施の形態(2)の防犯装置2は、実施の形態(1)の発電部材20の側面に形成された磁性層201に替えて、発電部材20の衝突部材22を磁性材料で形成していることを特徴としている。
【0079】
また、この実施の形態(2)では、圧電素子21の発電効率が高く、衝突部材22による衝突が繰り返されなくても、発信部32から信号を発信することができるため、弾性部材42を省略している。
【0080】
図9では、図8と同様に、窓の戸91の建具の内部に、防犯装置2を取り付けた状態を示している。お互いが交差する側の一辺93、93付近で、ガラス戸911に発電部材20を、ガラス戸912に制御部材60の磁石61を収納している。発電部材20のハウジング23は、ガラス戸912が開放時に移動する側に上方が傾斜した直方体に形成されている。ハウジング23の内部には、底面側に圧電素子21が配置され、戸91が閉じられた状態では、圧電素子21上に衝突部材22が載っている。この状態では圧電素子21が歪まないため発電されない。そして、ガラス戸911とガラス戸912の一方または双方が開放されたときには、磁石61からなる制御部材60が発電部材20から離れ始めると、磁性材料からなる衝突部材22がハウジング23の傾斜に沿って、制御部材60の移動する方向に移動しながら上昇し、磁力が作用しなくなるまで制御部材60が乖離すると、衝突部材22が圧電素子21に落下する。これにより圧電素子21が自己発電し、第1の警報として発信部32から信号が発信される。この形態では、あらかじめ戸91に防犯装置2を組み込んだ商品として構成することができる。
【0081】
実施の形態(2)では、実施の形態(1)と比べて部品点数を削減するという効果が得られる。その他の作用、効果は実施の形態(1)と同様である。
【0082】
次に本発明の実施の形態(3)の防犯装置について図面に基づいて説明する。図10は実施の形態(3)の防犯装置の説明図、図11は実施の形態(3)の応用例の説明図である。実施の形態(1)と同様の説明には同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0083】
実施の形態(1)(2)では、防犯装置2を戸91と周辺部92に取り付けた例を示したが、実施の形態(3)の防犯装置2は、発電部材20と制御部材60のいずれか一方を出入口や窓等の戸91の開放時に変位する変位部97に、他方を前記戸の開放により変位部97と乖離する周辺部98に設けたことを特徴としている。その他の構成は実施の形態(1)の図3〜図6に示した構成と同様であるとするが、実施の形態(2)を適用してもよい。
【0084】
図10では、変位部97として、玄関の開き戸の扉913(ドア)のノブ971に防犯装置2を取り付けた状態を示している。この図では、変位部97を扉913の内側のノブ971とし、制御部材60である磁石61をノブ971の端部に取り付けている。また、変位部97と乖離する周辺部98を扉913とし、扉913の内側に突設された基部41に弾性部材42の一端を固定し、弾性部材42の他端にハウジング23を固定して、発電部材20を扉913に取り付けている。弾性部材42は板バネからなるため磁性を有しており、発電部材20の磁性層は省略されている。そして、弾性部材42を介してハウジング23は磁石61と対向し、扉913の閉塞時には吸引している。
【0085】
この構成では、戸91の開放時にノブ971が下方に回動されると、ノブ971とともに磁石61も移動する。磁石61が発電部材20から離れ始め、その方向に弾性部材42も変形するが、変形の限界を超えて制御部材60が乖離すると、反力で発電部材20が振動状態となる。これにより、発電部材20の自己発電が行われ、第1の警報として発信部32から信号が発信される。
【0086】
なお、ノブ971の形状は、図10に限定されるものではなく、略々球形のノブでもその他の形状でもよい。また、変位部97としてはノブ971の他に、扉を開けるときの開錠で回転変位する錠7の内部や、扉の開閉とともに2つ折れの部材が開閉するドアクローザ等にも適用できる。図11にシリンダ錠71に適用した応用例を示す。シリンダ錠71の詳細な機構は図示を省略している。シリンダ錠71は内筒972と外筒981を有しており、鍵を差し込んで扉913を開放する際には内筒が回転する。そのため、図11では、シリンダ錠71の内筒972を変位部97とし、外筒981を周辺部98としている。内筒972の外周に制御部材60となる磁石61を突設し、内筒972と外筒981との界面に設けられた空間982に、発電部材20が位置するように小型の発電部材20が外筒981に取り付けられている。鍵が閉まった状態では、磁石61に板バネからなる弾性部材42を介してハウジング23が対向している。鍵を開ける際に、内筒972が回転すると、制御部材60に発電部材20が吸引されたまま弾性部材42が変形し始め、磁石61が乖離すると、反力で発電部材20が振動状態となる。これにより、発電部材20の自己発電が行われ、第1の警報として発信部32(図11では省略)から信号が発信される。この構成では、あらかじめ防犯装置2を組み込んだ錠7として商品を構成することができる。
【0087】
実施の形態(3)に示したように、防犯装置2は戸91だけでなく、戸91が開放する際に変位する任意の部位に取り付けることができる。また、小型化することで、戸91だけでなく、戸91に関連する部材にあらかじめ組み込んだ商品として構成することができる。その他の作用、効果は実施の形態(1)と同様である。
【0088】
次に本発明の実施の形態(4)の防犯装置について図面に基づいて説明する。図12は実施の形態(4)の防犯装置の説明図である。実施の形態(1)と同様の説明には同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0089】
実施の形態(4)の防犯装置2は、発電部材20と制御部材60のいずれか一方を移動される可能性を有する対象物94に、他方を前記対象物94の移動により対象物94と乖離する周辺部95に設けたことを特徴としている。その他の構成は実施の形態(1)の図2〜図6に示した構成と同様であるとするが、実施の形態(2)を適用してもよい。
【0090】
対象物94は、侵入者に盗まれたり略奪されたりする盗難により移動される可能性を有する物品で、図12では金庫を例示しているが、その他にCD、ATM、宝石箱、絵画、調度品等にも適用できる。そして、この場合の周辺部92は床や壁、隣接する家具、物品等である。このように構成された実施の形態(4)では、侵入者が対象物94を盗もうとして対象物94を動かすことで、発電部材20と制御部材60である磁石61が乖離し、実施の形態(1)と同様の動作によって連続して自己発電し、この電力で発信部32から第1の警報として信号を発信し、検出装置5で第2の警報が実行される。
【0091】
実施の形態(4)に示すように、防犯装置2は戸91に限定されず、盗みや略奪の対象物94にも設置することが可能である。防犯装置2には電力配線がないため、一見して防犯装置と気づかれにくく、金庫のような対象物を略奪しようとする侵入者が電力配線を切断して警報を妨げる心配がない。またもし侵入者が防犯装置2に気づき、発電部材20と制御部材60を引き離すと、その動作でも発電部材20は自己発電することができる。その他の作用、効果は実施の形態(1)と同様である。もちろん実施の形態(1)と組み合わせて、金庫の戸にも防犯装置2を設け、二重に防犯してもよい。
【0092】
次に本発明の実施の形態(5)の防犯装置について図面に基づいて説明する。図13は実施の形態(5)の防犯システムの概念図である。実施の形態(1)と同様の説明には同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0093】
実施の形態(5)の防犯装置2は、実施の形態(1)〜(4)で発電部材20と制御部材60の間に磁力を作用させていたことに替えて、発電部材20と制御部材60とが係合していることを特徴としている。制御部材60として係合手段62が設けられ、係合手段62で引っ掛けられることにより抑制されていた発電部材20の振動動作が、発電部材20と係合手段62の乖離によって、引っ掛かりが外れ係合力の抑制が解除される。その他の構成は実施の形態(1)の図3〜図6の構成と同様である。
【0094】
図13では、戸91を窓のガラス戸911として、その屋内側の下端に発電部材20を取り付け、周辺部92をガラス戸911の屋内側の戸枠として、戸枠の一部に制御部材60である係合手段62を取り付けている状態を図示している。ハウジング23の上面に貫通穴を有した係合受部621が設けられ、係合手段62として、周辺部92に固定されたベース部622から弾性(可撓性でもよい)を有し片持ち梁状で先端が屈曲した係合片部623が突出して設けられている。この係合片部623の先端が係合受部621に引っ掛けられた状態では、発電部材20の自己発電が生じないようにその動作が抑制されている。発電部材20は実施の形態(1)とは異なり、ケース40が省略されている。そして、弾性部材42は、最も変位しやすいX方向が戸91の開放方向と一致するように発電部材20に取り付けられている。
【0095】
このように構成された実施の形態(5)では、図13に示すように戸91が閉じられているときに係合片部623の先端が係合受部621に引っ掛けられ、発電部材20の振動動作が抑制されている。図13では、発電部材20と基部41を連結する弾性部材42が起立した状態を示しているが、弾性部材42が傾倒した状態であってもよい。そして、戸91が開放されると、発電部材20が戸91に伴って徐々に離れていくため、係合手段62により発電部材20は徐々に傾倒を深め、ついには係合片部623の先端がその弾性により係合受部621から外れる。これにより、発電部材20は振動し弾性部材42によって振動が持続され、連続して自己発電する。そして、この電力で発信部32から第1の警報として信号を発信し、検出装置5で第2の警報が実行される。
【0096】
実施の形態(5)に示すように、発電部材20の発電を可能にするか否かを決める制御部材60には、磁力だけでなく係合手段62を用いることが可能であり、磁力が使い難い部位に好適である。なお、係合手段62の形態や構成は、図13に示したものに限定されない。その他の作用、効果は実施の形態(1)と同様である。
【0097】
次に本発明の実施の形態(6)の防犯装置について図面に基づいて説明する。図14は実施の形態(6)の防犯装置の説明図、図15は実施の形態(6)の防犯装置の上方からみた断面図である。実施の形態(1)と同様の説明には同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0098】
実施の形態(6)の防犯装置2は、圧電素子21と衝突部材22を具備し衝突部材22が圧電素子21に衝突して発電する発電部材20と、発電された電力により警報する警報部(発信部32)と、塀や壁等の近傍に設けられ発電部材20に直接的または間接的に付設される線状部材63とを備え、線状部材63にかかる張力の変化により発電部材20が変位して発電する。
【0099】
図14では、防犯装置2を家屋の外周に設けられた塀96の内側に設置し、この塀96に沿って線状部材63を張っている。線状部材63は、侵入者が塀96を乗り越えて侵入した際に接触し、張力の変化を受けることができれば、必ずしも塀96に沿って設けなくてもよい。また、必要に応じて塀の外側に設けても良い。なお、塀96だけでなく、壁、フェンス、垣根等に設けても、地面に張ってもよい。
【0100】
この実施の形態では、制御部材60として、磁石61と線状部材63を含んでいる。ケース40は発電部材20と磁石61を収容し、塀96に適切な手段(接着剤、両面テープ、ねじ止め等)で取り付けられている。発電部材20はケース40の側面を基部41として弾性部材42で連結されている。弾性部材42は、最も変位しやすいX方向が線状部材63に引かれる方向と一致するように発電部材20に取り付けられている。制御部材60は磁石61を備えており、線状部材63の一端631が磁石61に付設され、他端632は塀96に取り付けられた支持部材961に付設されており、線状部材63全体として、弛みなく張力が掛かった状態が維持されている。発電部材20の制御部材60側の側面202には、磁性層201として磁性の金属板が貼り付けられており、通常は磁石61と発電部材20が磁力で吸引している。線状部材63には、細いワイヤやピアノ線等が好適である。また、弾性部材42は、線状部材63が風等で揺れた程度では変形しないバネ定数を備えている。その他の構成は実施の形態(1)の図3〜図6の構成と同様である。
【0101】
このように構成された実施の形態(6)では、図15に示すように、通常は、塀96に沿って線状部材63が張られ、その一端631の磁石61が、発電部材20に磁力により吸引している。すなわち線状部材63は間接的に発電部材20に付設されている。そして、侵入者が塀96を乗り越えた際に線状部材63に触れると、線状部材63の張力が変化して引っ張られ、磁石61を発電部材20から離れる方向に力が作用する。磁石61に引っ張られて発電部材20も傾倒するが、ついには磁石61が完全に発電部材20から乖離する。発電部材20はその反力で振動し、弾性部材42により振動が持続され、実施の形態(1)と同様の動作によって連続して自己発電する。そして、この電力で発信部32から第1の警報として信号を発信し、検出装置5で第2の警報が実行される。
【0102】
実施の形態(6)に示すように、線状部材63を用いることにより、塀や壁等の防犯にも本発明の防犯装置及び防犯システムを適用することが可能となる。その他の作用、効果は実施の形態(1)と同様である。なお、発電部材20の圧電素子21の発電効率が高く、衝突部材22による衝突が繰り返されなくても発信に十分なだけの発電量が得られる場合には、磁石61を省略し制御部材60の線状部材63を直接発電部材20に付設してもよい。
【0103】
次に本発明の実施の形態(7)の防犯装置について図面に基づいて説明する。図16は実施の形態(7)の防犯装置の説明図、図17は実施の形態(7)の応用例の説明図である。実施の形態(1)と同様の説明については同一符号を付し詳細な説明は省略する。
【0104】
実施の形態(7)の防犯装置2は、実施の形態(1)の防犯装置2を応用したもので、弾性部材4が伸縮性を有する弾性体からなり、弾性部材4はハウジング23を挟むように設けられ、弾性部材4の伸縮により衝突部材22が圧電素子21への衝突を繰り返すよう振動することを特徴としている。
【0105】
図16では、窓の戸91に設けられている錠7の近辺に防犯装置2を取り付けた状態を示しており、発電部材20を戸91に設け、制御部材60を周辺部92に設けている。周辺部92としては、戸91の開放に際して戸91と乖離する錠7の一部を選んでいる。戸91はガラス戸911、912からなる引き違い戸で、アルミサッシ等の磁力を透過する材料の建具からなっており、そのフレーム部分の内部空間で錠7と対向する位置に発電部材20を収納し取り付けている。その他の構成は実施の形態(1)の図3〜図6の構成と同様である。
【0106】
発電部材20では、弾性部材42の一端を、ハウジング23の対向する端面231、232に、弾性部材42の伸縮方向(Z方向)と、衝突部材22が圧電素子21に衝突する方向(W方向)とが一致するよう取り付けている。実施の形態(1)では、弾性部材4の曲げを利用していたが、実施の形態(7)では、弾性部材4の伸縮を利用しているので、弾性部材4を伸縮弾性部材421と記載する。この伸縮弾性部材421の他端は、戸911のフレーム部分の内部空間に突出するよう設けられた基部41に取り付けられている。すなわち対向する基部41、41の間にハウジング23は伸縮弾性部材421に挟まれて連結され、錠7が施錠されているときは中立の位置に保たれている。そして、ハウジング23の錠7と対向する側面233には磁性層201として磁石が付設されている。また、ハウジング23の他の面には発信部32も付設されている。
【0107】
錠7としては、クレセント錠70が取り付けられている。クレセント錠70は、一方のガラス戸911の一辺93に取り付けられた台部703と、錠の開閉の際に手でつまむために設けられ台部703に回動自在に取り付けられているツマミ片部701と、ツマミ片部701と一体で錠の開閉の際に後述の受部704にスライドしてはめ込まれる縁片部702と、他方のガラス戸912の一辺93に取り付けられる受部704とを含んでいる。そして、ツマミ片部701の先端で、発電部材20と対向する位置に制御部材60の磁石61が付設されている。この磁石61はツマミ片部701が施錠の位置にあるときに、発電部材20の磁性層201と戸91のフレーム部分を介して対向し、吸引力が作用している。
【0108】
この構成では、戸91の開放に際してクレセント錠70の縁片部702を受部704から外すために、ツマミ片部701を下方に下げると、その先端に取り付けられている磁石61も回動しながら下方に下げられる。すると磁力の変化により、発電部材20の磁性層201が下方に引っ張られ、伸縮弾性部材421の弾性の限界まで下がると磁石61と乖離する。そして、反力で発電部材20が伸縮弾性部材412のZ方向の伸縮により振動状態となる。これにより、発電部材20の自己発電が行われ、第1の警報として発信部32から信号が発信される。
【0109】
実施の形態(7)では、この発電部材20の振動状態は、対向する基部41、41間で上下動するだけであるため、実施の形態(1)の図8と比較して、振動時の変位のために要する空間領域が少なくてすみ、狭い内部空間にでも発電部材20を取り付けることができる。そのため、発電部材20を隠蔽しやすいという効果が得られる。その他の作用、効果は実施の形態(1)と同様である。
【0110】
図17に実施の形態(7)の防犯装置2の応用例を示す。図17は、戸91として玄関の開き戸の扉913(ドア)に防犯装置2を取り付けた状態を示している。この図では、変位部97を扉913の内側のノブ971とし、ノブ971の端部に制御部材60である磁石61を取り付けている。図17ではL字型のノブ971を用いているが、略々球形のノブでもその他の形状でもよい。発電部材20は、基部41、41を面に含んで箱型に形成したケース40内に収納されている。もちろんケース40を省略し基部41を戸91に突設してもよい。この構成では、扉913が閉じられているときには、伸縮発電部材20に設けられた磁性層201はケース40を介して磁石61と対向し、吸引力が作用している。そして、ノブ971が扉913の開放のために下方に下げられると、磁石61も下方に下がり、発電部材20が磁力により下方に引き下げられる。伸縮弾性部材421の弾性の限界まで下がると磁石61と乖離し、反力で発電部材20が振動状態となる。これにより、発電部材20の自己発電が行われ、第1の警報として発信部32から信号が発信される。
【0111】
上述した実施の形態(1)〜(7)の構成は任意に組み合わせて実行することができる。また、実施の形態(1)〜(7)に示したうちの複数の防犯装置5からの信号を、1つの検出装置で検出するようにして、防犯システム1を構成してもよい。
【0112】
【発明の効果】
以上、詳述してきたように本発明の防犯装置及び防犯システムでは、防犯装置が自己発電するため電力線の配線が不要で、従来なら配線が目立つような場所や配線しにくかった場所であっても、防犯が必要な任意の場所に取り付けることが可能となった。また配線により防犯装置を見破られたり、電力線を切断されたりする心配がなく、保安性が向上される。
【0113】
また、防犯装置は侵入者の動作により自己発電し、待機中に電力を消耗することもないので、電気を供給するための維持コストがかからない。そのために、防犯を要する場所に、設置個数を気にせず遠慮なく設置することができ、さらに保安性が向上される。
【0114】
また、防犯装置は簡単な構造であるため、部品コストも削減できる。さらに小型化できるため戸等の内部に隠蔽して取り付けることもでき、防犯装置であることにも気づかれにくいという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態(1)の防犯システムの説明図である。
【図2】 実施の形態(1)の防犯装置の側方からみた断面図である。
【図3】 実施の形態(1)の防犯装置の発電部材の断面図である。
【図4】 実施の形態(1)の防犯システムの回路のブロック図である。
【図5】 実施の形態(1)の防犯装置の回路図である。
【図6】 実施の形態(1)の防犯装置の回路図である。
【図7】 実施の形態(1)の応用例の説明図である。
【図8】 実施の形態(1)の応用例の説明図である。
【図9】 実施の形態(2)の防犯装置の説明図である。
【図10】 実施の形態(3)の防犯装置の説明図である。
【図11】 実施の形態(3)の応用例の説明図である。
【図12】 実施の形態(4)の防犯装置の説明図である。
【図13】 実施の形態(5)の防犯システムの概念図である。
【図14】 実施の形態(6)の防犯装置の説明図である。
【図15】 実施の形態(6)の防犯装置の上方からみた断面図である。
【図16】 実施の形態(7)の防犯装置の説明図である。
【図17】 実施の形態(7)の応用例の説明図である。
【符号の説明】
1 防犯システム
2 防犯装置
20 発電部材
201 磁性層
202 側面
21 圧電素子
211、212 圧電セラミックス板
22 衝突部材
23 ハウジング
231、232 端面
233 側面
24 接着剤
25 クッション材
261〜264 リード線
27 プロテクタ
28 ガイド
30 回路部
31 充電部
32 発信部
40 ケース
41 基部
42 弾性部材
421 伸縮弾性部材
5 検出装置
51 受信部
52 警報部
53 ネットワーク
54 表示部
60 制御部材
61 磁石
62 係合手段
621 係合受部
622 ベース部
623 係合片部
63 線状部材
7 錠
70 クレセント錠
701 ツマミ片部
702 縁片部
703 台部
704 受部
71 シリンダ錠
91 戸
911、912 ガラス戸
913 開き戸
92 周辺部
93 一辺
94 対象物
96 塀
961 支持部材
97 変位部
971 ノブ
972 内筒
98 周辺部
981 外筒
982 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と衝突部材を具備し衝突部材が圧電素子に衝突して発電する発電部材を備え、防備を要する箇所に発生する変動を検知して、前記発電部材で発電する電力により警報を行う防犯装置。
【請求項2】
圧電素子と衝突部材を具備し衝突部材が圧電素子に衝突して発電する発電部材と、発電された電力により警報する警報部と、警報部の実行の可否を制御する制御部材とを備え、発電部材と制御部材のいずれか一方を出入口や窓等の戸に、他方を前記戸の開放により戸と乖離する周辺部に設け、戸の開放により制御部材が警報部を実行させる防犯装置。
【請求項3】
圧電素子と衝突部材を具備し衝突部材が圧電素子に衝突して発電する発電部材と、発電された電力により警報する警報部と、警報部の実行の可否を制御する制御部材とを備え、発電部材と制御部材のいずれか一方を出入口や窓等の戸の開放時に変位する変位部に、他方を前記戸の開放により変位部と乖離する周辺部に設け、戸の開放により制御部材が警報部を実行させる防犯装置。
【請求項4】
圧電素子と衝突部材を具備し衝突部材が圧電素子に衝突して発電する発電部材と、発電された電力により警報する警報部と、警報部の実行の可否を制御する制御部材とを備え、発電部材と制御部材のいずれか一方を移動される可能性を有する対象物に、他方を前記対象物の移動により対象物と乖離する周辺部に設け、対象物の移動により制御部材が警報部を実行させる防犯装置。
【請求項5】
圧電素子と衝突部材を具備し衝突部材が圧電素子に衝突して発電する発電部材と、発電された電力により警報する警報部と、塀や壁等の近傍に設けられ発電部材に直接的または間接的に付設される線状部材とを備え、線状部材にかかる張力の変化により発電部材が変位して発電する防犯装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の防犯装置において、発電部材には、圧電素子と衝突部材を収納するハウジングと、弾性を有するとともにハウジングに取り付けられて衝突部材が圧電素子への衝突を繰り返すようハウジングを振動させる弾性部材とが備えられることを特徴とする防犯装置。
【請求項7】
請求項6記載の防犯装置において、弾性部材はバネ定数に方向性を有する弾性体からなり、弾性部材の最も小さいバネ定数の方向を、衝突部材が圧電素子に衝突する方向と一致させるようハウジングに取り付けられることを特徴とする防犯装置。
【請求項8】
請求項6記載の防犯装置において、弾性部材は伸縮性を有する弾性体からなり、弾性部材はハウジングを挟むように設けられ、弾性部材の伸縮により衝突部材が圧電素子への衝突を繰り返すよう振動することを特徴とする防犯装置。
【請求項9】
請求項8記載の防犯装置において、弾性部材はその伸縮方向が衝突部材の圧電素子への衝突方向と一致するようハウジングの対向する両端に取り付けられることを特徴とする振動型発電装置。
【請求項10】
請求項2から9のいずれかに記載の防犯装置において、発電部材と制御部材との間には磁力が形成され、制御部材は発電部材との乖離で生じる磁力の変化で発電部材を振動させて警報部を実行させることを特徴とする防犯装置。
【請求項11】
請求項2から9のいずれかに記載の防犯装置において、発電部材と制御部材とが係合し、制御部材は発電部材との乖離で生じる係合の解除で発電部材を振動させて警報部を実行させることを特徴とする防犯装置。
【請求項12】
請求項2から9のいずれかに記載の防犯装置において、衝突部材と制御部材との間に磁力が形成され、制御部材は衝突部材との乖離で生じる磁力の変化で衝突部材を圧電素子に衝突させて警報部を実行させることを特徴とする防犯装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の防犯装置と、防犯装置と離間して設けられる検出装置とが備えられ、防犯装置が検出装置に信号を発信することで第1の警報を行い、検出装置では前記信号を受信して第2の警報を実行する防犯システム。
【請求項14】
請求項13記載の防犯システムにおいて、検出装置は外部にネットワークを介して通知することで第2の警報を実行することを特徴とする防犯システム。
【請求項15】
請求項13または14記載の防犯システムにおいて、検出装置は第2の警報の実行の可否を外部制御されることを特徴とする防犯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−18018(P2007−18018A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−197738(P2002−197738)
【出願日】平成14年7月5日(2002.7.5)
【出願人】(501195670)株式会社事業創造研究所 (12)
【出願人】(393012725)株式会社ユーエスシー (17)
【Fターム(参考)】