説明

防眩フィルム、防眩性偏光板および画像表示装置

【課題】優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が防止され、高精細の画像表示装置の表面に配置したときに、ギラツキを発生せずに、かつ、高温下で長時間使用してもその特性が変化しない耐久性に優れた防眩フィルムならびに該防眩フィルムを適用した防眩性偏光板および画像表示装置を提供する。
【解決手段】樹脂基材フィルムと、樹脂基材フィルム表面上に積層された、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層とを備える防眩フィルムであって、ハードコート層は、少なくとも1種の樹脂微粒子が分散された透光性樹脂からなり、かつ、ハードコート層の表面ヘイズは1%以上10%以下、内部ヘイズは10%以上20%以下であり、樹脂微粒子は、23℃において、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率が10%以上である防眩フィルムならびにこれを用いた防眩性偏光板および画像表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけず、画像表示装置に適用したときにギラツキが発生することなく、耐久性に優れた防眩(アンチグレア)フィルム、ならびに当該防眩フィルムを用いた防眩性偏光板および画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の画像表示装置は、その表示面に外光が映り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。従来、このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、反射光を利用して表示を行なう携帯電話等においては、画像表示装置の表面に外光の映り込みを防止するフィルム層が設けられている。このフィルム層には、光学多層膜による干渉を利用した無反射処理技術や表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩処理技術が一般的に用いられている。特に、後者の微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させる技術は、比較的安価に製造することができるため、大型モニタやパーソナルコンピュータ等の用途に広く用いられている。
【0003】
このような防眩フィルムは従来、たとえば、フィラーを分散させた樹脂溶液を基材シート上に塗布し、塗布膜厚を調整してフィラーを塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸を基材シート上に形成する方法などにより製造されている。また、フィラーを含有させずに、透明樹脂層の表面に形成された微細な凹凸だけで防眩性を発現させる試みもある。たとえば、特許文献1(請求項1〜6、段落0043〜0046)には、エンボス鋳型と透明樹脂フィルムとの間に電離放射線硬化性樹脂を挟んだ状態で当該電離放射線硬化性樹脂を硬化させて、三次元10点平均粗さ、および、三次元粗さ基準面上における隣接する凸部同士の平均距離が、それぞれ所定値を満足する微細な凹凸を形成することにより、透明樹脂フィルム上に、当該表面凹凸を有する電離放射線硬化性樹脂層の硬化物層が積層された防眩フィルムが開示されている。しかし、このような従来の防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置した場合、散乱光によって表示面全体が白っぽくなり、表示が濁った色になる、いわゆる白ちゃけが発生しやすいという問題があった。
【0004】
また、画像表示装置が高精細化した場合には、画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状とが干渉し、結果として輝度分布が発生して見にくくなる、いわゆるギラツキ現象が発生しやすいという問題があった。ギラツキを解消するために、バインダ樹脂とこれに分散させるフィラーとの間に屈折率差を設けて光を散乱させる試みもあるが、そのような防眩フィルムを、高温下で使用すると、バインダ樹脂およびフィラーが変形もしくは変質することによって、防眩フィルムの表面形状が変化し、映り込みが発生するという問題があった。また、使用初期においてはギラツキが発生していない場合であっても、高温下での使用を継続すると、バインダ樹脂とフィラーとの間の屈折率差が変化することによって、バインダ樹脂とフィラーとの間の散乱が減少し、ギラツキが発生したりするという問題もあった。
【特許文献1】特開2002−189106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みなされたものであり、その目的は、優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が防止され、高精細の画像表示装置の表面に配置したときに、ギラツキを発生せずに、かつ、高温下で長時間使用してもその特性が変化しない耐久性に優れた防眩フィルムを提供し、さらには、その防眩フィルムを適用した防眩性偏光板および画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、樹脂基材フィルム上に少なくとも1種の樹脂微粒子が分散された透光性樹脂からなるハードコート層を形成し、該ハードコート層の表面ヘイズと内部ヘイズを適切に調節し、かつ、該ハードコート層に分散させる樹脂微粒子として、酢酸エチルに23℃において48時間浸漬したときの体積変化率が10%以上の樹脂微粒子を用いれば、結果として、白ちゃけが発生せずに、ギラツキが十分に防止されるとともに、高温下で使用してもその特性がほとんど変化しない耐久性に優れた防眩フィルムが得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき、さらに種々の検討を加えて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明による防眩フィルムは、樹脂基材フィルムと、該樹脂基材フィルム表面上に積層された、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層とを備える防眩フィルムであり、該ハードコート層は、少なくとも1種の樹脂微粒子が分散された透光性樹脂からなり、かつ、該ハードコート層の表面ヘイズは1%以上10%以下であり、内部ヘイズは10%以上20%以下とされる。そして、ハードコート層に含有される樹脂微粒子は、23℃において、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率が10%以上、好ましくは50%以下の樹脂微粒子である。
【0008】
本発明の防眩フィルムにおいて、透光性樹脂の屈折率と樹脂微粒子の屈折率との差は、好ましくは0.02以上0.06以下である。また、樹脂微粒子は、その重量平均粒子径が2μm以上10μm以下であり、透光性樹脂100重量部に対して、1重量部以上50重量部以下の範囲内でハードコート層に含有されることが好ましい。
【0009】
本発明の防眩フィルムは、ハードコート層の凹凸表面上に、低反射膜をさらに有していてもよい。
【0010】
また本発明により、上記いずれかに記載の防眩フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせてなる防眩性偏光板であって、該偏光フィルムが、防眩フィルムの樹脂基材フィルム側に配置される防眩性偏光板が提供される。
【0011】
本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板は、液晶表示素子やプラズマディスプレイパネルなどの画像表示素子と組み合わせて、画像表示装置とすることができる。すなわち、本発明によれば、上記いずれかに記載の防眩フィルムまたは上記防眩性偏光板と、画像表示素子とを備え、防眩フィルムまたは防眩性偏光板が、そのハードコート層側を外側にして画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防眩フィルムは、優れた防眩性能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が防止され、また、高精細の画像表示装置の表面に配置したときに、ギラツキを発生させず、かつ耐久性に優れたものとなる。かかる本発明の防眩フィルムを偏光フィルムと組み合わせた防眩性偏光板も、同様の効果を発現する。そして、本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板を配置した画像表示装置は、防眩性能が高く、視認性および耐久性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<防眩フィルム>
図1は、本発明の防眩フィルムの好ましい一例を示す断面模式図である。図1に示される防眩フィルムは、樹脂基材フィルム1と、樹脂基材フィルム1の表面上に積層された、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層2とを備える。ハードコート層2は、バインダ樹脂である透光性樹脂中に樹脂微粒子3が分散されてなる。以下、本発明の防眩フィルムについてより詳細に説明する。
【0014】
(樹脂基材フィルム)
樹脂基材フィルムとしては、実質的に光学的な透明性を有するフィルムであれば特に制限されるものでなく、各種の透明樹脂フィルムを用いることができる。具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂などのほか、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどからなるフィルムなどが例示される。シクロオレフィン系樹脂は、ノルボルネン、ジメタノオクタヒドロナフタレン等の環状オレフィンをモノマーとする樹脂であり、具体的な市販品としては、「アートン」(JSR(株)製)、「ゼオノア」(日本ゼオン(株)製)、「ゼオネックス」(日本ゼオン(株)製)などが挙げられる。
【0015】
樹脂基材フィルムの厚みは30μm以上250μm以下であることが好ましく、より好ましくは、40μm以上170μm以下である。樹脂基材フィルムの厚みが30μm未満である場合には、防眩フィルムとしての十分な硬度を得ることが難しいことがある。また、樹脂基材フィルムの厚みが250μmを上回ることは最近の画像表示装置の薄型化への要求およびコスト等の観点から好ましくない。防眩フィルム全体の厚みを薄くする観点からは、樹脂基材フィルムの厚みは150μm以下、さらには120μm以下とするのがより好ましい。
【0016】
(ハードコート層)
本発明の防眩フィルムが備える、表面に微細凹凸形状を有するハードコート層は、上記樹脂基材フィルム表面上に積層されるものであり、少なくとも1種の透光性の樹脂微粒子が分散された透光性樹脂(ハードコート樹脂)からなる。本発明において「透光性」とは、物質内部での散乱の有無を問わず、光がほぼ透過できることを意味する。
【0017】
本発明において、ハードコート層の表面ヘイズは、1%以上10%以下とされ、内部ヘイズは10%以上20%以下とされる。ここで、ハードコート層の表面ヘイズおよび内部ヘイズは、次のようにして測定される。すなわち、まず、該ハードコート層をヘイズがほぼ0%であるトリアセチルセルロースフィルム上に形成した後、トリアセチルセルロースフィルム側が接合面となるように、該積層フィルムとガラス基板とを、透明粘着剤を用いて貼合し、JIS K 7136に準拠してヘイズを測定する。当該ヘイズは、ハードコート層全体のヘイズに相当する。次に、ハードコート層の凹凸表面に、ヘイズがほぼ0%であるトリアセチルセルロースフィルムを、グリセリンを用いて貼合し、再度JIS K 7136に準拠してヘイズを測定する。当該ヘイズは、表面凹凸に起因する表面ヘイズが表面凹凸上に貼合されたトリアセチルセルロースフィルムによってほぼ打ち消されていることから、ハードコート層の「内部ヘイズ」とみなすことができる。したがって、ハードコート層の「表面ヘイズ」は、下記式(1)より求められる。
【0018】
表面ヘイズ=全体のヘイズ−内部ヘイズ (1)
ハードコート層の表面ヘイズを10%以下とすることにより、防眩フィルムを画像表示装置に適用した際の白ちゃけを効果的に抑制することができる。より効果的に白ちゃけを抑えるためには、ハードコート層の表面ヘイズは5%以下であることが好ましい。ただし、1%を下回る場合には十分な防眩性を示さないことから、ハードコート層の表面ヘイズは1%以上とされる。
【0019】
また、ハードコート層の内部ヘイズを10%以上とすることにより、防眩フィルムを画像表示装置に適用した際のギラツキを効果的に解消することができる。より効果的にギラツキを解消するためには、ハードコート層の内部ヘイズは15%以上であることが好ましい。また、ハードコート層の内部ヘイズを20%以下とすることにより、防眩フィルムを画像表示装置に適用したときに、画面が暗くなり、視認性が損なわれることを防止することができる。
【0020】
本発明においては、上記した光学特性を満たす表面凹凸が付与されたハードコート層は、少なくとも1種の透光性の樹脂微粒子および透光性樹脂を用いて形成される。より具体的には、このようなハードコート層は、たとえば、フィラーとしての透光性樹脂微粒子を分散させた透光性樹脂溶液を樹脂基材フィルム上に塗布し、塗布膜厚を調整して、透光性樹脂微粒子の部分が凸となるようにすることで形成できる。また、フィラーとしての透光性樹脂微粒子を分散させた透光性樹脂溶液を樹脂基材フィルム上に塗布し、上記特許文献1に開示されるエンボス法によって表面凹凸を形成することもできる。
【0021】
ここで、本発明の防眩フィルムに用いられる透光性の樹脂微粒子は、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率が10%以上である。酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率が10%以上である樹脂微粒子を用いることによって、高温下の使用においても特性(特にヘイズ特性)の変化が少ない、耐久性に優れた防眩フィルムを得ることが可能となる。
【0022】
本発明者らの検討によれば、樹脂微粒子が分散されたハードコート層を備える防眩フィルムを高温下に暴露したとき、透光性樹脂および樹脂微粒子を構成する樹脂は、それぞれ架橋反応を進行させ、その結果、透光性樹脂および樹脂微粒子の屈折率は、それぞれ上昇する。この際、一般的に、透光性樹脂を構成する樹脂の方が樹脂微粒子よりも、反応度が低い(架橋密度が低い)ため、透光性樹脂の方が樹脂微粒子よりも、高温暴露による架橋反応の進行度合がより大きくなり、屈折率上昇がより大きくなる。このように、防眩フィルムを高温下に暴露すると、そのヘイズ特性(特に内部ヘイズ)が変化してしまうのは、透光性樹脂の方がより大きな屈折率上昇を伴うため、透光性樹脂と樹脂微粒子との屈折率比(あるいは屈折率差)が当初設定された値からずれてしまうことに一因があると考えられる。
【0023】
本発明に従い、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率が10%以上である樹脂微粒子を用いると、このような樹脂微粒子は、従来用いられていた樹脂微粒子よりも架橋密度が低い(反応度が低い)ため、得られる防眩フィルムを高温暴露したときの架橋反応の進行度合、したがって屈折率上昇がより大きくなる。これにより、防眩フィルムを高温暴露したときの透光性樹脂と樹脂微粒子との屈折率比(あるいは屈折率差)の変化が、従来の樹脂微粒子を用いた場合と比較して小さくなるため、特に高温暴露による内部ヘイズの変化を低減させることが可能となる。
【0024】
本発明の防眩フィルムに用いられる透光性の樹脂微粒子の、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率の下限は、耐久性(特に内部ヘイズの低下)の面からは特に制限はないが、樹脂微粒子を分散させた透光性樹脂溶液の安定性の観点から、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明において、樹脂微粒子の、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率は次のようにして測定される。すなわち、まず、酢酸エチルに浸漬する前の樹脂微粒子の平均粒子径d0を測定する。平均粒子径d0は、酢酸エチルに浸漬する前の樹脂微粒子を顕微鏡で観察し、その視野内において任意で選択された20個の樹脂微粒子について画像解析により求められる、当該20個の樹脂微粒子の平均粒子径である。次に、樹脂微粒子を酸酸エチルに、23℃において48時間浸漬し、浸漬後の樹脂微粒子の平均粒子径d48を、同様にして画像解析により求める。これらの平均粒子径を用いて、以下の式(2)により体積変化率(%)を求める。
【0026】
体積変化率(%)=d483/d03×100−100 (2)
ハードコート層に分散される透光性の樹脂微粒子を構成する樹脂の種類は、ハードコート層の光学特性(特に内部ヘイズ)を上記範囲内に調整し得るものであり、かつ、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率が上記範囲内であれば特に制限されないが、たとえば、メラミンビーズ(屈折率:1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率:1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率:1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率:1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率:1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率:1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率:1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率:1.46)などが挙げられる。
【0027】
本発明において用いられる樹脂微粒子としては、ハードコート層の内部ヘイズを10%以上20%以下とするために、樹脂微粒子の屈折率とハードコート層の基材となる透光性樹脂(ハードコート樹脂)の屈折率との差が0.02以上0.06以下となるような樹脂微粒子を選択することが好ましい。
【0028】
また、本発明において用いられる樹脂微粒子は、その重量平均粒子径が、2μm以上10μm以下であることが好ましく、4μm以上8μm以下であることがより好ましい。重量平均粒子径が2μm未満である場合には、十分な防眩性が得られなかったり、内部ヘイズが大きくなったりする傾向があり、重量平均粒子径が10μmを超える場合には、表面ヘイズが大きくなり、結果として、防眩フィルムが白ちゃけて視認性が低下したり、十分な内部ヘイズが得られなかったりする傾向がある。ここで、「重量平均粒子径」とは、コールター法を用いて測定される重量平均粒子径である。コールター法を用いた重量平均粒子径は、たとえば精密粒度分布測定装置「コールターMultisizer3」(ベックマン・コールター(株)製)等を用いて測定することができる。
【0029】
また、樹脂微粒子は、透光性樹脂100重量部に対して、1重量部以上50重量部以下の範囲内でハードコート層に含有されることが好ましい。より好ましくは、透光性樹脂100重量部に対して、10重量部以上40重量部以下の範囲内で含有される。樹脂微粒子の含有量が1重量部未満である場合には、十分な防眩性を示さなくなったり、表面凹凸が疎となって質感が低下したり、内部ヘイズが小さくなる傾向がある。また、樹脂微粒子の含有量が50重量部を超える場合には、ヘイズが大きくなり、その結果、防眩フィルムが白ちゃけたり、コントラストが低下したりして視認性が低下する傾向がある。
【0030】
樹脂微粒子を分散させる透光性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができるが、生産性、硬度などの観点から紫外線硬化性樹脂が好ましく使用される。紫外線硬化性樹脂としては、市販されているものを用いることができる。たとえば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリレートの単独または2種以上と、「イルガキュア 907」、「イルガキュア 184」(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、「ルシリン TPO」(BASF社製)等の光重合開始剤との混合物を、紫外線硬化性樹脂とすることができる。たとえば紫外線硬化性樹脂を用いた場合においては、紫外線硬化性樹脂に樹脂微粒子を分散した後、該樹脂組成物を樹脂基材フィルム上に塗布し乾燥後、紫外線を照射することにより、透光性樹脂(ハードコート樹脂)中に樹脂微粒子が分散された、ハードコート層を形成することができる。
【0031】
また、エンボス法によりハードコート層に微細な凹凸形状を形成する場合には、上記特許文献1等に開示されているように、微細な凹凸形状が形成された金型を用いて、金型の形状を透明樹脂フィルム(すなわち、透光性樹脂と樹脂微粒子とからなる樹脂フィルム)に転写すればよい。金型形状のフィルムへの転写は、エンボスにより行なうことが好ましく、エンボスとしては、紫外線硬化性樹脂を用いるUVエンボス法が好ましい。
【0032】
UVエンボス法では、樹脂基材フィルムの表面に紫外線硬化性樹脂層(透光性樹脂と樹脂微粒子とからなる樹脂組成物層)を形成し、その紫外線硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が紫外線硬化性樹脂層に転写される。具体的には、樹脂基材フィルム上に透光性の樹脂微粒子を分散させた紫外線硬化性樹脂を塗工し、塗工して得られる紫外線硬化性樹脂層を金型の凹凸面に密着させた状態で、樹脂基材フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂層を硬化させ、次に、硬化後の紫外線硬化性樹脂層が形成された樹脂基材フィルムを金型から剥離することにより、金型の形状を紫外線硬化性樹脂層に転写する。紫外線硬化性樹脂の種類は特に制限されない。また、紫外線硬化性樹脂の代わりに、光開始剤を適宜選定することにより、紫外線より波長の長い可視光で硬化が可能な可視光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0033】
エンボス法を用いずにハードコート層に表面凹凸形状を形成する場合には、ハードコート層の厚みは、表面ヘイズが上記範囲内となるように適宜調整し得るものであるが、2μm以上20μm以下であることが好ましい。ハードコート層の厚みが2μm未満であると、十分な硬度が得られず、傷付きやすくなる傾向にあり、また、20μmより厚くなると、割れやすくなったり、ハードコート層の硬化収縮により防眩フィルムがカールして生産性が低下したりする傾向がある。また、ハードコート層の厚みは、一般的には、分散される透光性の樹脂微粒子の重量平均粒子径に対して85%以上であることが好ましく、より好ましくは100%以上である。ハードコート層の厚みが樹脂微粒子の重量平均粒子径の85%を下回る場合には表面ヘイズが大きくなり、結果として、防眩フィルムが白ちゃけて視認性が低下する傾向がある。
【0034】
エンボス法を用いてハードコート層に表面凹凸形状を形成する場合には、ハードコート層の厚みは、2μm以上20μm以下であることが好ましい。ハードコート層の厚みが2μm未満であると、十分な硬度が得られず、傷付きやすくなる傾向にあり、また、20μmより厚くなると、割れやすくなったり、ハードコート層の硬化収縮により防眩フィルムがカールして生産性が低下したりする傾向がある。また、ハードコート層の厚みは、一般的には、分散される透光性の樹脂微粒子の重量平均粒子径に対して100%以上であることが好ましく、より好ましくは120%以上である。ハードコート層の厚みが樹脂微粒子の重量平均粒子径の100%を下回る場合には、樹脂微粒子がハードコート層の表面凹凸形状に予期せぬ影響を及ぼし、望ましい表面ヘイズ値が得られない場合がある。
【0035】
本発明の防眩フィルムは、その最表面、すなわちハードコート層の凹凸面側に低反射膜を有していてもよい。低反射膜がない状態でも、十分な防眩機能を発揮するが、最表面に低反射膜を設けることにより、防眩性をさらに向上させることができる。低反射膜は、ハードコート層の上に、それよりも屈折率の低い低屈折率材料の層を設けることにより形成できる。そのような低屈折率材料として、具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、氷晶石(3NaF・AlF3またはNa3AlF6)等の無機材料微粒子を、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料;フッ素系またはシリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等の有機低反射材料を挙げることができる。
【0036】
<防眩性偏光板>
本発明の防眩フィルムは、防眩効果に優れ、白ちゃけも有効に防止され、ギラツキの発生を効果的に抑制でき、また、耐久性に優れているため、これを画像表示装置に適用することにより、視認性および耐久性に優れた画像表示装置を得ることができる。画像表示装置が液晶ディスプレイである場合には、この防眩フィルムを偏光板に適用することができる。すなわち、偏光板は一般に、ヨウ素または二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された形のものが多いが、その一方の保護フィルムを本発明の防眩フィルムで構成する。偏光フィルムと、本発明の防眩フィルムとを、その防眩フィルムの樹脂基材フィルム側で貼り合わせることにより、防眩性偏光板とすることができる。この場合、偏光フィルムの他方の面は、何も積層されていない状態でもよいし、別の保護フィルムまたは光学フィルムが積層されていてもよいし、また液晶セルに貼合するための粘着剤層が形成されていてもよい。また、偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された偏光板の当該保護フィルム上に、本発明の防眩フィルムをその樹脂基材フィルム側で貼合して、防眩性偏光板とすることもできる。さらに、少なくとも片面に保護フィルムが貼合された偏光板において、当該保護フィルムとして上記樹脂基材フィルムを偏光フィルムに貼合した後、樹脂基材フィルム上に上記ハードコート層を形成することにより、防眩性偏光板とすることもできる。
【0037】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板を画像表示素子と組み合わせたものである。ここで、画像表示素子は、上下基板間に液晶が封入された液晶セルを備え、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行なう液晶パネルが代表的であるが、その他、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなど、公知の各種ディスプレイに対しても、本発明の防眩フィルムまたは防眩性偏光板を適用することができる。本発明の画像表示装置においては、防眩フィルムは、画像表示素子よりも視認側に配置される。この際、防眩フィルムの凹凸面、すなわちハードコート層側が外側(視認側)となるように配置される。防眩フィルムは、画像表示素子の表面に直接貼合してもよいし、液晶パネルを画像表示手段とする場合は、たとえば先述のように、偏光フィルムを介して液晶パネルの表面に貼合することもできる。このように、本発明の防眩フィルムを備えた画像表示装置は、防眩フィルムの有する表面の凹凸により入射光を散乱して映り込み像をぼかすことができ、優れた視認性を与え、また、優れた耐久性を有する。
【0038】
また、本発明の防眩フィルムは、高精細の画像表示装置に適用した場合でも、従来の防眩フィルムに見られたようなギラツキが発生することもなく、十分な映り込み防止、白ちゃけの防止、ギラツキの抑制、優れた耐久性という性能を兼備したものとなる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ない限り重量基準である。また、以下の例における防眩フィルムの評価方法は、次のとおりである。
【0040】
(1)防眩フィルムの光学特性の測定
(1−1)ハードコート層の表面および内部ヘイズ
まず、ハードコート層をヘイズがほぼ0%であるトリアセチルセルロースフィルム上に形成した後、トリアセチルセルロースフィルム側が接合面となるように、該積層フィルムとガラス基板とを、透明粘着剤を用いて貼合し、JIS K 7136に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150」型を用いて全体のヘイズを測定した。次に、ハードコート層の凹凸表面に、ヘイズがほぼ0であるトリアセチルセルロースフィルムを、グリセリンを用いて貼合し、再度JIS K 7136に準拠して、内部ヘイズを測定した。表面ヘイズは、上記式(1)に基づいて算出した。
【0041】
(1−2)透過鮮明度
JIS K 7105に準拠したスガ試験機(株)製の写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの透過鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。この状態でガラス側から光を入射させ、測定を行なった。ここでの測定値は、暗部と明部との幅がそれぞれ0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の透過鮮明度の最大値は400%となる。
【0042】
(1−3)反射鮮明度
上と同じ写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの反射鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。また、裏面ガラス面からの反射を防止するために、防眩フィルムを貼ったガラス板のガラス面に2mm厚みの黒色アクリル樹脂板を水で密着させて貼り付け、この状態でサンプル(防眩フィルム)側から光を入射させ、測定を行なった。ここでの測定値は、暗部と明部との幅がそれぞれ0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである3種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である(最大値300%)。
【0043】
(2)防眩フィルムの防眩性能の評価
(2−1)映り込みおよび白ちゃけの目視評価
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無および白ちゃけの程度を目視で評価した。映り込みおよび白ちゃけは、それぞれ1〜3の3段階で次の基準により評価した。
(a)映り込み; 1:映り込みが観察されない。2:映り込みが少し観察される。3:映り込みが明瞭に観察される。
(b)白ちゃけ; 1:白ちゃけが観察されない。2:白ちゃけが少し観察される。3:白ちゃけが明瞭に観察される。
【0044】
(2−2)ギラツキの評価
ギラツキは、以下の方法で評価した。すなわち、まず図2に平面図で示すようなユニットセルのパターンを有するフォトマスクを用意した。この図において、ユニットセル4は、透明な基板上に、線幅10μmでカギ形のクロム遮光パターン5が形成され、そのクロム遮光パターン5の形成されていない部分が開口部6となっている。ここでは、ユニットセル4の寸法が254μm×84μm(図の縦×横)、したがって開口部6の寸法が244μm×74μm(図の縦×横)のものを用いた。図示するユニットセル4が縦横に多数並んで、フォトマスク7を形成する。
【0045】
そして、図3に模式的な断面図で示すように、フォトマスク7のクロム遮光パターン5を上にしてライトボックス8に置き、ガラス板10に粘着剤で防眩フィルム12をその凹凸面が表面となるように貼合したサンプルをフォトマスク7上に置く。ライトボックス8の中には、光源9が配置されている。この状態で、サンプルから約30cm離れた位置11で目視観察した。ギラツキの程度は1〜3の3段階で次の基準により評価した。
ギラツキ; 1:ギラツキが認められない。2:ごくわずかにギラツキが観察される。3:ひどくギラツキが観察される。
【0046】
(3)防眩フィルムの耐久性の評価
防眩フィルムを80℃の乾燥機中で200時間保管し、乾燥後の光学特性および防眩性能を上記した評価方法で評価した。
【0047】
(4)酢酸エチルに48時間浸漬したときの樹脂微粒子の体積変化率
酢酸エチルに浸漬する前の樹脂微粒子をデジタルマイクロスコープVHX−500((株)キーエンス製)で観察し、画像解析により平均粒子径d0(20個の樹脂微粒子の平均)を求めた。その後、酢酸エチルに23℃の環境下で48時間浸漬した。浸漬後の樹脂微粒子を再度デジタルマイクロスコープで観察し、同様にして画像解析により平均粒子径d48を求めた。得られた平均粒子径を用いて、上記式(2)より体積変化率を算出した。
【0048】
<実施例1>
(塗布液Aの調製)
以下の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60%で溶解されており、硬化後に1.53の屈折率を示す紫外線硬化性樹脂組成物Aを用意した。
【0049】
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部
多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物) 40部
次に、この紫外線硬化性樹脂組成物Aの固形分100重量部に対して、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(重量平均粒子径7.43μm、屈折率1.55、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率11%)を40重量部、光重合開始剤である「ルシリン TPO」(BASF社製)を5重量部添加し、固形分率が60%になるように酢酸エチルで希釈して塗布液Aを調製した。
【0050】
(エンボスロールAの作製)
直径200mmの鉄ロール(JISによるSTKM13A)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmであった。その銅めっき表面を鏡面研磨し、さらにその研磨面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、第一の微粒子としてジルコニアビーズTZ−B125(東ソー(株)製、平均粒径:125μm)を、ブラスト圧力0.05MPa(ゲージ圧、以下同じ)、ビーズ使用量6g/cm2(ロールの表面積1cm2あたりの使用量、以下同じ)でブラストし、表面に凹凸を形成した。その凹凸面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、第二の微粒子としてジルコニアビーズTZ−SX−17(東ソー(株)製、平均粒径:20μm)を、ブラスト圧力0.05MPa、ビーズ使用量6g/cm2でブラストし、表面凹凸を微調整した。得られた凹凸つき銅めっき鉄ロールに対し、塩化第二銅液でエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は3μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行ない、エンボスロールAを作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。
【0051】
(防眩フィルムAの作製)
塗布液Aを、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム製、厚み80μm)上に、乾燥後の塗布厚みが15μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、エンボスロールAの凹凸面に、紫外線硬化性樹脂組成物層(塗布液Aの層)がエンボスロール側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2となるように照射して、紫外線硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化物層ごとエンボスロールから剥離して、表面に凹凸を有するハードコート層とTACフィルムとの積層体からなる防眩フィルムAを得た。
【0052】
<実施例2>
上記の紫外線硬化性樹脂組成物Aの固形分100重量部に対して、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(重量平均粒子径7.74μm、屈折率1.55、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率15%)を40重量部、光重合開始剤である「ルシリン TPO」(BASF社製)を5重量部添加し、固形分率が60%になるように酢酸エチルで希釈して塗布液Bを調製した。
【0053】
この塗布液Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有するハードコート層とTACフィルムとの積層体からなる防眩フィルムBを得た。
【0054】
<実施例3>
上記の紫外線硬化性樹脂組成物Aの固形分100重量部に対して、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(重量平均粒子径7.63μm、屈折率1.55、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率63%)を40重量部、光重合開始剤である「ルシリン TPO」(BASF社製)を5重量部添加し、固形分率が60%になるように酢酸エチルで希釈して塗布液Cを調製した。
【0055】
この塗布液Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有するハードコート層とTACフィルムとの積層体からなる防眩フィルムCを得た。
【0056】
<比較例1>
上記の紫外線硬化性樹脂組成物Aの固形分100重量部に対して、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(重量平均粒子径7.78μm、屈折率1.55、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率0%)を40重量部、光重合開始剤である「ルシリン TPO」(BASF社製)を5重量部添加し、固形分率が60%になるように酢酸エチルで希釈して塗布液Dを調製した。
【0057】
この塗布液Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有するハードコート層とTACフィルムとの積層体からなる防眩フィルムDを得た。
【0058】
上記実施例1〜3および比較例1の防眩フィルムについての、(I)80℃の乾燥機中で200時間保管する前の光学特性、酢酸エチルに浸漬する前後での平均粒子径、および酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率、ならびに、(II)80℃の乾燥機中で200時間保管した後の光学特性を、それぞれ表1および2にまとめた。なお、表1に示される実施例1の防眩フィルムの透過鮮明度および反射鮮明度の内訳は、次のとおりである。
【0059】
透過鮮明度 反射鮮明度
0.125mm光学くし: 33.5% −
0.5mm光学くし : 33.4% 12.8%
1.0mm光学くし : 33.1% 13.8%
2.0mm光学くし : 44.3% 22.3%
合計 144.3% 48.9%
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表1および2に示されるように、本発明の防眩フィルム(実施例1〜3)および比較例1の防眩フィルムは、いずれも80℃で200時間乾燥する前においては、優れた防眩性能を示しながら、ギラツキや白ちゃけが発生せず、良好な光学特性を示すものであった。しかしながら、比較例1の防眩フィルムは、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率がほぼ0%である樹脂微粒子をハードコート層に用いたことに起因して、80℃での200時間の乾燥により、ハードコート層の内部ヘイズが大きく低下し、その結果、ギラツキが発生した。
【0063】
一方、本発明の防眩フィルム(実施例1〜3)は、80℃での200時間の乾燥によっても、ハードコート層の表面および内部ヘイズ等の光学特性の劣化は、比較例1と比較して効果的に抑制されており、優れた耐久性を有していた。また、内部ヘイズの低下抑制効果は、用いた樹脂微粒子の体積変化率が大きいほど、大きくなる傾向を示した。ただし、実施例3の防眩フィルムにおいては、80℃で200時間乾燥する前の内部ヘイズが10.8%と比較的低いために、乾燥による内部ヘイズの低下は、極めて小さいものの、80℃で200時間乾燥後にギラツキが生じる結果となった。実施例3の防眩フィルムにおいて、80℃で200時間乾燥する前の内部ヘイズが比較的低いのは、樹脂微粒子の体積変化率が63%と高いことに起因して塗布液Cの安定性が低下したためと考えられる。このように、ハードコート層の内部ヘイズの低下抑制の観点からは、用いる樹脂微粒子の体積変化率は大きい方が好ましいものの、初期状態(高温暴露前)の内部ヘイズをも考慮すれば、樹脂微粒子の体積変化率は、50%程度以下とすることが好ましい。
【0064】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の防眩フィルムを、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなどの各種ディスプレイに対し、その防眩フィルムが画像表示素子よりも視認側となるように配置することで、白ちゃけおよびギラツキを発生させることなく、映り込み像をぼかすことができ、優れた視認性を与えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の防眩フィルムの好ましい一例を示す断面模式図である。
【図2】ギラツキ評価用パターンのユニットセルを示す平面図である。
【図3】ギラツキ評価時の状態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1 樹脂基材フィルム、2 ハードコート層、3 樹脂微粒子、4 フォトマスクのユニットセル、5 フォトマスクのクロム遮光パターン、6 フォトマスクの開口部、7 フォトマスク、8 ライトボックス、9 光源、10 ガラス板、11 ギラツキの観察位置、12 防眩フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材フィルムと、前記樹脂基材フィルム表面上に積層された、表面に微細な凹凸形状を有するハードコート層とを備える防眩フィルムであって、
前記ハードコート層は、少なくとも1種の樹脂微粒子が分散された透光性樹脂からなり、
かつ、前記ハードコート層の表面ヘイズは1%以上10%以下であり、内部ヘイズは10%以上20%以下であり、
前記樹脂微粒子は、23℃において、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率が10%以上である防眩フィルム。
【請求項2】
前記樹脂微粒子は、23℃において、酢酸エチルに48時間浸漬したときの体積変化率が50%以下である請求項1に記載の防眩フィルム。
【請求項3】
前記透光性樹脂の屈折率と前記樹脂微粒子の屈折率との差は、0.02以上0.06以下である請求項1または2に記載の防眩フィルム。
【請求項4】
前記樹脂微粒子は、その重量平均粒子径が2μm以上10μm以下であり、前記透光性樹脂100重量部に対して、1重量部以上50重量部以下の範囲内で前記ハードコート層に含有される請求項1〜3のいずれかに記載の防眩フィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層の凹凸表面上に、低反射膜をさらに有する請求項1〜4のいずれかに記載の防眩フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の防眩フィルムと偏光フィルムとを貼り合わせてなる防眩性偏光板であって、
前記偏光フィルムは、前記防眩フィルムの前記樹脂基材フィルム側に配置される防眩性偏光板。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の防眩フィルムまたは請求項6に記載の防眩性偏光板と、画像表示素子とを備え、
前記防眩フィルムまたは防眩性偏光板は、そのハードコート層側を外側にして画像表示素子の視認側に配置される画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−102072(P2010−102072A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272834(P2008−272834)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】