説明

防眩性ハードコートフィルム

【課題】高精細な表示画質を低下させることなく、優れた防眩性を付与することができ、各種ディスプレイに使用した際に視認性が良好である上、表面硬度が大きく、表面保護フィルムとしても好適な防眩性ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも一方の面に、シリカ粒子を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成された硬化物からなるハードコート層を有し、かつ前記組成物中のシリカ粒子が、レーザー回折・散乱法により測定される粒度分布において、粒径が0.1〜1μmと1.5〜5μmの範囲にそれぞれピークを有する、平均粒径が4μm以下のものであって、該シリカ粒子の含有量が、前記組成物の固形分重量に基づき、1〜20重量%の防眩性ハードコートフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防眩性ハードコートフィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、高精細な表示画質を低下させることなく、優れた防眩性を付与することができ、各種ディスプレイ、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管(CRT)、さらにはタッチパネルなどに使用した際に視認性が良好である(写像鮮明度が高い)上、表面硬度が大きく、表面保護フィルムとしても好適な防眩性ハードコートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
CRTや液晶表示体などのディスプレイにおいては、画面に外部から光が入射し、この光が反射して(グレアーあるいはギラツキなどといわれる)表示画像を見難くすることがあり、特に近年、ディスプレイの大型化に伴い、上記問題を解決することが、ますます重要な課題となってきている。
このような問題を解決するために、これまで種々のディスプレイに対して、様々な防眩処置がとられている。その一つとして、例えば液晶表示体における偏光板に使用されるハードコートフィルムや各種ディスプレイ保護用ハードコートフィルムなどに対し、その表面を粗面化する防眩処理が施されている。このハードコートフィルムの防眩処理方法は、一般に、(1)ハードコート層を形成するための硬化時に物理的方法で表面を粗面化する方法と、(2)ハードコート層形成用のハードコート剤にフィラーを混入する方法とに大別することができる。
これらの2つの方法の中で、後者のハードコート剤にフィラーを混入する方法が主流であり、そして、フィラーとしては、主にシリカ粒子が用いられている。シリカ粒子が使用される理由としては、得られたハードコートフィルムの白色度を低く抑えることができる上、硬度低下をもたらさず、かつコート剤に混入させた際に分散性が良好であることなどが挙げられる。
しかしながら、例えば液晶表示体が高精細である場合、上記防眩性ハードコートフィルムとして、従来の高精細でないもの(風合いが粗いもの)を使用すると、液晶表示体が折角高精細のものであっても、その画質が低下するのを免れないという問題が生じる。したがって、高精細な液晶表示体のもつ高画質を得るためには、高精細な防眩性ハードコートフィルムが必要となる。
従来の防眩性ハードコートフィルムにおいては、通常平均粒径1〜2.5μm程度のシリカ粒子が用いられてきた。このシリカ粒子は防眩性には優れているものの、近年の高精細化された液晶表示体などには対応できず、その表示画質を低下させていた。
このように、フィラーとして平均粒径1〜2.5μmのシリカ粒子を単体で用いた防眩性ハードコートフィルムにおいては、近年の高精細化された液晶表示体の画質を低下させることなく、優れた防眩性を付与し得るものは、見出されていないのが実状である。
そこで、コロイダルシリカ粒子の凝集物をハードコート層に含有させる方法(例えば、特許文献1参照)、平均粒径0.5〜5μmのシリカ粒子と平均粒径1〜60nmの微粒子とを組み合わせて、ハードコート層に含有させる方法(例えば、特許文献2参照)などが試みられているが、さらなる鮮明性の向上が望まれていた。
一方、透明基板上に、屈折率1.40〜1.60の樹脂ビーズと電離放射線硬化型樹脂組成物から構成される防眩層が形成されてなる耐擦傷性防眩フィルムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この防眩フィルムにおいては、好ましい樹脂ビーズとして、粒径が3〜8μmの範囲にあるポリメタクリル酸メチルビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、ポリアクリルスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズが用いられており、そして、これらの樹脂ビーズがコート剤中で沈降するのを防止するために、粒径0.5μm以下のシリカビーズが、電離放射線硬化型樹脂100重量部当たり、0.1重量部未満程度加えられている。
このように、上記公報においては、防眩性を付与するために、防眩層に、比較的粒径が大きい典型的な樹脂ビーズが分散されているが、防眩層の耐擦傷性については必ずしも十分ではないという問題があった。
【特許文献1】特開平10−180950号公報
【特許文献2】特開2002−36452号公報
【特許文献3】特開平6−18706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情のもとで、高精細な表示画質を低下させることなく、優れた防眩性を付与することができ、各種ディスプレイに使用した際に視認性が良好である上、表面硬度が大きく、表面保護フィルムとしても好適な防眩性ハードコートフィルムを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記の優れた機能を有する防眩性ハードコートフィルムを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、シリカ粒子として、レーザー回折・散乱法により測定される粒度分布において、粒径が2つのある範囲にそれぞれピークを有する、平均粒径4μm以下のものを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて、ハードコート層を形成することにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)基材フィルムの少なくとも一方の面に、シリカ粒子を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成された硬化物からなるハードコート層を有し、かつ前記組成物中のシリカ粒子が、レーザー回折・散乱法により測定される粒度分布において、粒径が0.1〜1μmと1.5〜5μmの範囲にそれぞれピークを有する、平均粒径が4μm以下のものであって、該シリカ粒子の含有量が、前記組成物の固形分重量に基づき、1〜20重量%であることを特徴とする防眩性ハードコートフィルム、
(2)写像鮮明度の各スリットの合計値が100以上である上記(1)項に記載の防眩性ハードコートフィルム、
(3)レーザー回折・散乱法により測定される粒度分布において、粒径が0.1〜1μmと1.5〜5μmの範囲にそれぞれピークを有する、平均粒径が4μm以下のシリカ粒子を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、前記シリカ粒子よりも平均粒径が大きく、かつレーザー回折・散乱法により測定される粒度分布において、1つのピークを有するシリカ粒子を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、剪断力を利用した粉砕・分散機能をもつ機器により粉砕・分散処理し、シリカ粒子の平均粒径を粉砕・分散処理前よりも0.5μm以上小さくすることにより得られたものである上記(1)又は(2)項に記載の防眩性ハードコートフィルム、
(4)ハードコート層の算術平均粗さRaが、0.05〜0.15μmである上記(1)、(2)又は(3)項に記載の防眩性ハードコートフィルム、及び
(5)ハードコート層の厚さが、0.5〜20μmである上記(1)〜(4)項のいずれかに記載の防眩性ハードコートフィルム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、高精細な表示画質を低下させることなく、優れた防眩性を付与することができ、各種ディスプレイに使用した際に視認性が良好である(写像鮮明度が高い)上、表面硬度が大きく、表面保護フィルムとしても好適な防眩性ハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおける基材フィルムについては特に制限はなく、従来光学用ハードコートフィルムの基材として公知のプラスチックフィルムの中から適宣選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等を挙げることができる。
これらの基材フィルムは、透明、半透明のいずれであってもよく、また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば液晶表示体の保護用として用いる場合には、無色透明のフィルムが好適である。
これらの基材フィルムの厚さは特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常15〜300μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、この基材フィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
【0007】
本発明の防眩性ハードコートフィルムは、上記基材フィルムの少なくとも一方の面に、シリカ粒子を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成された硬化物からなるハードコート層を有するものである。
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化型重合性化合物と、シリカ粒子と、さらに所望により光重合開始剤及び他の各種添加成分などを含む組成物である。
なお、活性エネルギー線硬化型重合性化合物とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する重合性化合物を指す。
このような活性エネルギー線硬化型重合性化合物としては、例えば活性エネルギー線重合性プレポリマー及び/又は活性エネルギー線重合性モノマーを挙げることができる。上記活性エネルギー線重合性プレポリマーには、ラジカル重合型とカチオン重合型があり、ラジカル重合型の活性エネルギー線重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などが挙げられる。
ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。これらの活性エネルギー線重合性プレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、カチオン重合型の活性エネルギー線重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂が通常使用される。このエポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール樹脂やノボラック樹脂などの多価フェノール類にエピクロルヒドリンなどでエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物などで酸化して得られた化合物などが挙げられる。
【0008】
また、活性エネルギー線重合性モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能アクリレートが挙げられる。これらの活性エネルギー線重合性モノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記活性エネルギー線重合性プレポリマーと併用してもよい。
【0009】
一方、所望により用いられる光重合開始剤としては、活性エネルギー線重合性のプレポリマーやモノマーの中でラジカル重合型の光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。また、カチオン重合型の光重合性プレポリマーに対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、前記光重合性プレポリマー及び/又は光重合性モノマー100重量部に対して、通常0.2〜10重量部の範囲で選ばれる。
【0010】
本発明においては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含有させるシリカ粒子として、レーザー回折・散乱法により測定される粒度分布において、粒径が0.1〜1μm、好ましくは0.2〜1μm、より好ましくは0.3〜1μmと、1.5〜5μmの範囲にそれぞれピークを有する、平均粒径4μm以下のものが用いられる。
このような粒度分布及び平均粒径を有するシリカ粒子を用いることにより、高精細な表示画質を低下させることなく、優れた防眩性を付与することができ、かつ各種ディスプレイに使用した際に視認性が良好となる(写像鮮明度が高くなる)。平均粒径としては、通常0.3〜4μm程度、好ましくは0.5〜3μmである。
前記の粒度分布及び平均粒径を有するシリカ粒子は、例えば目的のシリカ粒子よりも平均粒径が大きく、かつレーザー回折・散乱法により測定される粒度分布において、1つのピークを有するシリカ粒子を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、剪断力を利用した粉砕・分散機能をもつ機器により粉砕・分散処理し、シリカ粒子の平均粒径を粉砕・分散処理前よりも0.5μm以上小さくすることにより、製造することができる。
【0011】
前記の剪断力を利用した粉砕・分散機能を有する機器としては、高剪断力を有する機器、例えばロールミル、ビーズミル、ジェットミルなどを用いることができる。
このような高剪断力を有する機器により、粉砕・分散処理することにより、シリカ粒子は、前記の粒度分布及び平均粒径を有するものとなる。このシリカ粒子のレーザー回折・散乱法により測定した比表面積は、通常20000cm2/cm3以上である。
なお、レーザー回折・散乱法については、後で説明する。
本発明で用いられるシリカ粒子は、表面を有機表面処理剤で処理したものであってもよいし、未処理のものであってもよい。前記有機表面処理剤としては、シラン系カップリング剤やシリコーンオイル、シリコーンワックスなどを用いることができる。
前記シラン系カップリング剤としては、例えばトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でもγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン類が好適である。
該シリカ粒子を、上記表面処理剤で処理する方法については特に制限はなく、従来慣用されている方法、例えば水溶液法、有機溶媒法、スプレー方法など、任意の方法を用いることができる。
【0012】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の前記シリカ粒子の含有量は、固形分重量に基づき、1〜20重量%の範囲で選定される。該シリカ粒子の含有量が1重量%以上であれば、ハードコート層に良好な防眩性を付与する効果を発揮することができ、また20重量%以下であれば、ハードコート層の耐擦傷性低下を抑制することができる。該シリカ粒子の好ましい含有量は、樹脂組成物の固形分重量に基づき、3〜20重量%であり、特に5〜15重量%が好ましい。
本発明で用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、必要に応じ、適当な溶剤中に、前記の活性エネルギー線硬化型重合性化合物、シリカ粒子及び所望により用いられる光重合開始剤や各種添加成分、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などを、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。
この際用いる溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
このようにして調製された組成物の濃度、粘度としては、コーティング可能なものであればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0013】
次に、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に、上記組成物を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、コーティングして塗膜を形成させ、乾燥後、これに活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させることにより、ハードコート層が形成される。
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプなどで得られ、照射量は、通常100〜500mJ/cm2であり、一方電子線は、電子線加速器などによって得られ、照射量は、通常150〜350kVである。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、重合開始剤を添加することなく、硬化膜を得ることができる。
このようにして形成されたハードコート層の厚さは0.5〜20μmの範囲が好ましい。この厚さが0.5μm未満ではハードコートフィルムの耐擦傷性が十分に発揮されないおそれがあるし、また20μmを超えると60°鏡面光沢度が高くなるおそれがある。耐擦傷性及び60°鏡面光沢度のバランスなどの面から、このハードコート層のより好ましい厚さは1〜15μmの範囲であり、特に2〜10μmの範囲が好適である。
このようにして形成されたハードコート層は、表面の算術平均粗さRaが、通常0.05〜0.15μmであり、好ましくは0.05〜0.10μmである。
なお、前記算術平均粗さRaは、ISO 1997に準拠して測定した値である。
また、該ハードコート層の硬度は、鉛筆硬度でH以上であるのが好ましく、鉛筆硬度でH以上であれば、ハードコートフィルムに必要な耐擦傷性を備えることができるが、耐擦傷性をより十分なものにするには、鉛筆硬度で2H以上のものが特に好適である。
なお、前記鉛筆硬度は、JIS K 5400に準拠して、手かき法により測定した値である。
【0014】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいては、ヘイズ値及び60゜鏡面光沢度が防眩性の指標となり、ヘイズ値は2%以上が望ましく、また60゜鏡面光沢度は150以下が好ましい。ヘイズ値が2%未満では十分な防眩性が発揮されにくいし、また、60゜鏡面光沢度が150を超えると表面光沢度が大きく(光の反射が大きい)、防眩性に悪影響を及ぼす原因となる。ただし、ヘイズ値があまり高すぎると光透過性が悪くなり、好ましくない。また、写像鮮明度の各スリットの合計値は100以上が好ましい。この写像鮮明度の各スリットの合計値は表示画質、すなわち視認性の指標となり、この値が100未満では十分に良好な表示画質(視認性)が得られない。さらに、全光線透過率は90%以上が好ましく、90%未満では透明性が不十分となるおそれがある。
防眩性、表示画質(視認性)、光透過性、透明性などのバランスの面から、ヘイズ値は、好ましくは3〜80%、写像鮮明度の各スリットの合計値は、より好ましくは150以上、全光線透過率は、より好ましくは91%以上である。
なお、前記光学的特性の測定方法については、後で説明する。
【0015】
本発明においては、必要により、前記ハードコート層の表面に、反射防止性を付与させるなどの目的で反射防止層、例えばシロキサン系被膜、フッ素系被膜などを設けることができる。この場合、該反射防止層の厚さは、0.05〜1μm程度が適当である。なお、波長550nmの反射率は3.5%以下が好ましい。この反射防止層を設けることにより、太陽光、蛍光灯などによる反射から生じる画面の映り込みが解消され、また、表面の反射率を抑えることで、全光線透過率が上がり、透明性が向上する。なお、反射防止層の種類によっては、帯電防止性の向上を図ることができる。
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいては、基材フィルムのハードコート層とは反対側の面に、液晶表示体などの被着体に貼着させるための粘着剤層を形成させることができる。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、光学用途用のもの、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
さらに、この粘着剤層の上に、必要に応じて剥離フィルムを設けることができる。この剥離フィルムとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離フィルムの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【実施例】
【0016】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、シリカ粒子の粒度分布及び防眩性ハードコートフィルムの性能は、下記の方法に従って評価した。
(1)シリカ粒子の粒度分布及び平均粒径
(株)堀場製作所製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−920」を用いて測定する。
(2)全光線透過率
JIS K 7361−1に準拠し、日本電色工業(株)製「NDH2000」を用いて測定する。
(3)ヘイズ値
JIS K 7136に準拠し、日本電色工業(株)製「NDH2000」を用いて測定する。
(4)60°鏡面光沢度
JIS K 5600に準拠し、日本電色工業(株)製「VG2000」を用いて測定する。
(5)写像鮮明度
JIS K 7105に準拠し、スガ試験機(株)製写像性測定器「ICM−10P」を用いて測定する。
(6)表面の算術平均粗さ(Ra)
ISO 1997に準拠し、(株)ミツトヨ製「SURFTEST SV−3000」を用いて測定する。
(7)鉛筆硬度
JIS K 5400に準拠し、(株)東洋精機製作所製鉛筆引掻塗膜硬さ試験機「NP−TYPE」を用いて測定する。
(8)耐擦傷性
ハードコート層表面をスチールウール#0000(荷重9.8N)で往復させ、傷の有無を確認する。
【0017】
実施例1
紫外線硬化性樹脂[荒川化学工業(株)製、商品名「ビームセット575CB」、固形分濃度100%]100重量部に、表面を有機表面処理剤で処理されたシリカ粒子[富士シリシア化学(株)製、商品名「サイリシア436」、平均粒径4.1μm]7重量部を添加したものを2mmφのジルコニアビーズを用いたビーズミルにて、90分間分散処理したのち、レーザー回折・散乱法により、シリカ粒子の粒度分布を測定した。図1に、この粒度分布を示すと共に、平均粒径、粒度分布のピーク値及び比表面積を第1表に示す。
次いで、この分散処理物に、全体の固形分濃度が40重量%になるようにエチルセロソルブで希釈して活性エネルギー線硬化型組成物(コート剤)を調製した。このコート剤をマイヤーバーNo.8にて、厚さ80μmのトリアセチルセルロース系フィルム[富士写真フィルム(株)製、商品名「T80UZ」]に塗布し、70℃で1分間乾燥したのち、これに紫外光を250mJ/cm2の照射量で照射して硬化させ、ハードコート層を形成させた。このコート層の厚さは4.5μmであった。
得られたハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0018】
実施例2
実施例1において、表面を有機表面処理剤で処理されたシリカ粒子として、「サイリシア456RC」[商品名、富士シリシア化学(株)製、平均粒径6.7μm]を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
図2に、分散処理したシリカ粒子の粒度分布を示すと共に、平均粒径、粒度分布のピーク値及び比表面積を第1表に示す。また、ハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
実施例3
実施例1において、表面を有機表面処理剤で処理されたシリカ粒子として、「ニップシールSS−50B」[商品名、東ソー・シリカ(株)製、平均粒径1.5μm]を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
図3に、分散処理したシリカ粒子の粒度分布を示すと共に、平均粒径、粒度分布のピーク値及び比表面積を第1表に示す。また、ハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
実施例4
実施例1において、シリカ粒子として、「ニップシールE−200A」[商品名、東ソー・シリカ(株)製、平均粒径1.5μm]を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
図4に、分散処理したシリカ粒子の粒度分布を示すと共に、平均粒径、粒度分布のピーク値及び比表面積を第1表に示す。また、ハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
比較例1
実施例1において、シリカ粒子の分散処理をディスパー[特殊機化工業社製「T.Kホモディスパー」]を用いて10000rpmで30分間行った以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
図5に、分散処理したシリカ粒子の粒度分布を示すと共に、平均粒径、粒度分布のピーク値及び比表面積を第2表に示す。また、ハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
比較例2
実施例2において、シリカ粒子の分散処理を比較例1と同様のディスパーを用いて行った以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
図6に、分散処理したシリカ粒子の粒度分布を示すと共に、平均粒径、粒度分布のピーク値及び比表面積を第2表に示す。また、ハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
比較例3
実施例3において、シリカ粒子の分散処理を比較例1と同様のディスパーを用いて行った以外は、実施例3と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
図7に、分散処理したシリカ粒子の粒度分布を示すと共に、平均粒径、粒度分布のピーク値及び比表面積を第2表に示す。また、ハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
比較例4
実施例4において、シリカ粒子の分散処理を比較例1と同様のディスパーを用いて行った以外は、実施例4と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
図8に、分散処理したシリカ粒子の粒度分布を示すと共に、平均粒径、粒度分布のピーク値及び比表面積を第2表に示す。また、ハードコートフィルムの性能を第2表に示す。
【0021】
【表2】

【0022】
第1表及び第2表から、実施例のハードコートフィルムは、いずれも防眩性を保持したまま高い写像鮮明度を有すると共に、高硬度を有している。これに対し、比較例のハードコートフィルムはいずれも、高硬度を有するものの、写像鮮明度が著しく低く、全光線透過率も低い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の防眩性フィルムは、表面硬度が高い上、各種ディスプレイ、例えば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ブラウン管、さらにはタッチパネルなどに使用した際に、防眩性を付与すると共に、視認性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1における活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中のシリカ粒子の粒度分布を示すチャートである。
【図2】実施例2における活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中のシリカ粒子の粒度分布を示すチャートである。
【図3】実施例3における活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中のシリカ粒子の粒度分布を示すチャートである。
【図4】実施例4における活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中のシリカ粒子の粒度分布を示すチャートである。
【図5】比較例1における活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中のシリカ粒子の粒度分布を示すチャートである。
【図6】比較例2における活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中のシリカ粒子の粒度分布を示すチャートである。
【図7】比較例3における活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中のシリカ粒子の粒度分布を示すチャートである。
【図8】比較例4における活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中のシリカ粒子の粒度分布を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の面に、シリカ粒子を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いて形成された硬化物からなるハードコート層を有し、かつ前記組成物中のシリカ粒子が、レーザー回折・散乱法により測定される粒度分布において、粒径が0.1〜1μmと1.5〜5μmの範囲にそれぞれピークを有する、平均粒径が4μm以下のものであって、該シリカ粒子の含有量が、前記組成物の固形分重量に基づき、1〜20重量%であることを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
【請求項2】
写像鮮明度の各スリットの合計値が100以上である請求項1に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項3】
レーザー回折・散乱法により測定される粒度分布において、粒径が0.1〜1μmと1.5〜5μmの範囲にそれぞれピークを有する、平均粒径が4μm以下のシリカ粒子を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、前記シリカ粒子よりも平均粒径が大きく、かつレーザー回折・散乱法により測定される粒度分布において、1つのピークを有するシリカ粒子を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、剪断力を利用した粉砕・分散機能をもつ機器により粉砕・分散処理し、シリカ粒子の平均粒径を粉砕・分散処理前よりも0.5μm以上小さくすることにより得られたものである請求項1又は2に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項4】
ハードコート層の算術平均粗さRaが、0.05〜0.15μmである請求項1、2又は3に記載の防眩性ハードコートフィルム。
【請求項5】
ハードコート層の厚さが、0.5〜20μmである請求項1〜4のいずれかに記載の防眩性ハードコートフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−218798(P2006−218798A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35992(P2005−35992)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】