説明

防眩性反射防止フィルム、その製造方法及び表示装置

【課題】耐擦傷性に優れ、反射率が低く、表示装置に用いたとき視認性に優れた防眩性反射防止フィルム、その製造方法及び表示装置を提供することにある。
【解決手段】透明支持体上に直接または他の層を介して、バインダー、中空シリカ粒子、及び、一次粒子の平均粒径が該中空シリカ粒子より1nm以上小さく、かつ前記一次粒子の平均粒径が25〜60nmである無機粒子を含有する層を有することを特徴とする防眩性反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性反射防止フィルム、その製造方法及び表示装置に関し、詳しくは耐擦傷性に優れ、反射率が低く、表示装置に用いたとき視認性に優れた防眩性反射防止フィルム、その製造方法及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶等の画像表示装置の最表面で使用される防眩性反射防止フィルムでは、光学干渉方式の反射防止層を設けて低反射率とする技術が提案されている。
【0003】
反射率を下げる技術として、最表面の低屈折率層の屈折率を低下させる方法があり、低屈折率素材や、空隙を多くして屈折率を下げる方式が提案されている。しかし、いずれの技術についても、膜強度、耐傷性が弱点となっている。
【0004】
最近提案された、内部が多孔質または空洞となっている中空シリカ粒子を用いる技術(例えば、特許文献1〜3参照)は、空隙による屈折率低下を維持したまま膜強度を向上する技術である。それでも膜強度は不十分であり、中空シリカ粒子を20質量%以上含有させた低屈折率層では実用膜強度以下に低下する問題がある。また、中空シリカ粒子の分散液はロット間でのpHのバラツキのため、低屈折率層塗布組成物の粘度のバラツキが発生しやすく、また低屈折率層塗布組成物を調製後、塗布されるまでの間に中空シリカ粒子の内部からアンモニア等のアルカリ成分が溶出し、低屈折率層塗布組成物の粘度が変動(増加)する問題があった。
【0005】
また、チタンアルコキシドやシランアルコキシドに代表される金属アルコキシドを支持体の表面に塗布、乾燥、加熱して金属酸化物の膜を形成する方法が行われている。しかし、この方法では加熱温度が300℃以上という高い温度が必要で支持体にダメージを与え、また特開平8−75904号公報に記載されているような加熱温度が100℃と比較的低い方法では作製に長時間が必要となり、いずれにも問題点があった。
【0006】
一方、金属酸化物の膜を形成する方法としては、例えば、機能性膜の下地膜としてシリカ系膜を所謂ゾルゲル法によって形成する方法(特許文献4参照)、さらには、低屈折率層を同じくゾルゲル法によって形成する方法(特許文献5参照)が知られている。しかしこの方法も耐擦傷性は不十分であった。
【0007】
また、バインダー成分としてフッ素系樹脂を用いる技術(例えば、特許文献6〜8参照)についても、屈折率は低下するが膜強度が弱い問題がある。特許文献8では、バインダーに、中空シリカ微粒子と10〜20nmのシリカ粒子、ジルコニウム粒子を入れた低屈折率層が提案されているが、本件は防眩性反射防止フィルムであり、目的が異なる。
【0008】
特許文献9では、バインダーに、中空シリカ微粒子と平均粒径が該中空シリカ微粒子より大きい無機粒子とを含む光学機能層を有する反射防止フィルムが提案されているが、本発明とは添加する無機粒子の粒径の範囲が違い、また本件は防眩性反射防止フィルムであり、目的が異なる。
【0009】
このように、低屈折率化と膜強度はトレードオフの関係にあり、その改善が求められている。
【特許文献1】特開2001−167637号公報
【特許文献2】特開2001−233611号公報
【特許文献3】特開2002−79616号公報
【特許文献4】特開平11−269657号公報
【特許文献5】特開2000−910号公報
【特許文献6】特開2003−236970号公報
【特許文献7】特開2003−240906号公報
【特許文献8】特開2003−255103号公報
【特許文献9】特開2006−117924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、耐擦傷性に優れ、反射率が低く、表示装置に用いたとき視認性に優れた防眩性反射防止フィルム、その製造方法及び表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.透明支持体上に直接または他の層を介して、バインダー、中空シリカ粒子、及び、一次粒子の平均粒径が該中空シリカ粒子より1nm以上小さく、かつ前記一次粒子の平均粒径が25〜60nmである無機粒子を含有する層を有することを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
【0013】
2.前記無機粒子の一次粒子の粒径分布曲線の半値幅が15〜50nmであることを特徴とする前記1に記載の防眩性反射防止フィルム。
【0014】
3.前記バインダーがアルコキシシランの加水分解を用いたゾルゲル法により作製されていることを特徴とする前記1または2に記載の防眩性反射防止フィルム。
【0015】
4.前記3に記載の防眩性反射防止フィルムを製造する防眩性反射防止フィルムの製造方法において、前記アルコキシシランの加水分解液中に前記無機粒子を添加し、加水分解を行うことを特徴とする防眩性反射防止フィルムの製造方法。
【0016】
5.前記1〜3いずれか1項に記載の防眩性反射防止フィルム、または前記4に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法により得られた防眩性反射防止フィルムを有することを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐擦傷性に優れ、反射率が低く、表示装置に用いたとき視認性に優れた防眩性反射防止フィルム、その製造方法及び表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、バインダー、中空シリカ粒子、及び、一次粒子の平均粒径が該中空シリカ粒子より1nm以上小さく、かつ前記一次粒子の平均粒径が25〜60nmである無機粒子を含有する層を有することにより、中空シリカ粒子のみを添加した場合よりも、コントラストに優れ、フィルムの反射率を下げた防眩性反射防止フィルムが得られることを見出し、本発明に至った。
【0019】
また、アルコキシシランの加水分解液中に無機粒子を添加し、加水分解を行うゾルゲル法により、このような防眩性反射防止フィルムが得られることを見出した。
【0020】
驚くべきことに、中空シリカ粒子の含有率を増量するよりも、一次粒子の平均粒径が該中空シリカ粒子より1nm以上小さく、かつ平均粒径が25〜60nmである無機粒子を混合した方が、表面硬度ばかりでなく反射率低減効果も大きい。なお、他の層とは、後述するハードコート層、高屈折率層等の種々の機能層である。
【0021】
このような効果が発現される機構については、以下のように推察される。表面物性、特に表面硬度を低下させる中空シリカ粒子の含有率を減らし、表面硬度を低下させにくい、中空シリカ粒子より一次粒子の平均粒径が1nm以上小さい無機粒子を併用することで、防眩性反射防止フィルムの表面硬度低下を防ぐ。また、種類及び粒径の異なる粒子を含有させることで、乾燥塗膜に空隙が形成され、屈折率が低減される。防眩性の基材(透明支持体の表面の算術平均粗さ(Ra)が50〜1000nm未満である防眩性フィルム、または透明支持体上にハードコート層を有し、該ハードコート層の表面の算術平均粗さ(Ra)が60〜700nm未満である防眩性フィルム)上に反射防止層を形成する場合、前記中空シリカ粒子の平均粒径より大きい平均粒径の無機粒子を混合すると、乾燥中のレベリングが阻害され、実質的に均一膜厚となり屈折率が低減される。同時に、防眩性の凹凸は防眩性反射防止フィルムの最表面に保存され、防眩性を損なわない。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
〔低屈折率層〕
本発明に係る、バインダー、中空シリカ粒子、及び、一次粒子の平均粒径が該中空シリカ粒子より1nm以上小さく、かつ前記一次粒子の平均粒径が25〜60nmである無機粒子を含有する層は、低屈折率層として用いられる。
【0024】
低屈折率層の屈折率は、支持体である透明支持体の屈折率より低く、23℃、波長550nmで1.30〜1.45の範囲が好ましい。
【0025】
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmが好ましく、10nm〜0.3μmがより好ましく、30nm〜0.2μmであることがさらに好ましい。
【0026】
本発明に用いられる低屈折率層形成用組成物は、少なくとも中空シリカ粒子及び無機粒子を含有し、後者は該中空シリカ粒子より一次粒子の平均粒径が1nm以上小さく、かつ前記一次粒子の平均粒径が25〜60nmである。
【0027】
(中空シリカ粒子)
中空シリカ粒子は、前記内部が多孔質または空洞である。
【0028】
中空シリカ粒子は、(I)多孔質粒子と該多孔質粒子表面に設けられた被覆層とからなる複合粒子、または(II)内部に空洞を有し、かつ内容物が溶媒、気体または多孔質物質で充填された空洞粒子である。
【0029】
なお、空洞粒子は内部に空洞を有する粒子であり、空洞は粒子壁で囲まれている。空洞内には、調製時に使用した溶媒、気体または多孔質物質等の内容物で充填されている。このような中空シリカ粒子の平均粒径は5〜200nm、好ましくは10〜70nmが望ましい。中空シリカ粒子の粒径は変動係数が1〜40%の単分散であることが好ましい。平均粒径は、電子顕微鏡による電子顕微鏡写真により求め、粒子の100個平均を取って平均値とすることができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。使用する中空シリカ粒子の平均粒径は、形成される低屈折率層の透明被膜の厚さに応じて適宜選択され、透明被膜の膜厚の2/3〜1/10が望ましい。これらの中空シリカ粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)及びケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、ケトンアルコール(例えばジアセトンアルコール)が好ましい。
【0030】
複合粒子の被覆層の厚さまたは空洞粒子の粒子壁の厚さは、1〜20nm、好ましくは2〜15nmが望ましい。複合粒子の場合、被覆層の厚さが1nm未満の場合は、粒子を完全に被覆することができないことがあり、塗布液成分が容易に複合粒子の内部に進入して内部の多孔性が減少し、低屈折率化の効果が十分得られないことがある。また、被覆層の厚さが20nmを越えると、前記塗布液成分が内部に進入することはないが、複合粒子の多孔性(細孔容積)が低下し低屈折率化の効果が十分得られなくなることがある。また空洞粒子の場合、粒子壁の厚さが1nm未満の場合は、粒子形状を維持できないことがあり、また厚さが20nmを越えても、低屈折率化の効果が十分に現れないことがある。
【0031】
複合粒子の被覆層または空洞粒子の粒子壁は、シリカを主成分とすることが好ましい。また、シリカ以外の成分が含まれていてもよく、具体的には、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等が挙げられる。複合粒子を構成する多孔質粒子としては、シリカからなるもの、シリカとシリカ以外の無機化合物とからなるもの、CaF2、NaF、NaAlF6、MgF等からなるものが挙げられる。このうち特にシリカとシリカ以外の無機化合物との複合酸化物からなる多孔質粒子が好適である。シリカ以外の無機化合物としては、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、CeO2、P23、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等との1種または2種以上を挙げることができる。このような多孔質粒子では、シリカをSiO2で表し、シリカ以外の無機化合物を酸化物換算(MOX)で表したときのモル比MOX/SiO2が、0.0001〜1.0、好ましくは0.001〜0.3の範囲にあることが望ましい。多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が0.0001未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても細孔容積が小さく、屈折率の低い粒子が得られない。また、多孔質粒子のモル比MOX/SiO2が、1.0を越えると、シリカの比率が少なくなるので、細孔容積が大きくなり、さらに屈折率が低いものを得ることが難しいことがある。
【0032】
このような多孔質粒子の細孔容積は、0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.5ml/gの範囲であることが望ましい。細孔容積が0.1ml/g未満では、十分に屈折率の低下した粒子が得られず、1.5ml/gを越えると微粒子の強度が低下し、得られる被膜の強度が低下することがある。
【0033】
なお、このような多孔質粒子の細孔容積は水銀圧入法によって求めることができる。また、空洞粒子の内容物としては、粒子調製時に使用した溶媒、気体、多孔質物質等が挙げられる。溶媒中には空洞粒子調製する際に使用される粒子前駆体の未反応物、使用した触媒等が含まれていてもよい。また多孔質物質としては、前記多孔質粒子で例示した化合物からなるものが挙げられる。これらの内容物は、単一の成分からなるものであってもよいが、複数成分の混合物であってもよい。
【0034】
このような中空シリカ粒子の製造方法としては、例えば特開平7−133105号公報の段落番号[0010]〜[0033]に開示された複合酸化物コロイド粒子の調製方法が好適に採用される。具体的に、複合粒子が、シリカ、シリカ以外の無機化合物とからなる場合、以下の第1〜3工程から中空シリカ粒子は製造される。
【0035】
第1工程:多孔質粒子前駆体の調製
第1工程では、予め、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料のアルカリ水溶液を個別に調製するか、または、シリカ原料とシリカ以外の無機化合物原料との混合水溶液を調製しておき、この水溶液を目的とする複合酸化物の複合割合に応じて、pH10以上のアルカリ水溶液中に攪拌しながら徐々に添加して多孔質粒子前駆体を調製する。
【0036】
シリカ原料としては、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機塩基のケイ酸塩を用いる。アルカリ金属のケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)やケイ酸カリウムが用いられる。有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることができる。なお、アンモニウムのケイ酸塩または有機塩基のケイ酸塩には、ケイ酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物等を添加したアルカリ性溶液も含まれる。
【0037】
また、シリカ以外の無機化合物の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物が用いられる。具体的には、Al、B、Ti、Zr、Sn、Ce、P、Sb、Mo、Zn、W等から選ばれる元素のオキソ酸、該オキソ酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げることができる。より具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、錫酸カリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウムが適当である。
【0038】
これらの水溶液の添加と同時に混合水溶液のpH値は変化するが、このpH値を所定の範囲に制御するような操作は特に必要ない。水溶液は、最終的に、無機酸化物の種類及びその混合割合によって定まるpH値となる。このときの水溶液の添加速度には特に制限はない。また、複合酸化物粒子の製造に際して、シード粒子の分散液を出発原料と使用することも可能である。当該シード粒子としては、特に制限はないが、SiO2、Al23、TiO2またはZrO2等の無機酸化物またはこれらの複合酸化物の微粒子が用いられ、通常、これらのゾルを用いることができる。さらに前記の製造方法によって得られた多孔質粒子前駆体分散液をシード粒子分散液としてもよい。シード粒子分散液を使用する場合、シード粒子分散液のpHを10以上に調整した後、該シード粒子分散液中に前記化合物の水溶液を、上記したアルカリ水溶液中に攪拌しながら添加する。この場合も、必ずしも分散液のpH制御を行う必要はない。このようにしてシード粒子を用いると、調製する多孔質粒子の粒径コントロールが容易であり、粒度の揃ったものを得ることができる。
【0039】
上記したシリカ原料及び無機化合物原料はアルカリ側で高い溶解度を有する。しかしながら、この溶解度の大きいpH領域で両者を混合すると、ケイ酸イオン及びアルミン酸イオン等のオキソ酸イオンの溶解度が低下し、これらの複合物が析出して微粒子に成長したり、または、シード粒子上に析出して粒子成長が起る。従って、微粒子の析出、成長に際して、従来法のようなpH制御は必ずしも行う必要がない。
【0040】
第1工程におけるシリカとシリカ以外の無機化合物との複合割合は、シリカに対する無機化合物を酸化物(MOX)に換算し、MOX/SiO2のモル比が、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜2.0の範囲内にあることが望ましい。この範囲内において、シリカの割合が少なくなる程、多孔質粒子の細孔容積が増大する。しかしながら、モル比が2.0を越えても、多孔質粒子の細孔の容積はほとんど増加しない。他方、モル比が0.05未満の場合は、細孔容積が小さくなる。空洞粒子を調製する場合、MOX/SiO2のモル比は、0.25〜2.0の範囲内にあることが望ましい。
【0041】
第2工程:多孔質粒子からのシリカ以外の無機化合物の除去
第2工程では、前記第1工程で得られた多孔質粒子前駆体から、シリカ以外の無機化合物(珪素と酸素以外の元素)の少なくとも一部を選択的に除去する。具体的な除去方法としては、多孔質粒子前駆体中の無機化合物を鉱酸や有機酸を用いて溶解除去したり、または、陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換除去する。
【0042】
なお、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体は、珪素と無機化合物構成元素が酸素を介して結合した網目構造の粒子である。このように多孔質粒子前駆体から無機化合物(珪素と酸素以外の元素)を除去することにより、一層多孔質で細孔容積の大きい多孔質粒子が得られる。また、多孔質粒子前駆体から無機酸化物(珪素と酸素以外の元素)を除去する量を多くすれば、空洞粒子を調製することができる。
【0043】
また、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去するに先立って、第1工程で得られる多孔質粒子前駆体分散液に、シリカのアルカリ金属塩を脱アルカリして得られる、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有するケイ酸液または加水分解性の有機珪素化合物を添加してシリカ保護膜を形成することが好ましい。シリカ保護膜の厚さは0.5〜15nmの厚さであればよい。なおシリカ保護膜を形成しても、この工程での保護膜は多孔質であり厚さが薄いので、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することは可能である。
【0044】
このようなシリカ保護膜を形成することによって、粒子形状を保持したまま、前記したシリカ以外の無機化合物を、多孔質粒子前駆体から除去することができる。また、後述するシリカ被覆層を形成する際に、多孔質粒子の細孔が被覆層によって閉塞されてしまうことがなく、このため細孔容積を低下させることなく後述するシリカ被覆層を形成することができる。なお、除去する無機化合物の量が少ない場合は粒子が壊れることがないので必ずしも保護膜を形成する必要はない。
【0045】
また空洞粒子を調製する場合は、このシリカ保護膜を形成しておくことが望ましい。空洞粒子を調製する際には、無機化合物を除去すると、シリカ保護膜と、該シリカ保護膜内の溶媒、未溶解の多孔質固形分とからなる空洞粒子の前駆体が得られ、該空洞粒子の前駆体に後述の被覆層を形成すると、形成された被覆層が、粒子壁となり空洞粒子が形成される。
【0046】
上記シリカ保護膜形成のために添加するシリカ源の量は、粒子形状を保持できる範囲で少ないことが好ましい。シリカ源の量が多すぎると、シリカ保護膜が厚くなりすぎるので、多孔質粒子前駆体からシリカ以外の無機化合物を除去することが困難となることがある。シリカ保護膜形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、一般式RnSi(OR′)4-n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、フッ素置換したテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
【0047】
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子の分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を無機酸化物粒子の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
【0048】
多孔質粒子前駆体の分散媒が、水単独、または有機溶媒に対する水の比率が高い場合には、ケイ酸液を用いてシリカ保護膜を形成することも可能である。ケイ酸液を用いる場合には、分散液中にケイ酸液を所定量添加し、同時にアルカリを加えてケイ酸液を多孔質粒子表面に沈着させる。なお、ケイ酸液と上記アルコキシシランを併用してシリカ保護膜を作製してもよい。
【0049】
第3工程:シリカ被覆層の形成
第3工程では、第2工程で調製した多孔質粒子分散液(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体分散液)に、フッ素置換アルキル基含有シラン化合物を含有する加水分解性の有機珪素化合物またはケイ酸液等を加えることにより、粒子の表面を加水分解性有機珪素化合物またはケイ酸液等の重合物で被覆してシリカ被覆層を形成する。
【0050】
シリカ被覆層形成用に使用される加水分解性の有機珪素化合物としては、前記したような一般式RnSi(OR′)4-n〔R、R′:アルキル基、アリール基、ビニル基、アクリル基等の炭化水素基、n=0、1、2または3〕で表されるアルコキシシランを用いることができる。特に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシランが好ましく用いられる。
【0051】
添加方法としては、これらのアルコキシシラン、純水、及びアルコールの混合溶液に触媒としての少量のアルカリまたは酸を添加した溶液を、前記多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液に加え、アルコキシシランを加水分解して生成したケイ酸重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の表面に沈着させる。このとき、アルコキシシラン、アルコール、触媒を同時に分散液中に添加してもよい。アルカリ触媒としては、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン類を用いることができる。また、酸触媒としては、各種の無機酸と有機酸を用いることができる。
【0052】
多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)の分散媒が水単独、または有機溶媒との混合溶媒であって、有機溶媒に対する水の比率が高い混合溶媒の場合には、ケイ酸液を用いて被覆層を形成してもよい。ケイ酸液とは、水ガラス等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液をイオン交換処理して脱アルカリしたケイ酸の低重合物の水溶液である。
【0053】
ケイ酸液は、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中に添加され、同時にアルカリを加えてケイ酸低重合物を多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)表面に沈着させる。なお、ケイ酸液を上記アルコキシシランと併用して被覆層形成用に使用してもよい。被覆層形成用に使用される有機珪素化合物またはケイ酸液の添加量は、コロイド粒子の表面を十分被覆できる程度であればよく、最終的に得られるシリカ被覆層の厚さが1〜20nmとなるように量で、多孔質粒子(空洞粒子の場合は空洞粒子前駆体)分散液中で添加される。また前記シリカ保護膜を形成した場合はシリカ保護膜とシリカ被覆層の合計の厚さが1〜20nmの範囲となるような量で、有機珪素化合物またはケイ酸液は添加される。
【0054】
次いで、被覆層が形成された粒子の分散液を加熱処理する。加熱処理によって、多孔質粒子の場合は、多孔質粒子表面を被覆したシリカ被覆層が緻密化し、多孔質粒子がシリカ被覆層によって被覆された複合粒子の分散液が得られる。また空洞粒子前駆体の場合、形成された被覆層が緻密化して空洞粒子壁となり、内部が溶媒、気体または多孔質固形分で充填された空洞を有する空洞粒子の分散液が得られる。
【0055】
このときの加熱処理温度は、シリカ被覆層の微細孔を閉塞できる程度であれば特に制限はなく、80〜300℃の範囲が好ましい。加熱処理温度が80℃未満ではシリカ被覆層の微細孔を完全に閉塞して緻密化できないことがあり、また処理時間に長時間を要してしまうことがある。また加熱処理温度が300℃を越えて長時間処理すると緻密な粒子となることがあり、低屈折率化の効果が得られないことがある。
【0056】
このようにして得られた無機粒子の屈折率は、1.42未満と低い。このような無機粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。
【0057】
内部が多孔質または空洞である中空シリカ粒子の低屈折率層中の含有量は、10〜40質量%であることが好ましい。低屈折率化の効果を得る上で、15質量%以上が好ましく、40質量%を超えるとバインダー成分が少なくなり膜強度が不十分となる。特に好ましくは20〜40質量%である。
【0058】
(無機粒子)
中空シリカ粒子と併用して本発明に用いられる無機粒子は、一次粒子の平均粒径が該中空シリカ粒子より1nm以上小さく、かつ前記一次粒子の平均粒径が25〜60nmである。一次粒子とは、材料から酸化等の化学的変化及び/または、結晶化等の物理的変化を経て得られた粒子であり、最小の結晶物を指す。一次粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真により求め、粒子の100個平均を取って平均値とすることができる。また、動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。
【0059】
無機粒子の粒径は単分散であることが好ましく、無機粒子の一次粒子の粒径分布曲線の半値幅が15〜50nmであることが好ましい。半値幅とは、粒径分布曲線のピーク高さの1/2の高さでの粒径幅である。
【0060】
無機粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。無機粒子は珪素を含むものが好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0061】
二酸化珪素の無機粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0062】
酸化ジルコニウムの無機粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0063】
無機粒子の低屈折率層中の含有量は、低屈折率層中の固形分に対し30〜60質量%であることが好ましい。低屈折率化の効果を得る上で、30質量%以上が好ましく、40質量%を超えるとバインダー成分が少なくなり膜強度が不十分となる。
【0064】
低屈折率層中の中空シリカ粒子と無機粒子の含有量比は、反射率低減効果と表面硬度の観点から選ばれるが、1:0.1〜10が好ましく、1:0.8〜5がより好ましい。
【0065】
(バインダー)
低屈折率層は、全体で5〜80質量%のバインダーを含むことが好ましい。バインダーは、中空シリカ粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。バインダーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。
【0066】
バインダーとしては、下記一般式(1)で表されるアルコキシシランの加水分解物を用いたゾルゲル法により作製することが好ましく、具体的には前記アルコキシシランの加水分解液中に前記無機粒子を添加し、加水分解を行うことが好ましい。
【0067】
一般式(1) Si(OR)4
式中、Rはアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。具体的化合物には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
【0068】
また、低屈折率層にはバインダーとしてシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0069】
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
【0070】
これらのうち、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、珪素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
【0071】
2種類以上のカップリング剤を併用してもよい。上記に示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリング剤を用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例えば、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec−ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)及びその加水分解物が挙げられる。
【0072】
低屈折率層のその他のバインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂が挙げられる。
【0073】
(溶媒)
本発明に係る低屈折率層塗布組成物は有機溶媒を含有することが好ましい。具体的な有機溶媒の例としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
【0074】
低屈折率層塗布組成物中の固形分濃度は1〜4質量%であることが好ましく、該固形分濃度が4質量%以下にすることによって、塗布ムラが生じにくくなり、1質量%以上にすることによって乾燥負荷が軽減される。
【0075】
(フッ素系またはシリコーン界面活性剤)
低屈折率層にはフッ素系またはシリコーン系の界面活性剤を含有することが好ましい。上記界面活性剤を含有させることで、塗布ムラを低減したり膜表面の防汚性を向上させるのに有効である。
【0076】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を含有するモノマー、オリゴマー、ポリマーを母核としたもので、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン等の誘導体等が挙げられる。
【0077】
フッ素系界面活性剤は市販品を用いることもでき、例えばサーフロン「S−381」、「S−382」、「SC−101」、「SC−102」、「SC−103」、「SC−104」(何れも旭硝子(株)製)、フロラード「FC−430」、「FC−431」、「FC−173」(何れもフロロケミカル−住友スリーエム製)、エフトップ「EF352」、「EF301」、「EF303」(何れも新秋田化成(株)製)、シュベゴーフルアー「8035」、「8036」(何れもシュベグマン社製)、「BM1000」、「BM1100」(いずれもビーエム・ヒミー社製)、メガファック「F−171」、「F−470」(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)、等を挙げることができる。
【0078】
本発明におけるフッ素系界面活性剤のフッ素含有割合は、0.05〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%である。上記のフッ素系界面活性剤は、1種または2種以上を併用することができ、またその他の界面活性剤と併用することができる。
【0079】
シリコーンオイルまたはシリコーン界面活性剤について説明する。
【0080】
本発明に用いられるシリコーンオイルは、ケイ素原子に結合した有機基の種類により、ストレートシリコーンオイルと変性シリコーンオイルに大別できる。ストレートシリコーンオイルとは、メチル基、フェニル基、水素原子を置換基として結合したものをいう。変性シリコーンオイルとは、ストレートシリコーンオイルから二次的に誘導された構成部分をもつものである。一方、シリコーンオイルの反応性からも分類することができる。これらをまとめると、以下のようになる。
【0081】
シリコーンオイル
1.ストレートシリコーンオイル
1−1.非反応性シリコーンオイル:ジメチル、メチルフェニル置換等
1−2.反応性シリコーンオイル:メチル水素置換等
2.変性シリコーンオイル
ジメチルシリコーンオイルに、さまざまな有機基を導入することで生まれたものが、変性シリコーンオイル
2−1.非反応性シリコーンオイル:アルキル、アルキル/アラルキル、アルキル/ポリエーテル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル置換等、
アルキル/アラルキル変性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を長鎖アルキル基あるいはフェニルアルキル基に置換えたシリコーンオイル、
ポリエーテル変性シリコーンオイルは、親水性のポリオキシアルキレンを疎水性のジメチルシリコーンに導入したシリコーン系高分子界面活性剤、
高級脂肪酸変性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部を高級脂肪酸エステルに置換えたシリコーンオイル、
アミノ変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をアミノアルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイル、
エポキシ変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をエポキシ基含有アルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイル、
カルボキシル変性あるいはアルコール変性シリコーンオイルは、シリコーンオイルのメチル基の一部をカルボキシル基あるいは水酸基含有アルキル基に置換えた構造をもつシリコーンオイル
2−2.反応性シリコーンオイル:アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコール置換等
これらの内、ポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましく添加される。ポリエーテル変性シリコーンオイルの数平均分子量は、例えば、1,000〜100,000、好ましくは2,000〜50,000が適当であり、数平均分子量が1,000未満では、塗膜の乾燥性が低下し、逆に、数平均分子量が100,000を越えると、塗膜表面にブリードアウトしにくくなる傾向にある。
【0082】
具体的な商品としては、日本ユニカー(株)のL−45、L−9300、FZ−3704、FZ−3703、FZ−3720、FZ−3786、FZ−3501、FZ−3504、FZ−3508、FZ−3705、FZ−3707、FZ−3710、FZ−3750、FZ−3760、FZ−3785、FZ−3785、Y−7499、信越化学社のKF96L、KF96、KF96H、KF99、KF54、KF965、KF968、KF56、KF995、KF351、KF352、KF353、KF354、KF355、KF615、KF618、KF945、KF6004、FL100等がある。
【0083】
本発明に用いられるシリコーン界面活性剤は、シリコーンオイルのメチル基の一部を親水性基に置換した界面活性剤である。置換の位置は、シリコーンオイルの側鎖、両末端、片末端、両末端側鎖等がある。親水性基としては、ポリエーテル、ポリグリセリン、ピロリドン、ベタイン、硫酸塩、リン酸塩、4級塩等がある。
【0084】
シリコーン界面活性剤としては、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤が好ましい。
【0085】
非イオン界面活性剤は、水溶液中でイオンに解離する基を有しない界面活性剤を総称していうが、疎水基のほか親水性基として多価アルコール類の水酸基、また、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン)等を親水基として有するものである。親水性はアルコール性水酸基の数が多くなるに従って、またポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖)が長くなるに従って強くなる。本発明に係わる非イオン界面活性剤は疎水基としてジメチルポリシロキサンを有することに特徴がある。
【0086】
疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン界面活性剤を用いると、前記の低屈折率層のムラや膜表面の防汚性が向上する。ポリメチルシロキサンからなる疎水基が表面に配向し汚れにくい膜表面を形成するものと考えられる。他の界面活性剤を用いることでは得られない効果である。
【0087】
これらの非イオン活性剤の具体例としては、例えば、日本ユニカー(株)製、シリコーン界面活性剤 SILWET L−77、L−720、L−7001、L−7002、L−7604、Y−7006、FZ−2101、FZ−2104、FZ−2105、FZ−2110、FZ−2118、FZ−2120、FZ−2122、FZ−2123、FZ−2130、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164、FZ−2166、FZ−2191等が挙げられる。
【0088】
また、SUPERSILWET SS−2801、SS−2802、SS−2803、SS−2804、SS−2805等が挙げられる。
【0089】
また、これら、疎水基がジメチルポリシロキサン、親水基がポリオキシアルキレンから構成される非イオン系の界面活性剤の好ましい構造としては、ジメチルポリシロキサン構造部分とポリオキシアルキレン鎖が交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマーであることが好ましい。主鎖骨格の鎖長が長く、直鎖状の構造であることから、優れている。親水基と疎水基が交互に繰り返したブロックコポリマーであることにより、中空シリカ粒子の表面を1つの活性剤分子が、複数の箇所で、これを覆うように吸着することができるためと考えられる。
【0090】
これらの具体例としては、例えば、日本ユニカー(株)製、シリコーン界面活性剤 ABN SILWET FZ−2203、FZ−2207、FZ−2208、FZ−2222等が挙げられる。
【0091】
これらのシリコーンオイルまたはシリコーン界面活性剤の中では、ポリエーテル基を有するものが好ましい。
【0092】
また、ビックケミージャパン社製の界面活性剤BYKシリーズ、BYK−300/302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−340、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−352、BYK−354、BYK−355/356、BYK−358N/361N、BYK−357、BYK−390、BYK−392、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570、BYK−Silclean3700、GE東芝シリコーン社製のジメチルシリコーンシリーズ、XC96−723、YF3800、XF3905、YF3057、YF3807、YF3802、YF3897を好ましく用いることができる。
【0093】
他の界面活性剤も併用して用いてもよく、適宜、例えばスルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、リン酸エステル塩系等のアニオン界面活性剤、また、ポリオキシエチレン鎖親水基として有するエーテル型、エーテルエステル型等の非イオン界面活性剤等を併用してもよい。
【0094】
本発明では、これらのシリコーンオイルまたはシリコーン界面活性剤を、低屈折率層及び低屈折率層に隣接する層、具体的にはハードコート層や高屈折率層に用いることが好ましい。低屈折率層が反射防止フィルムの最表面層である場合には、塗膜の撥水、撥油性、防汚性を高めるばかりでなく、表面の耐擦り傷性にも効果を発揮する。低屈折率層塗布液中の含有量は、0.05〜2.0質量%であることが好ましい。0.05質量%未満ではクラック耐性効果が不十分であり、2.0質量%を超えると塗布ムラを生じることがある。
【0095】
(酸)
本発明では、低屈折率層塗布組成物への酸の添加により、中空シリカ粒子の内部からアンモニア等のアルカリ成分が溶出して、塗布液調製後塗布までの間に低屈折率層塗布組成物の粘度が増加することを防止するもできる。
【0096】
添加する酸は公知の無機酸や有機酸が挙げられるが、本発明においては有機酸が好ましい。有機酸としては酢酸、蟻酸、プロピオン酸等が挙げられ、このうちでは酢酸が好ましい。有機酸の添加量は、中空シリカ粒子の内部からアンモニア等のアルカリ成分に対応する量であり、中空シリカ粒子分散液中の固形分に対し、酸、例えば酢酸を5〜100質量%添加する。中空シリカ粒子分散液の濃度によるが、通常、中空シリカ粒子分散液の0.5〜30.0質量%の範囲で酸を添加することが好ましい。
【0097】
〔高屈折率層〕
透明支持体と低屈折率層の間には、種々の機能層を設けることができる。その代表的な層である高屈折率層について説明する。
【0098】
(高屈折率層の金属酸化物微粒子)
高屈折率層には金属酸化物微粒子を含有することが好ましい。金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子はAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Ta等の微量の原子をドープしてあってもよい。また、これらの混合物でもよい。本発明においては、中でも酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが好ましく、特に好ましくはアンチモン酸亜鉛である。
【0099】
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径は10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、針状あるいは不定形状であることが好ましい。
【0100】
高屈折率層の屈折率は、具体的には、支持体である透明支持体の屈折率より高く、23℃、波長550nm測定で、1.50〜1.90の範囲であることが好ましい。高屈折率層の屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子の種類、添加量が支配的であるため、金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であることが好ましい。
【0101】
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。金属酸化物微粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での凝集、沈降を抑えることもできる。このため、好ましい有機化合物での表面修飾量は金属酸化物粒子に対して0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でも後述するシランカップリング剤が好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。
【0102】
前記金属酸化物微粒子を含有する高屈折率層の厚さは5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。
【0103】
使用する金属酸化物微粒子と後述する電離放射線硬化型樹脂等のバインダーとの比は、金属酸化物微粒子の種類、粒子サイズ等により異なるが体積比で前者1に対して後者2から前者2に対して後者1程度が好ましい。
【0104】
本発明において用いられる金属酸化物微粒子の使用量は高屈折率層中に5〜85質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましく、20〜75質量%がさらに好ましい。使用量が少ないと所望の屈折率や本発明の効果が得られず、多すぎると膜強度の劣化等が発生する。
【0105】
上記金属酸化物微粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層を形成するための塗布液に供される。金属酸化物粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、ケトンアルコール(例、ジアセトンアルコール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
【0106】
また金属酸化物微粒子は、分散機を用いて媒体中に分散することができる。分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
【0107】
本発明では、さらにコア/シェル構造を有する金属酸化物微粒子を含有させてもよい。シェルはコアの周りに1層形成させてもよいし、耐光性をさらに向上させるために複数層形成させてもよい。コアは、シェルにより完全に被覆されていることが好ましい。
【0108】
コアは酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型等)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ等を用いることができる。
【0109】
シェルは酸化チタン以外の無機化合物を主成分とし、金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。例えば、二酸化珪素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化鉄、硫化亜鉛等を主成分とした無機化合物が用いられる。この内アルミナ、シリカ、ジルコニア(酸化ジルコニウム)であることが好ましい。また、これらの混合物でもよい。
【0110】
コアに対するシェルの被覆量は、平均の被覆量で2〜50質量%である。好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは4〜25質量%である。シェルの被覆量が多いと微粒子の屈折率が低下し、被覆量が少な過ぎると耐光性が劣化する。二種以上の無機粒子を併用してもよい。
【0111】
コアとなる酸化チタンは、液相法または気相法で作製されたものを使用できる。また、シェルをコアの周りに形成させる手法としては、例えば、米国特許第3,410,708号、特公昭58−47061号、米国特許第2,885,366号、同第3,437,502号、英国特許第1,134,249号、米国特許第3,383,231号、英国特許第2,629,953号、同第1,365,999号に記載されている方法等を用いることができる。
【0112】
(電離放射線硬化型樹脂)
電離放射線硬化型樹脂は金属酸化物微粒子のバインダーとして塗膜の成膜性や物理的特性の向上のために添加される。電離放射線硬化型樹脂としては、紫外線や電子線のような電離放射線の照射により直接、または光重合開始剤の作用を受けて間接的に重合反応を生じる官能基を2個以上有するモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。官能基としては(メタ)アクリロイルオキシ基等のような不飽和二重結合を有する基、エポキシ基、シラノール基等が挙げられる。中でも不飽和二重結合を2個以上有するラジカル重合性のモノマーやオリゴマーを好ましく用いることができる。必要に応じて光重合開始剤を組み合わせてもよい。このような電離放射線硬化型樹脂としては、例えば多官能アクリレート化合物等が挙げられ、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれる化合物であることが好ましい。ここで、多官能アクリレート化合物とは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
【0113】
多官能アクリレート化合物のモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートが好ましく挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
【0114】
電離放射線硬化型樹脂の添加量は、高屈折率組成物では固形分中の15質量%以上50質量%未満であることが好ましい。
【0115】
電離放射線硬化型樹脂の硬化促進のために、光重合開始剤と分子中に重合可能な不飽和結合を2個以上有するアクリル系化合物とを質量比で3:7〜1:9含有することが好ましい。
【0116】
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0117】
(溶媒)
高屈折率層をコーティングする際に用いられる有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられるが、特に、アルコール類、多価アルコール類、多価アルコールエーテル類が好ましい。
【0118】
〔ハードコート層〕
本発明の防眩性反射防止フィルムには、透明支持体と、高屈折率層や低屈折率層等の反射防止層との間にハードコート層を設けることが好ましい。ハードコート層は活性エネルギー線硬化樹脂層であることが好ましい。
【0119】
活性エネルギー線硬化樹脂層とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が好ましい。
【0120】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
【0121】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。
【0122】
例えば、ユニディック17−806(大日本インキ化学工業(株)製)100部とコロネートL(日本ポリウレタン(株)製)1部との混合物等が好ましく用いられる。
【0123】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させると容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
【0124】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光重合開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
【0125】
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0126】
これら紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。上記光重合開始剤も光増感剤として使用できる。また、エポキシアクリレート系の光重合開始剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。紫外線硬化樹脂組成物に用いられる光重合開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
【0127】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0128】
本発明において使用し得る紫外線硬化樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製);NKハードB−420、B−500(新中村化学工業(株)製)等を適宜選択して利用できる。
【0129】
また、具体的化合物例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0130】
こうして得た硬化樹脂層には耐傷性、滑り性や屈折率を調整し、また作製された反射防止フィルムに防眩性を付与するために無機化合物または有機化合物の微粒子を含んでもよい。
【0131】
ハードコート層に使用される無機粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
【0132】
また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることができる。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)が挙げられる。
【0133】
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.01〜5μmが好ましく0.1〜5.0μm、さらには、0.1〜4.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有することが好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。
【0134】
これらのハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することができる。塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理を行う。
【0135】
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させ、硬化皮膜層を形成するための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常5〜500mJ/cm2、好ましくは5〜150mJ/cm2であるが、特に好ましくは20〜100mJ/cm2である。
【0136】
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、さらに好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによってさらに平面性優れたフィルムを得ることができる。
【0137】
ハードコート層塗布液には溶媒が含まれていてもよく、必要に応じて適宜含有し、希釈されたものであってもよい。塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中でもから適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0138】
(防眩性)
本発明の防眩性反射防止フィルムの防眩性とは、表面に反射した像の輪郭をぼかすことによって反射像の視認性を低下させて、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置等の使用時に反射像の映り込みが気にならないようにするものである。表面に適切な凹凸を設けることによって、このような性質を持たせることができる。
【0139】
このような凹凸を形成する方法としては、透明支持体への加工、ハードコート層への加工、反射防止層を塗布した後での防眩性反射防止フィルムへの加工等を選択できるが、防眩性反射防止フィルムへの加工は、凹凸形状の凸部が反射防止層を突き破ったり、反射防止層を変形させて反射防止効果を損なうことがあるため、本発明では透明支持体への加工、ハードコート層への加工が好ましい。
【0140】
本発明で言う凹凸形状としては、直円錐、斜円錐、角錐、斜角錐、楔型、凸多角体、半球状等から選ばれる構造、並びにそれらの部分形状を有する構造が挙げられる。なお、半球状は、必ずしもその表面形状は真球形状である必要はなく、楕円体形状や、より変形した凸曲面形状であってもよい。また、凹凸形状の稜線が線状に伸びた、プリズム形状、レンチキュラーレンズ形状、フレネルレンズ形状も挙げられる。その稜線から谷線にかけての斜面は平面状、曲面状、もしくは両者の複合的形状であってもよい。
【0141】
ハードコート層は、JIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さ(Ra)が60〜700nm、好ましくは80〜400nmの防眩性ハードコート層が好ましい。Raが60nm未満では防眩性の効果が弱く、700nmを超えると目視で粗すぎる印象を受ける。算術平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えば光学干渉式表面粗さ計RST/PLUS(WYKO社製)を用いて測定することができる。
【0142】
ハードコート層及び後述する透明支持体の表面に凹凸形状を形成する方法として、例えば、下記の方法等が挙げられる。
(1)ロールや原盤に目的とする形状のネガ型を形成しておき、エンボスにて形状を付与する方法。
(2)ロールや原盤に目的とする形状のネガ型を形成しておき、熱硬化性樹脂をネガ型に充填し、加熱硬化後ネガ型から剥離する方法。
(3)ロールや原盤に目的とする形状のネガ型を形成しておき、紫外線または電子線硬化樹脂を塗布し凹部に充填後、樹脂液を介して凹版上に透明支持体を被覆したまま紫外線または電子線を照射し、硬化させた樹脂とそれが接着した透明支持体とをネガ型から剥離する方法。
(4)目的とする形状のネガ型を流延ベルトに形成しておき、キャスティング時に目的とする形状を付与する溶剤キャスト法。
(5)光または加熱により硬化する樹脂を透明基板に凸版印刷し、光または加熱により硬化して凹凸を形成する方法。
(6)透明支持体表面に光または加熱して硬化する樹脂をインクジェット法により印刷し、光または加熱により硬化して透明支持体表面を凹凸形状にする方法。
(7)表面を工作機械等で切削加工する方法。
(8)球、多角体等各種形状の粒子を、透明支持体表面に半ば埋没する程度に押し込んで一体化し、透明支持体表面を凹凸形状にする方法。
(9)球、多角体等各種形状の粒子を少量のバインダーに分散したものを透明支持体表面に塗布し、透明支持体表面を凹凸形状にする方法。
(10)透明支持体表面に、バインダーを塗布し、その上に球、多角体等各種形状の粒子を散布し、透明支持体表面を凹凸形状にする方法。
【0143】
ハードコート層を防眩性にするには防眩性微粒子を塗布液に添加する方法がある。
【0144】
本発明において、防眩性微粒子としては、例えば、無機粒子または有機微粒子を挙げることができる。
【0145】
無機粒子としては、例えば、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0146】
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0147】
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0148】
また、有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂微粒子、アクリルスチレン系樹脂微粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子、シリコーン系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、ポリカーボネート樹脂微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子、メラミン系樹脂微粒子、ポリオレフィン系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、ポリアミド系樹脂微粒子、ポリイミド系樹脂微粒子、またはポリ弗化エチレン系樹脂微粒子等を挙げることができる。
【0149】
本発明で用いることのできる防眩性微粒子の平均粒径は、0.005〜3μmが好ましく、0.1〜1.0μmが特に好ましい。粒径や屈折率の異なる2種以上の防眩性微粒子を含有させてもよい。
【0150】
さらにハードコート層に前記フッ素系またはシリコーン系界面活性剤を含有させることも好ましい。これらは下層への塗布性を高める。これらの成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。シリコーン系界面活性剤の具体例としては、前記低屈折率層で説明したビックケミージャパン社製の界面活性剤BYKシリーズが挙げられる。
【0151】
また、ハードコート層は、2層以上の重層構造を有し、その中の1層は例えば導電性微粒子、または、イオン性ポリマーを含有する所謂帯電防止層としてもよいし、また、種々の表示素子に対する色補正用フィルターとして色調調整機能を有する色調調整剤を含有させてもよいし、また電磁波遮断剤または赤外線吸収剤等を含有させそれぞれの機能を有するようにすることは好ましい。
【0152】
ハードコート層塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることができる。塗布量はウェット膜厚として0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜15μm、好ましくは1〜8μmである。
【0153】
ハードコート層は塗布乾燥後に、紫外線を照射するのがよく、必要な活性線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜1分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
【0154】
また、これら活性線照射部の照度は50〜150mW/m2であることが好ましい。
【0155】
〔バックコート層〕
本発明の防眩性反射防止フィルムでは、透明支持体となるセルロースエステルフィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層を設けた側と反対側の面にはバックコート層を設けることが好ましい。バックコート層は、活性エネルギー線硬化樹脂層やその他の層を設けることで生じるカールを矯正するために設けられる。即ち、バックコート層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質を持たせることにより、カールの度合いをバランスさせることができる。なお、バックコート層は好ましくはブロッキング防止層を兼ねて塗設され、その場合、バックコート層塗布組成物には、ブロッキング防止機能を持たせるために微粒子が添加されることが好ましい。
【0156】
バックコート層に添加される微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものがヘイズが低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0157】
これらの微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0158】
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが、ヘイズを低く保ちながら、ブロッキング防止効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明の防眩性反射防止フィルムは、活性エネルギー線硬化樹脂層の裏面側の動摩擦係数が0.9以下、特に0.1〜0.9であることが好ましい。
【0159】
バックコート層に含まれる微粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%好ましくは0.1〜10質量%であることが好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、特に0.0〜0.1%であることが好ましい。
【0160】
バックコート層は、具体的にはセルロースエステルフィルムを溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合物の他さらに溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを透明樹脂フィルムのカール度合いや樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
【0161】
カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒及び/または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。このような混合組成物に含まれる、透明樹脂フィルムを溶解または膨潤させる溶媒としては、例えば、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム等がある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノールまたは炭化水素類(トルエン、キシレン)等がある。
【0162】
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、またはスプレー塗布、インクジェット塗布等を用いて透明樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μmで塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであることが好ましい。バックコート層のバインダーとして用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート(好ましくはアセチル基置換度1.8〜2.3、プロピオニル基置換度0.1〜1.0)、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロース誘導体、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(根上工業株式会社製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118等(三菱レーヨン(株)製)のアクリル及びメタクリル系モノマーを原料として製造した各種ホモポリマー並びにコポリマー等が市販されており、この中から好ましいモノを適宜選択することもできる。
【0163】
特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂層である。
【0164】
バックコート層を塗設する順番はセルロースエステルフィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層を塗設する前でも後でも構わないが、バックコート層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。または2回以上に分けてバックコート層を塗布することもできる。
【0165】
前記低屈折率層で説明したビックケミージャパン社製の界面活性剤BYKシリーズ、GE東芝シリコーン社製のジメチルシリコーンシリーズは、低屈折率層以外の反射防止層にも好ましく用いることができる。
【0166】
〔透明支持体〕
次に、本発明で用いることのできる透明支持体について説明する。
【0167】
本発明に用いられる透明支持体としては、製造が容易であること、活性線硬化型樹脂層との接着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。
【0168】
本発明でいう透明とは、可視光の透過率60%以上であることを指し、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0169】
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン社製))、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムまたはガラス板等を挙げることができる。中でも、セルローストリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)が好ましく、本発明においては、特にセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック、製品名KC8UX2MW、KC4UX2MW、KC8UY、KC4UY、KC5UN、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5(コニカミノルタオプト(株)製))が、製造上、コスト面、透明性、等方性、接着性等の観点から好ましく用いられる。これらのフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
【0170】
(セルロースエステル)
本発明においては、透明支持体としてはセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
【0171】
特にアセチル基の置換度をX、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルを有する透明支持体上に活性線硬化型樹脂層と反射防止層を設けた低反射積層体が好ましく用いられる。
【0172】
2.3≦X+Y≦3.0
0.1≦Y≦1.2
特に、2.5≦X+Y≦2.9
0.3≦Y≦1.2であることが好ましい。
【0173】
本発明に用いられる透明支持体として、セルロースエステルを用いる場合、セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
【0174】
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C25COCl、C37COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することができる。また、本発明に用いられるセルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
【0175】
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。なお、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。
【0176】
プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネートは耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
【0177】
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
【0178】
セルロースエステルの数平均分子量は、70000〜250000が、成型した場合の機械的強度が強く、かつ、適度なドープ粘度となり好ましく、さらに好ましくは、80000〜150000である。
【0179】
これらセルロースエステルフィルムは、一般的に溶液流延製膜法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば、無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造されることが好ましい。
【0180】
(有機溶媒)
これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解でき、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセト酢酸メチル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、アセト酢酸メチル等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0181】
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させる時に、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
【0182】
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライドあるいは酢酸メチルが好ましく用いられる。
【0183】
上記有機溶媒の他に、0.1〜40質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
【0184】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。
【0185】
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70〜95質量%に対してエタノール5〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることもできる。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。
【0186】
(可塑剤)
本発明の防眩性反射防止フィルムにセルロースエステルフィルムを用いる場合、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
【0187】
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。その他のカルボン酸エステルの例には、トリメチロールプロパントリベンゾエート、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
【0188】
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることができる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0189】
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
【0190】
(紫外線吸収剤)
本発明の防眩性反射防止フィルムにセルロースエステルフィルムを用いる場合、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0191】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0192】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば下記の紫外線吸収剤を具体例として挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0194】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、Ciba製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0195】
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0196】
また、特開2001−187825号に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、長尺フィルムの面品質を向上させ、塗布性にも優れている。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0197】
また、特開平6−148430号に記載の一般式(1)または一般式(2)、特願2000−156039号の一般式(2)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)も好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等が市販されている。
【0198】
(微粒子)
また、本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには滑り性を付与するため、後述の活性線硬化型樹脂を含む塗布層で記載するものと同様の微粒子を用いることができる。
【0199】
微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0200】
微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmが好ましく、さらに好ましいのは7〜20nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
【0201】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0202】
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0203】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0204】
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。本発明で用いられるセルロースエステルフィルムにおいては活性エネルギー線硬化樹脂層の裏面側の動摩擦係数が1.0以下であることが好ましい。
【0205】
(セルロースエステルフィルムの製造方法)
次に、セルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0206】
セルロースエステルフィルムの製造は、セルロースエステル及び添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
【0207】
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、さらに好ましくは、15〜25質量%である。
【0208】
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルのアシル基置換度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
【0209】
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
【0210】
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。
【0211】
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤または膨潤させた後、さらに良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0212】
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0213】
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高すぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃がさらに好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
【0214】
または冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチル等の溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
【0215】
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材がさらに好ましい。
【0216】
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
【0217】
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にセルロースエステルフィルムを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、さらに好ましくは50個/m2以下であり、さらに好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
【0218】
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。
【0219】
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
【0220】
ここで、ドープの流延について説明する。
【0221】
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい金属支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃がさらに好ましい。または、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で金属支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0222】
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、さらに好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
【0223】
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
【0224】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0225】
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、さらに乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0226】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールを、ウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0227】
本発明の防眩性反射防止フィルム用のセルロースエステルフィルムを作製するためには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向に延伸し、さらにウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが特に好ましい。縦方向、横方向ともに好ましい延伸倍率は1.05〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍がさらに好ましい。縦方向及び横方向延伸により面積が1.12〜1.44倍となっていることが好ましく、1.15〜1.32倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることができる。縦方向と横方向の延伸倍率のいずれかが1.05倍未満では活性エネルギー線硬化樹脂層を形成する際の紫外線照射による平面性の劣化が大きく好ましくない。また、延伸倍率が1.3倍を超えても平面性が劣化し、ヘイズも増加するため好ましくない。
【0228】
剥離直後に縦方向に延伸するために、剥離張力及びその後の搬送張力によって延伸することが好ましい。例えば剥離張力を210N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは220〜300N/mである。
【0229】
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。
【0230】
ウェブの乾燥工程における乾燥温度は30〜150℃で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性をよくするためさらに好ましい。
【0231】
セルロースエステルフィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜200μmが好ましく用いられる。特に10〜70μmの薄膜フィルムでは平面性と硬度に優れた防眩性反射防止フィルムを得ることが困難であったが、本発明によれば、平面性と硬度に優れた薄膜の防眩性反射防止フィルムが得られ、また生産性にも優れているため、セルロースエステルフィルムの膜厚は10〜70μmであることが特に好ましい。さらに好ましくは20〜60μmである。最も好ましくは35〜60μmである。また、共流延法によって多層構成としたセルロースエステルフィルムも好ましく用いることができる。セルロースエステルが多層構成の場合でも紫外線吸収剤と可塑剤を含有する層を有しており、それがコア層、スキン層、もしくはその両方であってもよい。
【0232】
本発明の防眩性反射防止フィルムは、幅1.4〜5mのものが好ましく用いられる。また、セルロースエステルフィルム(透明支持体)の表面、特に低屈折率層を設ける側の表面の算術平均粗さ(Ra)は50〜1000nm未満、好ましくは80〜600nmのものを用いることが好ましい。Raが50nm未満では防眩性の効果が弱く、1000nmを超えると目視で粗すぎる印象を受ける。算術平均粗さ(Ra)は、前記ハードコート層と同様に光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えば光学干渉式表面粗さ計RST/PLUS(WYKO社製)を用いて測定することができる。
【0233】
透明支持体の表面に算術平均粗さ(Ra)が50〜1000nm未満の凹凸形状を形成する方法については、前記防眩性の項で説明した。透明支持体の表面に凹凸形状を形成する方法として好ましく用いられる型押し方法について以下に説明する。
【0234】
最初に、透明支持体の製膜工程で、フィルム面に鋳型として凹凸型ローラを押し当てて表面または裏面に凹凸を形成する方法について図により説明する。図は一例を示しており、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0235】
鋳型としては表面に凹凸を設けた凹凸型ローラが挙げられるが、板状、フィルム状、ベルト状の鋳型でもよい。
【0236】
図1は、凹凸型ローラを用いた凹凸面形成装置の概略図である。予め調液された樹脂溶液をダイス1より流延用ベルト2上に流延し、ウェブ(金属支持体上にドープを流延した以降の残留溶媒を含むフィルムをウェブと言う)を形成し、剥離後、凹凸面形成用凹凸型ローラ3及びそれと対向したバックロール4によりウェブ上に凹凸面を形成する。次いで、同様にしてウェブの反対側の面に凹凸形状を有する凹凸面形成用凹凸型ローラ3′とバックロール4によりウェブ裏面上に凹凸面を形成し、その後テンター5によりウェブは延伸され、次のフィルム乾燥装置6により乾燥され、巻き取りロール7により巻き取られる。
【0237】
また、凹凸面形成は、図1のテンター5の後でも、図1の乾燥装置6内でも、さらには乾燥が終了した後で行ってもよく、図では表面側、裏面側に一対の凹凸型ローラとバックロールを配して凹凸形成を行っているが、複数の凹凸型ローラとバックロールを用いて行ってもよい。
【0238】
図2に乾燥装置内における凹凸面形成装置の概略図を示す。この場合は、残留溶媒量は、図1の場合に比べ大幅に低下するが、乾燥装置による加熱条件を制御することにより透明支持体表面の温度を所望の温度に設定できるため、精度よく凹凸形成ができる利点がある。
【0239】
フィルムを室温に戻した後、別ラインで凹凸型ローラを用いた凹凸面形成装置を使用することもできるが、この場合は残留溶媒や温度が低いと凹凸面形成の安定性に欠ける。また、凹凸型ローラによる凹凸加工前にゴミや異物の付着する危険性があり、図1、2で示したようにフィルム製膜工程の中で行うことが、故障が減るため好ましいだけでなく凹凸も形成しやすく好ましい。
【0240】
凹凸面形成に用いられる凹凸型ローラとしては、凹凸が細かいもの、粗いものまで、適宜選択して適用でき、模様、マット状、レンチキュラーレンズ状、球面の一部からなる凹部または凸部、プリズム状の凹凸を形成するためのエンボスが規則正しくもしくはランダムに配列されたものが使用できる。例えば、凸部または凹部の直径が5〜100μm、高さが0.1〜2μmの球の一部からなる凹部または凸部等が挙げられるが、これらは大きな凹凸と小さな凹凸を組み合わせてもよい。
【0241】
凹凸型ローラ及びバックロールの材質は、金属、ステンレス、炭素鋼、アルミニウム合金、チタン合金、セラミック、硬質ゴム、強化プラスチックまたはこれらを組み合わせた素材等が使用できるが、強度の点や加工のし易さの点から凹凸型ローラは金属が好ましい。特に洗浄のし易さ、耐久性も重要であり、ステンレス製の凹凸型ローラを使用することが好ましい。特に好ましくは、視認側用は金属材料、セラミック材料で表面凹凸形状を形成し、裏面側用はゴム材料で表面凹凸形状を形成することである。材質が異なる凹凸型ローラを用いることで、凹凸形状(山、谷、稜線等の形状)が微妙に異なる凹凸が形成でき、ギラツキを効果的に防止することができる。
【0242】
また、表面に撥水もしくは撥水加工を施してもよい。凹凸型ローラに所望の凹凸面を形成する方法としてはエッチングによる方法、サンドブラストによる方法、機械的に加工する方法または金型等を使用して形成することができる。バックロールとしては硬質ゴムまたは金属が好ましく用いられる。
【0243】
凹凸型ローラの表面温度T1は、用いる樹脂の熱変形温度T2に対してT2+10℃〜T2+55℃、好ましくはT2+30℃〜T2+50℃とであることが好ましい。なお、熱変形温度T2とは、ASTMD−648に従って測定した値である。
【0244】
凹凸型ローラの表面温度T1が熱変形温度T2より低いと微細な凹凸形状が形成しにくくなる。表面温度T1が熱変形温度T2よりも55℃を超えると得られるフィルムの平面性が劣化しやすくなる。凹凸型ローラの表面温度T1は、凹凸型ローラ自身の温度、雰囲気温度、凹凸を形成するフィルム温度、フィルムの残留溶媒量、凹凸形成速度を設定することで制御することができる。凹凸型ローラ自身の温度は凹凸型ローラ内に温度制御された気体もしくは液体の媒体を循環させることで制御することができる。例えば、40〜300℃、好ましくは、50〜250℃の範囲で樹脂の種類や形成する凹凸形状に応じて選択される。その時、フィルム中の残留溶媒が発泡しないようにすることが好ましく、凹凸型ローラの表面が例えば残留溶媒の沸点以上の温度であっても、凹凸を形成する速度が速ければ発泡を防ぐことができる。例えば10m/min以上の速度で凹凸を形成することができる。
【0245】
バックロールの温度も同様に制御することが好ましく、凹凸型ローラと同等か低い温度に設定することが好ましい。
【0246】
凹凸を形成する際のロール圧力は、線圧で5〜500N/cm、さらに好ましくは30〜500N/cmから熱可塑性樹脂の種類、形成する凹凸の形状、温度等を考慮して適宜決定される。
【0247】
セルロースエステルフィルムの幅が広くなると紫外線硬化の際の照射光の照度ムラが無視できなくなり、平面性が劣化するばかりか、硬度のムラも生じ、この上に反射防止層を形成した場合に反射ムラが顕著になるという問題があった。本発明の防眩性反射防止フィルムは少ない照射量で十分な硬度が得られるため、照射光の幅手方向に照射量のムラがあっても幅手方向の硬度ムラが生じにくく、平面性にも優れた防眩性反射防止フィルムが得られるため、広幅のセルロースエステルフィルムで著しい効果が認められる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.4〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
【0248】
(反射防止層)
本発明では低屈折率層等の反射防止層を設ける方法は特に限定されないが、塗布により形成することが好ましい。
【0249】
本発明においては、ハードコート層を付与したセルロースエステルフィルムの上に、前記した低屈折率層組成物を用いて、その他の機能層を順次コーティングする工程により反射防止層を製造することが好ましい。
【0250】
好ましい防眩性反射防止フィルムの構成を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
【0251】
ここでハードコート層とは、前述の活性エネルギー線硬化樹脂層を意味する。
【0252】
透明支持体/ハードコート層/低屈折率層
透明支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
透明支持体/帯電防止層/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
透明支持体/防眩性ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
透明支持体/帯電防止層/防眩性ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
防眩性反射防止フィルムの最表面の算術平均粗さ(Ra)は40〜500nm未満、好ましくは60〜300nmの防眩性とすることが好ましい。
【0253】
防眩性反射防止フィルムの最表面にこのような凹凸を形成する方法としては、前述のように反射防止層を塗布した後での防眩性反射防止フィルムへの凹凸加工の方法もあるが、凹凸形状の凸部が反射防止層を突き破ったり、反射防止層を変形させて反射防止効果を損なうことがあるため、本発明では透明支持体への加工、ハードコート層への加工が好ましい。透明支持体への加工、ハードコート層への加工により、反射防止フィルムの最表面にも凹凸が形成される。
【0254】
防眩性反射防止フィルムの最表面の算術平均粗さ(Ra)は、前記ハードコート層と同様に、例えば光学干渉式表面粗さ計RST/PLUS(WYKO社製)を用いて測定することができる。
【0255】
いずれも透明支持体の低屈折率層を塗設した側と反対面には、前述のバックコート層を設けることが好ましい。
【0256】
本発明は、上記ハードコート層を形成した後、ハードコート層の表面を表面処理行い、該表面処理を行ったハードコート層表面に本発明に係る低屈折率層を形成することが好ましい。
【0257】
本発明の防眩性反射防止フィルムの反射率は分光光度計により測定を行うことができる。その際、サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーを用いて光吸収処理を行ってから、可視光領域(400〜700nm)の反射光を測定する。反射率は低いほど好ましいが、可視光領域の波長における平均値が1.5%以下であることが好ましく、最低反射率は0.8%以下であることが好ましい。また、可視光の波長領域において平坦な形状の反射スペクトルを有することが好ましい。
【0258】
また、反射防止処理を施した偏光板表面の反射色相は、反射防止膜の設計上可視光領域において短波長域や長波長域の反射率が高くなることから赤や青に色づくことが多いが、反射光の色味は用途によって要望が異なり、FPDテレビ等の最表面に使用する場合にはニュートラルな色調が要望される。この場合、一般に好まれる反射色相範囲は、XYZ表色系(CIE1931表色系)上で0.17≦x≦0.27、0.07≦y≦0.17である。
【0259】
低屈折率層の膜厚は、層の屈折率より反射率、反射光の色味を考慮して常法に従って計算で求められる。
【0260】
ハードコート層の表面処理は、洗浄法、アルカリ処理法、フレームプラズマ処理法、高周波放電プラズマ法、電子ビーム法、イオンビーム法、スパッタリング法、酸処理、コロナ処理法、大気圧プラズマ法等が挙げられ、好ましくはアルカリ処理法、コロナ処理法、大気圧プラズマ法であり、特に好ましくは大気圧プラズマ法が有効である。
【0261】
(コロナ処理法)
コロナ処理とは、大気圧下、電極間に1kV以上の高電圧を印加し、放電することで行う処理のことであり、春日電機(株)や(株)トーヨー電機等で市販されている装置を用いて行うことができる。コロナ放電処理の強度は、電極間距離、単位面積当たりの出力、ジェネレーターの周波数に依存する。コロナ処理装置の一方の電極(A電極)は、市販のものを用いることができるが、材質はアルミニウム、ステンレス等から選択ができる。もう一方はプラスチックフィルムを抱かせるための電極(B電極)であり、コロナ処理が、安定かつ均一に実施されるように、前記A電極に対して一定の距離に設置されるロール電極である。これも通常市販されているものを用いることができ、材質は、アルミニウム、ステンレス、及びそれらの金属でできたロールに、セラミック、シリコーン、EPTゴム、ハイパロンゴム等がライニングされているロールが好ましく用いられる。本発明に用いられるコロナ処理に用いる周波数は、20〜100kHzの周波数であり、30〜60kHzの周波数が好ましい。周波数が低下するとコロナ処理の均一性が劣化し、コロナ処理のムラが発生する。また、周波数が大きくなると、高出力のコロナ処理を行う場合には、特に問題ないが、低出力のコロナ処理を実施する場合には、安定した処理を行うことが難しくなり、結果として、処理ムラが発生する。コロナ処理の出力は、1〜5W・min./m2であるが、2〜4W・min./m2の出力が好ましい。電極とフィルムとの距離は、5〜50mmであるが、好ましくは、10〜35mmである。間隙が開いてくると、一定の出力を維持するためにより高電圧が必要になり、ムラが発生し易くなる。また、間隙が狭くなりすぎると、印加する電圧が低くなりすぎ、ムラが発生し易くなる。さらにまた、フィルムを搬送して連続処理する際に電極にフィルムが接触し傷が発生する。
【0262】
(アルカリ処理法)
アルカリ処理法としては、ハードコート層を塗設したフィルムをアルカリ水溶液に浸す方法であれば特に限定されない。
【0263】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液等が使用可能であり、中でも水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0264】
アルカリ水溶液のアルカリ濃度、例えば水酸化ナトリウム濃度は0.1〜25質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
【0265】
アルカリ処理温度は通常10〜80℃、好ましく20〜60℃である。
【0266】
アルカリ処理時間は5秒〜5分、好ましくは30秒〜3分である。アルカリ処理後のフィルムは酸性水で中和した後、十分に水洗いを行うことが好ましい。
【0267】
(大気圧プラズマ法)
本発明では、大気圧またはその近傍の圧力下で、対向する電極の間に周波数が50kHz〜150MHzの高周波電圧を印加して放電を形成し、該放電により形成された励起ガスを、透明支持体または透明支持体上にハードコート層を有するフィルムの表面に接触させた後に、反射防止層を塗布により形成することが好ましい。
【0268】
前記周波数は50kHz〜27MHzであることが好ましい。
【0269】
前記対向する電極は、第1電極と第2電極とで構成され、何れか一方の電極に印加する高周波電圧の周波数が50kHz〜150MHzであることが好ましい。また、前記第1電極に印加する高周波電圧の周波数が1〜200kHzであり、かつ前記第2電極に印加する高周波電圧の周波数が800kHz〜150MHzであることが好ましい。
【0270】
大気圧またはその近傍の圧力下で行うプラズマ放電処理を以下、単に大気圧プラズマ法ともいう。
【0271】
即ち本発明は、透明支持体または透明支持体上にハードコート層を有するフィルムを、大気圧またはその近傍の圧力下、第1電極と第2電極とで構成する対向電極間に、第1電極には第1の周波数ω1の電圧成分の高周波電圧を印加し、第2電極には第2の周波数ω2の電圧成分の高周波電圧を印加して放電を形成し、該放電により形成された励起ガスに該透明支持体の表面を接触させた後、その上に反射防止層を形成する。
【0272】
本発明に適用できる大気圧プラズマ法としては、特開平11−133205号公報、特開2000−185362号公報、特開平11−61406号公報、特開2000−147209号公報、同2000−121804号公報等に開示されている技術を参考にすることができる。
【0273】
本発明に用いられる大気圧プラズマ方法について説明する。
【0274】
最初に、本発明に有用な大気圧プラズマ方法及びその装置について説明する。
【0275】
本発明では、大気圧またはその近傍の圧力下で、放電空間(対向電極間)にガスを供給し、該放電空間に高周波電圧を印加し、ガスを励起してプラズマ状態とし、この励起したプラズマ状態のガスに透明支持体または透明支持体上にハードコート層を有するフィルムの表面を晒すものである。対向電極間で形成する放電空間に印加する高周波電圧は、一つの周波数の高周波であってもよいし、二つあるいはそれ以上の周波数の高周波であってもよい。
【0276】
本発明において、大気圧プラズマ処理は、大気圧またはその近傍の圧力下で行われるが、大気圧またはその近傍の圧力とは20〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93〜104kPaが好ましい。
【0277】
本発明において、対向電極間(放電空間)に供給するガスは、少なくとも、高周波電圧により励起する励起ガス、または、高周波電圧により励起する励起ガスとそのエネルギーを受け取ってプラズマ状態あるいは励起状態になるガスとを含んでいる。本発明でいう高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。
【0278】
一つの周波数の高周波電圧でプラズマ放電処理する場合(1周波数高周波電圧印加方式という場合がある)、または二つの周波数の高周波電圧でプラズマ放電処理する場合(2周波数高周波電圧印加方式という場合がある)の電極は全く同じものが使用でき、装置自体は大きな違いはない。異なる点は、高周波電源が二つ、それに付随するフィルターがあること、さらに対向電極の両方の電極から高周波電圧を印加することである。
【0279】
本発明に有用な1周波数高周波電圧印加方式の場合には、対向電極の一方はアース電極、もう片方は印加電極であり、印加電極に高周波電源が接続されており、アース電極にはアースが接地されている。
【0280】
図を使用して、1周波数高周波電圧印加方式及び2周波数高周波電圧印加方式のそれぞれの方式の薄膜形成装置(大気圧プラズマ処理装置)を説明する。
【0281】
図3は、本発明に有用な1周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【0282】
プラズマ放電容器130の内部にある高周波電圧を印加する印加電極(角筒型電極)136とその下側にある基材フィルムFを巻き回すロール型アース電極135とで対向電極を形成している。印加電極136は何個並べてもよい。ガスGは、プラズマ放電容器10のガス供給口152から供給され、ガスGを均一化するメッシュを通り、印加電極136の間及び印加電極とプラズマ放電容器131の内壁に沿って通り、対向電極の間の放電空間13をガスGで満たす。高周波電源21により印加電極136に高周波電圧を印加し、放電空間132で励起したガスGに基材フィルムFが晒される。印加する高周波電圧の周波数が50kHz以上であることが好ましい。より好ましくは50kHz〜150MHzの範囲である。
【0283】
50kHz未満では本発明の効果が得られない。また、150MHzを越える周波数は、放電形成が難しくなり複雑な設備が必要になること、また電位分布発生で不均一処理となり大面積化処理に不向きとなること、等から本発明には適さないと考えられる。
【0284】
励起したガスGに基材フィルムFが晒される間、電極温度調節手段160から配管を経て電極を加熱または冷却する。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0285】
本発明においては、基材フィルムFは、前記透明支持体フィルム、即ち、基材フィルム、基材フィルム上にハードコート層が塗布されたフィルム、またはさらにその上に高屈折率層及び/または中屈折率層が塗布されたフィルム等であってもいい。
【0286】
図4は、本発明に有用な2周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の別の一例を示す概略図である。これは図3と同様にロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との対向電極間(放電空間)132で、基材フィルムFをプラズマ放電処理するものである。
【0287】
ロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との間の放電空間(対向電極間)132に、ロール電極(第1電極)135には第1電極141から周波数ω1であって高周波電圧V1を、また角筒型電極群(第2電極)136には第2電源142から周波数ω2であって高周波電圧V2をかけるようになっている。
【0288】
ロール電極(第1電極)135と第1電源141との間には、第1電源141からの電流がロール電極(第1電極)135に向かって流れるように第1フィルター143が設置されており、該第1フィルターは第1電源141からの電流を通過しにくくし、第2電源142からの電流を通過し易くするように設計されている。また、角筒型電極群(第2電極)136と第2電源142との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター144が設置されており、第2フィルター144は、第2電源142からの電流を通過しにくくし、第1電源141からの電流を通過しやすくするように設計されている。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過しやすいとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0289】
本発明において、上記のような性質のあるフィルターであれば制限なく使用できる。例えば、第1フィルターとしては、第2電源の周波数に応じて数10〜数万pFのコンデンサー、もしくは数μH程度のコイルを用いることができる。第2フィルターとしては、第1電源の周波数に応じて10μH以上のコイルを用い、これらのコイルまたはコンデンサーを介してアース接地することでフィルターとして使用できる。
【0290】
なお、本発明においては、ロール電極135を第2電極、また角筒型電極群136を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。さらに、第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加できる能力を有していればよい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有していればよい。
【0291】
ガス供給手段150のガス供給装置151で発生させたガスGは、流量を制御して給気口152よりプラズマ放電処理容器131内に導入する。放電空間132及びプラズマ放電処理容器131内をガスGで満たす。
【0292】
基材フィルムFを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール164を経てニップロール165で基材フィルムに同伴されて来る空気等を遮断し、ロール電極135に接触したまま巻き回しながら角筒型電極群136との間に移送し、ロール電極(第1電極)135と角筒型電極群(第2電極)136との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)132で放電プラズマを発生させる。基材フィルムFはロール電極135に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスに晒される。基材フィルムFは、ニップロール166、ガイドロール167を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0293】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口153より排出する。
【0294】
プラズマ状態のガスに晒す間は、ロール電極(第1電極)135及び角筒型電極群(第2電極)136を加熱または冷却するために、電極温度調節手段160で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管161を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、165及び166はプラズマ放電処理容器131と外界とを仕切る仕切板である。
【0295】
本発明において、印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であってもよいし、連続したサイン波であってもよく、印加電圧波形に限定されないが、ハイパワーの高周波電圧を印加、強固な薄膜を形成させるのにサイン波が好ましい。
【0296】
本発明では、第1電極に印加する高周波電圧の周波数が1〜200kHzであり、かつ前記第2電極に印加する高周波電圧の周波数が800kHz以上であることが好ましい。
【0297】
その時の電力密度は1〜50W/cm2(ここで、分母のcm2は放電が起こっている面積である。)が好ましく、より好ましくは1.2〜30W/cm2である。
【0298】
本発明に有用な高周波電源としては、100kHz*(ハイデン研究所製)、200kHz、800kHz、2MHz、13.56MHz、27MHz及び150MHz(何れもパール工業製)等を挙げることができる。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0299】
本発明においては、このような電圧を印加して、以下に述べる均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0300】
図5は、図に示したロール電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0301】
図5において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて温度調節が行われるようになっている。
【0302】
図6は、図3、4に示されている角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0303】
図6において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図5同様の誘電体36Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
【0304】
なお、角筒型電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されており、該電極の放電面積はロール電極35に対向している全角筒型電極面の面積の和で表される。
【0305】
図6に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0306】
図3及び4において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆があればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0307】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタンまたはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができるが、後述の理由からはチタンまたはチタン合金が特に好ましい。
【0308】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
【0309】
プラズマ放電処理容器10または31はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図6において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0310】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細について述べる。
【0311】
このようなハイパワーの大気圧プラズマ法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0312】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、さまざまな金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、さらに好ましくは5×10-6/℃以下、さらに好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0313】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
金属母材 誘電体
(1)純チタンまたはチタン合金 セラミックス溶射被膜
(2)純チタンまたはチタン合金 ガラスライニング
(3)ステンレススティール セラミックス溶射被膜
(4)ステンレススティール ガラスライニング
(5)セラミックス及び鉄の複合材料 セラミックス溶射被膜
(6)セラミックス及び鉄の複合材料 ガラスライニング
(7)セラミックス及びアルミの複合材料 セラミックス溶射皮膜
(8)セラミックス及びアルミの複合材料 ガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(1)または(2)及び(5)〜(8)が好ましく、特に(1)が好ましい。
【0314】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
【0315】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタンである。本発明において、チタン合金またはチタン中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタンは、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることができ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタンはステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタンの上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0316】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0317】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することができる。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることができる。さらに空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0318】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、さらにエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることができる。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することができる。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることができる。
【0319】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜3mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0320】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、さらに、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0321】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0322】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射等がある。さらに封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化のない緻密な電極ができる。
【0323】
誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
【0324】
本発明においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601:2001で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、さらに好ましくは、表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、さらに熱収縮差や残留応力による歪やひび割れをなくし、かつ、高精度で、耐久性を大きく向上させることができる。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。さらにJIS B 0601:2001で規定される算術平均粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下である。
【0325】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電できる状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0326】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0327】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1〜50W/cm2の電力密度を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成性ガスに与え薄膜を形成させる。好ましくは1.2〜30W/cm2である。
【0328】
ここで高周波電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0329】
放電条件は、対向する第1電極と第2電極との放電空間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、前記第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分を少なくとも有することが好ましい。
【0330】
前記高周波電圧が、第1の周波数ω1の電圧成分と、前記第1の周波数ω1より高い第2の周波数ω2の電圧成分とを重ね合わせた成分となり、その波形は周波数ω1のサイン波上に、それより高い周波数ω2のサイン波が重畳されたω1のサイン波の波形となる。サイン波の重畳した波形に限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方がサイン波でもう一方がパルス波であってもかまわない。また、さらに第3の電圧成分を有していてもよい。しかし、本発明においては、1周波数高周波電圧印加方式と同様に、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方が、より緻密で良質な膜が得られる。
【0331】
本発明において、放電開始電圧とは、実際に使用される放電空間(電極の構成等)及び反応条件(ガス条件等)において放電を起こすことのできる最低電圧のことを指す。放電開始電圧は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種等によって多少変動するが、放電ガス単独の放電開始電圧と略同一と考えてよい。
【0332】
上記で述べたような高周波電圧を対向電極間(放電空間)に印加することによって、放電を起こし、高密度プラズマを発生することができると推定される。
【0333】
本発明において、高周波電圧を、放電空間に印加する具体的な方法は、対向電極を構成する第1電極に周波数ω1であって電圧V1である第1の高周波電圧を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ω2であって電圧V2である第2の高周波電圧を印加する第2電源を接続した薄膜形成装置(大気圧プラズマ処理装置)を用いる。
【0334】
このような二つの高周波電源から高周波電圧を印加することは、第1の周波数ω1側によって高い放電開始電圧を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の周波数ω2側はプラズマ密度を高くして緻密で良質な薄膜を形成するのに必要であるということが重要な点である。
【0335】
本発明において、第1電源を用いて第1電極からは1〜200kHz程度の高周波電圧を、また第2電源を用いて第2電極からは800kHz〜15MHzの程度の高周波電圧を印加するのが好ましい。この場合、印加する1〜200kHzの高周波電圧により、放電開始電圧の高い放電ガスが励起しプラズマを発生する。
【0336】
さらに、第1電源は、第2電源より大きな高周波電圧を印加できる能力を有していることが好ましい。
【0337】
また、本発明における別の放電条件としては、対向する第1電極と第2電極との間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V1及び第2の高周波電圧V2を重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、
1≧IV>V2
または V1>IV≧V2
を満たす。さらに好ましくは、
1>IV>V2
を満たすことである。
【0338】
高周波及び放電開始電圧の定義、また、上記高周波電圧を、対向電極間(放電空間)に印加する具体的な方法としては、上述したものと同様である。
【0339】
ここで、高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0340】
高周波電圧V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、該高周波プローブをオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電圧を測定する。
【0341】
放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、該電極間の電圧を増大させていき、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は上記高周波電圧測定と同じである。
【0342】
高い電圧をかけるような放電条件をとることにより、例え窒素ガスのように放電開始電圧が高い放電ガスでも、放電ガスを開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持できるのである。
【0343】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0344】
放電ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の希ガス、空気、水素、酸素等があり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわないが、窒素ガスを用いることが、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスを用いる場合に比較し、放電ガスの高い経済性を得ることができるため、特に好ましい。
【0345】
大気圧プラズマ処理装置に設置する高周波電源は、前述のものと同じであるが、第1電源(高周波電源)と第2電源(高周波電源)とに周波数により下記のように分けられる。
【0346】
第1電源としは、
高周波電源記号 メーカー 周波数
A1 神鋼電機 3kHz
A2 神鋼電機 5kHz
A3 春日電機 15kHz
A4 神鋼電機 50kHz
A5 ハイデン研究所 100kHz*
A6 パール工業 200kHz
なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0347】
また、第2電源(高周波電源)としては、
高周波電源記号 メーカー 周波数
B1 パール工業 800kHz
B2 パール工業 2MHz
B3 パール工業 13.56MHz
B4 パール工業 27MHz
B5 パール工業 150MHz
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
【0348】
上記の対向電極の少なくとも一方の電極が、前記対向電極間に放電ガスを供給するガス供給手段を備えることが好ましい。さらに、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
【0349】
また、図6、7の電極には金属母材及び誘電体が示されていないが、図8及び9と同様に電極の金属母材に同様な誘電体が被覆されていることはいうまでもない。
【0350】
対向電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、本発明の効果を高く得るためには、連続したサイン波であることが好ましい。
【0351】
本発明において、電極間の距離は、電極の金属母材に設置した誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ等を考慮して決定される。上記電極の一方に誘電体を設置した場合の誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設置した場合の誘電体同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.5〜20mmが好ましく、より好ましくは0.5〜5mm、さらに好ましくは0.5〜3mm、特に好ましくは1mm±0.5mmである。
【0352】
反射防止層の各層は、透明支持体上に、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法やエクストルージョンコート法を用いて、塗布により形成することができる。塗布に際しては、透明支持体が、幅が1.4〜4mでロール状に巻き取られた状態から繰り出して、上記塗布を行い、乾燥・硬化処理した後、ロール状に巻き取られることが好ましい。
【0353】
さらに、本発明の防眩性反射防止フィルムは、透明支持体上に反射防止層等を積層した後、ロール状に巻き取った状態で50〜160℃で加熱処理を行う製造方法によって製造することが好ましい。加熱処理の期間は、設定される温度によって適宜決定すればよく、例えば、50℃であれば、好ましくは3日間以上30日未満の期間、160℃であれば10分以上1日以下の範囲が好ましい。通常は、巻外部、巻中央部、巻き芯部の加熱処理効果が偏らないように、比較的低温に設定することが好ましく、50〜60℃付近で7日間程度行うことが好ましい。
【0354】
加熱処理を安定して行うためには、温湿度が調整可能な場所で行うことが必要であり、塵のないクリーンルーム等の加熱処理室で行うことが好ましい。
【0355】
防眩性反射防止フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、特に限定されないが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度に耐える耐熱性プラスチックが好ましく、例えばフェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。またガラス繊維等の充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。
【0356】
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることがさらに好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましい。
【0357】
このようにして長巻の防眩性反射防止フィルムを、巻き取った状態で前記加熱処理を行うとき、該ロールを回転させることが好ましく、回転は、1分間に1回転以下の速度が好ましく、連続でも良く断続的な回転であってもよい。また、加熱期間中に該ロールの巻き替えを1回以上行うことが好ましい。
【0358】
コアに巻き取られた長巻の防眩性反射防止フィルムを加熱処理中に回転させるため加熱処理室に専用の回転台を設けることが好ましい。
【0359】
回転は、断続の場合は停止している時間を10時間以内とすることが好ましく、停止位置は、円周方向に均一となるようにすることが好ましく、停止時間は10分以内とすることがより好ましい。最も好ましくは、連続回転である。
【0360】
連続回転での回転速度は、1回転に要する時間は好ましくは10時間以下とすることであり、早いと装置的に負担となるため実質的には、15分から2時間の範囲が好ましい。
【0361】
なお、回転機能を有する専用の台車の場合には、移動や保管中にも光学フィルムロールを回転させることができて好ましく、この場合、保管期間が長い場合に生じるブラックバンド対策として回転が有効に機能する。
【0362】
〔偏光板〕
本発明の防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板について述べる。
【0363】
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の防眩性反射防止フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した防眩性反射防止フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも該防眩性反射防止フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明の防眩性反射防止フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは面内リターデーションRoが590nmで、20〜70nm、Rtが100〜400nmの位相差を有する光学補償フィルム(位相差フィルム)であることが好ましい。これらは例えば、特開2002−71957号、特願2002−155395号記載の方法で作製することができる。または、さらにディスコチック液晶等の液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば、特開2003−98348号記載の方法で光学異方性層を形成することができる。本発明の防眩性反射防止フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
【0364】
裏面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5(以上、コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0365】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。該偏光膜の面上に、本発明の防眩性反射防止フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0366】
〔表示装置〕
本発明の防眩性反射防止フィルムを用いた偏光板の反射防止フィルム面を表示装置の鑑賞面側に組み込むことによって、種々の視認性に優れた表示装置を作製することができる。本発明の防眩性反射防止フィルムは反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。また、本発明の防眩性反射防止フィルムは反射防止層の反射光の色ムラが著しく少なく、また、反射率が低く、平面性に優れ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー等の各種表示装置にも好ましく用いられる。特に画面が30型以上の大画面の画像表示装置では、色ムラや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
【実施例】
【0367】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0368】
実施例1
《防眩性反射防止フィルム1の作製》
〈ハードコート層の形成〉
透明支持体として、膜厚80μmのセルロースエステルフィルムであるコニカミノルタタックKC8UX(コニカミノルタオプト(株)製)を用いた。この透明支持体に、下記ハードコート層塗布液を塗布幅1.4mでダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cm2の紫外線を高圧水銀灯で照射して硬化後の膜厚が6μmになるようにハードコート層を設けた。
【0369】
(ハードコート層塗布液)
アセトン 45質量部
酢酸エチル 45質量部
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 10質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 30質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 45質量部
ウレタンアクリレート(商品名U−4HA、新中村化学工業社製) 25質量部
PMMA微粒子(ポリメチルメタクリレート微粒子、平均粒径4μm) 20質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 5質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−オン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 3質量部
BYK−331(シリコーン界面活性剤、ビックケミージャパン(株)製)
0.5質量部
〈バックコート層の形成〉
上記ハードコート層を塗設した面の反対側に、下記バックコート層塗布液をウェット膜厚14μmとなるようにダイコートし、85℃にて乾燥し巻き取り、バックコート層を設けた。
【0370】
(バックコート層用塗布液)
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
ジアセチルセルロース 0.6質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液(日本アエロジル(株)製アエロジル200V)
0.2質量部
〈防眩性処理〉
(石英ガラスロールのエンボス化)
石英ガラスロール(面長1600mm、直径300mm)を回転及び揺動しながら、住友化学工業(株)製の単分散アルミナ結晶「スミコランダムAA−5」(平均粒径5μm)でサンドブラスト処理を行った。ブラスト圧力は50kPa、ブラスト時間は120秒とした。こうしてサンドブラスト処理した石英ロールを超音波洗浄し、乾燥した後、1質量%のフッ化水素酸に40℃で10分程度浸漬し、次に純水で十分洗浄し、乾燥して、石英エンボスロールを作製した。こうして作製された石英エンボスロールにおける算術平均粗さ(Ra)0.3μm、平均凹凸周期は25μmであった。
【0371】
上記作製した石英エンボスロールを有する凹凸面形成装置を用いて、上記ハードコート層面に凹凸形状を形成し、防眩性を付与した。
【0372】
〈大気圧プラズマ処理〉
特願2005−351829号の図7記載の大気圧プラズマ処理装置を用い、上記防眩性付与したハードコート層表面に下記の大気圧プラズマ処理を行った。
【0373】
電極間隙を0.5mmとして、以下に示す放電ガスを放電空間に供給し、神鋼電機社製高周波電源を使用して、周波数13.5MHz、印加電圧Vp=9.5kV及び出力密度1.5W/cm2として放電を形成させて表面処理を行った。
【0374】
(放電ガス)
窒素ガス 80.0体積%
酸素ガス 20.0体積%
〈高屈折率層の形成〉
ハードコート層の表面に、下記高屈折率層塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cm2の紫外線を高圧水銀灯で照射して、硬化後の膜厚が110nmとなるように高屈折率層を設けた。高屈折率層の屈折率は1.60であった。
【0375】
(高屈折率層塗布液)
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル) 40質量部
イソプロピルアルコール 25質量部
メチルエチルケトン 25質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.9質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1.0質量部
ウレタンアクリレート(商品名:U−4HA、新中村化学工業社製) 0.6質量部
粒子分散液A(下記) 20質量部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.4質量部
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 0.2質量部
FZ−2207(10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、日本ユニカー社製) 0.4質量部
(粒子分散液Aの調製)
メタノール分散アンチモン複酸化物コロイド(固形分60%、日産化学工業(株)製、アンチモン酸亜鉛ゾル、商品名:セルナックスCX−Z610M−F2)6.0kgにイソプロピルアルコール12.0kgを攪拌しながら徐々に添加し、粒子分散液Aを調製した。
【0376】
〈低屈折率層の形成〉
上記高屈折率層上に、下記の低屈折率層塗布液1をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cm2の紫外線を高圧水銀灯で照射して膜厚が92nmになるように低屈折率層を設け、防眩性反射防止フィルム1を作製した。低屈折率層の屈折率は1.38であった。
【0377】
屈折率層の屈折率は、分光光度計の分光反射率の測定結果から求めた。分光光度計はU−4000型(日立製作所製)を用いて、試料の測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率の測定を行った。
【0378】
(低屈折率層塗布液1)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 430質量部
イソプロピルアルコール 430質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A(下記、固形分21%換算) 200質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製) 3.0質量部
イソプロピルアルコール分散中空シリカ粒子(下記、固形分20%、平均粒径60nm、粒径変動係数30%) 40質量部
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製ALCH) 3.0質量部
FZ−2207(10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、日本ユニカー社製) 3.0質量部
(テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製)
テトラエトキシシラン230g(商品名:KBE04、信越化学工業社製)とエタノール440gを混合し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後に、室温(25℃)にて8時間攪拌したところで、イソプロピルアルコール分散無機粒子(シリカの球状粒子、固形分15%、平均粒径18nm、粒径分布の半値幅10nm)を530g添加し、さらに20時間攪拌させ、テトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0379】
(イソプロピルアルコール分散中空シリカ粒子の調製)
平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl23として1.02質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al23核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al23多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228質量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をイソプロピルアルコールに置換した固形分濃度20質量%の中空シリカ粒子の分散液を調製した。
【0380】
この中空シリカ粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は60nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。
【0381】
ここで、無機粒子(シリカの球状粒子)の平均粒径及び粒径分布の半値幅、中空シリカ粒子の平均粒径及び粒径変動係数はマルバーン社製ゼータサイザーを用いて動的光散乱法により測定した。
【0382】
《防眩性反射防止フィルム2〜12、14の作製》
防眩性反射防止フィルム1の作製において、低屈折率層塗布液1の無機粒子(シリカの球状粒子)の平均粒径と粒径分布の半値幅、及びイソプロピルアルコール分散中空シリカ粒子の粒径を表1記載のように変更し、他は同様にして防眩性反射防止フィルム2〜12、14を作製した。
【0383】
《防眩性反射防止フィルム13の作製》
防眩性反射防止フィルム1の作製において、低屈折率層塗布液1の無機粒子を添加せず、他は同様にして防眩性反射防止フィルム13を作製した。
【0384】
《防眩性反射防止フィルム15の作製》
防眩性反射防止フィルム1の作製において、低屈折率層塗布液1を下記低屈折率層塗布液2に変更し、他は同様にして防眩性反射防止フィルム15を作製した。
【0385】
(低屈折率層塗布液2)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 430質量部
イソプロピルアルコール 430質量部
テトラエトキシシラン加水分解物B(下記、固形分21%換算) 200質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製) 3.0質量部
イソプロピルアルコール分散中空シリカ粒子(前記、固形分20%、平均粒径60nm、粒径変動係数30%) 40質量部
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製ALCH) 3.0質量部
FZ−2207(10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、日本ユニカー社製) 3.0質量部
(テトラエトキシシラン加水分解物Bの調製)
テトラエトキシシラン230g(商品名:KBE04、信越化学工業社製)とエタノール440gを混合し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後に、室温(25℃)にて23時間攪拌したところで、イソプロピルアルコール分散無機粒子(シリカの球状粒子、固形分15%、平均粒径40nm、粒径分布の半値幅30nm)を530g添加し、さらに5時間攪拌させ、テトラエトキシシラン加水分解物Bを調製した。
【0386】
《防眩性反射防止フィルム16の作製》
防眩性反射防止フィルム1の作製において、低屈折率層塗布液1を下記低屈折率層塗布液3に変更し、他は同様にして防眩性反射防止フィルム16を作製した。
【0387】
(低屈折率層塗布液3)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 430質量部
イソプロピルアルコール 430質量部
テトラエトキシシラン加水分解物C(下記、固形分21%換算) 120質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製) 3.0質量部
イソプロピルアルコール分散中空シリカ粒子(前記、固形分20%、平均粒径60nm、粒径変動係数30%) 40質量部
イソプロピルアルコール分散無機粒子(シリカの球状粒子、固形分15%、平均粒径40nm、粒径分布の半値幅30nm) 80質量部
アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製ALCH) 3.0質量部
FZ−2207(10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、日本ユニカー社製) 3.0質量部
(テトラエトキシシラン加水分解物Cの調製)
テトラエトキシシラン230g(商品名:KBE04、信越化学工業社製)とエタノール440gを混合し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後に、室温(25℃)にて23時間攪拌することで、テトラエトキシシラン加水分解物Cを調製した。
【0388】
《防眩性反射防止フィルムの評価》
作製した防眩性反射防止フィルムについて、下記のようにして反射率及び耐擦傷性を評価した。
【0389】
(反射率)
裏面反射を防ぐために、試料を黒いアクリル板上に基材レス両面テープで貼り付け、ミノルタ社のSPECTROPHOTOMETER CM−2500dで反射率を測定した。
【0390】
(耐擦傷性)
試料に23℃、55%RHの環境下で、#0000のスチールウール(SW)に250g/cm2の荷重をかけ、10往復したときの1cm幅当たりの傷の本数を測定した。なお、傷の本数は荷重をかけた部分の中で最も傷の本数の多い所で測定する。10本/cm以下であれば実用上問題ないが、5本/cm以下が好ましく、3本/cm以下がさらに好ましい。
【0391】
評価の結果を表1に示す。
【0392】
【表1】

【0393】
表より、本発明の試料は反射率及び耐擦傷性が共に改良されていることが分かる。
【0394】
本実施例に用いたシリカの無機粒子に換えて、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムの無機粒子を用いた防眩性反射防止フィルムでも同様の効果を確認した。
【0395】
実施例2
実施例1で作製した防眩性反射防止フィルムを用いて下記のようにして偏光板を作製し、それらの偏光板を液晶表示パネル(画像表示装置)に組み込み、視認性を評価した。
【0396】
偏光板の作製では、防眩性反射防止フィルムと、偏光膜をはさんだ反対側にセルロースエステルフィルムであるコニカミノルタタックKC4FR−1(コニカミノルタオプト(株)製)各々1枚を偏光板保護フィルムとして用いて偏光板を作製した。
【0397】
(a)偏光膜の作製
厚さ120μmの長尺のポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gの比率からなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gの比率からなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し長尺の偏光膜を得た。
【0398】
(b)偏光板の作製
次いで、下記工程1〜5に従って、偏光膜と偏光板用保護フィルムとを貼り合わせて偏光板を作製した。
【0399】
工程1:KC4FR−1と防眩性反射防止フィルムを2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。防眩性反射防止フィルムの反射防止層を設けた面にはあらかじめ剥離性の保護フィルム(PET製)を張り付けて保護した。
【0400】
同様にKC4FR−1を2mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に60℃で90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥させた。
【0401】
工程2:前述の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬した。
【0402】
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、それを工程1でアルカリ処理したKC4FR−1と防眩性反射防止フィルムで挟み込んで、積層配置した。
【0403】
工程4:2つの回転するローラにて20〜30N/cm2の圧力で約2m/minの速度で張り合わせた。このとき気泡が入らないように注意して実施した。
【0404】
工程5:80℃の乾燥機中にて工程4で作製した試料を2分間乾燥処理し、本発明の偏光板を作製した。
【0405】
市販のVA型液晶表示装置であるシャープ製32型テレビAQ−32AD5の最表面の偏光板を注意深く剥離し、ここに偏光方向を合わせた偏光板を張り付けた。
【0406】
上記のようにして得られた液晶パネルを床から80cmの高さの机上に配置し、床から3mの高さの天井部に昼色光直管蛍光灯(FLR40S・D/M−X 松下電器産業(株)製)40W×2本を1セットとして1.5m間隔で10セット配置した。このとき評価者が液晶パネル表示面正面にいるときに、評価者の頭上より後方に向けて天井部に前記蛍光灯がくるように配置した。液晶パネルは机に対する垂直方向から25°傾けて蛍光灯が写り込むようにして画面の見易さ(視認性)を下記のようにランク評価した。
【0407】
◎:最も近い蛍光灯の移りこみから気にならず、フォントの大きさ8以下の文字もはっきりと読める
○:近くの蛍光灯の写りこみはやや気になるが、遠くは気にならず、フォントの大きさ8以下の文字もなんとかと読める
△:遠くの蛍光灯の写りこみも気になり、フォントの大きさ8以下の文字を読むのは困難である
×:蛍光灯の写りこみがかなり気になり、写り込みの部分はフォントの大きさ8以下の文字を読むことはできない
評価の結果を表2に示す。
【0408】
【表2】

【0409】
本発明の試料は○以上であり、比較試料より良好であった。
【0410】
実施例3
実施例2において、偏光板の作製に用いたコニカミノルタタックKC4FR−1(コニカミノルタオプト(株)製)をコニカミノルタタックKC4UEWに変更し、評価に用いたVA型液晶表示装置であるシャープ製32型テレビAQ−32AD5をIPSモード型液晶表示装置である日立製液晶テレビWooo W17−LC50に変更して、同様に評価した。
【0411】
評価の結果を表3に示す。
【0412】
【表3】

【0413】
本発明の試料は○以上であり、比較試料より良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0414】
【図1】凹凸型ローラを用いた凹凸面形成装置の概略図である。
【図2】乾燥装置内における凹凸面形成装置の概略図である。
【図3】本発明に有用な1周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明に有用な2周波数高周波電圧印加方式の薄膜形成装置の一例を示す概略図である。
【図5】ロール電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図6】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0415】
F 基材フィルム
G 放電ガス
G′ 励起放電ガス
P 送液ポンプ
1 ダイ
2 流延用ベルト
3、3′ 凹凸型ローラ
4 バックロール
5 テンター
6 フィルム乾燥装置
7 巻き取りロール
10 静電気除去装置
35a ロール電極
35A、36A 金属質母材
35A、36B 誘電体
36a 角筒型電極
130 大気圧プラズマ処理装置
131 大気圧プラズマ処理容器
132 放電空間
135 ロール電極(第1電極)
136 角筒型電極群(第2電極)
140 電界印加手段
141 第1電源
142 第2電源
143 第1フィルター
144 第2フィルター
150 ガス供給手段
151 ガス発生装置
152 給気口
153 排気口
160 電極温度調節手段
161 配管
164、167 ガイドロール
165、166 ニップロール
168、169 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に直接または他の層を介して、バインダー、中空シリカ粒子、及び、一次粒子の平均粒径が該中空シリカ粒子より1nm以上小さく、かつ前記一次粒子の平均粒径が25〜60nmである無機粒子を含有する層を有することを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
【請求項2】
前記無機粒子の一次粒子の粒径分布曲線の半値幅が15〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項3】
前記バインダーがアルコキシシランの加水分解を用いたゾルゲル法により作製されていることを特徴とする請求項1または2に記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の防眩性反射防止フィルムを製造する防眩性反射防止フィルムの製造方法において、前記アルコキシシランの加水分解液中に前記無機粒子を添加し、加水分解を行うことを特徴とする防眩性反射防止フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか1項に記載の防眩性反射防止フィルム、または請求項4に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法により得られた防眩性反射防止フィルムを有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−158156(P2008−158156A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345541(P2006−345541)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】