説明

防眩性反射防止フィルムの製造方法

【課題】本発明の目的は、十分な反射防止性能を有しながら、塗布面状故障の無い、製品得率の高い、優れた反射防止フィルムを供給することである。
【解決手段】透明支持体上に、防眩性付与粒子を含有する少なくとも1層の防眩性ハードコート層と、最外に位置する低屈折率層それぞれの塗布液を塗布し、乾燥することで形成する防眩性反射防止フィルムの製造方法であって、いずれの防眩性ハードコート層および低屈折率層も、塗布液を塗布した後、10℃以上40℃以下に保たれ、かつ塗膜面にあたる風の風速が0.5m/s以下である第一の乾燥部、および第一の乾燥部よりも高い温度にて乾燥する第二の乾燥部にて乾燥され、該第二の乾燥部の温度は、塗布液中に含まれる最も沸点の低い溶剤の沸点温度以上、塗布液中に含まれる最も沸点の高い溶剤の沸点温度+20℃以下であり、前記第一の乾燥部にて、塗布膜のセットを終了させることを特徴とする防眩性反射防止フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性反射防止フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防眩性反射防止フィルムは一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、表面突起による光の散乱と、薄膜干渉によって、反射率を低減する機能を有しており、ディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
一般に塗布製膜によって作製される反射防止フィルムは、ディスプレイの最表面に配置される点から、光学・物理諸性能と共に、外観面状不良や点欠陥が無いことは、その製品の品質を決める重要な因子となっている。
【0004】
反射防止フィルムを構成する主な原料は、有機溶剤に対する溶解性や分散性が得やすいことから、塗布液は水系よりもむしろ、有機溶剤系が選択される。
【0005】
この際、乾燥条件が適切でないと、ブラッシング、ムラ、スジ、ハジキなどの外観・欠陥故障が発生し、製品得率を落とすばかりか、品質を悪化させる原因となり得る。特に、反射防止フィルムに対する、面状品質、性能品質の要求レベルは非常に高いため、製造条件のひとつである乾燥条件の選択は大変重要であった。
【0006】
また、上記のような光学機能層を溶剤塗布により付与する場合、乾燥遅延や乾燥中の液組成変動等により、塗液中に添加されている粒子の凝集や、表面形状の変化、層の構成成分の相分離等により、反射率、防眩性、ギラツキ等の性能の悪化が生じる。
【0007】
このような課題に対して、従来の技術として、紫外線硬化樹脂と反応開始剤と溶液からなる塗液を希釈塗布し、溶剤乾燥前に、強制乾燥する方法が例示されている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、この例示の方法は、塗布液の端部からの裏面への裏回りを避けるため、100℃の熱風を裏面から吹きつけ強制乾燥させており、本発明の反射防止フイルムに適用した場合、乾燥ムラが大きく適さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2523574号公報(第6ページ実施例2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、十分な反射防止性能を有しながら、塗布面状故障の無い、製品得率の高い、優れた反射防止フィルムを供給することである。
また、反射率、防眩性、ギラツキ等の性能の悪化のない反射防止フイルムを供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
我々は鋭意検討を進めた結果、反射防止フィルムを製膜する際にそれぞれの層をどのような条件でセットさせるかが極めて重要であることがわかった。
本発明において塗布膜をセットさせるとは、乾燥によって塗布液の流動が実質的になくなることを意味し、塗布液の流動が実質的になくなるとは、塗布液溶剤が蒸発することで、塗布液中の固形分濃度が上がり、これに従い塗布液の液粘度が上昇し、周囲の風や重力、フィルムの搬送の上下動によって塗布液が移動しなくなることを意味するものであり、実際にはラインを途中で強制停止し、どの地点から流動が無くなっているかを目視で確認することができる。
本発明によれば、塗布液塗工後の温度を、10℃〜40℃に保つことにより、溶剤の強制乾燥による急激な乾燥を避けつつ、徐々にセット状態に持っていくことができ、本発明の目的を達成できる。
具体的には、下記構成の反射防止フィルムの製造方法により、上記目的が達成される。
【0011】
(1)透明支持体上に、少なくとも1層のハードコート層と、最外に位置する低屈折率層それぞれの塗布液を塗布し、乾燥することで形成する反射防止フィルムの製造方法において、いずれのハードコート層および低屈折率層も、塗布液を塗布した後、10℃以上40℃以下に保たれた第一の乾燥部にて、塗布膜のセットを終了させることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
(2)上記製造方法において、第1乾燥部の温度が、ハードコート層および低屈折率層の塗布液の主溶剤の沸点よりも10℃以上低いことを特徴とする(1)記載の反射防止フィルムの製造方法。
(3)上記製造方法において、いずれかの層の第一の乾燥が、塗布後30秒以内に開始されることを特徴とする(1)または(2)記載の反射防止フィルムの製造方法。
(4)上記製造方法において、いずれかの層の第一の乾燥部の温度が塗工部温度より2℃以上30℃以下高いことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
(5)該ハードコート層の少なくとも1層が、防眩性ハードコート層であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
(6)該防眩性ハードコート層に含有される無機微粒子フィラーが、粒径1nm〜100nmの範囲のジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモン、ケイ素のうちより選ばれる少なくとも1つの金属酸化物からなり、該防眩性ハードコート層に含有される防眩性付与粒子が、粒径2μm〜7μmの範囲の、有機高分子粒子または/更に無機粒子であり、更に、該防眩性ハードコート層に含有される、防眩性付与に寄与しない、層内に含有される粒子が、粒径1μm〜5μmの範囲の、有機高分子粒子または/更に無機粒子であることを特徴とする(5)に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
(7)該防眩性ハードコート層において、有機樹脂と該無機フィラーの複合体の屈折率に対し、該防眩性付与粒子または/更に該層内に含有される粒子の屈折率が、0.05〜0.15の範囲で異なることを特徴とする(5)または(6)に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
(8)該ハードコート層と、低屈折率層の間に、中屈折率層、高屈折率層を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
(9)該透明支持体がトリアセチルセルロースであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の反射防止フィルムあるいは防眩性反射防止フィルムの製造方法。
(10)低屈折率層の屈折率が1.38〜1.49であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の反射防止フィルムあるいは防眩性反射防止フィルムの製造方法。
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法で製造された反射防止フィルムあるいは防眩性反射防止フィルムを、偏光板における偏光子の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いたことを特徴とする偏光板。
(12)前記偏光板における偏光子の2枚の保護フィルムのうちの前記反射防止フィルム、または前記防眩性反射防止フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであり、該光学異方性層がディスコティック構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層であり、該ディスコティック構造単位の円盤面が該表面保護フィルム面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と該表面保護フィルム面とのなす角度が、光学異方層の深さ方向において変化していることを特徴とする(11)に記載の偏光板。
(13)(11)または(12)に記載の偏光板の、該反射防止フィルムまたは該防眩性反射防止フィルムとは反対側の保護フィルムに、λ/4板を配置したことを特徴とする、反射防止機能を有する円偏光板。
(14)上記偏光板の偏光子が、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸する方法において、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向をフィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造された偏光子であることを特徴とする(11)〜(13)のいずれかに記載の偏光板。
(15)(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法で製造された反射防止フィルムあるいは防眩性反射防止フィルム、または(11)〜(14)に記載の反射防止フィルム付き偏光板あるいは防眩性反射防止フィルム付き偏光版を、ディスプレイの最表面に用いたことを特徴とするディスプレイ装置。
(16)(11)〜(14)のいずれかに記載の偏光板を少なくとも1枚有するTN、STN、VA、IPS、OCBのモードの透過型、反射型、または半透過型のディスプレイ装置。
(17)(11)〜(14)のいずれかに記載の偏光板を少なくとも1枚有する透過型または半透過型のディスプレイ装置であり、視認側とは反対側の偏光板とバックライトとの間に、偏光選択層を有する偏光分離フィルムを配置することを特徴とするディスプレイ装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】防眩性反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【図2】実施例で使用のテンター延伸機の概略図である。
【図3】実施例で行った偏光膜の裁断を示す模式図である。
【図4】本発明の製造方法における塗布機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の一形態として好適な防眩性反射防止フィルムの基本的な構成を図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に模式的に示される態様は本発明の反射防止フィルムの一例であり、この場合、反射防止フィルム1は、透明支持体2、防眩性ハードコート層3、そして低屈折率層4の順序の層構成を有する。防眩性ハードコート層3には、透光性粒子である防眩性付与粒子5、あるいは更に、透光性粒子である内部散乱付与粒子6が分散している。
【0015】
本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に、少なくとも1層のハードコート層を有し、さらにその上に最外層の低屈折率層を有するが、防眩性を持たせるためにはハードコート層を防眩性ハードコート層としてもよいし、ハードコート層上に防眩層を設けてもよい。また、防眩性ハードコート層を平滑なハードコート層の上にを設けてもよい。それにより、フィルム強度をあげることができる。防眩性を必要としない用途の反射防止フィルムに対しては、防眩性ハードコート層3を設けず、平滑なハードコート層としておけば良い。
【0016】
また、本発明に用いられる反射防止フィルムとして、ハードコート層と低屈折率層の間に、中屈折率層、高屈折率層等を設け、薄膜の干渉による3層構成の反射防止フィルムとしても良い。この時、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層のそれぞれの層の光学膜厚、すなわち屈折率と膜厚の積が設計波長λに対してnλ/4前後、またはその倍数であることが好ましいことが特開昭59−50401号公報に記載されている。
【0017】
特に、低反射率且つ反射光の色味が低減された反射率特性を実現するためには、設計波長λ(=500nm)に対して中屈折率層が下式(I)を、高屈折率層が下式(II)を、低屈折率層が下式(III)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0018】
lλ/4×0.80<n1d1<lλ/4×1.00 (I)
【0019】
mλ/4×0.75<n2d2<mλ/4×0.95 (II)
【0020】
nλ/4×0.95<n3d3<nλ/4×1.05 (III)
【0021】
式中、lは1であり、n1は中屈折率層の屈折率であり、そして、d1は中屈折率層の層厚(nm)であり、mは2であり、n2は高屈折率層の屈折率であり、そして、d2は高屈折率層の層厚(nm)であり、nは1であり、n3は低屈折率層の屈折率であり、そして、d3は低屈折率層の層厚(nm)である。さらに、例えばトリアセチルセルロース
(屈折率:1.49)からなるような屈折率が1.45〜1.55の透明支持体に対しては、n1は1.60〜1.65、n2は1.85〜1.95、n3は1.35〜1.45の屈折率であることが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(屈折率:1.66)からなるような屈折率が1.55〜1.65の透明支持体に対しては、n1は1.65〜1.75、n2は1.85〜2.05、n3は1.35〜1.45の屈折率であることが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法について以下に説明する。本発明の反射防止フィルムの製造のための工程の一例を図4に示した。図4の工程において、ロール状の支持体フィルムを送り出す1a、塗布液を塗布する塗工部2a、ムラが発生しないように溶剤を揮発させる第1乾燥部3a、加熱により溶剤を除去・加熱硬化等を行う第2乾燥部4a、塗膜を熱、電離放射線等により硬化させる工程5a、塗工したフィルムを巻き取る工程6a等が行われる。ただし本発明はこれに限定されるものではない。
本発明では透明支持体上に、反射防止フィルムの構成層となるハードコート層および低屈折率層をそれぞれの塗布液で塗布し、乾燥する際に、塗布後、10℃以上40℃以下に保たれた第一の乾燥部3aにて、塗布膜のセットを終了させることが必要である。第一の乾燥部の温度が40℃を越えると、乾燥性が急激に激しくなり、外観面状、欠陥への影響を与えるようになる。乾燥部の温度が低すぎると(10℃未満)、乾燥時間が遅れ、長い乾燥ゾーンが必要となるデメリットがあることや、未乾による工程の反転ロールや、巻き取り後のフィルム裏面への転写が問題となる。第一の乾燥部の温度については、好ましくは15℃以上40℃以下、より好ましくは18℃以上35℃以下である。また、乾燥後期で温度を徐々に上げていくような乾燥温度パターンをつけることも好ましい。
また、第1乾燥部の乾燥温度は、反射防止フィルムの構成層となるハードコート層および低屈折率層のそれぞれの塗布液の主溶剤の沸点よりも10℃以下低いことが塗膜の急激な乾燥による乾燥ムラを避けるため好ましい。より好ましい温度は、15℃以下、特に好ましくは20℃以下低いことである。これらの構成層の主溶剤の内容は、後述する。
第1乾燥部での温度制御は塗工後すぐ〜30秒以内にはじめることが望ましい。より好ましくは0.5秒〜20秒以内、特に好ましくは1秒〜15秒以内である。温度制御を実施する時間は、塗布液の濃度や使用している塗布液溶剤にもよるが、5秒〜120秒以内、より好ましくは10秒〜100秒、特に好ましくは、20秒〜90秒である。
第1乾燥部での温度制御は、塗膜中の残留溶剤量が多い時点ではじめることが効果が大きい。塗膜中の残留溶剤が、塗工時の10質量%以下となると液の流動性はほとんどなくなるため、塗工時の溶剤量の10質量%になる以前に実施することが必要である。より好ましくは残留溶剤量30質量%以前、特に好ましくは50質量%以前である。
本発明の第1乾燥部の温度は、塗工部の温度より2℃以上、30℃以下高い温度が望ましい。これは、塗膜の温度に対し、第1乾燥部の温度が高いことで、溶剤の揮発が促進され、塗膜粘度が上がり易いためと考えられる。温度差が2℃以下の場合には、乾燥促進効果は少なく、30℃以上では、乾燥の温度差が大きすぎることによる乾燥ムラが生じ易い。より好ましくは、3℃以上25℃以下、特に好ましくは5℃以上20℃以下である。
塗工部の温度としては、8℃〜35℃の範囲が好ましい。より好ましくは15℃〜30℃、特に好ましくは18℃〜25℃である。
第1乾燥部における温度制御は、風によるムラを抑えながら実施することが望ましい。このための方法としては、塗布面の風速を抑える方法、裏面からの送風による加温、赤外線ヒーター等による加温、第1乾燥室全体を熱伝導等により加温する方法等がある。また、初期乾燥部には、風除けのためのカバー等をつけることも好ましい。初期乾燥ゾーンでの塗膜面にあたる風の風速は0.5m/s以下であることが好ましい。より好ましくは0.3m/s以下、特に好ましくは0.2m/s以下である。
塗布膜がセットし、塗布液の流動が終了した塗膜に対しては、巻き取り後に改めて、あるいは10℃以上40℃以下に保たれた第一の乾燥部以降巻き取りまでに、更に高い温度での乾燥(第二乾燥部4a)を行ない、フィルム中の残留の溶剤量を低減することは、搬送ラインにある反転ロールや巻取り後のフィルム裏面への転写、あるいは製膜したフィルムの膜強度、溶剤の泣き出し防止の点で望ましい。第二の乾燥部の温度は、選択した塗布液溶剤の沸点に対して設定することが好ましく、塗布液中に含まれる最も沸点の低い溶剤の沸点温度〜塗布液中に含まれる最も沸点の高い溶剤の沸点温度+20℃の間が好ましく、塗布液中に含まれる最も沸点の低い溶剤の沸点温度+20℃〜塗布液中に含まれる最も沸点の高い溶剤の沸点温度+20℃がより好ましい。 第2乾燥部の温度は50℃以上140℃以下、特に好ましくは60℃以上、120℃以下である。加熱時間としては、15秒以上30分以内が好ましい。より好ましくは20秒以上15分以下、特に好ましくは30秒以上10分以下である。
第1乾燥部と第2乾燥部の間や第2乾燥部の後、場合によっては、第2乾燥部の中間に、塗膜を硬化する工程5aを付与することも好ましい。塗膜の硬化方法としては、加熱による熱硬化、もしくは、UV、電子線等の電離放射線照射による方法が考えられる。熱硬化は、第2の乾燥部での加熱時に反転ロール等を設置し、加熱時間を長くすることで達成可能である。電離放射線照射は、照射を連続で実施できる設備を、工程中の必要な場所に設けることが好ましい。
本発明の乾燥条件は、少なくとも1層のハードコート層と、低屈折率層に適用することが必須であるが、中屈折率層、高屈折率層等、その他の構成層の乾燥条件に適用することも好ましい。
【0023】
本発明の防眩性ハードコート層について以下に説明する。
防眩性ハードコート層はハードコート性を付与するためのバインダー、防眩性や内部散乱性を付与するための透光性粒子、および高屈折率化、架橋収縮防止、あるいは高強度化のための無機微粒子フィラー、などから形成される。
防眩性ハードコート層の、透光性粒子以外の部分の屈折率は1.48〜1.70の範囲にあることが好ましい。
【0024】
バインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。
また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0025】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン
(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0026】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0027】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して防眩性反射防止フィルムを形成することができる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)に記載されている。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0028】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して防眩性反射防止フィルムを形成することができる。
【0029】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0030】
防眩性ハードコート層には、防眩性や内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1〜10μm、好ましくは1.5〜7.0μm、より好ましくは2.0〜6.0μmの透光性粒子、例えば無機化合物の粒子または有機高分子(樹脂)粒子が含有される。透光性微粒子の屈折率としては、透光性粒子以外の部分の防眩性ハードコート層の屈折率はとの関係で選択すべきであるが、1.40〜1.80の範囲にあることが好ましい。
上記透光性粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子(例えば日本触媒(株)製シーホスタシリーズ 屈折率=1.43)、アルミナ粒子(例えば住友化学工業(株)製スミコランダムシリーズ 屈折率=1.64)、TiO粒子等の無機化合物の粒子、あるいは 架橋アクリル粒子(例えば綜研化学(株)製MXシリーズ 屈折率=1.49)、架橋スチレン粒子(例えば綜研化学(株)製SXシリーズ 屈折率=1.61)、架橋メラミン粒子、架橋ベンゾグアナミン粒子(例えば日本触媒(株)製エポスターシリーズ 屈折率=1.68)等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子が好ましい。透光性粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できるが、表面突起形状が揃う真球状粒子が好ましい。
また、異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。素材種が2種類以上でも、粒径が2種類以上でも、その制限は無い。上記透光性粒子は、形成された防眩性ハードコート層中の含有量が、好ましくは100〜1000mg/m、より好ましくは300〜800mg/mとなるように防眩性ハードコート層に含有される。
また、透光性粒子のうち、防眩性を付与する粒子は、防眩層の厚みよりも大きな粒径の粒子が効率的で好ましい。一方、防眩層の屈折率とは異なる、内部散乱に寄与する粒子は、この防眩性を付与する粒子であっても構わないし、または/更に防眩性付与に寄与せず、層内に埋め込まれる粒子であってもよい。防眩性を高めすぎないために、この場合は、防眩層の厚みよりも小さな粒径の粒子であることが好ましい。本請求項で記載の光散乱性を発現させるためには、防眩性を付与する粒子の粒径は、好ましくは3μm〜7μm、より好ましくは4〜6μmであり、内部散乱性を付与する粒子の粒径は好ましくは2〜5μm、より好ましくは3〜4μmである。散乱性を調整するために、粒径は同じでも、屈折率の異なる粒子を複数種混合して用いても良い。上記の様に好ましい範囲はあるが、本発明に記載の要件を満たせば、含有量、粒径に特に制限はない。
【0031】
防眩性ハードコート層には、防眩層の屈折率を調整するために、上記の透光性粒子とは別に、珪素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。無機フィラー形状は特に制限されるものではなく、例えば、球状、板状、繊維状、棒状、不定形、中空等のいずれも好ましく用いられるが、球状が分散性がより良く好ましい。この無機フィラーは、その充填量によりカール防止、表面硬度向上にも寄与できる。無機フィラーを防眩層が含有する場合、防眩層の屈折率は、防眩層を構成する透明樹脂と無機フィラー各々の屈折率とこれらの混合比率で決まる。防眩層の屈折率と前記透光性粒子のうちの内部散乱粒子との屈折率差は、0.05〜0.15が好ましい。0.05未満であれば内部散乱性が低く、多くの体積の内部散乱粒子を含有しなければならず、防眩性反射防止膜の膜強度の低下の懸念があるため、好ましくない。
一方、0.15を超えると、散乱光の散乱角度が大きくなるため、文字ボケが激しくなる方向であり、反射防止フィルムとして好ましくない。最も好ましくは、屈折率差は0.07〜0.13である。
防眩層ハードコート層と透光性粒子の屈折率の大小は、特に制限はないが、文字ボケをより少なくするためには、上記記載の屈折率差の範囲内で、防弦層ハードコート層の屈折率を低くする方が好ましいし、防眩性反射防止フィルムとして、より反射率を低くするためには、防眩層ハードコート層の屈折率を高くする方が好ましく、設計コンセプトによって適宜選択される。
【0032】
防眩性ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO、ZrO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO、SiO等が挙げられる。SiO、TiO、およびZrOが無機フィラーの中で、取り扱い性の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、防眩性ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜70%であり、特に好ましくは30〜50%である。
尚、このような無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、樹脂バインダーに該フィラーが分散した複合体は、前述の通り、光学的に均一な物質として振舞う。
【0033】
本発明の、樹脂バインダーからなる防眩性ハードコート層あるいは、樹脂バインダーが無機フィラーを含有した防眩性ハードコート層の屈折率は、1.48〜1.70であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.65である。屈折率を上記範囲とするには、前述の通り、樹脂バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0034】
本発明の防眩性ハードコート層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を防眩層形成用の塗布組成物中に含有することができる。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の防眩性反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。
フッ素系の界面活性剤の好ましい例としては、スリーエム社製のフロラードFC−431等のパーフルオロアルキルスルホン酸アミド基含有ノニオン、大日本インキ社製のメガファックF−171、F−172、F−173、F−176PF等のパーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。シリコーン系の界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のオリゴマー等の各種の置換基で側鎖や主鎖の末端が変性されたポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0035】
しかしながら、上記のような界面活性剤を使用することにより、防眩層表面にF原子を含有する官能基、および/またはSi原子を有する官能基が偏析することにより、防眩層の表面エネルギーが低下し、上記防眩層上に低屈折率層をオーバーコートしたときに反射防止性能が悪化する問題が起こりえる。これは低屈折率層を形成するために用いられる塗布組成物の濡れ性が悪化するために低屈折率層の膜厚の目視では検知できない微小なムラが悪化するためと推定される。このような問題を解決するためには、フッ素系および/またはシリコーン系の界面活性剤の構造と添加量を調整することにより、防眩層の表面エネルギーを好ましくは25mN・m−1〜70mN・m−1に、より好ましくは35mN・m−1〜70mN・m−1に制御することが効果的であり、さらに後述するように低屈折率層の塗布溶剤を50〜100質量パーセントが100℃以下の沸点を有するものとすることが効果的であること検討の中で見出した。また、上記のような表面エネルギーを実現するためには、X線光電子分光法で測定したF原子由来のピークとC原子由来のピークの比であるF/Cが0.40以下、および/またはSi原子由来のピークとC原子由来のピークの比であるSi/Cが0.30以下であることが必要であることもわかっている。
【0036】
本発明の防眩性ハードコート層の膜厚は1〜10μmが好ましく、より好ましくは2〜7μm、更に好ましくは3〜5μmである。膜厚が薄すぎると、防眩性反射防止フィルムとしての表面硬度が低下する、好ましい範囲の透光性粒子を含有できなくなる、といった弊害が生じ、一方、膜厚が厚すぎると、塗液中のバインダー成分の比率が高くなり、液粘度上昇による塗布性不良といった弊害が生じるためである。
【0037】
本発明の防弦性反射防止フィルムの表面突起形状は、(1)防眩性や内部散乱性を付与する透光性微粒子の素材種、粒径、添加量、(2)更には樹脂、あるいは樹脂と無機フィラーの複合体から成る防眩層の厚み、(3)塗布液の溶剤組成、(4)Wet塗布量、(5)乾燥条件、(6)電離線硬化樹脂に対する硬化条件など、が制御因子として挙げることができ、この中で(1)、(2)の影響が大きい。我々が検討を進めた結果、同じ防眩性を与える、防眩性反射防止フィルムであっても、このトータルの防眩性を発現するための、ひとつひとつの表面突起形状が異なると、ディスプレイ電源OFF時あるいは、液晶の黒表示の時に、表面散乱性の違いで、外観状の黒の締まり(逆にいうと、白味)が異なることがわかった。表面突起の突起傾斜角が大きいと、広角域への表面散乱性が強くなるため、黒の締まりが損なわれ、白っぽくなり、高級感が失われる。黒の締まりは、突起傾斜角度分布の角度の小さい側から95%頻度の角度とよく相関があることを明確にし、好ましくは20°以下、より好ましくは15°以下、更に好ましくは13°以下である。
また、防眩性によく相関する、平均の表面突起傾斜角度は、より好ましくは1〜5°、より好ましくは1.5〜4.5°、更に好ましくは2〜4°である。
本発明の製造方法で製造する場合、上記(3)、(4)、(5)などは重要な影響因子となるため、表面形状制御と、面状・欠陥制御との両立が容易となる条件選択が望ましい。
【0038】
本発明に係る低屈折率層、ハードコート層、その他の構成層を形成するために用いる塗布液の溶剤としては、各層の構成成分の溶解性、添加している粒子等の安定性、塗工する下地層への溶解・拡散性、乾燥工程での乾燥性、粘度調整等の観点から適宜選択できる。溶剤の組成としては、単独および混合のいずれでもよいが、乾燥性、粘度等を調整するために、適宜混合することがより好ましい。特に、高沸点の溶剤と、低沸点の溶剤を混合することは好ましい方法である。
また、本発明の塗布液における主溶剤とは、塗布液中に含まれる溶剤のうち、最も質量比の大きい溶剤のことをしめす。
【0039】
低沸点溶剤(沸点が100℃以下の溶剤とする)としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃、以下「℃」を省略する)、ヘプタン(98.4)、シクロヘキサン(80.7)、ベンゼン(80.1)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8)、クロロホルム(61.2)、四塩化炭素(76.8)、1,2−ジクロロエタン(83.5)、トリクロロエチレン(87.2)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6)、ジイソプロピルエーテル(68.5)、ジプロピルエーテル(90.5)、テトラヒドロフラン(66)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2)、酢酸メチル(57.8)、酢酸エチル(77.1)、酢酸イソプロピル(89)などのエステル類、アセトン(56.1)、2−ブタノン(=メチルエチルケトン、79.6)などのケトン類、メタノール(64.5)、エタノール(78.3)、2−プロパノール(82.4)、1−プロパノール(97.2)、2−ブタノール(99.5)、t−ブタノール(82.5)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6)、プロピオニトリル(97.4)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2)、などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0040】
高沸点溶剤(沸点が100℃以上の溶剤とする)としては、例えば、オクタン(125.7)、トルエン(110.6)、キシレン(138)、テトラクロロエチレン(121.2)、クロロベンゼン(131.7)、ジオキサン(101.3)、ジブチルエーテル
(142.4)、酢酸ブチル(126)、酢酸イソブチル(118)、シクロヘキサノン
(155.7)、2−メチル−4−ペンタノン(=MIBK、115.9)、2−オクタノン(173)、1−ブタノール(117.7)、iso―ブタノール(107.9)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(120)、ジアセトンアルコール(168)、N,N−ジメチルホルムアミド(153)、N,N−ジメチルアセトアミド(166)、ジメチルスルホキシド(189)、などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノン、等である。
本発明の防眩性ハードコート層の溶剤組成としては、沸点100℃以上の溶剤が、塗布液中の全溶剤の1%〜90%、より好ましくは、塗布液中の全溶剤の3%〜80%含まれることが好ましい。沸点100℃以上の溶剤が全く無いと、乾燥時にブラッシング面状が起きやすくなる。
また、反射防止フィルムを構成する原料の溶解性、分散性が得られる点から、ケトン系溶剤が好ましく、メチルエチルケトン(沸点80℃)、シクロヘキサノン(沸点156℃)、ジアセトンアルコール(沸点168℃)、メチルイソブチルケトン(沸点113℃)、アセトン(沸点56℃)などが挙げられる。また、Wet塗布量は、塗布方式からの制限も受けるが、3cc/m〜20cc/m、より好ましくは3cc/m〜10cc/mである。あまりWet塗布量が少なすぎると、必要な固形分塗設量を得るための塗布液の粘度が高くなり塗布性(スジなど)に影響が出やすくなることから好ましくなく、Wet塗布量が多くなりすぎると、乾燥しにくくなり不利となる。
塗布液の固形分濃度は、3%以上60%以下が好ましく、5%以上50%以下が更に好ましい。また、乾燥条件因子については適宜選択されるが、乾燥風の温度、給気/排気バランス、ベースの温度、塗布液の温度などを制御する。
【0041】
本発明の防眩性反射防止フィルムでは、フィルム強度向上の目的で防眩性を持たない、いわゆる平滑なハードコート層も好ましく用いられ、透明支持体と防眩性ハードコート層もしくは透明支持体と低、中、高屈折率層の間に塗設される。
【0042】
平滑なハードコート層について説明する。
平滑なハードコート層に用いる素材は、防眩性を付与するための透光性粒子を用いないこと以外は、防眩性ハードコート層において挙げたものと同様であり、樹脂バインダー、あるいは、樹脂バインダーと無機フィラーの混合体から形成される。
【0043】
本発明の平滑なハードコート層では、無機フィラーとして、強度および汎用性の点でシリカ、アルミナが好ましく、特にシリカが好ましい。また該無機フィラーは表面をシランカップリング処理されることが好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0044】
これらの無機フィラーの添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜70%であり、特に好ましくは30〜50%である。平滑なハードコート層の膜厚は1〜10μmが好ましく、より好ましくは2〜7μm、更に好ましくは3〜5μmである。
【0045】
本発明の低屈折率層について以下に説明する。
本発明の防眩性反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.38〜1.49が好ましく、より好ましくは1.38〜1.44の範囲にある。
さらに、低屈折率層は下記数式(I)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
【0046】
mλ/4×0.7<n1d1<mλ/4×1.3 数式(I)
【0047】
式中、mは正の奇数であり、nは低屈折率層の屈折率であり、そして、dは低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
なお、上記数式(I)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(I)を満たすm(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0048】
本発明の低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、動摩擦係数0.03〜0.15、水に対する接触角90〜120°の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマー、および膜強度向上のための無機フィラー、が好ましく用いられる。
【0049】
低屈折率層に用いられる架橋性の含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン)等の他、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーを構成単位とする含フッ素ポリマーが挙げられる。
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0050】
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0051】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0052】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0053】
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パ‐フルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%の場合である。
【0054】
また本発明の含フッ素ポリマーには防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開平11−189621号、同11−228631号、特開2000−313709号に記載のごとくシリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2−251555号、同2−308806号に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラフト共重合成分を導入する方法が好ましい。これらのポリシロキサン成分はポリマー中の0.5〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0055】
防汚性付与に対しては上記以外にも反応性基含有ポリシロキサン(例えばKF−100T,X−22−169AS,KF−102,X−22−3701IE,X−22−164B,X−22−5002,X−22−173B,X−22−174D,X−22−167B,X−22−161AS(以上商品名、信越化学工業社製)、AK−5,AK−30,AK−32(以上商品名、東亜合成社製)、サイラプレーンFM0275,サイラプレーンFM0721(以上チッソ社製)等)を添加する手段も好ましい。この際これらのポリシロキサンは低屈折率層全固形分の0.5〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
【0056】
また上記含フッ素モノマーを構成単位とするポリマーだけでなく、フッ素原子を含有しないモノマーとの共重合体を用いてもよい。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0057】
低屈折率層に用いられる無機フィラーとしては低屈折率のものが好ましく用いられ、好ましい無機フィラーは、シリカ、フッ化マグネシウムであり、特にシリカが好ましい。
該無機フィラーの平均粒径は0.001〜0.2μmであることが好ましく、0.001〜0.05μmであることがより好ましい。フィラーの粒径はなるべく均一(単分散)であることが好ましい。
該無機フィラーは粒子径の異なる2種類のフィラーを併用しても良い。特に粒子径が0.02〜0.05μmの無機フィラーと粒子径が0.01μm以下の無機フィラーを併用することにより、反射率と耐擦傷性を両立させることができる。粒子径の異なる2種類の無機フィラーそれぞれの添加量の割合は、欲しい反射率と耐擦傷性のバランスにより0〜1の間を自由に変化させることが可能である。反射率を低減させたい場合には粒子径の小さな無機フィラーが大部分を占めることが好ましく、耐擦傷性を強化したい場合には粒子径の大きな無機フィラーの割合を上げてゆくことが好ましい。
該無機フィラーの添加量は、低屈折率層の全質量の5〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であると更に好ましく、15〜30質量%が特に好ましい。
【0058】
該無機フィラーは表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、カップリング剤の使用が好ましい。カップリング剤としては、後述する一般式(1)の化合物も含めたオルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。該無機フィラーがシリカの場合はシランカップリング処理が特に有効である。
一般式(1)の化合物は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いても良いし、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させても良い。
【0059】
本発明の反射防止フィルムのハードコート層(防眩性を有しているものも含む)および低屈折率層のうちの少なくとも1層に、下記一般式(1)の化合物が含有されることが、耐擦傷性に対して好ましい。
この化合物は、アルコキシシリル基が加水分解していない状態、もしくはオルガノシラン化合物の加水分解物/またはその部分縮合物、いわゆるゾル成分(以降このように称する)の状態で含有される。これらのオルガノシラン化合物は、特にゾル成分で含有されることが好ましい。
一般式(1)
(R)m−Si(OR)n
一般式(1)式中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基もしくは、アリール基を表す。Rは置換もしくは無置換のアルキル基もしくはアシル基を表す。mは0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表す。mとnの合計は4である。
一般式(1)で表される化合物について説明する。
一般式(1)においてRは置換もしくは無置換のアルキル基もしくはアリール基を表す。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、t−ブチル、sec−ブチル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アルキル基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
置換基としては特に制限はないが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が好ましい。
これらのうちで更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基(アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)である。またこれら置換基は更に置換されていても良い。
は置換もしくは無置換のアルキル基もしくはアシル基を表す。アルキル基、アシル基ならびに置換基の説明はRと同じである。Rとして好ましくは無置換のアルキル基もしくは無置換のアシル基であり、特に好ましくは無置換のアルキル基である。
mは0〜3の整数を表す。nは1〜4の整数を表す。mとnの合計は4である。RもしくはRが複数存在するとき、複数のRもしくはRはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。mとして好ましくは0、1、2であり、特に好ましくは1である。
以下に一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0060】
【化1】

【0061】
【化2】

【0062】
【化3】

【0063】
【化4】

【0064】
【化5】

【0065】
【化6】

【0066】
これらの具体例の中で、(1)、(12)、(18)、(19)等が特に好ましい。
【0067】
また、本発明のオルガノシラン化合物は、加水分解・縮合反応によりゾル化した状態で用いることも好ましい。ゾル化は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。
ゾル化の溶媒はオルガノシランと触媒を溶解させるものが好ましい。また、有機溶媒が塗布液あるいは塗布液の一部として用いることが工程上好ましく、含フッ素樹脂などのその他の素材と混合した場合に、溶解性あるいは分散性を損なわないものが好ましい。
【0068】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec −ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0069】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。該反応における固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1%〜90%の範囲であり、好ましくは20%〜70%の範囲である。
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類等が挙げられるが、ゾル液の製造安定性やゾル液の保存安定性の点から、酸触媒(無機酸類、有機酸類)が好ましい。無機酸では塩酸、硫酸、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
加水分解・縮合反応は、通常、オルガノシランの加水分解性基1モルに対して0.3〜2モル、好ましくは0.5〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして好ましくは触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
加水分解性基がアルコキシドで触媒が有機酸の場合には、有機酸のカルボキシル基やスルホ基がプロトンを供給するために、水の添加量を減らすことができ、オルガノシランのアルコキシド基1モルに対する水の添加量は、0〜2モル、好ましくは0〜1.5モル、より好ましくは、0〜1モル、特に好ましくは、0〜0.5モルである。アルコールを溶媒に用いた場合には、実質的に水を添加しない場合も好適である。
触媒の使用量は、触媒が無機酸の場合には加水分解性基に対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%であり、触媒が有機酸の場合には、水の添加量によって最適な使用量が異なるが、水を添加する場合には加水分解性基に対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%であり、実質的に水を添加しない場合には、加水分解性基に対して1〜500モル%、好ましくは10〜200モル%であり、より好ましくは20〜200モル%であり、更に好ましくは50〜150モル%であり、特に好ましくは50〜120モル%である。
反応は25〜100℃で撹拌することにより行われるがオルガノシランの反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0070】
一般式1の化合物の適宜な添加量は、該化合物が加水分解していない場合、該化合物を含有する層の全固形分の1〜300質量%が好ましく、3〜200質量%がより好ましく、5〜100質量%が最も好ましい。
オルガノシランのゾルの場合の適宜な含有量は、添加する層によっても異なるが、低屈折率層の添加量は含有層(添加層)の全固形分の0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。低屈折率層以外の光学薄膜層への添加量は、含有層(添加層)の全固形分の0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。
また、低屈折率層においては、含フッ素樹脂に対するオルガノシランのゾルの使用量は、5〜100質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、8〜35質量%が更に好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。使用量が少ないと本発明の効果が得にくく、使用量が多すぎると屈折率が増加したり、膜の形状・面状が悪化したりするので好ましくない。
以上のように一般式(1)で表される化合物はこれらハードコート層乃至低屈折率層の少なくとも1層の塗布液に含有せしめて塗設することが好ましい。
【0071】
本発明に係る低屈折率層を形成するために用いる塗布液の溶剤としては、先に述べた溶剤を用いることができる。溶剤は、単独および混合のいずれでもよいが、混合のときは、沸点が100℃以下の溶媒が50〜100%であることが好ましく、より好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは100%である。沸点が100℃以下の溶媒が50%以下であると、乾燥速度が非常に遅くなり、塗布面状が悪化し、塗布膜厚にもムラが生じるため、反射率などの光学特性も悪化する。沸点が100℃以下の溶媒を多く含む塗布液を用いる事により、この問題は解決する。
【0072】
次に本発明の中、高屈折率層について以下に説明する。
本発明の中屈折率層および高屈折率層は、屈折率の高い無機微粒子、熱または電離放射線硬化性のモノマー、開始剤、もしくは前述のオルガノシラン化合物及び/またはゾル、および溶媒を含有する塗布組成物を塗布、溶媒の乾燥、熱および/または電離放射線による硬化させることによって形成される。無機微粒子としては、 Ti、Zr、In、Zn、Sn、Sbの酸化物から選ばれた少なくとも1種の金属酸化物からなるものが好ましい。このようにして形成された中屈折率層および高屈折率層は、高屈折率を有するポリマー溶液を塗布、乾燥したものと比較して、耐傷性や密着性に優れる。分散液安定性や、硬化後の膜強度等を確保するために、特開平11−153703号公報や米国特許US6210858B1等に記載されているような、多官能(メタ)アクリレートモノマーとアニオン性基含有(メタ)アクリレート分散剤とが塗布組成物中に含まれることが好ましい。
【0073】
無機微粒子の平均粒径は、コールターカウンター法で測定したときの平均粒径で1から100nmであることが好ましい。1nm以下では、比表面積が大きすぎるために、分散液中での安定性に乏しく、好ましくない。100nm以上では、バインダとの屈折率差に起因する可視光の散乱が発生し、好ましくない。高屈折率層および中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。
【0074】
本発明の防眩性反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フィルム社製TAC−TD80UL,TD80UF、60μmTAC、T40UZ、FTUV50Fなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
トリアセチルセルロースは、単層または複数の層からなる。単層のトリアセチルセルロースは、公開特許公報の特開平7−11055等で開示されているドラム流延、あるいはバンド流延等により作成され、後者の複数の層からなるトリアセチルセルロースは、公開特許公報の特開昭61−94725、特公昭62−43846等で開示されている、いわゆる共流延法により作成される。すなわち、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等の溶剤にて溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた溶液(ドープと称する)を、水平式のエンドレスの金属ベルトまたは回転するドラムからなる支持体の上に、ドープ供給手段(ダイと称する)により流延する際、単層ならば単一のドープを単層流延し、複数の層ならば高濃度のセルロースエステルドープの両側に低濃度ドープを共流延し、支持体上である程度乾燥して剛性が付与されたフィルムを支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去することからなる方法である。
【0075】
上記のような、トリアセチルセルロースを溶解するための溶剤としては、ジクロロメタンが代表的である。しかし地球環境や作業環境の観点から、溶剤はジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶剤中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。ジクロロメタン等を実質的に含まない溶剤を用いてトリアセチルセルロースのドープを調整する場合には、後述するような特殊な溶解法が必須となる。
【0076】
第一の溶解法は、冷却溶解法と称され、以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で溶剤中にトリアセチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加する。次に、混合物は−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、トリアセチルセルロースと溶剤の混合物は固化する。さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、溶剤中にトリアセチルセルロースが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
【0077】
第二の方法は、高温溶解法と称され、以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で溶剤中にトリアセチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加される。本発明のトリアセチルセルロース溶液は、各種溶剤を含有する混合溶剤中にトリアセチルセルロースを添加し予め膨潤させることが好ましい。本法において、トリアセチルセルロースの溶解濃度は30質量%以下が好ましいが、フィルム製膜時の乾燥効率の点から、なるべく高濃度であることが好ましい。次に有機溶剤混合液は、0.2MPa〜30MPaの加圧下で70〜240℃に加熱される(好ましくは80〜220℃、更に好ましく100〜200℃、最も好ましくは100〜190℃)。次にこれらの加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用された溶剤の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。その場合、−10〜50℃に冷却して常圧に戻すことが一般的である。冷却はトリアセチルセルロース溶液が内蔵されている高圧高温容器やラインを、室温に放置するだけでもよく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いて該装置を冷却してもよい。ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアセテートフィルムおよびその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されている。
【0078】
本発明の反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。該透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0079】
本発明の反射防止フィルム付きの偏光板は、透明支持体上に含フッ素ポリマーを主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することにより得られる。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化される。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏向膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏向膜と接着させる際に偏向膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0080】
本発明の反射防止フィルム付きの偏光板は、偏光層の2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に上記反射防止フィルムを用いてなる。本発明の反射防止フィルムを最表面に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、高精細適性のある、防汚性、耐擦傷性等も優れた偏光板とすることができる。また、本発明の偏光板において反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、製造コストを低減できる。
【0081】
本発明の反射防止フィルムを偏光子の表面保護フィルムの片側として用いる場合には、透明支持体の反射防止層が形成される面とは反対側の面をアルカリによって鹸化処理することが必要であることは前記で述べた通りである。アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の2つから選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、防眩性反射防止フィルム面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて、膜が劣化する懸念がある点、鹸化処理液成分の乾固物が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を該防眩性反射防止フィルムの防眩性反射防止フィルムを形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗および/または中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0082】
本発明の反射防止フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。次に、ハードコート層を形成するための塗布液を、リバースグラビア法(グラビアコート法、マイクログラビアコート法などに分類される)、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、エクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥するが、マイクログラビアコート法が特に好ましい。その後、光照射あるいは加熱して、ハードコート層を形成するためのモノマーを重合して硬化する。これによりハードコート層が形成される。
ここで、必要であれば前記ハードコート層を防眩性ハードコート層とし塗布の前に同様な方法で平滑なハードコート層塗布および硬化を行えばよい。次に、同様にして低屈折率層を形成するための塗布液をハードコート層上に塗布し、光照射あるいは加熱し低屈折率層が形成される。このようにして、本発明の反射防止フィルムが得られる。
【0083】
本発明の反射防止フィルムの各層を塗設する際に用いるマイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ましくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを支持体の下方に、かつ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗布液を前記支持体の上面が自由状態にある位置におけるその支持体の下面に塗布液を転写させて塗工することを特徴とするコート法である。ロール形態の透明支持体を連続的に巻き出し、該巻き出された支持体の一方の側に、少なくともハードコート層乃至含フッ素ポリマーを含む低屈折率層の内の少なくとも一層をマイクログラビアコート法によって塗工することができる。
【0084】
マイクログラビアコート法による塗工条件としては、グラビアロールに刻印されたグラビアパターンの線数は50〜800本/インチが好ましく、100〜300本/インチがより好ましく、グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、5〜200rpmであることがより好ましく、支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であることが好ましく、1〜50m/分がより好ましい。
【0085】
このようにして形成された本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が10〜70%、好ましくは30〜50%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が2.2%以下、好ましくは1.9%以下である。
【0086】
本発明の反射防止フィルムが、上記範囲のヘイズ値及び平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴なわずに良好な反射防止性が得られる。
【0087】
本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル
(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のようなディスプレイ装置に適用することができる。本発明の反射防止フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側をディスプレイ装置の画像表示面に接着して用いられる。
【0088】
また、本発明の反射防止フィルムは、偏光子、透明支持体およびディスコティック液晶の配向を固定した光学異方層から構成される光学補償フィルム、並びに光散乱層からなる偏光板と組み合わせて用いられることが好ましい。さらには偏光板における偏光子の2枚の保護フィルムのうちの反射防止フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであり、該光学異方性層がディスコティック構造単位を有する化合物からなる負の複屈折を有する層であり、該ディスコティック構造単位の円盤面が該表面保護フィルム面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と該表面保護フィルム面とのなす角度が、光学異方層の深さ方向において変化している偏光板がより好ましい。光散乱層からなる偏光板は、例えば特開平11−305010号公報等に記載がある。さらに詳述すると、本発明の反射防止フィルムは、偏光子の表面保護フィルムの片側として用いた場合、 ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを、偏光子の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【0089】
偏光膜としては、いかなる偏光膜をも適用することができる。例えばポリビニルアルコール系フィルムを連続的に供給し、その両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸する際、フィルムの一方端の実質保持開始点から実質保持解除点までの保持手段の軌跡L1と、もう一端の実質保持開始点から実質保持解除点までの保持手段の軌跡L2が、左右の実質保持解除点の距離Wに対し、下記式(2)の関係にあると共に、左右の実質保持開始点を結ぶ直線は、保持工程に導入されるフィルムの中心線と略直交するものとし、左右の実質保持解除点を結ぶ直線は、次工程に送り出されるフィルムの中心線と略直交するようにして延伸したものであってもよい(図2参照。米国特許公開2002−8840A1参照。)
式(2) |L2−L1|>0.4W
【0090】
また、透過型または半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、さらに視認性の高い表示装置を得ることができる。また、λ/4板と組み合わせることで、反射型液晶用の偏光板や、有機ELディスプレイ用表面保護板として表面および内部からの反射光を低減するのに用いることができる。さらに、PET、PEN等の透明支持体上に本発明の反射防止層を形成して、プラズマディスプレイパネル(PDP)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用できる。
【0091】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0092】
[実施例1]
(防眩性ハードコート層用塗布液(1)の調製)
市販シリカ含有UV硬化型ハードコート液(デソライトKZ7317、JSR(株)製、固形分濃度約72%、固形分中SiO含率約38%、重合性モノマーDPHA、重合開始剤含有)61.3質量部をメチルイソブチルケトン8.4質量部で希釈した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
さらにこの溶液に、平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−350H、綜研化学(株)製)の25%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液を11.0質量部加え、次いで、平均粒径5μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−500H、綜研化学(株)製、屈折率1.61)の25%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液を14.4質量部加えた。更に、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103信越化学工業(株)製)を4.9質量部加えた。本塗布液の溶剤組成は、MEK(沸点79.6℃)/MIBK(沸点115.9℃)=3/7であった。
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、防眩性ハードコート層の塗布液(1)を調製した。
【0093】
(低屈折率層用塗布液Aの調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN−7228、固形分濃度6%、JSR(株)製)55.2質量部に、コロイダルシリカ分散液(MEK−ST、平均粒径10〜20nm、固形分濃度30%、日産化学社製)4.8質量部、メチルエチルケトン28.0質量部、シクロヘキサノン2.8質量部、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103信越化学工業(株)製)を9.2質量部を添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Aを調製した。本塗布液の溶剤組成はMEK/シクロヘキサノン(沸点155.7℃)=97/3であった。
【0094】
防眩性ハードコート層用塗布液(1)、低屈折率層用塗布液A、それぞれを図4に示したような塗布機を用いて、以下のようにして塗布した。積層の組み合わせは表1に記載の通りに行った。
(1)防眩性ハードコート層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80UL、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、上記の防眩性ハードコート層用塗布液(1)を線数110本/インチ、深度35μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数40rpm、搬送速度10m/分の条件で塗布した。この時の塗工部の温度は18℃であった。第一(最初)の乾燥ゾーン内で30℃2分の乾燥の後、更に以降の乾燥ゾーン内で100℃、2分の乾燥の後、酸素濃度0.1%以下の窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、乾燥膜厚4.0μmの防眩性ハードコート層を形成し、巻き取った。上記第一の乾燥ゾーン内の風速は、最大で0.2m/sであり、乾燥ゾーン内で塗布膜はセットしていることが確認された。
防眩層ハードコート層の屈折率は、1.51であった。
(2)低屈折率層の塗設
該防眩性ハードコート層を塗設したフイルムを再び巻き出して、上記低屈折率層用塗布液Aを線数200本/インチ、深度35μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数40rpm、搬送速度10m/分の条件で塗布した。この時の塗工部の温度は18℃であった。最初の乾燥ゾーン内で30℃2分の乾燥の後、以降の乾燥ゾーン内で100℃で2分乾燥の後、続けて140℃で8分間後加熱し、さらに酸素濃度0.1%以下の窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射し、続けて140℃で8分間後加熱し、厚さ0.096μmの低屈折率層を形成し、巻き取った。上記第一の乾燥ゾーン内の風速は、最大で0.3m/sであり、乾燥ゾーン内で塗布膜はセットしていることが確認された。低屈折率層の屈折率は、1.43であった。(実施例試料1の防眩性反射防止フィルムの完成)
【0095】
【表1】

【0096】
(防眩性反射防止フィルムの鹸化処理)
実施例試料1について、以下の処理を行った。
1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、50℃に保温した。更に、0.01Nの希硫酸水溶液を調製した。 作製した防眩性反射防止フィルムを、上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。更に、この防眩性反射防止フィルムを100℃の温度で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済み防眩性反射防止フィルムを作製した。これにより、実施例試料1の防眩性反射防止フィルム裏面のTACは、鹸化処理されることで、親水化された。
【0097】
(防眩性反射防止フィルムの偏光板作成、実装)
次に、鹸化処理した実施例試料1を用いて、防眩性反射防止偏光板を作成した。
更に、市販の高精細タイプのノートPC((株)DELL社製、15インチUXGAノートPC)の、外面の防眩性反射防止フィルムを、粘着層ごときれいに剥がし、改めて粘着層を鹸化された裏面TACに付与し、防眩性反射防止層が外面に向くようにして、張り合わせ、実装させた。
【0098】
(防眩性反射防止フィルムの評価)
得られたフィルムについて、以下の項目の評価を行った。
【0099】
(1)外観面状
作製した防眩性反射防止フィルムを、(株)DELL社製15インチUXGAノートPCに実装し、タングステン光にて、詳細な外観検査した。
外観の面状に全く問題無し :○
実用上問題無いが、弱いムラを検出 :△
やや強いムラを検出 :×
かなり強いムラを検出 :××
また、塗布層の残留溶剤量が多く、工程内の反転ロールに塗膜成分が転写し、接着跡として見えたものも(N.G.)×と判定した。
(2)防眩性評価
作成した防眩性フィルムにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m)を映し、その反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
蛍光灯の輪郭が全くわからない :◎
蛍光灯の輪郭がわずかにわかる :○
蛍光灯はぼけているが、輪郭は識別できる :△
蛍光灯がほとんどぼけない :×
(3)ギラツキ評価
作成した防眩性フィルムにルーバーありの蛍光灯拡散光を映し、表面のギラツキを以下の基準で評価した。
ほとんどギラツキが見られない :○
わずかにギラツキがある :△
目で識別できるサイズのギラツキがある :×
(4)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、積分球測定による分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの積分球平均反射率を用いた。
【0100】
[実施例試料、比較例試料]
実施例試料1に準じ、添加溶剤や原料素材の溶剤成分を調整により、防眩性ハードコート層についてはMEK/酢酸エチル(沸点57.8℃)=2/8の塗布液、低屈折率層については、アセトン(沸点56.1℃)/MEK=6/4、ジクロロメタン(沸点39.8℃)/MEK=6/4、およびMEK/ジアセトンアルコール(沸点168℃)=95/5の塗布液を作成し、前記表1に記載した通りの塗布液溶剤にすること、並びに、防眩性ハードコート層及び低屈折率層の塗工の際の塗布部以降最初の乾燥部の温度を変更すること以外は、実施例試料1と全く同じにして作成した試料を実施例試料2〜22、比較例試料1〜10とする。
【0101】
次に、実施例試料1〜22、比較例試料1〜10の鹸化処理したフィルムを、偏光板と貼り合わせて防眩性反射防止付き偏光板を作製し、この偏光板を用いて防眩性反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作製したところ、実施例試料1〜22は外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、外観の面状が非常に良好であり、優れた視認性と外観を有する液晶表示装置となった。一方、比較例試料1〜10は、塗布部から最初の乾燥部の温度が40℃を越えると、外観面状が悪化してくるようになり、10℃未満であると、セットが終了しておらず、未乾の為の反転ロールでの接着跡が見えるようになったため、いずれもディスプレイ装置として不適当であった。
また、第1乾燥部の温度を、防眩性ハードコート塗布液の主溶剤の沸点並以上の80℃、100℃にした比較例7、8では、外観のムラが特にひどく、本反射防止膜形成法として適しなかった。また、低屈折率層において、沸点の低いジクロロメタンを主溶剤とした場合には、第1乾燥部を沸点より5℃低い35℃にしたときにはムラが強めで、15℃低い25℃にした場合外観は良化した。
【0102】
[実施例31〜44]
(オルガノシランのゾル組成物aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン161部、シュウ酸 123部、エタノール415部を加え混合したのち、70℃で5時間反応させた後、室温まで冷却しオルガノシランのゾル組成物aを得た。
【0103】
(防眩性ハードコート層用塗布液(2)の調製)
市販シリカ含有UV硬化型ハードコート液(デソライトZ7526の溶剤組成変更品、JSR社製、固形分濃度約72%、固形分中SiO含率約38%、重合性モノマー、重合開始剤含有)272g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)91質量部、オルガノシランのゾル組成物aを19.6gを加え、さらにメチルイソブチルケトン26.2gで希釈した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.52であった。
さらにこの溶液に平均粒径3.5μmの分級強化架橋ポリスチレン粒子(商品名:SXS−350H、綜研化学(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した分散液を44g加え、次いで、平均粒径5μmの分級強化架橋ポリスチレン粒子(商品名:SXS−500H、綜研化学(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液を57.8g加えた。本塗布液の溶剤組成はMEK/MIBK=3/7であった。
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層の塗布液(2)を調製した。
【0104】
(防眩性ハードコート層用塗布液(3)の調製)
市販ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液(デソライトZ7404、JSR社製、固形分濃度約61.2%、固形分中ZrO含率約69.6%、重合性モノマー、重合開始剤含有)95.2g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)28.8g、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103(商品名);信越化学工業社製)を9.6gを加え、さらにメチルイソブチルケトン20.1g、メチルエチルケトン5.4gで希釈した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.62であった。本塗布液の溶剤組成は、MEK/MIBK=1/9であった。
さらにこの溶液に平均粒径1.5μmのシリカ粒子(商品名:シーホスターKE−P150、日本触媒(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した分散液を29.5g加え、次いで、平均粒径3μmの分級強化架橋ポリメタアクリル酸メチル粒子(商品名:MXS−300、綜研化学(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散し、1週間経時させた分散液を11.3g加えた。
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層の塗布液(3)を調製した。
【0105】
(低屈折率層用塗布液Bの調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN−7228、固形分濃度6%、JSR(株)製)177gにシリカゾル(MEK−ST、平均粒径10〜20nm、固形分濃度30%、日産化学社製)7.0g、シリカゾル(MEK−STの粒子径違い品、平均粒径50nm、固形分濃度25%、日産化学社製)8.2g、オルガノシランのゾル組成物a 4.0gおよびメチルエチルケトン90g、シクロヘキサノン9.0gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Bを調製した。本塗布液の溶剤組成はMEK/シクロヘキサノン=97/3であった。
【0106】
上記の防眩性ハードコート層(2)、(3)、低屈折率層Bについて、それぞれを実施例1に記載の方法にしたがって実施例31から44のように塗布を行った。この時、乾燥条件は、塗工部温度、乾燥ゾーンの温度、ゾーンの配置、塗布速度等を適宜変更して行った。この時の積層、乾燥条件の組み合わせは表2に記載のとおりである。なお、防眩性ハードコート液(3)を用いた実施例試料41〜44は、防眩性が低く(△レベル)なるように塗布厚調整して塗布をした。
以上のように作成した防眩性反射防止フィルムを、実施例1と同様にけん化処理、偏光板作成、実装を行い、評価を行った。
【0107】
この結果、実施例試料31〜44は外光の映り込みがなく、優れたコントラストが得られ、外観の面状が良好であった。特に塗工部から第1乾燥部にはいるまでの時間は30秒より短い場合がよく、第1乾燥部の温度は、塗工部より2℃以上高い場合が面状、反射率、ギラツキが良く、優れた視認性と外観を有する液晶表示装置となった。
【0108】
【表2】

【0109】
[実施例51]
(ハードコート層用塗布液の調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)306質量部を、16質量部のメチルエチルケトンと220質量部のシクロヘキサノンの混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)7.5質量部を加え、溶解するまで攪拌した後に、450質量部のMEK−ST(平均粒径10〜20nm、固形分濃度30質量%のSiOゾルのメチルエチルケトン分散物、日産化学(株)製)を添加し、撹拌して混合物を得、孔径3μmのポリプロピレン製フィルター(PPE−03)で濾過してハードコート層用塗布液を調製した。
(二酸化チタン分散物の調製)
二酸化チタン超微粒子(TTO−55B、石原テクノ(株)製)30質量部、ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA、興人(株)製)1質量部、リン酸基含有アニオン性分散剤(KAYARAD PM−21、日本化薬(株)製)6質量部およびシクロヘキサノン63質量部を、サンドグラインダーによって、コールター法で測定した平均粒径が42nmになるまで分散し、二酸化チタン分散物を調製した。
【0110】
(中屈折率層用塗布液の調製)
シクロヘキサノン75質量部およびメチルエチルケトン19質量部に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.11質量部および光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.04質量部を溶解した。さらに、二酸化チタン分散物3.1質量部およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)2.1質量部を加え、室温で30分間撹拌した後、孔径0.4μmのプロファイルスター0.4μm(日本ポール社(株)製)で濾過して、中屈折率層用塗布液を調製した。
【0111】
(高屈折率層用塗布液の調製)
シクロヘキサノン54質量部およびメチルエチルケトン18質量部に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.13質量部および光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.04質量部を溶解した。さらに、二酸化チタン分散物26.4質量部およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)1.6質量部を加え、室温で30分間撹拌した後、孔径0.4μmのプロファイルスター0.4μm(日本ポール社(株)製)で濾過して、高屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0112】
(低屈折率層用塗布液Cの調製)
屈折率1.42であり、熱架橋性含フッ素樹脂の6質量パーセントのメチルエチルケトン溶液(JN−7228、JSR(株)製)を溶媒置換して、メチルイソブチルケトン85質量%、2−ブタノール15質量%からなる混合溶媒中に固形分10質量%を含有するポリマー溶液を得た。このポリマー溶液70質量部にMEK−ST(平均粒径10〜20nm、固形分濃度30質量%のSiOゾルのメチルエチルケトン分散物、日産化学(株)製)10質量部、オルガノシランゾル組成物A2.17質量部、およびメチルイソブチルケトン42質量部およびシクロヘキサノン28質量部を添加、攪拌の後、孔径0.4μmのプロファイルスター0.4μm(日本ポール社(株)製)でろ過して、低屈折率層用塗布液Cを調製した。
(反射防止フィルムの作成)
上記のハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層について、それぞれを実施例1に記載の塗布、乾燥方法にしたがって塗布を行った。80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フィルム(株)製、屈折率:1.47)に、ハードコート層用塗布液を、グラビアコーターを用いて塗布し、第一(最初)の乾燥ゾーン内で30℃2分の乾燥の後、更に以降の乾燥ゾーン内で100℃、2分の乾燥の後、酸素濃度0.1%以下の窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、巻き取った。上記第一の乾燥ゾーン内の風速は、最大で0.2m/sであり、乾燥ゾーン内で塗布膜はセットしていることが確認された。このハードコート層は屈折率1.51、膜厚6μmであった。
続いて、上記の中屈折率層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布し、ハードコートと同条件で乾燥、硬化し、中屈折率層(屈折率:1.63、膜厚:67nm)を設けた。
中屈折率層の上に、上記の高屈折率層用塗布液をグラビアコーターを用いて同様に塗布、乾燥、硬化し、高屈折率層(屈折率:1.90、膜厚:107nm)を設けた。
さらに高屈折率層の上に、上記の低屈折率層用塗布液Cをグラビアコーターを用いて塗布し、第一(最初)の乾燥ゾーン内で30℃2分の乾燥の後、120℃で1分間乾燥した後に、酸素濃度0.1%以下の窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射し、さらに120℃で8分間、塗布層を熱硬化させ、低屈折率層(屈折率:1.43、膜厚:86nm)を設けた。このようにして反射防止フィルム51を作成した。
以上のように作成した反射防止フィルムを、実施例1と同様にけん化処理、偏光板作成、実装を行い、評価を行った。
その結果、実施例試料51は外光の映り込みがなく、優れたコントラストが得られ、外観の面状が良好であった。
【0113】
[実施例試料1A]
偏光膜を以下の方法で作製した。PVAフィルムをヨウ素2.0g/l、ヨウ化カリウム4.0g/lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、図23の形態のテンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、テンターを延伸方向に対し図2の如く屈曲させ、以降幅を一定に保った。80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱した。左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心線のなす角は、46゜であった。ここで|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口における実質延伸方向Ax−Cxは、次工程へ送られるフィルムの中心線22に対し45゜傾斜していた。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
さらに、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として鹸化処理した富士写真フイルム(株)製フジタック(セルローストリアセテート、レターデーション値3.0nm)と貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して有効幅650mmの偏光板を得た。得られた偏光板の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜していた。この偏光板の550nmにおける透過率は43.7%、偏光度は99.97%であった。さらに図3の如く310×233mmサイズに裁断したところ、91.5%の面積効率で辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光板を得た。
次に、実施例試料1の鹸化処理したフィルムを、上記偏光板と貼り合わせて防眩性反射防止付き偏光板を作製した。この偏光板を用いて防眩性反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作製したところ、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、優れた視認性と外観を有するディスプレイ装置となった。
【0114】
[実施例試料1B]
上記実施例試料1Aの45°吸収軸が傾斜した偏光板作製の中の、「富士写真フイルム
(株)製フジタック(セルローストリアセテート、レターデーション値3.0nm)」の代わりに実施例試料1の鹸化処理したフィルムを張り合わせて防眩性反射防止付き偏光板を作製した。この偏光板を用いて防眩性反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作製したところ、実施例試料1同様に、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、優れた視認性と外観を有するディスプレイ装置となった。
【0115】
[実施例試料1C]
上記実施例試料1を、1.5規定、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗してフィルムの裏面のトリアセチルセルロース面を鹸化処理し、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)を同条件で鹸化処理したフィルムにポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面を接着、保護して偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、反射防止膜側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製のD−BEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えたところ、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、優れた視認性と外観を有する液晶表示装置となった背景の映りこみが極めて少なく、表示品位の非常に高いディスプレイ装置が得られた。
【0116】
[実施例試料1D]
上記実施例試料1を貼りつけた透過型TN液晶セルの視認側の偏光板の液晶セル側の保護フィルム、およびバックライト側の偏光板の液晶セル側の保護フィルムに、ディスコティック構造単位の円盤面が透明支持体面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と透明支持体面とのなす角度が、光学異方層の深さ方向において変化している光学補償層を有する視野角拡大フィルム(ワイドビューフィルムSA−12B、富士写真フイルム(株)製)を用いたところ、明室でのコントラストに優れ、優れた視認性と外観を有し、且つ、上下左右の視野角が非常に広く、極めて良好な表示品位の高いディスプレイ装置が得られた。
【0117】
[実施例試料1E]
実施例試料1を、有機EL表示装置の表面のガラス板に粘着剤を介して貼り合わせたところ、ガラス表面での反射が抑えられ、極めて視認性の高い、良好な外観のディスプレイ装置が得られた。
【0118】
[実施例1F]
実施例試料1を用いて、片面反射防止フィルム付き偏光板を作製し、偏光板の反射防止膜を有している側の反対面にλ/4板を張り合わせ、有機EL表示装置の表面のガラス板に貼り付けたところ、表面反射および、表面ガラスの内部からの反射がカットされ、極めて視認性の高い、良好な外観のディスプレイ装置が得られた。
【0119】
[実施例1G]
実施例試料1Dの80μmTAC支持体を、富士写真フイルム(株)製の40μmTACに変えた以外は、全く同じにして作製した試料を実施例試料1Gとする。この実施例試料1Gは、非常に薄く 携帯端末、ノートPC等の薄手化に効果的な反射防止フィルム付き偏光板を有した優れたディスプレイ装置であった。
【符号の説明】
【0120】
1 防眩性反射防止フィルム
2 透明支持体
3 防眩性ハードコート層
4 低屈折率層
5 防眩性付与粒子
6 内部散乱性付与粒子
(イ) フィルム導入方向
(ロ) 次工程へのフィルム搬送方向
(a) フィルムを導入する工程
(b) フィルムを延伸する工程
(c) 延伸フィルムを次工程へ送る工程
A1 フィルムの保持手段への噛み込み位置とフィルム延伸の起点位置(実質保持開始点:右)
B1 フィルムの保持手段への噛み込み位置(左)
C1 フィルム延伸の起点位置(実質保持開始点:左)
Cx フィルム離脱位置とフィルム延伸の終点基準位置(実質保持解除点:左)
Ay フィルム延伸の終点基準位置(実質保持解除点:右)
|L1−L2| 左右のフィルム保持手段の行程差
W フィルムの延伸工程終端における実質幅
θ 延伸方向とフィルム進行方向のなす角
11 導入側フィルムの中央線
12 次工程に送られるフィルムの中央線
13 フィルム保持手段の軌跡(左)
14 フィルム保持手段の軌跡(右)
15 導入側フィルム
16 次工程に送られるフィルム
17、17’ 左右のフィルム保持開始(噛み込み)点
18、18’ 左右のフィルム保持手段からの離脱点
21 導入側フィルムの中央線
22 次工程に送られるフィルムの中央線
23 フィルム保持手段の軌跡(左)
24 フィルム保持手段の軌跡(右)
25 導入側フィルム
26 次工程に送られるフィルム
27、27’ 左右のフィルム保持開始(噛み込み)点
28、28’ 左右のフィルム保持手段からの離脱点
81 偏光板吸収軸
82 長手方向
1a 送り出し部
2a 塗布部
3a 第1乾燥部
4a 第2乾燥部
5a 硬化部、反転ロール
6a 巻き取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、防眩性付与粒子を含有する少なくとも1層の防眩性ハードコート層と、最外に位置する低屈折率層それぞれの塗布液を塗布し、乾燥することで形成する防眩性反射防止フィルムの製造方法であって、いずれの防眩性ハードコート層および低屈折率層も、塗布液を塗布した後、10℃以上40℃以下に保たれ、かつ塗膜面にあたる風の風速が0.5m/s以下である第一の乾燥部、および第一の乾燥部よりも高い温度にて乾燥する第二の乾燥部にて乾燥され、該第二の乾燥部の温度は、塗布液中に含まれる最も沸点の低い溶剤の沸点温度以上、塗布液中に含まれる最も沸点の高い溶剤の沸点温度+20℃以下であり、前記第一の乾燥部にて、塗布膜のセットを終了させることを特徴とする防眩性反射防止フィルムの製造方法。
【請求項2】
透明支持体上に、防眩性付与粒子を含有する少なくとも1層の防眩性ハードコート層と、最外に位置する低屈折率層それぞれの塗布液を塗布し、乾燥することで形成する防眩性反射防止フィルムの製造方法であって、いずれの防眩性ハードコート層および低屈折率層も、塗布液を塗布した後、10℃以上40℃以下に保たれ、かつ塗膜面にあたる風の風速が0.5m/s以下である第一の乾燥部、および第一の乾燥部よりも高い温度にて乾燥する第二の乾燥部にて乾燥され、該第二の乾燥部の温度は、50℃以上140℃以下であり、前記第一の乾燥部にて、塗布膜のセットを終了させることを特徴とする防眩性反射防止フィルムの製造方法。
【請求項3】
第1乾燥部の温度が、防眩性ハードコート層および低屈折率層の塗布液における主溶剤の沸点よりも10℃以上低いことを特徴とする請求項1または2に記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
第1乾燥部での温度制御が、塗工後30秒以内にはじめることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。
【請求項5】
第1乾燥部の温度が、塗工部の温度より2℃以上30℃以下高い温度であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−145703(P2011−145703A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83212(P2011−83212)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【分割の表示】特願2008−56916(P2008−56916)の分割
【原出願日】平成14年10月30日(2002.10.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】