説明

防臭組成物

【課題】洗濯乾燥時、洗濯後の被洗物からの悪臭発生、あるいは増強する台所用具の悪臭を経時的に強力に防ぐことができる洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】フタルアルデヒドを含有する防臭組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯衣料からの例えば室内干しのように常温の高湿度下で長時間かけて乾燥した場合の悪臭や、台所用用具からの経時的に悪臭の発生を防ぐことができる防臭組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、核家族の一般化、マンション住まいの増加、共働き家庭の増加で洗濯物を室内で干す、いわゆる部屋干しが洗濯スタイルとして定着している。また近年の清潔志向の高まりからかつてより臭いに対する人々の関心は高まっており、洗濯物関しても同様である。現代住宅の気密性の高い構造は洗濯物の自然乾燥には適しておらず、そのことが繊維の生乾き状態という多湿のいわゆる雑菌の好繁殖状態を生み出し洗濯物を臭わせ、衣類着用時やタオル等の使用時にも不快臭を感じる原因となっている。また同様に台所のような多湿な環境に置かれた用具においても、洗浄後時間の経過とともに不快臭が感じられるようになる。
従来、洗浄性組成物では抗菌剤の他に漂白剤及び漂白活性化剤の配合により抗菌効果や除菌効果を付与させることが知られている。そして、細菌の増殖を抑制することにより細菌由来の悪臭(例えば生乾きの洗濯物の臭い)を抑制することも提案されており、例えば特許文献1には、皮脂汚れ等を雑菌が分解して発生させる悪臭を、ノニオン活性剤、吸油担体、抗菌剤により抑制することが提案されている。また特許文献2には、窒素含有ポリカルボン酸化合物とアルミノ珪酸塩とを併用することにより洗浄力を増強させ、細菌の栄養源となる汚れを除去すると共に、細菌を洗い流して、洗濯乾燥時、洗濯後の被洗物からの悪臭発生を抑制すること、更に菌活性阻害作用及び汚れ分解作用を有する酵素を加え、より効果的に悪臭発生を抑制することが提案されている。特許文献3には、外用剤、住居用洗浄剤及び衣類用洗浄剤に対して防腐効果を発揮する抗菌組成物が開示されている。しかし工業的には、更に強力に洗濯乾燥時・洗濯後の被洗物からの悪臭発生を抑制する素材を見出すことが要望されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−194899号公報
【特許文献2】特開2003−105389号公報
【特許文献3】特開2003−192581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、洗濯乾燥時、洗濯後の被洗物からの悪臭発生、あるいは増強する台所用具の悪臭を経時的に強力に防ぐことができる洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため検討を行った結果、外用剤、住居用洗浄剤及び衣類用洗浄剤に対して防腐効果を発揮する化合物の中でも、洗濯乾燥時、洗濯後の被洗物からの悪臭発生を抑制する効果があるものとないものとがあることを見出し、更にはアルカリ剤および/または無機過酸化物を併用すると悪臭発生抑制効果が高まることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、フタルアルデヒドを含有する防臭組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の防臭組成物によれば洗濯衣料からの例えば室内干しのように常温の高湿度下で長時間かけて乾燥した場合の悪臭の発生を防ぐことができ、あるいは増強する台所用用具からの悪臭を経時的に(持続的に)強力に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられるフタルアルデヒドは、オルトフタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドのいずれでもよいが、特にオルトフタルアルデヒドがアルカリ剤と併用したときに、好適に利用できる。アルカリ剤は、本発明の組成物を洗濯時0.0105%水溶液に調製したときの25℃におけるpHを8.5以上に調製できるものであれば、何でもよいが、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが好適に利用できる。炭酸ナトリウムがより好ましい。無機過酸化物としては一般に漂白剤として用いられている過炭酸ナトリウムが好適に利用できる。
フタルアルデヒドの配合量は、組成物全体の0.01〜5.%、特に0.1〜0.5%とすることが好ましく、これに満たないと満足な効果が発揮されない場合があり、5%を超えると組成物の安定性を損なう場合がある。
アルカリ剤の配合量は、組成物全体の0.1〜50.0%、特に1.0〜30.0%とすることが好ましく、これに満たないと十分な防臭効果が得られない場合があり、50.0%を超えると他成分とのバランスが崩れ、洗浄力の低下か製剤調整上の不都合を生じる場合がある。
無機過酸化物の配合量は、組成物全体の0.1〜40.0%、特に1.0〜20.0%とすることが好ましく、これに満たないと十分な防臭効果が得られない場合があり、40.0%を超えると他成分とのバランスが崩れ、洗浄力の低下か製剤調整上の不都合を生じる場合がある。
【0008】
如何なる理論にも拘束されるものではないが、被洗物を乾燥している間に空気中に浮遊する細菌が被洗物に付着し、その細菌が産生する酵素の作用により、被洗物表面や被洗物を構成する繊維内に残存する微量の悪臭発生原因物質が悪臭発生物質に分解されることにより悪臭がするものと考えられるところ、本発明に用いられるフタルアルデヒドは、酵素を阻害することにより悪臭の発生を防止しているものと考えられる。細菌が死滅したとしても産生された酵素が存在する限り悪臭発生原因物質が分解されて悪臭を発生することになるので、細菌を死滅させるだけでは充分な防臭効果は得られないと考えられるが、本発明に用いられるフタルアルデヒドは、他の抗菌剤ないし防腐剤とは異なり、酵素にも作用することで強い防臭効果を発揮するものと考えられる。
本発明の防臭組成物は、衣料用洗剤組成物、台所用洗浄剤組成物などとして調製でき、その種類、剤型に応じ、上記必須成分に加えて任意成分としてその他の公知の添加剤を配合することができる。
【実施例】
【0009】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕悪臭の発生抑制効果評価試験
悪臭発生原因物質としてメチオニンを用い、本発明の組成物による悪臭発生抑制効果を評価した。
1)実験材料
(1)被検液
表1−1及び表1−2に示した被検液欄の素材のうち炭酸ナトリウムおよび過炭酸ナトリウムは水を用いて、またアルデヒドはエタノールを用いて1重量%に調整した。なお被検液欄最下行のエタノールはブランク試験用である。
(2)菌液
L−システイン塩酸塩を0.05%含む3%トッド・ヘウィット・ブロス培地(DIFCO社製)でFusobacterium nucleatum 1436(FDC(米))を嫌気的に1日培養した。550nmにおける吸光度が0.8以上あることを確認後、5000rpmで4分間遠沈し上清を捨てた。菌体を生理的食塩水に縣濁させ、再び同様の操作を行ない、得られた菌体をもとの菌液と同容量の生理的食塩水に縣濁させ、氷冷しながら試験に供した。
(3)L−メチオニン溶液
L−メチオニン(和光純薬社製)の0.5%溶液を水で調製した。
【0010】
2)方法
内容量23mLの試験管に生理的食塩水2.37mL、被検液(1)(コントロールの場合はエタノール)を0.030mL入れた。該試験管にシリコン栓をし、撹拌後37℃の水浴に保温した。5分後、菌液(2)0.2mLをツベルクリン注射器を用いて注入、攪拌し、保温した。さらに5分経過した後、L−メチオニン溶液(3)0.3mLを同様に注射器を用いて注入、攪拌し、保温した。さらに10分経過した後10%硫酸溶液0.1mLを注射器を用いて注入、攪拌し、更にガスタイトシリンジで空気を5mL注入、攪拌し、ヘッドスペース5mLを抜き取り、ガスクロマトグラフ分析でメチルメルカプタン量を測定した。
同様に調製した被検液を用いて上記手順を2回繰り返し、その平均から悪臭発生抑制率を次のように計算した。結果を表1−1及び表1−2に示す。

悪臭発生抑制率=(C−S)/C×100(%)
C:コントロールのメチルメルカプタン量
S:被検液添加時のメチルメルカプタン量

<ガスクロマトグラフィー>
島津ガスクロマトグラフGC−14A型を使用し、次の条件で測定した。カラム:Dinoryl phthalate 20%, Chromosorb W AW DMCS 60−80メッシュ、テフロン(登録商標)チューブ6m×3.2mmφ、カラム温度:80℃、キャリアガス:窒素55mL/min、検出器:FPD





















【0011】
【表1】



【0012】
【表2】

【0013】
以上実験系において、フタルアルデヒドに臭気発生抑制作用が認められ、更にアルカリ剤、過炭酸ナトリウムとの併用で相乗効果が観察された。オルトフタルアルデヒドでは特に強い相乗効果が認められた。被検液に用いた抗菌剤は、フタルアルデヒドとともに特開2003−192581号公報に開示されているものであるが、臭気発生抑制作用は確認できなかった。
【0014】
〔実施例2〕洗剤系での悪臭の発生抑制効果評価試験
フタルアルデヒド配合および比較の非配合洗剤組成物を表に従って調製し、衣類を洗濯した(オルトフタルアルデヒドの配合濃度は0.50%、0.10%、0.01%とし、バランスとしては硫酸ソーダを用いた)。これを高湿度下で乾燥した後、衣類の臭いを嗅ぎ、悪臭の発生抑制効果を評価した。すなわち、各実施例、比較例の洗剤につき、通常生活で1日着用した新品の綿100%のTシャツ各5枚を、全自動洗濯機(松下電器製、NA−F70AP)標準コースで、水温約20℃、硬度約3゜DHの水道水を用いて洗濯した。洗剤投入量は、洗濯機の洗剤量表示に従った。脱水後、室温約25℃、湿度約70%の部屋で8時間乾燥させ、10名の評価者により、以下の基準で評点し、その平均点を悪臭の強度とした。結果を表2−1及に示す。
0点:悪臭を感じない
1点:悪臭をわずかに感じる
2点:悪臭を強く感じる
































【0015】
【表3】

【0016】
オルトフタルアルデヒドを0.50%、0.10%配合した洗剤に臭気発生抑制作用が認められ、アルカリ剤、過炭酸ナトリウムとの併用で格別に相乗効果が観察された。0.01%配合洗剤の作用は弱い。このとき洗濯液中のオルトフタルアルデヒド濃度は約0.600ppmである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタルアルデヒドを含有する防臭組成物。
【請求項2】
さらに、アルカリ剤を含有する請求項1記載の防臭組成物。
【請求項3】
さらに、無機過酸化物を含有する請求項1又は2記載の防臭組成物。

【公開番号】特開2008−212193(P2008−212193A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49788(P2007−49788)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】