説明

防虫性のシート

【課題】 光源を覆うことで、この光源に昆虫類が群がることを防止でき、人間の目には着色していない自然な色調に見え、光源からの光を拡散透過させ、さらには遮蔽性をも有するシートを提供する。
【解決手段】 本発明のシートは、ヘイズ95%以上、表面の十点平均粗さ(Rz)0.5μm以上、300〜410nm(A)で光線透過率(TA)が1%以下、450〜800nm(B)で光線透過率(TB)が50〜80%、極大吸収波長(λP)が530〜620nmである吸収極大ピーク(P)を有し、この波長(λP)における光線透過率(TP)が、450〜700nm(B)の最大光線透過率(TBmax)の0.98倍以下である。例えばアクリル樹脂などの透明樹脂に、最大吸収波長(λUVmax)が350〜370nmである紫外線吸収剤、最大吸収波長(λVISmax)が530〜620nmである着色剤および光拡散剤を含有させた樹脂組成物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートに関し、詳しくは光源を覆うことにより、この光源に昆虫類が誘引されて群がることを防止できる防虫性のシートに関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫類には、紫外光に向かって進む走光性があるため、夜間には、かかる波長の光を放射する光源、例えば白色蛍光灯などに誘引されて群がってくる。
【0003】
光源に昆虫類が誘引されることを防ぐために、昆虫類が最も敏感に反応する波長の光を遮蔽し、これ以外の光、例えば可視光のほとんどは透過する防虫性のシートが提案されている。例えば特許文献1〔特開昭55−023921号公報〕には、光線透過率が波長300〜380nmで1%以下、波長420〜700nmで80%以上であるシートが提案されている。同文献で具体的に提案されているシートは、波長400〜410nmの光線透過率が40%〜70%であり、波長420〜700nmに吸収極大ピークがないので(特許文献1の第8頁の第1図)、人間の目には殆ど無色に見え、これを透して見える光源からの光は、自然な色調に見える。
【0004】
しかし、同文献に具体的に開示されているシートは、波長400〜410nmで40%〜70%もの光線透過率であるため、かかる波長範囲の光にも反応する昆虫類が群がってくるという問題があった。
【0005】
かかる問題を解決するものとしては、特許文献2〔特開昭62−278931号公報〕には、波長300〜380nmの光線透過率が1%以下であり、波長400〜480nmの光線透過率が30%以下であり、波長580〜700nmの光線透過率が80%以上であるシートが提案されており、具体的には波長580〜700nmに吸収極大ピークが見られないものが開示されている〔特許文献2の第9頁の第3図〕。かかるシートは、400〜410nmの光線透過率が30%以下であるので、かかる波長範囲の光にも反応する昆虫類が誘引されて群がってくるのを防止することができる。
【0006】
しかし、同文献で具体的に提案されているシートは、人間の目には着色して見え、これを透過してくる光源からの光が不自然な色調に見えてしまうという問題があった。
【0007】
また、防虫性のシートとして、光源を覆う照明カバーなどのように、光を拡散させながら透過させる拡散透過性を有するものも求められ、さらには光源の像が透けて見えない遮蔽性を有するものも求められている。
【0008】
【特許文献1】特開昭55−023921号公報
【特許文献2】特開昭62−278931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明者は、光源を覆うことで、この光源に昆虫類が群がることを防止でき、人間の目には着色していない自然な色調に見え、光源からの光を拡散透過させ、さらには遮蔽性をも有するシートを開発するべく鋭意検討した結果、ヘイズが95%以上であり、表面の十点平均粗さ(Rz)が0.5μm以上であり、波長300〜410nmでの光線吸収率を1%以下で、波長450nm〜800nmの光線透過率が50%〜80%であり、この波長範囲に極大吸収波長530〜620nmの吸収極大ピークが有り、この極大吸収波長における光線透過率が、波長450nm〜700nmにおける最大光線透過率の0.98倍以下のシートは、透過光を拡散透過し、昆虫類が群がってくることが少なく、また人間の目には殆ど着色していないように見えることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、ヘイズが95%以上であり、シート表面の十点平均粗さ(Rz)が0.5μm以上であり、300nm〜410nmの波長範囲(A)で光線透過率(TA)が1%以下であり、450nm〜800nmの波長範囲(B)で光線透過率(TB)が40%〜70%であり、極大吸収波長(λP)が530nm〜620nmである吸収極大ピーク(P)を有し、前記極大吸収波長(λP)における光線透過率(TP)が、450nm〜700nmの波長範囲(B)における最大光線透過率(TBmax)の0.98倍以下であることを特徴とするシートを提供するものである。図1に本発明のシートの一例の光線透過スペクトルを示す。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシートによれば、光源に昆虫類が群がることを防止でき、また、このシートは人間の目には着色していない自然な色調に見える。しかも、拡散透過性を有し、さらに遮蔽性を有するので、光源の像が透けて見えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のシートは、300nm〜410nmの波長範囲(A)で光線透過率が1%以下であり、理想的には実質的に0である。本発明のシートは、かかる波長範囲(A)での光線透過率(TA)が1%以下であるので、昆虫類が反応する波長範囲(A)の光は十分に遮蔽されている。
【0013】
450nm〜800nmの波長範囲(B)では、光線透過率(TB)が40%〜70%である
。かかる光線透過率(TB)が40%未満であると、例えば光源を覆った場合などに十分に
可視光を透過することができず、人間の目には暗く見えてしまう傾向にある。
【0014】
本発明のシートは、吸収極大ピーク(P)を有しており、この吸収極大ピーク(P)は最大吸
収波長(λP)が530nm〜620nmである。最大吸収波長(λP)が530nm未満であ
ったり、620nmを超えていると、人間の目には着色して見えることがある。
【0015】
吸収極大ピーク(P)の最大吸収波長(λp)における光線透過率(Tp)は、450nm〜800nmの波長範囲(B)における最大光線透過率(TBmax)の0.98倍以下、好ましくは0.86倍以下である。かかる光線透過率(TP)が最大光線透過率(TBmax)の0.98倍を超えていると、人間の目には着色して見えてしまう傾向にあり、好ましくない。なお、450nm〜800nmの波長範囲(B)における光線透過率(TB)は50%〜80%の範囲であるので、極大吸収ピーク(P)の最大吸収波長(λp)における光線透過率(Tp)は、最大光線透過率(TBmax)の0.57倍以上である。
【0016】
かかる本発明のシートとしては、例えば透明樹脂に紫外線吸収剤、着色剤および光拡散剤
を含有させた樹脂組成物からなるシートが挙げられる。
【0017】
透明樹脂としては、例えばアクリル樹脂が挙げられる。アクリル樹脂はそれ単独では無色
で透明な熱可塑性樹脂として広く用いられているものである。かかるアクリル樹脂として
は、例えばメタクリル酸メチル単位の含有量が50質量%以上の重合体が挙げられ、メタ
クリル酸メチルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸メチルおよびこれと共重合
可能な単量体の共重合体であってもよい。
【0018】
メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体は、分子内にメタクリル酸メチルとラジカル重
合可能な二重結合を一つ有する単官能単量体であってもよいし、二つ以上有する多官能単
量体であってもよい。単官能単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸ブチ
ル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルなどのアクリル酸エステ
ル類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキ
シルなどのようなメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンなどが
挙げられる。また、多官能単量体としては、例えばネオペンチルグリコールジメタクリレ
ート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレー
ト、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、
それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
紫外線吸収剤としては、例えば最大吸収波長(λUVmax)が350nm〜370nmである
紫外線吸収剤が用いられる。最大吸収波長(λUVmax)が350nm未満の紫外線吸収剤を
用いたのでは、410nm以下の光線透過率(TA)を1%以下とするために多量に含有さ
せる必要があり、経済的に不利である。また、370nmを超える紫外線吸収剤であって
もよいが、その多くは、波長450nm以上にも吸収があるので、後述する着色剤の使用
量が多くなり、シートが黒っぽく見えてしまうため、好ましくない。
【0020】
最大吸収波長(λUVmax)が350nm〜370nmである紫外線吸収剤としては、例えば
2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−(te
rt−ブチル)フェノール〔最大吸収波長λUVmax=353nm〕、2、4−ジ−ter
t−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〔最大吸収波
長λUVmax=353nm〕などが挙げられる。かかる紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸
収剤の種類にもよるが、例えばシートの単位面積あたり10g/m2〜100g/m2程度
である。
【0021】
着色剤としては、最大吸収波長(λVISmax)が530nm〜620nmである着色剤が用い
られ、透過光の散乱が少ない点で、染料が好ましく用いられる。かかる染料としては、例
えばC.I.ディスパース バイオレット 26(C.I.Disperse Violet 26)〔最大吸収
波長λUVmax=540nm、「Sumiplast Bordeaux HBL」(住友化
学社)などとして市販されている。〕、
C.I.ディスパース バイオレット 28(C.I.Disperse Violet 28)〔最大吸収波長λ
VISmax=約550nm、「Sumiplast Violet RR」(住友化学社)、「
Diaresin Violet D」(三菱化学社)などとして市販されている。〕、
C.I.ピグメント バイオレット 1(C.I.Pigment Violet 1)〔最大吸収波長λUVmax
=560nm、「Rhodamine B」(サンケミカル社)、「Fanal Viol
et D5480」(BASF社)などとして市販されている。〕、
C.I.ソルベント バイオレット 13(C.I.Solvent Violet 13)〔最大吸収波長λVIS
max=約580nm、「Waxoline Purple AS」(ICI社)、「Sum
iplast Violet B」(住友化学社)、「Macrolex Violet B
」(Bayer社)などとして市販されている。〕、
C.I.ソルベント ブルー 97(C.I.Solvent Blue 97)〔最大吸収波長λUVmax=58
0〜610nm、「Macrolex Blue RR」(Bayer社)などとして市販
されている。〕などが挙げられる。かかる着色剤の含有量は、その種類によって異なるが
、例えばシートの単位面積あたり0.001g/m2〜0.02g/m2程度である。
【0022】
光拡散剤としては、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルクな
どの無機微粒子を用いることができる。光拡散剤として、架橋ポリスチレン粒子、架橋ア
クリル粒子などの有機微粒子を用いることもできる。透明樹脂に対して非相溶性の樹脂を
透明樹脂と溶融混練して用いることもでき、この非相溶性の樹脂は、透明樹脂と相分離す
ることにより、光を拡散させる。
【0023】
光拡散剤の使用量は、450nm〜800nmの波長範囲(B)で光線透過率(TB)および
ヘイズが本発明で規定する範囲となるように適宜選択され、光拡散剤の種類、無機微粒子
を用いる場合には、その粒子径などにより異なるが、例えばシートの単位面積あたりの含
有量で5g/m2〜500g/m2程度である。光拡散剤の使用量が多いと、上記波長範囲
(B)での光線透過率(TB)が低くなり、少ないとヘイズが低くなる。
【0024】
かかる樹脂組成物シートは、例えば加熱されて溶融状態にある透明樹脂に紫外線吸収剤、着色剤および光拡散剤を添加して、成形する方法、具体的にはダイから押し出して成形する押出成形法、成形型内に射出して成形する射出成形法などの通常の成形方法で製造することができる。また、押出成形などの方法でペレット化してから、一対の成形型の間で熱プレスするプレス成形法により製造することもできる。
【0025】
樹脂組成物シートは、単量体またはその部分重合物と紫外線吸収剤、着色剤および光拡散
剤とを混合し、得られた混合物を重合セル内で重合させて成形するキャスト重合法によっ
ても製造することができる。単量体としては、メタクリル酸メチルを単独で用いてもよい
し、メタクリル酸メチルおよびこれと共重合可能な単量体の混合物であってもよい。混合
物は通常、重合開始剤を含有させて用いられる。また通常は、重合後、重合セルからの離
型を容易にするために離型剤が添加されて用いられる。
【0026】
樹脂組成物シートは、上記と同様の単量体に紫外線吸収剤、着色剤および光拡散剤を混合してから、懸濁重合法、塊状重合法などの方法で重合して樹脂組成物を得、得られた樹脂組成物を押出成形法、射出成形法などの成形法により成形する方法でも製造することができる。
【0027】
かかる本発明のシートは、厚みが通常0.1mm〜30mm程度である。
【0028】
本発明のシートは、片面または両面に細かな凹凸が設けられており、その十点平均粗さ(Rz)は0.5μm以上、好ましくは1μm以上、通常は2mm以下である。このようなシートとするには、例えばヤスリによる粗面化、サンドブラストなどの方法によりシートの表面を物理的に荒らす方法が挙げられる。本発明のシートを押出成形法により製造する場合には、溶融状態にある透明樹脂に、不溶性の樹脂粒子を分散させてダイから押し出すことにより、この樹脂粒子により表面に凹凸を設けることができる。射出成形法、プレス成形法などの成形型を用いる成形法により製造する場合には、成形型として内面が凹凸面のものを用い、転写して凹凸を設けることができる。キャスト重合法により製造する場合には、重合セルとして内面が凹凸面の重合セルを用い、転写して凹凸を設けることができる。
【0029】
本発明のシートは、光線透過率が300nm〜410nmの波長範囲(A)で1%以下であるので、白色蛍光灯などの光源を覆う照明カバーとして用いることで、光源に昆虫類が群がることを防止することができ、人間の目には着色していないよう見え、しかも光源の像が透けて見えないので、自然な色調の照明光で照明することができる。
【0030】
本発明のシートは、内部に光源を有していて、この内部の光源によって照明する内照式の看板の看板材として用いることで、看板材に描かれた装飾の色彩を損なうことなく、昆虫類が群がることを防止することができ、また光源の像が透けて見えないので、好ましく用いられる。
【0031】
本発明のシートを、家屋などの窓材、出入口の間仕切り板などとして用いることで、屋内の照明によって窓際や出入口などに昆虫類が群がることがなく、また日中は自然な色調で太陽光を屋内に採り入れることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はかかる実施例によって限
定されるものではない。
【0033】
なお、各実施例で得たシートの光線透過スペクトルは、分光光度計〔日立U−4000型
〕を用いて300nm〜800nmの波長範囲で5nm間隔で測定して求めた。
イエローインデックスは(YI)は、同時測定方式分光方式色度計〔日本電色工業(株)製
、「SQ−2000」〕を用いて反射法により、JIS Z−8722に記載の方法によ
り、Cの標準光を用いたときの三刺激値(X、Y、Z)を求め、この三刺激値から、JI
S Z7105に従って求めた。
ヘイズは、JIS K7136に従い、反射・透過率計〔(株)村上色彩技術研究所製、「
HR−100型」〕を用いて測定した。
光拡散性は、自動変角光度計〔(株)村上色彩技術研究所製、「GP−230」〕を用いて、垂直入射光による透過光強度を0.1度刻みで測定し、直進透過光(0度)の透過光強度(I0)に対する5度の角度の透過光強度(I5)の強度比(I5/I0)を求めて光拡散性を評価した。強度比(I5/I0)が大きいほど、光拡散性が高いことを示す。
十点平均粗さ(Rz)は、超深度形状測定顕微鏡〔キーエンス社製、「VK−8500」〕を用いて表面をスキャンして求めた。
目視評価は、蛍光灯から30cmの距離にシートを置き、このシートを通して蛍光灯の像が見えないものを「○」とし、見えるものを「×」とした。
【0034】
実施例1
メタクリル酸メチル100質量部あたり2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.002質量部を混合し、80℃で部分重合させて、重合体含有量5質量%の部分重合物を得た。この部分重合物98.2質量部に、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂(MS樹脂)〔メタクリル酸メチル単位20質量%、スチレン単位80質量%〕0.75質量部を加え、さらに2−〔5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル〕−4−メチル−6−tert−ブチル〕フェノール(紫外線吸収剤)1.1質量部、着色剤〔C.I.ソルベント バイオレット 13、最大吸収波長λVISmax=約580nm〕0.00016質量部、酸化チタン微粉末〔光拡散剤〕0.021質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.08質量部および離型剤0.05質量部を添加し、減圧下〔絶対圧力で87kPa〕にて30分間脱気した。その後、ガラス板〔厚さ10mm、30cm×30cm〕2枚と塩化ビニル製ガスケットで構成された重合セル内に注入し、72℃に加熱して同温度で3時間保持したのち、120℃に加熱し同温度で1時間保持して重合させて、厚さ2mmのアクリル樹脂組成物シートを得た。2枚のガラス板のうち、1枚は、内面に十点平均粗さ(Rz)25μmの細かな凹凸が設けられたものを用い、1枚は内面が平滑なものを用いたた。このアクリル樹脂組成物シートは、目視では着色を確認できなかった。このアクリル樹脂組成物シートの光線透過スペクトルを図1に示し、評価結果を第1表に示す。
【0035】
このアクリル樹脂組成物シートは、単位面積あたり紫外線吸収剤を26.2g/m2、着色剤を0.00381g/m2、光拡散剤を18.3g/m2それぞれ含んでいて、ヘイズは98.8%、YIは−2.0である。300nm〜410nmの波長範囲(A)での光線透過率の最大値(TAmax)は0.5%(410nm)であり、450〜800nmの波長範囲(B)での光線透過率の最小値(TBmin)は53.0%、最大値(TBmax)は62.8%である。極大吸収ピークを有し、その極大吸収波長(λp)は約550nm、極大吸収波長における光線透過率(Tp)は53.0%である。極大吸収波長における光線透過率(Tp)は、最大光線透過率(TBmax)の0.84倍である。
【0036】
このシートを白色蛍光灯の照明カバーとして使用すると、白色蛍光灯からの光は拡散透過されて自然な乳白色に見え、白色蛍光灯の像は見えず、また屋外で使用しても、昆虫類が群がってこない。
【0037】
実施例2
2枚のガラス板として、それぞれ内面に十点平均粗さ(Rz)25μmの細かな凹凸が設けられたものを用いた以外は実施例1と同様に操作して、アクリル樹脂組成物シートを得た。このアクリル樹脂組成物シートの光線透過スペクトルを図2に示し、評価結果を第1表に示す。
【0038】
第 1 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 実施例2
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
部分重合物 (質量部) 98.2 98.2
MS樹脂 (質量部) 0.75 0.75
紫外線吸収剤 (質量部) 1.1 1.1
(g/m2) 26.2 26.2
着色剤 (質量部) 0.00016 0.00016
(g/m2) 0.00381 0.00381
光拡散剤 (質量部) 0.021 0.021
(g/m2) 18.3 18.3
───────────────────────────────
Amax (%) 0.5 0.4
Bmin (%) 53.0 53.3
Bmax (%) 62.8 63.7
───────────────────────────────
吸収極大ピーク
λp (nm) 550 550
p (%) 53.5 53.3
p/TBmax 0.84 0.84
───────────────────────────────
ヘイズ (%) 99.8 98.6
YI −2.0 −1.8
5/I0 (%) 94 95
Rz (μm) 25 25
目視評価 ○ ○
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Amax:300nm〜410nmの波長範囲(A)での光線透過率の最大値
Bmin:450〜700nmの波長範囲(B)での光線透過率の最小値
Bmax:450〜700nmの波長範囲(B)での光線透過率の最大値
λp :極大吸収ピークの極大吸収波長
p :極大吸収波長における光線透過率
【0039】
実施例3
2枚のガラス板のうちの1枚は、内面に十点平均粗さ(Rz)4μmの細かな凹凸が設けられたものを用い、1枚は内面が平滑なものを用いた以外は実施例1と同様に操作して、アクリル樹脂組成物シートを得た。このアクリル樹脂組成物シートの光線透過スペクトルを図3に示し、評価結果を第2表に示す。
【0040】
実施例4
2枚のガラス板を何れも、内面に十点平均粗さ(Rz)4μmの細かな凹凸が設けられたものを用いた以外は実施例1と同様に操作して、アクリル樹脂組成物シートを得た。このアクリル樹脂組成物シートの光線透過スペクトルを図4に示し、評価結果を第2表に示す。
【0041】
比較例1
2枚のガラス板を何れも、内面が平滑なものを用いた以外は実施例1と同様に操作して、アクリル樹脂組成物シートを得た。このアクリル樹脂組成物シートの光線透過スペクトルを図5に示し、評価結果を第2表に示す。
【0042】
第 2 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例3 実施例4 比較例1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
部分重合物 (質量部) 98.2 98.2 98.2
MS樹脂 (質量部) 0.75 0.75 0.75
紫外線吸収剤 (質量部) 1.1 1.1 1.1
(g/m2) 26.2 26.2 26.2
着色剤 (質量部) 0.00016 0.00016 0.00016
(g/m2) 0.00381 0.00381 0.00381
光拡散剤 (質量部) 0.021 0.021 0.021
(g/m2) 18.3 18.3 18.3
────────────────────────────────────────
Amax (%) 0.4 0.4 0.4
Bmin (%) 54.1 52.8 53.5
Bmax (%) 64.7 63.5 64.7
────────────────────────────────────────
吸収極大ピーク
λp (nm) 550 550 550
p (%) 54.1 52.8 53.5
p/TBmax 0.84 0.83 0.83
────────────────────────────────────────
ヘイズ (%) 98.0 98.8 99.0
YI −1.6 −2.4 −2.4
5/I0 (%) 58.6 72.6 9.9
Rz (μm) 4 4 4
目視評価 ○ ○ ×
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Amax:300nm〜410nmの波長範囲(A)での光線透過率の最大値
Bmin:450〜700nmの波長範囲(B)での光線透過率の最小値
Bmax:450〜700nmの波長範囲(B)での光線透過率の最大値
λp :極大吸収ピークの極大吸収波長
p :極大吸収波長における光線透過率
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1で得たアクリル樹脂組成物シートの光線透過スペクトルである。
【図2】実施例2で得たアクリル樹脂組成物シートの光線透過スペクトルである。
【図3】実施例3で得たアクリル樹脂組成物シートの光線透過スペクトルである。
【図4】実施例4で得たアクリル樹脂組成物シートの光線透過スペクトルである。
【図5】比較例1で得たアクリル樹脂組成物シートの光線透過スペクトルである。
【符号の説明】
【0044】
A:300nm〜410nmの波長範囲
B:450nm〜700nmの波長範囲
P:吸収極大ピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘイズが95%以上であり、少なくとも一方の表面の十点平均粗さ(Rz)が0.5μm以上であり、300nm〜410nmの波長範囲(A)で光線透過率(TA)が1%以下であり、450nm〜800nmの波長範囲(B)で光線透過率(TB)が40%〜70%であり、極大吸収波長(λP)が530nm〜620nmである吸収極大ピーク(P)を有し、前記極大吸収波長(λP)における光線透過率(TP)が、450nm〜700nmの波長範囲(B)における最大光線透過率(TBmax)の0.98倍以下であることを特徴とするシート。
【請求項2】
透明樹脂に、最大吸収波長(λUVmax)が350nm〜370nmである紫外線吸収剤、最大吸収波長(λVISmax)が530nm〜620nmである着色剤および光拡散剤を含有させた樹脂組成物からなる請求項1に記載のシート。
【請求項3】
透明樹脂がアクリル樹脂である請求項2に記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−141206(P2006−141206A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331472(P2004−331472)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】