説明

防蟻システム

【構成】 防蟻システム10は、建物100の床下に用いられ、第1コンクリート構造体102と第2コンクリート構造体104との継目部分106に沿って設けられる溝部12を備える。溝部12は、壁部14を含み、当該壁部14と第1コンクリート構造体102の屋内側の側面と第2コンクリート構造体104の上面とによって凹形状に形成される。このような防蟻システム10では、たとえば屋外などで導流部32に注入された防蟻剤が供給部22へと導流され、当該供給部22から溝部12の内部に供給される。溝部12の内部に供給された防蟻剤は、溝部12の内部で全体に拡がって、そのまま溝部12の内部に保持される。そして、溝部12の内部に保持されている防蟻剤によって、継目部分106から屋内への白蟻の侵入が防止される。
【効果】 容易に防蟻剤の再処理を行うことができる。また、防蟻処理が不必要である溝部の外部に防蟻剤が流出することがないため、防蟻剤を無駄しない防蟻処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防蟻システムに関し、特にたとえば、建物の床下に用いられて、コンクリート構造体の隙間から屋内への白蟻の侵入を防止するための、防蟻システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の白蟻被害を防止するために、白蟻の主たる経路となっているコンクリート基礎の継目部分に防蟻剤を散布して、当該継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止する防蟻処理が公知である。
【0003】
たとえば、特許文献1の技術では、基礎と土間コンクリートスラブとの継目部分に溝を形成して、その溝の内部に防蟻剤を充填配置している。
【0004】
また、特許文献2の技術では、基礎と土間コンクリートとの継目部分近傍の地中に防蟻剤散布用パイプが配置される。そして、防蟻剤散布用パイプに形成された防蟻剤噴射用の多数のオリフィスから、防蟻剤を地中に散布している。
【特許文献1】特開2002―4450号公報 [E04B 1/72]
【特許文献2】特許第3791770号公報 [E04B 1/72]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、防蟻剤は、約5年しか効果を持続させることができず、5年を目途として防蟻剤の再処理を行わなければならない(http://www.hakutaikyo.or.jp/bojo6.html)。
【0006】
特許文献1の技術では、建物の建造後に防蟻剤の再処理を行うには、当該建物の床下に作業員が直接潜り込んで溝内に防蟻剤を充填配置する必要がある。しかしながら、建物の床下は狭く作業環境も悪いため、防蟻剤の再処理を行うことが困難である。
【0007】
また、特許文献2の技術では、建物の外部から防蟻剤の再処理が可能であるものの、防蟻剤散布用パイプに形成されているオリフィスからは、限り定めることなく防蟻剤が噴射される。このため、基礎と土間コンクリートとの継目部分以外の方向の地中にも防蟻剤が拡がってしまい、防蟻剤に無駄が多い。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、防蟻システムを提供することである。
【0009】
この発明の他の目的は、防蟻剤を無駄にせず、かつ容易に防蟻剤の再処理を行うことができる、防蟻システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0011】
第1の発明は、建物の床下に用いられて、第1コンクリート構造体と第2コンクリート構造体との継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻システムであって、継目部分に沿って設けられる溝部、溝部内に防蟻剤を注入するための供給部、および供給部へ防蟻剤を導流するための導流部を備える、防蟻システムである。
【0012】
第1の発明では、防蟻システム(10)は、建物(100)の床下に用いられ、第1コンクリート構造体(102)と第2コンクリート構造体(104)との継目部分(106)に沿って設けられる溝部(12)を備える。溝部は、たとえば壁部(14)を含み、当該壁部と第1コンクリート構造体の屋内側の側面と第2コンクリート構造体の上面とによって凹形状に形成される。このような防蟻システムでは、たとえば屋外など防蟻剤を注入しやすい適宜の位置で導流部(32)に注入された防蟻剤が供給部(22)へと導流され、当該供給部から溝部の内部に供給される。溝部の内部に供給された防蟻剤は、溝部の内部で全体に拡がって、そのまま溝部の内部に保持される。そして、溝部の内部に保持されている防蟻剤によって、継目部分から屋内への白蟻の侵入が防止される。
【0013】
第1の発明によれば、防蟻剤の効果がきれた際に、作業員が作業環境の悪い床下に潜り込まなくても、防蟻剤を注入しやすい適宜の位置から容易に防蟻剤の再処理を行うことができる。また、防蟻処理が不必要である溝部の外部に防蟻剤が流出することがないため、防蟻剤を無駄にしない防蟻処理を行うことができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明に従属し、複数の供給部が溝部の長手方向に所定の間隔を隔てて配置される。
【0015】
第2の発明では、複数の供給部(22)が、溝部(12)の長手方向に所定の間隔を隔てて配置される。このため、溝部の内部に供給される防蟻剤の場所によっての供給量の偏りが緩和され、溝部の全体に防蟻剤を均一に供給することができる。
【0016】
第2の発明によれば、確実な防蟻処理を行うことができる。
【0017】
第3の発明は、第1または2の発明に従属し、導流部は、その一方端が供給部として溝部内で開口する管部材を含む。
【0018】
第3の発明では、導流部(32)は、その一方端が供給部(22)として溝部(12)の内部で開口する管部材(18)を含み、管部材の他方開口(24)に注入した防蟻剤が、その管部材の一方開口(20)から溝部の内部に供給される。このため、屋外など防蟻剤を注入することができる位置から、溝部(12)の内部における防蟻剤を供給したい任意のポイントに容易に防蟻剤を導流することができる。また、防蟻剤を注入する位置と供給部の位置とを、土台や基礎などを含む躯体の形状に左右されることなく、別々に位置決めすることができる。
【0019】
第4の発明は、第3の発明に従属し、管部材は、溝部の長手方向に沿って配置される。
【0020】
第4の発明では、管部材(18)は、溝部(12)の内部にその長手方向に沿って配置される。このため、管を配管するために必要なスペースを第1コンクリート構造体(102)の近傍におさえることができる。
【0021】
第4の発明によれば、建物の床下空間をその他の用途に有効利用できる。
【0022】
第5の発明は、第3または4の発明に従属し、導流部は、管部材の他方端が接続されるヘッダをさらに含む。
【0023】
第5の発明では、管部材(18)の他方端は、ヘッダ(26)に接続されて、1つにまとめられる。このため、ヘッダに防蟻剤を供給するだけで、1度に複数の管部材の他方開口(24)に防蟻剤を流し込み、それぞれの管部材の供給部(20,22)から溝部(12)内に防蟻剤を供給することができる。
【0024】
第5の発明によれば、より容易に防蟻処理を行うことができる。
【0025】
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明に従属し、溝部には、蓋体が設けられる。
【0026】
第6の発明では、溝部(12)には、溝部をその長手方向の全長に亘って上方から塞ぐ蓋体(16)が設けられる。このため、溝部の内部には、埃などの異物が浸入しない。
【0027】
第6の発明によれば、溝部の内部に供給した防蟻剤を、異物によって妨げられることなく、溝部の全体に行き届かせることができる。
【0028】
第7の発明は、第1ないし6のいずれかの発明に従属し、溝部の内部を点検するための点検部をさらに備える。
【0029】
第7の発明では、たとえば、その一方端が屋外のケーシング(32)内部で開口し、かつその他方端が溝部(12)の内部で開口する管部材が点検部として配置される。このため、防蟻処理を行う際に、管部材からたとえばファイバースコープなどの工業用内視鏡を挿入することによって、溝部の内部に供給された防蟻剤の状況を確認することができる。
【0030】
第8の発明は、第1ないし7のいずれかの発明に従属し、溝部の底部に設けられる浸透材をさらに備える。
【0031】
第8の発明では、溝部(12)の底部に浸透材が薄層状に敷きつめられる。そして、溝部の内部に供給された防蟻剤は、そのまま浸透材に吸収されて、この浸透材の全体に拡がって、溝部の底部に液層を形成する。
【0032】
第8の発明によれば、防蟻剤をより確実に溝部の全体に行き届かせることができるとともに、長期間に亘って防蟻効果を維持することができる。
【0033】
第9の発明は、建物の床下に用いられて、コンクリート構造体の配管貫通部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻システムであって、配管貫通部分を囲繞する溝部、溝部内に防蟻剤を供給するための供給部、および供給部へ防蟻剤を導流するための導流部を備える、防蟻システムである。
【0034】
第9の発明では、防蟻システム(10)は、建物(100)の床下に用いられ、たとえば第2コンクリート構造体(104)を上下方向に貫通する配管(108)が第2コンクリート構造体104になす配管貫通部分(110)を囲繞する溝部(12)を備える。溝部は、たとえば壁部(14)を含み、当該壁部とコンクリート構造体とによって凹形状に形成される。このような防蟻システムでは、たとえば屋外など防蟻剤を注入しやすい適宜の位置で導流部(32)に注入された防蟻剤が供給部(22)へと導流され、当該供給部から溝部の内部に供給される。そして、防蟻剤が溝部の内部で拡がって、そのまま溝部の内部に保持される。そして、溝部の内部に保持されている防蟻剤によって、配管貫通部分から屋内への白蟻の侵入が防止される。
【発明の効果】
【0035】
この発明によれば、継目部分に沿って溝部が設けられる。そして、防蟻剤を注入しやすい適宜の位置で導流部に注入された防蟻剤が供給部へと導流されて、供給部から溝部の内部に供給される。したがって、防蟻剤を無駄にせず、かつ容易に防蟻剤の再処理を行うことができる。
【0036】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1を参照して、この発明の一実施例である防蟻システム10は、建物100の床下に用いられ、布基礎などの第1コンクリート構造体102と土間コンクリートなどの第2コンクリート構造体104との継目部分106に沿って設けられる溝部12を備え、当該溝部12の内部に防蟻剤を供給することによって、継目部分106から屋内への白蟻の侵入を防止する。
【0038】
なお、防蟻剤としては、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系、カーバメイト系、有機リン系等の周知の防蟻効果を有する薬液剤を使用することができ、液体状であれば特に限定しない。
【0039】
図2および図3に示すように、溝部12は、継目部分106に沿って配置される壁部14を含み、当該壁部14と第1コンクリート構造体102の屋内側の側面と第2コンクリート構造体104の上面とによって凹形状に形成される。
【0040】
壁部14は、たとえば合成樹脂によって矩形の板状に形成され、継目部分106の全長に亘って、第2コンクリート構造体104の上面に配置される。壁部14と第1コンクリート構造体102との距離(溝部12の幅)および壁部14の高さ(溝部12の深さ)は、詳細は後述する、当該溝部12の内部に配置される管部材18の数ないしそれらの径に対応して適宜設定され、たとえば50mm〜100mmである。ただし、図面の都合上、溝部12の幅を実際よりも大きく図示していることに留意されたい。
【0041】
溝部12には、溝部12をその長手方向の全長に亘って上方から塞ぐ蓋体16が設けられる。蓋体16は、たとえば合成樹脂によって矩形の板状に形成され、溝部12の上部に配置される。蓋体16の幅は、溝部12の内部に埃などの異物が浸入しないように、壁部14と第1コンクリート構造体102との距離(溝部12の幅)に対応して適宜設定される。
【0042】
溝部12の内部には、複数の管部材18が配置される。管部材18は、ポリブテンパイプなどの合成樹脂管であり、その呼び径はたとえば13mmである。管部材18は、溝部12の長手方向に沿って延び、その一方端(一方開口20)が防蟻剤を供給するための供給部22として溝部12の内部で開口している。詳細は後述するが、防蟻剤が溝部12の全体に拡がるように、複数の管部材18の一方開口20(供給部22)がそれぞれ溝部12の長手方向に所定の間隔を隔てて配置される。また、管部材18のもう一方側は、屋外まで延設され、その管端すなわち他方端(他方開口24)がヘッダ26に接続される。
【0043】
図4に示すように、ヘッダ26には、複数、この実施例では3つの流出口28が形成されており、それぞれの流出口28に管部材18の他方端(他方開口24)が接続されて、1つにまとめられる。
【0044】
また、ヘッダ26には、当該ヘッダ26に防蟻剤を注入するための流入口30が形成され、これによりヘッダ26に注入された防蟻剤が管部材18へと流れ込み、当該管部材18の一方開口20(供給部22)から溝部12の内部に供給される。すなわち、管部材18およびヘッダ26は、屋外から供給部22へと防蟻剤を導流する導流部32として利用される。ただし、流入口30は、防蟻処理以外の時には、図示しないキャップなどによって塞がれている。また、ヘッダ26は、たとえば中空直方体状のケーシング34の内部に収容される。なお、ケーシング34には、幼児などによる誤使用を防止するために、防蟻処理以外の時には鍵を掛けておくと好適である。
【0045】
図1を参照して、防蟻システム10を建物100の床下に施工する方法を以下に示す。
【0046】
先ず、第2コンクリート構造体104の上面に壁部14を配置して、第1コンクリート構造体102と第2コンクリート構造104との継目部分106に沿った溝部12を形成する。具体的には、第2コンクリート構造体104の上面に継目部分106に沿って凹状の窪みを形成し、当該窪みに壁部14を嵌め込んで、水密性を有する接合剤などによって固着する。
【0047】
次に、複数の供給部22を溝部12の長手方向に所定の間隔を隔てて配置する。具体的には、それぞれ長さの異なる複数の管部材18を、溝部12の内部にその長手方向に沿って配置し、その一方端を溝部12の長手方向に所定の間隔を隔てて順次開口させる。
【0048】
なお、「所定の間隔」は、溝部12の全体に防蟻剤が行き届くように、たとえば防蟻剤が有している粘度やコンクリート構造体102,104の形状などの様々な因子を勘案することによって設定され、目安として、供給部22とこれに隣接する他の供給部22との間隔を、それぞれから供給される防蟻剤が行き届く範囲の少なくとも一部が重複するように、設定するとよい。
【0049】
続いて、管部材18のもう一方側を一箇所にまとめて上方に立ち上げ、第1コンクリート構造体102の上部に設けられる壁板(図示せず)を貫通して屋外側まで延設する。そして、管部材18の他方端(他方開口24)をヘッダ26の流出口28に接続して、当該ヘッダ26を囲繞するようにケーシング34を設ける。それから、管部材18の各々は、配管用固定具(図示せず)などによって第1コンクリート構造体102ないし第2コンクリート構造体104に固定する。
【0050】
最後に、溝部12の上部に蓋体16を配置して、作業を終了する。具体的には、複数の蓋体16を溝部12の上部に連設して、溝部12をその長手方向の全長に亘って上方から塞ぐ。なお、管部材18における溝部12から上方に立ち上げている部分は、蓋体16と他の蓋体16との隙間に挿通させる。
【0051】
このような防蟻システム10では、屋外でヘッダ26の流入口30に注入された防蟻剤が流出口28から管部材18の他方開口24へと流れ込み、管部材18の一方開口20(供給部22)から溝部12の内部に供給される。溝部12の内部に供給された防蟻剤は、溝部12の内部で全体に拡がって、そのまま溝部12の内部に保持される。そして、溝部12の内部に保持されている防蟻剤によって、継目部分106から屋内への白蟻の侵入が防止される。
【0052】
このように、この実施例では、継目部分106に沿って溝部12が形成され、当該溝部12の内部に防蟻剤が供給される。そして、溝部12の内部に供給された防蟻剤は、溝部12の内部で全体に拡がって、そのまま溝部12の内部に保持される。このため、防蟻剤は、防蟻処理が不必要である外部に流出することがない。したがって、防蟻剤を無駄にしない防蟻処理を行うことができる。
【0053】
また、この実施例では、屋外で導流部32に注入された防蟻剤が、供給部22へと導流されて、当該供給部22から溝部12の内部に供給される。このため、防蟻剤の効果がきれた際に、作業員が作業環境の悪い床下に潜り込まなくても、屋外などの防蟻剤を注入しやすい適宜の位置から容易に防蟻剤の再処理を行うことができる。
【0054】
さらに、この実施例では、複数の供給部22が溝部12の長手方向に所定の間隔を隔てて配置される。このため、溝部12の内部に供給される防蟻剤の場所によっての供給量の偏りが緩和され、防蟻剤を継目部分106の全長に亘って均一に供給することができる。したがって、確実な防蟻処理を行うことができる。
【0055】
さらにまた、この実施例では、管部材18の一方端が供給部22として溝部12の内部で開口しており、管部材18の他方開口24に流れ込んだ防蟻剤が、当該管部材18の一方開口20から溝部12の内部に供給される。このため、屋外など防蟻剤を注入することができる位置から、溝部12の内部における防蟻剤を供給したい任意のポイントに容易に防蟻剤を導流することができる。また、防蟻剤を注入する位置と供給部22の位置とを、土台や基礎などを含む躯体の形状に左右されることなく、別々に位置決めすることができる。
【0056】
また、この実施例では、管部材18は、溝部12の内部にその長手方向に沿って配置される。このため、管部材18を配管するために必要なスペースを継目部分106の近傍におさえることができる。したがって、建物100の床下空間をその他の用途に有効利用することができる。
【0057】
さらにまた、この実施例では、複数の管部材18の他方端(他方開口24)がそれぞれヘッダ26の流出口28に接続されて1つにまとめられる。このため、ヘッダ26の流入口30に防蟻剤を注入するだけで、1度に複数の管部材18へと防蟻剤を流し込み、それぞれの管部材18の一方開口20(供給部22)から溝部12の内部に防蟻剤を供給することができる。したがって、より容易に防蟻処理を行うことができる。
【0058】
また、この実施例では、溝部12には、当該溝部12をその長手方向の全長に亘って上方から塞ぐ蓋体16が設けられる。このため、溝部12の内部には、埃などの異物が浸入しない。したがって、溝部12の内部に供給した防蟻剤を、異物によって妨げられることなく、溝部12の全体に行き届かせることができる。さらに、たとえ供給された防蟻剤が溝部12の内部で飛散しても、蓋体16によってとどめて、溝部12の内部に保持することができる。また、溝部12と蓋体16とによって密閉された空間が形成されるため、防蟻剤の臭気が外部に漏れることもない。
【0059】
なお、上述の実施例では、屋外で導流部32に注入された防蟻剤が供給部22へと導流されたが、これに限定される必要はなく、屋外でなくても、防蟻剤を注入しやすい適宜の位置で導流部32に防蟻剤を注入すればよい。たとえば、管部材18の他方開口24ないしヘッダ26の流入口30を建物100における玄関の下駄箱の内部などに配置し、そこから防蟻剤を注入することもできる。
【0060】
また、上述の実施例では、4つのヘッダ26が設けられ、かつその各々に3つの管部材18が接続されたが、これに限定される必要はなく、導流部32として用いるヘッダ26の数およびそのヘッダ26に接続される管部材18の数は、適宜設定することができる。
【0061】
たとえば、多数の流出口28を有するヘッダ26を用意しておき、このヘッダ26の流出口28に接続する管部材18の数を調整してもよい。この場合には、使用しない流出口28は、キャップなどで塞いでおく。
【0062】
また、たとえば、ヘッダ26と管部材18の他方開口24との間にバルブを設け、このバルブの開閉によって、導出部32として用いる管部材18の数を調整してもよい。この場合には、バルブの開閉によって供給部22に導流する防蟻剤の量を調整することもできる。
【0063】
さらに、たとえば、溝部12の全体に防蟻剤を供給することができる数の管部材18をまとめて1つのヘッダ26に接続してもよい。これによれば、作業効率が向上するため、防蟻システム10をアパート等の集合住宅に用いる場合に好適である。
【0064】
また、上述の実施例では、複数の管部材18がヘッダ26に接続されて1つにまとめられたが、これに限定される必要はなく、管部材18の他方開口24に直接防蟻剤を注入してもよい。
【0065】
さらにまた、上述の実施例では、ヘッダ26は、ケーシング34の内部に収容されたが、これに限定される必要はなく、ケーシング34を設けなくてもよい。
【0066】
また、図示は省略するが、溝部12の内部を点検するための点検部を設けることもできる。たとえば、その一方端が屋外のケーシング32内部で開口し、かつその他方端が溝部12の内部で開口する管部材を点検部として配置する。そして、防蟻処理を行う際に、この管部材からファイバースコープなどの工業用内視鏡を挿入することによって、屋外から溝部12の内部に供給された防蟻剤の状況を確認する。ただし、管部材の一方端は、屋外でなくても、ファイバースコープなどの工業用内視鏡を挿入しやすい適宜の位置で開口させてよい。また、たとえば、屋外と溝部12の内部とを連通する開口を点検部として第1コンクリート構造体102に設ける。そして、防蟻処理を行う際に、この開口を直接覗き込むことによって、屋外から溝部12の内部に供給された防蟻剤の状況を目視確認する。
【0067】
これによれば、作業員が作業環境の悪い床下に潜り込まなくても、屋外など適宜の位置から防蟻処理の状況を確認することができる。
【0068】
さらにまた、上述の実施例では、管部材18は、溝部12の内部にその長手方向に沿って配置されたが、これに限定される必要はなく、少なくともその一方開口20(供給部22)が溝部12の内部に配置されていればよい。
【0069】
たとえば、図5および図6に示すように、管部材18を溝部12の外部で延ばし、その一方開口20(供給部22)のみを溝部12の内部に配置することもできる。具体的には、壁部14に、当該壁部14を厚み方向に貫通するかつ管部材18の外径と略等しい径を有する開口36を形成して、その開口36から溝部12の内部に管部材18の一方開口20を挿入する。なお、この場合には、管部材18の各々を配管用固定具(図示せず)などによってコンクリート構造体102,104に固定するのみならず、管部材18の各々を配管用固定具などによって建物100の床板(図示せず)に固定することができる。
【0070】
また、図7に示すように、蓋体16に、当該蓋体16を厚み方向に貫通するかつ管部材18の外径と略等しい径を有する開口38を形成して、その開口36から溝部12の内部に管部材18を挿入してもよい。さらに、図示は省略するが、上述したような、蓋体16と他の蓋体16との間に隙間から溝部12の内部に管部材18を挿入してもよい。
【0071】
これらの場合には、その内部に配置する管部材18の数や径に制限されずに、溝部12を任意の幅や深さに設定することができる。
【0072】
さらに、上述の実施例では、図面の都合上、複数の管部材18を溝部12の幅方向に横並びに配置したが、これに限定される必要はなく、たとえば複数の管部材18を上下方向に縦並びに配置してもよい。
【0073】
さらに、上述の実施例では、溝部12には、溝部12を上方から塞ぐ蓋体16が設けられ、壁部14と蓋体16とは、別体として形成されたが、これに限定される必要はなく、壁部14と蓋体16とを一体的に成形することもできる。
【0074】
また、たとえば、図8に示すように、溝部12に蓋体16を設けなくてもよい。この場合には、溝部12の内部が目視可能であるので、たとえば点検口などから溝部12の内部を覗き込むことによって、溝部12の内部に供給された防蟻剤の状況を確認することができる。
【0075】
また、蓋体16における溝部12との接触部分にブチルゴムなどの粘弾性材料を設けてもよい。この場合には、溝部12と蓋体16とのシール性を確保することができる。
【0076】
さらにまた、上述の実施例では、溝部12は、壁部14と第1コンクリート構造体102の屋内側の側面と第2コンクリート構造体104の上面とによって凹形状に形成されたが、これに限定される必要はない。たとえば、図9に示すように、第2コンクリート構造体104の上面における第1コンクリート構造体102側の端部を下方に窪ませることによって凹形状の溝部12を形成することもできる。この場合には、第2コンクリート構造体104における第1コンクリート構造体102側の側面が壁部14として機能する。これにより、第2コンクリート構造体104の上面に別途壁部14を設ける必要がないため、施工性が向上する。
【0077】
さらにまた、上述の実施例では、壁部12が合成樹脂によって矩形の板状に形成されたが、これに限定される必要はなく、モルタルやコンクリート等のセメント混合物によって壁部14を形成することもできる。
【0078】
さらに、図示は省略するが、溝部12の下面(第2コンクリート構造体104の上面)に継目部分106に向かう下り勾配を形成してもよい。この場合には、供給された防蟻剤が、溝部12の内部における継目部分106側に集まる。このため、たとえ供給された防蟻剤が溝部12の全体に拡がることができない量であったとしても、溝部12の内部における継目部分106側に優先して防蟻剤を行き届かせることができる。なお、上述したような、溝部12の内部を点検するための点検部を設けておけば、この点検部から溝部12の内部を点検することによって、少なくとも溝部12の内部における継目部分106側に防蟻剤が行き届いているかどうかを確認することができる。
【0079】
また、図示は省略するが、溝部12の底部に浸透材を設けることもできる。具体的には、溝部12の底部を構成している第2コンクリート構造体104の上面にスポンジや紙フィルタ等の浸透材を薄層状に敷きつめる。そうすると、溝部12の内部に供給された防蟻剤は、そのまま浸透材に吸収される。そして、浸透材に吸収された防蟻剤が、浸透材の全体に拡がって、溝部12の底部に液層を形成する。これによれば、防蟻剤をより確実に溝部の全体に行き届かせることができるとともに、溝部12の底部に防蟻剤の液層を形成することによって、長期間に亘って防蟻効果を維持することができる。
【0080】
さらにまた、上述の実施例では、管部材18の一方端(一方開口20)が供給部22として溝部12の内部に配置されたが、これに限定される必要はない。たとえば、図10に示すように、第1コンクリート構造体102を貫通して屋外と溝部12の内部とを連通する貫通口40を形成し、当該貫通口40を介して防蟻剤を屋外から溝部12の内部に供給してもよい。この場合には、貫通口40が導流部32として機能し、この貫通口40が第1コンクリート構造体102の屋内側の側面になす開口部分が供給部22として機能する。
【0081】
さらに、図11に示すように、たとえば第2コンクリート構造体104を上下方向に貫通する配管108がある場合には、別途、配管108が第2コンクリート構造体104になす配管貫通部分110を囲繞するように壁部14を配置してもよい。この場合には、壁部14と第2コンクリート構造体104の上面とによって形成される溝部12の内部に管部材18の一方開口20(供給部22)を配置し、当該供給部22から溝部12の内部に防蟻剤を供給することによって、配管貫通部分110から屋内への白蟻の侵入が防止される。なお、配管108が第2コンクリート構造体104になす配管貫通部分110に限定される必要はなく、たとえばベタ基礎における地表面を覆う部分や防湿コンクリートに形成されている配管貫通部分、或いはそれらを含むコンクリート構造体に生じている亀裂でも同様である。
【0082】
ただし、配管貫通部分110を囲繞する壁部14を別途配置しなくても、配管貫通部分110が継目部分106の近傍に位置している場合には、継目部分106に沿って設けられた溝部12の幅を一部拡大することによって、溝部12の内部に配管貫通部分108を配置してもよい。
【0083】
なお、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明の一実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図2】図1の防蟻システムを示す図解図である。
【図3】図1の防蟻システムを示す断面図である。
【図4】図1の管が接続されるヘッダを示す図解図である。
【図5】この発明の別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図6】図5の防蟻システムを示す図解図である。
【図7】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図8】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す断面図である。
【図9】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す断面図である。
【図10】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図11】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【符号の説明】
【0085】
10 …防蟻システム
12 …溝部
14 …壁部
16 …蓋体
18 …管部材
22 …供給部
26 …ヘッダ
32 …導流部
100 …建物
102 …第1コンクリート構造体
104 …第2コンクリート構造体
106 …継目部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床下に用いられて、コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻システムであって、
前記継目部分に沿って設けられる溝部、
前記溝部内に防蟻剤を供給するための供給部、および
前記供給部へ前記防蟻剤を導流するための導流部を備える、防蟻システム。
【請求項2】
複数の前記供給部が前記溝部の長手方向に所定の間隔を隔てて配置される、請求項1記載の防蟻システム。
【請求項3】
前記導流部は、その一方端が前記供給部として前記溝部内で開口する管部材を含む、請求項1または2記載の防蟻システム。
【請求項4】
前記管部材は、前記溝部の長手方向に沿って配置される、請求項3記載の防蟻システム。
【請求項5】
前記導流部は、前記管部材の他方端が接続されるヘッダをさらに含む、請求項3または4記載の防蟻システム。
【請求項6】
前記溝部に設けられる蓋体をさらに備える、請求項1ないし5のいずれかに記載の防蟻システム。
【請求項7】
前記溝部の内部を点検するための点検部をさらに備える、請求項1ないし6のいずれかに記載の防蟻システム。
【請求項8】
前記溝部の底部に設けられる浸透材をさらに備える、請求項1ないし7のいずれかに記載の防蟻システム。
【請求項9】
建物の床下に用いられて、コンクリート構造体の配管貫通部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻システムであって、
前記配管貫通部分を囲繞する溝部、
前記溝部内に防蟻剤を供給するための供給部、および
前記供給部へ前記防蟻剤を導流するための導流部を備える、防蟻システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate