説明

防蟻シート

【課題】防蟻性能の持続性に優れる防蟻シートを提供する。
【解決手段】殺虫剤および樹脂からなる中間層(L1)と、該中間層の両側に、エチレン系樹脂層(L2、L3)が積層されてなる防蟻シートであって、以下の要件を全て満たす防蟻シート。
(1)蒸気圧が1×10-5Pa以下の水溶性殺虫剤である
(2)中間層(L1)に含まれる樹脂が、カルボン酸ビニルエステルおよび不飽和カルボン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上のモノマーとエチレンとの共重合体、密度0.910g/cm3以下のエチレン系樹脂
(3)エチレン系樹脂層(L2、L3)が、密度0.918〜0.940g/cm3のエチレン系樹脂
(4)厚みが、L2/L1/L3=5〜50/80〜160/5〜50μm
(5)殺虫剤濃度が0.001〜0.1重量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防蟻シートに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物におけるシロアリ被害防止策として、床下地盤面に防蟻薬剤を散布する方法が知られている。しかしながらこのような方法では地下水汚染の他、該薬剤の蓄積による土壌汚染や、散布時の作業者への揮散などによる健康被害など様々の課題があった。このような課題を解決する方法として、シロアリに対する殺虫、忌避効果のある殺虫剤を含むシートを敷設する方法が知られている。特許文献1には、このような防蟻シートとして、殺虫剤を樹脂に練り込んだ単層の防蟻シートが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−47110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載された防蟻シートは、含有される殺虫剤が水に溶けやすいため、地面の湿気や水分が防蟻シートの裏面に溜まると殺虫剤が溶解してしまい、持続性に劣るという課題があった。
【0005】
本発明は、防蟻性能の持続性に優れる防蟻シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、殺虫剤および樹脂からなる中間層(L1)と、該中間層の両側に、エチレン系樹脂層(L2、L3)が積層されてなる防蟻シートであって、以下の要件(1)−(5)を全て満たす防蟻シートである。
(1)殺虫剤が、20℃における蒸気圧が1×10-5Pa以下の水溶性殺虫剤である
(2)中間層(L1)に含まれる樹脂が、カルボン酸ビニルエステルおよび不飽和カルボン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上のモノマーとエチレンとの共重合体および/または密度0.910g/cm3以下のエチレン系樹脂である
(3)エチレン系樹脂層(L2、L3)が、密度0.918〜0.940g/cm3のエチレン系樹脂からなる
(4)各層の厚みが、L2/L1/L3=5〜50/80〜160/5〜50μmである
(5)防蟻シートに含まれる殺虫剤の濃度が0.001〜0.1重量%である
【発明の効果】
【0007】
本発明の防蟻シートは、防蟻性能の持続性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の防蟻シートは、殺虫剤および樹脂からなる中間層(L1)と、該中間層の両側に、エチレン系樹脂層(L2、L3)が積層された、3層からなる防蟻シートである。前記殺虫剤は、20℃における蒸気圧が1×10-5Pa以下の水溶性殺虫剤であり、シロアリへの殺虫作用を有する殺虫剤である。殺虫剤の蒸気圧とは、Stephen F.Donovan:Journal of Chromatography A,749(1996)123-129の文献に記載された方法で測定される値である。20℃における蒸気圧が1×10-5Paより高い場合には、殺虫剤が蒸散してしまい、防蟻性能の持続性に劣るものとなる。
【0009】
本発明における水溶性殺虫剤とは、OECDガイドライン、OECD Guidlines for the Testing of Chemicals No.107, Partition 、Coefficient(n-octanol/water): Shake Flask Method(1995)によって測定されるn−オクタノール/水の分配係数が1以下の殺虫剤である。本発明で用いられる殺虫剤は、ニトログアニジン系化合物であることが好ましい。具体的には、1−メチル−2−ニトロ−3−[(3−テトラヒドロフリル)メチル]グアニジン(一般名:ジノテフラン、蒸気圧1.7×10-6Pa(30℃)以下、n−オクタノール/水の分配係数−0.55)、E−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン、蒸気圧1.3×10-10Pa(25℃)、n−オクタノール/水の分配係数0.7)、(E)−N−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−エチル−N’−メチル−1−ニトロビニリデンジアミン(一般名:ニテンピラム、蒸気圧8.3×10-12Pa(20℃)、n−オクタノール/水の分配係数−0.64)などがあげられる。特に1−メチル−2−ニトロ−3−[(3−テトラヒドロフリル)メチル]グアニジンを用いることが好ましい。
【0010】
本発明の防蟻シートに含まれる前記殺虫剤の濃度は、0.001〜0.1重量%である。殺虫剤の濃度が0.001重量%未満であると、防蟻性能が不十分であり、0.1重量%部を越えて含有させた場合には、超過分がシート表面からブリードしてしまい、有効に作用しない。
【0011】
中間層(L1)に含まれる樹脂は、防蟻性能の持続性の観点から、カルボン酸ビニルエステルおよび不飽和カルボン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上のモノマーとエチレンとの共重合体および/または密度0.910g/cm3以下のエチレン系樹脂である。カルボン酸ビニルエステルおよび不飽和カルボン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上のモノマーとエチレンとの共重合体における、カルボン酸ビニルエステルまたは不飽和カルボン酸エステル由来の構成単位の含有量が1〜10mol%である共重合体が、殺虫剤の保持性向上の観点から好ましい。
エチレン−カルボン酸ビニルエステル共重合体としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を例示することができ、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体としてはエチレン−メタクリル酸メチル(EMMA)共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)などがあげられる。
【0012】
密度が0.910g/cm3以下のエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体や、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。中間層に含まれる樹脂は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。
【0013】
中間層の両側に積層されるエチレン系樹脂層(L2、L3)は、密度0.918〜0.940g/cm3のエチレン系樹脂からなる。該エチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体や、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。エチレン系樹脂層(L2、L3)を構成する樹脂の密度が0.918g/cm3未満であれば、殺虫剤の樹脂への溶解度が高くなるため、中間層に含まれる殺虫剤がエチレン系樹脂層へ移行しやすくなる。エチレン系樹脂層に移行した殺虫剤は、水溶性であるため土中に溶け出してしまい、防蟻性能の持続性に劣るものとなる。エチレン系樹脂の密度が0.940を越える場合には殺虫剤の樹脂への溶解度は低いが、シートが硬くなりすぎ、施工時の取り扱いが難しくなる。エチレン系樹脂層を構成する樹脂としては、好ましくは密度0.919〜0.930g/cm3エチレン系樹脂である。エチレン系樹脂層(L2、L3)は、それぞれ1種類の樹脂から構成されていてもよく、2種類以上の樹脂から構成されていてもよい。また、L2とL3は同じ組成であってもよく、異なっていてもよい。
【0014】
本発明の防蟻シートにおける中間層(L1)およびエチレン系樹脂層(L2、L3)の各層の厚みは、L2/L1/L3=5〜50/80〜160/5〜50μmである。
【0015】
外層となるエチレン系樹脂層(L2、L3)の厚みが5μm未満では殺虫剤の持続性に劣るものとなり、一方50μmを越えるとシート全体の厚みが厚くなりすぎ、柔軟性に劣るものとなるため、施工時の取り扱いが難しくなる。エチレン系樹脂層の厚みは、好ましくは10μm以上である。
【0016】
殺虫剤を含有する中間層(L1)は、防蟻性能の持続性の観点から、両外層より厚くする必要があり、その厚みは80〜160μmである。防蟻性能の観点から、シート全体に含まれる殺虫剤濃度を所定量とする必要がある。性能持続性の観点から、本発明では製造時には中間層のみに殺虫剤を添加するため、中間層の厚みが薄すぎると中間層の殺虫剤濃度を高くする必要が生じ、結果として両外層への殺虫剤の移行が早くなる。従って、中間層の厚みが80μm未満では殺虫剤の持続性が劣るものとなり、一方160μmを越える場合には殺虫剤の持続性は良いものの、中間層の樹脂の性質からシート全体が柔らかくなりすぎ施工時に取り扱いにくくなる。本発明の防蟻シート全体の厚みは90〜260μmとなるが、殺虫剤の持続性、シート強度、および施工性の点から、好ましくは100〜200μmである。
【0017】
本発明においては、その効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、抗ブロッキング剤、顔料、造核剤などを適宜併用することができる。
また、他の活性化合物、例えば殺虫活性成分、忌避活性成分、抗菌・防黴成分などを含有することができる。さらに、多孔質粒子などに活性成分を吸着させたものなども併用することができる。
【0018】
本発明の防蟻シートは、例えば以下のような方法により製造することができる。中間層となる殺虫剤と樹脂、必要に応じて酸化防止剤や抗ブロッキング剤、滑剤などを、ロール又はバンバリー型の混練機または押出機を用いて混練して、組成物を得る。得られた組成物と、両外層となるエチレン系樹脂とを共押出しして、インフレーション加工またはTダイ加工などにより、本発明の防蟻シートを得ることができる。また、別の方法として、殺虫剤を練り込んだ組成物をインフレーション加工やTダイ加工、カレンダー加工などにより単層のシートを製造し、次に該シート上に外層となるエチレン系樹脂をラミネートする方法も挙げられる。
【0019】
中間層を形成する際に、殺虫剤を高濃度で含有する組成物(マスターバッチと称する)を用いることもできる。
殺虫剤マスターバッチは、殺虫剤と樹脂、必要に応じて酸化防止剤や抗ブロッキング剤、滑剤などをロール又はバンバリー型の混練機または押出機を用いて混練し、製造することができる。また、殺虫剤を含む樹脂を芯材層と、該芯材層を取り囲むように形成される、殺虫剤を含まない樹脂からなる鞘材層とからなる、2層構造のマスターバッチを用いてもよい。マスターバッチを製造する際、通常押出機より押出された溶融樹脂を水で冷却するが、この時、水溶性殺虫剤が水に流出してしまう。これを防止する観点から、2層構造のマスターバッチが好ましく使用される。
【0020】
2層構造のマスターバッチの芯材層に用いられる樹脂は、中間層に含まれる樹脂として例示した樹脂である。2層構造のマスターバッチの鞘材層に用いられる樹脂としては、密度が0.915g/cm3以上のエチレン系樹脂が好ましく用いられる。特に密度が0.920g/cm3以上のエチレン系樹脂が好ましい。ここでエチレン系樹脂とは、エチレン単独重合体および/またはエチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとの共重合体である。
【0021】
芯材層と鞘材層との割合は、通常、芯材層:鞘材層=9:1〜5:5の範囲である。また鞘材層の樹脂の量は、中間層を構成する樹脂の重量を100%とするとき、5%以下とすることが必要である。
【0022】
2層構造マスターバッチは、芯材層用二軸押出機と鞘材層用単軸押出機を備え、かつ、芯/鞘型ダイスを備えた装置で製造できる。具体的には、芯材層用二軸押出機には芯材層用の樹脂と殺虫剤を供給し、鞘材層用単軸押出機には鞘材層用樹脂を供給し、それぞれの押出機から所定の温度で、所定の重量比になるように押出し、得られたストランドを水で冷却し、ペレタイザーでカットすることにより製造することができる。二層構造マスターバッチを製造する際、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、抗ブロッキング剤、顔料、造核剤などを適宜併用することができる。
また、他の活性化合物、例えば殺虫活性成分、忌避活性成分、抗菌・防黴成分などを含有することができる。さらに、多孔質粒子などに殺虫剤などの活性成分を吸着させたものなども併用することができる。
【0023】
本発明の防蟻シートは、殺虫剤を長期にわたってシートに保持することができるため、種々の防蟻工法に用いられる防蟻シートとして有用である。例えば、床下地盤面への埋設、基礎コンクリートからシロアリが這い上がるのを防止するために基礎コンクリートの周囲に接着して用いる工法など、様々な防蟻シートとして利用できる。
【0024】
次に、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)殺虫剤含有量の分析方法
防蟻シート約5gを精秤後、100ml丸底フラスコに採取し、THF(テトラヒドロフラン)50mlを加え、ウォーターバスを用いて80℃で1時間還流抽出を行ない、その後、室温まで冷却した。300mlビーカーにメタノール150mlを入れ、スターラーで攪拌しながら抽出液をピペットで滴下し、超音波洗浄器に3分間かけ、沈殿物を凝集させた。その後0.5μmメンブランフィルターでろ過し、凝集物もメタノールで洗いながらろ過した。ろ液を200mlナス形フラスコに採取し、50℃のウォーターバス上でろ液を温めながらエバポレーターで濃縮、乾固した。その後、ナス形フラスコにTHFを入れ、25ml容のメスフラスコに洗い込んで定容した。定容した溶液10mlと内部標準液10mlをスクリュー管にて混合し試料溶液とし、液体クロマトグラフィーで殺虫剤の含有量を分析した。
内部標準液はフタル酸ジメチル約50mgを精秤し、THFにて200mlに定容したものを用いた。液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
カラム : SUMIPAX ODS A−212
カラム温度 : 40℃
測定波長 : 270nm
注入量 : 5μl
溶媒 : THF
【0025】
(2)殺虫剤保持率の評価方法
防蟻シート中の殺虫剤の保持率は、以下の方法で算出した。
成形したシートから約20cm×50cmに切り出したものを、恒温恒湿器に吊り下げ、60℃×90%RHにて、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月放置し、製造直後の防蟻シートの殺虫剤濃度(A)と、所定の時間を経た後の各シート中の殺虫剤濃度(B)から、次式により保持率を求めた。
殺虫剤保持率(%)= B/A × 100
後述する比較例1のシートは、2年間屋外試験した後に取り出して、殺虫剤含有量を分析したところ、0%であった。一方前記評価方法でも、3ヶ月後には殺虫剤含有量が0%であった。このことから、本評価方法によって屋外試験の結果を予測することが可能であると判断する。
【0026】
[実施例1]
(3)マスターバッチの製造例
ジノテフラン0.2kgとエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(アクリフトWK307 住友化学(株)製 メタクリル酸メチル含有量 25wt%)15.8kgをミキサーで混合し、芯用二軸押出機(φ46mm、L/D=35)に供給した。一方鞘材層用単軸押出機(φ40mm、L/D=25)には低密度ポリエチレン(スミカセンL705 住友化学(株)製 密度0.919、MFR=7g/10分)を供給した。
それぞれの押出機から、重量比で芯材層用成分/鞘材層用成分=80/20となるように芯/鞘型ダイに供給し、押出されたストランドを冷却水槽に通して冷却した後、ペレタイザーでカットして、ジノテフラン1wt%の2層構造マスターバッチを得た。
このマスターバッチ中のジノテフラン量の分析値は0.79wt%であった。
【0027】
(4)防蟻シートの製造
三種三層インフレダイスを(口径150mm)を装備した多層インフレ装置を使用した。該ダイスの中間層には、口径50mmの押出機を通して、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(アクリフトWK307)9.7kg、上記ジノテフランのマスターバッチ0.3kgをブレンダーで混合したものを、溶融ゾーン140℃、ダイス温度140℃の条件で、48kg/hrの吐出量で供給した。内層及び外層には、低密度ポリエチレン(スミカセンL705)を溶融ゾーン140℃、ダイス温度140℃の条件で、5.8kg/hrの吐出量で供給した。ダイスから押し出される三層が積層された管状体を、ブローレシオ3.5、フロストライン距離300mm、引き取り速度5.4m/minの条件で引き取り、折径530mm、内層18μm、中間層144μm、外層18μmで構成される総厚み180μmの三層シートを得た。得られたシートを温度60℃、湿度90%RHに調節した恒温恒湿器に放置してジノテフランの経時的残存量を測定し、保持率を求めた。結果を表1に示した。
【0028】
[比較例1]
実施例1の防蟻シートの製造において、内層樹脂、外層樹脂を使用しないで、中間層のみを使用した。中間層にエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(アクリフトWK307)9.75kg、上記ジノテフランのマスターバッチ0.25kgをブレンダーで混合したものを使用した以外は実施例1と同条件で厚み180μmの単層シートを得た。得られたシートを温度60℃、湿度90%RHに調節した恒温恒湿器に放置してジノテフランの経時的残存量を測定し、保持率を求めた。結果を表1に示した。
【0029】
[実施例2]
三種三層の共押出しTダイ装置を使用し、中間層となる押出機に、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(アクリフトWK307)7.67kg、上記ジノテフランのマスターバッチ0.33kgをブレンダーで混合したものを、溶融ゾーン180℃、ダイス温度200℃の条件で、18kg/hrの吐出量で供給した。両外層には、直鎖状低密度ポリエチレン(スミカセンE FV405 住友化学(株)製 密度0.923、MFR=4g/10分)を溶融ゾーン200℃、ダイス温度200℃の条件で、各層6kg/hrの吐出量で供給した。ダイスから押し出されたシート状物を、35℃の冷却ロールで冷却しながら、引き取り速度2.4m/minで巻き取り、両外層の厚みが各々36μm、中間層の厚み108μmで構成される総厚み180μmの三層シートを得た。得られたシートを温度60℃、湿度90%RHに調節した恒温恒湿器に放置してジノテフランの経時的残存量を測定し、保持率を求めた。結果を表1に示した。
【0030】
[比較例2]
実施例2で、中間層の樹脂をエチレン−メタクリル酸メチル共重合体(アクリフトWK307)7.5kg、上記ジノテフランのマスターバッチ0.5kgを使用し、吐出量を12kg/hr、両外層の吐出量を9kg/hrとした以外は実施例2と同様に行い、両外層の厚み各々54μm、中間層の厚み72μmで構成される総厚み180μmの三層シートを得た。得られたシートを温度60℃、湿度90%RHに調節した恒温恒湿器に放置してジノテフランの経時的残存量を測定し、保持率を求めた。結果を表1に示した。
【0031】
[実施例3]
実施例2で、中間層の樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(スミカセンE FV401 住友化学(株)製 密度0.905、MFR=4g/10分)を用い、溶融温度200℃にした以外は実施例2と同様に行い、両外層の厚みが各々36μm、中間層の厚み108μmで構成される総厚み180μmの三層シートを得た。得られたシートを温度60℃、湿度90%RHに調節した恒温恒湿器に放置してジノテフランの経時的残存量を測定し、保持率を求めた。結果を表1に示す。
【0032】
[比較例3]
実施例3の中間層の樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(スミカセンE)を用いた以外は実施例3と同様に行い、両外層の厚みが各々36μm、中間層の厚み108μmで構成される総厚み180μmの三層シートを得た。得られたシートを温度60℃、湿度90%RHに調節した恒温恒湿器に放置してジノテフランの経時的残存量を測定し、保持率を求めた。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

樹脂の種類 A:エチレン−メタクリル酸メチル共重合体 メタクリル酸メチル含有量 25wt%
B:低密度ポリエチレン 密度 0.919
C:直鎖状低密度ポリエチレン 密度 0.923
D:直鎖状低密度ポリエチレン 密度 0.905

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫剤および樹脂からなる中間層(L1)と、該中間層の両側に、エチレン系樹脂層(L2、L3)が積層されてなる防蟻シートであって、以下の要件(1)−(5)を全て満たす防蟻シート。
(1)殺虫剤が、20℃における蒸気圧が1×10-5Pa以下の水溶性殺虫剤である
(2)中間層(L1)に含まれる樹脂が、カルボン酸ビニルエステルおよび不飽和カルボン酸エステルからなる群から選ばれる1種以上のモノマーとエチレンとの共重合体および/または密度0.910g/cm3以下のエチレン系樹脂である
(3)エチレン系樹脂層(L2、L3)が、密度0.918〜0.940g/cm3のエチレン系樹脂からなる
(4)各層の厚みが、L2/L1/L3=5〜50/80〜160/5〜50μmである
(5)防蟻シートに含まれる殺虫剤の濃度が0.001〜0.1重量%である
【請求項2】
前記殺虫剤が、1−メチル−2−ニトロ−3−[(3−テトラヒドロフリル)メチル]グアニジンである請求項1に記載の防蟻シート。

【公開番号】特開2007−261974(P2007−261974A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87341(P2006−87341)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(390000527)住化ライフテク株式会社 (54)
【Fターム(参考)】