説明

防護柵用支柱

【課題】入熱を伴う接合方法によって台座と支柱構成材とが接合された防護柵用支柱であって、材料強度の低下度合いが小さい防護柵用支柱を提供すること。
【解決手段】車道脇に構築された地覆に固定される台座1と、台座1に固着されるジョイント部材(支柱構成材)2と、ジョイント部材2に固定される支柱本体3とを備える防護柵用支柱Aであって、台座1には、平面視円帯状を呈するリング状凸部1bが形成されており、ジョイント部材2は、円筒状を呈しており、リング状凸部1bの上面において台座1とジョイント部材2とが摩擦圧接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道等に沿って設置される防護柵用支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の防護柵は、車道からの車両の転落を防止するものであり、所定間隔で立設した複数の支柱(以下、「防護柵用支柱」という。)間に横梁(横架材)等を架け渡した構造を具備している。
【0003】
この種の防護柵用支柱は、車道脇の地覆に固定される台座と、横梁を支持する支柱本体とを備えるものが一般的である。例えば、特許文献1の防護柵用支柱は、平板状の台座と、溶接により台座の上面に固着された支柱本体とを備えている。また、特許文献2の防護柵用支柱は、平板状の台座と、溶接により台座の上面に固着されたジョイント部材と、ジョイント部材に固定された支柱本体とを備えている。
【0004】
この種の防護柵用支柱は、支柱本体が後方へ傾倒することで衝突エネルギーを吸収する。支柱本体が傾倒する際には、支柱本体(またはジョイント部材)と台座との接合部に大きな引張力が作用することになるので、支柱本体(またはジョイント部材)と台座との突合部に対しては、念入りに溶接を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−132048号公報
【特許文献2】特開2008−63827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溶接を入念に行うと、支柱本体またはジョイント部材(以下、「支柱構成材」という。)への入熱量が大きくなるので、材料強度(継手効率)の低下を招く虞がある。通常は、溶接による材料強度の低下を見込んで支柱構成材の肉厚等を設定するので、接合部が構造上の弱点になるようなことは無いが、支柱構成材の肉厚等を大きくすると、支柱構成材の重量が嵩んでしまうという問題がある。支柱構成材の重量が嵩むと、材料費や運送費が増大することになり、さらには、現場での作業性も悪化してしまう。
【0007】
このような観点から、本発明は、入熱を伴う接合方法によって台座と支柱構成材とが接合された防護柵用支柱であって、材料強度の低下度合いが小さい防護柵用支柱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明は、車道脇に固定される台座と、前記台座に固着される支柱構成材と、を備える防護柵用支柱であって、前記台座と支柱構成材とが摩擦圧接されている、ことを特徴とする。
【0009】
摩擦圧接によって台座と支柱構成材とを接合すると、MIG溶接等の溶融溶接の場合よりも入熱量が小さくなり、ひいては、接合部(熱影響部)における材料強度の低下度合いが小さいものとなる。
【0010】
なお、支柱構成材とは、台座に固着される部材の総称である。例えば、横梁等を支持する支柱本体が直に台座に固着される場合には、支柱本体そのものが「支柱構成材」に相当し、支柱本体と台座との間に介設されるジョイント部材が台座に固着される場合には、ジョイント部材が「支柱構成材」に相当する。
【0011】
摩擦圧接の方法に制限はなく、例えば、台座および支柱構成材の一方を往復運動させて得た摩擦熱を利用して、両者を摩擦圧接してもよいし、台座および支柱構成材を相対回転運動させて得た摩擦熱を利用して両者を摩擦圧接してもよい。
【0012】
相対回転運動により摩擦圧接する場合には、支柱構成材を円筒状に成形するとともに、前記台座に平面視円帯状のリング状凸部を形成し、前記リング状凸部の上面において前記台座と前記支柱構成材とを摩擦圧接するとよい。リング状凸部の熱容量は、台座本体の熱容量よりも小さいので、台座本体に摩擦圧接する場合に比べて、台座側の母材が速やかに軟化するようになり、ひいては、接合部への入熱量を抑えることが可能になる。特に、前記リング状凸部の内径および外径を、前記支柱構成材の内径および外径と等しくすると、突合面で発生した摩擦熱がリング状凸部と支柱構成材とに均等に伝達し、両者が同じように軟化するので、各部材の端面に形成されている酸化皮膜が同じタイミングで排出されるようになり、ひいては、接合品質が均一なものとなる。
【0013】
リング状凸部の代わりに、平面視円帯状を呈するリング状凹部を形成し、前記リング状凹部の底面において前記台座と前記支柱構成材とを摩擦圧接してもよい。リング状凹部を形成すると、その周囲の熱容量が小さくなり、速やかに軟化するようになるので、接合部への入熱量を抑えることが可能になる。
【0014】
相対回転運動により摩擦圧接する場合には、支柱構成材を円筒状に成形するとともに、前記台座に平面視円形状を呈する円形開口部を形成し、前記円形開口部の開口縁部において前記台座と前記支柱構成材とを摩擦圧接してもよい。円形開口部を形成すると、熱容量が小さくなり、突合面よりも台座側の母材が速やかに軟化するようになるので、接合部への入熱量を抑えることが可能になる。特に、前記開口縁部の上面を、前記開口縁部の外周側における前記台座の上面よりも低い位置に形成すると、厚みが小さくなる分、熱容量がより一層小さくなるので、接合部への入熱量をより一層抑えることが可能になる。
【0015】
なお、台座の上面よりも下がった位置において台座と支柱構成材とを摩擦圧接する場合には、前記支柱構成材の外周側に溝状空間を形成し、前記摩擦圧接時に前記支柱構成材の外側に押し出されたバリを前記溝状空間に収容するとよい。このようにすると、バリを切除せずとも、バリが目立たなくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶接を利用した場合に比べて、入熱による強度低下が起こり難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一の実施形態に係る防護柵用支柱の斜視図である。
【図2】第一の実施形態に係る防護柵用支柱の分解斜視図である。
【図3】(a)は台座の平面図、(b)は(a)の3B−3B線断面図、(c)は台座とジョイント部材とを摩擦圧接した状態を示す断面図である。
【図4】(a)は第一の実施形態に係る防護柵用支柱の断面図、(b)は(a)の4B−4B線断面図である。
【図5】(a)および(b)は、第一の実施形態に係る防護柵用支柱における台座とジョイント部材の変形例を示す断面図である。
【図6】(a)および(b)は、第一の実施形態に係る防護柵用支柱における支柱本体の変形例を示す断面図である。
【図7】第二の実施形態に係る防護柵用支柱を説明するための図であって、(a)は台座の平面図、(b)は(a)の7B−7B線断面図、(c)は台座とジョイント部材とを摩擦圧接した状態を示す断面図である。
【図8】第三の実施形態に係る防護柵用支柱を説明するための図であって、(a)は台座の平面図、(b)は(a)の8B−8B線断面図、(c)は台座とジョイント部材とを摩擦圧接した状態を示す断面図である。
【図9】第三の実施形態に係る防護柵用支柱の変形例を説明するための図であって、(a)は台座の平面図、(b)は(a)の9B−9B線断面図、(c)は台座とジョイント部材とを摩擦圧接した状態を示す断面図である。
【図10】第四の実施形態に係る防護柵用支柱を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る防護柵用支柱Aは、図1に示すように、台座1と、台座1に固着されるジョイント部材(支柱構成材)2と、ジョイント部材2に固定される支柱本体3と、を具備している。
【0019】
台座1、ジョイント部材2および支柱本体3の材質に制限はないが、本実施形態では、T6処理をしたAl−Mg−Si系合金(JIS規格の6000系アルミニウム合金であって溶体化処理後に焼入れ処理をし、その後に人工時効処理をしたもの)を使用している。T6処理をしたAl−Mg−Si系合金(例えば、JIS規格のアルミニウム合金6061−T6など)は、強度が高く(0.2%耐力が245MPa以上)、耐久性(応力腐食割れ性や耐候性など)も高いので、防護柵用支柱Aに好適である。
【0020】
台座1は、車道脇に構築された地覆(図示略)に固定されるものであり、平面視矩形状を呈している。台座1の四隅には、アンカー挿通孔1a,1a,…が形成されている。アンカー挿通孔1aには、基礎に植設されたアンカー(図示略)が挿入される。
【0021】
図2に示すように、台座1には、リング状凸部1bが形成されている。リング状凸部1bは、台座1の上面に突設された部位であり、図3の(a)にも示すように、平面視円帯状を呈している。図3の(b)に示すように、リング状凸部1bの上面は、平坦に成形されている。リング状凸部1bは、例えば、台座1の素となるアルミニウム合金製の板材に切削加工を施すことで形成される。なお、リング状凸部1bの断面形状は、矩形(長方形または正方形)を呈しているが、台形状としてもよい。
【0022】
図2に示すジョイント部材2は、台座1と支柱本体3との間に介設されるものであり、円筒状を呈している。ジョイント部材2の車道側の部位には、雌ネジ2a,2aが形成されている。雌ネジ2aには、固定ボルト4(図1参照)が螺合される。本実施形態のジョイント部材2は、図2の上下方向を押出方向とする中空押出形材からなる。すなわち、ジョイント部材2は、その素となる中空押出形材を押出方向に直交する面に沿って切断することで形成される。図3の(c)にも示すように、ジョイント部材2の内径および外径は、リング状凸部1bの内径および外径と等しくなっている。また、ジョイント部材2の下端面は、ジョイント部材2の中心軸に直交する平面に沿って面一に成形されている。
【0023】
図3の(c)に示すように、ジョイント部材2は、リング状凸部1bの上面に摩擦圧接される。台座1とジョイント部材2とを摩擦圧接するには、台座1およびジョイント部材2を相対回転させつつ、両者を突き合わせればよい。
【0024】
具体的には、台座1を回転不能に把持するとともに、リング状凸部1bの中心とジョイント部材2の中心軸線とが同軸となるようにジョイント部材2を把持し、その後、ジョイント部材2を中心軸周りに回転させつつ台座1に向かって前進させてリング状凸部1bの上面とジョイント部材2の下端面とを突き合わせ、突合面に圧力を付与すればよい。台座1およびジョイント部材2を相対回転させつつ圧力を付与すると、摩擦熱によって突合面の周囲に軟化部が形成され、軟化部の流動性が高まると、突合部の内外へ押し出されてバリ5となり、酸化皮膜等のない接合界面が形成される。本実施形態では、ジョイント部材2の内径および外径がリング状凸部1bの内径および外径と等しくなっているので、突合面で発生した摩擦熱は、リング状凸部1bとジョイント部材2とに均等に伝達するようになる。つまり、本実施形態では、両部材の突合面に形成されている酸化皮膜が同じタイミングで排出されるようになるので、接合部の品質が均一なものとなる。突合部の外側へ押し出されたバリ5は、摩擦圧接後に必要に応じて切除する。
【0025】
なお、熱容量の大きな部材を軟化させるためには、熱容量の小さな部材を軟化させるために必要な熱量以上の熱量を与える必要があるので、台座1側の熱容量とジョイント部材2側の熱容量に大きな差異があると、熱容量の小さい部材への入熱量が過大になる虞があるが、本実施形態では、ジョイント部材2の内径および外径がリング状凸部1bの内径および外径と等しくなっているので、突合面周辺の熱容量に大きな差異はなく、したがって、一方への入熱量が過大になることを防止することが可能になる。
【0026】
図4の(a)および(b)に示すように、台座1に摩擦圧接されたジョイント部材2は、支柱本体3の下端部の内空に挿入された状態で、固定ボルト4,4によって支柱本体3と接合される。
【0027】
支柱本体3は、車道に沿って横架される横梁(図示略)を支持するものである。本実施形態の支柱本体3は、上下方向を押出方向とする中空押出形材からなる。図4の(b)に示すように、支柱本体3の車道側の部位には、ボルト挿通孔3a,3aが形成されている。ボルト挿通孔3aには、固定ボルト4が挿入される。支柱本体3の断面形状に制限はないが、本実施形態のものは、図4の(a)に示すように、車道側に設けられた断面円弧状の前壁部31と、前壁部31の左右の端部から後方へ向って延在する断面直線状の側壁部32,32と、側壁32,32の後端部同士を繋ぐ断面U字状の後壁部33とを備えている。なお、支柱本体3は、前壁部31の内面および側壁部32,32の内面においてジョイント部材2の外面に接している。
【0028】
このような構成の防護柵用支柱Aに対し、例えば、車道側から衝突荷重P(図1参照)が作用した場合には、ジョイント部材2の上端部付近を支点として支柱本体3が後方へ傾倒することで衝突エネルギーが吸収される。なお、支柱本体3が後方へ傾倒する際には、支柱本体3の下端部に曲げモーメントが発生するので、支柱本体3には引張力が作用するが、この引張力は、固定ボルト4,4を介してジョイント部材2に伝えられ、さらに台座1を介して基礎に植設されたアンカー(図示略)に伝えられる。
【0029】
以上説明した本実施形態の防護柵用支柱Aによれば、摩擦圧接によって台座1とジョイント部材2とを接合しているので、MIG溶接等の溶融溶接の場合よりも入熱量を抑えることが可能になる。つまり、防護柵用支柱Aによれば、接合部(熱影響部)における材料強度(継手強度)の低下度合いが小さいものとなる。ちなみに、アーク溶接を行った場合の接合部の継手強度は、母材(T6処理をしたAl−Mg−Si系合金)の強度の55%程度になるが、本実施形態によれば、接合部の継手強度は、母材の強度の70〜95%程度となる。
【0030】
また、例えば、突合せ溶接を行う場合には、リング状凸部1bまたはジョイント部材2の下端部に開先を形成する必要があるので、その加工に手間を要する虞があるが、本実施形態によれば、開先を形成しなくとも両者を接合することができるので、開先加工の手間を省略することが可能になる。
【0031】
なお、本実施形態では、リング状凸部1bの上面を台座1の上面と平行にするとともに、ジョイント部材2の下端面を中心軸に直交する平面と平行にした場合を例示したが(図3の(c)参照)、図5の(a)に示すように、リング状凸部1bの上面を台座1の上面に対して傾斜させるとともに、ジョイント部材2の下端面を、ジョイント部材2の中心軸に直交する平面に対して傾斜させてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、ジョイント部材2の下端面全体が同時にリング状凸部1bの上面に突き合わされるような形態を例示したが(図3の(c)参照)、図5の(b)に示すように、ジョイント部材2の下端面が時間差をもってリング状凸部1bの上面に突き合わされるような形態としても差し支えない。
【0033】
図5の(b)のリング状凸部1bの上面は、内周側上面1b1と外周側上面1b2とに区分けされており、ジョイント部材2の下端面は、内周側下端面2b1と外周側下端面2b2とに区分けされている。外周側上面1b2および外周側下端面2b2は、それぞれ内周側上面1b1および内周側下端面2b1に対して傾斜しており、台座1とジョイント部材2とを突き合わせると、まず、リング状凸部1bの内周側上面1b1とジョイント部材2の内周側下端面2b1とが接触する。このとき、リング状凸部1bの外周側上面1b2とジョイント部材2の外周側下端面2b2とは、隙間をあけて対向する。
【0034】
リング状凸部1bの内周側上面1b1とジョイント部材2の内周側下端面2b1とが接触し、接触部分において摩擦圧接が進行すると、リング状凸部1bの外周側上面1b2とジョイント部材2の外周側下端面2b2とが接触するようになり、最終的には、外周側上面1b2と外周側下端面2b2との接触部分においても、摩擦圧接が進行するようになる。
【0035】
ジョイント部材2の下端面を多段階でリング状凸部1bの上面に接触させれば、圧接時の付加を低減することが可能になるので、規模の小さい摩擦圧接装置でも台座1とジョイント部材2とを摩擦圧接することが可能になる。
【0036】
本実施形態では、平板状を呈する台座1を例示したが、台座1の形状等を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、例えば、台座1の下面に道路勾配に対応するための傾斜や脚部を設けてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、砲弾状の断面形状を有する支柱本体3を例示したが、支柱本体3の断面形状を限定する趣旨ではない。例えば、図6の(a)および(b)に示すように、後壁部33を前壁部31と同形状の断面円弧状とし、断面樽形に成形してもよい。なお、図6に示す支柱本体3は、前壁部31、側壁部32,32および後壁部33の内面においてジョイント部材2の外面に接している。また、本実施形態では、ジョイント部材2を台座1に摩擦圧接した後、支柱本体3をジョイント部材2に外嵌したが、ジョイント部材2を台座1に摩擦圧接した後、ジョイント部材2の内空部に支柱本体3を差し込んでもよい。
【0038】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、リング状凸部1bの上面において台座1とジョイント部材2とを摩擦圧接した場合を例示したが、リング状凸部1bの代わりに、平面視円帯状を呈するリング状凹部1cを台座1に形成し(図7の(a)および(b)参照)、リング状凹部1cの底面において台座1とジョイント部材2とを摩擦圧接してもよい(図7の(c)参照)。
【0039】
なお、第二の実施形態に係る防護柵用支柱の基本的な構成は、前記した第一の実施形態のものと同様である。
【0040】
リング状凹部1cは、台座1の上面に凹設された部位であり、図7の(a)に示すように、平面視円帯状を呈している。図7の(b)に示すように、リング状凹部1cの底面は、平坦に成形されている。リング状凹部1cは、例えば、台座1の素となるアルミニウム合金製の板材に切削加工を施すことで形成される。なお、リング状凹部1cの断面形状は、矩形を呈しているが、台形状としてもよい。
【0041】
図7の(c)に示すように、リング状凹部1cの内径(内周縁の直径)は、ジョイント部材2の内径よりも小さく、リング状凹部1cの外径(外周縁の直径)は、ジョイント部材2の外径よりも大きくなっている。つまり、リング状凹部1cの溝幅dは、ジョイント部材2の肉厚tよりも大きく、リング状凹部1cにジョイント部材2の下端部を挿入すると、ジョイント部材2の下端部の外周および内周に沿って溝状空間が形成されるようになる。溝状空間には、摩擦圧接時に押し出されたバリ5が収容される。
【0042】
ジョイント部材2は、リング状凹部1cの底面に摩擦圧接される。台座1とジョイント部材2とを摩擦圧接するには、台座1およびジョイント部材2を相対回転させつつ、両者を突き合わせればよい。
【0043】
以上説明した本実施形態の防護柵用支柱においても、摩擦圧接によって台座1とジョイント部材2とを接合しているので、溶接の場合よりも入熱量を抑えることが可能になる。また、台座1にリング状凹部1cを形成すると、その下側における母材の厚さ寸法が小さくなる分、熱容量が小さくなる。熱容量が小さくなると、速やかに軟化するようになるので、接合部への入熱量を抑えることが可能になる。
【0044】
また、本実施形態では、バリ5が溝状空間に収容されるので、バリ5が目立たなくなり、バリ5を切除せずとも、支柱本体3(図1参照)をジョイント部材2に外嵌することが可能となる。
【0045】
(第三の実施形態)
図8に示すように、平面視円形状を呈する円形開口部1dを台座1に形成し(図8の(a)および(b)参照)、円形開口部1dの開口縁部1eにおいて台座1とジョイント部材2とを摩擦圧接してもよい(図8の(c)参照)。
【0046】
なお、第三の実施形態に係る防護柵用支柱の基本的な構成は、前記した第一の実施形態のものと同様である。
【0047】
図8の(a)に示すように、円形開口部1dは、平面視円形状を呈しており、開口縁部1eは、平面視円帯状を呈している。図8の(b)に示すように、円形開口部1dは、台座1を上下に貫通している。円形開口部1dは、例えば、台座1の素となるアルミニウム合金製の板材に切削加工を施すことで形成される。なお、図示は省略するが、円形開口部1dは、有底であってもよい。
【0048】
図8の(c)に示すように、ジョイント部材2は、台座1の開口縁部1eの上面に摩擦圧接される。台座1とジョイント部材2とを摩擦圧接するには、台座1およびジョイント部材2を相対回転させつつ、両者を突き合わせればよい。なお、本実施形態では、円形開口部1dの開口径がジョイント部材2の内径と等しくなっているので、ジョイント部材2の下端面の全体が開口縁部1eに摩擦圧接される。
【0049】
以上説明した本実施形態の防護柵用支柱においても、摩擦圧接によって台座1とジョイント部材2とを接合しているので、溶接の場合よりも入熱量を抑えることが可能になる。また、台座1に円形開口部1dを形成すると、熱容量が小さくなり、速やかに軟化するようになるので、接合部への入熱量を抑えることが可能になる。
【0050】
なお、図8に示した形態においては、開口縁部1eの上面を、開口縁部1eの外周側における台座1の上面と面一にした場合を例示したが、図9の(a)および(b)に示すように、開口縁部1eの上面を、開口縁部1eの外周側における台座1の上面よりも低い位置に形成してもよい。すなわち、開口縁部1eを、その周囲よりも一段下がった段部とし、その上面において台座1とジョイント部材2とを摩擦圧接してもよい(図9の(c)参照)。
【0051】
図9の形態においては、開口縁部1eの外径を、ジョイント部材2の外径よりも大きくしているので、ジョイント部材2の下端部を開口縁部1eに突き合わせると、ジョイント部材2の外周に沿って溝状空間が形成されるようになる。溝状空間には、摩擦圧接時に押し出されたバリ5が収容される。
【0052】
なお、図示は省略するが、開口縁部1eの外径をジョイント部材2の外径と等しくしておき、ジョイント部材2の下端面を開口縁部1eの上面に摩擦圧接するとともに、ジョイント部材2の外周面を、開口縁部1eを取り囲む周壁1f(図9の(b)参照)に摩擦圧接してもよい。
【0053】
(第四の実施形態)
前記した実施形態では、台座1と支柱本体3との間にジョイント部材2を介在させた場合を例示したが、ジョイント部材2を省略してもよい。
【0054】
図10の(a)に示すように、第四の実施形態に係る防護柵用支柱Bは、台座11と、台座11に固着される支柱本体(支柱構成材)13と、を具備している。台座11および支柱本体13の材質に制限はないが、本実施形態では、T6処理をしたAl−Mg−Si系合金(JIS規格の6000系アルミニウム合金であって溶体化処理後に焼入れ処理をし、その後に人工時効処理をしたもの)を使用している。
【0055】
台座11は、車道脇に構築された地覆に固定されるものであり、平面視矩形状を呈している。台座11の四隅には、アンカー挿通孔11a,11a,…が形成されている。アンカー挿通孔11aには、基礎に植設されたアンカー(図示略)が挿入される。
【0056】
支柱本体13は、円筒状を呈している。本実施形態の支柱本体13は、図10の(a)の上下方向を押出方向とする中空押出形材からなる。すなわち、支柱本体13は、その素となる中空押出形材を押出方向に直交する面に沿って切断することで形成される。なお、支柱本体13の下端面は、支柱本体13の中心軸に直交する平面に沿って面一に成形されている。
【0057】
図10の(b)に示すように、支柱本体13は、台座11の上面に摩擦圧接される。台座11と支柱本体13とを摩擦圧接するには、台座11および支柱本体13を相対回転させつつ、両者を突き合わせればよい。
【0058】
以上説明した本実施形態の防護柵用支柱Bによれば、摩擦圧接によって台座11と支柱本体13とを接合しているので、溶接の場合よりも入熱量を抑えることが可能になる。つまり、防護柵用支柱Bによれば、接合部(熱影響部)における材料強度(継手強度)の低下度合いが小さいものとなる。
【0059】
また、防護柵用支柱Bによれば、支柱本体13を台座11に直に摩擦圧接しているので、ジョイント部材が不要になり、ひいては、材料コストや加工手間を軽減することが可能になる。
【0060】
また、本実施形態では、摩擦圧接の方法として、一方向に回転させる場合を例示したが、適当な回転角度で反対方向に回転させ、往復動作(正逆回転)により摩擦力を与えて摩擦圧接するものでもよい。
【符号の説明】
【0061】
A 防護柵用支柱
1 台座
1b リング状凸部
1c リング状凹部
1d 円形開口部
1e 開口縁部
2 ジョイント部材(支柱構成材)
3 支柱本体
B 防護柵用支柱
11 台座
13 支柱本体(支柱構成材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道脇に固定される台座と、
前記台座に固着される支柱構成材と、を備える防護柵用支柱であって、
前記台座と支柱構成材とが摩擦圧接されている、ことを特徴とする防護柵用支柱。
【請求項2】
前記台座には、平面視円帯状を呈するリング状凸部が形成されており、
前記支柱構成材は、円筒状を呈しており、
前記リング状凸部の上面において前記台座と前記支柱構成材とが摩擦圧接されている、ことを特徴とする請求項1に記載の防護柵用支柱。
【請求項3】
前記リング状凸部の内径および外径が、前記支柱構成材の内径および外径と等しいことを特徴とする請求項2に記載の防護柵用支柱。
【請求項4】
前記台座には、平面視円帯状を呈するリング状凹部が形成されており、
前記支柱構成材は、円筒状を呈しており、
前記リング状凹部の底面において前記台座と前記支柱構成材とが摩擦圧接されている、ことを特徴とする請求項1に記載の防護柵用支柱。
【請求項5】
前記台座には、平面視円形状を呈する円形開口部が形成されており、
前記支柱構成材は、円筒状を呈しており、
前記円形開口部の開口縁部において前記台座と前記支柱構成材とが摩擦圧接されている、ことを特徴とする請求項1に記載の防護柵用支柱。
【請求項6】
前記開口縁部の上面が、前記開口縁部の外周側における前記台座の上面よりも低い位置に形成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の防護柵用支柱。
【請求項7】
前記支柱構成材の外周に沿って溝状空間が形成されており、前記摩擦圧接時に前記支柱構成材の外側に押し出されたバリが前記溝状空間に収容されている、ことを特徴とする請求項4または請求項6に記載の防護柵用支柱。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−1694(P2011−1694A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143203(P2009−143203)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(500538715)株式会社住軽日軽エンジニアリング (58)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】