説明

防護柵用支柱

【課題】入熱を伴う接合方法によって台座と支柱構成材とが接合された防護柵用支柱であって、材料強度の低下度合いが小さい防護柵用支柱を提供すること。
【解決手段】車道脇に構築された地覆に固定される台座1と、台座1に固着されるジョイント部材(支柱構成材)2と、ジョイント部材2に固定される支柱本体3とを備える防護柵用支柱Aであって、台座1には、その上面に開口する凹部1bが形成されており、ジョイント部材2の下端部は、凹部1bに挿入されており、台座1の下面側から施された摩擦攪拌により、台座1とジョイント部材2の下端部とが摩擦攪拌接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道等に沿って設置される防護柵用支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の防護柵は、車道からの車両の転落を防止するものであり、所定間隔で立設した複数の支柱(以下、「防護柵用支柱」という。)間に横梁(横架材)等を架け渡した構造を具備している。
【0003】
この種の防護柵用支柱は、車道脇の地覆に固定される台座と、横梁を支持する支柱本体とを備えるものが一般的である。例えば、特許文献1の防護柵用支柱は、平板状の台座と、溶接により台座の上面に固着された支柱本体とを備えている。また、特許文献2の防護柵用支柱は、平板状の台座と、溶接により台座の上面に固着されたジョイント部材と、ジョイント部材に固定された支柱本体とを備えている。
【0004】
この種の防護柵用支柱は、支柱本体が後方へ傾倒することで衝突エネルギーを吸収する。支柱本体が傾倒する際には、支柱本体(またはジョイント部材)と台座との接合部に大きな引張力が作用することになるので、支柱本体(またはジョイント部材)と台座との突合部に対しては、念入りに溶接を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−132048号公報
【特許文献2】特開2008−63827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溶接を入念に行うと、支柱本体またはジョイント部材(以下、「支柱構成材」という。)への入熱量が大きくなるので、材料強度(継手効率)の低下を招くことになる。通常は、溶接による材料強度の低下を見込んで支柱構成材の肉厚等を設定するので、接合部が構造上の弱点になるようなことは無いが、支柱構成材の肉厚等を大きくすると、支柱構成材の重量が嵩んでしまうという問題がある。支柱構成材の重量が嵩むと、材料費や運送費が増大することになり、さらには、現場での作業性も悪化してしまう。
【0007】
このような観点から、本発明は、入熱を伴う接合方法によって台座と支柱構成材とが接合された防護柵用支柱であって、材料強度の低下度合いが小さい防護柵用支柱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明は、車道脇に固定される台座と、前記台座に固着される支柱構成材と、を備える防護柵用支柱であって、前記台座と支柱構成材の下端部とが摩擦攪拌接合されている、ことを特徴とする。
【0009】
摩擦攪拌接合によって台座と支柱構成材とを接合すると、溶接の場合よりも入熱量が小さくなり、ひいては、接合部(熱影響部)における材料強度の低下度合いが小さいものとなる。
【0010】
なお、支柱構成材とは、台座に固着される部材の総称である。例えば、横梁等を支持する支柱本体が直に台座に固着される場合には、支柱本体そのものが「支柱構成材」に相当し、支柱本体と台座との間に介設されるジョイント部材が台座に固着される場合には、ジョイント部材が「支柱構成材」に相当する。
【0011】
本発明においては、前記台座の上面に凹部を形成するとともに、前記支柱構成材の下端部を前記凹部に挿入し、前記台座の下面側から施した摩擦攪拌により、前記台座と前記支柱構成材の下端部とを摩擦攪拌接合することが望ましい。この場合、台座の凹部の底面と支柱構成材の下端面とが突き合わされた状態で両者が摩擦攪拌接合されることになるので、衝突により防護柵用支柱の下端部に曲げモーメントが作用すると、接合界面(凹部の底面と支柱構成材の下端面の境界部分)には、主として軸力(引張力)が作用するようになる。
【0012】
支柱構成材の下端部を凹部に挿入した場合には、前記支柱構成材の下端面全体を摩擦攪拌接合することが望ましい。このようにすると、接合界面の面積が支柱構成材の下端面の面積と同等になるので、引抜き耐力が高いものとなる。
【0013】
本発明においては、前記台座に、その上下面に開口する開口部を形成するとともに、前記支柱構成材の下端部を前記開口部に挿入し、前記台座の下面側から施した摩擦攪拌により、前記台座と前記支柱構成材の下端部とを摩擦攪拌接合してもよい。この場合、台座の開口部の内面壁と支柱構成材の外周面とが突き合わされた状態で両者が摩擦攪拌接合されることになるので、衝突により防護柵用支柱の下端部に曲げモーメントが作用すると、接合界面(開口部の内面壁と支柱構成材の外周面の境界部分)には、主としてせん断力が作用するようになる。
【0014】
本発明においては、前記台座の上面と前記支柱構成材の外周面とを仮付け溶接してもよい。このようにすると、摩擦攪拌接合を行う際の位置決めが容易になるとともに、引抜き耐力が向上する。なお、仮付け溶接であれば、入熱量が大きくならないので、材料強度(継手効率)に大きな影響を及ぼすことはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溶接を利用した場合に比べて、入熱による強度低下が起こり難くなり、ひいては、材料の無駄が無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一の実施形態に係る防護柵用支柱の斜視図である。
【図2】第一の実施形態に係る防護柵用支柱の分解斜視図である。
【図3】(a)は台座の平面図、(b)は(a)の3B−3B線断面図、(c)は台座とジョイント部材とを摩擦攪拌接合した状態を示す断面図である。
【図4】台座とジョイント部材とを仮付け溶接した状態を示す断面図である。
【図5】摩擦攪拌接合の様子を示す図であって、(a)は台座の上下を逆にした状態を示す底面図、(b)は(a)の5B−5B線断面図である。
【図6】(a)は第一の実施形態に係る防護柵用支柱の平面図、(b)は(a)の6B−6B線断面図である。
【図7】第二の実施形態に係る防護柵用支柱を説明するための図であって、(a)は台座の平面図、(b)は(a)の7B−7B線断面図、(c)は台座とジョイント部材とを摩擦攪拌接合した状態を示す断面図である。
【図8】第三の実施形態に係る防護柵用支柱を説明するための図であって、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図9】変形例を示す図であって、(a)は台座の上下を逆にした状態を示す底面図、(b)は(a)の9B−9B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る防護柵用支柱Aは、図1に示すように、台座1と、台座1に固着されるジョイント部材(支柱構成材)2と、ジョイント部材2に固定される支柱本体3と、を具備している。
【0018】
台座1、ジョイント部材2および支柱本体3の材質に制限はないが、本実施形態では、T6処理をしたAl−Mg−Si系合金(JIS規格の6000系アルミニウム合金であって溶体化処理後に焼入れ処理をし、その後に人工時効処理をしたもの)を使用している。T6処理をしたAl−Mg−Si系合金(例えば、JIS規格のアルミニウム合金6061−T6など)は、強度が高く(0.2%耐力が245MPa以上)、耐久性(応力腐食割れ性や耐候性など)も高いので、防護柵用支柱Aに好適である。
【0019】
台座1は、車道脇に構築された地覆に固定されるものであり、平面視矩形状を呈している。台座1の四隅には、アンカー挿通孔1a,1a,…が形成されている。アンカー挿通孔1aには、地覆に植設されたアンカー(図示略)が挿入される。
【0020】
図2に示すように、台座1には、上面に開口する凹部1bが形成されている。凹部1bは、台座1の上面に凹設されたリング状の凹溝であり、図3の(a)にも示すように、平面視円帯状を呈している。図3の(b)に示すように、凹部1bの底面は、平坦に成形されている。凹部1bは、例えば、台座1の素となるアルミニウム合金製の板材に切削加工を施すことで形成される。
【0021】
図2に示すジョイント部材2は、台座1と支柱本体3との間に介設されるものであり、円筒状を呈している。ジョイント部材2の車道側の部位には、雌ネジ2a,2aが形成されている。雌ネジ2aには、固定ボルト4(図1参照)が螺合される。本実施形態のジョイント部材2は、図2の上下方向を押出方向とする中空押出形材からなる。すなわち、ジョイント部材2は、その素となる中空押出形材を押出方向に直交する面に沿って切断することで形成される。図3の(c)にも示すように、ジョイント部材2の内径および外径は、凹部1bの内径および外径と等しくなっている。また、ジョイント部材2の下端面は、ジョイント部材2の中心軸に直交する平面に沿って面一に成形されている。
【0022】
図3の(c)に示すように、ジョイント部材2の下端部は、台座1に摩擦攪拌接合される。台座1とジョイント部材2とを摩擦攪拌接合するには、ジョイント部材2の下端部を凹部1bに挿入し、台座1の下面側から摩擦攪拌を行えばよい。
【0023】
具体的には、まず、図4に示すように、ジョイント部材2の下端部を凹部1bに挿入し、凹部1bの底面にジョイント部材2の下端面を突き合わせる。次に、台座1の上面とジョイント部材2の外周面に対してMIG溶接により点付溶接wを行い、両者を仮付けする。なお、ジョイント部材2の全周に亘って連続的に仮付け溶接を行ってもよいが、入熱量が小さくなるように、断続的に仮付け点溶接を行うことが望ましい。
【0024】
仮付け溶接が完了したならば、台座1の下面が上になるように図示せぬ架台に固定した後、図5の(a)および(b)に示すように、台座1の下面(図5の(b)における上面)の適所から高速回転する回転ツールTを台座1に挿入し、凹部1bの中心線(ジョイント部材2の外殻)をなぞるように設定した円形の移動ルートに沿って回転ツールTを移動させる。回転ツールTを挿入すると、回転ツールTの下側において台座1の母材とジョイント部材2の母材とが塑性流動化して混ざり合い、塑性化領域fが形成される。本実施形態では、ジョイント部材2の下端面2bの全体が塑性化領域fに包含されるように摩擦攪拌を行い、ジョイント部材2の下端面2bの全体を凹部1bの底面に摩擦攪拌接合する。なお、本実施形態では、凹部1bの側壁とジョイント部材2の下端部の外周面との突合部にも塑性化領域fが形成される。予め設定した移動ルートの全長に亘って回転ツールTを移動させたならば、台座1の下面(図5の(b)における上面)の適所から回転ツールTを離脱させる。なお、本実施形態では、凹部1bの中心線上に設けた開始点Sに回転ツールTを挿入させた後、凹部1bの中心線に沿って回転ツールTを周回移動させ、開始点Sに戻ったならば、凹部1bの外周側に設けた終了点Eにおいて回転ツールTを離脱させる。
【0025】
図6の(a)および(b)に示すように、台座1に摩擦攪拌接合されたジョイント部材2は、支柱本体3の下端部の内空に挿入された状態で、固定ボルト4,4によって支柱本体3と接合される。なお、ジョイント部材2と支柱本体3とが接触する位置からずれた位置において仮溶接(点付溶接w)を行えば、台座1と支柱本体3との間にある隙間を無くすことができる。
【0026】
支柱本体3は、車道に沿って横架される横梁(図示略)を支持するものである。本実施形態の支柱本体3は、上下方向を押出方向とする中空押出形材からなる。図6の(b)に示すように、支柱本体3の車道側の部位には、ボルト挿通孔3a,3aが形成されている。ボルト挿通孔3aには、固定ボルト4が挿入される。支柱本体3の断面形状に制限はないが、図6の(a)に示すように、本実施形態のものは、車道側に設けられた断面円弧状の前壁部31と、前壁部31の左右の端部から後方へ向って延在する断面直線状の側壁部32,32と、側壁32,32の後端部同士を繋ぐ断面U字状の後壁部33とを備えている。なお、支柱本体3は、前壁部31の内面および側壁部32,32の内面においてジョイント部材2の外面に接している。
【0027】
このような構成の防護柵用支柱Aに対し、例えば、車道側から衝突荷重P(図1参照)が作用した場合には、ジョイント部材2の上端部付近を支点として支柱本体3が後方へ傾倒することで衝突エネルギーが吸収される。支柱本体3が後方へ傾倒する際には、支柱本体3の下端部に曲げモーメントが発生するので、支柱本体3には引張力が作用するが、この引張力は、固定ボルト4,4を介してジョイント部材2に伝えられ、さらに台座1を介して地覆に植設されたアンカー(図示略)に伝えられる。なお、台座1の凹部1bの底面とジョイント部材2の下端面2bとが突き合わされた状態で両者が摩擦攪拌接合されることになるので、支柱本体3に曲げモーメントが作用すると、台座1とジョイント部材2の接合界面(凹部1bの底面とジョイント部材2の下端面2bの境界部分)には、図6の(b)に示すように、主として軸力(引張力)Fが作用するようになる。
【0028】
以上説明した本実施形態の防護柵用支柱Aによれば、摩擦攪拌接合によって台座1とジョイント部材2とを接合しているので、溶接の場合よりも入熱量を抑えることが可能になる。つまり、防護柵用支柱Aによれば、接合部(熱影響部)における材料強度(継手強度)の低下度合いが小さいものとなる。ちなみに、本接合をアーク溶接とした場合の接合部の継手強度は、母材(T6処理をしたAl−Mg−Si系合金)の強度の55%程度になるが、本接合を摩擦攪拌接合とした本実施形態によれば、接合部の継手強度は、母材の強度の70〜95%程度となる。
【0029】
また、例えば、突合せ溶接を行う場合には、ジョイント部材2の下端部に開先を形成する必要があるので、その加工に手間を要する虞があるが、摩擦攪拌接合によれば、開先を形成しなくとも両者を接合することができるので、開先加工の手間を省略することが可能になる。
【0030】
また、本実施形態では、台座1に凹部1bを形成したので、台座1の肉厚が大きいような場合であっても、台座1とジョイント部材2との突合面を摩擦攪拌することが可能になる。なお、台座1の肉厚が小さい場合や大型の回転ツールTを使用できる場合には、凹部1bを省略し、台座1の上面にジョイント部材2の下端面2bを突き合わせた状態で、台座1の下面側から両者を摩擦攪拌接合してもよい。
【0031】
なお、本実施形態では、平板状を呈する台座1を例示したが、台座1の形状等を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、例えば、台座1の下面に道路勾配に対応するための脚部を設けてもよい。
【0032】
本実施形態では、回転ツールTとしては、円柱状を呈するショルダ部の下端面に攪拌ピン(プローブ)を突設してなるものを使用したが、その形状や大きさ等は適宜変更しても差し支えない。
【0033】
本実施形態では、環状の移動ルートに沿って回転ツールTを一周させた場合を例示したが、ジョイント部材2の肉厚が厚い場合など、一周させただけではジョイント部材2の下端面2bの全体を摩擦攪拌接合し得ないような場合には、図9の(a)および(b)に示すように、環状の移動ルートを二回以上周回させることで、ジョイント部材2の下端面2bの全体を摩擦攪拌接合すればよい。この場合には、二周目以降の移動ルートを、一周目の移動ルートの内周側もしくは外周側にオフセットさせる。図9の(a)および(b)においては、一周目の開始点S1から凹部1bの内周側に沿って回転ツールTを周回移動させ、開始点S1に戻った後に、一周目の外周側に設けた二周目の開始点S2に回転ツールTを移動させており、その後は、開始点S2から凹部1bの外周側に沿って回転ツールTを周回移動させている。なお、二周目の開始点S2に戻ったならば、二周目の移動ルート上に設定した終了点Eにおいて回転ツールTを離脱させる。
【0034】
本実施形態では、断面円形のジョイント部材2を例示したが、ジョイント部材2の形態を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、ジョイント部材2の断面形状を、非円形(楕円形や多角形など)にしても差し支えない。この場合、台座1の凹部1bの平面形状は、ジョイント部材2の断面形状に適合するように変更する。
【0035】
また、本実施形態では、筒状を呈するジョイント部材2を例示したが、中実なジョイント部材2を使用しても差し支えない。
【0036】
また、本実施形態では、砲弾状の断面形状を有する支柱本体3を例示したが、支柱本体3の断面形状を限定する趣旨ではない。例えば、図示は省略するが、後壁部33を前壁部31と同形状の断面円弧状とし、断面樽形に成形してもよい。また、本実施形態では、ジョイント部材2を台座1に摩擦攪拌接合した後、支柱本体3をジョイント部材2に外嵌したが、ジョイント部材2を台座1に摩擦攪拌接合した後、ジョイント部材2の内空部に支柱本体3を差し込んでもよい。
【0037】
なお、十分な引抜き耐力が得られる場合には、ジョイント部材2の下端面2bの全体を摩擦攪拌接合する必要はない。
【0038】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、台座1の上面に形成した有底の凹部1bにジョイント部材2の下端部を挿入する場合を例示したが、台座1の上下面に開口する開口部1cにジョイント部材2の下端部を挿入し、かかる状態で摩擦攪拌接合を行ってもよい(図7の(c)参照)。
【0039】
なお、第二の実施形態に係る防護柵用支柱の基本的な構成は、前記した第一の実施形態のものと同様である。
【0040】
図7の(a)に示すように、開口部1cは、平面視円形状を呈している。図7の(b)に示すように、開口部1cは、台座1を上下に貫通している。開口部1cは、例えば、台座1の素となるアルミニウム合金製の板材に切削加工を施すことで形成される。
【0041】
図7の(c)に示すように、ジョイント部材2は、台座1の開口部1cに挿入された状態で台座1に摩擦攪拌接合される。なお、ジョイント部材2の外形は、開口部1cの平面形状に対応する形状(本実施形態では円形)に成形されている。また、ジョイント部材2の下端面2bは、台座1の下面と面一になっている。
【0042】
台座1とジョイント部材2とを摩擦攪拌接合するには、ジョイント部材2の下端部を開口部1cに挿入し、台座1の下面側から摩擦攪拌を行えばよい。
【0043】
具体的には、まず、ジョイント部材2の下端部を開口部1cに挿入し、ジョイント部材2の下端面を台座1の下面と面一にする。次に、台座1の上面とジョイント部材2の外周面に対してMIG溶接により点付溶接wを行い、両者を仮付けする。
【0044】
仮付け溶接が完了したならば、台座1の下面が上になるように図示せぬ架台に固定した後、台座1の下面の適所から高速回転する回転ツール(図示略)を台座1に挿入し、開口部1cの内面壁1dとジョイント部材2の外周面2cとの突合面(境界)をなぞるように設定した環状の移動ルートに沿って回転ツールを移動させる。回転ツールを挿入すると、回転ツールの下側において台座1の母材とジョイント部材2の母材とが塑性流動化して混ざり合い、塑性化領域fが形成される。予め設定した移動ルートの全長に亘って回転ツールを移動させたならば、台座1の下面の適所から回転ツールを離脱させる。
【0045】
なお、本実施形態では、開口部1cの内面壁1dとジョイント部材2の外周面2cとが突き合わされた状態で両者が摩擦攪拌接合されることになるので、支柱本体3に曲げモーメントが作用すると、台座1とジョイント部材2の接合界面(内面壁1dと外周面2cの境界部分)には、主としてせん断力が作用するようになる。
【0046】
以上説明した本実施形態の防護柵用支柱においても、摩擦攪拌接合によって台座1とジョイント部材2とを接合しているので、溶接の場合よりも入熱量を抑えることが可能になる。
【0047】
本実施形態によれば、摩擦攪拌接合すべき部位(開口部1cの内面壁1dとジョイント部材2の外周面2cとの境界)が台座1の下面に現れるようになるので、回転ツールの移動ルートを容易に設定することができ、また、接合後においては、接合界面周辺の接合品質を目視により確認することができる。
【0048】
(第三の実施形態)
前記した実施形態では、台座1と支柱本体3との間にジョイント部材2を介在させた場合を例示したが、ジョイント部材2を省略してもよい。
【0049】
図8の(a)に示すように、第三の実施形態に係る防護柵用支柱Bは、台座11と、台座11に固着される支柱本体(支柱構成材)13と、を具備している。台座11および支柱本体13の材質に制限はないが、本実施形態では、T6処理をしたAl−Mg−Si系合金(JIS規格の6000系アルミニウム合金であって溶体化処理後に焼入れ処理をし、その後に人工時効処理をしたもの)を使用している。
【0050】
台座11は、車道脇に構築された地覆に固定されるものであり、平面視矩形状を呈している。台座11の四隅には、アンカー挿通孔11a,11a,…が形成されている。アンカー挿通孔11aには、地覆に植設されたアンカー(図示略)が挿入される。また、台座11には、図8の(b)に示すように、上面に開口する凹部11bが形成されている。
【0051】
支柱本体13は、円筒状を呈している。本実施形態の支柱本体13は、図8の上下方向を押出方向とする中空押出形材からなる。すなわち、支柱本体13は、その素となる中空押出形材を押出方向に直交する面に沿って切断することで形成される。なお、支柱本体13の下端面は、支柱本体13の中心軸に直交する平面に沿って面一に成形されている。
【0052】
図8の(b)に示すように、支柱本体13は、台座11に摩擦攪拌接合される。台座11と支柱本体13とを接合するには、台座11の凹部11bに支柱本体13の下端部を挿入し、凹部11bの底面と支柱本体13の下端面とを突き合わせたうえで、台座11の下面側から摩擦攪拌接合を施せばよい。
【0053】
以上説明した本実施形態の防護柵用支柱Bによれば、摩擦攪拌接合によって台座11と支柱本体13とを接合しているので、溶接の場合よりも入熱量を抑えることが可能になる。つまり、防護柵用支柱Bによれば、接合部(熱影響部)における材料強度(継手強度)の低下度合いが小さいものとなる。
【0054】
また、防護柵用支柱Bによれば、支柱本体13を台座11に直に接合しているので、ジョイント部材が不要になり、ひいては、材料コストや加工手間を軽減することが可能になる。
【0055】
なお、本実施形態では、円筒状の支柱本体13を例示したが、支柱本体13の形状を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、例えば、図2に示した支柱本体3を台座11に摩擦攪拌接合しても差し支えない。
【符号の説明】
【0056】
A 防護柵用支柱
1 台座
1b 凹部
1c 開口部
2 ジョイント部材(支柱構成材)
3 支柱本体
B 防護柵用支柱
11 台座
11b 凹部
13 支柱本体(支柱構成材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車道脇に固定される台座と、
前記台座に固着される支柱構成材と、を備える防護柵用支柱であって、
前記台座と支柱構成材の下端部とが摩擦攪拌接合されている、ことを特徴とする防護柵用支柱。
【請求項2】
前記台座には、その上面に開口する凹部が形成されており、
前記支柱構成材の下端部は、前記凹部に挿入されており、
前記台座の下面側から施された摩擦攪拌により、前記台座と前記支柱構成材の下端部とが摩擦攪拌接合されている、ことを特徴とする請求項1に記載の防護柵用支柱。
【請求項3】
前記支柱構成材の下端面全体が摩擦攪拌接合されている、ことを特徴とする請求項2に記載の防護柵用支柱。
【請求項4】
前記台座には、その上下面に開口する開口部が形成されており、
前記支柱構成材の下端部は、開口部に挿入されており、
前記台座の下面側から施された摩擦攪拌により、前記台座と前記支柱構成材の下端部とが摩擦攪拌接合されている、ことを特徴とする請求項1に記載の防護柵用支柱。
【請求項5】
前記台座の上面と前記支柱構成材の外周面とが仮付け溶接されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の防護柵用支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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