説明

防錆性アイオノマー塗膜での車体及びそれらの部品のコーティング方法

本発明は、自動車またはトラック車体が車両組み立て工場におけるように組み立てラインに沿って搬送されているときに防錆性アイオノマーコーティング組成物で、自動車もしくはトラック車体、またはそれらの部品をコートする方法に関する。本発明の方法は、車両組み立て工場で現在用いられている電着下塗法の代替として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な滑らかさ、外観、および耐腐食性を有する腐食防止車体を提供するための防錆性アイオノマー塗膜で、自動車およびトラック車体ならびにそれらの部品などの車体をコートする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属自動車基材上への防錆性プライマーの電着は自動車産業で広く用いられている。この方法では、車体または自動車部品などの導電性物品はフィルム形成ポリマーの水性エマルジョンを含む電着性コーティング組成物の浴に浸漬され、そしてこの物品は電着法で電極としての機能を果たす。高電圧電流が次に、所望の厚さの塗膜が物品上に沈着されるまで物品とコーティング組成物に電気接触したカウンター電極との間に流される。典型的な陰極エレクトロコーティング法では、コートされるべき物品が陰極であり、カウンター電極が陽極である。
【0003】
電着法が完了した後、生じた被覆物品は浴から取り出され、脱イオン水でリンスされ、次に典型的には物品上に架橋仕上げを形成するのに十分な温度でオーブン中硬化させられる。いったん電着防錆性プライマーが自動車基材に塗布されたら、車両は次に多層自動車外装剤でトップコートされて耐衝撃性と光沢および像の明瞭さなどの魅力的な美的外観とを提供する。
【0004】
従来の電着法に関連した一つの欠点は、電着フィルムの腐食防止性を損ないそして粗いフィルム表面などの他の有害な影響を生成し得る、ピンホールおよび亀裂などの塗膜欠陥が被覆物品の表面上に形成する傾向があることである。電着コーティング法に必要とされる高電圧浴は大量の電気を使い果たし、そしてまた維持するのに高くつく。さらに、多数の脱イオン水リンスは、かなりの廃棄物処理と水処理の問題をもたらすので望ましくない。
【0005】
従って、高度の耐腐食性と金属表面上でその下にある防錆性前処理剤および自動車外装仕上げ作業中にその上に塗布される塗料の両方への塗料密着性とのような自動車防錆性プライマー仕上げに所望の塗膜特性を依然として維持しながら、エレクトロコーティング法を完全に除外し、そして電着法に取って代わることができる新しいコーティング法および組成物を発見することが求められている。
【0006】
例えば、アキモト(Akimoto)らへの特開2000−198949号公報、ナカタ(Nakata)らへの国際公開第00/50473 A1号パンフレット、および2002年10月1日に発行されたトキタ(Tokita)らに付与された米国特許第6,458,897号明細書に開示されているように、イオン中和エチレン−アクリル酸またはエチレン−メタクリル酸コポリマーから製造されたアイオノマー樹脂の水性分散体を含む様々なアイオノマーコーティング組成物が金属表面の防錆処理のために提案されてきた。しかしながら、これらのいずれも、特に、これらのアイオノマー樹脂分散体用の貯蔵タンク/浸漬タンクとしてエレクトロコート組成物を抜いたエレクトロコート・タンクを用いて、車両組み立てラインに沿って搬送されている車体全体を処理するために用いられてこなかった。
【0007】
アイオノマー樹脂分散体がエレクトロコート浴の好適な商業的代替物であるためには様々な特性がそれから形成された塗膜に必要とされる。良好なエッジ保護、浴安定性および均一性および耐腐食性、水不透過性、フィルム滑らかさならびに使用の容易さが、自動車品質の高性能防錆性塗膜を生成するために望ましい。本発明は、標準的な電気下塗法と比較されたときにコーティング作業の操作と腐食防止のレベルとに悪影響を及ぼすことなく、車両製造業者の工場で連続的に移動する自動車組み立てラインで車体が搬送されているときにアイオノマー樹脂分散体を車体上へコートする方法を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の方法は、自動車仕上げの高性能要件を満たす、防錆性プライマー仕上げを、自動車およびトラック車体、またはそれらの部品などの車体上に形成することができる。本方法はそれ故、従来の電着プライマーと自動車組み立て工場で現在用いられている電気下塗法との好適な商業的代替である。本発明の方法は、亜鉛めっき鋼などの典型的な車体鋼に適用することができるが、それは十分にロバストであるので、直接接触腐食防止を提供するために未処理金属にも適用することができ、それは、現在、ほとんどの車体が屋根区域を除いてどこにも高価なZnめっき(亜鉛めっきされた)鋼で構築されるので、自動車メーカーにはかなりの節約になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
車両がそのオリジナル製造中に車両組み立てラインで搬送されているときに、防錆性アイオノマーコーティング組成物で、自動車もしくはトラック車体などの車体、またはその部品をコートするための方法が提供される。本コーティング法は好ましくは、自動車およびトラック車体のエレクトロコーティングの代替として用いられる。本方法は、
(a)アンモニウムイオンと場合により二価または多価金属イオンとで中和されたアイオノマー樹脂の水性分散体を含むコーティング液を、車体またはその部品などの、自動車基材の少なくとも1つの表面に塗布する工程と、
(b)基材上の前記コーティング液をフラッシュ乾燥または焼成して最初の防錆性プライマー層を形成する工程と、
(c)二価または多価金属、好ましくは亜鉛またはアルミニウムの金属塩溶液を、前記最初の防錆性プライマー層の上に塗布する工程と、
(d)前記被覆基材をフラッシュ乾燥または焼成して硬化した防錆性プライマーコーティング層を形成する工程と、
(e)場合により、プライマーサーフェーサーおよび/またはベースコート/クリアコート仕上げ剤などの自動車トップコート仕上げ剤を、前記硬化した防錆性プライマー層の上に塗布する工程と
を含み、
ここで、自動車基材は、好ましくは、車両組み立てラインに沿ったプライマー塗料塗布プロセスを通して連続移動する。
【0010】
好ましくは、アイオノマー樹脂コーティング液は、エレクトロコーティング組成物を抜いた既存のエレクトロコート・タンクに収容され、標準自動車電着コーティング組成物の完全な代替物として使用される。古いエレクトロコーティング・タンクは好ましくは新しいアイオノマー樹脂用のコーティング浸漬タンクとして用いられる。タンクは好ましくは電極および印加電圧を取り除かれ、好ましくは非電気泳動コーティング法として操作される。金属塩溶液は好ましくは、従来の電着法ではエレクトロコーティング・タンク後に以前は配置されていた既存の水リンスタンクに収容される。
【0011】
それで処理された車体またはそれらの部品などの処理品もまた、本発明の一部を形成する。
【0012】
第1コーティング液として用いられるアイオノマー樹脂分散体は好ましくは、アンモニウムイオンで中和された5〜40重量パーセントの酸含量を有するエチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーと、揮発性液体キャリアとしての水とを含み、第2コーティング液として使用される金属塩溶液は好ましくは、アルカリ土類金属およびZnからなる群から選択された少なくとも1つの二価金属陽イオンと、揮発性液体キャリアとしての水とを含んでなる。
【0013】
前述の概要ならびに好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読まれるときにより良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本開示では、多くの用語および省略形が用いられる。以下の定義が提供される。
【0015】
「アイオノマー」または「アイオノマー樹脂」は、金属水酸化物もしくは酸化物もしくは酢酸塩、水酸化アンモニウム、またはアミンなどの塩基で部分的にまたは完全に場合により中和されたエチレンとアクリルまたはメタクリル酸とのポリマーまたはコポリマーである。生じたポリマーは、あたかも架橋が硬化条件下にポリマー鎖間に形成されるかのように、形成されるかまたは挙動し、強靱な可撓性フィルムを生成することができる。
【0016】
「コポリマー」は、2つ以上のモノマーを含有するポリマーを意味する。
【0017】
本実施例に開示される全ての「分子量」は、標準としてポリスチレンを用いるゲル浸透クロマトグラフィー「GPC」によって測定される。
【0018】
これより、自動車コーティング法の一部として防錆性アイオノマーコーティング液を自動車基材に塗布して防錆性塗膜層をそれの上に形成するための本方法による方法を、以下に詳細に記載される例示的な連続自動車コーティング法に関連して説明する。「連続法」とは、基材が組み立てラインに沿って連続移動することを意味する。しかしながら、この例示的な連続コーティング法は本発明を行うことができる方法の一例として提供されるにすぎず、そして本発明はそれに限定されると考えられるべきではないことが理解されるべきである。当業者は、本発明がまた、例えば、非連続的な、例を挙げると、半連続もしくはインデックスコーティング法、または回分式コーティング法でも用いられ得ることを理解するであろう。さらに、以下の説明は主として自動車車体のコーティングに関するが、本発明はコーティングラインまたはオフラインに沿った任意のポイントで任意の自動車基材上で行われ得ることが理解されるべきである。
【0019】
ここで、図1について言及すると、防錆性プライマーを自動車基材の1つ以上の表面の上に塗布するための、必要に応じて、被覆基材を1つ以上のリンス組成物でリンスするための、そして連続オーブン中で基材をフラッシュ乾燥または焼成するための例示的な連続自動車コーティング法の一部の略図(10として概して示される)が示される。
【0020】
コートすることができる有用な基材には、金属材料、例えば鉄、鋼、およびそれらの合金などの鉄類、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよびそれらの合金などの非鉄金属、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。好ましくは、基材は冷間圧延鋼、溶融めっきした電気亜鉛めっき鋼などの電気亜鉛めっき鋼、アルミニウムまたはマグネシウムから形成される。
【0021】
基材は、自動車、トラック、およびトラクターを含むがそれらに限定されない自動車を製造するための構成部品として使用することができる。基材は、自動車用の、車体(フレーム)、フード、ドア、フェンダー、バンパーおよび/またはトリムなどの、例えば、自動車車体構成部品の形態での、任意の形状を有することができる。本発明のコンセプトを組み入れたコーティング系が先ず、金属車体のコーティングとの関連で一般に説明される。当業者は、本発明を組み入れたコーティング法がまた他の自動車ならびに非自動車構成部品をコートするためにも有用であることを理解するであろう。
【0022】
基材は典型的には先ず、グリース、汚れ、または他の付着物を除去するために清浄化される。これは典型的には、通常の清浄化手順および材料を用いることによって行われる。かかる材料には、商業的に入手可能なそして金属処理法で通常用いられるものなどの、弱アルカリ性または強アルカリ性クリーナーが含まれる。アルカリ性クリーナーの例には、両方ともPPGインダストリーズ(Industries)から入手可能である、ケムクリーン(Chemkleen)163およびケムクリーン177、プレトリートメント(Pretreatment)およびスペシャルティ・プロダクツ(Specialty Products)が挙げられる。かかるクリーナーは一般には、その使用前後に水でリンスする。場合により、金属表面は、アルカリ性クリーナーでのクリーニング後に、そしてその後のコーティング組成物との接触前に水性酸溶液でリンスされてもよい。リンス液の例には、商業的に入手可能な、そして金属処理法に通常使用される希硝酸溶液などの、弱酸性または強酸性クリーナーが挙げられる。
【0023】
金属基材はまた場合によりリン酸処理されてもよい。好適なホスフェート変換コーティング組成物は当該技術分野で公知のもののいずれかであってもよい。例には、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸コバルト、リン酸亜鉛−鉄、リン酸亜鉛−マンガン、リン酸亜鉛−カルシウム、および1つ以上の多価陽イオンを含有してもよい他のタイプの層が挙げられる。リン酸処理組成物は当業者に公知であり、例えば、米国特許第4,941,930号明細書、同第5,238,506号明細書、および同第5,653,790号明細書に記載されている。
【0024】
基材はまた、耐腐食性を向上させるための1つ以上の従来の不動態化組成物と接触させることもできる。かかる不動態化組成物は典型的にはキャリア媒体、通常は水性媒体に分散または溶解させられる。不動態化組成物は、ディッピングもしくは浸漬、吹き付け、間欠的な吹き付け、ディッピングの後に吹き付け、吹き付けの後にディッピング、ブラシ掛けによって、またはロールコーティングによってなど、任意の公知の塗布技法によって金属基材に塗布されてもよい。例示的な不動態化組成物は米国特許第6,217,674号明細書に記載されている。
【0025】
ここで、図1について言及すると、防錆性プライマーコーティング法10の第1部分12において、液体アイオノマー樹脂コーティング組成物14の形態でのコーティング液は、第1工程20で自動車車体18の表面16に塗布される。コーティング組成物14は、例えば、液体アイオノマー樹脂コーティング組成物14を含有する容器または浴22へ自動車車体18を浸けることによって塗布することができる。好ましくは、用いられる容器は、車両組み立て工場での組み立てラインに沿って設置された既存の電着コーティング浸漬タンクである。
【0026】
上に示されたように、既存のエレクトロコーティング・タンクは、本発明を考慮して電着用には用いられないであろう。代わりに、それは、本明細書で電着コーティング組成物および方法の代替または置き換えとして働くアイオノマー樹脂コーティング組成物用の浸漬タンク22として用いられる。液体アイオノマー樹脂コーティング組成物14は上面24を有し、浴22中のその上面24の位置は、浴22中のコーティング組成物14の量と自動車車体18が浴22中にあるかまたはその外にあるかに応じて最高レベルと最低レベルとの間で変化してもよい。液体アイオノマー樹脂コーティング組成物14は、当業者に周知の任意の好適な浸漬コーティング法によって自動車車体18の表面16に塗布することができる。
【0027】
本発明のプライマーコーティング法では、電着法で以前に用いられた導電性陽極または陰極(示されていない)は好ましくはタンクでオフにされ、本質的に何の電圧も、自動車車体上にコーティングフィルムを沈着させるためにこの電極とそのカウンター電極(自動車車体18の導電性表面16)との間にかけられないであろう。代わりに、本発明では、自動車車体は浸漬タンク22に入るにすぎず、液体アイオノマー樹脂コーティング組成物との接触後に、コーティング組成物14の付着性フィルム26が自動車車体18上に沈着される。フィルム沈着が行われる条件は、当業者に明らかであろうように、組み立て工場での環境条件、液体コーティング材料の性質、および付着性コーティングフィルムの所望の最終フィルム厚さに応じて変化することができる。自動車車体18を浸漬タンク22中に、大気圧で、18〜60℃の浴温で、約1〜300秒間、より好ましくは約1〜60秒間保つことが一般に望ましい。
【0028】
当然ながら、防錆性アイオノマー処理は、スプレー、カーテン、フローコーター、ロールコーター、ブラシコーティングなどの任意の他の公知方法によって行うことができる。自動車用途では、上記のようなディッピング法が一般に好ましい。
【0029】
一般に、任意のタイプの従来のアイオノマー樹脂コーティング組成物を本発明の実施に使用することができる。好ましくは、アイオノマー樹脂コーティング組成物14は、水中のアイオノマー樹脂の水性分散体を含む。アイオノマー樹脂コーティング組成物はまた、水と、必要に応じて凝集溶剤との混合物を含み得る水性媒体に分散させることもできる。アイオノマー樹脂コーティング組成物はまた好ましくは、全ての成分が分散された状態の一成分系として供給され、浸漬タンクへの組み入れ前に水性媒体中で少なくとも部分的に中和される。
【0030】
本明細書で使用されるアイオノマー樹脂コーティング組成物は一般に、エチレン−不飽和カルボン酸コポリマーなどの、1つ以上のフィルム形成アイオノマー樹脂の水性分散体と、そのための1つ以上の中和剤とを含む。組成物中のフィルム形成材料の量は一般に、組成物の総重量固形分基準で約5〜50重量パーセントの範囲である。
【0031】
水性分散体の成分に関しては、アイオノマー樹脂は典型的には、主に炭化水素からなるポリマー主鎖を含み、そして側鎖にカルボキシル基を有するポリマーであって、カルボキシル基の少なくとも一部が陽イオン中和剤で中和されているポリマーである。好ましくは、本発明に用いられるアイオノマー樹脂は、コポリマーに含有されるカルボキシル基の少なくとも一部を多価金属陽イオン、アルカリ金属陽イオン、アンモニウムイオン、または上記のいずれかの混合物のいずれかで中和することによって得られる部分中和生成物を含む、エチレン−不飽和カルボン酸コポリマー(「エチレン−酸コポリマー」)である。
【0032】
アイオノマー樹脂の主要骨格を構成するエチレン−不飽和カルボン酸コポリマーは、エチレンと不飽和カルボン酸とのランダムコポリマーかまたは不飽和カルボン酸がポリエチレンを含む主鎖にグラフト結合しているグラフトコポリマーであってもよい。特に、エチレン−不飽和カルボン酸ランダムコポリマーが好ましい。さらに、このエチレン−不飽和カルボン酸コポリマーは、一種類の不飽和カルボン酸のみか、または2種類以上の不飽和カルボン酸を含有してもよい。
【0033】
エチレン−不飽和カルボン酸コポリマーの成分である不飽和カルボン酸には、3〜8個の炭素原子を有する不飽和カルボン酸などが含まれる。3〜8個の炭素原子を有する不飽和カルボン酸の具体的な例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、メサコン酸、グルタコン酸、ナディック酸(nadic acid)、メチルナディック酸、テトラヒドロフタル酸、およびメチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。それらのうち、アクリル酸およびメタクリル酸がフィルム形成特性の観点から好ましい。
【0034】
さらに、エチレン−不飽和カルボン酸コポリマーは、エチレンおよび不飽和カルボン酸に加えて軟化モノマーなどの第3成分を主要骨格中に含有してもよい。この第3成分には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよびイソブチル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル、ならびに酢酸ビニルなどのビニルエステルが含まれる。これらのモノマーが含まれる場合、より多い量はコーティングフィルムの融点を低下させ、耐熱性を許容できないものにする傾向があるので、含量は20重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲にセットされることが一般に望ましい。好ましくは、エチレン酸コポリマーはダイポリマー(第3コモノマーなし)である。
【0035】
エチレン−不飽和カルボン酸コポリマーに関しては、水性分散体の製造可能性、分散体安定性および水性分散体で得られるコーティングフィルムの物理的特性を考慮するとき、エチレン−不飽和カルボン酸コポリマーが5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%、より好ましくは15〜25重量%の不飽和カルボン酸含量を有することが一般に望ましい。上述の範囲より少ない量で不飽和カルボン酸を含有するコポリマーを使用する場合には、良好な分散体安定性を有する組成物を得ることは困難である。上述の範囲より多い量で不飽和カルボン酸を含有するコポリマーを使用する場合には、被覆フィルムの防水性(水の不透過性)および機械的強度は低下する。
【0036】
エチレン−不飽和カルボン酸コポリマー上のカルボキシル基の少なくとも一部は、金属水酸化物もしくは酸化物、アンモニア、水酸化アンモニウム、もしくはアミン、またはそれらの任意の混合物などの塩基で中和されてカルボン酸陰イオンと様々な金属陽イオン、およびアンモニウムイオンとの会合を含む架橋結合を形成する。耐水性およびフィルム品質に特に優れたコーティングフィルムを得るために、二価または多価金属陽イオンとアンモニウムイオンとの混合物を中和剤として使用することがより望ましい。フィルム中に残る金属イオンは、それから形成された塗膜に所望の耐腐食性を提供する。アンモニウムイオンは加熱時にアンモニアとして消失し、こうして、特にアルカリ金属イオンと比較して、所望の水不透過性を提供する。
【0037】
本明細書で使用することができる二価金属陽イオンに関しては、MgおよびCaなどのアルカリ土類金属、またはZnが好ましい。使用することができる多価金属陽イオンに関しては、Alが一般に好ましい。それらのうち、Znを有するアイオノマー樹脂が、製造が容易であるという点で好ましい。
【0038】
金属陽イオンは最終フィルム中に残るので、金属イオンの点から中和のレベルを検討することが好ましい。当業者によって理解されるであろうように、金属による中和の好ましい程度、すなわち、金属イオン対カルボン酸陰イオンの好ましい比は、当然ながら、エチレン−酸コポリマーと用いられるイオンと所望の特性とに依存するであろう。しかしながら、金属陽イオンで中和されるカルボキシル基対エチレン−不飽和カルボン酸コポリマーが側鎖上に有するカルボキシル基の全ての好ましい割合、すなわち、金属による中和の程度は一般に、優れた耐腐食性を有する塗膜が得られるように、約10〜100%、好ましくは20〜80%、最も好ましくは25〜50%である。
【0039】
加えて、上記の金属陽イオンを含有する化合物は、単独で浴22に使用される場合、水性アイオノマー樹脂分散体を凝固させ、そして品質フィルムの形成を妨げるであろうことが理解されるべきである。それ故、アイオノマー分散体の凝固を回避するために、2つの順次浴、すなわち、上述のような浴22と本明細書で以下にさらに説明される別の浴32とが用いられる2コート法または2浸漬法を用いることが本発明の方法では一般に好ましい。第1浴22は、場合により上記金属イオンの1以上をカルボン酸基に関して好ましくは10〜90モル比の範囲で含有してもよいアンモニア性分散体から形成された水性アイオノマー樹脂分散体を含有することが好ましい。基材が上記アンモニア性分散体でコートされた後、第2コーティング工程で、それはその後、第2浴32に含有される金属塩溶液で、好ましくは浸漬コーティングによってコートされて最終硬化コーティングフィルムを形成する。第2浴に使用される金属は、第1浴に場合により使用される金属と同じものかまたは異なるものであってもよい。さらに、任意の一価、二価、または多価金属が、この金属が水溶液で安定であるという条件で第2浴に使用されてもよい。
【0040】
本明細書の第1浴に使用されるアイオノマー樹脂の製造は、当該技術分野で周知の様々な方法、例えば、エチレンと、不飽和カルボン酸と、必要に応じて使用される第3成分とを高圧ラジカル重合法によって共重合させ、得られたエチレン−不飽和カルボン酸コポリマーのカルボキシル基をカチオン性化合物で中和する方法か、またはポリエチレン上へ不飽和カルボン酸をグラフト重合させ、得られたグラフトコポリマーのカルボキシル基をカチオン性化合物で中和する方法に従って行うことができる。さらに、この製造は、所定の成分を押出機中へ供給し、溶融混練して反応を行うことによって行われてもよく、または水もしくは適切な有機溶媒中で行われてもよい。
【0041】
エチレン−不飽和カルボン酸コポリマーを製造するよりもむしろ、デラウェア州ウィルミントンのデュポン(DuPont,Wilmington,Delaware)によって販売される、ポリ(エチレン−コ−メタクリル酸)コポリマーである、ヌクレル(Nucrel)(登録商標)を出発原料として使用することができる。この材料は典型的にはアンモニア水中にあらかじめ分散されて販売されている。
【0042】
第1浴の最初のコーティングとして使用されるアンモニア性分散体をそれから製造するために、樹脂を中和するために使用することができる、所望のアンモニウムイオンを有する化合物は、アンモニア(NH3)または水性アンモニア(本明細書では「水酸化アンモニウム」または「アンモニア水」とも呼ばれる)である。
【0043】
第1浴または第2浴を製造するために使用することができる成分に関しては、使用することができる所望の多価金属陽イオンを有する化合物には、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、またはアルミニウムの酸化物もしくはそれらの水酸化物または酢酸塩、硫酸塩および硝酸塩などの水溶性塩が含まれる。
【0044】
より具体的には、第1浴に使用される最初のコーティング組成物は、アイオノマー樹脂と、水性アンモニア(水酸化アンモニウム)などと水とを容器へ導入し、次に混合物を、アイオノマー樹脂の溶融温度より上、典型的には約100〜200℃の温度で、アイオノマー樹脂を加熱し、溶融させ、そして均一に分散させるのに十分な時間、好ましくは約10分〜2時間撹拌または振盪することによって製造することができる。第1浴用の分散体はまた、過剰量の水性アンモニアで(すなわち、カルボン酸基を中和するために必要とされるであろう量を超えた量のアンモニアを使用して)好ましくは製造される。アンモニア対カルボン酸のモル比は一般には約2〜約6の範囲にある。第2浴の金属塩硬化溶液は、酢酸亜鉛、酢酸カルシウムなどのような、上記の金属塩のいずれかを水に溶解させることによって製造される。
【0045】
第1浴で使用することができる自動車車体の防錆性コーティングのための好適な水性分散体は、18〜30重量%の酸含量とコポリマーのカルボキシル基を基準として75〜600モル%アンモニアとを有するエチレン−酸コポリマーの水性分散体を含む。第2浴で使用することができる好適な金属塩硬化溶液は、コポリマーのカルボキシル基を基準として25〜50モル%金属陽イオン、好ましくは亜鉛陽イオンを含む。
【0046】
防錆性塗膜のための好適な水性分散体はまた好ましくは、約0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下の範囲の分散粒子のその平均直径と10〜45重量%、好ましくは15〜35重量%、より好ましくは15〜30重量%の範囲のその固体含量濃度とを有する。
【0047】
好適な水性分散体は典型的にはまた、良好な作業性のために塗布時に7以上のpHと約30〜2,000mPa・s、特に約50〜1,500mPa・sの粘度とを有する。
【0048】
様々な他の添加剤を、本発明の目的が損なわれない範囲内で、必要に応じて、追加の塗膜特質を提供するために最初の分散体へブレンドすることができる。例えば、水溶性ポリエステルポリオール、アクリル樹脂、およびアミノ樹脂などのような水溶性の共有結合性硬化剤などの様々な他のフィルム形成および/または架橋樹脂。水溶性アミノ樹脂は、塗膜の強度を向上させるために特に使用され、その例には、水溶性メラミン樹脂、ヘキサメトキシメラミン、メチロール化ベンゾグアナミン樹脂およびメチロール化尿素樹脂が挙げられる。他の成分の例には、粘度を調整するための有機および無機増粘剤、安定性を向上させるための界面活性剤、水溶性の多価または一価金属塩および他の防錆助剤、気相腐食防止剤、かび防止剤、殺菌剤、殺生物剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、発泡剤、レオロジー調整剤、顔料、充填剤、ならびに増量剤が挙げられる。前述の材料に加えて、自動車用途に十分な耐水性を有する(すなわち、金属の腐食を引き起こし得る試剤を通さない)コーティングフィルムを得るために、分散体中にジシクロヘキシルアミンなどの少なくとも1つの非水溶性の気相腐食防止剤を含めることが一般に望ましい。
【0049】
基材に塗布される最終的な塗膜の厚さは、基材のタイプおよび基材の意図される使用、すなわち、基材が置かれる環境および接触材料の性質のような因子に基づいて変化することができる。一般に、塗膜は、基材上に形成される塗膜の最終厚さが約0.1〜20μmの範囲であるように、より好ましくは0.3〜10μmの厚さにコートするように塗布される。
【0050】
図1について再び言及すると、浴22中の最初のコーティング組成物14は、コーティング組成物の固形分が浴22の底部に沈降するのを防止するポンプP1を有するリサイクリング系28によってなど、従来方式でリサイクルすることができる。さらに、コーティング組成物14の温度は、パイプまたは導管によってなど、任意の従来方式で浴22と流体連通した熱交換器(示されていない)を用いて制御されてもよい。
【0051】
浴22からの最初のコーティング組成物14はまた、従来の限外濾過系(示されていない)と流体連通して可溶性不純物を除去し、濾過された材料はアイオノマー浴22にリサイクルされてもよい。限外濾過系では、コーティング組成物14は、水および小さい粒子、例えば、塩などの約1,000Mw未満のものを通す膜にわたって流れる。限外濾過物または「透過水」、すなわち、膜を通過するコーティング組成物の部分は、さらなるその後のリンス操作(用いられる場合)に使用することができ、透過水の一部、例えば、約20重量パーセントは廃棄されてもよい。コーティング組成物の「非浸透」部分は、例えば、1つ以上の導管またはパイプを通して浴22中へ元に導かれる。
【0052】
アイオノマーコーティング浴22から搬送した後、被覆自動車車体18は好ましくは、空気に曝されて過剰の沈着コーティング組成物を自動車車体18の内部空洞および表面から浴22中へ戻るように排水させる。
【0053】
基材上に防錆性アイオノマーコーティング組成物をコートした後、試剤は自然乾燥(すなわち、周囲温度またはわずかに高められた温度条件下に、好ましくは約10℃〜約40℃の範囲の空気温度でフラッシュ乾燥)させられてもよいが、自動車組み立てラインに沿ってアイオノマー樹脂浸漬タンク後に典型的には設置された従来の連続オーブン30中で焼成を行うことが好ましい。オーブン焼成温度は約60〜250℃である。被覆自動車車体18は好ましくは連続オーブン30に搬送され、良好な耐腐食性を有する塗膜を含む防錆性層を形成することができるように、上記の温度範囲に約1秒〜30分間加熱されて揮発性成分を追い払う。
【0054】
焼成工程30と好ましくは室温への十分な冷却との後に、被覆自動車車体18は、第1工程20で塗布されたアイオノマー塗膜をさらに硬化させるために金属塩溶液34を含有する第2容器または浴32に好ましくは搬送される。好ましくは、この工程でコーティング浸漬タンクとして用いられる容器は、浸漬タンクへ変換された、車両組み立て工場で組み立てラインに沿って設置された既存の電着コーティング・リンスタンクである。前述したように、様々なイオン塩溶液をこの工程に使用することができるが、Zn、CaまたはAlを含有するものが一般に好ましい。これらは、酢酸塩、硫酸塩または硝酸塩などの単塩であることができる。金属塩溶液34は上面36を有し、浴32中のその上面36の位置は、浴32中の塩溶液34の量と自動車車体18が浴32中にあるかまたはその外にあるかに依存して最高レベルと最低レベルとの間で変化してもよい。金属塩溶液は好ましくは、液体金属塩溶液を含有する第2容器または浴32へ自動車車体18を浸漬させることによって塗布されて硬化した防錆性アイオノマー・コーティングフィルムを車両の表面上に形成する。
【0055】
アイオノマー分散体の塗布と同様に、当業者に周知の任意の好適な浸漬コーティング法を用いることができる。当然ながら、金属塩溶液処理はまた、スプレー、カーテン、フローコーター、ロールコーター、ブラシコーティングなどのような任意の他の公知方法によって行うこともできる。自動車用途では、上記のようなディッピング法が一般に好ましい。
【0056】
次に、被覆自動車車体は、金属塩溶液を含有する第2タンク32に搬送され、第2浴32は、金属がフィルム中へ拡散し、そしてポリマーフィルム中の残存酸官能基と架橋することを可能にする温度に維持される。一般に、第2浴温度は好ましくは、大気圧で、約70〜90℃に維持される。自動車車体18を第2浸漬タンク32中に約1〜40分間保つことが一般に望ましい。これは、上記の一浸漬法と、および第2浸漬にかけられなかったアイオノマー塗膜と比較して、塗膜の耐腐食性および耐衝撃性のかなりの増加をもたらす極めて強靱な硬化塗膜を生成する。
【0057】
浴32中の金属塩溶液はまた、コーティング組成物の固形分が浴32の底部に沈降するのを防止するポンプP2を有するリサイクリング系38によってなど、従来方式でリサイクルすることもできる。さらに、塩溶液34の温度は、パイプまたは導管によってなど、任意の従来方式で浴32と流体連通した熱交換器(示されていない)を用いて制御されてもよい。
【0058】
第2浴32中の金属塩溶液34はまた、従来の限外濾過系(示されていない)と流体連通して可溶性不純物を除去し、そして濾過された材料は塩浴32にリサイクルすることもできる。限外濾過系では、塩溶液34は、水および小さい粒子、例えば、塩などの約1,000Mw未満のものを通す膜にわたって流れる。限外濾過物または「透過水」、すなわち、膜を通過する塩溶液の部分は、さらなるその後のリンス操作(用いられる場合)に使用することができ、透過水の一部、例えば、約20重量パーセントは廃棄されてもよい。塩溶液の「非浸透」部分は、例えば、1以上の導管またはパイプを通して浴32中へ元に導かれる。
【0059】
金属塩溶液浴32から搬送した後、被覆自動車車体18は好ましくは、空気に曝されて過剰の沈着コーティング組成物が車体18の内部空洞および表面から浴32中へ戻るように排水することを可能にする。
【0060】
金属塩を自動車基材上に塗布した後、試剤は自然乾燥(すなわち、周囲温度またはわずかに高められた温度条件下に、好ましくは約10℃〜約40℃の範囲の空気温度でフラッシュ乾燥)させられてもよいが、自動車組み立てラインに沿ってアイオノマー樹脂浸漬タンク後に典型的には設置された従来の連続オーブン40中で焼成を行うことが好ましい。オーブン焼成温度は約60〜250℃である。被覆自動車車体18は好ましくは連続オーブン40に搬送され、良好な耐腐食性を有する塗膜を含む防錆性層を形成することができるように、上記の温度範囲に約1秒〜30分間加熱されて揮発性成分を追い払う。
【0061】
基材上に形成される防錆性塗膜層の厚さは、防錆処理金属製品の使用の目的、使用される防錆処理剤、オーバーコート塗料の種類、厚さなどに応じて適切に選択され、それらに特に限定されない。一般に、コーティング後の防錆処理剤の乾燥時に防錆性層での破損を引き起こすことなく十分な防錆剤能力を示すために、約0.3〜2.5ミル(7〜60μm)、好ましくは0.5〜1.5ミル(12〜36μm)の厚さにコートすることが好ましい。
【0062】
被覆自動車車体は次に、結合していない金属と他の不純物と任意の過剰なコーティングとを表面から除去するためのリンス工程42に搬送することができる。リンス工程42は、必要に応じて、1以上のスプレーおよび/または浸漬リンス操作を含むことができる。好ましくは、被覆自動車は、リンス組成物46、好ましくは脱イオン水または水道水が自動車車体18の被覆表面にスプレー塗布されるスプレーリンスタンク44を越えて搬送される。過剰のスプレー組成物は、その後のスプレー操作のために、例えば、再循環ポンプP3を有する再循環系48による再循環のために下方リンスタンク中へ排水させられる。被覆自動車車体は次に、スプレーリンス区域から搬出され、過剰のリンス組成物は再使用のためにタンク中へ元に排水させられる。用いられるリンスタンクは、従来の電着法で以前に用いられてきた車両組み立て工場で車両組み立てラインに沿って設置された他の既存のリンスタンクの1つであってもよい。
【0063】
本発明の方法はまた、車両がその製造中にさらに手を加えられる前に仕上げを周囲温度に冷却するためのその後の冷却工程(示されていない)を含んでもよい。
【0064】
自動車車体上にこのように形成された防錆性塗膜層は、優れた耐腐食性およびまた自動車プライマーなどのオーバーコート塗料、充填剤またはベースコート塗料への良好な密着性を有する。
【0065】
本発明の防錆コーティング法はまた、金属が自動車およびトラック車体などの、車体を構築するために使用されるときに自動車産業で特に望ましい、めっきされていない金属上で特に有用である。
【0066】
本発明の防錆処理方法では、防錆性プライマーコーティング層が乾燥させられた後に、それは伝統的にプライマーサーフェーサーでオーバーコートされるかまたはトップコートされて表面欠陥を含まない滑らかなフィルムを提供し、その上にベースコート/クリアコート仕上げ剤などの自動車トップコート仕上げ剤を塗布することができる。
【0067】
本明細書で形成された防錆性塗膜層上にコートされるオーバーコート塗料は、任意の自動車プライマーサーフェーサー、充填剤または着色ベースコート塗料もしくはベースコート/クリアコート塗料であることができる。本発明の方法に用いられるプライマーサーフェーサー、充填剤、またはベースコートもしくはベースコート/クリアコート組成物の性質は、決して決定的に重要であるわけではない。多種多様な商業的に入手可能な自動車プライマーサーフェーサー、充填剤、ベースコート、クリアコートのいずれも本発明に用いられてもよい。
【0068】
典型的には、プライマーサーフェーサーが次に、表面を滑らかにし、そして滑らかで平らな仕上げへの研磨を可能にするのに十分に厚い塗膜を提供するために塗布され(示されていない)、次に焼成される。次にトップコート系(示されていない)が、時々単着色コートとして、現在、より多くの場合にはソリッドカラーのまたはフレーク顔料入りの有色素ベースコートとして塗布され、引き続き環境または風化作用への長期にわたる暴露時にさえ車両上の仕上げの魅力的な外観品質を保護し、そして保持するために、透明な保護クリアコートが塗布される。
【0069】
「ウェット−オン−ウェット」塗布を用いてベースコートの上に無色透明なトップコートを塗布する、すなわち、クリアコートがベースコートを硬化させるかまたは完全に乾燥させることなくベースコートに塗布されることが自動車産業では特に慣例になった。被覆基材は次に、ベースおよびクリアコートの同時硬化を可能にするために所定の時間加熱される。
【0070】
吹き付け、静電塗装、高回転静電気ベルなどのような従来のコーティング法を、これらの3つのオーバーコーティングのいずれかを塗布するために用いることができる。全ての3つの塗膜を塗布するための好ましい技法は、これらの技法が典型的には最近の自動車およびトラック組み立て工場で用いられるので、静電気強化を伴うかまたは伴わない空気噴霧吹き付け、および高速回転噴霧静電気ベルである。
【0071】
プライマーサーフェーサーコーティング材料が本発明に従って自動車車体に塗布されるとき、上記技法のいずれも用いることができる。
【0072】
プライマーサーフェーサーコーティング材料は、約0.3〜2.5ミル(7〜60μm)、好ましくは0.5〜1.5ミル(12〜36μm)の厚さを有する乾燥被覆層を好ましくは形成するが、それは意図される使用に応じて変化してもよい。
【0073】
塗布後のプライマーは典型的には、周囲温度でフラッシュ乾燥させられ、次にオーブン中100〜150℃で約15〜30分間焼成されて基材上に硬化したプライマーサーフェーサー層を形成する。
【0074】
プライマーサーフェーサー層が自動車車体上に形成された後、この層は冷却され、必要に応じて研磨されてもよい。次に、ソリッドカラー、金属フレーク、真珠光沢および/または他の効果顔料を含有してもよい着色ベースコーティング材料と透明なクリアコーティング材料とがウェット−オン−ウェット方式で典型的には塗布されてベースコートされた層とクリアコートされた層とを形成する。
【0075】
ベースコーティング材料は、0.1〜1.6ミル(3〜40μm)の乾燥厚さを有するように空気−静電気スプレーコーティングまたは回転噴霧静電気ベルを用いてプライマーサーフェーサーコーティング材料のように塗布されてもよい。ベースコーティングは典型的には、自動車車体がクリアコートされる前に周囲温度またはわずかに高められた温度で短期間フラッシュ乾燥させられる。
【0076】
クリアコートされる材料が次に、粗さの平滑化または光沢色顔料の存在のために起こる光沢の目的のために、およびベースコートされた層の表面を保護するためにベースコートされた層の上に塗布される。クリアコートされる材料は、回転噴霧静電気ベルを用いて、ベースコーティング材料のように塗布されてもよい。
【0077】
クリアコートされた層は、約1.0〜3.0ミル(25〜75μm)の乾燥厚さを有するように好ましくは形成される。
【0078】
上記のように得られたベースコートおよびクリアコートは次に、オーブン中100〜150℃で約15〜30分間同時に硬化させられて自動車車体上に所望の多層仕上げを形成する。
【0079】
本発明の方法はまた、車両がその製造中にさらに手を加えられる前に仕上げを周囲温度に冷却するためのその後の冷却工程(示されていない)を含んでもよい。
【0080】
乾燥し、そして硬化した複合多層仕上げの全厚は一般に約40〜150μm(1.5〜6ミル)、好ましくは60〜100μm(2.5〜4ミル)である。
【0081】
本発明の防錆コーティング法によって得られた防錆処理自動車車体は、優れた耐水性と防錆特性とを有する防錆性層を含有し、それ故自動車用の部品として好適に使用することができる。
【0082】
本発明の方法から形成された塗膜は、優れた防錆特性を有し、処理または未処理金属への高レベルの密着性を提供し、強靱で、可撓性で、耐ストーン・チップ性であり、水分および他の腐食剤を比較的通さず、自動車仕上げに望ましい特性を有する防錆性塗膜を提供することができる。
【0083】
以下の実施例は本発明を例示する。全ての部および百分率は、特に明記しない限り重量基準である。
【実施例】
【0084】
実施例1
防錆処理金属プレートの製造
冷間圧延鋼パネル(3インチ×5インチ×0.32インチ、合金:ACTラボラトリーズ社、ミシガン州ヒルスデール(ACT Laboratories,Inc.,Hillsdale MI)から入手可能な、APR10288C)をアセトンおよび脱イオン水で洗浄し、次に風乾させた。ヌクレル(Nucrel)(登録商標)アイオノマー樹脂の分散体を、12.5%分散体を得るために1500mlの25%w/wヌクレル・ミケム・プライム(Nucrel Michem Prime)(登録商標)4983R(マイケルマン社、オハイオ州シンシナチ(Michelman,Inc.,Cincinnati,OH)から入手可能なアンモニア水中25%固形分でのエチレン/21%アクリル酸コポリマー)を1500mlの脱イオン水で12.5%w/wに希釈することによって調製した。希釈分散体を、気泡を除去するために室温で1時間放置した。次に21個の清浄化したスチールパネルを希釈した分散体に浸漬させ、次にオーブン中90℃で10分間焼成した。パネルを各7個の3群に分けた。一群は、酢酸亜鉛の水性5%w/w溶液に90℃で10分間浸漬させた。別の群は、水性5%w/w酢酸カルシウム溶液に90℃で10分間浸漬させた。最後の群は、ポスト浸漬で処理しなかった。
【0085】
試験結果
耐腐食性は、試験方法ASTM B117に従って測定した。パネルをASTM B117に従って330時間の塩スプレーチャンバーに曝した。ポスト浸漬させなかった7個のパネルは大きい錆を示した。ポスト浸漬させたパネルは、少しの小さな錆スポットを示し、これは耐腐食性の著しい改善である。
【0086】
本発明の方法および組成物の構成要素の様々な他の修正、変更、追加または置き換えは、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明は、本明細書に記載された例示的実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】車両製造中に連続的に移動する組み立てラインでアイオノマー樹脂コーティング組成物を自動車基材に塗布するための本発明による例示的な方法の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アンモニウムイオンと場合により二価または多価金属イオンとで中和されたアイオノマー樹脂の水性分散体を含むコーティング液を、車体またはその部品などの、自動車基材の少なくとも1つの表面に塗布する工程と、
(b)前記基材上の前記コーティング液をフラッシュ乾燥または焼成して最初の防錆性プライマー層を形成する工程と、
(c)二価または多価金属の金属塩溶液を、前記最初の防錆性プライマー層の上に塗布する工程と、
(d)前記被覆基材を約60℃〜250℃の温度でフラッシュ乾燥または焼成してさらに硬化した防錆性プライマーコーティング層を形成する工程と、
(e)場合により、プライマーサーフェーサーおよび/またはベースコート/クリアコート仕上げ剤などの自動車トップコート仕上げ剤を、前記硬化した防錆性プライマー層の上に塗布する工程と
含む自動車基材に防錆性プライマーコーティングを塗布するためにコーティング方法。
【請求項2】
前記基材が自動車もしくはトラック車体またはその部品である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自動車基材が、それが自動車組み立てラインに沿って移動するときにプライマー塗料塗布プロセス工程(a)〜(d)を通して連続移動する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)における前記金属コーティング液が金属陽イオンを含まないアイオノマー樹脂の水性分散体である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属塩溶液がZnおよびCaからなる群から選択された二価金属の塩溶液を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アイオノマー樹脂が10〜35重量%の酸含量を有するエチレン−不飽和カルボン酸コポリマーである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アイオノマー樹脂が10〜35重量%の酸含量を有するエチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーである請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記二価金属イオンがZnから選択される請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記分散体が10〜45重量%の固形分含量を有する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分散体が非水溶性の気相腐食防止剤をさらに含有する請求項5に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)における前記金属コーティング液がアンモニアと1以上の二価金属イオンとの混合物によって部分中和されたアイオノマー樹脂の水性分散体である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液温度が70℃〜90℃である請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記表面が最終焼成後に水でリンスされる請求項5に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によってコートされた防錆処理自動車基材。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によってコートされた防錆処理自動車またはトラック車体基材。

【図1】
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【公表番号】特表2009−516587(P2009−516587A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542350(P2008−542350)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/044528
【国際公開番号】WO2007/061765
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】