説明

防雪柵用整流装置

【課題】 吹きつける風の方向を支柱の長軸方向を法線とする平面に投影した方向成分と防雪板の法線との角度が大きくても、長い視程を確保できる防雪柵用整流装置を提供すること。
【解決手段】 防雪柵用整流装置1は、間隔を置いて立設された支柱21の間に防雪板22を架設した防雪柵2の風上側に設けられる枠体11と、枠体11に取り付けられ、防雪板22に吹きつける風の方向を変える整流板12とを備え、整流板12は、防雪板22に対して斜めに吹きつける風の方向を防雪柵2の上端近傍へと変えることができるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や鉄道等に沿って設けられた防雪柵に取り付けられる整流装置に関するものであり、特に防雪板に対して斜めに吹きつける風に対応できる整流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冬期における道路等への積雪量を軽減しかつ視程障害を緩和するために、道路等に沿って設けられた防雪柵が知られている。
このような防雪柵として、特許文献1に記載の防雪柵100がある。
【0003】
防雪柵100は、図9に示すように、道路に沿って所定間隔ごとに支柱101を立設し、支柱101間に防雪板102を配置したものである。
防雪板102の上部を整流部103とし、整流部103に路面上に向けて上向き傾斜の整流板104を設け、整流板104は上下に配置した複数枚で構成されている。
【0004】
上向きに傾斜する整流板104が吹雪を吹き上げて遠くへ流れるようにすることができるので、道路の路面等における視程を確保するものである。
【特許文献1】特開2005−290911
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような防雪柵100は、図10(a)の斜視図に示すように吹きつける風105の方向を支柱101の長軸方向を法線とする平面に投影した方向成分105Aと防雪板の法線106との角度θ3が45度程度以下である場合、図11(a)の断面図に示すように整流板104が吹雪を吹き上げて遠くへ流すことができるので、道路の路面等における視程が長くなる。
しかしながら、防雪柵100は、図10(b)の斜視図に示すように吹きつける風105の方向を支柱101の長軸方向を法線とする平面に投影した方向成分105Aと防雪板の法線106との角度θ3が45度程度以上である場合、図11(b)に示すように整流板104が吹雪を吹き上げて遠くへ流すことができなくなり、道路の路面等における視程が短くなるという問題がある。
さらに、整流板104が吹雪を吹き上げて遠くへ流すことが出来ない場合、路面上に空気の渦が発生しやすくなる。空気の渦が発生すると路面に積もっている雪が舞い上がってしまい、さらに道路の路面等における視程が短くなるという問題がある。
【0006】
上記点より本発明は、吹きつける風の方向を支柱の長軸方向を法線とする平面に投影した方向成分と防雪板の法線との角度が大きくても、長い視程を確保できる防雪柵用整流装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の防雪柵用整流装置は、間隔を置いて立設された支柱の間に防雪板を架設した防雪柵の風上側に設けられる枠体と、枠体に取り付けられ、防雪柵に吹きつける風の方向を変える整流板とを備え、整流板は、防雪板に対して斜めに吹きつける風の方向を防雪柵の上端近傍へと変えるようになっている。
【0008】
請求項2の防雪柵用整流装置は、枠体が防雪柵の道路と反対側に設けられるようになっている。
【0009】
請求項3の防雪柵用整流装置は、枠体が防雪柵の支柱に取り付けられるようになっている。
【0010】
請求項4の防雪柵用整流装置は、整流板が防雪板から所定間隔空けた位置に設けられている。
【0011】
請求項5の防雪柵用整流装置は、整流板が枠体に着脱自在になっており、枠体が整流板を外した状態では支柱に沿って折りたたみ可能になっている。
【0012】
請求項6の防雪柵用整流装置は、整流板が山と谷が平行に並んでいる波板からなり、山及び谷の延びる方向の延長線が防雪柵の上端近傍へ向かうように枠体に取り付けられている。
【0013】
請求項7の防雪柵用整流装置は、整流板の山及び谷の延びる方向を支柱の長軸方向を法線とする平面に投影した第一方向成分は、地面に対して略垂直な防雪板の法線と所定の角度をなしている。
【0014】
請求項8の防雪柵用整流装置は、整流板の山及び谷の延びる方向を防雪板の幅方向を法線とする平面に投影した第二方向成分は、地面に対して略垂直な防雪板の法線と所定の角度をなしている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の防雪柵用整流装置によれば、整流板が防雪板に対して斜めに吹きつける風の方向を防雪柵の上端近傍へ変えることによって、風とともに雪を吹き上げて遠くへ流すことができるので、道路の路面等における視程を長くすることができる。
【0016】
請求項2の防雪柵用整流装置によれば、枠体が防雪柵の道路と反対側に設けられているので、走行の邪魔になることや、コントロールを失った車等が防雪柵用整流装置に衝突して被害が大きくなることを防止できる。
【0017】
請求項3の防雪柵用整流装置によれば、枠体は、防雪柵の支柱に取り付けられることによって、防雪柵用整流装置が防雪柵の支柱によって強固に支持されるので、防雪板に対して斜めに吹きつける強い風にも対応することができる。
【0018】
請求項3の防雪柵用整流装置によれば、整流板は、防雪板から所定間隔空けた位置に設けられていることによって、整流板が吹きつける風の方向を防雪柵の上端近傍へ方向を変える際に、吹きつける風の方向と防雪柵の上端を越える方向とのなす角度が小さくなる。したがって、急激に方向を変えることによる渦等の発生を防ぐことができ、整流板の風を吹き上げる効果を向上させることができる。
【0019】
請求項4の防雪柵用整流装置によれば、枠体が整流板を外した状態では支柱に沿って折りたたみ可能になっているので、防雪柵が必要ない時期では、防雪柵用整流装置を収納することができる。
【0020】
請求項5の防雪柵用整流装置によれば、整流板が山と谷が幅方向に平行に延びている波板からなることによって、吹きつける風の方向が山と谷に沿って変わりやすくなる。
さらに、山及び谷の延びる方向の延長線が防雪柵の上端近傍へ向かうように整流板が枠体に取り付けられていることによって、吹きつける風が防雪柵を越えて遠くに流すことができる。
【0021】
請求項6の防雪柵用整流装置によれば、吹きつける風の支柱の長軸方向を法線とする平面に投影した成分が防雪板の法線と角度をなすような場合であっても、支柱の長軸方向を法線とする平面において、整流板が所定の角度に風の方向を変えることができる。
【0022】
請求項7の防雪柵用整流装置によれば、吹きつける風の防雪板の幅方向を法線とする平面に投影した成分が防雪板の法線と角度をなすような場合であっても、防雪板の幅方向を法線とする平面において、整流板が所定の角度に風の方向を変え、防雪柵の上端近傍へ向って風が流れるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の防雪柵用整流装置1を取り付けた防雪柵2の断面図である。
図2は、本発明の防雪柵用整流装置1を取り付けた防雪柵2の正面図である。
図3は、本発明の防雪柵用整流装置1を取り付けた防雪柵2の平面図である。
【0024】
防雪柵2は、道路等に沿って間隔を置いて立設された支柱21の間に防雪板22を架設してある。
防雪柵用整流装置1は、防雪柵2に取り付けられる枠体11と、枠体11に取り付けられ防雪柵2に吹きつける風の方向を変える整流板12とを備えている。
整流板12は、図10に示したような防雪柵2の防雪板22に対して斜めに吹きつける風の方向を防雪柵2の上端近傍へ変えることができるようになっている。
【0025】
整流板12が防雪板22に対して斜めに吹きつける風の方向を防雪柵2の上端近傍へ変えることによって、風とともに雪を吹き上げて遠くへ流すことができるので、道路の路面等における視程を長くすることができる。
【0026】
枠体11は、防雪柵2の道路と反対側に設けられている。
枠体11が防雪柵2の道路と反対側に設けられているので、走行の邪魔になることや、コントロールを失った車等が防雪柵用整流装置1に衝突して被害が大きくなることを防止できる。
【0027】
また、枠体11は、防雪柵2の支柱21に接続部材13を介して取り付けられている。枠体11は、防雪柵2の支柱21に取り付けられることによって、防雪柵用整流装置1が防雪柵2の支柱21によって強固に支持されるので、防雪板22に対して斜めに吹きつける強い風にも対応することができる。
【0028】
枠体11が防雪柵2の支柱21に接続部材13を介して取り付けられていることによって、枠体11は防雪板22から所定間隔空けた位置に設けられている(図4及び図5参照)。整流板12は、防雪板22から所定間隔空けた位置に設けられていることによって、整流板12が吹きつける風の方向を防雪柵11の上端を越える方向を変える際において、吹きつける風の方向と防雪柵11の上端を越える方向とのなす角度が小さくなる。したがって、急激に方向を変えることによる渦等の発生を防ぐことができ、整流板12の風を吹き上げる効果を向上させることができる。
【0029】
枠体11は、図4の枠体11及び接続部材13の正面図に示すように、接続部材13の長軸方向と平行であって所定間隔をあけた2本の縦枠材11a、11bと2本の縦枠の間に架設されている3本の横枠材11c、11d、11eからなる。
【0030】
支柱21に近い方の縦枠材11aは接続部材13に固定されている。
この縦枠材11aと縦枠材11bとの間に3本の横枠材11c、11d、11eが架設されている。
横枠材11c、11d、11eにはそれぞれ整流板12が取り付けられるようになっている。
各整流板12は枠体11の横枠材11c、11d、11eに着脱自在になっており図1〜図3、図6〜図8は整流板12を取り付けた状態を示しており、図4及び図5は整流板12を取り外した状態を示している。
【0031】
枠体11は、固定されている縦枠材11aに対して横枠材11c、11d、11eが回動自在となっており、横枠材11c、11d、11eに対して縦枠材11aが回動自在となっている。
したがって、枠体11は図4の破線で示すように支柱21に沿って折りたたみ可能になっている。
【0032】
枠体11が支柱21に沿って折りたたみ可能になっているので、防雪柵2が必要ない時期では、防雪柵用整流装置1を収納することができる。
【0033】
各整流板12は山と谷が平行に並んでいる波板からなり、山及び谷の延びる方向の延長線が防雪柵2の上端近傍へ向うように枠体11に取り付けられている。
【0034】
整流板12は山と谷が幅方向に平行に延びている波板からなることによって、吹きつける風の方向が山と谷に沿って変わりやすくなる。
さらに、山及び谷の延びる方向の延長線が防雪柵2の上端近傍へ向かうように整流板12が枠体11に取り付けられていることによって、吹きつける風を防雪柵2を越えて遠くに流すことができる。
【0035】
図3に示すように、整流板12の山及び谷の延びる方向を支柱21の長軸方向を法線とする平面に投影した第一方向成分12A(一点鎖線)は、防雪板の法線22A(一点鎖線)と所定の角度θ1をなしている。
本実施形態ではθ1は67.5度となっている。
【0036】
吹きつける風の方向を支柱21の長軸方向を法線とする平面に投影し方向成分が防雪板22の法線と45度以上の角度をなすような場合であっても、支柱21の長軸方向を法線とする平面において、整流板12が吹きつける風の方向を所定の角度に風の方向を変えることができる。
【0037】
図1に示すように、整流板12の山及び谷の延びる方向を防雪板22の幅方向を法線とする平面に投影した第二方向成分12B(一点鎖線)は、防雪板の法線22A(一点鎖線)と所定の角度θ2をなしている。
本実施形態ではθ2は70度となっている。
【0038】
吹きつける風の方向を防雪板22の幅方向を法線とする平面に投影した成分が防雪板22の法線と小さい角度をなすような場合であっても、防雪板22の幅方向を法線とする平面において、整流板12が吹きつける風の方向を所定の角度に風の方向を変え、防雪柵2の上端近傍へ向って風が流れるようにすることができる。
【0039】
以下、整流板12を枠体11に取り付ける構成について詳細に説明する。
図6は、枠体11に整流板12を取り付けた状態を示す防雪柵用整流装置1の一部の正面図である。
図7は、枠体11に整流板12を取り付けた状態を示す防雪柵用整流装置1の一部の側面図である。
図8は、枠体11に整流板12を取り付けた状態を示す防雪柵用整流装置1の一部の底面図である。
図6に示すように、横枠材11c、11d、11eには、略U字上の管体31が取り付けられている。
【0040】
図7に示すように、整流板12の横枠材側の表面には、略Ω字状の取付具32が取り付けられている。
整流板12の横枠材側の表面と取付具32との間で管体31を挟持することによって、整流板12が所定の角度で枠体11に取り付けられている。
【0041】
また、図7に示すように上下に位置する2枚の整流板12、12においては、振止材33が上の整流板12の下端と、下の整流板12の上端とを連結している。
振止材33を整流板12、12に取り付けることによって、各整流板12に強い風が吹きつけても、各整流板12が所定の角度を保つことができる。
【0042】
本実施形態では、防雪柵用整流装置1は防雪柵2の支柱21に取り付けられているが、これに限定されることなく、例えば、防雪柵2の風上側に防雪柵とは独立して防雪柵用整流装置を設けてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、防雪柵用整流装置1は防雪柵2の支柱21に取り付けられているが、これに限定されることなく、防雪柵2の他の部分、例えば防雪板に取り付けられていてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、防雪柵用整流装置1は3枚の整流板12を備えているが、これに限定されることなく、1枚若しくは複数枚の整流板を備えていてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、防雪柵用整流装置1は、θ1、θ2の角度がそれぞれ67.5度、70度となっているが、これに限定されることなく、防雪柵用整流装置1が設けられている場所における風向きに応じてθ1、θ2の角度を自由に変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の防雪柵用整流装置1を取り付けた防雪柵2の断面図である。
【図2】本発明の防雪柵用整流装置1を取り付けた防雪柵2の正面図である。
【図3】本発明の防雪柵用整流装置1を取り付けた防雪柵2の平面図である。
【図4】支柱21、枠体11及び接続部材13の正面図である。
【図5】支柱21、枠体11及び接続部材13の平面図である。
【図6】枠体11に整流板12を取り付けた状態を示す防雪柵用整流装置の一部の正面図である。
【図7】枠体11に整流板12を取り付けた状態を示す防雪柵用整流装置の一部の側面図である。
【図8】枠体11に整流板12を取り付けた状態を示す防雪柵用整流装置の一部の底面図である。
【図9】従来の防雪柵100の断面図である。
【図10】防雪板に対して斜めに吹きつける風を方向成分に分解した斜視図である。
【図11】風の流れる様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 防雪柵用整流装置
2 防雪柵
11 枠体
11a、11b 縦枠材
11c、11d、11e 横枠材
12 整流板
12A 第一方向成分
12B 第二方向成分
13 接続部材
21 支柱
22 防雪板
22A 防雪板の法線
31 管体
32 取付具
33 振止材
100 防雪柵
101 支柱
102 防雪板
103 整流部
104 整流板
105 吹きつける風
105A 吹きつける風の投影した方向成分
106 防雪板の法線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて立設された支柱の間に防雪板を架設した防雪柵の風上側に設けられる枠体と、
枠体に取り付けられ、防雪柵に吹きつける風の方向を変える整流板とを備え、
整流板は、防雪板に対して斜めに吹きつける風の方向を防雪柵の上端近傍へと変えることを特徴とする防雪柵用整流装置。
【請求項2】
枠体は、防雪柵の道路と反対側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の防雪柵用整流装置。
【請求項3】
枠体は、防雪柵の支柱に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の防雪柵用整流装置。
【請求項4】
整流板は、防雪板から所定間隔空けた位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防雪柵用整流装置。
【請求項5】
整流板が枠体に着脱自在になっており、枠体が整流板を外した状態では支柱に沿って折りたたみ可能になっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の防雪柵用整流装置。
【請求項6】
整流板は、山と谷が平行に並んでいる波板からなり、山及び谷の延びる方向の延長線が防雪柵の上端近傍へ向かうように枠体に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の防雪柵用整流装置。
【請求項7】
整流板の山及び谷の延びる方向を支柱の長軸方向を法線とする平面に投影した第一方向成分は、地面に対して略垂直な防雪板の法線と所定の角度をなしていることを特徴とする請求項6に記載の防雪柵用整流装置。
【請求項8】
整流板の山及び谷の延びる方向を防雪板の幅方向を法線とする平面に投影した第二方向成分は、地面に対して略垂直な防雪板の法線と所定の角度をなしていることを特徴とする請求項6又は7に記載の防雪柵用整流装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate