説明

防音ドア

【課題】高い防音性能を備えて、しかも通気可能な防音ドアを提供する。
【解決手段】表板5には表側開口21が形成され、裏板7には裏側開口23が形成されており、表側開口21と裏側開口23は、上下方向にある程度離間した状態で中空部15を介して連通している。吸音材41は表板5の内側面に、吸音材43は裏板7の内側面にそれぞれ貼設されており、吸音材45は天板9、底板11及び左右の側板と中空部15との間に設けられている。空気は部屋71の外側から表側開口21を通って中空部15内を下方に向かって流れ、裏側開口23を通って部屋71内に流れ込む。中空部15内に進入した音は吸音材41、43、45に吸収される。表側開口21と裏側開口23は上下方向にある程度離間して配置されているので、裏側開口23から中空部15へ進入した音は表側開口21に到達する前に、吸音材45にほとんど吸収されて消えてしまう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防音ドアに係り、特に通気口を備えた防音ドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の防音ドアは特許文献1に記載されているように、ドアと開口部との隙間をパッキンによって埋めるようにしたものであって、防音性能を発揮できる代わりにドア回りの通気はほとんどないものとなる。
例えば、カラオケボックスでは建物内に比較的小さな部屋を複数造り、個々の部屋にカラオケ設備を備えており、各部屋の出入口(開口部)には防音ドアを備えている。このようなカラオケボックスでは、使用時には外部に音が漏れるのを極力抑えるため防音ドアを閉め、しかも窓も閉め切った状態とする。従って、ドア回りや窓から換気を行うことはできず、このため各部屋の壁や天井に換気扇を備えた排気口と、これとは別の吸気口とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−299289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、部屋毎に換気扇を備えた排気口と、これとは別の吸気口とを備えると工事費が嵩むことになるという問題点がある。特にカラオケボックスでは一店舗当たりの部屋数が多く、部屋毎に排気口と吸気口の両方を備えた場合のコストは相当なものとなる。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、高い防音性能を備えて、しかも通気可能な防音ドアを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、ドア本体と、前記ドア本体に形成された中空部と、前記中空部とドア本体の表面とを連通させる表側開口と、前記中空部とドア本体の裏面とを連通させる裏側開口と、前記中空部を囲む面に備えられた吸音材とからなることを特徴とする防音ドアである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した防音ドアにおいて、表側開口、裏側開口の一方はドア本体の高さ方向の中心より上側に備えられ、他方はドア本体の高さ方向の中心より下側に備えられていることを特徴とする防音ドアである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した防音ドアにおいて、表側開口と裏側開口には複数の羽板が互いに間隔を開け、且つ同じ方向を向く傾斜姿勢で配置されていることを特徴とする防音ドアである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載した防音ドアにおいて、ドア本体の表板と裏板にそれぞれ形成され且つ互いに対向し、しかも中空部に連なる覗き窓用の開口部と、前記窓用の開口部を閉鎖する状態にそれぞれ取り付けられた透明板と、前記互いに対向する透明板の間の空間を囲む枠状体と、前記枠状体に備えられ透明板の間の空間内の湿気を吸う吸湿剤を備えたことを特徴とする防音ドアである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防音ドアでは、表側開口と裏側開口は中空部を介して連通しているのでドア本体の表側と裏側とで通気可能となり、吸気・排気口としての機能を発揮でき、しかも音は吸音材によって吸収されるので、十分な防音性能を発揮することができる。従って、防音ドアが吸気・排気口のいずれか一方の機能を発揮する結果、各部屋の壁や天井に排気口か吸気口のいずれか一方のみを備えるだけで済み、工事費を大幅に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る防音ドアの斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】図1の防音ドア1がカラオケボックスの部屋に備えられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る防音ドア1を図面にしたがって説明する。
符号3はドア本体を示し、このドア本体3は表板5、裏板7、天板9、底板11及び左右の側板(図示せず)によって構成されており、ドア本体3には中空部15が形成されている。
表板5には中空部15と連通する表側開口21が形成されており、この表側開口21はドア本体3の高さ方向の中心より上側に備えられている。また裏板7には中空部15と連通する裏側開口23が形成されており、この裏側開口23はドア本体3の高さ方向の中心より下側に備えられている。従って、表側開口21と裏側開口23は、上下方向にある程度離間した状態で中空部15を介して連通している。
【0012】
表側開口21には複数の羽板31が支持されており、これらの羽板31は、表側の先端部が斜め下方を向く傾斜姿勢で上下方向に互いに間隔を開けて配置されている。また裏側開口23には複数の羽板33が支持されており、これらの羽板33は、裏側の先端部が斜め下方を向く傾斜姿勢で上下方向に互いに間隔を開けて配置されている。これらの羽板31、33によって表側開口21、裏側開口23が完全に露出するのを防止して、ドア本体3の表面と裏面が見栄えの良い状態となっている。
【0013】
符号41、43は紙原料等から成るマット状の吸音材を示し、吸音材41、43は高い吸音性能を有している。吸音材41は表板5の内側面に、吸音材43は裏板7の内側面にそれぞれ貼設されている。
符号45はロックウールから成る吸音材を示し、吸音材45は天板9、底板11及び左右の側板と、中空部15との間に設けられている。
【0014】
また、表板5と裏板7の略中心部には、互いに対向する覗き窓50用の開口部51、53が形成されており、これら開口部51、53は中空部15に連なっている。また、開口部51、53にはガラス製の透明板55、57が開口部51、53を閉鎖する状態にそれぞれ嵌め込まれている。透明板55と透明板57は、厚さ寸法が異なるものが用いられている。
【0015】
図3に示すように透明板55、57の縁には、透明板55、57の間の空間58を囲うパンチングメタル製の仕切り板59が固定されている。この仕切り板59の背面(透明板55、57間の空間と反対側の面)側には、マット状の吸音材60が備えられている。また吸音材60には切り欠き部62が形成され、この切り欠き部62には吸湿剤(乾燥剤)64が収容されている。更に吸音材60外面(仕切り板59と反対側の面)は板材66によって覆われている。すなわち、透明板55、57間の空間は仕切り板59、吸音材60及び板材66から成る枠状体68によって囲まれている。
【0016】
また、ドア本体3には図示しない防振ゴム製の防振材が備えられ、この防振材によって音(振動)を吸収して、熱エネルギーに変換することによって、高い防音性能を発揮することができるようになっている。
表板5には押し板61が設けられており、また裏板7には図示しない把手が設けられている。
また、防音ドア1の後述するパッキン81に対応する部位には、磁性体によって構成される図示しない被吸着部材が取り付けられている。
【0017】
図5に防音ドア1がカラオケボックスの部屋71に備えられた状態を示す。
符号73は壁を示し、この壁73には出入口用の開口部75が形成されており、開口部75には枠体77が備えられている。枠体77には戸当り部79が形成されており、この戸当り部79にはパッキン81が備えられている。このパッキン81は軟質の合成樹脂製によって構成され、チューブ状に形成されている。そして、パッキン81内には図示しないマグネットが収容されている。
枠体77には防音ドア1が開閉自在に取り付けられている。前述したように表側開口21と裏側開口23は中空部15を介して連通しているので、防音ドア1を閉めた状態であってもドア本体3の表側と裏側とで通気可能となる。
壁73には排気口85が形成されており、この排気口85には換気扇87が備えられている。また排気口85には排気管89が接続されている。
【0018】
次に、防音ドア1の使用方法について説明する。
カラオケボックスの部屋71の外に音が漏れるのを極力抑えるために防音ドア1を閉める。前述したように戸当り部79には、マグネットが収容されたパッキン81が備えられており、しかも防音ドア1のパッキン81に対応する部位には、被吸着部材が取り付けられているので、被吸着部材がマグネットによって吸着されて、防音ドア1の縁とパッキン81が密着する。これにより、防音ドア1の縁とパッキン81との間がほぼ完全に閉鎖され、防音ドア1の縁とパッキン81との間から音が漏れるのを防止することができる。
換気のために換気扇87を作動させると、空気は部屋71の外側から表側開口21を通って中空部15内を下方に向かって流れ、裏側開口23を通って部屋71内に流れ込む。部屋71内の空気は排気口85に向かって吸い込まれて、排気管89を通って部屋71の外へ排出される。
【0019】
また、部屋71内で発生した音は壁73や防音ドア1等に向かって進む。上記したようにパッキン81が防音ドア1の縁に密接しているので、音が防音ドア1の縁と開口部75との間から部屋71の外へ漏れることがない。
音の一部は図2の仮想線の矢印に示すように裏側開口23から中空部15内に進入する。しかし、前述したように吸音材41が表板5の内側面に、吸音材43が裏板7の内側面にそれぞれ貼設されており、また吸音材45が天板9、底板11及び左右の側板と、中空部15との間に設けられているので、中空部15内に進入した音は吸音材41、43、45に吸収される。しかも、表側開口21と裏側開口23は上下方向にある程度離間して配置されているので、裏側開口23から中空部15へ進入した音は表側開口21に到達する前に、吸音材45に吸収されて消えてしまう。従って、音が表側開口21から部屋71の外へ漏れることがない。
【0020】
また、防音ドア1は中空部を有さない従来の防音ドアより高い防音性能を発揮できる。すなわち、防音ドア1の表板5側、裏板7側のいずれにおいて発生した音(振動)も、中空部15内において乱反射し、その間に吸音材41、吸音材43及び吸音材45によって減衰され、且つ吸収されて消えてしまう。このような防音ドア1は音を中空部15内において乱反射させる機能を有するので、中空部を有さない従来の防音ドアより高い防音性能を発揮することが可能である。
【0021】
このように防音ドア1は吸気口としての機能を発揮できるので、部屋毎に排気口85とは別の吸気口を備える必要がない。従って、工事費を低く抑えることができる。しかも音が吸音材41、43、45によって吸収されるので、十分な防音性能を発揮することができる。
【0022】
また、防音ドア1は覗き窓50が設けられているので、覗き窓50からカラオケボックスの部屋71の様子を見ることができる。
枠状体68には吸湿剤(乾燥剤)64が備えられているので、この吸湿剤(乾燥剤)64によって透明板55、57の間の空間58に湿気が浸入しても、湿気はパンチングメタル製の仕切り板59の穴を通って吸湿剤に吸われる。これにより透明板55、57が曇るのを防止することができる。
透明板55の厚さ寸法は5mm、透明板57の厚さ寸法は3mmであり、厚さ寸法が異なっているので、共鳴を防止することが可能である。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態では、吸音材41、43を紙原料等によって構成し、また吸音材45をロックウールによって構成したが、吸音材をグラスウール等の他の材料で構成してもよい。
上記実施の形態では、表側開口21をドア本体3の高さ方向の中心より上側に備え、また裏側開口23をドア本体3の高さ方向の中心より下側に備えたが、表側開口21と裏側開口23の位置関係を上下逆に構成してもよい。
【0024】
上記実施の形態では、防音ドア1に吸気口としての機能を発揮させたが、例えば排気口85を吸気口として、防音ドア1に排気口としての機能を発揮させてもよい。
上記実施の形態では、防音ドア1をカラオケボックスに備えたが、防音ドア1を音楽スタジオ等に備えてもよい。
上記実施の形態では、ドア本体3に開口部51、53、透明板55、57及び仕切り板59を設けたが、ドア本体3に開口部51等を設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ドア等の建具の製造業に利用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…防音ドア 3…ドア本体 5…表板
7…裏板 9…天板 11…底板
15…中空部 21…表側開口 23…裏側開口
31、33…羽板 41、43…吸音材 45…吸音材
51、53…開口部 55、57…透明板
59…仕切り板 61…押し板
71…部屋 73…壁 75…開口部
77…枠体 79…戸当り部 81…パッキン
85…排気口 87…換気扇 89…排気管
58…透明板の間の空間
60…マット状の吸音材 62…(マット状の吸音材)の切り欠き部
64…吸湿剤(乾燥剤) 66…板材 68…枠状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体と、前記ドア本体に形成された中空部と、前記中空部とドア本体の表面とを連通させる表側開口と、前記中空部とドア本体の裏面とを連通させる裏側開口と、前記中空部を囲む面に備えられた吸音材とからなることを特徴とする防音ドア。
【請求項2】
請求項1に記載した防音ドアにおいて、表側開口、裏側開口の一方はドア本体の高さ方向の中心より上側に備えられ、他方はドア本体の高さ方向の中心より下側に備えられていることを特徴とする防音ドア。
【請求項3】
請求項1または2に記載した防音ドアにおいて、表側開口と裏側開口には複数の羽板が互いに間隔を開け、且つ同じ方向を向く傾斜姿勢で配置されていることを特徴とする防音ドア。
【請求項4】
請求項1から3に記載した防音ドアにおいて、ドア本体の表板と裏板にそれぞれ形成され且つ互いに対向し、しかも中空部に連なる覗き窓用の開口部と、前記窓用の開口部を閉鎖する状態にそれぞれ取り付けられた透明板と、前記互いに対向する透明板の間の空間を囲む枠状体と、前記枠状体に備えられ透明板の間の空間内の湿気を吸う吸湿剤を備えたことを特徴とする防音ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−102467(P2011−102467A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256852(P2009−256852)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(593204199)有限会社幸昭 (5)
【出願人】(505013675)株式会社コシダカ (1)
【Fターム(参考)】