説明

防音壁

【課題】防音効果を維持し、防音壁の壁面に加わる風の荷重を効率よく低減する防音壁を低コストで提供すること。
【解決手段】防音壁10は、ダクト20を何層にも組み合わせたものである。ダクト20は、ダクト20の第1の開口部21Hと、ダクト20の第2の開口部22Hの食い違いと、奥行きは、開口高さの2倍以上離れており、第1の開口部21Hと第2の開口部22Hとが重ならない位置に設けてある。第1の開口部21Hと第2の開口部22Hとを風が通過することにより、風の荷重を効率よく低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント建設等の工事で発生する騒音を遮断することに好適であり、防音壁に加わる風の抵抗を低減することができる防音壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場等では、騒音の発生する付近に防音壁を設けて、工場現場に隣接する住宅地や市街地に対する騒音の洩れを抑制している。また、防音壁は、騒音発生域の騒音の伝達を抑制するために、ある程度大きな構造物となりうる場合が多い。そのため、防音壁は、風の抵抗による耐久性の低下等の問題を引き起こすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−232357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、騒音の伝搬経路上に設置される防音壁において、壁面の一部に開口部を形成することが記載されている。その開口部によって形成されたダクトの内周面は、防音壁と同等の遮音性能を維持し、防音壁に加わる風の抵抗を低減することができる。しかし、特許文献1に記載された防音壁は、防音壁と同等の遮音性能を維持するために、音響的にソフトに近い性状に調整された音響的ソフト境界をダクトの内周面に設けている。このように、防音壁の開口部付近で騒音を抑制するためには、非常に高価な設備投資を必要とする。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、防音効果を維持し、防音壁の壁面に加わる風の荷重を効率よく低減する防音壁を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の壁面と、前記第1の壁面と対向して配置される第2の壁面と、前記第1の壁面に開口する第1の開口部と、前記第2の壁面に開口するとともに、前記第1の開口部の上端よりも前記開口の下端の高さが高い第2の開口部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る防音壁は、第1の壁面又は第2の壁面に吹き付けられた風は、第1の開口部及び第2の開口部を通って他方の壁面へ通過する。また、第1の開口部を第2の壁面に投影した場合には、第1の開口部と第2の開口部とは重ならないので、第1の開口部又は第2の開口部から入った音が他の開口部へ通過する量を低減できる。さらに、この防音壁は、壁面に開口部を設けるだけなので、低コストで製造できる。このように、本発明は、防音効果を維持し、防音壁の壁面に加わる風の荷重を効率よく低減する防音壁を低コストで提供することができる。
【0008】
本発明の好ましい態様としては、対向して配置されるとともに、前記第1の壁面と前記第2の壁面とをそれぞれ連結する一対の側面と、前記第1の壁面と前記第2の壁面と前記一対の側面とで囲まれる筒状の構造体の両端部にそれぞれ設けられる上面及び下面と、を含むダクトが複数組み合わされることが望ましい。
【0009】
本発明に係る防音壁は、複数のダクトを組み合わせるので、防音壁の構造を簡略化することができるので、低コストで製造できる。また、防音壁の構造の簡略化により、防音壁を施工する際の作業効率や作業時間の短縮を図ることができるので、防音壁の設置に要するコストを低減できる。
【0010】
本発明の好ましい態様としては、前記ダクトの内周面に吸音材を有することが望ましい。
【0011】
本発明に係る防音壁は、ダクトの内周面に吸音材を有しているので、第1の開口部又は第2の開口部からダクトの内部に進入した音を吸収することができる。その結果、本発明に係る防音壁は、防音効果をより向上させることができる。
【0012】
本発明の好ましい態様としては、前記ダクトは、前記第2の壁面の内面に突起部を有することが望ましい。
【0013】
本発明に係る防音壁は、前記ダクトの内周面に突起部を有するので、防音効果をより向上させることができる。
【0014】
本発明の好ましい態様としては、前記ダクトは、前記第2の開口部の下端に、前記ダクトの外側に向かって突出するとともに、上方に向かって傾斜する傾斜部を有することが望ましい。
【0015】
本発明に係る防音壁は、第2の開口部の下端に傾斜部を有するので、第2の開口部から流出する風を上方へ容易に導くことができる。
【0016】
本発明の好ましい態様としては、前記ダクトは、前記第1の開口部と前記第2の開口部との少なくとも一方を開閉することが可能な開閉調整部を有することが望ましい。
【0017】
本発明に係る防音壁は、無風状態であるような場合には、開閉調整部により第1の開口部と第2の開口部との少なくとも一方を閉じることで、防音壁の防音効果をより向上させることができる。
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の壁面と、前記第1の壁面と対向して配置される第2の壁面と、前記第1の壁面に開口する第1の開口部と、前記第1の開口部と対向する前記第2の壁面の位置に開口する第2の開口部と、前記第1の開口部と前記第2の開口部との間に配置される仕切りと、を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る防音壁は、防音壁の壁面に加わる風の力を効率よく低減できる。また、本発明に係る防音壁は、防音壁内に配設した仕切りが音の通路の曲がりを形成するので、前記曲がりによって減音効果をより向上させることができる。さらに、本発明に係る防音壁は、2つの開口部と1つの仕切りとで構成されるので、構造が簡単になり、製造コストも抑制できる。このように、本発明は、防音効果を維持し、防音壁の壁面に加わる風の荷重を効率よく低減する防音壁を低コストで提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、防音効果を維持し、防音壁の壁面に加わる風の荷重を効率よく低減する防音壁を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施形態1に係る防音壁を設置した様子を模式的に示す説明図である。
【図2−1】図2−1は、実施形態1に係る防音壁の斜視図である。
【図2−2】図2−2は、実施形態1に係る防音壁の断面図である。
【図3−1】図3−1は、実施形態1に係る防音壁が有するダクトの斜視図である。
【図3−2】図3−2は、実施形態1に係るダクトを模式的に示す説明図である。
【図4】図4は、実施形態1に係るダクトに吸音材を取り付けた様子を示す説明図である。
【図5】図5は、実施形態1に係るダクトに突起部を取り付けた様子を示す説明図である。
【図6】図6は、実施形態1に係るダクトの第2の開口部に傾斜部を取り付けた状態を示す説明図である。
【図7】図7は、実施形態1に係るダクトが有する開閉調整部を示す説明図である。
【図8】図8は、実施形態2に係るダクトを示す説明図である。
【図9】図9は、実施形態3に係るダクトを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。以下において、下とは鉛直方向(重力の作用する方向)側であり、上とは鉛直方向とは反対方向側である。
【0023】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る防音壁を設置した様子を模式的に示す説明図である。防音壁10は、プラント5内で発生した音を遮音するための構造物である。実施形態1においては、防音壁10は、プラント5の外周に配設されている。プラント5は、例えば、火力プラントや化学プラント等である。防音壁10をプラント5の外周に配設することで、プラント5で発生する騒音を遮音することができる。また、防音壁10が遮音する対象はプラント5に限定されるものではない。防音壁10は、例えば、高速道路等のような騒音の発生する箇所に配設されてもよい。
【0024】
図2−1は、実施形態1に係る防音壁の斜視図である。図2−2は、実施形態1に係る防音壁の断面図である。本実施形態において、防音壁10は、複数のダクト20を組み合わせたものである。ダクト20については後述し、ここでは防音壁10について説明する。防音壁10は、第1の壁面21と、第2の壁面22と、第1の開口部21Hと、第2の開口部22Hとを有する。第2の開口部22Hは、第1の開口部21Hの上端21HTTよりも開口の下端22HTLの高さが高い。第1の壁面21及び第2の壁面22に直交する方向は、防音壁10の厚み方向である。
【0025】
防音壁10の第1の壁面21又は第2の壁面22に作用する風の力(風荷重)は、風の動圧力と防音壁10が風を受ける面積との積である。風の動圧力は、風の速度の平方根と空気密度との積である。第1の壁面21又は第2の壁面22に作用する風の速度が増加すると、風の動圧力も増加する。よって、風荷重は、風の動圧力に比例して大きくなる。第1の壁面21及び第2の壁面22が風を受ける面積を小さくすることができれば、風荷重を低減することができる。
【0026】
本実施形態において、防音壁10は、第1の壁面21に第1の開口部21Hが形成され、第2の壁面22に第2の開口部22Hが形成される。第1の壁面21に風が吹き付けた場合、前記風は第1の開口部21Hを通過して防音壁10(ダクト20)の内部に流入し、第2の開口部22Hから流出する。また、第2の壁面22に風が吹き付けた場合、前記風は第2の開口部22Hを通過して防音壁10(ダクト20)の内部に流入し、第1の開口部21Hから流出する。このように、防音壁10に吹き付けた風は、第1の開口部21H又は第2の開口部22Hから防音壁10の内部へ流入し、他方の開口部から流出する。このため、防音壁10の風を受ける面積を小さくすることと同様の効果が得られるので、風荷重を低減することができる。
【0027】
図3−1は、実施形態1に係る防音壁が有するダクトの斜視図である。図3−2は、実施形態1に係るダクトを模式的に示す説明図である。以下に、ダクト20について、詳細に説明する。ダクト20は、直方体又は立方体形状である構造体であり、第1の壁面21と、第2の壁面22と、一対の側面23、24と、上面25と、下面26とを有する。これらによって囲まれた空間が、ダクト20の内部20Iとなる。
【0028】
一対の側面23、24は、対向して配置されるとともに、第1の壁面21と第2の壁面22とをそれぞれ連結する。上面25及び下面26は、第1の壁面21と第2の壁面22と一対の側面23、24とで囲まれる筒状の構造体の両端部にそれぞれ設けられる。図3−2に示すように、第2の開口部22Hは、第2の壁面22に開口するとともに、第1の開口部21Hの上端21HTTの高さH1よりも前記開口の下端22HTLの高さH2が高い。
【0029】
ダクト20は、例えば、1辺あたり200mm程度の立方体であり、鉄筋コンクリート又は板金を組み合わせて製造することができる。このようにすることで、ダクト20を安価に製造することができるので、低コストで防音壁10を提供できる。また、複数のダクト20を組み合わせ、それぞれを連結するためには、例えば、ボルト等の締結手段や、溶接等の接合手段を用いることができる。ダクト20の箱型の形状や接合方法は、上述したものに限定されない。
【0030】
上述したように、第1の開口部21H及び第2の開口部22Hは、防音壁10の厚み方向へ風を通過させる。ここで、第1の開口部21H及び第2の開口部22Hは、防音壁10が風を受ける第1の壁面21及び第2の壁面22に配設される。つまり、このようにすることで、第1の開口部21H及び第2の開口部22Hは、第1の壁面21及び第2の壁面22に作用した風が防音壁10の内部(ダクト20の内部20I)を通過することのできる流出入口となる。第1の開口部21H及び第2の開口部22Hは、防音壁10に対する風荷重を効率よく低減することができる。
【0031】
第1の開口部21Hは、第1の壁面21の下部に設けられる。第2の開口部22Hは、第2の壁面22の上部に設けられる。第1の開口部21Hを第2の壁面22に投影した場合には、第1の開口部21Hと第2の開口部22Hとは重ならない。同様に、第2の開口部22Hを第1の壁面21に投影した場合には、第1の開口部21Hと第2の開口部22Hとは重ならない。このような構造により、第1の開口部21H又は第2の開口部22Hから入った音が他の開口部へ通過する量を低減できる。
【0032】
音源側には第1の開口部21Hと第2の開口部22Hとのいずれを配置してもよいが、音源側に第2の開口部22Hを配置すると、防音壁10の上方からの音が第2の開口部22Hから第1の開口部21Hを通過し、地面で反射して第2の開口部22Hから防音壁10の外部に漏れるおそれがある。このため、効果的に遮音する観点からは、第1の開口部21Hを音源側に配置することが好ましい。一方、音源側に第2の開口部22Hを配置すると、第1の開口部21Hから流入した風は、第2の開口部22Hから上方に向かって吹き出すので、防音壁10の内側に存在する構造物に当たる風を低減できる。したがって、防音壁10内の構造物へ風が当たることを回避したい場合には、第2の開口部22Hを音源側に配置することが好ましい。
【0033】
防音壁10が、開口したダクト20を有することで、防音壁10に作用する風荷重を抑制することができるとともに、防音壁10の遮音性能を維持することができる。より効果的に風荷重を抑制し、遮音性能を維持するためには、第1の開口部21Hの開口面積、第2の開口部22Hの開口面積、第1の開口部21Hの上端21HTTと第2の開口部22Hの下端22HTLとの距離、防音壁10(ダクト20)の厚み等を調整する。例えば、第1の開口部21Hの開口面積及び第2の開口部22Hの開口面積を大きくした方が、防音壁10に作用する風荷重を低減できる。また、第1の開口部21Hの上端21HTTと第2の開口部22Hの下端22HTLとの距離を小さくすることで、防音壁10(ダクト20)に風を通過させやすくすることができる。また、ダクト20内を風が通過する際には圧力損失が生じるため、防音壁10(ダクト20)の厚みを小さくする方が風による力を低減できるので効率的である。
【0034】
音は、進む向きが変わることで、エネルギーが低下するという性質を有している。例えば、90度湾曲する通路を音が通過すると、音は3dB小さくなる。第1の開口部21Hの開口面積及び第2の開口部22Hの開口面積を大きくすると、ダクト20内における音の通過する通路の曲がりを十分に確保できないので、音の進行する向きが変更することによる減音の効果が小さくなる。このため、防音壁10の遮音の効果を向上させるためには、第1の開口部21Hの開口面積及び第2の開口部22Hの開口面積を小さくした方が良い。また、第1の開口部21Hの上端21HTTと第2の開口部22Hの下端22HTLとの距離は大きい方が好ましい。例えば、前記距離は、第1の開口部21H又は第2の開口部22Hの開口高さの2倍以上とすることが好ましい。また、防音壁10(ダクト20)の厚みは、第1の開口部21H又は第2の開口部22Hの開口高さの2倍以上とすることが好ましい。
【0035】
実施形態1において、ダクト20の第1の開口部21Hの開口面積と、ダクト20の第2の開口部22Hの開口面積とは同一である。なお、第1の開口部21Hの開口面積と、第2の開口部22Hの開口面積とは異なっていてもよい。本実施形態において、第1の開口部21Hの開口面積及び第2の開口部22Hは長方形形状であるが、これらの形状は長方形に限定されるものではなく、例えば、円形であってもよい。
【0036】
実施形態1によれば、効率良く、防音壁10の壁面上に作用する風の抵抗を抑制することが可能となり、防音効果も高めることが可能となる。また、防音壁10は、ダクト20を組み合わせず、例えば、板状部材を組み合わせて製造してもよいが、ダクト20を用いることで、防音壁10を簡易に製造できるので、防音壁10の施工時間を短縮することができる。また、作業効率も向上することができる。なお、ダクト20の第1の開口部21Hと、ダクト20の第2の開口部22Hとの関係は、上述したものに限定されるものではない。
【0037】
図4は、実施形態1に係るダクトに吸音材を取り付けた様子を示す説明図である。ダクト20aは、内周面に吸音材30を有している。内周面とは、ダクト20aの内部20Ia側の面である。吸音材30は、音を吸音することのできるものであれば良い。例えば、ウレタンフォームやガラスウール等である。ダクト20aに吸音材30を取り付けるためには、例えは、接着剤、両面テープ、押さえ板、釘等を用いることができる。
【0038】
この例においては、音源側に第1の開口部21Hが配置されている。吸音材30は、第2の壁面22の内周面及び上面25の内周面に取り付けられている。吸音材30は、音源側の第1の開口部21Hと対向する第2の壁面22と、第1の開口部21Hを通過した音がダクト20aの内部20Iaで第2の開口部22Hへ向かう方向側に存在する上面25の内周面に取り付けられる。このように、ダクト20aの内部20Iaで音が進行する方向の壁面に吸音材30を設けることで、ダクト20a内において吸音し、ダクト20a内における音の反射を抑制できる。その結果、第1の開口部21Hから第2の開口部22Hへ通過する音の量をより効果的に低減できる。なお、音源側に第2の開口部22Hが配置されている場合、吸音材30は、第1の壁面21及び下面26に設けられる。また、吸音材30は、ダクト20aのすべての内周面に設けても良い。吸音材30を、ダクト20aのすべての内周面に設けることで、効果的に、ダクト20a内へ流入した音を吸収することができる。
【0039】
図5は、実施形態1に係るダクトに突起部を取り付けた様子を示す説明図である。この例においては、音源側に第1の開口部21Hが配置されている。突起部31は、音源側の第1の開口部21Hと対向する第2の壁面22の内部20Ib側に設けられる。突起部31を設けることで、音の通路にさらに曲がり部を設けることができるので、ダクト20b内において音のエネルギーを低減させる効果をより高めることができる。
【0040】
突起部31は、ダクト20b内における風の流れに与える影響をより小さくするようにすることが好ましい。突起部31は、例えば、吸音材30の材料である軟質ウレタンフォームやガラスウール等を用いることができる。このような軟質な材料で突起部31を製造すれば、ダクト20b内を流れた風が突起部31に当たった場合には、突起部31が変形することにより風荷重の増加を抑制できる。その結果、風荷重の増加を抑制しつつ、ダクト20b内における減音効果を向上させることができる。また、ダクト20b内に吸音材30と突起部31を設ければ、より減音効果を向上させることができる。実施形態1では、突起部31を第2の壁面22の高さ方向における中央に設けているが、第2の壁面22上であれば突起部31をいずれの箇所に設けても良い。なお、音源側に第2の開口部22Hが配置される場合、突起部31は、音源側の第2の開口部22Hと対向する第1の壁面21に設けられる。
【0041】
図6は、実施形態1に係るダクトの第2の開口部に傾斜部を取り付けた状態を示す説明図である。ダクト20cは、第2の開口部22Hの下端22HTLに、ダクト20cの外側に向かって突出するとともに、上方に向かって傾斜する傾斜部32を有する。傾斜部32は、ダクト20cの第2の開口部22Hから流出する風を上方へ誘導するものである。傾斜部32は、第2の開口部22Hから流出した風が地面に残留することを抑制できる。
【0042】
傾斜部32は、例えば、アクリル板、板金、ダクトの材料であるコンクリート等である。また、傾斜部32は、第2の開口部22Hの上端22HTTに設けても良い。このようにすることで、傾斜部32は、第2の開口部22Hからダクト20cの内部20Ic内へ雨やごみ等が侵入することを抑制することができる。その結果、ダクト20c内に溜まった水やごみ等の影響により、風による力の増加や音の減音効果の低下を抑制することができる。
【0043】
図7は、実施形態1に係るダクトが有する開閉調整部を示す説明図である。ダクト20dは、第1の開口部21Hと第2の開口部22Hとの少なくとも一方を開閉することが可能な開閉調整部33を有する。本実施形態において、開閉調整部33は、第1の開口部21Hと第2の開口部22Hとの両方に設けられているが、開閉調整部33は、第1の開口部21H又は第2の開口部22Hに設けられていてもよい。開閉調整部33は、例えば、アクリル板のようなプレートあるいは金属板を用いることができる。そして、開閉調整部33は、例えば、蝶番を介して、第1の開口部21Hと第2の開口部22Hとの少なくとも一方に取り付けられる。
【0044】
開閉調整部33は、無風である場合に、第1の開口部21Hと第2の開口部22Hとの少なくとも一方を閉じることで、防音壁10の減音効果をより高めることができる。また、開閉調整部33は、風が吹いている場合において、第1の開口部21Hと第2の開口部22Hとの両方(開閉調整部33が第1の開口部21H又は第2の開口部22Hに設けられている場合は、一方)を開く。このようにすることで、防音壁10に作用する風荷重を低減し、かつ減音効果を発揮させることができる。開閉調整部33は、例えば、制御装置を用いた自動制御により開閉されてもよいし、オペレータの手動操作によって開閉されてもよい。
【0045】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係るダクトを示す説明図である。実施形態2に係るダクト20eは、第1の壁面21eに開口する第1の開口部21Heと対向する第2の壁面22eの位置に、第2の開口部22Heを設けるとともに、第1の開口部21Heと第2の開口部22Heとの間に仕切り部34を配置する点に特徴がある。第1の開口部21Heを第2の壁面22eの内側に投影すると、第1の開口部21Heと第2の開口部22Heとは重なる。同様に、第2の開口部22Heを第1の壁面21eの内側に投影すると、第1の開口部21Heと第2の開口部22Heとは重なる。
【0046】
仕切り部34は、音の通路に曲がり部を形成するために、第1の開口部21Heと第2の開口部22Heとの間に設けられる。仕切り部34は、第1の開口部21Heと第2の開口部22Heとの間のいずれかの位置に設けられていればよい。
【0047】
ダクト20eは、音の通路に曲がり部が形成される。この例において、ダクト20e内に入った音は、ダクト20e内で4回曲がることになる。上述したように、音は一回の曲がりによりエネルギーが3dB減衰する。このため、ダクト20eは、曲がりによる音のエネルギーの減衰作用をより有効に利用することができるので、ダクト20e内において音のエネルギーを効果的に低下させることができる。また、第1の開口部21Heと第2の開口部22Heとを風が通過するため、防音壁10の風荷重を低減することができる。
【0048】
本実施形態において、ダクト20eの第1の開口部21Heの開口面積と、ダクト20eの第2の開口部22Heの開口面積は、同一の大きさであるが、両者は異なっていてもよい。ダクト20eの第1の開口部21Heの開口高さh1と、ダクト20の第2の開口部22Heの開口高さh2とは、仕切り部34の高さh3よりも小さいことが好ましい。また、ダクト20e内に吸音材30を取り付けることで、より効果的に減音することができる。
【0049】
(実施形態3)
図9は、実施形態3に係るダクトを示す説明図である。ダクト20fは、断面がコの字のボックス27を組み合わせたものである。ボックス27は、例えば、鉄板を組み合わせて製造することができる。ダクト20fは、1辺あたり200mm程度の立方体形状である。ボックス27を組み合わせる間隔は、風がダクト20fの第1の開口部21Hfから第2の開口部22Hfへ通過する経路があれば良い。
【0050】
実施形態3によれば、効率良く、防音壁10の風荷重を抑制できる。また、ダクト20fの第1の開口部21Hfから第2の開口部22Hfへ通過する音は、ダクト20f内で2回曲がることになる。その結果、ダクト20fは、曲がりによる音のエネルギーの減衰効果を有効に利用できるので、効果的に減音することが可能である。また、ダクト20fは、内周面に吸音材30を取り付けてもよい。このようにすることで、より効果的に減音することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る防音壁は、防音壁に作用する風荷重を低減するとともに、減音機能を確保することに有用である。
【符号の説明】
【0052】
5 プラント
10 防音壁
20、20a、20b、20c、20d、20e、20f ダクト
20I、20Ia、20Ib、20Ic 内部
21、21e 第1の壁面
21H、21He、21Hf 第1の開口部
21HTT、22HTT 上端
22HTL 下端
22H、22He、22Hf 第2の開口部
22、22e 第2の壁面
23、24 側面
25 上面
26 下面
27 ボックス
30 吸音材
31 突起部
32 傾斜部
33 開閉調整部
34 仕切り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の壁面と、
前記第1の壁面と対向して配置される第2の壁面と、
前記第1の壁面に開口する第1の開口部と、
前記第2の壁面に開口するとともに、前記第1の開口部の上端よりも前記開口の下端の高さが高い第2の開口部と、
を含むことを特徴とする防音壁。
【請求項2】
対向して配置されるとともに、前記第1の壁面と前記第2の壁面とをそれぞれ連結する一対の側面と、
前記第1の壁面と前記第2の壁面と前記一対の側面とで囲まれる筒状の構造体の両端部にそれぞれ設けられる上面及び下面と、
を含むダクトが複数組み合わされることを特徴とする請求項1に記載の防音壁。
【請求項3】
前記ダクトの内周面に吸音材を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の防音壁。
【請求項4】
前記ダクトは、前記第2の壁面の内面に突起部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の防音壁。
【請求項5】
前記ダクトは、前記第2の開口部の下端に、前記ダクトの外側に向かって突出するとともに、上方に向かって傾斜する傾斜部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の防音壁。
【請求項6】
前記ダクトは、前記第1の開口部と前記第2の開口部との少なくとも一方を開閉することが可能な開閉調整部を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の防音壁。
【請求項7】
第1の壁面と、
前記第1の壁面と対向して配置される第2の壁面と、
前記第1の壁面に開口する第1の開口部と、
前記第1の開口部と対向する前記第2の壁面の位置に開口する第2の開口部と、
前記第1の開口部と前記第2の開口部との間に配置される仕切りと、
を含むことを特徴とする防音壁。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−107432(P2012−107432A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257289(P2010−257289)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】