説明

防食保護された支柱脚材

【課題】金属製の支柱をコンクリート製の脚材で支える支柱脚材の腐食、劣化を防止する。
【解決手段】支柱の表面のうち少なくとも脚材表面との境界を、表面から露出した部分と脚材に埋もれた部分とに跨る第一の防食樹脂層で覆い、
前記支柱の前記脚材表面から露出した前記境界近傍を前記の第一の防食樹脂層の上から覆い、かつ、少なくとも上記支柱周辺の上記脚材表面に跨る第二の防食樹脂層を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の支柱をセメント製の脚材で支える支柱脚材を保護、補修する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属製の支柱をもって地面に立てる、交通標識、街灯、公園灯、ガードレール、鉄塔の基礎部などを地面に立てる際には、その根本をコンクリート製の基礎脚材に埋め込んで地盤に支持することが行われている。
【0003】
このような支柱脚材では、コンクリートと接するとともに雨水が浸入してくる支柱の脚材表面に近い部分が最も腐食しやすい。この腐食を防ぐ方法として、特許文献1の図3や図4に記載のような方法がある。これは、繊維強化樹脂シートを腐食しやすい支柱の脚材表面付近に巻き付けて保護するものである。
【0004】
脚材周囲の地面が掘削可能である場合の施工として、以下のような手順が記載されている。図6(a)のような、アスファルト等の基礎1に埋め込まれた支柱2の根元を掘削する。この掘削した穴3により、腐食部分5を露出させる。腐食により生じた錆等を取り除いた後、矩形に裁断された繊維強化樹脂シート4を、支柱の地中部分及び地表に露出した部分に跨って貼り付けた(図6(b)参照)後、アスファルトを埋め戻す(図6(c)参照)と、アスファルトの地面と接する、空気及び水と最も接触する箇所を防護するものとなる。
【0005】
一方、脚材周囲が掘削困難である場合の施工として、以下のような手順が記載されている。コンクリート製の基礎6で固められた支柱2の根元に腐食部分5がある(図7(a)参照)。その基礎の表面7の下地部分をケレンした後、支柱2の腐食部分5をサンドがけすることにより付着した錆等を除去する。さらに下地部分については、アセトンなどで脱脂した後にその下地にプライマーを塗布する。次に、中央に挿通穴が開いてさらにその挿通穴の周囲に櫛状に切り込みが入った環状の繊維強化樹脂シート8を、支柱2周囲の基礎6上に貼り付ける(図7(b)参照)。さらに、矩形に裁断された繊維強化樹脂シート9を支柱2の腐食部分5を丸ごと覆うように貼り付け(図7(c)参照)、紫外線(太陽光)を当てて硬化させる。このようにして基礎の表面7と支柱2の表面との境界を夾んで、両側に跨って繊維強化樹脂シートを貼り付けることで、水がその境界から内部へ浸透することを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−336393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図6の施工では、最も反応しやすい境界を防いではいるものの、周辺が土であったり、アスファルトの埋め戻しに不備があった場合には、支柱の周囲から雨水が浸入し、表面ではなく支柱の根元が腐食してしまう場合があった。また、図7の施工では、支柱が脚材表面との境界で接しているために、脚材自体が破損して雨水が浸入してしまった場合には、なお境界付近で腐食が起こる可能性があった。
【0008】
そこでこの発明は、主に脚材表面との境界付近において起こる金属製支柱の腐食を、より確実に防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、支柱の表面のうち少なくとも脚材表面との境界を、表面から露出した部分と脚材に埋もれた部分とに跨る第一の防食樹脂層で覆い、
前記支柱の前記脚材表面から露出した前記境界近傍を前記の第一の防食樹脂層の上から覆い、かつ、少なくとも上記支柱周辺の上記脚材表面に跨る第二の防食樹脂層を形成させることで、上記の課題を解決したのである。
【0010】
まず、第一の防食樹脂層が支柱に接して、脚材表面との境界域で、支柱と脚材とが接することで生じる腐食を防いでいる。さらにこの第一の防食樹脂層の露出した部分を覆い、支柱周辺の脚材表面に跨る第二の防食樹脂層を設けることで、第一の防食樹脂層と脚材との間に雨水が浸入することを防ぎ、脚材内部で支柱が腐食することを防ぐとともに、最も腐食しやすい支柱と脚材表面との境界部分を多重構造で防護することができる。これにより、単に貼り付けるシートを重ねるよりも、徹底した防護効果が得られる。
【0011】
このような二重の防食樹脂層を形成させるには、支柱脚材の製造時であれば、金属製の支柱を立てた後、支柱を固める脚材を形成させる前に、まず、脚材表面との境界域とする予定の部分を第一の防食樹脂層で覆っておく。それから第一の防食樹脂層の下部を埋めつつ、セメント系材料で脚材を形成させる。その後、露出している第一の防食樹脂層のうちの露出部分と、上記脚材表面の上記支柱周辺とに跨る第二の防食樹脂層を全周に亘って形成させることで防食保護ができる。
【0012】
防食樹脂層は、紫外線などによる硬化性を有する繊維強化樹脂シートを貼り付け、太陽光などによる紫外線を当てて硬化することにより形成させることができる。ただし、繊維強化樹脂シートを貼り付けるだけでなく、シートの合わせ目やシートの端部に硬化性樹脂を塗布して、シートと一体の樹脂層を形成すると、より防護性が高くなる。また、防食樹脂層をシートの貼り付けにより形成させる場合には、その貼り付け面に、予めプライマーを塗布して、密着性を高めておく。
【0013】
また、脚材が掘削可能な地面に一部が埋まっているものである場合には、第二の防食樹脂層が、上記脚材の露出している部分全てを覆い、かつ、地面に埋もれている部分にまで跨っているものとすることで、脚材自体への防護性が高くなり、直接的な脚材の破損を防ぐとともに、脚材の破損に伴って雨水が脚材に染みこんで支柱に到達して起こす腐食を防ぐことができる。ここで、大気に露出している部分だけでなく、地面に埋もれている部分にまで跨って第二の防護樹脂層を形成させるのは、地面との境界域では大気と脚材と地面とが接するため、地表が水を含みやすいと地表よりすぐ下の部分は長時間水に触れ続けることがあるので、いずれも脚材が腐食、破損しやすいためである。地表より下まで第二の防食樹脂層で覆うことで、これらの腐食や破損を防ぐことができる。
【0014】
さらに、既に設置された支柱脚材を防護することも同様の手順により可能である。まず、脚材の表面を削って、支柱の脚材表面との境界を露出させる。脚材の一部が破損している場合はその破損箇所ともども、脚材表面を削る。既に設置されている支柱脚材では、境界付近が既に腐食していることがあるので、支柱の境界付近をサンドがけして錆等を削り落とし、表面をフラットにする。それから境界の上下、すなわち、脚材から露出する部分と脚材に埋もれる部分とに跨るようにして、第一の防食樹脂層を形成させる。その後、モルタルなどのセメント系材料で、削った部分を修復して、元の脚材の形状を回復させる。このときに、第一の防食樹脂層は、下部が脚材に埋もれ、上部が脚材表面から露出するようにする。その後、上記と同様に第二の防護樹脂層を形成させると、同様に腐食や破損を防ぐ支柱脚材とすることができる。
【0015】
脚材の周囲が地面ではなく、セメント製の脚材と一体化した床面である場合は、第二の防食樹脂層を脚材の周りの床面にまで広げて形成させることで、脚材の周囲を十分に防護し、脚材の腐食を防ぐことができる。
【0016】
なお、セメント製であるとは、モルタルやコンクリートなど、セメントを用いた様々な材料からなることを示し、特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
この発明を用いることで、金属製の支柱とそれを支えるセメント製の脚材からなる支柱脚材を、従来よりも腐食しにくく、また、破損しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第一の実施形態の説明図(第一の防食樹脂層と脚材の形成まで)で、(a)支柱脚材を有する標識の外観、(b)掘削穴に支柱と基盤を設置した際の側面図、(c)第一の防食樹脂層を形成した際の側面図、(d)脚材を形成させた際の側面図
【図2】第一の実施形態の説明図(第二の防食樹脂層の形成・途中まで)で、(a)脚材を形成させた際の斜視図、(b)環状の繊維強化樹脂シートとそれを貼り付ける際の斜視図、(c)支柱を囲む矩形の繊維強化樹脂シートを貼り付ける際の斜視図、(d)貼り付け後の斜視図
【図3】第一の実施形態の説明図(第二の防食樹脂層の形成・途中から)で、(a)脚材側面を囲む矩形の繊維強化樹脂シートを貼り付ける際の斜視図、(b)第二の防食樹脂層を形成させた後、埋め戻した後の完成図
【図4】第二の実施形態の説明図(脚材の補修まで)で、(a)劣化した支柱脚材の例を示す斜視図、(b)劣化した支柱脚材の例を示す側面図、(c)表面をはすった後の側面図、(d)第一の防食樹脂層を形成させた際の側面図、(e)モルタルで脚材表面を修復した後の側面図
【図5】第三の実施形態の説明図(床面上への形成)で、(a)床面に支柱と基盤を設けた際の側面図、(b)第一の防食樹脂層を設けた際の側面図、(c)脚材を形成させた際の側面図、(d)環状の繊維強化樹脂シートを貼り付ける際の側面図、(e)第二の防食樹脂層を設けた後の側面図
【図6】(a)支柱を直接地面に挿した標識の概略図、(b)支柱周辺を掘削して補修する際の斜視図、(c)補修後の斜視図
【図7】(a)劣化した支柱脚材の概略図、(b)支柱を囲む環状の繊維強化樹脂シートを貼り付けた際の斜視図、(c)矩形の繊維強化樹脂シートを貼り付けた際の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の具体的な実施形態について説明する。
第一の実施形態は、図1(a)に示す、金属製の支柱21を有する標識25を、地面11に埋め込んだコンクリート製の脚材41で固定する支柱脚材を防食保護したものである。
【0020】
まず最初に、地面11に、設置予定である脚材41(図中二点破線で表示)より径を広げた掘削穴12を掘り込む(図1(b))。その底部に、支柱21を支える基盤22を設置し、杭23を打ち込んで固定する。なお、基盤22が無い形態も考えられ、その場合は支柱21を地面に突き刺して固定することとなる。
【0021】
次に、支柱21の、脚材41の表面との境界となる予定の箇所である境界24の上下域に、金属用のプライマーを塗布して下地処理を行った後、矩形に裁断された、片面に接着剤を塗布した繊維強化樹脂シート30を、一周以上に亘って巻き付ける(図1(b)(c)参照)。この繊維強化樹脂シート30は、紫外線を受けて硬化する樹脂を用いており、巻き付けた後に太陽光や紫外線照射装置による紫外線を当てることで硬化させる。これにより、第一の防食樹脂層を形成させる。この防食樹脂層を通して支柱21の状態が観察できるように、硬化後の樹脂が透明であるとより望ましい。
【0022】
上記の繊維強化樹脂シート30が固まった後、型枠を用いた一般的なコンクリート材の製造手順に則り、コンクリート製の脚材41を形成させる。このとき、脚材41の天面42は、予め設計していた境界24と高さを揃えており、繊維強化樹脂シート30の下半分が脚材41に埋もれ、上半分が露出した状態となる。側面45は円柱状となっており、側面45と天面42との間には、円錐状の面取り部44が形成されている。また、図中43は、周囲の地面11の高さまで掘削穴12を埋め戻した際に、側面45と接することになる地面との境界線43である。
【0023】
この脚材41と第一の防食樹脂層の上から第二の防食樹脂層を形成させる。その手順を図2及び図3を用いて説明する。図2(a)は、図1(d)の状態の斜視図である。まず、天面42のうち、第二の防食樹脂層を形成させる範囲について、アセトンなどで脱脂した後に、プライマーを塗布する。コンクリートなどのセメント系材料に対しては、一般的な接着剤だけでは十分な接合力が得られないため、プライマーによる補助があることが望ましい。プライマーの種類は特に限定されないが、透明であると望ましい。樹脂層形成後でも天面42の状況が視認できるためである。
【0024】
図2(b)左に記載のような環状の繊維強化樹脂シート50を用意する。上記の繊維強化樹脂シート30と同様の樹脂を用いており、同様に片面に接着剤が塗布してある。上記の天面42に載せる環状部57の外縁51は、樹脂層を形成する範囲よりやや大きく、内縁52により形成される挿通穴は支柱21の径よりも小さい。内縁52の周囲には、支柱21の表面に巻くように貼り付け可能な矩形部56を形成するように、切り込み53と折り曲げ線54が設けてある。折り曲げ線54は環状であり、その径は支柱21の断面径よりもやや大きい。外縁51と折り曲げ線54との間が環状部57である。また、内縁52の内側に支柱21を通すために、環状部57には切断線55が設けてある。支柱21及び天面42への取り付け時には、この切断線55で環状部57を離して、その間に支柱21を通す(図2(b)右参照)。折り曲げ線54で折り曲げて矩形部56を立ち上げて支柱21の周囲を覆い、環状部57を天面42上に載せる。ただし、実際に矩形部56が接するのは、第一の防食樹脂層を構成する繊維強化樹脂シート31の表面である。また、環状部57を縮径させて、切断線55’による一方の端部を、他方の端部の下に敷き、一部が重なるようにする(図2(c))。これにより、矩形部56も一部が重なる。このようにすることで、シートの端部と端部の間から雨水が浸入する可能性を低減することができる。
【0025】
次に、図2(c)に記載のような、矩形に裁断された繊維強化樹脂シート61を用意する。構造、材料等は上記の繊維強化樹脂シート30と同様である。これを、折り曲げ線54に下端を接するようにして、矩形部56と繊維強化樹脂シート31との上から支柱21に、一周を超えて巻き付ける(図2(d)参照)。また、この繊維強化樹脂シート61の上端は、先に形成させた第一の防食樹脂層の上端より上まで覆っていると、支柱の保護性が高くなるので好ましい。
【0026】
さらに、図3(a)に記載のような、矩形に裁断された繊維強化樹脂シート71を用意する。少なくとも脚材41の側面45を一周以上できる長さを有し、縦幅は側面45の、本来の地面との境界線43より下から、面取り部44を跨ぎ、天面42上に載せられた環状の繊維強化樹脂シート50の外縁51に到達する程度以上である必要がある。上側に位置することになる端部には、折り曲げ線73で短冊状に折り曲げ可能な矩形部72が設けてある。
【0027】
一方で、脚材41の側面45,面取り部44、天面42は、上記と同様に脱脂した後、プライマーを塗布する。その上で、繊維強化樹脂シート71を図3(a)のように巻き付ける。周方向端部74、74’は、少なくともその端部付近が重なるようにする。また、それぞれの矩形部72も、両隣の矩形部72と一部が重なるようにする。さらに、矩形部72の端部は、環状の繊維強化樹脂シート50の外縁51と一部が重なるようにする。
【0028】
さらに、支柱21を囲む繊維強化樹脂シート61の下端81と上端82、及び、脚材41に巻き付けた繊維強化樹脂シート71の矩形部72の上端円83に沿って、紫外線硬化性樹脂のペーストを塗布し、シート端部に生じる隙間を完全に塞ぐ。この状態で、繊維強化樹脂シート50,61,71を、下端81,上端82,上端円83に塗布した紫外線硬化性樹脂ペーストとともに紫外線により硬化させて一体のものとして、第二の防食樹脂層を形成させる。その後、周囲の掘削穴12を埋めて、新たな地面11’を、元の境界線43まで到達させる。すなわち、繊維強化樹脂シート71の下端が地表下に埋もれるようにする。
【0029】
以上のような施工手順により、支柱21に直接に接する繊維強化樹脂シート31による第一の防食樹脂層が、支柱21と脚材41の天面42との境界24での直接の反応を防ぐとともに、その境界24を脚材41全体ともども覆う第二の防食樹脂層が、第一の防食樹脂層と脚材41との隙間への、雨水の浸入を防ぐので、間接的な支柱21への雨水の到達をも防ぎ、また、脚材41自体が破損することによる空気や雨水の浸入が起こる可能性も低減することができる。さらに、脚材41の側面45は、地面11との境界線43よりも下まで第二の防食樹脂層で覆われているため、脚材41の周囲が水浸しになったとしても容易に脚材41が侵されるものではなく、脚材41の劣化を防止することができる。
【0030】
次に、第二の実施形態について説明する。この実施形態は、既に設置された金属製の支柱21をコンクリート製の脚材41で地面11に固定した支柱脚材が、経年劣化したものを補修し、保護するものである。
【0031】
劣化した支柱脚材は、例えば図4(a)(b)に示すように、支柱21の、脚材41の天面42との境界付近が錆などによる腐食部25aとなっている。また、脚材41の表面にはヒビ46や割れ47が生じており、そこから雨水が脚材41の組織内に浸入可能となっている。
【0032】
まず、脚材41のヒビ46や割れ47などが生じている破損部分を電動ハンマーなどではつり、以上が生じている箇所を全て取り除くとともに、支柱21の腐食部25aを露出させる。また、脚材41の周囲の地面を掘削し、側面45を露出させる掘削穴12を形成させた上で、その露出した側面45を元の地表面よりも下のライン49まではつる。地面11よりすぐ下の面は、地表が含む水分により脚材41が劣化していることが多いからである。この状態を図4(c)に示す。
【0033】
支柱21の腐食部25aについては、ケレンをして錆を完全に除去し、穴が開いている場合には支柱21自体の補修を行い、表面をフラットにする。その上で元の腐食部25a全体を覆うように、矩形に裁断した繊維強化樹脂シート31を貼り付け、上記と同様に紫外線で硬化させて第一の防食樹脂層を形成させる。この状態を図4(d)に示す。
【0034】
さらに、はつりにより生じたハツリ面48に、エマルジョン状のモルタル接着増強剤を塗布した後、無収縮モルタルを塗工して補修層91を形成させる。この補修層91の表面は、元の脚材41の表面とほぼ同じようにし、少なくとも繊維強化樹脂シート31の一部を補修層91に埋もれさせ、一部を露出させたものとする。また、補修層91の表面は、第二の防食樹脂層を形成させやすくするため、角部以外はできるだけフラットにすることが望ましい。補修層91が乾いたら、その全面に亘ってコンクリート材用のプライマーを塗布し、以下、上記の図3に示す施工過程と同様の手順により第二の防食樹脂層を形成させる。これにより、最初から防食保護していた支柱脚材と同様の防護効果を得ることができる。
【0035】
さらに、第三の実施形態について説明する。
この実施形態は、脚材の周囲が掘削が困難なコンクリート製の床面101であるような場合に設置する支柱脚材を防食保護するものである。
【0036】
まず、コンクリートの床面101上に、金属製の支柱21を支える基盤22を杭23により固定する(図5(a)参照)。境界24は、設置予定であるコンクリート製の脚材41の天面42と支柱21とが接する予定の線である。この境界24の上下に金属用プライマーを塗布した後、矩形に裁断した繊維強化樹脂シート31で覆い、紫外線を照射して硬化させ、第一の防食樹脂層を形成させる(図5(b)参照)。
【0037】
次に、床面を構成するコンクリートと一体となるように、コンクリート製の脚材105を形成させる。このとき、脚材105と床面101との境界106を、できるだけ隙間が生じないように形成させる(図5(c)参照)。
【0038】
以下、上記の実施形態と同様に、環状の繊維強化樹脂シート50を脚材105の天面に載せて矩形部56で支柱21の周囲を覆い(図5(d))、矩形の繊維強化樹脂シート61を矩形部56の上から巻き付け、脚材105の側面を繊維強化樹脂シート71で覆う。また、上記の実施形態と同様に、それぞれの端部に紫外線硬化性樹脂ペーストを塗布するとともに、脚材105と床面101との境界も、紫外線硬化性樹脂ペーストで覆った上で、紫外線により硬化させ、第二の防食樹脂層を形成する。第二の防食樹脂層の下端より床面を上げることができない以上、元の床面101との間に隙間が生じて、そこから支柱脚材が劣化するおそれがあるので、それを防止するためである。
【符号の説明】
【0039】
1 基礎
2 支柱
3 穴
4 繊維強化樹脂シート
5 腐食部分
6 基礎
7 表面
8 環状の繊維強化樹脂シート
9 矩形の繊維強化樹脂シート
11 地面
11’ 地面
12 掘削穴
21 支柱
22 基盤
23 杭
24 境界
25 標識
25a 腐食部
30 矩形の繊維強化樹脂シート
31 矩形の繊維強化樹脂シート
41 脚材
42 天面
43 境界線
44 面取り部
45 側面
46 ヒビ
47 割れ
48 ハツリ面
49 ライン
50 環状の繊維強化樹脂シート
51 外縁
52 内縁
54 折り曲げ線
55 切断線
55’ 切断線
56 矩形部
57 環状部
61 矩形の繊維強化樹脂シート
71 矩形の繊維強化樹脂シート
72 矩形部
73 折り曲げ線
74 周方向端部
81 下端
82 上端
83 上端円
91 補修層
101 床面
105 脚材
106 境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺の地面又はセメント製の床面から独立して設けたセメント系材料からなる脚材と、前記脚材に途中まで内包され固定された金属製の支柱とからなる支柱脚材であって、
前記支柱の表面のうち少なくとも前記脚材表面との境界は、表面から露出した部分と脚材に埋もれた部分とに跨る第一の防食樹脂層で覆われており、
前記支柱の前記脚材表面から露出した前記境界近傍を前記の第一の防食樹脂層の上から覆い、かつ、少なくとも上記支柱周辺の上記脚材表面を覆う第二の防食樹脂層を有する、防食保護された支柱脚材。
【請求項2】
上記脚材が掘削可能な地面に一部が埋まっているものであり、
上記の第二の防食樹脂層が上記脚材の大気に露出している部分全てを覆い、かつ、地面に埋もれている部分にまで跨っている請求項1に記載の防食保護された支柱脚材。
【請求項3】
金属製の支柱の周囲を、周辺の地面から独立して設けたセメント製の脚材、又は周辺の床面と一体となるように設けたセメント製の脚材で固定した支柱脚材の表面に防食樹脂層を形成させた、防食保護された支柱脚材の製造方法であって、
上記脚材を形成する前の前記支柱の表面のうち、脚材表面との境界域となる部分を第一の防食樹脂層で覆ったのち、
その第一の防食樹脂層の表面のうちの上記境界域より下側を含む上記支柱の上記境界域より下部をセメント系材料で覆って脚材を形成させ、
上記の第一の防食樹脂層のうちの露出部分と、上記脚材表面の上記支柱周辺とに跨る第二の防食樹脂層を全周に亘って形成させる、防食保護された支柱脚材の製造方法。
【請求項4】
金属製の支柱の周囲を、周辺の地面又はセメント製の床面から独立して設けたセメント製の脚材で固定した支柱脚材の表面を防食樹脂層で保護する、支柱脚材の保護方法であって、
上記脚材の表面のうち、少なくとも上記支柱の周辺を削って、上記支柱の元の上記脚材表面との境界を露出させて、その境界域を第一の防食樹脂層で覆った後、セメント系材料で上記支柱の上記境界までを覆うように上記の削った分を修復して、
上記支柱の上記脚材表面付近から上記脚材表面の上記支柱周辺を覆うように第二の防食樹脂層を形成する、支柱脚材の保護方法。
【請求項5】
上記脚材の表面を削る際に、上記脚材表面の破損箇所の周囲を、少なくともその破損箇所が判別できなくなるまで削った上で、上記セメント系材料で、それらの削った部分とともに前記破損箇所であった箇所も一体として修復することを特徴とする、請求項4に記載の支柱脚材の保護方法。
【請求項6】
上記脚材の周辺が掘削可能な地面であり、その地面を掘削して、元の地面との境界を露出させておき、
元の地面との境界より下まで上記脚材を覆うように上記の第二の防食樹脂層を形成した後、少なくともその第二の防食樹脂層の下端が隠れるように周囲の地面を埋め戻すことを特徴とする、請求項4又は5に記載の支柱脚材の保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−180644(P2010−180644A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26282(P2009−26282)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(592134125)阿南電機株式会社 (7)
【Fターム(参考)】